(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018642
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】建材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/42 20060101AFI20230201BHJP
B32B 27/04 20060101ALI20230201BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230201BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230201BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20230201BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
B32B27/42 101
B32B27/04 A
C09D201/00
C09D7/63
C08L101/00
C08K5/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092317
(22)【出願日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2021122124
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】松原 亮平
(72)【発明者】
【氏名】山本 孝子
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 準
(72)【発明者】
【氏名】内藤 昌信
(72)【発明者】
【氏名】藤田 健弘
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AG00
4F100AG00B
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK33
4F100AK33A
4F100AT00
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100CA07
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4F100EH46
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4F100GB07
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4F100JN01A
4J002AA001
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4J002EJ016
4J002EU177
4J002FD057
4J002FD206
4J002GL00
4J038BA222
4J038KA12
4J038NA27
(57)【要約】
【課題】抗菌、抗ウイルス機能が付与されているかを容易に確認することが可能な建材を得る。
【解決手段】建材は、基材と、基材上に設けられ、発光性官能基により置換されたポリフェノール誘導体を含む表面保護層と、を備えている。
発光性官能基により置換されたポリフェノール誘導体は、ポリフェノール類の水酸基の一部における水素原子又は芳香族環の水素原子の一部が発光性官能基により置換されたポリフェノール誘導体であることが好ましい。表面保護層は、例えばポリフェノール誘導体と樹脂材料とを含んでおり、表面保護層においては、樹脂材料100質量部に対して、発光性官能基により置換されたポリフェノール誘導体が0.01質量部以上50質量部以下含まれていることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に設けられ、発光性官能基により置換されたポリフェノール誘導体を含む表面保護層と、
を備える建材。
【請求項2】
前記発光性官能基により置換された前記ポリフェノール誘導体は、ポリフェノール類の水酸基の一部における水素原子又は芳香族環の水素原子の一部が発光性官能基により置換されたポリフェノール誘導体である
請求項1に記載の建材。
【請求項3】
前記表面保護層は、前記ポリフェノール誘導体と、樹脂材料とを含む
請求項2に記載の建材。
【請求項4】
前記表面保護層は、前記樹脂材料100質量部に対して、前記発光性官能基により置換された前記ポリフェノール誘導体が0.01質量部以上50質量部以下含まれている
請求項3に記載の建材。
【請求項5】
前記表面保護層は、紫外線吸収剤を含む
請求項3に記載の建材。
【請求項6】
前記紫外線吸収剤は、前記樹脂材料100質量部に対して0.01質量部以上4質量部未満含まれている
請求項5に記載の建材。
【請求項7】
前記表面保護層は、
樹脂材料により形成された樹脂層と、
前記樹脂層上に設けられ、前記ポリフェノール誘導体を含む表面層と、
を有する請求項2に記載の建材。
【請求項8】
前記発光性官能基の数が、1以上前記水酸基の水素原子数と前記芳香族環の水素原子数との合計より1少ない数以下となるように、前記水酸基又は前記芳香族環の水素原子が前記発光性官能基により置換されている
請求項2に記載の建材。
【請求項9】
前記発光性官能基は、ピレン系、アントラセン系、フェナントレン系、ベンゾオキサゾール系、フラボン系、カルバゾール系及びクマリン系からなる群から選ばれる少なくとも一種の発光性官能基である
請求項2に記載の建材。
【請求項10】
前記ピレン系の前記発光性官能基は、4-(1-ピレン)-酪酸骨格、1-酪酸ピレン骨格、又は1-(メチル)ピレン骨格からなる群から選ばれる少なくとも一種の骨格を有する発光性官能基である
請求項9に記載の建材。
【請求項11】
前記ポリフェノール類の前記水酸基及び前記芳香族環の水素原子の一部が、鎖状炭化水素基により置換されている
請求項2に記載の建材。
【請求項12】
前記鎖状炭化水素基は、アルキル基である
請求項11に記載の建材。
【請求項13】
前記鎖状炭化水素基は、炭素数が1以上18以下である
請求項11に記載の建材。
【請求項14】
前記発光性官能基の数と前記鎖状炭化水素基の数との合計が、前記水酸基の水素原子数と前記芳香族環の水素原子数との合計より1少ない数以下となるように、前記水酸基又は前記芳香族環の水素原子が前記鎖状炭化水素基により置換されている
請求項11に記載の建材。
【請求項15】
前記ポリフェノール類は、タンニン酸であり、
前記ポリフェノール誘導体は、タンニン酸誘導体である
請求項2に記載の建材。
【請求項16】
前記ポリフェノール誘導体は、ネットワークポリマー化されている
請求項1に記載の建材。
【請求項17】
前記表面保護層は、最表面に配置されている
請求項1に記載の建材。
【請求項18】
前記基材と前記表面保護層との間に設けられた着色絵柄層を備え、
前記表面保護層は、透明材料で形成されている
請求項1に記載の建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗菌・抗ウイルス機能を有する建材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抵抗力の弱い高齢者の人口増加、不特定多数のユーザが利用するいわゆる民泊サービスやカーシェアリングサービスの増加による、公共空間、住空間の抗菌や抗ウイルスへのニーズが高まっている。また、労働人口の減少による保守・清掃業務用の作業負荷軽減等も求められている。
【0003】
