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特開2023-18668接触近接検知装置、ロボットアーム及び接触近接検知方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018668
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】接触近接検知装置、ロボットアーム及び接触近接検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20230201BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
G01L5/00 Z
B25J19/06
G01L5/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118796
(22)【出願日】2022-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2021122314
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「タッチIoT:触れるインターネット実現のための肌感覚送受信機の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 一浩
(72)【発明者】
【氏名】ホ アンヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ルウ ハンクアン
(72)【発明者】
【氏名】グエン ニャンヒュー
【テーマコード(参考)】
2F051
3C707
【Fターム(参考)】
2F051AA10
2F051AB03
2F051BA07
3C707BS10
3C707HS27
3C707KS31
3C707MS08
3C707MS14
3C707MS15
3C707MS27
(57)【要約】
【課題】接触と近接とを検知する。
【解決手段】接触近接検知装置1は、複数のマーカを有する表皮部と、複数のマーカを含む領域の画像を取得するカメラ11、13と、カメラ11、13によって取得された画像におけるマーカの位置と表皮部に物体が接触していない場合におけるマーカの位置との差から、表皮部に接触している物体の有無、物体の位置、表皮部に加えられている力の大きさ及び向きを含む接触情報を検知し、又は、カメラ11、13によって取得された画像から、表皮部に接触していない物体の有無、物体の位置又は速度を含む近接情報を検知する、接触検知部211及び近接検知部212と、表皮部の少なくとも一部が透明な状態であるか不透明な状態であるかを示す透明モードを、透明を示す値と不透明を示す値との間で切り替える透明モード切替部213と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマーカを有する表皮部と、
前記複数のマーカを含む領域の画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された画像における前記マーカの位置と前記表皮部に物体が接触していない場合における当該マーカの位置との差から、前記表皮部に接触している前記物体の有無、前記物体の位置、前記表皮部に加えられている力の大きさ及び向きを含む接触情報を検知し、又は、前記画像取得部によって取得された前記画像から、前記表皮部に接触していない前記物体の有無、前記物体の位置又は速度を含む近接情報を検知する、検知部と、
前記表皮部の少なくとも一部が透明な状態であるか不透明な状態であるかを示す透明モードを、透明を示す値と不透明を示す値との間で切り替える透明モード切替部と、を備える、
接触近接検知装置。
【請求項2】
前記検知部は、前記透明モード切替部によって切り替えられた前記透明モードが透明を示す値であるときに、前記近接情報を検知し、前記透明モード切替部によって切り替えられた前記透明モードが不透明を示す値であるときに、前記接触情報を検知する、
請求項1に記載の接触近接検知装置。
【請求項3】
請求項1に記載の接触近接検知装置によって構成されたリンク部材を備えるロボットアームであって、
前記検知部が検知した前記近接情報に基づいて前記リンク部材を移動させることで、前記物体と前記リンク部材との衝突を回避する制御を行うことが可能である、
ロボットアーム。
【請求項4】
複数のマーカを有する表皮部から、当該複数のマーカを含む領域の画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップにおいて取得された画像における前記マーカの位置と前記表皮部に物体が接触していない場合における当該マーカの位置との差から、前記表皮部に接触している前記物体の有無、前記物体の位置、前記表皮部に加えられている力の大きさ及び向きを含む接触情報を検知し、又は、前記画像取得ステップにおいて取得された前記画像から、前記表皮部に接触していない前記物体の有無、前記物体の位置又は速度を含む近接情報を検知する、検知ステップと、
前記表皮部の少なくとも一部が透明な状態であるか不透明な状態であるかを示す透明モードを、透明を示す値と不透明を示す値との間で切り替える透明モード切替ステップと、を含む、
接触近接検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触近接検知装置、ロボットアーム及び接触近接検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットが人を補助する技術が知られている。例えば、アームで人を支える介護ロボットは、介護サービスの提供を受ける人に不快感を与えないため、接触近接検知を行い、検知した結果に基づいてアームを制御する。
【0003】
物体の接触を検知する接触検知装置として、抵抗センサ、容量性センサ、圧電センサ等の各種センサを用いたもの、光学的手法を用いて物体の接触を検知するもの、カメラで物体の接触を検知するものなどがある。
【0004】
カメラで物体の接触を検知する接触検知装置の例として、特許文献1に示すものが知られている。特許文献1に記載されている接触検知装置においては、弾性体に複数のマーカが埋め込まれている。2つのカメラがこれらのマーカの画像を取得し、コンピュータがこれらの画像の情報と予め記憶されたマーカの位置とを比較することで、特許文献1に記載されている接触検知装置は、物体の接触の有無、位置及びその程度を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-125973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ロボットと人が接するサービスを提供する場面においては、サービスの提供を受ける人にロボットによる不快感を与え難くするため、接触している物体だけでなく、ロボットの周囲にある物体も比較的高い精度で検知する必要がある。
【0007】
特許文献1に記載された装置は、現に物体が接触した部分を画像によって検知するため、未だ接触していない、接近しつつある物体を検知することができない。
従って、特許文献1に記載された接触検知装置によっては、接触と近接とを検知することができないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑み、接触と近接とを検知する接触近接検知装置、ロボットアーム及び接触近接検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る接触近接検知装置は、
複数のマーカを有する表皮部と、
前記複数のマーカを含む領域の画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された画像における前記マーカの位置と前記表皮部に物体が接触していない場合における当該マーカの位置との差から、前記表皮部に接触している前記物体の有無、前記物体の位置、前記表皮部に加えられている力の大きさ及び向きを含む接触情報を検知し、又は、前記画像取得部によって取得された前記画像から、前記表皮部に接触していない前記物体の有無、前記物体の位置又は速度を含む近接情報を検知する、検知部と、
前記表皮部の少なくとも一部が透明な状態であるか不透明な状態であるかを示す透明モードを、透明を示す値と不透明を示す値との間で切り替える透明モード切替部と、を備える。
【0010】
前記検知部は、前記透明モード切替部によって切り替えられた前記透明モードが透明を示す値であるときに、前記近接情報を検知し、前記透明モード切替部によって切り替えられた前記透明モードが不透明を示す値であるときに、前記接触情報を検知してもよい。
【0011】
