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特開2023-18675車両用レードーム及び当該レードームを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018675
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】車両用レードーム及び当該レードームを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/04 20060101AFI20230201BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230201BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
B60R13/04 Z
B32B15/08 H
B32B15/08 E
B29C45/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022119475
(22)【出願日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】21382696
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】517009486
【氏名又は名称】ザニニ オート グループ,ソシエダッド アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー プジャダス オーガスト
(72)【発明者】
【氏名】ブラボ ガルシア ビートリス
(72)【発明者】
【氏名】ソランス サラ サーニ
(72)【発明者】
【氏名】アルメンゴル ロカスパナ ジョセプ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ペラルタ モラレス ジャーソン ジェアー
【テーマコード(参考)】
3D023
4F100
4F206
【Fターム(参考)】
3D023AB17
3D023AC12
3D023AD06
4F100AA17C
4F100AB01C
4F100AK45A
4F100AK74E
4F100BA05
4F100BA07
4F100EC042
4F100EH36A
4F100EH46B
4F100EH46D
4F100EH66C
4F100EJ65D
4F100GB31
4F100HB00B
4F100HB00C
4F100HB31B
4F100HB31E
4F100JA06D
4F100JD08
4F100JL10B
4F100JL11D
4F100JN01A
4F100YY00D
4F206AA28
4F206AD03
4F206AD05
4F206AD19
4F206AD20
4F206AD27
4F206AE03
4F206AH17
4F206JA07
4F206JB12
4F206JF05
4F206JL02
4F206JW41
(57)【要約】      (修正有)
【課題】レードームの、レーダー放出波及び受信波の透過性能を高める。
【解決手段】車両用レードーム(1)は、前方透明層(5)、金属様装飾層(7)、後方層(10)、金属様装飾層(7)と後方層(10)との間に配置された接着促進剤層(8)、及び、前方透明層(5)と金属様装飾層(7)との間に配置された着色装飾層(6)を備える。当該レードームを製造するための方法は、各層を形成するステップを含み、それにより、接着促進剤層(8)が、金属様装飾層(7)と後方層(10)との間に配置されるとともに、着色装飾層(6)が、前方透明層(5)と金属様装飾層(7)との間に配置される。これにより、レードームのプラスチック成形部品間に空隙がないレードームの提供が可能になり、レードームの、レーダー放出波及び受信波の透過性能を高める。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用レードーム(1)であって、
- 前方透明層(5)と、
- 金属様装飾層(7)と、
- 後方層(10)と、
- 前記金属様装飾層(7)と前記後方層(10)との間に配置された接着促進剤層(8)と、
- 前記前方透明層(5)と前記金属様装飾層(7)との間に配置された着色装飾層(6)と、を備える、車両用レードーム(1)。
【請求項2】
前記接着促進剤層(8)が、30mPa・s未満の粘度を有する、請求項1に記載の車両用レードーム(1)。
【請求項3】
前記接着促進剤層(8)が、20μm未満の厚さを有する、請求項1又は2に記載の車両用レードーム(1)。
