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特開2023-18704空気弁、空気弁掃除方法及び空気弁分解方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018704
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】空気弁、空気弁掃除方法及び空気弁分解方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 24/00 20060101AFI20230202BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
F16K24/00 S
F16K51/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122890
(22)【出願日】2021-07-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 永晃株式会社熊本営業所 2021年4月30日 永晃株式会社熊本営業所 2021年5月19日 鴨川流域土地改良区 2021年7月21日 姉川左岸土地改良区 2021年7月21日
(71)【出願人】
【識別番号】397007066
【氏名又は名称】協和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】清水 勝也
【テーマコード(参考)】
3H055
3H066
【Fターム(参考)】
3H055AA02
3H055AA22
3H055BA12
3H055BB02
3H055CC06
3H055CC15
3H055DD37
3H055GG37
3H066AA01
3H066BA38
(57)【要約】
【課題】効率的な吸排気が可能な空気弁を提供する。
【解決手段】この空気弁1は、内部に弁箱中空部2aを有し、弁箱中空部2aの上方側開口部の近傍の周囲に弁箱フランジ部22を有する弁箱と、内部に蓋体中空部3aを有し、蓋体中空部3aの下方側開口部3aaの近傍の周囲に弁箱フランジ部22に締結される蓋体フランジ部32を有し、小空気孔35aが形成された蓋体キャップ部35を有し、蓋体中空部3aの下方側開口部3aaは弁箱中空部2aに連通し、大空気孔32bの上方側開口部は蓋体フランジ部32の上面に形成され下方側開口部は弁箱中空部2aに連通している蓋体3と、弁箱中空部2aに配置され大空気孔32bを下方から塞ぎ得、上下方向に貫通した中央孔4aが形成された遊動弁体4と、蓋体中空部3aに配置され小空気孔35aを下方から塞ぎ得るフロート弁体5と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大空気孔と小空気孔を有する空気弁であって、
内部に弁箱中空部を有し、該弁箱中空部の上方側開口部の近傍の周囲に弁箱フランジ部を有する弁箱と、
内部に蓋体中空部を有し、該蓋体中空部の下方側開口部の近傍の周囲に前記弁箱の前記弁箱フランジ部に締結される蓋体フランジ部を有し、前記小空気孔が形成された蓋体キャップ部を有し、前記蓋体中空部の前記下方側開口部は前記弁箱の前記弁箱中空部に連通し、前記大空気孔の上方側開口部は前記蓋体フランジ部の上面に形成され下方側開口部は前記弁箱の前記弁箱中空部に連通している蓋体と、
前記弁箱の前記弁箱中空部に配置され前記大空気孔を下方から塞ぎ得、上下方向に貫通した中央孔が形成された遊動弁体と、
前記蓋体の前記蓋体中空部に配置され前記小空気孔を下方から塞ぎ得るフロート弁体と、
を備えている空気弁。
【請求項2】
請求項1に記載の空気弁において、
前記蓋体には前記大空気孔に上方から挿通し得る遊動弁体用ピン体が保持されている空気弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空気弁において、
前記蓋体には前記小空気孔に上方から挿通し得るフロート弁体用ピン体が保持されている空気弁。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の空気弁において、
前記蓋体は前記蓋体キャップ部から下方に向かって延びる案内棒体を有しており、
前記フロート弁体には該案内棒体が挿通する案内棒体挿通孔が形成されている空気弁。
【請求項5】
請求項4に記載の空気弁において、
