(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018600
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】コットニー加工食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 17/60 20160101AFI20230201BHJP
A23L 33/10 20160101ALN20230201BHJP
A23L 27/60 20160101ALN20230201BHJP
【FI】
A23L17/60 Z
A23L33/10
A23L27/60 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122834
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】504198326
【氏名又は名称】山本 允之
(74)【代理人】
【識別番号】100067758
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 綾雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 允之
【テーマコード(参考)】
4B018
4B019
4B047
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE05
4B018LE06
4B018MD07
4B018MD08
4B018MD18
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4B018MD38
4B018MD67
4B018MD85
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4B018ME06
4B018ME08
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4B047LB08
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4B047LP02
4B047LP04
4B047LP05
4B047LP07
4B047LP09
4B047LP14
(57)【要約】
【課題】
柔らかく食べやすい栄養価の高い老人用介護食や飲み物を低コストで提供できるコットニー加工食品を提供する。
【解決手段】
苗の状態から30日~60日間の養殖手入れ期間を経たコットニーの粉末を主原料とし、この粉末状のコットニーと粉末状の各種加工食品と、粉末状の各種栄養成分とを混合させて粉末状のカラギーナンを含む混合物を生成する。この粉末状の混合物に水を加え、水を加えた混合物を煮出し、カラギーナンを含む混合物の煮汁を作成する。この煮汁水溶液にアルギン酸エステル水溶液を混合し、混合物の煮汁をゲル状とするアルギン酸エステル付加工程を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗の状態から30日~60日間の養殖手入れ期間を経たコットニーの粉末を主原料とし、この粉末状のコットニーと粉末状の各種加工食品と、粉末状の各種栄養成分とを混合させて粉末状のカラギーナンを含む混合物を生成する混合工程と、粉末状の混合物に水を加える水戻し工程と、水を加えた混合物を煮出す工程と、カラギーナンを含む混合物の煮汁を貯留する煮汁貯留工程と、煮汁水溶液にアルギン酸エステル水溶液を混合し、混合物の煮汁をゲル状とするアルギン酸エステル付加工程とを備えたことを特徴とするコットニー加工食品製造方法。
【請求項2】
各種の粉末状の栄養成分が、アピゲニン、NMN、酪酸菌の中の少なくとも1つ又は複数であることを特徴とする請求項1に記載のコットニー加工食品製造方法。
【請求項3】
混合物の煮汁水溶液にアルギン酸ナトリウム水溶液を混合し、混合物の煮汁をゲル状とする煮汁ゲル化工程を付加したことを特徴とする請求項1に記載のコットニー加工食品製造方法。
【請求項4】
前記混合物のゲル状の煮汁を押し出し形成する押し出し抽出工程を付加したことを特徴とする請求項3に記載のコットニー加工食品製造方法。
【請求項5】