【請求項4】
前記着色装飾層(6)には、非被覆エリア(11)が設けられる、請求項1に記載の車両用レードーム(1)。
【請求項5】
前記レードーム(1)が、前記接着促進剤層(8)上に適用されたインク層(9)も備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用レードーム(1)。
【請求項6】
前記インク層(9)が、前記接着促進剤層(8)と前記後方層(10)との間に配置される、請求項5に記載の車両用レードーム(1)。
【請求項7】
前記金属様装飾層(7)、前記接着促進剤層(8)、及び/又は、前記インク層(9)が、マスキングエリア(12)を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用レードーム(1)。
【請求項8】
前記金属様装飾層(7)、前記接着促進剤層(8)、及び/又は、前記インク層(9)の前記マスキングエリア(12)が、互いに合致して配置される、請求項6又は7に記載の車両用レードーム(1)。
【請求項9】
前記金属様装飾層(6)が、金属、メタロイド、及び/又は、酸化物で作成される、請求項1に記載の車両用レードーム(1)。
【請求項10】
車両用レードーム(1)を製造するための方法であって、以下の、
- 前方透明層(5)を形成するステップ、
- 着色装飾層(6)を形成するステップ、
- 金属様装飾層(7)を形成するステップ、
- 接着促進剤層(8)を形成するステップ、及び、
- 後方層(10)を形成するステップ
を含み、それにより、前記接着促進剤層(8)が、前記金属様装飾層(7)と前記後方層(10)との間に配置されるとともに、前記着色装飾層(6)が、前記前方透明層(5)と前記金属様装飾層(7)との間に配置される、車両用レードーム(1)を製造するための方法。
【請求項11】
前記着色装飾層(6)上において非被覆エリア(11)をマスキングするステップも含む、請求項10に記載の、車両用レードーム(1)を製造するための方法。
【請求項12】
前記接着促進剤層(8)上にインク層(9)を適用するステップも含む、請求項10又は11に記載の、車両用レードーム(1)を製造するための方法。
【請求項13】
前記インク層(9)上においてマスキングエリア(12)をマスキングするステップも含む、請求項12に記載の、車両用レードーム(1)を製造するための方法。
【請求項14】
前記前方透明層(5)の前記形成が、前記透明層(5)の射出成形により、又は、透明箔を積層することにより行われる、請求項10に記載の、車両用レードーム(1)を製造するための方法。
【請求項15】
前記着色装飾層(6)の前記形成が、前記前方透明層(5)上への前記着色装飾層(6)の堆積により、若しくは、インサート成形により行われ、且つ/又は、前記金属様装飾層(7)及び前記接着促進剤接着層(8)の前記形成が堆積により行われ、且つ/又は、前記後方層(10)の前記形成がインサート成形により行われる、請求項10に記載の、車両用レードーム(1)を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[説明]
本発明は、車両用レードーム及び当該レードームを製造するための方法に言及する。
【0002】
[発明の背景]
自動車技術の継続的な進展は、自動車技術者協会(SAE:Society Automotive Engineers)が定義する、より高いレベルになりつつある運転者支援を通じて、今後数年以内に、自動運転システム(ADS:Automated Driving Systems)を送り出すことを狙っている。レードームは、これらのシステムに関連する一部分であるが、その理由は、レードームが、車の経路上にある障害物の検出に使用されるレーダーを保護するためである。同時に、レードームは通常、車製造業者のエンブレムを表現する。
【0003】
外方の観測者が見たレードームは、通常、組み合わされて製造業者のエンブレムを表現する、着色エリア及び金属様のエリアを包含する。保護されたレーダーにより放出及び受信される信号の、高い透過レベルに適合する金属様の外観は、プラスチック部品により保持された何らかの明るい装飾層によって提供される。
【0004】
上述の、より高いレベルになりつつある運転者支援は、レーダーの高い性能を必要とする。したがって、レードームの透過要件は、レーダーの改良から最大の利益を得るように厳格化されており、透過を最大化するとともに反射を最小化する。加えて、自動車市場は、価格圧力に絶えず晒されており、達成されるべき、高くなりつつある性能に適合する、製造コストの簡素化が必要とされる。