前記フロート弁体は、上部材と下部材を有し、該上部材と該下部材が互いに傾斜可能に結合している空気弁。
【請求項6】
止水弁が閉じた状態で、フロート弁体用ピン体の上部を押してその先端を小空気孔の下方まで到達させ、フロート弁体を突いて前記小空気孔を開放させ、水又は空気を前記小空気孔に吸い込ませ排出させて空気弁の内部の圧力を下げる第1ステップと、遊動弁体用ピン体の上部を押してその先端を大空気孔の下方まで到達させ、遊動弁体を突いて前記大空気孔を開放させ、その後、前記大空気孔を開放させた状態で、前記止水弁を開き、前記遊動弁体用ピン体を上げて前記大空気孔が再度前記遊動弁体により塞がれるまでに、前記大空気孔及びその近傍の異物を水又は空気とともに前記大空気孔から排出させる第2ステップと、を有する空気弁掃除方法。
【請求項7】
止水弁が開いた状態で、フロート弁体用ピン体の上部を押してその先端を小空気孔の下方まで到達させ、フロート弁体を突いて前記小空気孔を開放させ、その後、前記フロート弁体用ピン体を上げて前記小空気孔が再度前記フロート弁体により塞がれるまでに、前記小空気孔及びその近傍の異物を水又は空気とともに前記小空気孔に吸い込ませて排出させるステップを有する空気弁掃除方法。
【請求項8】
止水弁が閉じた状態で、フロート弁体用ピン体の上部を押してその先端を小空気孔の下方まで到達させ、フロート弁体を突いて前記小空気孔を開放させ、水又は空気を前記小空気孔に吸い込ませ排出させて空気弁の内部の圧力を下げるステップを有する空気弁分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水が流れる配管に繋がれ吸排気を行う空気弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気弁は、上下水道、工業用水のパイプライン又は農業用水のパイプラインなどの配管に繋がれ、いろいろな場所で広く用いられている。空気弁は、大空気孔と小空気孔を有するものが一般的に用いられている(例えば、特許文献1、2など)。大空気孔は、それを通して、吸気が行われたり多量排気(急速排気)が行われたりする。上流側のポンプを止めた(或いは上流側のバルブを閉じた)ときなど配管が通水状態から断水状態に切り替わるとき、吸気により大気を配管内に導いて配管の中の水を急速に抜くことができる。また、上流側のポンプを稼働させた(或いは上流側のバルブを開いた)ときなど配管が断水状態から通水状態に切り替わるとき、多量排気により、配管の中の空気(その他の気体も含む)を外部に急速に排気することができる。また、小空気孔は、それを通して、少量排気が行われる。少量排気により、配管が通常の圧力の通水状態のなか様々な原因で配管に混入した空気を少量ずつ外部に排気することができる。
【0003】
このような空気弁は、一般的に、配管に繋がれる弁箱と、大空気孔が形成され弁箱に装着される蓋体と、弁箱と蓋体の内部空間(弁箱と蓋体が形成する内部空間)内に配置されその内部空間の水面の位置(水位)に応じて蓋体の大空気孔を塞ぎ得る遊動弁体と、弁箱と蓋体の内部空間内に配置されたフロート弁体と、を備えている。小空気孔は、蓋体に形成されたり(例えば、特許文献1など)、遊動弁体に形成されたり(例えば、特許文献2など)している。フロート弁体は、水位に応じて小空気孔を塞ぎ得る。フロート弁体と遊動弁体とは、水よりも比重が小さいものである。空気弁と配管との間には、空気弁の補修などのために弁箱への水の浸入を止める(止水する)ことが可能な止水弁(いわゆる補修弁などが含まれる)が設けられるようにすることができる。
【0004】
大空気孔と小空気孔は、多くは、ほぼ水平方向に並列に配置されたり(例えば、特許文献1など)、大空気孔が上方に小空気孔が下方に配置されたり(例えば、特許文献2など)するが、大空気孔が下方に小空気孔が上方に配置されているものも知られている(例えば、特許文献3、4など)。特許文献3、4には、大空気孔が蓋体(弁蓋及びカバー(及び特許文献4では最上部の蓋))の下部の側部に形成され小空気孔が蓋体のキャップ部に形成された空気弁が開示されている。この空気弁では、環状の遊動弁体(筒状の弁体を上部に立設した環状フロート)が弁箱の内方に配置され、フロート弁体(フロート)が蓋体の内方に配置されている。大空気孔が下方に小空気孔が上方に配置されている空気弁は、大空気孔と弁箱の通水口との間の通路を広くすることができ、時間当たりの吸気及び多量排気の量を多くすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4-126076号公報