このようなニーズに対応するために、建築分野では抗菌、抗ウイルス機能を有する材料を用いて建材の表面に抗菌、抗ウイルス機能を付与することが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の抗菌・抗ウイルス剤を用いて建材を製造したとしても、実際に抗菌、抗ウイルス機能が付与されているかを確認することは困難であった。また、従来の抗菌、抗ウイルス建材は、製造の際に抗菌性を保証するための煩雑な抗菌評価試験が必要である。また、施工後に建材の抗菌、抗ウイルス性が保たれているかの確認方法がなく、補修時期が分からないという問題があった。
【0006】
そこで、本開示は、抗菌、抗ウイルス機能が付与されているかを容易に確認することが可能な建材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本開示の一態様に係る建材は、基材と、基材上に設けられ、発光性官能基により置換されたポリフェノール誘導体を含む表面保護層と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、抗菌、抗ウイルス機能が付与されているかを容易に確認することが可能な建材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態に係る建材の一構成例を示す断面図である。
【
図2】第二実施形態に係る建材の一構成例を示す断面図である。
【
図3】第三実施形態に係る建材の一構成例を示す断面図である。
【
図4A】第四実施形態に係る建材の構成の第1の例を示す断面図である。
【
図4B】第四実施形態に係る建材の構成の第2の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本開示は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば各実施形態を組み合わせる等)して実施することができる。
【0011】
1.第一実施形態
以下、第一実施形態に係る建材について説明する。本実施形態で説明する建材は、後述するポリフェノール誘導体や塗料により、抗菌・抗ウイルス機能が付与されている。
【0012】
以下、本実施形態に係る建材について、
図1を参照して説明する。
図1は、建材の第1の例である建材1の断面構成を示す断面図である。建材1は、例えば化粧シート及び化粧板や、木質又は金属板材等であってもよい。
【0013】
(1.1)建材の構成
図1を参照して、建材1について説明する。
図1に示すように、建材1は、基材11と、ポリフェノール誘導体を含むことにより抗菌・抗ウイルス機能が付与された表面保護層12とを備えている。表面保護層12は、建材1が抗菌・抗ウイルス機能を発揮するために、建材1の最表面に配置されていることが好ましい。
以下、建材1を構成する各部について詳細に説明する。
【0014】
<基材>
基材11は、建材1の基材となる層である。基材11は、例えば樹脂材料、金属、木、紙又はこれらが積層して構成されている。
基材11が紙で形成される場合、基材11は、例えば薄葉紙、酸化チタン等の不透明顔料を混抄したチタン紙、樹脂含浸紙等の紙質系基材で形成されることが好ましい。
基材11が木で形成される場合、基材11は、例えば木質基板、中密度繊維板(MDF:Medium Density Fiberboard)、パーティクルボード等であることが好ましい。
基材11が金属で形成される場合、基材11は、例えば板状又は箔状のアルミニウム、鉄、金、ステンレス等の金属系基材で形成されることが好ましい。
【0015】
基材11が樹脂材料で形成される場合、基材11は、例えばポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、エチレン-ビニルアセテート(EVA)樹脂等のポリオレフィン樹脂等の樹脂系基材で形成されることが好ましく、ポリプロピレン(PP)樹脂により形成されることがより好ましい。ポリオレフィン樹脂は、高耐候性、高耐水性を有し、強度に優れ、また、印刷や接着等を行いやすいためである。
【0016】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-ビニルアセテート等の他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等を)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等のように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。
【0017】
また、基材11は、一軸延伸シートまたは二軸延伸シートからなることが好ましい。一軸延伸加工または二軸延伸加工を施した一軸延伸シートまたは二軸延伸シートとすることにより、より一層フィルムとしての機械的強度及び表面平滑性が共に優れた基材11とすることができる。フィルム表面の平滑性に優れると、絵柄印刷を施す際のインキの着肉性が良好な印刷適性に優れた基材11とすることができる。
【0018】
基材11は、特に限定されないが、例えば平板状(特にシート状)とすることが好ましい。
基材11の厚さは、建材1の基材として求められる強度、剛性、耐衝撃性、耐熱性、耐寒性、加工性等に優れ、加工が容易であれば特に限定されないが、例えば50μm以上200μm以下であることが好ましく、50μm以上150μm以下であることがより好ましい。厚さが50μm以上である場合、建材1の基材として求められる強度、剛性、耐衝撃性、耐熱性、耐寒性が良好となる。また、厚さが200μm以下である場合、例えば切削性や曲げ性等の建材1の加工性が向上する。
【0019】
<表面保護層>
表面保護層12は、基材11の表面を保護する単層又は複数層で構成された層である。表面保護層12は、基材11上に設けられており、基材11の色、柄及び質感等を建材1の色、柄及び質感とする場合には透明な材料で形成される。表面保護層12は、例えば、ポリフェノール誘導体又はポリフェノール誘導体を含む塗料が含有されて抗菌・抗ウイルス機能が付与された層である。表面保護層12は、例えばポリフェノール誘導体又はポリフェノール誘導体を含む塗料で形成された膜(以下、抗菌・抗ウイルス膜という)であってもよい。また、表面保護層12は、例えばポリフェノール誘導体又はポリフェノール誘導体を含む塗料が混合された樹脂材料により形成されていてもよい。
【0020】
表面保護層12が抗菌・抗ウイルス膜である場合、表面保護層12は、例えば皮膜形成性を備える塗料が基材11上に溶液等の形態で塗布等され、その後溶剤が除去されることで、基材11上に形成される。
表面保護層12がポリフェノール誘導体又は塗料が混合された樹脂材料により形成されている場合、表面保護層12は、ポリフェノール誘導体又は塗料が混錬された溶融樹脂材料が基材11上に塗布等され、その後硬化されることで基材11上に形成される。
【0021】
(樹脂材料)
表面保護層12を構成する樹脂材料としては、電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂又は熱可塑性樹脂等の一般的に建材に用いられる樹脂材料及びそれらの混合物が用いられる。電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂は、それぞれ電離放射線の照射、熱硬化、冷却によって硬化される。
電離放射線硬化型樹脂としては、例えば紫外線硬化型樹脂を用いることができる。紫外線硬化型樹脂としては、例えば(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂を使用できる。紫外線硬化型樹脂は、例えば水系樹脂又は非水系(有機溶剤系)樹脂の何れであっても良い。
【0022】
熱硬化型樹脂としては、例えばポリオールとイソシアネートからなるウレタン系熱硬化型樹脂が用いられる。
熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン及びポリエステル樹脂が用いられる。
【0023】
表面保護層12は、無機粒子を含んでいてもよい。無機粒子としては、例えばシリカ、ガラス、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機材料により形成された微粒子が挙げられる。表面保護層12における無機粒子の添加量は、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して0質量%超20質量%以下、好ましくは0質量%超1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%超0.5質量%以下の範囲内であることが好ましい。表面保護層12は、上述した添加量の無機粒子を含有することにより、耐摩耗性、耐傷性が向上するため好ましい。
【0024】
表面保護層12には、必要に応じて、例えば、着色剤、マット剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤及び光散乱剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上が添加されていてもよい。特に、表面保護層12に紫外線吸収剤が含まれている場合、紫外線による建材1の劣化を抑制できる為好ましい。
表面保護層12に紫外線吸収剤が含まれる場合、紫外線吸収剤は、発光性官能基で置換されたポリフェノール誘導体100質量部に対して0.001質量部以上4質量部以下含まれていることが好ましく、0.01質量部以上4質量部未満含まれていることが好ましい。この範囲で紫外線吸収剤が含まれている場合、紫外線吸収剤による建材1の劣化抑制効果を保ちつつ、ポリフェノール誘導体の発光性官能基による発光が視認性を維持することができるとともに、紫外線吸収剤によるポリフェノール誘導体からの発光が抑制されないようにすることができるため好ましい。
【0025】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はトリアジン系紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体が挙げられる。
【0026】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-〔4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル〕-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-〔4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル〕-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソ-オクチルオキシフェニル)-s-トリアジンなどやこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体等が挙げられる。
【0027】
表面保護層12の厚さは、2μm以上20μm以下の範囲とすることが好ましく、5μm以上15μm以下であることがより好ましい。表面保護層12の厚さを上述の範囲内とすることにより、基材11を保護することができる。表面保護層12の厚さが5μm以上である場合、表面保護層として必要な耐摩耗性等の機能を十分に有することができる。また、表面保護層12の厚さが15μm以下である場合、表面保護層12が不要に厚くなりすぎず、製造コストが増加しすぎないという効果を有する。
【0028】
(ポリフェノール誘導体及び塗料)
表面保護層12に含まれるポリフェノール誘導体及びポリフェノール誘導体を含む塗料について説明する。
ポリフェノール誘導体は、抗菌・抗ウイルス性能を有する組成物である。ポリフェノール誘導体は、ポリフェノール類の水酸基の一部における水素原子又は芳香族環の水素原子の一部が発光性官能基により置換されている。これにより、ポリフェノール誘導体は、ポリフェノール類と結合した発光性官能基による発光性能を有する。すなわち、ポリフェノール誘導体は、抗菌・抗ウイルス性能を有するポリフェノール類が存在する場合には、ポリフェノール類と結合した発光性官能基によって発光する。このため、建材の表面において、抗菌・抗ウイルス剤として機能するポリフェノール誘導体が存在することにより抗菌・抗ウイルス性能を発揮できる領域では、例えば紫外線の照射によってポリフェノール誘導体が可視光を発光し、ポリフェノール誘導体の抗菌・抗ウイルス効果を視認することが可能となる。
【0029】
表面保護層12は、発光性官能基により置換されたポリフェノール誘導体が多く含まれるほど抗菌・抗ウイルス効果及び発光の視認性が向上するが、樹脂材料100質量部に対して、0.01質量部以上50質量部以下含まれていることが好ましく、10質量部以上50質量部以下含まれていることがより好ましい。発光性官能基により置換されたポリフェノール誘導体がこの範囲で含まれていることにより、表面保護層12の強度を保ちつつ抗菌・抗ウイルス効果をより発揮するとともに、発光が視認しやすくなる。
ここで、「抗菌・抗ウイルス性能」とは、細菌又は真菌等の菌やウイルス等の微生物を殺菌・殺ウイルス(微生物を殺す)、静菌・静ウイルス(微生物の繁殖を抑える)、滅菌・滅ウイルス、消毒、制菌・制ウイルス、除菌・除ウイルス、防腐、防カビ等の少なくとも一つの性能を有することをいう。
【0030】
ポリフェノール誘導体を構成するポリフェノール類としては、タンニン酸、リグニン、カテキン、クロロゲン酸等が挙げられる。なかでも、ポリフェノール類は、タンニン酸であることが好ましい。すなわち、ポリフェノール誘導体は、タンニン酸の水酸基の一部における水素原子又は芳香族環の水素原子の一部が発光性官能基により置換されたタンニン酸誘導体であることが好ましい。
【0031】
タンニン酸は、加水分解で多価フェノールを生じる植物成分の総称である。ポリフェノール誘導体に用いられるタンニン酸としては、没食子酸やエラグ酸がグルコースなどの糖にエステル結合し、酸や酵素で加水分解されやすい加水分解型タンニン酸と、フラバノール骨格を持つ化合物が重合した縮合型タンニン酸とのいずれも用いることができる。これらのタンニン酸は、単体で用いられても良く、混合物として用いられても良い。なかでも、加水分解型タンニン酸が用いられることが好ましく、例えば以下の化学式(1)で表されるタンニン酸を主成分とするものが誘導体化されることが好ましい。
【0032】
【0033】
化学式(1)に示すように、タンニン酸等のポリフェノール類は末端に複数の水酸基を有している。上述したように、ポリフェノール誘導体は、ポリフェノール類の水酸基の一部における水素原子又は芳香族環の水素原子の一部が後述する発光性官能基により置換されている。例えば、ポリフェノール誘導体の一例であるタンニン酸誘導体は、タンニン酸の水酸基の一部における水素原子又は芳香族環の水素原子の一部が後述する発光性官能基により置換されている。これにより、ポリフェノール類が存在する場合には、ポリフェノール類と結合した発光性官能基によって発光し、ポリフェノール類によって生じる抗菌・抗ウイルス効果を視認することが可能となる。ここで、「視認」とは、人の目で直接(すなわち目視にて)可視光を確認すること及び可視外光を可視外光検出装置等を用いて検出し、当該装置の表示部に表示された情報を目視にて確認することをいう。
【0034】