【0005】
今日の高品質のレードームのほとんどは、前方に透明樹脂を有して内側装飾層を保護する。内側装飾層は主に、金属的外見及び着色装飾により構成される。後方側における別の樹脂層は、基板として働き、装飾層の保護を完全なものにするとともに、車の他の部品への固定手段を提供する。
【0006】
レードームの、レーダー放出波及び受信波を透過する自身の性能を低下させる恐れのある、特定された要素のうちの1つが、レードームの層間における空隙の存在である。
【0007】
本願と同じ出願人名による、EP 3529857 A1は、視野エリアにおいてさえも前方部品及び後方部品が溶接されていて、基板間の間隙を最小化するとともに当該間隙をできるだけ一定に且つ小さく保つ、レードームを開示している。しかしながら、このことは結果的に、正確で複雑な製造プロセスを生じる。加えて、ある樹脂材料の吸水特性、又は、組み付けたレードームの耐水性によっては、間隙内に水が侵入する恐れがある。
【0008】
US 7990334 B2は、複数の係合突起及び窪みゾーンを有する前方部品及び後方部品を有し、両方の部品間の機械的連結を改良する、レードームを開示している。しかしながら、これは単なる機械的接合部であり、ここでは、金属様デザイン層の存在のために、前方部品と後方部品との間の良好な取り付けができない。その理由は、両方の部品間に溶接が達成されないためである。
【0009】
CN 103367913 Bは、前方部品が、その後面においてマグネトロンスパッタリングにより装飾されるレードームを開示している。それは、有機塗料コーティングで保護されなければならず、有機塗料コーティングは、後方部品を接着剤又はインサート成形という手段により接合する前に、高温での長時間ベーキングプロセスを必要とする。
【0010】
[発明の説明]
したがって、本発明の1つの目的は、車両用レードーム、及び、当該車両用レードームを製造するための方法を提供することであり、当該レードームにおいては、当該レードームのプラスチック成形部品間に空隙が存在せず、当該レードームの、レーダー放出波及び受信波を透過する性能を高めている。
【0011】
本発明による車両用レードーム及び方法を用いることで、上述の欠点を解消することができ、以下に記載される他の利点が提供される。
【0012】
車両用レードーム及び当該レードームを製造するための方法は、対応する独立請求項に記載されている。さらなる任意の特徴は、従属請求項に記載されている。
【0013】
本発明による車両用レードームは、
- 前方透明層と、
- 金属様装飾層と、
- 後方層と、
- 金属様装飾層と後方層との間に配置された接着促進剤層と、
- 前方透明層と金属様装飾層との間に提供され配置された着色装飾層と、
を備える。
【0014】
接着促進剤層は、金属様装飾層に接触している。さらに、接着促進剤層は、接着促進剤層と後方層との間に他の層が存在しない場合、後方層に接触している。
【0015】
接着促進剤は市販されており、典型的には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)のような低表面エネルギ(LSE:Low Surface Energy)プラスチック上に、又は、粉体コーティングした塗料上に、接着剤又はテープを適用しなければならない場合に使用される。接着促進剤は通常、シクロヘキサン、キシレン、エチルベンゼン、エチルアルコール、酢酸エチル、又は、トルエンのような有機溶剤を高い割合で含有する。ガラス、プラスチック、塗装表面、及び、金属の上における、ポリウレタンを基剤とする接着剤又は封止剤の接着性を改良するために、他の系統の接着促進剤が設計される。接着促進剤は、接着が容易ではない表面への、接着剤又は封止剤の接着性を改良するために広く使用されているが、本願では、接着促進剤を使用して、それらの上に成形されるべきプラスチック樹脂の接着性を改良する。
【0016】
有利には、接着促進剤層は、30mPa・s未満の粘度を有し、20μm未満の厚さを有する。
【0017】
着色装飾層には、好ましくは、非被覆エリアが設けられる。
【0018】
さらに、本発明による車両用レードームは、接着促進剤層上に適用されたインク層も備えることができ、このインク層は、好ましくは、接着促進剤層と後方層との間に配置される。
【0019】
このインク層が存在する場合、接着促進剤層は、インク層及び金属様装飾層に接触している。
【0020】
実現可能な一実施形態によると、金属様装飾層、接着促進剤層、及び/又は、存在する場合、インク層は、マスキングエリアを備え、金属様装飾層、接着促進剤層、及び/又は、インク層のマスキングエリアは、互いに合致して配置されている。
