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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018591
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】スライド制御機構及びリール装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 1/16 20060101AFI20230201BHJP
   E05F 3/00 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
E05F1/16 C
E05F3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122814
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】392005469
【氏名又は名称】モリテックスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】服部 正
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 明莉
(57)【要約】
【課題】ワイヤーなどの長尺体を巻き取るなどして、扉やカーテンなどの移動体の動きを制御するスライド制御機構において、長尺体の弛みの発生を抑制する。
【解決手段】戸体11などのスライド部材に設けられたリール21と、リール21と第1固定部13、第2固定部14との間に渡された第1長尺体16と第2長尺体17を備えたスライド制御機構。第2長尺体17のリール21は、第1長尺体16のリール21と同一のリール又は同体に回転するリールである。第1長尺体16と第2長尺体17とはリール21に逆向きに捲回され、戸体11の移動の際、リール21における第1長尺体16と第2長尺体17とは、その巻き取りと繰り出しとが逆になる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド部材に設けられたリールと、前記リールと固定部との間に渡された長尺体とを備え、前記リールの回転を制御することにより前記リールの移動を制御するスライド制御機構において、
第1長尺体と第2長尺体とを備え、
前記第1長尺体は、一方の固定部と前記リールとの間に渡されたものであり、
前記第2長尺体は、前記第1長尺体が渡された前記リールと同一のリール又は同体に回転するリールと、他方の固定部との間に渡されたものであり、
前記スライド部材の移動の際に、前記リールにおける前記第1長尺体と前記第2長尺体との巻き取りと繰り出しとが逆になるように構成されたことを特徴とするスライド制御機構。
【請求項2】
前記第1長尺体と前記第2長尺体とが、単一の前記リールにおける前記リール溝に共に互いに逆方向に巻かれるように構成されたことを特徴とする請求項1に記載のスライド制御機構。
【請求項3】
長尺体を捲回するリールと、
前記リールを回転可能に支持する支持部と、
一端側が前記リールに接続され他端側が前記支持部に接続されて、前記リールの回転に伴い回転エネルギーを蓄積し、蓄積した前記回転エネルギーにより前記リールを回転させるゼンマイバネと、
前記リールの回転を停止させるロック機構とを備え、
前記ロック機構は、前記リールと前記支持部との何れか一方に設けられたストップレバーと、前記リールと前記支持部との何れか他方に設けられて前記ストップレバーを案内する案内部とを備えているリール装置において、
前記案内部は、前記ゼンマイバネの力による回転力を超える力で前記ストップレバーを仮固定する一時停止機構を備えており、
前記一時停止機構の力によって、前記ストップレバーを前記案内部の所定位置で停止させておくことによって、前記リールの回転を一時的に停止させ、