また、本発明の第2の観点に係るロボットアームは、
本発明の第1の観点に係る接触近接検知装置によって構成されたリンク部材を備え、
前記検知部が検知した前記近接情報に基づいて前記リンク部材を移動させることで、前記物体と前記リンク部材との衝突を回避する制御を行うことが可能である。
【0012】
また、本発明の第3の観点に係る接触近接検知方法は、
複数のマーカを有する表皮部から、当該複数のマーカを含む領域の画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像取得ステップにおいて取得された画像における前記マーカの位置と前記表皮部に物体が接触していない場合における当該マーカの位置との差から、前記表皮部に接触している前記物体の有無、前記物体の位置、前記表皮部に加えられている力の大きさ及び向きを含む接触情報を検知し、又は、前記画像取得ステップにおいて取得された前記画像から、前記表皮部に接触していない前記物体の有無、前記物体の位置又は速度を含む近接情報を検知する、検知ステップと、
前記表皮部の少なくとも一部が透明な状態であるか不透明な状態であるかを示す透明モードを、透明を示す値と不透明を示す値との間で切り替える透明モード切替ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接触と近接とを検知する接触近接検知装置、ロボットアーム及び接触近接検知方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)実施の形態1に係る接触近接検知装置の全体説明図、(B)図1(A)の矢印A-A’線断面図、(C)図1(B)のE1部分の拡大図
図2】実施の形態1に係る接触近接検知装置のシステム構成のブロック図
図3】(A)実施の形態1に係る表皮部が不透明のときの状態説明図、(B)表皮部が透明のときの状態説明図
図4】実施の形態1に係る接触検知処理(学習フェーズ)のフローチャート
図5】実施の形態1に係る接触検知処理(推論フェーズ)のフローチャート
図6】実施の形態1に係る近接検知処理のフローチャート
図7】実施の形態1に係るロボットの制御処理のフローチャート
図8】(A)試験装置の全体説明図、(B)試験装置の分解図、(C)試験装置に含まれる部品の位置関係の説明図
図9】実験例1の実験結果を示す図
図10】実験例2の実験結果を示す図
図11】実験装置の全体説明図
図12】(A)実験例3の第1の画像、(B)実験例3の第2の画像、(C)図12(A)の2値画像、(D)図12(B)の2値画像
図13】(A)実験例4の第1の画像、(B)実験例4の第2の画像、(C)図13(A)の2値画像、(D)図13(B)の2値画像
図14】(A)実験例5の第1の画像、(B)実験例5の第2の画像、(C)図14(A)の2値画像、(D)図14(B)の2値画像
図15】(A)実験例6の財布の第1の画像、(B)実験例6の財布の第2の画像、(C)図15(A)の2値画像、(D)図15(B)の2値画像
図16】(A)実験例6のテープの第1の画像、(B)実験例6のテープの第2の画像、(C)図16(A)の2値画像、(D)図16(B)の2値画像
図17】(A)実験例6の手の第1の画像、(B)実験例6の手の第2の画像、(C)図17(A)の2値画像、(D)図17(B)の2値画像
図18】(A)実験例7の財布の第1の画像、(B)実験例7の財布の第2の画像、(C)図18(A)の2値画像、(D)図18(B)の2値画像
図19】(A)実験例7のテープの第1の画像、(B)実験例7のテープの第2の画像、(C)図19(A)の2値画像、(D)図19(B)の2値画像
図20】(A)実験例7の手の第1の画像、(B)実験例7の手の第2の画像、(C)図17(A)の2値画像、(D)図17(B)の2値画像
図21】(A)実施の形態2に係る接触近接検知装置の断面図、(B)図21(A)のE2部分の拡大図
図22】(A)実施の形態3に係る接触近接検知装置の断面図、(B)図22(A)のE3部分の拡大図
図23】実施の形態4に係る接触近接検知装置のシステム構成のブロック図
図24】実施の形態4に係る接触検知処理のフローチャート
図25】実施の形態4に係る近接検知処理のフローチャート
図26】(A)実施の形態5に係るロボットアームの全体説明図、(B)ジョイント部材の表皮部を取り除いたロボットアームの全体説明図
図27】実施の形態5に係る接触近接検知装置のシステム構成のブロック図
図28】実験例8の実験結果を示す図
図29】実験例9の実験結果を示す図
図30】実験例10のロボットアーム及びマネキンの腕の説明図
図31】(A)実験例10の測定距離と時間との関係を示すグラフ、(B)実験例10の力と時間との関係を示すグラフ、(C)実験例10の移動量と時間との関係を示すグラフ
図32】実験例11の第2リンクのカメラが撮像した人間の手の動きを示す画像
図33】(A)実験例11の測定距離と時間との関係を示すグラフ、(B)実験例11の移動速度と時間との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の形態1]
以下に、本発明の実施の形態1に係る接触近接検知装置1を、図面を参照しつつ説明する。
図1(A)に示すように、本実施の形態に係る接触近接検知装置1は、例えば、ロボットのアームに用いられ、アームに接触又は近接する物体を検知する装置である。
【0016】
ここで、本願においては、表皮部15に接触した物体の有無、物体が接触した位置、接触の程度等を検知することを「接触検知」ということがある。また、本願においては、表皮部15に接触していない物体であって、表皮部15に近接するものの有無、近接する物体の位置、近接する物体の速度等を検知することを「近接検知」ということがある。
【0017】
(実施の形態1に係る接触近接検知装置1について)
接触近接検知装置1は、後述するカメラ11を固定する基部12と、カメラ11と共通の光軸を有し、カメラ11に対向して配置される、後述するカメラ13を固定する基部14と、基部12と基部14との間に張られた表皮部15と、を備える。基部12、14の外端面の中央部には内側に凹んだ凹部が設けられており、凹部には、カメラ11、13等を含む電子部品を、後述する情報演算装置20と電気的に接続するコネクタ16が配置されている。カメラ11、13は、画像取得部の一例である。
【0018】
図1(B)に示す基部12、14の凹部の底部には、それぞれ、画像を取得するカメラ11、13が固定されている。また、基部12、14の凹部の底部には、カメラ11、13を囲む複数の発光ダイオード(Light Emitting Diode、LED)17が配置されている。
【0019】
表皮部15は、より詳細には、図1(C)に示す構造、即ち、外皮部15aと外皮部15aに密着した高分子分散型液晶(Polymer Dispersed Liquid Crystal、PDLC)フィルム15bの2層構造を有している。外皮部15aは、透明かつ柔軟な素材、例えば、透明なシリコーン樹脂を含むシートを円筒形に形成したものである。PDLCフィルム15bには、電圧を印加すると透明になり、電圧を印加しないと不透明である性質を有するノーマルタイプのフィルムか、又は電圧を印加すると不透明になり、電圧を印加しないと透明である性質を有するリバースタイプのフィルムの何れかが用いられる。例えば、後述する接触検知を多く実行する場合には、PDLCフィルム15bを不透明にする時間が透明にする時間に比べて長くなる。よって、この場合、PDLCフィルム15bとしてリバースタイプのフィルムを用いれば、PDLCフィルム15bの透明度を切り替えるために必要とされる電力の量を削減することができる。
【0020】
PDLCフィルム15bは、コネクタ16を介して後述する情報演算装置20と接続されており、情報演算装置20によって電圧の印加状態を切り替え可能である。PDLCフィルム15bの内側には、規則的に間隔を空けて複数のマーカ18が配置されている。各マーカ18は、PDLCフィルム15bがなす円筒の内側に凸である半球状に形成された樹脂であり、再帰反射塗料が塗布されている。隣接するマーカ18同士の間隔は、例えば、図1(A)に示したZ方向に15mm、PDLCフィルム15bの円筒の周方向に20mmである。例えば、物体が表皮部15に接触して外皮部15aを内側に撓ませると、PDLCフィルム15bのうち外皮部15aの撓んだ部分と接している部分も内側に撓み、撓んだ部分に配置されているマーカ18は変位する。
基部12と基部14との間には、外皮部15a及びPDLCフィルム15bがなす円筒よりも直径の小さい円筒の形状に形成された透明のアクリル樹脂を含む支持部19が配置されている。支持部19は、表皮部15よりも剛性が高くなるように形成されており、接触近接検知装置1をロボットのアームに用いた場合にロボットの骨格を構成する。
【0021】