ポリフェノール誘導体においては、ポリフェノール類の水酸基の水素原子及び芳香族環の水素原子のどちらが発光性官能基によって置換されていても良い。水酸基の水素原子を置換する際は、ポリフェノール類の水酸基数がn個である場合に、ポリフェノール類における水酸基数の1個以上n-1個以下が発光性官能基で置換されていることが好ましく、水酸基の1個のみが発光性官能基で置換されていることがより好ましい。芳香族環の水素原子を置換する際は、芳香族環の水素原子数がm個である場合に、ポリフェノール類における芳香族環の水素原子の1個以上m個以下が発光性官能基で置換されていることが好ましく、芳香族環の水素原子の1個のみが発光性官能基で置換されていることがより好ましい。
【0035】
したがって、ポリフェノール誘導体では、発光性官能基の数xが1以上かつポリフェノール類における水酸基の水素原子数nと芳香族環の水素原子数mとの合計より1少ない数以下、より好ましくは1個となるように、ポリフェノール類における水酸基又は芳香族環の水素原子が発光性官能基で置換されていることが好ましい。すなわち、ポリフェノール誘導体は、以下の式(1)を満たすように発光性官能基で置換されていることが好ましい。
1≦発光性官能基の数x≦水酸基の数n-1+芳香族環の水素原子の数m ・・・(1)
(式中、x、n、mは正の整数である。)
【0036】
これにより、ポリフェノール類によって生じる抗菌・抗ウイルス効果を視認することが可能となる。また、発光性官能基は1つでも修飾されていれば発光機能を有するため、水酸基又は芳香族環の水素のいずれか1個が発光性官能基で置換される場合、ポリフェノール類の抗菌・抗ウイルス効果を最大限まで発揮させつつ、発光性を得られるため好ましい。
【0037】
例えば、タンニン酸における水酸基の水素原子の総数および芳香族環の水素原子の総数は、使用するタンニン酸の種類に応じて異なるが、例えば、上述の化学式(1)の場合、水酸基の数(水素原子の総数)は25個、芳香族環の水素原子の総数は20個である。化学式(1)で示すタンニン酸においては、発光性官能基の数xは1個以上44個以下であることが好ましく、1個の水素原子が発光性官能基で置換されていることがより好ましい。
【0038】
このように、ポリフェノール類における水酸基及び芳香族環の水素原子数の1個以上(n-1)+m個以下が発光性官能基で置換されることにより、ポリフェノール類によって生じる抗菌・抗ウイルス効果を視認することが可能となる。
【0039】
また、ポリフェノール誘導体は、ポリフェノール類の水酸基及び芳香族環の水素原子の一部、すなわちポリフェノール類の水酸基及び芳香族環の水素原子の少なくとも1個が後述する鎖状炭化水素基により置換されていても良い。ポリフェノール類の水酸基及び芳香族環の水素原子の一部が後述する鎖状炭化水素基により置換されたポリフェノール誘導体は、有機溶剤との親和性が向上する。このため、用途によっては、ポリフェノール類の水酸基及び芳香族環の水素原子の一部が後述する鎖状炭化水素基により置換されることが好ましい。
【0040】
ポリフェノール誘導体では、ポリフェノール類の水酸基の水素原子数がn個であり、ポリフェノール類における芳香族環の水素原子数がm個である場合に、発光性官能基の数(x個)と鎖状炭化水素基の数(y個)との合計(x+y個)が、ポリフェノール類の水酸基の水素原子数(n個)と芳香族環の水素原子数(m個)との合計(n+m個)より1小さい数以下となるように、ポリフェノール類における水酸基又は芳香族環の水素原子が鎖状炭化水素基で置換されていることが好ましい。すなわち、ポリフェノール誘導体は、以下の式(2)を満たすように鎖状炭化水素基で置換されていることが好ましい。
発光性官能基の数x+鎖状炭化水素基の数y≦水酸基の数n-1+芳香族環の水素原子の数m ・・・(2)
(式中、x、y、n、mは正の整数である)
化学式(1)で示すタンニン酸においては、水酸基の数(水素原子の総数)は25個であり、芳香族環の水素原子の総数は20個である。このため、化学式(1)で示すタンニン酸においては、発光性官能基の数が1個である場合、1個以上43個以下の水酸基の水素原子及び芳香族環の水素原子が鎖状炭化水素基で置換されていることが好ましい。
【0041】
また、鎖状炭化水素基で置換された水酸基の水素原子数及び芳香族環の水素原子数が多くなる程有機溶剤との親和性が向上する。しかしながら、発光性官能基で置換された水酸基の水素原子及び芳香族環の水素原子数が減少して発光性能が低下するため、所望の発光性能やポリフェノール誘導体の塗布面の材料に応じて好ましい置換数を決定することが好ましい。例えば、金属、ガラス等の極性基材に対して抗菌・抗ウイルス機能を有するポリフェノール誘導体を塗布する場合には、水酸基の水素原子数及び芳香族環の水素原子数の合計の80%以下が置換されていることが好ましく、60%以下が置換されていることがより好ましい。例えば、上述の化学式(1)で示すタンニン酸の場合、36個以下の水酸基の水素原子及び芳香族環の水素原子が鎖状炭化水素基で置換されていることが好ましく、27個以下の水酸基の水素原子及び芳香族環の水素原子が鎖状炭化水素基で置換されていることがより好ましい。
【0042】
また、ポリフェノール誘導体では、ポリフェノール類の水酸基の水素原子又は芳香族環の水素原子のどちらか一方が発光性官能基により置換されていることが好ましいが、水酸基の水素原子及び芳香族環の水素原子の双方が発光性官能基により置換されていてもよい。
【0043】
上述したようなポリフェノール誘導体の構造は、例えば核磁気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)装置等によって得たNMRスペクトルに基づいて特定することができる。
【0044】
発光性官能基としては、何らかの手段によって光を発光し、抗菌・抗ウイルス性能を有するポリフェノール類の存在を視認可能であればいずれも用いることができる。
発光性官能基による発光は、例えばフォトルミネセンス等のルミネセンスによる発光であっても良く、特に、フォトルミネセンスにより発光する発光性官能基である場合、抗菌・抗ウイルス性能を容易に確認できるため好ましい。
また、発光性官能基によって発光される光としては、可視光であっても良く、可視外光であっても良いが、可視光である場合には、抗菌・抗ウイルス性能をさらに容易に確認できるため好ましい。
【0045】
ポリフェノール誘導体を発光させるための手段としては、発光性官能基に応じて適宜選択されればよく、ポリフェノール誘導体がフォトルミネセンス材料である場合には、例えば紫外線等の所定波長の光を照射すればよい。また、ポリフェノール誘導体がケミカルルミネセンス材料である場合、ポリフェノール誘導体を発光させるための手段としては、所定の液体を塗布したり、気体を吹き付けても良い。
また、ポリフェノール誘導体が可視外光を発光する場合、ポリフェノール誘導体の発光を確認するための手段としては、可視外光検出装置を用いて確認することができる。
【0046】
上述したように、発光性官能基としては、フォトルミネセンスにより可視光を発光することが可能な官能基を用いることが好ましい。より具体的には、例えば200nm以上400nm以下、好ましくは300nm以上380nmの波長域の紫外光で蛍光を発する発光性官能基が好ましく、特に取り扱いが容易なブラックライト(波長365nm)の光で蛍光を発する発光性官能基が好ましい。
このような発光性官能基としては、例えばピレン系、アントラセン系、フェナントレン系、ベンゾオキサゾール系、フラボン系、カルバゾール系及びクマリン系等の発光性官能基が挙げられる。
なかでも、ピレン系の発光性官能基としては、例えば4-(1-ピレン)-酪酸骨格、1-酪酸ピレン骨格、又は1-(メチル)ピレン骨格からなる群から選ばれる少なくとも一種の骨格を有する発光性官能基であることが好ましい。これらの骨格を有する発光性官能基は、例えば以下の化学式(2)で示す4-(1-ピレン)-酪酸クロリド、化学式(3)で示す1-酪酸ピレン又は化学式(4)で示す1-(ブロモメチル)ピレンに由来する官能基である。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