前記一時停止機構の力を超える力が前記リールに加わった時に、前記リールが回転することを許すように構成されたことを特徴とするリール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、扉やカーテンなどのスライド部材の移動状態を制御するスライド制御機構及びこのスライド制御機構の実施に際して好適に用いることができるリール装置の発明に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、扉やカーテンなどのスライド部材の移動状態を制御するスライド制御機構として、特許文献1や2に示すように、スライド部材に設けられたリールと、前記リールとなどの固定部との間に渡されたワイヤーなどの長尺体とを備え、ゼンマイバネを用いて前記リールの回転を制御するようにしたスライド制御機構が、知られている。このようなスライド制御機構にあっては、一本のワイヤーを用いて、例えば戸枠の左右いずれか一方にワイヤーの一端を固定し、他端をリールに固定することで、ゼンマイバネに蓄えられた力で扉などのスライド部材を移動させるように構成されていた。
【0003】
ゼンマイバネを用いたリールとしては、特許文献3や4に示すものが知られている。この種のリールは、ワイヤーなどの長尺体をリールに捲回しておき、ゼンマイバネにエネルギーを蓄えながらリールから長尺体を使用者の手の力で引き出し、ゼンマイバネに蓄えられた力で長尺体がリールに巻き取られるものである。そして、リールの回転制御を行うためにロック機構備えている。このロック機構は、その構造上、次の作動状態となってしまうのが現状である。すなわち、長尺体を引き出して手を離すと、ゼンマイバネの作用によって僅かに長尺体がリールに巻き取られた後に、リールの回転が停止する。また、停止した状態からゼンマイバネの作用によって長尺体を巻き取る際には、長尺体を僅かに引き出してから手を離す必要がある。
【0004】
このようなゼンマイバネを用いたリールを用いるために、特許文献1や2のスライド制御機構にあっては、長尺体の弛みを防止する手段を設けておくことが提案されている。また、例えば、所定の位置まで左から右へ扉を開き、停止状態とした後に、ゼンマイバネの力で、扉を右から左へ動かして扉を閉めようとすると、僅かに扉を右から左へ動かす必要が生じてしまう。このように、使用者が意図する方向とは逆方向に扉を動かすことを使用者に求めることは、不自然な動作を使用者に求めることとなる。その結果、使用方法の説明を行う必要が生じることはもちろん、説明を受けた使用者であっても、頭では理解していてもいちいち確認が必要となり、混乱の原因となり、ユーザーフレンドリーな機構とは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5851058号公報
【特許文献2】特許第4879004号公報
【特許文献3】特許第4108024号公報
【特許文献4】特許第3673177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ワイヤーなどの長尺体を巻き取るなどして、扉やカーテンなどの移動体の動きを制御するスライド制御機構において、長尺体の弛みの発生を抑制することを課題とする。
本発明は、上記のスライド制御機構の実施に好適に用いることができるリール装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スライド部材に設けられたリールと、前記リールと固定部との間に渡された長尺体とを備え、前記リールの回転を制御することにより前記リールの移動を制御するスライド制御機構において、ダブルワイヤー方式によるスライド制御機構を提供する。
【0008】
本発明に係るスライド制御機構は、第1長尺体と第2長尺体とを備える。前記第1長尺体は、一方の固定部と前記リールとの間に渡されたものであり、前記第2長尺体は、前記第1長尺体が渡された前記リールと同一のリール又は同体に回転するリールと、他方の固定部との間に渡されたものである。そして、前記スライド部材の移動の際に、前記リールにおける前記第1長尺体と前記第2長尺体との巻き取りと繰り出しとが逆になるように構成されたものである。
【0009】
本発明の実施に際しては、前記第1長尺体と前記第2長尺体とを別個のリールによって巻き取るようにしても構わないが、前記第1長尺体と前記第2長尺体とを、単一の前記リールにおける前記リール溝に共に互いに逆方向に巻き付けるように構成することによって、部品点数の削減とダウンサイジングを図ることができる。
【0010】