接触近接検知装置1は、図2に示す情報演算装置20を含む。図2に示すように、カメラ11、13は、後述するドライバ回路DC、通信部28を介して情報演算装置20と接続されている。
情報演算装置20は、例えば、コンピュータによって構成されており、算術演算や論理演算を行う演算部21と、電力又は情報を入出力するインタフェースである通信部28と、画像データや処理プログラムを一時的又は永続的に記憶する記憶部29と、を備える。
演算部21は、接触検知を行う接触検知部211と、近接検知を行う近接検知部212と、PDLCフィルム15bを透明にするか不透明にするかを示す透明モードを切り替える透明モード切替部213と、接触近接検知装置1の動作を制限する程度を示す制限モードを切り替える制限モード切替部214と、を含む。演算部21は、例えば、中央演算処理装置(Central Processing Unit、CPU)である。
記憶部29は、透明モードを記憶する透明モード記憶部291と、制限モードを記憶する制限モード記憶部292と、後述する接触検知処理で用いる学習済みモデルを記憶する学習済みモデル記憶部293と、を含む。記憶部29は、例えば、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAM)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、HDD)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive、SSD)である。
演算部21、通信部28及び記憶部29は、バス24によって相互に接続されている。
【0022】
透明モード切替部213は、透明モード記憶部291に記憶された透明モードが透明を示す値である場合には、PDLCフィルム15bを透明に制御する。透明モード切替部213は、透明モード記憶部291に記憶された透明モードが不透明を示す値である場合には、PDLCフィルム15bを不透明に制御する。
例えば、透明モード切替部213は、透明モード記憶部291に記憶された透明モードを読み出す。次に、透明モード記憶部291は、読み出した値に応じて、通信部28に接続されたドライバ回路DCに制御信号を出力し、ドライバ回路DCが図1(B)に示したコネクタ16を介して、PDLCフィルム15bに対する電圧の印加をオン又はオフにする。また、透明モード切替部213は、透明モード記憶部291に記憶された透明モードが不透明を示す値である場合に、ドライバ回路DCに制御信号を出力し、ドライバ回路DCが図1(B)に示したコネクタ16を介してLED17に電力を供給し、LED17を発光させる。
【0023】
図3(A)及び(B)は、透明モード記憶部291に記憶された透明モードが透明を示す値である場合と不透明を示す値である場合のそれぞれについて、表皮部15の外観を説明するものである。図3(A)に示した場合には、PDLCフィルム15bは不透明であり、接触近接検知装置1の外部からの光は接触近接検知装置1の表皮部15の内側に入りにくい。このため、カメラ11、13は、LED17に照らされたマーカ18を認識し易い。図3(B)に示した場合には、PDLCフィルム15bは透明であり、接触近接検知装置1の外部からの光は接触近接検知装置1の表皮部15より内側に入りやすい。このため、カメラ11、13は、マーカ18よりも接触近接検知装置1の外部にある物体を認識し易い。
【0024】
上述した構成を有する接触近接検知装置1は、図4及び図5に示す流れで接触検知処理を行い、図6に示す流れで近接検知処理を行う。
【0025】
(実施の形態1に係る接触検知処理について)
接触検知処理は、後述する学習フェーズと推論フェーズの2つに分かれる。このうち、接触検知処理の学習フェーズは、表皮部15に加えられている力及び力が加えられている位置と、カメラによって取得された画像から、ニューラルネットワークに機械学習を行わせ、後述する推論フェーズで用いる学習済みモデルを構築するものである。接触検知処理の推論フェーズは、学習済みモデルを用いて、カメラ11、13によって取得された画像から、表皮部15に加えられている力及び位置を推論するものである。
接触検知処理においては、マーカ18の画像を取得するため、PDLCフィルム15bは、透明モード切替部213によって、不透明な状態に制御されている。
【0026】
(実施の形態1に係る接触検知処理の学習フェーズについて)
まず、接触検知処理の学習フェーズについて説明する。
図4に示す流れで、まず、接触検知部211は、通信部28を介して、カメラ11、13から、マーカ18の画像を取得する(ステップS11)。
【0027】
続いて、接触検知部211は、ステップS11において取得した画像から特徴を抽出する(ステップS12)。具体的には、接触検知部211は、例えば、ノイズを除去し、歪みを除去し、先鋭化フィルタを掛け、エッジ抽出をし、輪郭を検出し、特徴点を抽出し又はパターンマッチングを行い、特徴として全てのマーカの重心の座標値を求める。
【0028】
次に、接触検知部211は、例えば、ステップS12において求められたマーカの重心の座標値、実際に表皮部15に加えられている値からの大きさ、方向、位置を含むデータを学習データとして、ニューラルネットワークに学習させる(ステップS13)。
【0029】
次に、接触検知部211は、学習が終了したか否かを判定し(ステップS14)、まだ学習が終了していないと判定したときには(ステップS14;No)、ステップS11に戻って、ステップS11からステップS13を繰り返す。
【0030】
そして、接触検知部211は、学習が終了したと判定したときには(ステップS14;Yes)、学習済みモデルを出力し(ステップS15)、処理を終了する。なお、接触検知部211によって出力された学習済みモデルは、学習済みモデル記憶部293に記憶される。
以上の流れで、学習済みモデルが構築される。
【0031】
(実施の形態1に係る接触検知処理の推論フェーズについて)
次に、接触検知処理の推論フェーズについて説明する。
図5に示す流れで、まず、接触検知部211は、通信部28を介して、カメラ11とカメラ13から、マーカ18の画像を取得する(ステップS21)。
【0032】
続いて、接触検知部211は、ステップS21において取得した画像から特徴を抽出する(ステップS22)。具体的には、接触検知部211は、学習フェーズのステップS12と同様の方法、例えば、ノイズを除去し、歪みを除去し、先鋭化フィルタを掛け、エッジ抽出をし、輪郭を検出し、特徴点を抽出し又はパターンマッチングを行い、特徴として全てのマーカの重心の座標値を求める。
【0033】
次に、接触検知部211は、学習フェーズのステップS15において出力された学習済みモデルを学習済みモデル記憶部293から取得して、取得した学習済みモデルにステップS22において求められた全てのマーカの重心の座標値を入力して、力及び位置を推論し(ステップS23)、処理を終了する。
【0034】
(実施の形態1に係る近接検知処理について)
以上説明した接触検知処理は、表皮部15に加えられている力及び位置を推論する処理である。これに対し、以下説明する近接検知処理は、カメラ11、13によって取得される画像に基づいて、接触近接検知装置1の外側にある物体を検知する処理である。
近接検知処理においては、接触近接検知装置1の外部の画像を取得するため、PDLCフィルム15bは、透明な状態に制御されている。
【0035】
図6に示す流れで、まず、近接検知部212は、通信部28を介して、カメラ11、13から、接触近接検知装置1の外部の画像を取得する(ステップS31)。
【0036】
続いて、近接検知部212は、ステップS31において取得した画像からノイズを除去する(ステップS32)。
【0037】
次に、近接検知部212は、ステップS32においてノイズを除去した画像から、画像に含まれている物体のカメラからの距離を含む情報である深度マップを構築する(ステップS33)。
【0038】
次に、近接検知部212は、ステップS33において構築した深度マップから、対象物体を検出する(ステップS34)。
【0039】
次に、近接検知部212は、ステップS33において構築した深度マップとステップS34において検出した対象物体の座標から、カメラと対象物体の間の距離を計算する(ステップS35)。なお、近接検知部212は、後続のステップで用いるため、ステップS35において計算して求めた距離を、例えば、記憶部29に記憶する。
【0040】
そして、近接検知部212は、対象物体の速度を推定し(ステップS36)、処理を終了する。具体的には、近接検知部212は、例えば、ステップS35において記憶部29に記憶されている過去に求めたカメラと対象物体の間の距離を取得する。そして、近接検知部212は、現在検出されているカメラと対象物体の距離との差を求め、求めた差を、画像を取得した時間の差で割って、対象物体の速度を推定する。