前記混合物の煮汁より成る栄養食品が刺身のつまや料理に沿えるためのサラダなどの総菜であることを特徴とする請求項1に記載のコットニー加工食品製造方法。
【請求項6】
前記混合物の煮汁より成る栄養食品が料理に添えるための液状ドレッシングや飲み物などの液状の食品であることを特徴とする請求項1に記載のコットニー加工食品製造方法。
【請求項7】
前記混合物の煮汁より成る栄養食品が老人用の介護食であることを特徴とする請求項1に記載のコットニー加工食品製造方法。
【請求項8】
苗の状態から30日~60日間の養殖手入れ期間を経たコットニーの粉末を主原料とし、この粉末状のコットニーと、粉末状の各種加工食品と、粉末状の各種栄養成分を混合させた粉末状の混合物の煮汁にアルギン酸エステルを混合し、混合物の煮汁をゲル状化したことを特徴とするコットニー加工食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海藻コットニーのパウダーを主原料とする、料理用ドレッシングや老人用の介護食として用いられるコットニー加工食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コットニーを原料とする刺身のつまやサラダ等の料理のつまに用いられるコットニー加工食品及びその製造方法が従来知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主たる目的は、柔らかさを所望の状態に設定でき、且つ栄養価の高い、老人用の介護食や、液状の飲料用コットニー加工食品を低コストで容易に提供できるようにすることである。
また本発明の他の目的は、品質にバラツキがなく、しかも高品質なコットニー加工食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、苗の状態から30日~60日間の養殖手入れ期間を経たコットニーの粉末を主原料とし、この粉末状のコットニーと粉末状の各種加工食品と、粉末状の各種栄養成分とを混合させて粉末状のカラギーナンを含む混合物を生成する混合工程と、粉末状の混合物に水を加える水戻し工程と、水を加えた混合物を煮出す工程と、カラギーナンを含む混合物の煮汁を貯留する煮汁貯留工程と、煮汁水溶液にアルギン酸エステル水溶液を混合し、混合物の煮汁をゲル状とするアルギン酸エステル付加工程とを備えたことを特徴とする。
また本発明は、各種の粉末状の栄養成分が、アピゲニン、NMN、酪酸菌の中の少なくとも1つ又は複数であることを特徴とする。
また本発明は、混合物の煮汁水溶液にアルギン酸ナトリウム水溶液を混合し、混合物の煮汁をゲル状とする煮汁ゲル化工程を付加したことを特徴とする。
また本発明は、前記混合物のゲル状の煮汁を押し出し形成する押し出し抽出工程を付加したことを特徴とする。
また本発明は、前記混合物の煮汁より成る栄養食品が刺身のつまや料理に沿えるためのサラダなどの総菜であることを特徴とする。
また本発明は、前記混合物の煮汁より成る栄養食品が料理に添えるための液状ドレッシングや飲み物などの液状の食品であることを特徴とする。
また本発明は、前記混合物の煮汁より成る栄養食品が老人用の介護食であることを特徴とする。
また本発明は、苗の状態から30日~60日間の養殖手入れ期間を経たコットニーの粉末を主原料とし、この粉末状のコットニーと、粉末状の各種加工食品と、粉末状の各種栄養成分を混合させた粉末状の混合物の煮汁にアルギン酸エステルを混合し、混合物の煮汁をゲル状化したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、養殖期間の限定したコットニーを用いることにより、加工食品の品質のバラツキを防止でき、低コストを実現できるとともに、アルギン酸エステルにより、老人用の介護食に適した柔らかいコットニー加工食品を提供することができ、更に飲料用のコットニー加工食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の構成を添付した図面を参照して詳細に説明する。
まず、粉末コットニーの製造工程を
図2を参照して説明する。