また、本発明は上記のダブルワイヤー方式によるスライド制御機構の実施にも好適に適用することができるリール装置を提供する。本発明のリール装置は、長尺体を捲回するリールと、前記リールを回転可能に支持する支持部と、一端側が前記リールに接続され他端側が前記支持部に接続されて、前記リールの回転に伴い回転エネルギーを蓄積し、蓄積した前記回転エネルギーにより前記リールを回転させるゼンマイバネと、前記リールの回転を停止させるロック機構とを備え、前記ロック機構は、前記リールと前記支持部との何れか一方に設けられたストップレバーと、前記リールと前記支持部との何れか他方に設けられて前記ストップレバーを案内する案内部とを備えているリール装置に係るものである。前記案内部は、前記ゼンマイバネの力による回転力を超える力で前記ストップレバーを仮固定する一時停止機構を備えており、前記一時停止機構の力によって、前記ストップレバーを前記案内部の所定位置で停止させておくことによって、前記リールの回転を一時的に停止させ、前記一時停止機構の力を超える力が前記リールに加わった時に、前記リールが回転することを許すように構成されたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、長尺体の弛みの発生を抑制することができたスライド制御機構を提供することができたものである。
本発明は、ワイヤーなどの長尺体をリールで巻き取って停止した後、再度動かす時に、無駄な動きを抑制することができるリール装置を提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係るスライド制御機構を正面から見た説明図であり、(A)は戸体が閉じた状態、(B)は戸体を途中まで開いた状態、(C)は戸体をさらに開いた状態、(D)は戸体を再度閉じる状態を示すものである。
図2】同スライド制御機構のダブルワイヤー方式の説明図であり、(A)は戸体を途中まで開いた状態、(B)は戸体を少し閉じた状態、(C)は戸体を少し閉じた状態での長尺体の弛みが抑制される状態を示すものである。
図3】同スライド制御機構に用いられる巻取装置を示すものであり、(A)は正面図、(B)は同(A)のB-B線断面図である。
図4】同巻取装置のストップレバーとリールを背面側から見た斜視図である。
図5】(A)は同スライド制御機構の巻取装置に適用できる他のロック機構の背面図、(B)は図4に示す巻取装置のロック機構における案内部の背面図である。
図6図4に示す巻取装置のロック機構における案内部と被案内部との位置関係を示す背面側から見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(スライド制御機構の概要)
この実施の形態にかかるスライド制御機構は、図1及び図2に示すように、スライド部材としての戸体11を半自動で移動させるものである。この例では3枚の戸体11が、固定部である戸枠12内にて左右方向にスライド移動するものであるが、2枚や1枚のもので実施することもできる。また、スライド部材としては戸体11に限るものではなく、窓、スクリーン、カーテン、門扉、人車誘導部材など、屋内外でスライド移動するものに本発明を適用することができる。
【0014】
戸体11には、リール装置15が取り付けられている。このリール装置15と第1固定部13(図1の左側の縦枠)との間にはワイヤーなどの第1長尺体16が渡されている。また、このリール装置15と第2固定部14(右側の縦枠)との間にはワイヤーなどの第2長尺体17が渡されている。第1長尺体16と第2長尺体17のそれぞれの一端側は、第1固定部13と第2固定部14に固定されている。第1長尺体16と第2長尺体17のそれぞれの他端側は、リール装置15内のリール21に捲回されて、その先端がリール21に固定されている。
【0015】
リール装置15には、図3図6に示すようなゼンマイバネ24を用いたものを好適に採用することができるが、他の弾性体や電動機などの他の駆動源を用いたものを採用することもできる。
【0016】
第1長尺体16と第2長尺体17の長さは、戸体11及びリール装置15が必要とする移動量に応じて種々変更して実施することができるが、例えば図2に示すように、リール装置15が第1固定部13と第2固定部14の間の全長(A+B)にわたって移動する場合には、第1長尺体16と第2長尺体17の長さは、これと略等しい長さ(a+b)とすることができる。
【0017】
図2では、第1長尺体16を捲回するリール21と、第2長尺体17を捲回するリール21とは別個のものが描かれているが、単一のリール21に第1長尺体16と第2長尺体17を逆向きに(互いに逆方向に巻かれるように)巻きつけたものであっても構わない。
別個のリール21で実施する場合には、両者が同体として回転するように接続しておく必要がある。