【0041】
なお、接触検知部211及び近接検知部212は、検知部の一例である。接触検知部211によって検知された、表皮部15に接触している対象物体の有無、対象物体の位置、表皮部15に加えられている力の大きさ及び向きを含む情報は、接触情報の一例である。近接検知部212によって検知された、表皮部15に接触していない対象物体の有無、対象物体の位置又は速度を含む情報は、近接情報の一例である。
【0042】
以上説明した接触検知部211による接触検知処理と近接検知部212による近接検知処理は、同時には行われず、透明モード記憶部291に記憶された透明モードを示す値によって、いずれか一方が行われる。そして、透明モードは、透明モード切替部213によって、透明と不透明の何れか一方に、例えば、以下の基準に従って切り替えられる。
【0043】
(実施の形態1に係るロボットの制御処理について)
なお、ロボットは、人、車等の対象物体を検知したか否か、対象物体との距離及び接触の有無に応じて、例えば、制限なく動作する無制限モード、緩い制限の下で動作する制限1モード、制限1モードより厳しい制限の下で動作する制限2モード、又は安全に停止する緊急モードの何れかの制限モードで動作する。ロボットが緊急モードで動作するか、それ以外の制限モードで動作するかは、接触検知部211が接触を検知したか否かの基準で分けられる。ロボットが制限1モードで動作するか、制限2モードで動作するかは、近接検知部212が検知した対象物体とロボットとの距離がL1より短いか否かの基準で分けられる。対象物体とロボットと距離は、例えば、近接検知部212が検知した距離を指すものとする。
【0044】
以下、図7に示すフローチャートを参照して、接触近接検知装置1をアーム部分に用いたロボットの制御処理の一例について説明する。
まず、カメラ11、13は、画像を取得する(ステップS41)。次に、演算部21は、透明モードが不透明か否かを判定する(ステップS42)。透明モードが不透明を示す値である場合には(ステップS42;Yes)、接触検知部211は、対象物体が接触しているか否かを検知する(ステップS43)。接触検知部211が接触を検知した場合には(ステップS43;Yes)、制限モード切替部214は、制限モードに緊急モードを示す値を代入して、制限モードを緊急モードに設定する(ステップS44)。一方、ステップS43において、接触検知部211が接触を検知しなかった場合には(ステップS43;No)、透明モード切替部213は、透明モードに透明を示す値を代入して、透明モードを透明に切り替える(ステップS45)。
【0045】
また、ステップS42において、透明モードが透明を示す値である場合(ステップS42;No)又はステップS45が実行された場合には、近接検知部212は、対象物体を検知したか否かを判定する(ステップS46)。近接検知部212が対象物体を検知した場合には(ステップS46;Yes)、近接検知部212は、対象物体との距離dを計算する(ステップS47)。
次に、演算部21は、L1<d<L0の関係式を満たすか否かを判定し(ステップS48)、制限モード切替部214は、L1<d<L0の関係式を満たす場合には(ステップS48;Yes)、制限モードに制限1モードを示す値を代入して、制限モードを制限1モードに切り替える(ステップS49)。
一方、演算部21は、L1<d<L0の関係式を満たさない場合(ステップS48;No)、d<L1の関係式を満たすか否かを判定し(ステップS50)、d<L1の関係式を満たす場合には(ステップS50;Yes)、透明モード切替部213は、透明モードに不透明を示す値を代入して、透明モードを不透明に切り替える(ステップS51)。続いて、制限モード切替部214は、制限モードに制限2モードを示す値を代入して、制限モードを制限2モードに切り替える(ステップS52)。
【0046】
一方、ステップS50において、d<L1の関係式を満たさない場合(ステップS50;No)、又は近接検知部212が対象物体を検知しなかった場合(ステップS46;No)には、制限モード切替部214は、制限モードに無制限モードを示す値を代入して、制限モードを無制限モードに切り替える(ステップS53)。
【0047】
次に、演算部21は、切り替えられた制限モード及び透明モードに従って、ロボットを動作させる(ステップS54)。具体的には、演算部21は、透明モード記憶部291に記憶されている透明モードと制限モード記憶部292に記載されている制限モードとを読み出して、読み出した制限モード及び透明モードに従って、図2に示した通信部28を介してドライバ回路DCに信号を出力し、又は電力を供給して、ロボットを動作させる。
続いて、演算部21は、ロボットの動作を終了するか否かを判定し(ステップS55)、動作を終了しない場合には(ステップS55;No)、ステップS41に戻って、以上の流れを繰り返す。一方、演算部21は、動作を終了する場合には(ステップS55;Yes)、処理を終了する。
【0048】
なお、画像を取得するステップS41は画像取得ステップの一例であり、接触を検知するステップS43又は対象物体を検知するステップS46は検知ステップの一例であり、透明モードを切り替えるステップS45、S51は透明モード切替ステップの一例である。
【0049】
以上説明したように、本実施の形態に係る接触近接検知装置1によれば、演算部21は、上述した接触検知処理及び近接検知処理を実行する。
このようにすることで、本実施の形態に係る接触近接検知装置1は、接触している対象物体の位置、力の大きさ、力の向きを検知できるだけでなく、近接しつつある対象物体の位置及び速度も検知できる。
【0050】
なお、上述した処理は、ロボットのアームに限られず、検知装置に広く適用することができるものである。また、ロボットの種類も限定されず、本発明は、例えば、移動するロボット、人型ロボットの上半身、飛行ロボットなどにも適用される。
ロボットの制御処理においては、上述した条件の一部を削除し、追加し、又は変更してもよく、上述した処理の一部を削除し、又は他の処理を付加してもよい。
【0051】
以下、接触近接検知装置1又はこれと同等の構成を備える後述する試験装置EEを用いて行った実験例について説明する。
【0052】
(試験装置EEについて)
実験例において、図8(A)~図8(C)に示す試験装置EEを作製した。試験装置EEは、図8(A)~図8(C)に示すように、上方を撮像するカメラが内部に収容された直方体のケースの上面に接触近接検知装置1と同一のPDLCフィルムが貼り付けられた装置である。
【0053】
(実験例1)
実験例1では、試験装置EEに直接太陽光が当たらない室内において、PDLCフィルムを透明と不透明に切り替えて、マーカの検知を行った。
【0054】
この結果、実験例1では、図9の上段に示すように、PDLCフィルムを透明にした場合には、25個のマーカのうち、23個のマーカが検出された。この場合には、検出されなかった2個のマーカは、カメラからみて比較的強い光源である蛍光灯の付近にあったため、検出されなかったと考えられる。一方、実験例1では、図9の下段に示すように、PDLCフィルムを不透明にした場合には、25個のマーカが全て検出された。この場合には、蛍光灯から発せられた光が不透明のPDLCフィルムに遮られ、試験装置EEの外の光の影響を受けることなく、PDLCフィルムとマーカとのコントラストが維持されたものと考えられる。
【0055】
よって、上述した実験例1の結果から、接触近接検知装置1は、PDLCフィルム15bを不透明にしたときのほうが透明にしたときよりもマーカ18の検出の精度が高まることが分かる。
【0056】
(実験例2)
次に、実験例2では、試験装置EEと物体との距離を10cmと30cmの2通りに変えて、当該物体の検出を行った。なお、物体として、手で支えた紙の円筒を用いた。
【0057】
この結果、実験例2では、図10の下段の左2つの画像に示すように、PDLCフィルムを透明にした場合、試験装置EEと物体との距離が10cmと30cmのいずれのときでも、物体が検出された。一方、図10の下段の右2つの画像に示すように、実験例2では、PDLCフィルムを不透明にした場合、試験装置EEと物体の距離が10cmのときには、物体が検出されたが、距離が30cmのときには、物体は検出されなかった。なお、実験例2では、PDLCフィルムが不透明な場合において試験装置EEと物体との距離が30cmのときには、物体の画像が不明瞭であるため、物体が検出されなかったことが分かる。
【0058】
よって、実験例2では、異なる距離で比較すると、PDLCフィルムが透明な場合には、物体との距離に関わらず物体の近接を検知できる一方、PDLCフィルムが不透明な場合には、物体が30cm程度まで離れると物体の近接を検知できないことが分かる。