【特許文献2】特開2009-121678号公報
【特許文献3】実開昭55-93769号公報
【特許文献4】実開平3-49477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2などは勿論、特許文献3、4などに開示された空気弁よりもより効率的な吸排気が望まれる場合もある。例えば、農業用水のパイプラインなどのように、配管の通水状態と断水状態が頻繁に(例えば、日単位に)切り替わる場合などでは、より効率的な吸気及び多量排気が望まれる。
【0007】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、効率的な吸排気が可能な空気弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の空気弁は、大空気孔と小空気孔を有する空気弁であって、内部に弁箱中空部を有し、該弁箱中空部の上方側開口部の近傍の周囲に弁箱フランジ部を有する弁箱と、内部に蓋体中空部を有し、該蓋体中空部の下方側開口部の近傍の周囲に前記弁箱の前記弁箱フランジ部に締結される蓋体フランジ部を有し、前記小空気孔が形成された蓋体キャップ部を有し、前記蓋体中空部の前記下方側開口部は前記弁箱の前記弁箱中空部に連通し、前記大空気孔の上方側開口部は前記蓋体フランジ部の上面に形成され下方側開口部は前記弁箱の前記弁箱中空部に連通している蓋体と、前記弁箱の前記弁箱中空部に配置され前記大空気孔を下方から塞ぎ得、上下方向に貫通した中央孔が形成された遊動弁体と、前記蓋体の前記蓋体中空部に配置され前記小空気孔を下方から塞ぎ得るフロート弁体と、を備えている。
【0009】
請求項2に記載の空気弁は、請求項1に記載の空気弁において、前記蓋体には前記大空気孔に上方から挿通し得る遊動弁体用ピン体が保持されている。
【0010】
請求項3に記載の空気弁は、請求項1又は2に記載の空気弁において、前記蓋体には前記小空気孔に上方から挿通し得るフロート弁体用ピン体が保持されている。
【0011】
請求項4に記載の空気弁は、請求項1~3のいずれか1項に記載の空気弁において、前記蓋体は前記蓋体キャップ部から下方に向かって延びる案内棒体を有しており、前記フロート弁体には該案内棒体が挿通する案内棒体挿通孔が形成されている。
【0012】
請求項5に記載の空気弁は、請求項4に記載の空気弁において、前記フロート弁体は、上部材と下部材を有し、該上部材と該下部材が互いに傾斜可能に結合している。
【0013】
請求項6に記載の空気弁掃除方法は、止水弁が閉じた状態で、フロート弁体用ピン体の上部を押してその先端を小空気孔の下方まで到達させ、フロート弁体を突いて前記小空気孔を開放させ、水又は空気を前記小空気孔に吸い込ませ排出させて空気弁の内部の圧力を下げる第1ステップと、遊動弁体用ピン体の上部を押してその先端を大空気孔の下方まで到達させ、遊動弁体を突いて前記大空気孔を開放させ、その後、前記大空気孔を開放させた状態で、前記止水弁を開き、前記遊動弁体用ピン体を上げて前記大空気孔が再度前記遊動弁体により塞がれるまでに、前記大空気孔及びその近傍の異物を水又は空気とともに前記大空気孔から排出させる第2ステップと、を有する。
【0014】
請求項7に記載の空気弁掃除方法は、止水弁が開いた状態で、フロート弁体用ピン体の上部を押してその先端を小空気孔の下方まで到達させ、フロート弁体を突いて前記小空気孔を開放させ、その後、前記フロート弁体用ピン体を上げて前記小空気孔が再度前記フロート弁体により塞がれるまでに、前記小空気孔及びその近傍の異物を水又は空気とともに前記小空気孔に吸い込ませて排出させるステップを有する。
【0015】
請求項8に記載の空気弁分解方法は、止水弁が閉じた状態で、フロート弁体用ピン体の上部を押してその先端を小空気孔の下方まで到達させ、フロート弁体を突いて前記小空気孔を開放させ、水又は空気を前記小空気孔に吸い込ませ排出させて空気弁の内部の圧力を下げるステップを有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る空気弁、空気弁掃除方法及び空気弁分解方法によれば、効率的な吸排気が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る空気弁及び止水弁を示す正面図である。