単一のリール21で実施する場合には、第1長尺体16と第2長尺体17とでリール溝を別々にしても構わないが、図3(B)に示したようにリール溝34を共通にしておくことによって、リール溝34の幅を小さくすることができる。後述するように、リール21に捲回されている第1長尺体16の長さbとリール21に捲回されている第2長尺体17の長さaとの和(b+a)は、リール21の位置にかかわらず常に一定である。そのため、リール溝34の幅を、これに捲回される第1長尺体16と第2長尺体17の長さに合致させておくことにより(望ましくは、リール溝34の幅を、図3(B)に示したように重ならずに整列巻となる幅とすることにより)、一方の長尺体が引き出されてスペースが空くと、他方の長尺体が巻き取られることによってそのスペースが埋まるため、整列巻の状態を保つことができる。
【0018】
(ダブルワイヤー方式の説明)
次に、このスライド制御機構に採用されたダブルワイヤー方式について説明する。ダブルワイヤー方式とは、第1長尺体と第2長尺体とを備え、第1長尺体は一方の固定部とリールとの間に渡されたものであり、第2長尺体は、第1長尺体が渡された前記リールと同一のリール又は同体に回転するリールと、他方の固定部との間に渡されたものであり、第1長尺体と第2長尺体とが、前記リールに逆方向に捲回された構造による移動制御方式を言う。この方式によれば、前記リールが取り付けられたスライド部材の移動の際には、前記リールにおける第1長尺体と第2長尺体との巻き取りと繰り出しとが逆になる。
【0019】
(具体例)
このダブルワイヤー方式について、図2を参照して具体的に説明する。
図2(A)では、戸体11に取り付けられたリール装置15と第1固定部13との間の距離をAとし、リール装置15と第2固定部14との間の距離をBとすると、長尺体の長さは次のとおりとなる。
リール21から引き出されている第1長尺体16の長さ:a(A=a)
リール21に捲回されている第1長尺体16の長さ:b(B=b)
リール21から引き出されている第2長尺体17の長さ:b(B=b)
リール21に捲回されている第2長尺体17の長さ:a(A=a)
【0020】
(移動状態)
図2(B)は、戸体11を距離(X)左へ動かした状態を示すものであり、
リール装置15と第1固定部13との間の距離:A-(X)、
第2固定部14とリール装置15との間の距離:B+(X)、
となる。
この戸体11の移動と共に、リール装置15のリール21が正しく回転するものとすると、
リール21から引き出されている第1長尺体16の長さ:a-(X)、
リール21に捲回されている第1長尺体16の長さ:b+(X)、
リール21から引き出されている第2長尺体17の長さ:b+(X)、
リール21に捲回されている第2長尺体17の長さ:a-(X)、
となる。
【0021】
(従来の弛みの原因)
図2(C)は、戸体11を距離(X)左へ動かした際に第1長尺体16に弛みが生じた状態を示すものである。このような弛みは、戸体11が移動しても、その動きにリール装置15のリール21がついていけず、正しく回転しなかったり、遅れて回転したり、逆に惰性で回転しすぎたりすることにより生じる。図2(C)では、代表例としてリール装置15のリール21が全く回転しなかった状態を示す。この状態では、
リール21から引き出されている第1長尺体16の長さ:a、
リール21に捲回されている第1長尺体16の長さ:b、
のままとなり、
(リール装置15と第1固定部13との間の距離:A-(X))<(リール21から引き出されている第1長尺体16の長さ:a)
となる。その結果、長さ(X)分の弛みが生じる。
特許文献1や2に示す従来の構造では、第2長尺体17が存在しないため、このような弛みが生じてしまう。
【0022】
(ダブルワイヤー方式の場合)
これに対して、本発明のダブルワイヤー方式にあっては、第2長尺体17が存在するため、このような弛みが生じてしまうことを抑制することができる。
戸体11が距離(X)左へ移動するには、
リール21から引き出されている第2長尺体17の長さ:b+(X)、
リール21に捲回されている第2長尺体17の長さ:a-(X)、
となる必要がある。
ところがこの状態になるには、リール21が長さ(X)の分だけ回転する必要がある。その結果、
リール21から引き出されている第1長尺体16の長さ:a-(X)、
リール21に捲回されている第2長尺体17の長さ:b+(X)、
となる。
その結果、前述のような、