【0059】
したがって、上述した実験例1、2の結果から、接触近接検知装置1は、PDLCフィルム15bの透明と不透明を切り替えることで、接触している物体だけでなく、近接する物体を検知することができることが分かる。
【0060】
(実験装置PEについて)
また、実験例において、図11に示す実験装置PEも作製した。実験装置PEは、図11に示すように、接触近接検知装置1、接触近接検知装置1に電力を供給する電源装置PU、接触近接検知装置1及び電源装置PUの状態を切り替える操作を受け付ける操作パネルCPを含む。
【0061】
実験装置PEは、接触近接検知装置1のPDLCフィルム15bを透明と不透明の間で切り替えるとともに、カメラ11、13の露出を自動露出と制御された露出の間で切り替えて、カメラ11、13によって取得された画像を調べる装置である。
なお、露出とは、カメラ11、13に含まれるイメージセンサに到達する光の量を指定するパラメータである。自動露出は検出した光の強さに応じてパラメータを設定する露出のモードであり、制御された露出は手動でパラメータを設定する露出のモードである。
【0062】
(実験例3)
実験例3では、実験装置PEのPDLCフィルム15bを不透明に、カメラ11、13の露出を自動露出にそれぞれ設定して画像を取得した。図12(A)は、カメラ11によって取得された第1の画像、図12(B)は、カメラ13によって取得された第2の画像である。図12(C)、(D)は、図12(A)、図12(B)の各画像に2値化処理を行った後の2値画像である。
【0063】
この結果、実験例3では、図12(B)において左上を楕円で囲んだように、検出されなかったマーカ18の群があった。これは、実験装置PEの外部に比較的強い光源があり、光源の近くに位置する画素の輝度が飽和してマーカ18の形が見えにくくなったためと考えられる。
【0064】
(実験例4)
次に、実験例4では、実験装置PEのPDLCフィルム15bを透明に、カメラ11、13の露出を制御された露出にそれぞれ設定して画像を取得した。図13(A)は、カメラ11によって取得された第1の画像、図13(B)は、カメラ13によって取得された第2の画像を示したものである。図13(C)、図13(D)は、図13(A)、図13(B)に対応する2値画像である。
【0065】
この結果、実験例4では、図13(B)において左上と右を楕円で囲んだように、検出されなかったマーカ18の群があった。これは、接触近接検知装置1を含む実験装置PEの外部に比較的強い光源があり、光源の近くに位置する画素の輝度が飽和してマーカ18の形が見えにくくなったためと考えられる。
【0066】
(実験例5)
さらに、実験例5では、実験装置PEのPDLCフィルム15bを不透明に、カメラ11、13の露出を制御された露出にそれぞれ設定して画像を取得した。図14(A)は、カメラ11によって取得された第1の画像、図14(B)は、カメラ13によって取得された第2の画像を示したものである。図14(C)、図14(D)は、図14(A)、図14(B)に対応する2値画像である。
【0067】
この結果、実験例5では、図14(A)~図14(D)に示すように、全てのマーカ18が正しく検出された。これは、カメラ11、13のイメージセンサが外光から遮断されたためであると考えられる。また、実験例5は、実験例3、4との比較から、マーカ18の検出のために最適であることが分かる。
【0068】
次に、実験例では、接触近接検知装置1の外部に様々な物体を配置して、PDLCフィルム15bを透明と不透明の間で切り替えて、近接検知を行った。
【0069】
(実験例6)
まず、実験例6では、PDLCフィルム15bを透明にして近接検知を実行した。
図15(A)、図15(B)は、財布を接触近接検知装置1に近づけて取得した画像である。また、図16(A)、図16(B)は、テープを接触近接検知装置1に近づけて取得した画像である。また、図17(A)、図17(B)は、手を接触近接検知装置1に近づけて取得した画像である。図15(A)、図16(A)、図17(A)は、カメラ11によって取得された第1の画像、図15(B)、図16(B)、図17(B)は、カメラ13によって取得された第2の画像である。また、図15(C)、図16(C)、図17(C)は、図15(A)、図16(A)、図17(A)に対応する2値画像である。また、図15(D)、図16(D)、図17(D)は、図15(B)、図16(B)、図17(B)に対応する2値画像である。
【0070】
この結果、実験例6では、図15(C)~(D)、図16(C)~(D)、図17(C)~(D)に示すように、PDLCフィルムを透明にした場合には、接触近接検知装置1は、外部にある物体の形状を認識できることが分かる。
【0071】
(実験例7)
次に、実験例7では、PDLCフィルム15bを不透明にして近接検知を実行した。
図18(A)、図18(B)は、財布を接触近接検知装置1に近づけて取得した画像である。また、図19(A)、図19(B)は、テープを接触近接検知装置1に近づけて取得した画像である。また、図20(A)、図20(B)は、手を接触近接検知装置1に近づけて取得した画像である。図18(A)、図19(A)、図20(A)は、カメラ11によって取得された第1の画像、図18(B)、図19(B)、図20(B)は、カメラ13によって取得された第2の画像である。また、図18(C)、図19(C)、図20(C)は、図18(A)、図19(A)、図20(A)に対応する2値画像である。また、図18(D)、図19(D)、図20(D)は、図18(B)、図19(B)、図20(B)に対応する2値画像である。
【0072】
この結果、実験例7では、図18(C)~(D)、図19(C)~(D)、図20(C)~(D)に示すように、PDLCフィルムを不透明にした場合には、接触近接検知装置1は、外部にある物体を検出することができず、形状も認識できないことが分かる。
【0073】
したがって、述した実験例6、7の結果から、近接検知を行うためには、PDLCフィルムを透明にすることが有効であることが分かる。
【0074】
[実施の形態2]
なお、実施の形態1に係る接触近接検知装置1では、支持部19は、図3(B)に示すように、比較的直径が小さい円筒であるため、表皮部15から離れているがこれに限定されない。以下、図21を参照して、実施の形態2に係る接触近接検知装置2について、詳細に説明する。なお、実施の形態2では、実施の形態1と異なる構成について説明し、実施の形態1と同一の構成については冗長であるため説明を省略する。
【0075】
(実施の形態2に係る接触近接検知装置2について)
図21(A)、(B)に示すように、本実施の形態に係る接触近接検知装置2は、実施の形態1の支持部19に比べて直径が大きい円筒形状に形成された支持部19cを備える。
【0076】
本実施の形態では、図21(B)に示すように、表皮部26は、外側から外皮部15a、PDLCフィルム15b及び内皮部19aの順に並んだ3層構造を有している。外皮部15a、PDLCフィルム15b及び内皮部19aは密着している。PDLCフィルム15bと支持部19cは接しているが、密着していない。マーカ18は、内皮部19aに覆われている。ここで、内皮部19aは、外皮部15aと同様に、例えば、透明のアクリル樹脂を円筒の形状に形成したものである。支持部19cは、接触近接検知装置1の支持部19と同様に、例えば、円筒の形状の透明のアクリル樹脂を含み、外皮部15aよりも高い剛性を有する条件で形成されている。
【0077】
以上説明したように、本実施の形態に係る接触近接検知装置2によれば、支持部19cは、実施の形態1の支持部19よりも太い。
このようにすることで、本実施の形態に係る接触近接検知装置2は、実施の形態1に係る接触近接検知装置1よりも機械的な強度が向上する。この結果、本実施の形態に係る接触近接検知装置2は、特に産業用ロボットに対して、重く、安定した構造を提供できる。
【0078】
[実施の形態3]
なお、実施の形態2に係る接触近接検知装置2では、表皮部15に配置されたマーカ18は、半球状に形成されているがこれに限定されない。以下、図22を参照して、実施の形態3に係る接触近接検知装置3について、詳細に説明する。なお、実施の形態3では、実施の形態1、2と異なる構成について説明し、実施の形態1、2と同一の構成については冗長であるため説明を省略する。
【0079】
(実施の形態3に係る接触近接検知装置3について)
図22(A)、(B)に示すように、本実施の形態に係る接触近接検知装置3では、マーカ38は、完全球状に形成されている。
【0080】
マーカ38は、内皮部19aに覆われている。マーカ38の直径は、マーカ18の直径よりも小さく、例えば、2mmである。
【0081】