図2】同上の空気弁の平面図である。
図3】同上の空気弁の断面図(図2のA-Aで示す線の位置で切断した断面図)である。
図4】同上の空気弁の弁箱とその中の遊動弁体を示す平面図である。
図5】同上の空気弁の蓋体の底面図である。
図6】同上の空気弁の蓋体の蓋体キャップ部及びそれに取り付けられている部材を示すものであって、(a)が側面図、(b)が底面図である。
図7】同上の空気弁の遊動弁体を示すものであって、(a)が側面図、(b)が底面図である。
図8】同上の空気弁のフロート弁体を示すものであって、(a)が平面図、(b)が側面図、(c)が底面図である。
図9】同上の空気弁の断面図であって、小空気孔が開放されるときを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施形態に係る空気弁1は、後述する大空気孔32bと小空気孔35aを有するものである。空気弁1は、図1図2及び図3に示すように、弁箱2と蓋体3と遊動弁体4とフロート弁体5とを備えている。
【0019】
弁箱2は、配管に繋がれるものであり、内部に弁箱中空部2aを有している。弁箱中空部2aの周囲の壁部は、筒状の弁箱筒状部21となっている。弁箱中空部2aの下方には、それよりも内径が小さい導水部2bを有している。弁箱2は、例えば、主に鋳鉄製とすることができる。弁箱中空部2aには、図3及び図4に示すように、後に詳述する遊動弁体4が配置される。
【0020】
弁箱中空部2aの上方側は開口しており、その上方側開口部の近傍の周囲に弁箱フランジ部22を有している。弁箱フランジ部22には、弁箱締結孔22aが複数個(本実施形態では4個)形成されている。
【0021】
弁箱2と配管の間には、通常、導水部2bを通って弁箱中空部2aに水が浸入するのを制御する別体の止水弁10(いわゆる補修弁などが含まれる)が連接されている(図1参照)。止水弁10は、別体とせずに、導水部2bを長く下に延ばしてその中間に設けるようにしてもよい。
【0022】
蓋体3は、弁箱2の上側に装着されるものであり、内部に蓋体中空部3aを有している。蓋体中空部3aの周囲の壁部は、筒状の蓋体筒状部31となっている。蓋体筒状部31は、下側蓋体筒状部311と上側蓋体筒状部312とから構成されるようにすることができる。下側蓋体筒状部311(及びそれに連続する後述する蓋体フランジ部32)は、例えば、主に鋳鉄製とすることができる。上側蓋体筒状部312は、加工精度(例えば、内壁などの加工精度)を容易に良くすることができる材料製(例えば、ステンレス製、銅系金属製)とすることができる。蓋体中空部3aには、図3に示すように、後に詳述するフロート弁体5が配置される。
【0023】
蓋体中空部3aの下方側は開口しており、弁箱2の弁箱中空部2aに連通している。その下方側開口部3aaの内径は、弁箱中空部2aの上方側開口部の内径よりも小さい。
【0024】
蓋体3は、下方側開口部3aaの近傍の周囲に蓋体フランジ部32を有している。蓋体フランジ部32には蓋体締結孔32aが複数個(本実施形態では4個)形成されている。蓋体フランジ部32は、ボルトとナットなどからなる複数個(本実施形態では4個)の締結具3Aにより弁箱フランジ部22に締結される。詳細には、蓋体フランジ部32は、弁箱フランジ部22の弁箱締結孔22aと蓋体締結孔32aにボルトを通過させてボルトとナットを締め付けることによって弁箱フランジ部22に締結される。
【0025】
また、蓋体フランジ部32は、弁箱2の弁箱中空部2aの上方側開口部に平面視において重なる部分を有し、蓋体フランジ部32の上面に大空気孔32bの上方側開口部が形成されている。大空気孔32bの下方側開口部は、弁箱2の弁箱中空部2aに連通している。また、大空気孔32bは、所定数(本実施形態では6個)に分割されている(図5参照)。大空気孔32bは、上下方向(鉛直方向)に形成された貫通孔とするか、或いは、図3に示すように、大空気孔32bの上方側開口部が下方側開口部よりも外方(空気弁1の軸心に対して外方)にずれるようにして、上に向かうにつれて全体的に外方になるような上下方向斜めに形成された貫通孔とすることができる。
【0026】
蓋体3は、その下面(蓋体フランジ部32の下面を含む)において大空気孔32bの下方側開口部の外方側と内方側にOリング33A、33Bを有している。遊動弁体4は、その上面が蓋体3の下面(具体的には、Oリング33A、33B)に密接して大空気孔32bの下方側開口部を閉塞し得る。