リール21から引き出されている第1長尺体16の長さ:a、
リール21に捲回されている第2長尺体17の長さ:b、
となる状態は生じ得ない。
【0023】
したがって、ダブルワイヤー方式にあっては、第2長尺体17の存在によって、弛みの発生を抑制することができる。言い換えれば、ダブルワイヤー方式では引き出されている第1長尺体16の長さと第2長尺体17の長さの和が、第1固定部13と第2固定部14との間の距離と等しくなるように、リール装置15のリール21の位置と回転が制御されるものであり、その制御に従って戸体11が移動するものである。
【0024】
なお、上記のように弛みの発生を確実に抑制するには、第1長尺体16及び第2長尺体17が予め弛みがない状態、望ましくはテンション(張力)がかかった状態で、第1固定部13及び第2固定部14とリール21との間に渡されていることが好ましい。また、設置時の微調整や経年変化による弛みの発生に対応するために、第1固定部13と第1長尺体16との間や、第2固定部14と第2長尺体17との間の接続は、前進後退するネジや送りねじなどによる張力調整手段を介して行うように実施することも好ましい。
【0025】
(ダブルリール方式に適用できるリール装置)
上述のダブルリール方式に係る実施の形態にあっては、第1長尺体16と第2長尺体17を巻き取るものとして、図3図6に示すリール装置15を用いることができる。
このリール装置15は、ケース本体22aとケース蓋22bとからなるケーシング22の内部に、リール21とゼンマイバネ24とが収納されており、戸体11に固定されている。ケーシング22に設けられた軸23が、リール21中央の軸孔27に、回転可能に挿入されることにより、リール21がケーシング22に回転可能に支持されている。ゼンマイバネ24は、その基端側が軸23に固定され、先端側がリール21に固定されている。リール21には第1長尺体16と第2長尺体17のそれぞれの一端側が固定されており、それぞれの他端側は第1引出口25と第2引出口26から外部に引き出されている。
【0026】
第1長尺体16と第2長尺体17とは互いに逆向きに、リール21の単一のリール溝34に捲回されている。この例では、図3(A)の矢印方向である反時計回り方向が、第1長尺体16を巻き取る方向(言い換えれば第2長尺体17を繰り出す方向)であり、この方向にリール21が回転すると、ゼンマイバネ24が巻き締められて、回転エネルギーを蓄積する。ゼンマイバネ24が解放されると、蓄えられた回転エネルギーによって、リール21が逆方向(時計回り方向)へ回転し、第1長尺体16が繰り出されると共に第2長尺体17がリール21に巻き取られる。
ワイヤー溝1つに対する2線式ワイヤーの整列巻の技術内容ですが、
ドラムへのワイヤー巻取周数とドラム溝の幅を同じ寸法にしておくと、
ワイヤーのスペースが1本分空くと、そこに次に巻き取られるワイヤーがハマり
整列巻になる技術です。
【0027】
(ロック機構)
さらにこの例では、リール装置15がロック機構31を備えている。ロック機構31は、図3図5に示すストップレバー32と、ストップレバー32を案内する案内部33とを備えている。この例では、図3(B)に示すように、案内部33は、リール21の背面側の端面に設けられており、さらにその背面側にストップレバー32が配置されている。
なおこの例では、ストップレバー32は、ケーシング22に取り付けられているが、リール21に取り付けることもできる。他方、案内部33は、この例ではリール21に設けられているが、ケーシング22に設けることもできる。
【0028】
ストップレバー32は、基端側の取り付け部35において、ケーシング22に回動可能に取り付けられており、その先端側に被案内部36が、リール21の案内部33に向けて突出して設けられている。なお、ストップレバー32の先端などに、弾性部を設けて、被案内部36が案内部33の案内溝に確実に案内されるように付勢しておいても構わない。
【0029】
ストップレバー32は、リール21とケーシング22の相対的な回転に伴って、案内部33に案内されて移動することによって、リール21とケーシング22の回転を制御する。
【0030】
この制御によってロック機構31は、使用者が戸体11を動かすことで、上記のようにゼンマイバネ24の付勢に抗してリール21を回転させて、第1長尺体16を引き出し(第2長尺体17を巻き込み)、途中で戸体11の開きを止めるなどしてリール21の回転を止めて戸体11から手を離した際に、ゼンマイバネ24がリール21を回転させることなく一時的に停止するようにするものである。その動きの概要を、図1に従い順次説明する。