(鎖状炭化水素基)
鎖状炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられ、なかでもアルキル基であることが好ましい。これら鎖状炭化水素基は、水酸基由来の酸素原子を含む結合を介して、ポリフェノール類骨格に結合される。酸素原子を含む結合としては、例えばエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合が挙げられる。なお、鎖状炭化水素基以外の官能基の場合であっても、有機溶剤への親和性が高く、ポリフェノール誘導体塗布面における皮膜形成能を有していればポリフェノール類に対して化学修飾することができる。
【0051】
また、鎖状炭化水素基は、炭素数が1以上18以下であることが好ましく、4以上18以下であることがより好ましく、6以上16以下であることがさらに好ましい。炭素数1以上18以下の鎖状炭化水素基としては、具体例に、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、プロピレン基、ヘキシレン基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。
【0052】
ポリフェノール誘導体を含む塗料は、例えば溶液もしくはペーストの形態であり、塗料には少なくとも一種の溶剤が含まれる。溶剤としては、ポリフェノール誘導体を溶解することができればよく、無機溶剤又は有機溶剤が用いられる。
【0053】
有機溶剤としては、例えばプロピレンアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤が挙げられる。
【0054】
塗料がクリーム、乳液等のエマルジョンの形態である場合、塗料は水もしくはアルコール類など水と相溶性を有する有機溶媒との混合溶媒を含む。エマルジョンの形態は限定されず、水中油滴型(o/w)、油中水滴型(w/o)エマルジョン、さらにはw/o/w型のいずれであってもよい。
エマルジョンの調整方法としては、ポリフェノール誘導体を水中に直接分散させてもよく、ポリフェノール誘導体の有機溶媒溶液を分散させてもよい。また、水と相溶性を有する有機溶媒との混合溶媒中でエマルジョンを作成した後、有機溶媒のみを揮発させることで得られる水分散体でもよい。
【0055】
塗料は、例えばスプレーノズル付きの容器に収容され、スプレーノズルを介して建材に微粒子状(霧又はミスト等のエアロゾル状)に噴出、すなわち、スプレーとして使用されても良い。この場合、塗料は、噴射操作によって、噴射を終える度に外部から容器内に導入された空気によって加圧されて噴出されてもよく、噴射剤として作用する液化ガスもしくは圧縮ガスを予め容器内に含み、噴射剤によって噴出されてもよい。液化ガスとしては液化石油ガス、ジメチルエーテル等が、圧縮ガスとしては二酸化炭素、窒素が挙げられる。また、二酸化炭素は臨界点を超えた超臨界流体であってもよく、工業的殺菌プロセス等において使用してもよい。
【0056】
塗料は、目的に応じた濃度となる量のポリフェノール誘導体と上述した各成分を定法に従い混合することによって調製することができる。ポリフェノール誘導体の濃度は、用途、塗布法に応じて種々調整すればよい。また、塗料には、例えば界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、pH調節剤、架橋剤、フィラー等の慣用の添加剤を、本開示の目的を阻害しない範囲で配合してよい。
【0057】
表面にポリフェノール誘導体を含む被膜を形成する場合、皮膜の形成法は任意の方法であってよく、バーコータ法、スピンコーティング法、ディッピング法、スプレー法や、グラビア印刷、オフセット印刷などの各種印刷法などが挙げられる。皮膜の膜厚も限定されず、用途に応じて調整することが好ましい。
【0058】
(1.2)ポリフェノール誘導体及び塗料の製造方法
以下、ポリフェノール誘導体及び塗料の製造方法について説明する。
【0059】
<ポリフェノール誘導体の製造方法>
ポリフェノール誘導体は、ポリフェノール類に発光性官能基を化学修飾する工程を経て製造される。また、ポリフェノール誘導体は、さらにポリフェノール類に鎖状炭化水素基を化学修飾する工程とを経て製造されてもよい。ポリフェノール類に発光性官能基を化学修飾する工程と、ポリフェノール類に鎖状炭化水素基を化学修飾する工程とは、いずれの工程が先でも良く、同時に行われても良い。
【0060】
ポリフェノール類に発光性官能基を化学修飾する工程では、例えばエステル化反応が用いられる。具体的には、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド等の溶媒中で、酸性触媒の存在下で、ポリフェノール類にカルボキシル基を有する発光性化合物を反応させることで、ポリフェノール類に発光性官能基を化学修飾することができる。
カルボキシル基を有する発光性化合物としては、1-ピレンカルボン酸、9-アントラセンカルボン酸、9-フェナントレンカルボン酸等を用いることができる。
また、酸性触媒としては濃硫酸、リン酸、トルエンスルホン酸などのH+を供給する触媒を用いることができる。
エステル化反応は、20℃以上50℃以下の環境下で、約24時間程度反応させることが好ましい。ポリフェノール類に対するカルボキシル基を有する発光性化合物のモル比を変えることにより、発光性官能基のポリフェノール類中への導入割合を所望の値に設定できる。
【0061】
また、ポリフェノール類に発光性官能基を化学修飾する工程では、例えばアルキル化反応の一つであるウィリアムソンエーテル合成法が用いられてもよい。具体的には、テトラヒドロフラン、ジメチルスホキサイド等の溶媒中で、塩基性触媒の存在下で、ポリフェノール類にハロゲン化アルキル基を有する発光性化合物を反応させることで、ポリフェノール類に発光性官能基を化学修飾することができる。
ハロゲン化アルキル基を有する発光性化合物としては、1-ブロモメチルピレン、9-ブロモメチルアントラセン、4-ブロモメチル-7-ジエチルアミノクマリン等を用いることができる。
【0062】
また、塩基性触媒としては、MH、M2CO3、M(M:アルカリ金属)の群から選択される1又は2以上の触媒を用いることができる。例えば、K2CO3は、OH基をO-M+に変換し、ハロゲン化アルキル(X-R1、X:ハロゲン、R1:アルキル基)へのO-基の求核反応を促進することができる。
アルキル化反応は、70℃以上100℃以下の環境下で、約1時間程度反応させることが好ましい。また、ポリフェノール類に対するハロゲン化アルキル基を有する発光性化合物のモル比を変えることにより、発光性官能基のポリフェノール類中への導入割合を所望の値に設定できる。
【0063】
さらに、ポリフェノール類に発光性官能基を化学修飾する工程では、マイケル付加反応が用いられてもよい。
【0064】
ポリフェノール類に鎖状炭化水素基を化学修飾する工程では、例えばエステル化反応が用いられる。具体的には、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド等の溶媒中で、酸性触媒の存在下で、ポリフェノール類にアルキルカルボン酸を反応させることで、ポリフェノール類に鎖状炭化水素基であるアルキルカルボン酸を化学修飾することができる。
酸性触媒としては、濃硫酸、リン酸、トルエンスルホン酸などのH+を供給する触媒を用いることができる。
エステル化反応は、20℃以上50℃以下の環境下で、約24時間程度反応させることが好ましい。ポリフェノール類に対するアルキルカルボン酸のモル比を変えることにより、アルキル基のポリフェノール類中への導入割合を所望の値に設定できる。