【0027】
蓋体3は、その下面において蓋体締結孔32aよりも内方側に、他の主な部位とは異なる材料で加工精度を容易に良くすることができる材料製(例えば、銅系金属製)の別部材のプレート3’を組み込むことが可能である。そうすると、遊動弁体4による大空気孔32bの上記閉塞などが良好になるように、蓋体3の下面を精度良く平らにしたりOリング33A、33Bを嵌め込む穴を精度良く形成したりすることができる。
【0028】
蓋体3は、バネ体などの弾性体34Aを介して保持される遊動弁体用ピン体34を有している。遊動弁体用ピン体34は、大空気孔32bに上方(斜め上方を含む)から挿通し得、上部を押すことにより、弁箱中空部2aまで到達することができる。なお、本実施形態では、弾性体34Aは、弾性体保持筒体34Bによって保持されている。
【0029】
蓋体3の蓋体中空部3aの上方側は、蓋体キャップ部35により塞がれている。蓋体キャップ部35には、上記の小空気孔35aが形成されている。本実施形態では、小空気孔35aは蓋体3の中心軸上に形成されている。詳細には、蓋体キャップ部35は弁座35bを有しており、小空気孔35aは、弁座35bとその上の部材を上下に貫通して形成されている。弁座35bは、弾性を有し、フロート弁体5が下方から密接すると小空気孔35aが閉塞される。蓋体キャップ部35の下面には、図3に示す例では、弁座35bの下方及びその周囲に凹部35cが形成されている。また、蓋体キャップ部35の側面には、小空気孔35aにそれらの間の空間を通って導通する外部空気孔38が形成されている(図1参照)。なお、蓋体キャップ部35は、蓋体筒状部31(詳細には、上側蓋体筒状部312)から取り外し可能である。蓋体キャップ部35を取り外すと、その弁座35bの掃除等をしたり、蓋体中空部3aに配置されているフロート弁体5を取り出して掃除等をしたりすることができる。
【0030】
蓋体3は、蓋体キャップ部35に、バネ体などの弾性体36Aを介して保持されるフロート弁体用ピン体36を有している。フロート弁体用ピン体36は、その下部(ピン本体部)が小空気孔35aに上方から挿通し得、上部を押すことにより、小空気孔35aの下方まで到達することができる。このとき、弾性体36Aの反動力により、フロート弁体用ピン体36の上部を複数回押して反復動作させることにより、小空気孔35a及びその近傍の後述する異物を取り除き易くなる。
【0031】
蓋体3は、蓋体キャップ部35から下方に向かって延びる案内棒体37を有している。案内棒体37は、後述するようにフロート弁体5の案内棒体挿通孔5aを貫通し、その下部にはフロート弁体5のそれ以上の降下を止めるストッパとしてのナットが締結されている(図3及び図6参照)。それにより、案内棒体37は、水面の位置(水位)に応じて上下移動するフロート弁体5を案内する。
【0032】
また、蓋体3は、蓋体キャップ部35から下方に向かって延びるフロート弁体回転止め棒体37Aを有している(図6参照)。フロート弁体回転止め棒体37Aは、フロート弁体5が案内棒体37を軸として回転するのを阻止することができる。
【0033】
遊動弁体4は、上記のように弁箱2の弁箱中空部2aに配置されている。遊動弁体4は、弁箱中空部2aの水面の位置(水位)に応じて蓋体3の大空気孔32bを下方から塞ぎ得る。遊動弁体4は、例えば、図示するような大略円板状とすることができる(図4及び図7参照)。遊動弁体4は、蓋体3(詳細には、Oリング33A、33B)に密接できるように、上端面は平坦である。また、遊動弁体4は、上下方向に貫通した中央孔4aが形成されている。遊動弁体4は、下部に所定数(本実施形態では3個)の脚部41を有している(図7参照)。
【0034】
フロート弁体5は、長尺の大略円柱状のもので、上記のように蓋体3の蓋体中空部3aに配置されている。フロート弁体5は、蓋体中空部3aの水面の位置(水位)に応じて小空気孔35aを下方から塞ぎ得る。
【0035】
フロート弁体5には、蓋体3の案内棒体37が挿通する案内棒体挿通孔5aが形成されている。案内棒体挿通孔5aは貫通孔である。また、フロート弁体5には、蓋体3のフロート弁体回転止め棒体37Aが挿通する回転止め孔5bが形成されている(図8参照)。
【0036】
フロート弁体5は、上部材51と下部材52を有し、結合部材5c(本実施形態では、六角穴付きボルト)によって上部材51と下部材52が互いに傾斜可能に結合している。本実施形態では、結合部材5cが上部材51の端部近傍に設けられている。