【0031】
図1(A):全閉状態)
戸体11が全閉状態であり、戸体11に取り付けられたリール装置15も初期位置にある。この状態では、リール装置15のリール21によるゼンマイバネ付勢がなされていないものであっても構わないが、同ゼンマイバネの付勢によって戸体11が第1固定部13に押し付けられている状態であっても構わない。
【0032】
図1(B):半開状態)
使用者によって戸体11が途中まで開かれる。言い換えれば、上記ゼンマイバネの付勢に抗して、リール装置15のリール21が第1長尺体16を巻き取る(第2長尺体17を繰り出す)。
この状態で使用者が戸体11から手を離すと、リール21はわずかに逆転した後、一時的に停止する。
【0033】
図1(C):半開状態から戸体11をさらに開く)
半開状態から戸体11をさらに開く場合には、戸体11開く方向(図の右方向)に使用者が引っ張る。これによって、戸体11が同方向へ移動し、ゼンマイバネ24に回転エネルギーを蓄えながら、第1長尺体16がリール装置15のリール21から繰り出される(第2長尺体17は巻き取られる)。
【0034】
図1(D):半開状態から戸体11を閉める)
半開状態から戸体11を閉める場合には、使用者が戸体11を少し動かせば、ゼンマイバネに蓄えられた回転エネルギーによって、第1長尺体16をリール装置15のリール21に巻き取る(第2長尺体17を繰り出す)。その結果、戸体11が閉じる方向(図の左方向)へ移動する。
【0035】
(ロック機構の構造)
このロック機構の一例(特に案内部33の案内溝の一例)について、図5(A)を参照して説明する。図5(A)に示す案内溝は、他の図とは異なり、特許文献3や4や実公平4-20860号に開示された案内溝と実質的に同じものである。この案内溝は、第1長尺体16を巻込むときに被案内部が主として周回する外周路41と、第1長尺体16を引き出すときに被案内部が主として周回する内周路42とを備えている。但し、上記とは逆に、第1長尺体16を引き出す際に被案内部36が主として周回する経路を外周路41とし、第1長尺体16を巻き取る際に被案内部36が主として周回する経路を内周路42としても構わない。
なお、すでに説明したように長尺体は巻き込みと引き出しの回転方向が逆になっている第1長尺体16と第2長尺体17の2本を備えているが、以下の説明では特別な断りがない限り第1長尺体16を中心として、巻き込みと引き出しのリール21の回転方向を説明する。
【0036】
この例では外周路41と内周路42はともに周回する環状の経路であり、外周路41と内周路42の間は高くなった壁などによって仕切られている。
さらにこの例では、外周路41と内周路42の間には、渡り路43と連絡路44が配置されている。
渡り路43は、外周路41から内周路42へ被案内部36を案内するための通路となる。
連絡路44は、内周路42から外周路41へ被案内部36を案内するための通路となる。連絡路44は、少なくとも一つの折り返し部45を備える。この折り返し部45は、連絡路44の経路が途中で行き止まりとなった部分であり、内周路42から連絡路44へ入ってきた被案内部36が折り返し部45で一旦止まり、逆方向にリール21が回転した時に折り返し部45から外周路41へ被案内部36が進むものである。
よって、被案内部36は、内周路42から外周路41へ、いわばスイッチバック状に連絡路44を進むものである。
なお、この例では、渡り路43と連絡路44とはそれぞれ2つずつが点対称で設けられているが、それぞれ1つ以上設ければ足り、3つ以上設けても構わない。
【0037】
(戸体11の動きとの関係)
(閉(図1(A))から開(図1(B)へ)
使用に際しては、まず図1(A)に示すように閉じている戸体11が、使用者の手で右方向に開かれる。その際、ゼンマイバネ24の付勢力に抗して、リール21が時計回りに回転し、第1長尺体16がリール21から引き出される(第2長尺体17がリール21に巻き込まれる)。
【0038】
このとき、ストップレバー32の被案内部36は、ケーシング22に設けられているため、見かけ上のリール21の回転方向とは逆向きにリール21の案内部33の経路を移動することになるが、図3(B)に示すように、案内部33はリール21の背面側に設けられている。ここで、以下の説明では、リール21の回転方向は図1に従い正面側から見た状態で回転方向を説明し、他方、被案内部36の、リール21の案内部33の案内溝に対する動きについては、背面側から見た状態を示す図4以降を参照して、背面側から見た状態で回転移動方向などを説明する。そのため、リール21の回転方向と被案内部36の移動の回転方向とが同一となる。