本発明は、原藻として、インドネシア産の海藻(紅藻類)「コットニー」(学名:kappaphycus cottonii)を用いている。コットニーは、オオキリンサイ属(kappaphycus)の海藻で、ミネラル、糖質、ビタミン、アミノ酸等の要素の他、陰イオン性高分子化合物であるカラギーナン成分を多く含んでいる。カラギーナンは、弾力のある高分子で二重螺旋構造を作って互いに絡み合っており、これにより常温でゲルを形成することから食品や医薬品、工業製品など多くの分野でゲル化剤、増粘剤、安定剤などに使われている。
【0009】
コットニーは養殖により生産される。コットニーの養殖段階では、苗の手入れが行われる。コットニーは太陽の光合成で成長するという大原則がある。その太陽の光合成を十分に取り入れるためには毎日の苗の手入れが重要となる。太陽の光を十分に当てビニールなどのごみを除去し、掃除をして充分に手入れされたコットニーの苗は、病気になりにくいという特徴とカラギーナンが大量に入るという利点がある。
【0010】
上記養殖期間は、本実施形態では、30日~60日を設定している。この期間外に出荷したコットニーは、上記特徴と利点が得られないということを実験的に確認している。上記養殖期間を経たコットニーの苗は、粗塩を使い乾燥してコットニー乾燥品2とする。乾燥されたコットニーは、水道水の水に付け水戻しする(水戻し工程4)。次に、浮き上がったゴミの除去と、下に落ちた塩や砂等の除去を水道水を取替えて複数回行い(水洗い工程6)、更に水にさらして塩分を除去する(塩分処理工程8)。尚、養殖期間を経たコットニー生製品10を、
図2に示すように、乾燥工程を経ないで直接水洗い工程6に移行させても良い。
【0011】
次に、コットニーを改めてビニールハウス内で過乾燥にならないように充分手を加えて乾燥させる(乾燥工程12)。次にコットニーを機械を用いて粗切断する(粗切断工程14)。次にこの粗切断したコットニーを機械を用いて粗粉砕し(粗粉砕工程16)、更に機械を用いて温度50℃で200ミクロンにパウダー化する(乾燥粉砕工程18)。次に、コットニーの粉末20を、
図4に示すように、所定量包装用ビニール袋22に詰め(袋詰め工程24)、パウダー製品として保管しておく。
以上の工程において、コットニーは、海藻の本来の色の変化はなく、また栄養分も飛ぶことはない。
【0012】
次に、地方の名産品や各種の食品を粉末化する工程について、
図3を参照して詳細に説明する。
まず、地方名産品などの各種食品の中の1つを選び、その乾燥品26を水戻しする(水戻し工程28)。次に水戻しした食品を水洗いし(水洗い工程30)、さらに水にさらして塩分を除去する(塩分処理工程32)。次に各種食品を機械を用いて粗切断する(粗切断工程34)。次にこの粗切断した食品を機械を用いて粗粉砕し(粗粉砕工程36)、更に機械を用いて、温度50℃で乾燥粉砕を行う(乾燥粉砕工程38)。
【0013】
次に、出来上がった食品粉末の残さ処理を行う(残さ処理工程40)。残さ処理の終わった食品の粉末46(パウダー)は、
図4Bに示すように、所定量、包装用のビニール袋48に詰め(袋詰め工程42)、パウダー製品として保管しておく。尚、各種食品の粉末化は、地方名産品の乾燥品からでなくても良く、生の食品44を水洗いし(水洗い工程30)、塩分処理(塩分処理工程32)を行った後、機械で粗切断(粗切断工程34)、粗粉砕(粗粉砕工程36)、乾燥粉砕(乾燥粉砕工程38)、食品粉末の残さ処理(残さ処理工程40)を行って、各種食品の粉末製品とすることもできる。
尚、選択した各種食品によっては、上記塩分処理が不要なものがあり、その場合には、上記塩分処理工程32は省略する。
【0014】
次に、
図1を参照してコットニー加工食品の製造工程について説明する。
まず、選択した各種食品のパウダー46と、コットニーのパウダー20と、アピゲニンパウダー54と、NMNパウダー56と、酪酸菌パウダー58とをそれぞれ所定の分量、所定の割合で混合する(混合工程60)。ここでNMNとはニコチンアミドモノヌクレオチドを省略した成分のことであり、抗老化や長寿の鍵を握る成分として医学会の注目を集めている成分のことである。アピゲニンは、グァバ、セロリ、パセリ等多くの植物に含まれるフラボノイドであり、天然に生成する多くの配糖体のマグリコンである。アピゲニンは、網膜保護に有用な成分であり、近年抗酸化作用や抗がん作用など、様々な作用のある成分として注目を集めている。酪酸菌は酪酸を産生する細菌をいう。長寿や免疫との関連、最近では新型コロナとの関連が注目され、プロバイオディスク及びプレバイオディスクのターゲットとして注目されている。酪酸菌優位な腸内環境はバイエル板での調節性T細胞の分化を促進し、全身の免疫機能を調節する。また、健康長寿の老人は酪酸菌が優位であるという報告もある。