【0037】
以上説明した空気弁1においては、上流側のポンプを止めた(或いは上流側のバルブを閉じた)ときなど配管が通水状態から断水状態に切り替わるとき、大空気孔32bを通して吸気し、大気を弁箱中空部2a及び導水部2b(及び開かれた状態の止水弁10)を通して配管内に導く。ここで、大空気孔32bは、上下方向か或いは上記のような上下方向斜めに形成されているので、大気がスムーズに弁箱中空部2a及び導水部2bを通って多量に配管内に流れ込むことができる。よって、極めて効率的な吸気が可能になる。なお、この点においては、大空気孔32bを上記のような上下方向斜めに形成されるようにするのがより好ましい。
【0038】
また、空気弁1においては、上流側のポンプを稼働させた(或いは上流側のバルブを開いた)ときなど配管が断水状態から通水状態に切り替わるとき、止水弁10が開かれた状態で、大空気孔32bを通して配管の中の空気(その他の気体も含む)が外部に急速に排気(多量排気)される。多量排気は、弁箱中空部2aに水が浸入してから、遊動弁体4が下方から蓋体3に密接して大空気孔32bを塞ぐまで行われる。ここで、大空気孔32bは、上下方向か或いは上記のような上下方向斜めに形成されているので、配管の中の空気がスムーズに導水部2b及び弁箱中空部2aから大空気孔32bを通って多量に外部に排出されるようにすることができる。よって、極めて効率的な多量排気が可能になる。なお、この点においては、大空気孔32bを上記のような上下方向斜めに形成されるようにするのがより好ましい。
【0039】
多量排気が終わった後は、少量排気が行われる。少量排気により、蓋体中空部3aの中の空気が小空気孔35aを通って排気され、徐々に水面が上がり、案内棒体37に沿ってフロート弁体5が上昇する。水面から小空気孔35aまでが所定の距離になると、フロート弁体5(詳細には、上部材51の上面)が弁座35bに接触して小空気孔35aを下方から塞ぐようになり、排気は止まる。
【0040】
その後、配管内の水が通常の状態で流れ、その水に空気が混じると、配管から蓋体中空部3aへ空気が水に混じって浸入する。そして、水面から上の空気の量が増え水面が下がると、小空気孔35aが開放されるようになる。
【0041】
ここで、小空気孔35aが蓋体3の中心軸上に形成されており、フロート弁体5の上部材51と下部材52を結合する結合部材5cが上部材51の端部近傍にあって中心軸から所定距離だけ離れていると、下部材52の下降する力にほぼその所定距離を掛け合わせたモーメント力(力のモーメント)が上部材51と弁座35bの接触部分に働くことになる。それにより、上部材51の上面が傾き、上部材51と弁座35bがたとえ強く密着していたとしても引きはがすことが容易にできる(図9参照)。
【0042】
このようにして上部材51の上面が傾いたり全体的に下がったりして小空気孔35aが開放され、再度少量排気が行われる。そして、少量排気により水面が上がり水面から小空気孔35aまでが所定の距離になると、フロート弁体5が小空気孔35aを下方から塞ぐようになり、排気は止まる。
【0043】
大空気孔32b及びその近傍は、遊動弁体用ピン体34を用いて定期的又は不定期的に掃除して異物を取り除くようにできる。異物を取り除くことで、吸気のときの遊動弁体4による大空気孔32bの開放及び多量排気のときの遊動弁体4による大空気孔32bの開放及び閉塞の動作を維持し、効率的な吸気及び多量排気を維持することが容易になる。
【0044】
具体的には、大空気孔32b及びその近傍の掃除は、以下のようにして行うことができる。すなわち、先ず、第1ステップとして、止水弁10が閉じた状態で、フロート弁体用ピン体36の上部を押し、その先端を小空気孔35aの下方まで到達させてフロート弁体5を突く。それにより、フロート弁体5の上面を傾けさせたり全体的に下がらせたりして、小空気孔35aを開放させる。そうすることで、水又は空気を小空気孔35aに吸い込ませて排出させ、空気弁1の内部(蓋体中空部3aと弁箱中空部2a)の圧力(水圧及び気圧)を下げる。
【0045】
次に、第2ステップとして、遊動弁体用ピン体34の上部を押し、その先端を大空気孔32bの下方まで到達させて遊動弁体4を突く。それにより、遊動弁体4の上面を傾けさせたり全体的に下がらせたりして、大空気孔32bを開放させる。その後、大空気孔32bを開放させた状態で、止水弁10を開き、遊動弁体用ピン体34を上げて大空気孔32bが再度遊動弁体4により塞がれるまでに、大空気孔32b及びその近傍の異物を水又は空気とともに大空気孔32bから排出させる。