即ち、第1長尺体16がリール21から引き出される方向にリール21が回転するとき、被案内部36は時計回りに回転(図5(A)では右回転R)するように移動し、外周路41から渡り路43を経て内周路42に入り、内周路42内を右回転Rで周回する。なお、誤って被案内部36が連絡路44に入らないように、内周路42と連絡路44の間には高さの差や傾斜を設けるなど誤侵入防止の構造が採られている。なお、設計者の意図通りの動き(即ち、以下に説明する被案内部36の動き)を実現させるために、他の経路間にも段差や傾斜を設けるなど誤侵入防止の構造が採られている。
【0039】
(開く(図1(B))
次に、戸体11から手が離されリール21に加わる外力がなくなると、ゼンマイバネ24の付勢力によって、リール21が反時計回りに回転(左回転L)する。これにより、被案内部36は内周路42から連絡路44に入り、折り返し部45に至り、その突き当たりで停止する。これにより、リールの回転は停止し、第1長尺体16は所定長さが引き出された状態を維持する。したがって、戸体11から使用者が手を離すと、戸体11はわずかに閉る方向に動いて停止する。
なお、誤って被案内部36が渡り路43に入らないように、外周路41と連絡路44の間には高さの差を設けるなど誤侵入防止の構造が採られている。
【0040】
(さらに開く(図1(C))
戸体11が、使用者の手によってさらに開くように動かされると、ゼンマイバネ24の付勢力に抗して、リール21が時計回りに回転(右回転R)する。このとき、被案内部36は折り返し部45から連絡路44の後半から外周路41に入る。さらに被案内部36は外周路41を時計回り(右回転R)で移動し、外周路41から渡り路43を経て内周路42に入り、内周路42内を同方向に周回する。
このように、さらに開いた状態で使用者が戸体11から手を離すと、先に説明した(開(図1(B)))と同じ動きをして、戸体11は折り返し部45で停止する。
【0041】
(閉じる動き(図1(D))
最後に図1(B)の状態など戸体11が開いて止まっている状態から戸体11を閉じるには、普通の扉であれば戸体11を左方向へ動かす。ところが、この実施の形態では被案内部36が折り返し部45に位置しており、行き止まりの状態(スイッチバックの構造)となっている。
そのため使用者が戸体11を開く方向(右方向)へ、わずかに動かす必要がある。これによってリール21が時計回りに回転(右回転R)し、被案内部36は折り返し部45から連絡路44の後半から外周路41に入る。この状態で戸体11から手を離すと、ゼンマイバネ24の付勢力によってリール21が反時計回りに回転(左回転L)し、被案内部36が外周路41内を周回し、最終的には図1(A)の状態に戻って戸体11が閉まる。
【0042】
図5(B)の構造)
これに対して、図4図5(B)の構造であれば、普通の扉と同様に戸体11を左方向へ動かすことによって扉を閉めることができる。
図5(B)の案内部33の連絡路44には、先の例の折り返し部45の代わりに、一時停止機構46が設けられている。この一時停止機構46は、連絡路44の中に先端が突き出した遮断部47を備えており、連絡路44の経路を遮って被案内部36の進行を一時的に停止させる。その結果、連絡路44を先の例のようにスイッチバック状にせずとも、一方向に伸ばしておくことができる。
【0043】
したがってゼンマイバネ24の付勢力による回転力でリール21が反時計回りに回転(左回転L)しようとした場合、連絡路44を進む被案内部36は遮断部47によって一時的に停止させられる。この例では、一時停止機構46は金属や合成樹脂製の板バネ体で構成され、ゼンマイバネ24の付勢力を超える力で遮断部47を連絡路44の経路中に突出させている。なお、ゼンマイバネ24の付勢力を超える力は、バネ同士の力を直接比較するものではなく、ゼンマイバネ24の付勢力による回転力で被案内部36が連絡路44中を移動しようとする力に対抗して、その移動を停止させることができる力であれば足りる。