また、マーカ38は、内皮部19aにおいて、規則正しく並んでおらず、ランダムに分散して配置されている。本実施の形態の接触検知部211は、マーカ38が規則正しく並んでいなくても、例えば、以下の手順で、表皮部36に加えられている力を計算できる。まず、接触検知部211は、表皮部36に物体が接触しておらず、表皮部36が撓んでいない状態において、マーカ38を含む画像を取得する。次に、接触検知部211は、表皮部36に物体が接触して、表皮部36が撓んだ状態でマーカ38を含む画像を取得し、マーカ38の座標を比較することで、表皮部36の変位を計算する。そして、接触検知部211は、表皮部36の変位から、表皮部36に加えられている力を計算する。
【0082】
なお、接触検知部211は、図4図5に示した実施の形態1の手順で、機械学習により、マーカ38を含む画像から表皮部36に加えられている力を推論してもよい。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態に係る接触近接検知装置3によれば、表皮部36には、マーカ38が一つずつ規則正しく配置されていない。
このようにすることで、本実施の形態に係る接触近接検知装置3は、実施の形態1、2に係る接触近接検知装置1、2よりも表皮部36を容易に形成することができる。
【0084】
[実施の形態4]
なお、実施の形態1~3に係る接触近接検知装置1~3は、学習済みモデル記憶部293に記憶された学習済みモデルに基づいて機械学習により接触検知及び近接検知を行うものであるが、接触検知及び近接検知の方法はこれに限定されない。以下、図23図25を参照して、実施の形態4に係る接触近接検知装置4について、詳細に説明する。なお、実施の形態4では、実施の形態1~3と異なる構成について説明し、実施の形態1~3と同一の構成については冗長であるため説明を省略する。
【0085】
(実施の形態4に係る接触近接検知装置4について)
図23に示すように、本実施の形態に係る接触近接検知装置4は、学習済みモデル記憶部293が省略されている。
【0086】
また、接触近接検知装置4の情報演算装置420は、演算部421に接触検知部411及び近接検知部412を備える。
以下、接触検知部411による接触検知処理及び近接検知部412による近接検知処理について説明する。
【0087】
(実施の形態4に係る接触検知処理について)
図24に、接触検知部411による接触検知処理の流れを示す。この接触検知処理は、PDLCフィルム15bを不透明にして行われる。
まず、接触検知部411は、カメラ11、13から、画像を取得する(ステップS61)。次に、接触検知部411は、取得した画像からマーカ18の展開を行う(ステップS62)。ここで、マーカ18の展開とは、具体的には、各マーカ18の座標を求めることをいう。
続いて、接触検知部411は、マーカ18の登録を行う(ステップS63)。ここで、マーカ18の登録とは、画像における複数のマーカ18の座標を、各マーカ18を識別する情報と対応づけることをいう。
【0088】
次に、接触検知部411は、画像から、マーカ18の偏差を計算する(ステップS64)。次に、接触検知部411は、ステップS64で求められた偏差から、力の分布のマッピングを行う(ステップS65)。ここで、力の分布のマッピングとは、具体的には、表皮部15に加えられている力を、表皮部15の各点で求めることをいう。
次に、接触検知部411は、ステップS65で求められた力の分布から、力と位置を推測する(ステップS66)。そして、接触検知部411は、動作を終了するか否かを判定し(ステップS67)、動作を終了するときには(ステップS67;Yes)、処理を終了する。一方、接触検知部411は、動作を継続するときには(ステップS67;No)、ステップS61に戻り、動作を終了するまでステップS61からステップS67の処理を繰り返す。
【0089】
(実施の形態4に係る近接検知処理について)
図25に、近接検知部412による近接検知処理の流れを示す。この近接検知処理は、PDLCフィルム15bを透明にして行われる。
まず、近接検知部412は、カメラ11、13から画像を取得する(ステップS71)。次に、近接検知部412は、背景のキャリブレーションを行う(ステップS72)。ここで、背景のキャリブレーションとは、具体的には、ステップS71において取得された画像を基準となる画像とするため、例えば、ノイズを除去したり、歪みを補正したりすることをいう。次に、近接検知部412は、カメラ11、13から新たに画像を取得する(ステップS73)。続いて、近接検知部412は、ステップS73において取得した画像の前処理を行う(ステップS74)。なお、画像の前処理とは、次のステップS75に進む前に、例えば、画像のコントラスト、輝度等を調整したり、ノイズを除去したりすることを含む処理である。
【0090】
次に、近接検知部412は、背景を減算する(ステップS75)。具体的には、近接検知部412は、ステップS71において取得され、ステップS72において背景のキャリブレーションをされた基準となる画像に含まれる各画素から、ステップS73において取得され、ステップS74において前処理をされた画像に含まれる各画素を引き算する。
【0091】
続いて、近接検知部412は、対象物体を検知する(ステップS76)。具体的には、近接検知部412は、例えば、ステップS75で得られた減算の結果から、差分が特定の閾値を超える画素に対応する座標には、対象物体が含まれるものとして、対象物体を検知する。
【0092】
そして、近接検知部412は、動作を終了するか否かを判定し(ステップS77)、動作を終了する場合には(ステップS77;Yes)、処理を終了する。一方、近接検知部412は、動作を継続する場合には(ステップS77;No)、ステップS73に戻り、動作を終了するまでステップS73からステップS77の処理を繰り返す。
【0093】
以上説明したように、本実施の形態に係る接触近接検知装置4によれば、演算部421は、上述した接触検知処理及び近接検知処理を実行する。
このようにすることで、本実施の形態に係る接触近接検知装置4は、機械学習を行わなくても実施の形態1に係る接触近接検知装置1と同様の作用効果を奏する。
【0094】
[実施の形態5]
なお、実施の形態1では、1台の接触近接検知装置1をロボットのアーム部分に用いたときの制御について説明したが、複数台の接触近接検知装置1をロボットのアーム部分に用いてもよい。以下、図26図28を参照して、実施の形態5に係るロボットアーム5について、詳細に説明する。なお、実施の形態5では、実施の形態1と異なる構成について説明し、実施の形態1と同一の構成については冗長であるため説明を省略する。
【0095】
(実施の形態5に係るロボットアーム5について)
図26(A)、図26(B)に示すように、本実施の形態に係るロボットアーム5は、実施の形態1に係る接触近接検知装置1と同様に構成された2台の接触近接検知装置1を後述するリンク部材51、52として用いている。すなわち、ロボットアーム5は、1台目の接触近接検知装置1によって構成された第1リンク部材51、2台目の接触近接検知装置1によって構成された第2リンク部材52を備える。また、ロボットアーム5は、第1リンク部材51の一端である下端と連結された第1ジョイント部材53、第1リンク部材51の他端である上端及び第2リンク部材52の一端と連結された第2ジョイント部材54を備える。また、ロボットアーム5は、上端が第1ジョイント部材53と連結された支持部55を備える。
【0096】
図26(B)に示すように、第1ジョイント部材53は、第1リンク部材51の下端が固定された第1回転軸531、支持部55が固定された第2回転軸532、第1回転軸531及び第2回転軸532を回転させるモータ533を含む。また、図26(A)に示すように、第1ジョイント部材53は、第1回転軸531、第2回転軸532及びモータ533の外方を覆う表皮部534を含む。また、第2ジョイント部材54は第1ジョイント部材53と同様に、第1リンク部材51の上端が固定された第1回転軸541、第2リンク部材52の一端が固定された第2回転軸542、第1回転軸541及び第2回転軸542を回転させるモータ543を含む。また、第1ジョイント部材53は、第1回転軸541、第2回転軸542及びモータ543の外方を覆う表皮部544を含む。
【0097】
よって、ロボットアーム5は、第1ジョイント部材53のモータ533が第1回転軸531及び第2回転軸532を回転させるとともに、第2ジョイント部材54のモータ543が第1回転軸541及び第2回転軸542を回転させることで、第1リンク部材51及び第2リンク部材52を移動させ、図26(A)に示すX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の各位置を変化させることができる。
【0098】
(実施の形態5に係る接触近接検知装置1について)