【0065】
また、ポリフェノール類に鎖状炭化水素基を化学修飾する工程では、例えばアルキル化反応の一つであるウィリアムソンエーテル合成法が用いられても良い。具体的には、テトラヒドロフラン、ジメチルスホキサイド等の溶媒中で、塩基性触媒の存在下で、ポリフェノール類に鎖状炭化水素基であるハロゲン化アルキルを化学修飾することができる。
塩基性触媒としてはMH、M2CO3、M(M:アルカリ金属)の群から選択される1又は2以上の触媒を用いることができる。例えば、K2CO3は、OH基をO-M+に変換し、ハロゲン化アルキル(X-R1、X:ハロゲン、R1:アルキル基)へのO-基の求核反応を促進することができる。
【0066】
アルキル化反応は、70℃以上100℃以下の環境下で、約1時間程度反応させることが好ましい。また、ポリフェノール類に対するハロゲン化アルキルのモル比を変えることにより、アルキル基のポリフェノール類中への導入割合を所望の値に設定できる。
ポリフェノール類に鎖状炭化水素基を化学修飾する工程では、ハロゲン化アルキルに代えて、スルホニル基などを脱離基として有する材料を用いても良い。また、上述したウィリアムソンエーテル合成法以外のアルキル化反応を用いることもできる。さらに、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等の縮合剤を用いたカルボン酸類との脱水縮合反応や、イソシアネートとの縮合反応を用いることもできる。
【0067】
<塗料の製造方法>
塗料は、上述した方法により形成されたポリフェノール誘導体を、所望の溶剤に分散させるとともに、塗料の形態に応じて必要となる材料や添加剤が混合されることにより得られる。
【0068】
(1.3)第一実施形態の効果
上述した第一実施形態に係る建材は、以下の効果を有する。
(1)
本実施形態に係る建材は、植物由来の抗菌・抗ウイルス成分であるポリフェノール類を成分とし、発光性官能基により置換されたポリフェノール誘導体を含んでいる。
これにより、本実施形態に係る建材は、抗菌、抗ウイルス機能が付与されているかを容易に、その場で確認することができる。また、本実施形態に係る建材は、植物由来の抗菌・抗ウイルス成分であるポリフェノール類を含むため、高い安全性が得られる。
【0069】
(2)
本実施形態に係る建材は、ポリフェノール類の水酸基の一部における水素原子又は芳香族環の水素原子の一部が発光性官能基により置換されている。
これにより、本実施形態に係る建材は、ポリフェノール類が存在する場合には、ポリフェノール類と結合した発光性官能基によって発光し、ポリフェノール類によって生じる抗菌・抗ウイルス効果を視認することが可能となる。
【0070】
(3)
本実施形態に係る建材は、ポリフェノール類の水酸基の一部における水素原子又は芳香族環の水素原子の一部が後述する鎖状炭化水素基により置換されていても良い。
これにより、本実施形態に係る建材は、有機溶剤に対する親和性が向上し、有機溶剤にポリフェノール誘導体を分散させて、基材の表面に、抗菌・抗ウイルス効果を付与することができる。
【0071】
2.第二実施形態
以下、第二実施形態に係る建材について、
図2を参照して説明する。
図2は、第二実施形態に係る建材2の構成の一例を示す断面図である。
【0072】
(2.1)建材の構成
図2に示すように、建材2は、基材11と、表面保護層22とを備えている。建材2は、第一実施形態におけるポリフェノール誘導体と異なる構造のポリフェノール誘導体を含む表面保護層22を備える点で、建材1と相違する。表面保護層22は、第一実施形態に係る建材1の表面保護層12と同様に、表面にポリフェノール誘導体や塗料により抗菌・抗ウイルス機能が付与されており、かつ抗菌・抗ウイルス機能の有無を視認することが可能である。また、表面保護層22は、第一実施形態に記載のポリフェノール誘導体に比べて耐溶剤性が向上したポリフェノール誘導体を含んでいるため、アルコール等での表面洗浄による劣化を起こしにくい建材2を得ることができる。
【0073】
本実施形態に係る建材2に用いられるポリフェノール誘導体は、第一実施形態で説明したポリフェノール誘導体をネットワークポリマー化して耐溶剤性を向上させた点で、第一実施形態に記載のポリフェノール誘導体と異なる。本実施形態に係る建材2に用いる塗料の溶剤は、第一実施形態で説明した溶剤と同様の材料を用いることができる。
以下、溶剤の説明を省略し、本実施形態で用いられるポリフェノール誘導体についてのみ説明する。
【0074】
<ポリフェノール誘導体>
本実施形態で用いられるポリフェノール類は、第一実施形態で説明したポリフェノール類と同様であり、例えば化学式(1)で示すタンニン酸であるため説明を省略する。
本実施形態におけるポリフェノール誘導体は、第一実施形態におけるポリフェノール誘導体と同様に、ポリフェノール類の水酸基の一部における水素原子又は芳香族環の水素原子の一部が発光性官能基により置換されている。これにより、ポリフェノール類が存在する場合には、ポリフェノール類と結合した発光性官能基によって発光し、ポリフェノール類によって生じる抗菌・抗ウイルス効果を視認することが可能となる。
【0075】
また、本実施形態におけるポリフェノール誘導体は、二官能性のアルキルジカルボン酸を用いたエステル化反応、または二官能性のハロゲン化アルキルを用いたエーテル化反応、または二官能性のアルキルジイソシアネートを用いたウレタン化反応等により、複数のポリフェノール類を連結することで、ポリフェノール類がネットワークポリマー化されている。また、本実施形態におけるポリフェノール誘導体は、エステル化反応、エーテル化反応でアクリロイル基等の不飽和炭化水素基を導入した後、ラジカル重合反応等により、複数のポリフェノール類を連結することで、ポリフェノール類がネットワークポリマー化されてもよい。エステル化反応、エーテル化反応は、第一実施形態で説明した合成方法と同様の方法を用いることができる。これにより、ポリフェノール類の水酸基が減少して、高分子材料の耐溶剤性が向上する。
また、本実施形態で用いられるポリフェノール誘導体は、第一実施形態におけるポリフェノール誘導体と同様に、ポリマーネットワーク化されたポリフェノール類の水酸基の一部における水素原子又は芳香族環の水素原子の一部が鎖状炭化水素基により置換されていてもよい。
【0076】
(2.2)第二実施形態の効果
上述した第二実施形態に係る建材は、第一実施形態に係る建材における(1)~(3)の効果に加えて、以下の効果を有する。
(4)
本実施形態に係る建材は、植物由来の抗菌・抗ウイルス成分であるポリフェノール類を成分とするポリフェノール誘導体をネットワークポリマー化して、耐溶剤性を向上させている。
これにより、本実施形態に係る建材は、アルコール等での表面洗浄による劣化を起こしにくくなる。
【0077】
3.第三実施形態
以下、第三実施形態に係る建材について、
図3を参照して説明する。
図3は、第三実施形態に係る建材3の構成の一例を示す断面図である。
【0078】
(3.1)建材の構成
図3に示すように、建材3は、基材11と、樹脂層32A及び抗菌・抗ウイルス膜である表面層32Bを有する表面保護層32とを備えている。建材3は、ポリフェノール誘導体を含まない樹脂層32Aの表面にポリフェノール誘導体を含む表面層32Bが形成された複数層で構成されている表面保護層32を備える点で、建材1及び建材2と相違する。表面層32Bは、建材1の表面保護層12及び建材2の表面保護層22と同様に、ポリフェノール誘導体や塗料により抗菌・抗ウイルス機能が付与されており、かつ抗菌・抗ウイルス機能の有無を視認することが可能である。
【0079】
樹脂層32Aは、建材1の表面保護層12及び建材2の表面保護層22で用いた樹脂材料により形成される。また、樹脂層32Aは、表面保護層12と同様の添加材等を含んでいてもよい。