【0046】
このように、第1ステップを行ってから第2ステップを行うと、空気弁1の内部の水圧が下がることにより、遊動弁体用ピン体34を内部から押し返す力が弱まっているので、遊動弁体用ピン体34の先端を大空気孔32bの下方まで容易に押し込めることができるようになる。なお、第1及び/又は第2ステップは、必要に応じて複数回行うことも可能である。
【0047】
また、小空気孔35a及びその近傍は、フロート弁体用ピン体36を用いて定期的又は不定期的に掃除して異物を取り除くようにできる。異物を取り除くことで、少量排気のときのフロート弁体用ピン体36による小空気孔35aの開放及び閉塞の動作を維持し、効率的な少量排気を維持することが容易になる。
【0048】
具体的には、小空気孔35a及びその近傍の掃除は、以下のようにして行うことができる。すなわち、先ず、止水弁10が開いた状態で、フロート弁体用ピン体36の上部を押し、その先端を小空気孔35aの下方まで到達させてフロート弁体5を突く。それにより、フロート弁体5の上面を傾けさせたり全体的に下がらせたりして、小空気孔35aを開放させる。その後、フロート弁体用ピン体36を上げて小空気孔35aが水圧力で再度フロート弁体5により塞がれるまでに、小空気孔35a及びその近傍の異物を水又は空気とともに小空気孔35aに吸い込ませて排出させる。なお、このような処理(ステップ)は、必要に応じて複数回行うことが可能である。
【0049】
このように、空気弁1を分解(例えば、蓋体3を弁箱2から取り外したり又は/及び蓋体キャップ部35を蓋体3から取り外したりして分解)することなく、空気弁1(大空気孔32b、小空気孔35a及びそれらの近傍)を掃除することができる。この掃除は、空気弁1が上水道の水道水に比べて水質が劣る水が流れる下水道、工業用水のパイプライン又は農業用水のパイプラインなどの配管用の場合に特に有用である。なお、小空気孔35aは、水面から通常離れているが、配管内の水圧の変化(例えば、ウォーターハンマー現象による空気層の圧縮によるものなど)等により水面の突発的な揺れが起こって水とともに異物が接触することも少なくない。
【0050】
また、メンテナンスのために空気弁1を分解するときには、その前に、止水弁10が閉じた状態で、フロート弁体用ピン体36の上部を押し、その先端を小空気孔35aの下方まで到達させてフロート弁体5を突く。それにより、フロート弁体5の上面を傾けさせたり全体的に下がらせたりして、小空気孔35aを開放させる。そうすることで、水又は空気を小空気孔35aに吸い込ませて排出させ、空気弁1の内部(蓋体中空部3aと弁箱中空部2a)の圧力(水圧及び気圧)を下げる。この処理(ステップ)により、その後、蓋体3を弁箱2から取り外したり又は蓋体キャップ部35を蓋体3から取り外したりしたとき、内部の水又は空気が噴き出すのを抑止することができる。このメンテナンスにより、効率的な吸排気を維持することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態に係る空気弁について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 空気弁
10 止水弁
2 弁箱
2a 弁箱中空部
2b 導水部
21 弁箱筒状部
22 弁箱フランジ部
22a 弁箱締結孔
3 蓋体
3’ プレート
3A 締結具
3a 蓋体中空部
3aa 下方側開口部
31 蓋体筒状部
311 下側蓋体筒状部
312 上側蓋体筒状部
32 蓋体フランジ部
32a 蓋体締結孔
32b 大空気孔
33A、33B Oリング
34 遊動弁体用ピン体
34A 弾性体
34B 弾性体保持筒体
35 蓋体キャップ部
35a 小空気孔
35b 弁座
35c 凹部
36 フロート弁体用ピン体
36A 弾性体
37 案内棒体
37A フロート弁体回転止め棒体
38 外部空気孔
4 遊動弁体
4a 遊動弁体の中央孔
41 脚部
5 フロート弁体
5a 案内棒体挿通孔
5b 回転止め孔
5c 上部材と下部材の結合部材
51 上部材
52 下部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9