図27に示すように、本実施の形態に係る接触近接検知装置1は、演算部21にロボットアーム5のリンク部材51、52としての接触近接検知装置1の移動を制御する移動制御部215が新たに追加されている。
【0099】
移動制御部215は、各ジョイント部材53、54のモータ533、543による第1回転軸531、541及び第2回転軸532、542の回転方向、回転速度及び回転量を制御することで、接触近接検知装置1の位置、移動方向及び移動速度を制御する。また、移動制御部215は、透明モード記憶部291に記憶されている透明モードと制限モード記憶部292に記載されている制限モードとに従って、通信部28を介してドライバ回路DCに信号を出力し、又は電力を供給してモータ533、543等を制御することで、接触近接検知装置1の移動を制御する。
【0100】
(実施の形態5に係るロボットの制御処理について)
本実施の形態では、ロボットアーム5は、透明モードが透明である場合において制限モードが制限1モードであるとき、近接検知処理によって検知した対象物体との距離、速度を含む情報に基づいて、対象物体との衝突を回避したり衝撃を低減したりする安全制御を行う。具体的には、移動制御部215は、例えば、ロボットアーム5の停止中に対象物体が何れかのリンク部材51、52に急に近づいてきた場合、対象物体と同一の方向に同一の速度で近づかれているリンク部材51、52を移動させて対象物体と当該リンク部材51、52との距離を保つことで、衝突を回避しようとする制御を行う。また、移動制御部215は、例えば、ロボットアーム5の動作中に対象物体が何れかのリンク部材51、52に急に近づいてきた場合、近づかれているリンク部材51、52の移動速度を低減させることで、対象物体との衝撃を低減しようとする制御を行う。
【0101】
なお、移動制御部215は、上述した安全制御を行う場合、公知のアドミッタンス制御及びインピーダンス制御を用いて上述した制御を行ってもよい。この場合、移動制御部215は、例えば、外部からの仮想的な作用力に基づいて、ロボットアーム5の位置、移動方向、移動速度を決定する制御を行うことになる。なお、外部からの仮想的な作用力については、例えば、近接検知処理によって検知されたリンク部材51、52と対象物体との測定距離に比例定数を乗算した値を用いることができる。
【0102】
以上説明したように、本実施の形態に係るロボットアーム5によれば、1台目の接触近接検知装置1は、第1リンク部材51を構成し、2台目の接触近接検知装置1は、第2リンク部材52を構成する。
このようにすることで、本実施の形態に係るロボットアーム5は、2台の接触近接検知装置1を用いて動作することができる。
【0103】
また、本実施の形態に係るロボットアーム5によれば、移動制御部215は、透明モードが透明である場合において制限モードが制限1モードであるとき、近接検知処理によって検知された情報に基づいて、対象物体との衝突を回避したり衝撃を低減したりする安全制御を行う。
このようにすることで、本実施の形態に係るロボットアーム5は、安全制御を行わないロボットアームよりもサービスの提供を受ける人に不快感を与え難くすることができる。
その他、本実施の形態に係るロボットアーム5のリンク部材51、52は、実施の形態1に係る接触近接検知装置1と同様の作用効果を奏する。
【0104】
以下、ロボットアーム5を用いて行った実験例について説明する。
【0105】
(実験例8)
実験例8では、ロボットアーム5の第2リンク部材52を用いて対象物体であるマネキンの腕との距離を測定した。具体的には、第2リンク部材52とマネキンの腕との実際の距離を10mm毎に、20mm、30mm、…、100mmとなるように配置し、それぞれの距離において図6に示す近接検知処理を実行して距離を測定した。
【0106】
この結果、実験例8では、図28に示すように、測定距離の中央値は、実際の距離に近似していることがわかる。具体的には、実際の距離が20mmのときの測定距離の中央値は約10mm、実際の距離が30mm、40mmのときの測定距離の中央値は約42mm、実際の距離が50mmのときの測定距離の中央値は約60mmであることが分かる。また、実際の距離が60mmのときの測定距離の中央値は約75mm、実際の距離が70mmのときの測定距離の中央値は約68mm、実際の距離が80mmのときの測定距離の中央値は約82mm、実際の距離が90mmのときの測定距離の中央値は約88mm、実際の距離が100mmのときの測定距離の中央値は約86mmであることが分かる。なお、測定距離と実際の距離との二乗平均平方根誤差(RMSE、Root Mean Squared Error)は、10.35mmであるため、許容できる程度の誤差であると考えられる。
【0107】
よって、上述した実験例8の結果から、ロボットアーム5の各リンク部材51、52は、対象物体との距離を精度良く測定できることが分かる。このため、ロボットアーム5の各リンク部材51、52は、対象物体が近づいてくる速度も精度良く測定できると考えられる。
【0108】
(実験例9)
次に、実験例9では、ロボットアーム5の第1リンク部材51を対象物体である人の指で押したときの力の大きさを測定した。具体的には、第1リンク部材51の表皮部15の窪みの深さをd[mm]とし、d=1.25[mm]、d=2.5[mm]、d=3.75[mm]、d=5[mm]となるように指で押した状態とし、それぞれの窪みの深さdにおいて図5に示す接触検知処理の推論フェーズを実行して力の大きさ[N]を測定した。
【0109】
この結果、実験例9では、図29に示すように、第1リンク部材51を人の指で押したときの力の測定値は、実際の力の理論値に近似していることがわかる。具体的には、d=1.25[mm]で実際の力の理論値が約0.1Nのときの測定値は約0.05N、d=2.5[mm]で実際の力の理論値が約0.6Nのときの測定値は約0.5Nであることが分かる。また、d=3.75[mm]で実際の力の理論値が約1.3Nのときの測定値は約1.1N、d=5[mm]で実際の力の理論値が約2.3Nのときの測定値は約1.8Nであることが分かる。
【0110】
よって、上述した実験例9の結果から、ロボットアーム5の各リンク部材51、52は、押圧している対象物体の力の大きさを信頼できる程度の正確さで測定できることが分かる。このため、ロボットアーム5の各リンク部材51、52は、接触している対象物体の位置、力の向きも信頼できる程度の正確さで測定できると考えられる。
【0111】
(実験例10)
次に、実験例10では、ロボットアーム5の停止中に安全制御が実際に行われるか否かの確認を行った。実験例10では、図30に示すように、マネキンの腕にY軸方向に沿ってロボットアーム5の第2リンク部材52に向かって接近・離隔する動作を繰り返させた。そして、ロボットアーム5は、第2リンク部材52を用いてマネキンの腕が上述した移動を行っているときの第2リンク部材52からマネキンの腕までの距離、第2リンク部材52を移動させるときに発生させる力の大きさ、第2リンク部材52の停止位置からの移動量をそれぞれ測定した。
【0112】
図31(A)は、第2リンク部材52からマネキンの腕までの測定距離[mm]を縦軸とし、時間[s]を横軸としたときの測定距離と時間との関係を示すグラフである。なお、図31(A)では、測定距離の生データの値のグラフを細い実線で示すとともに、測定距離の生データの値をローパスフィルタによってフィルタリングした後の値のグラフを太い実線で示している。また、図31(B)は、第2リンク部材52を移動させるときに発生させる仮想的な作用力の大きさ[N]の絶対値を縦軸とし、時間[s]を横軸としたときの力の大きさと時間との関係を示すグラフである。また、図31(C)は、第2リンク部材52の停止位置からの移動量[m]を縦軸とし、時間[s]を横軸としたときの移動量と時間との関係を示すグラフである。なお、図31(C)では、第2リンク部材52の停止位置からの図26(A)に示すX軸方向の移動量を1点鎖線で示し、Y軸方向の移動量を実線で示し、Z軸方向の移動量を2点鎖線で示している。
【0113】
この結果、実験例10では、図31(A)に示すように、第2リンク部材52からマネキンの腕までの測定距離は、0mmにならずに約120mmから約5mmまでの間で変化することが分かる。具体的には、測定距離は、測定開始直後の約100mmから約10秒後に約5mmとなった後に長くなる。また、測定距離は、約10秒後の約5mmから約14秒後に約120mmとなった後に再び短くなる。また、測定距離は、約14秒後の約120mm未満から約20秒後に約5mmとなった後に再び長くなる。そして、測定距離は、約20秒後の約5mm未満から約26秒後に約120mmとなった後、30秒後まで約120mmとなる。
【0114】