【0015】
次に、所定量の混合パウダーの水戻しを行う(水戻し工程62)。混合乾燥粉末を水で戻すに際しては、例えば乾燥混合粉末の容積に対しおよそ4倍の水を使用する。すなわち4リットルの乾燥パウダーから約20リットルの液状の混合物が完成する。しかる後に水戻しを行った混合パウダーを煮出し容器に入れ、85度の熱で加熱し煮出しを行う(煮出し工程64)。煮汁は容器に貯留する(煮出し貯留工程66)。
【0016】
次に、アルギン酸Na(ナトリウム)水溶液(糊料)を混合し、煮汁を混合ゲル液とする(煮汁ゲル化工程68)。次にゲル状の混合物にアルギン酸エステルの水溶液を付加する(アルギン酸エステル付加工程70)。次に押し出し成形用の食品加工機を用いて混合ゲル液を麺状に押し出し、混合物を抽出する(押し出し抽出工程70)。水溶性のアルギン酸ナトリウムの場合、PHが低かったりCaイオン濃度が高かったりする条件下では、それぞれ不溶性のアルギン酸やアルギン酸カルシウムに置換してしまうため溶けなくなってしまう。一方、食品の中には果汁や飲料やドレッシング、発酵食品のようにPHが低いものや乳製品のようにCaを豊富に含むものがある。
【0017】
こうした食品を増粘させたり、安定させたりするとき、アルギン酸ナトリウムではうまく使うことはできない。このようなアルギン酸ナトリウムでは苦手とする分野をカバーするものが、アルギン酸エステルである。アルギン酸エステルは、水に溶解した時点で酸性の溶液となるので、酸性の食品中でも溶解し、増粘、安定効果を出すことができる。
上記アルギン酸エステル付加工程72においてゲル状の混合物の粘性を調整し、混合物(製品)を老人用の柔らかいゲル状の介護食品や、ドレッシングなどのゲル粘性の低い液状の食品とする。次に製品をオゾン化により殺菌する(オゾン殺菌工程74)。尚、本製品の殺菌は、オゾン殺菌以外に、アルコール殺菌、または次亜塩素酸水による殺菌でもよい。
【0018】
次に、製品の水切りを行い(水切り工程76)、製品の風味・目視検査を行う(風味・目視検査工程78)。次に製品の金属検査を行い(金属検査工程80)、且つ計量袋詰めの作業うを行う(計量・袋詰め工程82)。次に、製品の外箱詰めを行い(外箱詰め工程84)、外箱に入れた製品を冷蔵庫に保管し(冷蔵庫保管工程86)、本製品の全製造工程が完了する。
上記実施形態では、養殖期間30日~60日のコットニーを用いるので、カラギーナンの豊富なコットニーの粉末を生産でき、この粉末を用いた煮汁の歩止まりが向上し、製品の製造コストを大きく下げることができることが確認されている。尚、
図1の実施形態では、煮汁ゲル化工程で、アルギン酸ナトリウムの水溶液を用いているが、これは使用しなくてもよい。この場合、アルギン酸エステル付加工程72でアルギン酸エステルが付加されたゲル状の混合物をドレッシングなどのゲル化食品として使用する。このゲル化食品を麺状の製品とする場合には、抽し出し抽出工程72で麺状に成形する。麺状とせず、飲料として使用する場合には、アルギン酸エステル付加工程70で混合物を液状に調整し、液状のままドレッシングなどに使用する。
【符号の説明】
【0019】
2 コットニー乾燥品
4 水戻し工程
6 水洗い工程
8 塩分処理工程
10 コットニー生製品
12 乾燥工程
14 粗切断工程
16 粗粉砕工程
18 乾燥粉砕工程
20 コットニーの粉末
22 ビニール袋
24 袋詰め工程
26 乾燥品
28 水戻し工程
30 水洗い工程
32 塩分処理工程
34 粗切断工程
36 粗粉砕工程
38 乾燥粉砕工程
40 残さ処理工程
42 袋詰め工程
44 各種食品生製品
46 食品の粉末
48 ビニール袋
54 アピゲニンパウダー
56 NMNパウダー
58 酪酸菌パウダー
60 混合工程
62 水戻し工程
64 煮出し工程
66 煮汁貯留工程
68 煮汁ゲル化工程
70 押し出し抽出工程
72 アルギン酸エステル付加工程
74 オゾン殺菌工程
76 水切り工程
78 風味・目視工程
80 金属検査工程
82 計量ケース詰め工程
84 外箱詰め工程
86 冷蔵庫保管工程