【0021】
有利には、金属様装飾層は、金属、メタロイド、及び/又は、酸化物で作成される。
【0022】
第2の態様によると、本発明は、上記の車両用レードームを製造するための方法であって、以下の、
- 前方透明層を形成するステップ、
- 着色装飾層を形成するステップ、
- 金属様装飾層を形成するステップ、
- 接着促進剤層を形成するステップ、及び、
- 後方層を形成するステップ
を含み、それにより、接着促進剤層が、金属様装飾層と後方層との間に配置されるとともに、着色装飾層が、前方透明層と金属様装飾層との間に配置される、車両用レードームを製造するための方法に言及する。
【0023】
本方法は、着色装飾層上において非被覆エリアをマスキングするステップ、接着促進剤層上にインク層を適用するステップ、及び/又は、インク層上においてマスキングエリアをマスキングするステップも含むことができる。
【0024】
好ましくは、前方透明層の形成は、透明層の射出形成により、又は、透明箔を積層することにより行われる。
【0025】
また好ましくは、着色装飾層の形成は、前方透明層上への着色装飾層の堆積により、又は、インサート成形により行われ、且つ/又は、金属様装飾層及び接着促進剤接着層の形成は堆積により行われ、且つ/又は、後方層の形成は、インサート成形により行われる。
【0026】
インサート成形プロセスを採用することにより、プラスチック成形部品間における、意図的に画定された空隙が排除される。空隙は、当該空隙を約0.1mmという小さな寸法において一定に保つための製造プロセスを複雑にする。加えて、空隙のばらつき及び増大により、レードームの透過性能の劣化を生じる。
【0027】
空隙の不在により、内側の層に損傷を与える恐れのある、間隙内への水の侵入の可能性が排除される。
【0028】
提案される解決策によって、関与する複数のプラスチック材料の熱膨張率が異なるために熱サイクル中に空隙が生じるということを回避する化学的結合が、機械的結合の前にもたらされる。
【0029】
接着剤又は内部保護コーティングの代わりに、接着性を増大させるための接着促進剤及びインクを使用することにより、エアスプレー堆積方法及び超高速乾燥プロセスの使用が可能になる。
【0030】
選択されたエリアのみの上に、金属様装飾層、接着促進剤層、及び、任意にインク層を堆積することで、透明層と着色装飾層により形成された前方セット上のインサート成形された後方層の間の直接的接続のため、より良好な接着が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以上の説明のより良い理解のため、また、単に例を提供する目的のため、実際的な実施形態を概略的に描くいくつかの非限定的な図面が含まれる。
【0032】
図1】本発明に従って構築されるとともに本発明を具現化した、グリルアセンブリ内に配置されたレードームと、当該レードームの後ろに配置されたレーダーアンテナとを有する車両の部分等角図である。
図2】製造者のエンブレムが、着色エリアと明るいエリアとのコントラストにより識別され得る、レードームの正面図である。
図3】第1の実施形態の異なる層を示す、図2のA-Aに従った概略断面図である。
図4】第2の実施形態の異なる層を示す、図2のA-Aに従った概略断面図である。
図5】本発明によるレードームの透明層及び着色装飾層のための選択的製造ステップのフローチャートである。
図6図5に示されたステップの後に行われる、本発明によるレードームの、金属様装飾層、接着促進剤層、及び、任意のインク層のための、マスキングが行われない製造ステップのフローチャートである。
図7図5のステップの後に、図6のステップの代替として行われる、本発明によるレードームの、金属様装飾層、接着促進剤層、及び、任意のインク層のための、マスキングが行われる製造ステップのフローチャートである。
図8図6又は図7のステップの後に行われる、本発明によるレードームの後方層のための製造ステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[好ましい実施形態の説明]
次に、同じ番号が全体にわたって同じ構成要素を表記するために用いられるこれらの図面を詳細に参照すると、図1に例示されるように、参照番号1は概して、本発明に従って構築されるとともに本発明を具現化した、自動車3のグリルアセンブリ2内に搭載するために構成された、装飾的レードームを表す。
【0034】
レーダーアンテナ4が、装飾的レードーム1の後ろに、且つ、装飾的レードーム1と位置合わせされて、車両3内に配置される。
【0035】