一時停止機構46は金属や合成樹脂製の板バネ体で構成され、ゼンマイバネ24の付勢力を超える力で遮断部47を連絡路44の経路中に突出させている。なお、ゼンマイバネ24の付勢力を超える力は、バネ同士の力を直接比較するものではなく、ゼンマイバネ24の付勢力による回転力で被案内部36が連絡路44中を移動しようとする力に対抗して、その移動を停止させることができる力であれば足りる。
【0044】
この板バネ体による一時停止機構46にあっては、遮断部47の手前(基端側)において減速部49を備えている。減速部49は、連絡路44の経路中に徐々に傾斜してはみ出すことによって、その経路を徐々に狭くするように構成されている。その結果、被案内部36は、遮断部47の出前において、減速部49に当接することによって、板バネ体の弾性力を受けながら移動を続ける。これによって、被案内部36に対して制動力が加わり、徐々に減速して最終的に遮断部47で停止する。被案内部36の進行方向に対する角度は、減速部49よりも遮断部47の方が大きいが、上記の作用が発揮されるものであれば様々な構造を採用することができる。
【0045】
(一時停止機構46採用時の動き)
図1(A)→(B))
先の例と同様に、戸体11が開かれると、ストップレバー32の被案内部36は、時計回りに回転(図5(B)では右回転R)、外周路41から渡り路43を経て内周路42に入り、内周路42内を右回転Rで周回する(図6(A))。
【0046】
図1(B))
戸体11から手が離されリール21に加わる外力がなくなると、ゼンマイバネ24の付勢力によって、リール21が反時計回りに回転(左回転L)する。これにより、被案内部36は内周路42から連絡路44に入り、一時停止機構46に至り、遮断部47によって一時停止する(図6(B))。これにより、リールの回転は停止し、第1長尺体16は所定長さが引き出された状態を維持する。
したがって、戸体11から使用者が手を離すと、戸体11は閉る方向にわずかに動いて停止する。
【0047】
図1(B)→(C))
次に、戸体11が、使用者の手によってさらに開くように動かされると、ゼンマイバネ24の付勢力に抗して、リール21が時計回りに回転(右回転R)する。これによって、被案内部36は、連絡路44の一時停止機構46の手前と、外周路41とを結ぶ枝路48を通って、外周路41に至る。さらに被案内部36は、外周路41から渡り路43を経て内周路42に入り、内周路42内を右回転Rで周回する(図6(C))。
そして、戸体11から手が離されると、上記と同様に、ゼンマイバネ24の付勢力によってリール21が反時計回りに回転(左回転L)する。これにより、被案内部36は内周路42から連絡路44に入り、一時停止機構46に至り、遮断部47によって一時停止する(図6(B))。
【0048】
図1(C)→(D))
最後に戸体11を閉じるには、普通の扉と同様に、戸体11を左方向へ動かせばよい。これによってリール21が反時計回りに回転(左回転L)する。被案内部36は、ゼンマイバネ24の付勢力に加えて使用者の手の力によって、一時停止機構46の遮断部47を、その弾性に抗して後退させる。このように、被案内部36は、遮断部47を押し退けるようにして前進し、連絡路44の後半から外周路41に入る(図6(D))。被案内部36が、一時停止機構46の遮断部47を通過してしまえば、戸体11から手を離しても、ゼンマイバネ24の付勢力によってリール21が反時計回りに回転(左回転L)して、被案内部36が外周路41内を周回するため(図6(E))、自動的に戸体11が最後まで閉まる(図1(A))。
【0049】
(一時停止機構46の変更例など)
一時停止機構46は、金属や合成樹脂製の板バネ体で実施する他、複数の部材で構成しても構わないし、つるまきバネなど他の構造による付勢構造を用いて実施しても構わないし、磁気による抵抗であっても構わない。また、一時停止機構46を用いたリールは、ダブルワイヤー方式によるスライド機構の実施に好適に適用できるが、それ以外の機構や構造に適用しても構わない。
【符号の説明】
【0050】
11 戸体
12 戸枠
13 第1固定部
14 第2固定部
15 リール装置
16 第1長尺体
17 第2長尺体
21 リール
22 ケーシング
23 軸
24 ゼンマイバネ
25 第1引出口
26 第2引出口
27 軸孔
31 ロック機構
32 ストップレバー
34 リール溝
33 案内部
35 取り付け部
36 被案内部
41 外周路
42 内周路
43 渡り路
44 連絡路
45 折り返し部
46 一時停止機構
47 遮断部
48 枝路
49 減速部
図1
図2
図3
図4
図5
図6