また、表面層32Bは、建材1の表面保護層12で用いた誘導体ポリフェノール及び建材2の表面保護層22で用いたネットワークポリマー化された誘導体ポリフェノールの少なくとも一方を含む塗料で形成されている。
【0080】
(3.2)第三実施形態の効果
上述した第三実施形態に係る建材は、第一実施形態に係る建材における(1)~(3)の効果、又はこれに加えて第二実施形態に係る建材における(4)の効果を有する。
【0081】
4.第四実施形態
以下、第四実施形態に係る建材について、
図4及び
図4Bを参照して説明する。
図4は、第四実施形態に係る建材の第一の例である建材4Aを示す断面図であり、
図4Bは、第四実施形態に係る建材の第二の例である建材4Bを示す断面図である。
【0082】
(4.1)建材の第一の例の構成
図4に示すように、建材4Aは、基材11と、表面保護層42と、基材11と表面保護層42との間に設けられた着色絵柄層43とを備えている。建材4Aは、基材11と表面保護層42との間に着色絵柄層43を備える点で、建材1及び建材2と相違する。また、建材4Aは、着色絵柄層43の上層として設けられ、着色絵柄層43の色、柄、質感等を透過する透明層である表面保護層42を有している点で、建材1及び建材2と相違する。
以下、表面保護層42及び着色絵柄層43について説明する。
【0083】
(着色模様層)
着色絵柄層43は、基材11と表面保護層42との間に設けられている。着色絵柄層43は、例えば基材11上に設けられた着色層43Aと、着色層43A上に設けられた絵柄層43Bとを有している。なお、着色絵柄層43は、所望の意匠性に応じて、着色層43A又は絵柄層43Bの少なくとも一方を有していればよい。例えば、着色絵柄層43は、
図4に示すように絵柄層43Bのみを有していても良く、
図3に示すように着色層43A及び絵柄層43Bの双方を有していても良い。
【0084】
着色層43Aは、建材4Aに所望の色彩による意匠性を付与するとともに、建材4Aが貼りつけられる下地面の色・模様を隠蔽するための層である。着色層43Aは、例えば、インクのベタ塗り等により形成される。
絵柄層43Bは、着色層43Aよりも建材4Aの表面側に設けられ、建材4Aに所望の絵柄による意匠性を付与するための層である。絵柄層43Bは、着色層43Aの上面に形成され、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形等の所望の柄模様が印刷により形成されている。
【0085】
着色層43A及び絵柄層43Bは、例えばインキを用いたスクリーン印刷等により形成される。着色層43A及び絵柄層43Bを形成する為のインキとしては、例えば、イソインドリノンイエロー、ポリアゾレッド、フタロシアニンブルー、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタンのいずれかを単独で、または、これらの混合物を顔料として用いる事が可能である。また、これらのインキは、水性溶剤であっても有機溶剤であってもよく、有機溶剤としては例えば、酢酸エチル、酢酸nブチル、イソブタノール、メチルイソブチルケトンなどを用いる事が可能である。
【0086】
着色絵柄層43の着色層43A及び絵柄層43Bの厚さは、所望の意匠性が十分に発現する程度の厚みであれば良い。着色層43Aの厚さは、例えば2μm以上20μm以下の範囲とすることが好ましい。着色層43Aの厚さを上述の範囲内とすることにより、例えば白色や淡色に着色する場合であっても基材11の色や汚れに対して十分な隠蔽性を発現でき、また、着色層43Aを構成するインキ層間の密着強度の低下を防止して、十分な耐久性を得ることができる。また、絵柄層43Bの厚さは、例えば0.1μm以上10μm以下の範囲とすることが好ましい。ここで、「絵柄層43Bの厚さ」とは、インキが印刷された部分の厚さをいう。絵柄層43Bは、着色層43Aの全面に設けられていなくても良く、絵柄層43Bから着色層43Aが露出していても良い。絵柄層43Bの厚さを上述の範囲内とすることにより、絵柄を鮮明に表現したり、絵柄に階調をつける事で意匠性を高めることができ、また、複数色を重ねて印刷した際に上層の色と下層の色とが重なることで限られた色で表現可能な色彩幅を増やすことができる。
【0087】
(表面保護層)
表面保護層42は、下層である着色絵柄層43の絵柄模様や色彩を建材4Aの表面から視認可能とするために、透明材料で形成されている。したがって、表面保護層42を構成する材料は、表面保護層12を構成する材料のうち透明性を有する材料が選択される。
【0088】
また、表面保護層42は、建材4Aの表面に立体的な意匠感を付与するため凹凸形状を有していても良い。凹凸形状としては、任意の凹凸形状を用いることができるが、例えば、絵柄層43Bの模様に応じた木目導管状、石目状、布目状、抽象柄状、和紙状、スウェード状、皮革状、梨地状、砂目状、ヘアーライン状、平行直線群等、又はこれらの組み合わせた形状とすることができる。
【0089】
(4.2)建材の第二の例の構成
図4Bに示すように、第四実施形態に係る建材の第二の例である建材4Bは、基材11と、表面保護層42と、基材11と表面保護層42との間に設けられた着色絵柄層43とを備えている。建材4Bは、基材11と表面保護層42との間に絵柄層43Bのみで構成された着色絵柄層43を備える点で、建材4Aと相違する。
なお、建材4Bにおいて、基材11に所望の色彩が付与されて、着色層の役割を併せ持つようにしてもよい。
【0090】
(4.2)第四実施形態の効果
上述した第四実施形態に係る建材は、第一実施形態に係る建材における(1)~(3)の効果、又はこれに加えて第二実施形態に係る建材における(4)の効果を有する。
【実施例0091】
以下、本開示に係る建材用表面保護層を実施例により説明する。なお、本開示に係る建材用表面保護層は、これら実施例に限定されない。
【0092】
<材料調製・材料合成>
(タンニン酸)
ポリフェノール類として、タンニン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製、203-06331)を用意した。
【0093】
(ポリフェノール誘導体1)
タンニン酸と、アセチルクロリド及びトリエチルアミンとを脱水アセトンに加えて室温で20時間反応させることで中間化合物を得た。続いて、1-ピレン酪酸クロリド及びトリエチルアミンを、中間化合物を含む脱水アセトンに加えて室温で20時間反応させることにより、ポリフェノール誘導体1を合成した。合成されたポリフェノール誘導体1の発光性官能基置換数は1であり、アルキル基置換数は4であった。また、置換されたアルキル基の炭素数は1であった。
【0094】
(ポリフェノール誘導体2)
タンニン酸と、アクリロイルクロリド及びトリエチルアミンを脱水アセトンに加えて室温で20時間反応させることで中間化合物を得た。続いて、1-ピレン酪酸クロリド及びトリエチルアミンを、中間化合物を含む脱水アセトンに加えて室温で20時間反応させることにより、ポリフェノール誘導体2を合成した。なお、ポリフェノール誘導体3は、後述するように、紫外線硬化樹脂の存在下で紫外線照射することでネットワークポリマー化される。合成されたポリフェノール誘導体3の発光性官能基置換数は1であり、アルキル基置換数は5であった。また、置換されたアルキル基の炭素数は2であった。
【0095】
[実施例1]
上述のように合成したポリフェノール誘導体1(10質量部)、紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製Tinuvin1130、0.001質量部)、紫外線硬化樹脂(DICグラフィックス株式会社製ウレタンアクリレート、100質量部)を酢酸エチルに溶解して、実施例1の塗布液を調製した。