図2は、レードーム1の正面図を示し、ここでは、無線透過可能な着色層6と、保護されたレーダーアンテナ4により放出及び受信される信号に対する高い透過性能を保ちつつ金属様の外観を提供する、明るい装飾層7とを視認可能である。
【0036】
[実施形態1]
以下においては、レードーム1の概略断面図を示す図3を参照して、空隙のないレードームの第1の実施形態について説明する。レードーム1内の異なる層の位置が観測され得る。異なる層の厚さは、縮尺通りではないが、その理由は、当該層間の関係が、数桁の範囲を有するためである。これら異なる層については、近位面(外方の観測者により近く、この図において右)から遠位面(レーダー4により近く、この図において左)へと説明する。
【0037】
レードーム1は、前方透明層5を備える。前方透明層5は、可視光と、保護されたレーダー4により放出及び受信される信号との両方に対する高い透過性能を有する材料で作成される。前方透明層5は、ポリカーボネート(PC)のようなプラスチック樹脂で作成することができ、射出成形により、又は、この材料の積層フィルムを最終的な所望の形状に切断することにより得ることができる。
【0038】
上述したように、レードーム1は、保護されたレーダー4により放出及び受信される信号の高度な透過を維持しながら、可視光に対する不透明性を提供する、着色装飾層6も備える。着色装飾層6は、透明層5の面のうちの一方を部分的に被覆して、いくつかの非被覆エリア11を残している。
【0039】
この着色装飾層6は、上述の製造方法のいずれかにより得られた透明層5の面上に、装飾的インクを印刷することによって得ることができる。この印刷プロセスは、着色装飾層6によりいくつかの非被覆エリア11を残すために、マスクの使用を必要とする。
【0040】
代替的に、着色装飾層6は、透明層5との製造組み合わせ成形プロセスにおける、射出成形によっても得ることができる。着色装飾層6は、透明層5の遠位面上に表現されている。しかしながら、着色装飾層6は、透明層5の近位面上に配置されてもよい。
【0041】
図5は、透明層5及び着色装飾層6の組み合わせを製造又は形成するための代替のステップ(5-6-A、5-6-B、又は、5-6-C)を示す。
【0042】
製造ステップ5-6-Aは、可視光と、保護されたレーダー4により放出及び受信される信号との両方に対する高い透過性能を有する、例えばポリカーボネート(PC)のようなプラスチック樹脂を用いて、透明層5を射出形成する第1のステップを含む。プラスチック部品が成形されると、その面のうちの一方の上に着色装飾層6による装飾がなされ、いくつかの非被覆エリア11が残される。着色装飾層の組成及び厚さ(10から50μmの間の指針値を有する)は可視光に対する不透明性を提供し得る一方、保護されたレーダー4により放出及び受信される信号の高度な透過性を維持する。
【0043】
着色装飾層6の堆積に使用され得る3つの主な製造技術、即ち、パッド印刷、ホットスタンプ、及び、スプレー塗装、が存在する。
【0044】
パッド印刷は、射出成形プロセスにより得られた際の3D透明層上に、着色されたエリア及び非被覆エリアを有する2D画像を転写することができる。まず、変形可能な転写パッドが印刷プレート上に押し下げられ、エッチングされた図版エリアを有するインクを、印刷プレートからパッドに転写する。そして、転写パッドを3D透明層5上に押し付け、印刷プレートから取得したインク層を3D透明層5に転写する。インク乾燥の追加的なステップが必要とされる場合もあり、これは赤外線硬化を含む場合がある。
【0045】
ホットスタンプは、透明層5の面に、予め乾燥させたインク又は箔を転写する。加熱された金型は、成形された透明層5に対応する3Dデザインと、着色装飾層6に対応する突出表面と、非被覆エリア11に対応する陥凹表面と、を有する。この金型は、プラスチック上に箔を押し付け、温度及び圧力の組み合わせにより、予め乾燥させたインク又は箔を転写する。
【0046】
スプレー塗装も適用可能である。このプロセスもまた、3D透明層5の面を装飾することができる。しかしながら、装飾層6に対応するいくつかのエリアのみを装飾するために、スプレー塗装を行う前に、所望の非被覆エリア11をマスキングする先行プロセスが必要とされる。この堆積プロセスには、インク乾燥ステップが含まれる。最後にマスクが除去されて、所望の装飾を有する部品が得られる。
【0047】
製造プロセス5-6-Bは、ロール包装で通常調達される、積層された透明箔から開始する。その材料組成及び透過性能は、射出成形されたバージョンに極めて類似しており、ポリカーボネート(PC)が、やはり一般的な選択肢である。
【0048】