また、実験例10では、図31(B)に示すように、第2リンク部材52を移動させるときに発生させる力の大きさの絶対値は、0Nから約0.45Nまでの間で変化していることが分かる。具体的には、仮想的な作用力の大きさの絶対値は、測定開始後から3秒後の0Nから大きくなり、約7秒後に約0.45Nとなる。また、仮想的な作用力の大きさの絶対値は、約12秒後の約0.45Nから小さくなり、約13秒後に約0Nとなる。また、力の大きさの絶対値は、約15秒後の約0Nから再び大きくなり、約18秒後に約0.45Nとなる。そして、仮想的な作用力の大きさの絶対値は、約23秒後の約0.45Nから再び小さくなり、約25秒後に約0Nとなった後、30秒後まで約0Nとなる。また、実験例10では、図31(A)、図31(B)に示すように、仮想的な作用力の大きさの絶対値は、上述した測定距離が短くなるに連れて大きくなるとともに、測定距離が長くなるに連れて小さくなることが分かる。
【0115】
また、実験例10では、図31(C)に示すように、第2リンク部材52の停止位置からの移動量は、Y軸方向のみ約0.02mから約0.46mまでの間で変化する一方、X軸方向及びZ軸方向については殆ど変化しないことが分かる。具体的には、Y軸方向の移動量は、測定開始後の約0.02mから長くなり、約10秒後に約0.46mとなる。また、Y軸方向の移動量は、約10秒後の約0.46mから短くなり、約16秒後に約0.04mとなる。また、Y軸方向の移動量は、約16秒後の約0.04mから再び長くなり、約23秒後に約0.36mとなる。そして、Y軸方向の移動量は、約23秒後の約0.36mから再び短くなり、約30秒後に約0.02mとなる。また、実験例10では、図31(A)、図31(C)に示すように、Y軸方向の移動量は、上述した測定距離が短くなるに連れて長くなるとともに、測定距離が長くなるに連れて短くなることが分かる。
【0116】
よって、上述した実験例10の結果から、ロボットアーム5は、停止中に対象物体が急に近づいてきた場合、近接検知処理によって検知された情報に基づいて、対象物体との衝突を回避する安全制御を実際に行うことができると考えられる。
【0117】
(実験例11)
そして、実験例11では、ロボットアーム5の動作中に安全制御が実際に行われるか否かの確認を行った。実験例11では、ロボットアーム5の第2リンク部材52は、約0.048m/sまで加速した後に減速して基準位置から+Y方向の目標位置で停止した後、約-0.048m/sまで加速した後に減速して-Y方向の基準位置まで戻って停止する動作を繰り返している。また、実験例11では、図32に示すように、対象物体である人の手を+Y方向に沿って第2リンク部材52に向かって接近した後、-Y方向に沿って第2リンク部材52から離隔する動作を繰り返した。そして、ロボットアーム5は、第2リンク部材52を用いて人の手が上述した移動を行っているときの第2リンク部材52からマネキンの腕までの距離、第2リンク部材52のY軸方向の移動速度をそれぞれ測定した。なお、実験例11では、制限モードが無制限モードから制限1モードに切り替わる閾値となる第2リンク部材52と人の手との距離L0が60mmに設定されている。
【0118】
図33(A)は、第2リンク部材52から人の手までの測定距離[mm]を縦軸とし、時間[s]を横軸としたときの測定距離と時間との関係を示すグラフである。また、図33(B)は、第2リンク部材52の移動速度[m/s]を縦軸とし、時間[s]を横軸としたときの移動速度と時間との関係を示すグラフである。
【0119】
この結果、実験例11では、図33(A)に示すように、第2リンク部材52から人の手までの測定距離は、0mmから約130mmまでの間で変化することが分かる。具体的には、測定距離は、測定開始直後から約3秒後まで約70mmから約130mmまでの値となった後に短くなり、約4秒後に約10mmとなる。また、測定距離は、約4秒後から約13秒後まで0mmから約30mmまでの値となった後に再び長くなり、約14秒後に約130mmとなる。また、測定距離は、約14秒後から約17秒後まで約80mmから約130mmまでの値となった後に再び短くなり、約18秒後に約10mmとなる。そして、測定距離は、約18秒後から30秒後まで0mmから約40mmとなる。
【0120】
また、実験例11では、図33(B)に示すように、第2リンク部材52の移動速度は、約-0.048m/sから約0.048m/sまでの間で変化していることが分かる。具体的には、移動速度は、測定開始直後から約1秒後に約0.048m/sとなった後に減少し、約4秒後に約-0.048m/sとなった後に増加し、約4.5秒後に約-0.02m/sとなる。また、移動速度は、約4.5秒後に約-0.02m/sとなった後に緩やかに増加し、約10秒後に約0.02m/sとなった後に緩やかに減少し、約17秒後に再び約-0.02m/sとなる。
【0121】
また、移動速度は、約17秒後に-0.02m/sとなった後に減少して約-0.04m/sとなった後に増加し、約18秒後に再び約0.048m/sとなる。また、移動速度は、約18秒後に再び約0.048m/sとなった後に減少し、約22秒後に再び約-0.048m/sとなった後に増加し、約23秒後に再び約-0.02m/sとなる。また、移動速度は、約23秒後に約-0.02m/sとなった後に緩やかに増加し、約27秒後に約0.02m/sとなった後に緩やかに減少し、30秒後に約0m/sとなる。また、実験例11では、図31(A)、図31(B)に示すように、移動速度は、上述した測定距離がL0=60[mm]以上のときの最大速度が約0.048m/sである一方、測定距離がL0=60[mm]未満のときの最大速度がおよそ半分となる約0.02m/sであることが分かる。
【0122】
よって、上述した実験例11の結果から、ロボットアーム5は、移動中に対象物体が急に近づいてきた場合、近接検知処理によって検知された情報に基づいて、対象物体との衝撃を低減するために移動速度を半減する安全制御を実際に行うことができると考えられる。
【0123】
[変更例]
なお、上記の実施の形態5では、ボットアーム5のリンク部材51、52を実施の形態1に係る接触近接検知装置1によって構成したが、これに限定されず、実施の形態2~4に係る接触近接検知装置2~4によって構成してもよい。
【0124】
なお、上記の実施の形態5では、移動制御部215は、制限モードが制限1モードであるときに安全制御を行っているが、これに限定されず、制限モードが制限2モードであるときにも安全制御を行ってもよい。この場合、制限2モードのときには透明モードを不透明としているが、移動制御部215が近接検知処理によって検知された情報に基づいて安全制御を行うために、制限モードが制限1モードのときだけでなく制限2モードのときにも透明モードを透明にする必要がある。
【0125】
なお、上記の実施の形態5では、ロボットアーム5のリンク部材51、52である接触近接検知装置1がそれぞれジョイント部材53、54を制御して自らの移動を制御しているが、リンク部材51、52の移動の制御についてはこれに限定されない。例えば、ロボットアーム5のメインコンピュータがジョイント部材53、54を制御することでリンク部材51、52の移動を制御してもよい。
【0126】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0127】
本出願は、2021年7月27日に出願された特願2021-122314号に基づく。本明細書中に特願2021-122314号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。
【符号の説明】
【0128】
1,2,3,4…接触近接検知装置、5…ロボットアーム、11,13…カメラ、12,14…基部、15,26,36,534,544…表皮部、15a…外皮部、15b…PDLCフィルム、16…コネクタ、17…LED、18,38…マーカ、19,19c…支持部、19a…内皮部、20,420…情報演算装置、21,421…演算部、24…バス、28…通信部、29…記憶部、51…第1リンク部材、52…第2リンク部材、53…第1ジョイント部材、54…第2ジョイント部材、55…支持部、211,411…接触検知部、212,412…近接検知部、213…透明モード切替部、214…制限モード切替部、215…移動制御部、291…透明モード記憶部、292…制限モード記憶部、293…学習済みモデル記憶部、531,541…第1回転軸、532,542…第2回転軸、533,543…モータ、CP…操作パネル、DC…ドライバ回路、EE…試験装置、PE…実験装置、PU…電源装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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