続いて、この塗布液をバーコーティングにより5cm×5cmのガラス基板上へ3μmの厚みで塗布した。塗布液の塗布後、UV光(波長264nm、露光量120W/cm2)を2秒照射することで被膜を形成して実施例1の試料を作製した。
【0096】
[実施例2]
ポリフェノール誘導体1を20質量部としたこと以外は実施例1と同様にして実施例2の試料とした。
【0097】
[実施例3]
ポリフェノール誘導体1を30質量部としたこと以外は実施例1と同様にして実施例3の試料とした。
【0098】
[実施例4]
ポリフェノール誘導体1を50質量部、紫外線吸収剤を0.005質量部としたこと以外は実施例4と同様にして実施例2の試料とした。
【0099】
[実施例5]
ポリフェノール誘導体1を50質量部、紫外線吸収剤を1.5質量部としたこと以外は実施例1と同様にして実施例5の試料とした。
【0100】
[実施例6]
ポリフェノール誘導体1に代えてポリフェノール誘導体2を用いた以外は実施例4と同様にして実施例6の試料とした。
【0101】
[実施例7]
ポリフェノール誘導体1を50質量部、紫外線吸収剤を4質量部としたこと以外は実施例1と同様にして実施例5の試料とした。
【0102】
[比較例1]
ポリフェノール誘導体1を10質量部、紫外線吸収剤を0.001質量部としたこと以外は実施例1と同様にして比較例1の試料とした。
【0103】
[比較例2]
塗布液を塗布しないガラス基板を、比較例2の試料とした。
【0104】
<評価>
(発光性視認試験)
上述した方法で形成した各実施例及び比較例の試料に、365nmの紫外光を紫外光発光装置(アズワン株式会社製SLUV4)を用いて照射した。各実施例及び比較例の試料表面の発光を10名で目視にて確認した。10人中4人以上で発光を確認できた場合を「○」、10人中3人以下で発光を確認できた場合を「△」、10人中誰も発光を確認できなかった場合を「×」と評価した。
【0105】
(抗菌性試験)
上述した方法で形成した各実施例及び比較例の試料に対して、JIS Z2801の方法に従って抗菌性試験を行い、抗菌活性値(大腸菌を使用)を確認した。
【0106】
(相溶性試験)
各実施例及び比較例で調整した塗布液を目視にて確認し、ポリフェノール誘導体又はタンニン酸がすべて溶けている場合を「◎」、ポリフェノール誘導体又はタンニン酸が少量溶け残っている場合を「○」、ポリフェノール誘導体又はタンニン酸が大量に溶け残っている場合を「×」と評価した。
【0107】
以下の表1に評価結果を示す。
【0108】
【0109】
表1に示すように、樹脂100質量部に対して発光性官能基を含むポリフェノール誘導体を配合した各実施例の試料では、抗菌活性が得られており、抗菌・殺菌等の用途での活用が期待できることが確認された。
【0110】
また、ポリフェノール類における水酸基又は芳香族環の水素原子の一部が鎖状炭化水素基で置換されたポリフェノール誘導体を用いた各実施例1~7では、水酸基又は芳香族環の水素原子の一部が鎖状炭化水素基で置換されてないタンニン酸を用いた比較例1と比較して樹脂との相溶性が向上した。このため、ポリフェノール誘導体の一部を鎖状炭化水素基で置換したりすることでポリフェノール誘導体の樹脂への均一な混合状態を得やすくなることが確認された。
【0111】
また、ポリフェノール類における水酸基又は芳香族環の水素原子誘導体の一部が鎖状炭化水素基で置換されたポリフェノール誘導体を用いた各実施例1~7では、発光を視認することができたのに対して、発光性官能基及び鎖状炭化水素基を有していないタンニン酸を用いた比較例1では、発光を視認できなかった。
さらに、樹脂100質量部に対して紫外線吸収剤を4質量部より少ない量を配合した実施例1~6の試料では、発光性視認試験に示すように、紫外線吸収剤を4質量部配合した実施例7と比較して発光の視認性がより高かった。このため、樹脂100質量部に対して紫外線吸収剤を4質量部より少ない量を配合した実施例1~6の試料では、紫外光の照射で抗菌活性を有する化合物の存在をさらに容易に判断することができ、抗菌機能が付与されているかをより容易に確認することができた。
【0112】
本開示の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本開示の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【0113】
例えば、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
(1)
基材と、
前記基材上に設けられ、発光性官能基により置換されたポリフェノール誘導体を含む表面保護層と、
を備える建材。
(2)
前記発光性官能基により置換された前記ポリフェノール誘導体は、ポリフェノール類の水酸基の一部における水素原子又は芳香族環の水素原子の一部が発光性官能基により置換されたポリフェノール誘導体である
(1)に記載の建材。
(3)
前記表面保護層は、前記ポリフェノール誘導体と、樹脂材料とを含む
(2)に記載の建材。
(4)
前記表面保護層は、前記樹脂材料100質量部に対して、前記発光性官能基により置換された前記ポリフェノール誘導体が0.01質量部以上50質量部以下含まれている
(3)に記載の建材。
(5)
前記表面保護層は、紫外線吸収剤を含む
(3)又は(4)に記載の建材。
(6)
前記紫外線吸収剤は、前記樹脂材料100質量部に対して0.01質量部以上4質量部未満含まれている
(5)に記載の建材。
(7)
前記表面保護層は、
樹脂材料により形成された樹脂層と、
前記樹脂層上に設けられ、前記ポリフェノール誘導体を含む表面層と、
を有する(2)に記載の建材。
(8)
前記発光性官能基の数が、1以上前記水酸基の水素原子数と前記芳香族環の水素原子数との合計より1少ない数以下となるように、前記水酸基又は前記芳香族環の水素原子が前記発光性官能基により置換されている
(2)から(7)のいずれか1項に記載の建材。
(9)
前記発光性官能基は、ピレン系、アントラセン系、フェナントレン系、ベンゾオキサゾール系、フラボン系、カルバゾール系及びクマリン系からなる群から選ばれる少なくとも一種の発光性官能基である
(2)から(8)のいずれか1項に記載の建材。
(10)
前記ピレン系の前記発光性官能基は、4-(1-ピレン)-酪酸骨格、1-酪酸ピレン骨格、又は1-(メチル)ピレン骨格からなる群から選ばれる少なくとも一種の骨格を有する発光性官能基である
(9)に記載の建材。
(11)
前記ポリフェノール類の前記水酸基及び前記芳香族環の水素原子の一部が、鎖状炭化水素基により置換されている
(2)から(10)のいずれか1項に記載の建材。
(12)
前記鎖状炭化水素基は、アルキル基である
(11)に記載の建材。
(13)
前記鎖状炭化水素基は、炭素数が1以上18以下である
(11)又は(12)に記載の建材。
(14)
前記発光性官能基の数と前記鎖状炭化水素基の数との合計が、前記水酸基の水素原子数と前記芳香族環の水素原子数との合計より1少ない数以下となるように、前記水酸基又は前記芳香族環の水素原子が前記鎖状炭化水素基により置換されている
(11)から(13)のいずれか1項に記載の建材。
(15)
前記ポリフェノール類は、タンニン酸であり、
前記ポリフェノール誘導体は、タンニン酸誘導体である
(2)から(14)のいずれか1項に記載の建材。
(16)
前記ポリフェノール誘導体は、ネットワークポリマー化されている
(1)から(15)のいずれか1項に記載の建材。
(17)
前記表面保護層は、最表面に配置されている
(1)から(16)のいずれか1項に記載の建材。
(18)
前記基材と前記表面保護層との間に設けられた着色絵柄層を備え、
前記表面保護層は、透明材料で形成されている
(1)から(17)のいずれか1項に記載の建材。