着色装飾層6を堆積するための、上記した3つの製造技術(パッド印刷、ホットスタンプ、及び、スプレー塗装)もまた、同様の方式で、同様の考慮事項を伴って、適用可能である。加えて、箔は2D構造を有するため、スクリーン印刷技術も適用可能である。スクリーン印刷は、所望の非被覆エリア11に対応するインクブロッキングステンシルを有するメッシュに基づく。インク又は塗料がメッシュを通して装飾層6を形成する箔の上に押される。この堆積プロセスには、インク乾燥ステップが含まれる。
【0049】
最後のステップは、所望の形状を得るための、例えば、熱成形技術を用いた整形及び切断である。
【0050】
製造ステップ5-6-Cは、インクや塗料の堆積が何ら行われないことにより特徴付けられる。例えば、光透過性及び不透明性の両方を有する層(保護されたレーダー4により放出及び受信される信号の両方を透過可能)が、ポリカーボネート(PC)のような同様の材料の射出成形により得られる。
【0051】
第1のステップにおいて、着色装飾層6が、標準的な方式で射出成形される。第2のステップは、透明層5をインサート成形するプロセスであり、着色装飾層6を包囲する。
【0052】
本発明によるレードーム1は、透明層5及び着色装飾層6により形成されたセットの遠位面(レーダー4により近い)上に堆積された金属様装飾層7も備える。着色装飾層6は、外方の観測者により、着色装飾層6の非被覆エリア11を経由して見ることができる。着色装飾層6の不透明かつ不連続なエリアと、金属様装飾層7との組み合わせにより、外方の観測者が見ることができる、図2に示されるようなエンブレムが生じる。
【0053】
金属様装飾層7は、金属、メタロイド、及び/又は、酸化物を使用することで、明るい外観を提供する。いずれの場合でも、金属様装飾層7は、保護されたレーダー4により放出及び受信される信号に対して自身が生じる減衰を低減するために、高い電気抵抗率を確保しなければならない。この、薄く且つ制御された厚さの層は、この層の組成に応じて、例えば、物理蒸着(PVD:Physical Vapor Deposition)マグネトロンスパッタリングプロセスにより、又は、プラズマ強化化学蒸着(PECVD:Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)プロセス等により、堆積され得る。
【0054】
金属様装飾層7の組成及び製造プロセスが、インサート成形プロセスにより得られる後方層10に対する良好な接着をもたらさないため、金属様装飾層7を改良するために、金属様装飾層7には何らかの表面処理を実施しなければならない。
【0055】
本発明によるレードーム1は、金属様装飾層7の上に適用された接着促進剤層8も備える。この接着促進剤層8は二官能性であり、隣接する層間に直接的結合を生じ、接着剤ではない。接着剤ならば、当該接着剤と、結合されるべき層のうちの各1つとの間に独立した結合を生じるであろう。この接着促進剤層8は非常に薄く、それにより、改良された界面結合特性を提供し、しかも、それほど厚くないため、そのバルク特性が、結合の全体特性に有意に影響を及ぼす。
【0056】
接着促進剤層8は、好都合にも、その低粘度(最大で30mPa・s)のために、エアスプレー方法により適用することができ、最大で20μmの厚さの乾燥した層を形成する。加えて、接着促進剤層8は、室温にて30から90秒で乾燥する。これは、溶剤を揮発させるために、チャンバ内にて80℃で1時間の加熱乾燥を通常必要とする、二液型アクリル塗料コート層に比べ、又は、500mPaの粘度を示し、70~90℃で0.5~3.5時間の乾燥時間を伴う、溶剤タイプの接着剤コーティングに比べ、大いに有意な改良である。
【0057】
任意に、接着促進剤層8上に、ポリマー適合インク層9が適用されてもよい。インク層9は、後方層10の原材料と同じポリマーのプラスチック部品上に適用するために使用されるインクにより構成される。このインクは、着色装飾層6を生成するために使用され得るインクと同様のものである。
【0058】
インク層9が、透明層5の原材料に適合する代わりに、後方層10の原材料に適合する点で異なる。
【0059】
その機能は、インサート成形プロセスに関連する高温の前に、金属様装飾層7に対してある追加的な保護を提供することである。インクであることから、当該インクを溶剤で溶解することが可能であり、当該溶剤は、インクを、フォード粘度カップNo.4の方法により試験する場合、30秒を下回る粘度として、エアスプレー方法に適合したものとする。乾燥させた層は、最大で30μmの厚さを有し得る。
【0060】
この任意のインク層9を使用するか否かの判断は、金属様装飾層7に使用される材料の熱感度に基づき得る。
【0061】
図6は、着色装飾層6を有する透明層5の、予め形成された部品の遠位面上に、金属様装飾層、接着促進剤層、及び、任意にインク層を順次堆積するための製造ステップを示す。
【0062】
第1のステップとして、着色装飾層6を有する透明層5をチャンバ内に配置する。このチャンバは、層の組成に応じて、物理蒸着(PVD)マグネトロンスパッタリングプロセス、又は、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)プロセス等を実施することができる。予め形成された部品は、チャンバにより収容された部品の遠位表面上に金属様装飾層7が堆積される態様で、チャンバ内に配置される。この、堆積された金属様装飾層は、着色装飾層6を有する透明層5と直接的に接触することになり、遠位表面上のマスキングが予め適用されていないことから、金属様装飾層7は、透明エリア及び色エリアの両方を全体的に被覆することになる。
【0063】
予め形成された部品を、エアスプレー塗装方法が適用され得る塗装チャンバに移動させる。この設備は、所与の表面上に、ある指定された粘度を有する物質をスプレーする能力を有する。当該物質は、シクロヘキサン、キシレン、エチルベンゼン、エチルアルコール、酢酸エチル、若しくは、トルエンのような有機溶剤を高い割合の基剤として含む接着促進剤であるか、又は、ガラス、プラスチック、塗装表面、及び、金属の上における、ポリウレタンを基剤とする接着剤若しくは封止剤の接着を改良するために設計されたタイプのものであり、エアスプレー塗装プロセスに適応した低粘度(30mPa・s未満)で製作され得る。予め形成された部品は、チャンバにより収容された部品の遠位表面上に接着促進剤層8が堆積される態様で、チャンバ内に配置される。この堆積された接着促進剤層8は、金属様装飾層7と直接的に接触することになり、遠位表面上のマスキングが予め適用されていないことから、接着促進剤層8は、金属様装飾層7を全体的に被覆することになる。
【0064】
この塗装プロセスは、室温にて30から90秒の高速乾燥ステップを含む。
【0065】
本製造プロセスは、任意に、同じ又は異なる塗装チャンバにおいて、追加的なエアスプレー塗装プロセスを含み得る。塗装プロセスは、後方層10の成形に使用されることになる原材料と同じポリマーのプラスチック部品上への適用に使用されるインクを用いて、その相互接着を増強させるために実施される。予め形成された部品は、チャンバにより収容された部品の遠位表面上にインク層9が堆積される態様で、チャンバ内に配置される。この、堆積されたインク層9は、接着促進剤層8と直接的に接触することになり、遠位表面上のマスキングが予め適用されていないことから、インク層9は、接着促進剤層8を全体的に被覆することになる。
【0066】
この塗装プロセスは乾燥ステップを含み、ここでは、温度及び時間の異なる条件が定義され得る。
【0067】
上述したように、後方層10は、これまでに記載した残りの層のインサート成形プロセスにより、最遠位の面に適用される。その原材料は、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、又は、ポリカーボネート及びアクリロニトリルブタジエンスチレンの混合物(PC/ABS)であり得る。
【0068】
それらは、ポリカーボネート(PC)に使用される成形温度よりも低い成形温度を必要とする。これにより、感度が高い金属様装飾層7に損傷を与えるリスクが低減される。後方層10は、内側装飾層に対する最終的な保護を提供し、通常、レードーム1の、車のそれ以外の部分に対する固定具を含む。後方層10は、レードーム1全体の、可視光に対する追加的な不透明性ももたらす。
【0069】
上記のように、接着促進剤層8と、任意にインク層9と、を使用することにより、インサート成形製造プロセスの採用が可能になる。これにより、レードームの透過性能の劣化、又は、レードームの視野全体において最小且つ一定の空隙を達成するための製造プロセスの複雑化を生じる恐れのある空隙の不存在が確保される。層間において達成された接着により、実験室試験の熱サイクル中に、又は、製品の耐用年数の間に生じるであろう空隙も回避される。
【0070】
接着促進剤層8とインク層9とを組み合わせた総厚さが小さいこと(最大20μm+最大30μm=最大50μm)により、透明層5及び後方層10とは大幅に異なる誘電特性を有しているとしても、レードーム1の透過性能に影響を及ぼすことなく、それらの構成要素の選択に高い自由度が提供される。
【0071】
機械的要件又は腐食要件が厳しい場合には、上記した層のセットの近位面及び又は遠位面上に、ワニスから成る硬質コーティングを適用してもよい。
【0072】
図8は、後方層10のインサート成形と、厳しい機械的要件又は腐食要件のための硬質コーティングと、についての製造プロセスを示している。
【0073】
第1のステップは、プラスチック射出型内に、予め形成された部品を配置することである。インサート成形のプロセスが実施され、ここでは、溶融された原材料が、予め形成された部分の遠位面上に堆積される。この、成形された後方層10は、接着促進剤層8(又は、適用された場合はインク層9)と直接的に接触することになり、遠位表面上のマスキングが予め適用されていないことから、後方層10は、接着促進剤層8(又は、適用された場合はインク層9)を全体的に被覆することになる。
【0074】
[実施形態2]
以下においては、図4を参照して、空隙のないレードーム1の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態の対応する構成要素と同じ又は同様の構成要素に対して同一の参照番号が与えられ、本明細書では、重複した説明を省略する。
【0075】
透明層5及び着色装飾層6の組み合わせの製造は、図5に従った、実施形態1について説明したものと同一である。
【0076】
この第2の実施形態では、着色装飾層6により画定された不透明なエリアを実質的に被覆するために、マスクが適用される。このようなマスキングプロセスの使用は、金属様装飾層7、接着促進剤層8、及び、任意のインク層9の堆積の間にわたって維持される。これにより結果的に、マスクが除去されたときにこれらの層が存在していないマスキングエリア12が生じる。
【0077】
図7は、着色装飾層6を有する透明層5の、予め形成された部品の遠位面上に、金属様装飾層、接着促進剤層、及び、任意にインク層を順次堆積するための製造ステップを示す。これら代替的ステップにより、着色装飾層6により画定された不透明なエリア上にこれらの層が堆積されないことが可能になる。
【0078】
第1のステップとして、予め形成された部分の遠位面上に、あるマスキングが適用される。このマスキングは、着色装飾層6により画定された不透明なエリアを被覆して、それらを保護するとともに、それらが、金属様装飾層7、接着促進剤層8、及び、任意にインク層9によって被覆されることを回避する。このマスキングは、マスキングエリア12の形状を画定する。
【0079】
マスクが既に適用されると、金属様装飾層7、接着促進剤層8、及び、任意のインク層9は、図6に従って、実施形態1について説明したように適用される。
【0080】
最後の層が適用されると、図7に示される製造プロセスの最後のステップが実施される。マスクが除去され、マスキングエリア12には、金属様装飾層7、接着促進剤層8、任意のインク層9のいずれも存在しない。
【0081】
この製造プロセスの最終的な結果は、その遠位表面が、接着促進剤層8(又は、適用された場合にはインク層9)が視認可能であるいくつかのエリアと、着色装飾層6が視認可能であるいくつかのエリア(マスキングエリア12に対応)とを有する部品となる。
【0082】
後方層10もまた、インサート成形によって製造される。その近位面のいくつかのエリアは、接着促進剤層8(又は、適用される場合にはインク層9)と接触することになり、いくつかの他のエリアは、透明層5及び着色装飾層6により形成されたセットに接触することになる。このマスキングプロセスは、後方層10と、レードーム1のそれ以外の部分との間の接着を改良するものの、製造プロセスに追加的なステップを加える。
【0083】
後方層10のインサート成形と、厳しい機械的要件又は腐食要件のための硬質コーティングと、についての製造プロセスは、図8に従って、実施形態1について説明されたものと同一である。その結果は、予め形成された部分の遠位面上に堆積された、溶融された原材料が、いくつかのエリアにおいては、接着促進剤層8(又は、適用された場合にはインク層9)と直接的に接触することになり、且つ、いくつかの他のエリア(マスキングエリア12に対応)においては、着色装飾層6と直接的に接触することになる、という意味合いにおいて異なる。
【0084】
本発明の特定の実施形態を参照してきたが、当業者に自明であることとして、本明細書に記載した車両用レードームは、多数の変形例及び変更例の余地を有しているとともに、述べられた詳細の全ては、添付の特許請求の範囲により定義された保護範囲から逸脱することなく、技術的に均等な他のものと置換可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】