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特開2023-18761高純度金属の連続精製システムおよび連続精製方法
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  • 特開-高純度金属の連続精製システムおよび連続精製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018761
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】高純度金属の連続精製システムおよび連続精製方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 9/02 20060101AFI20230202BHJP
   C22B 21/06 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C22B9/02
C22B21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123008
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】521407924
【氏名又は名称】堺アルミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勝起
(72)【発明者】
【氏名】井形 哲也
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001BA23
4K001EA05
(57)【要約】
【課題】 大きな設置面積によらずに高純度金属を精製することができる連続精製システムを提供する。
【解決手段】 金属を溶解するための溶解炉1と、前記溶解炉からの溶湯が順に送り込まれる、直列的に連結された複数の溶湯保持槽3‥と、各溶湯保持槽3‥と対を成し、溶湯内で高純度金属を晶出させるための冷却体4‥と、を備え、前記複数の溶湯保持槽3‥のうち、下流側の1ないし複数の溶湯保持槽3‥の冷却体4‥で付着凝固して回収された高純度金属塊を、溶解炉1に戻して再溶解させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を溶解するための溶解炉と、前記溶解炉からの溶湯が順に送り込まれる、直列的に連結された複数の溶湯保持槽と、各溶湯保持槽と対を成し、溶湯内で高純度金属を晶出させるための冷却体と、を備え、
前記複数の溶湯保持槽のうち、下流側の1ないし複数の溶湯保持槽の冷却体で付着凝固して回収された高純度金属塊を、前記溶解炉に戻して再溶解させることを特徴とする高純度金属の連続精製システム。
【請求項2】
前記金属はアルミニウムまたはアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1に記載の高純度金属の連続精製システム。
【請求項3】
回収された高純度金属塊を前記溶解炉に戻して再溶解させる溶湯保持槽が、全溶湯保持槽の数の1/2以下である請求項1または2に記載の高純度金属の連続精製システム。
【請求項4】
金属を溶解するための溶解炉と、前記溶解炉からの溶湯が順に送り込まれる、直列的に連結された複数の溶湯保持槽と、各溶湯保持槽と対を成し、溶湯内で高純度金属を晶出させるための冷却体と、を備えた連続精製システムを用いる高純度金属の連続精製方法であって、
前記複数の溶湯保持槽のうち、下流側の1ないし複数の溶湯保持槽の冷却体で付着凝固して回収された高純度金属塊を、前記溶解炉に戻して再溶解させる工程を複数回繰り返すことを特徴とする高純度金属の連続精製方法。
【請求項5】
前記溶解炉に戻して再溶解させる際の高純度金属塊の温度が300℃以上であることを特徴とする請求項4に記載の高純度金属の連続精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏析凝固を利用した高純度金属の連続精製システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、不純元素の少ない高純度金属の製造方法のうち、凝固時の偏析現象を利用する方法(偏析法)は、他の精製方法に対するコスト優位性から、広く工業的に利用されている。
【0003】
かかる偏析法において、効率よく高純度のアルミニウムを精製するシステムとして、アルミニウムの溶解炉からの溶湯が順に送り込まれる、直列的に連結された複数の溶湯保持槽と、各溶湯保持槽と対をなす回転冷却体を備えた一連の装置を1組のラインとし、このラインを複数組備え、(n-1)次ラインで回転冷却体に付着凝固し回収された高純度アルミニウム塊を、続くn次ラインの溶解炉で溶解させて精製を繰り返すシステムが提唱されている(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-24234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにライン数を増やすことは純度を高める上で有効だが、その分設備面積が必要になり、設備設置コストの増大や敷地面積の都合で採用できない場合があった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、ライン数を増やすことなく(増やすことは否定しないが)、高純度金属を精製することができる高純度金属の連続精製システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
[1]金属を溶解するための溶解炉と、前記溶解炉からの溶湯が順に送り込まれる、直列的に連結された複数の溶湯保持槽と、各溶湯保持槽と対を成し、溶湯内で高純度金属を晶出させるための冷却体と、を備え、
前記複数の溶湯保持槽のうち、下流側の1ないし複数の溶湯保持槽の冷却体で付着凝固して回収された高純度金属塊を、前記溶解炉に戻して再溶解させることを特徴とする高純度金属の連続精製システム。
【0009】
[2]前記金属はアルミニウムまたはアルミニウム合金であることを特徴とする前項1に記載の高純度金属の連続精製システム。
【0010】
[3]回収された高純度金属塊を前記溶解炉に戻して再溶解させる溶湯保持槽が、全溶湯保持槽の数の1/2以下である前項1または2に記載の高純度金属の連続精製システム。
【0011】
[4]金属を溶解するための溶解炉と、前記溶解炉からの溶湯が順に送り込まれる、直列的に連結された複数の溶湯保持槽と、各溶湯保持槽と対を成し、溶湯内で高純度金属を晶出させるための冷却体と、を備えた連続精製システムを用いる高純度金属の連続精製方法であって、
前記複数の溶湯保持槽のうち、下流側の1ないし複数の溶湯保持槽の冷却体で付着凝固して回収された高純度金属塊を、前記溶解炉に戻して再溶解させる工程を複数回繰り返すことを特徴とする高純度金属の連続精製方法。
【0012】
[5]前記溶解炉に戻して再溶解させる際の高純度金属塊の温度が300℃以上であることを特徴とする前項4に記載の高純度金属の連続精製方法。
【発明の効果】
【0013】
前項[1]の発明によれば、下流側の溶湯保持槽で精製される高純度金属塊は、上流側の溶湯保持槽と比べると純度は低いが、溶解炉に投入される原材料よりも純度が高いため、これを溶解炉に戻して再溶解させることで、溶解炉から溶湯保持槽に供給される溶湯の純度を高めることができるから、これにより設備面積の増大によることなく、高純度の精製塊を得ることができる。
【0014】
前項[2]の発明によれば、高純度のアルミニウムを得ることができる。
【0015】
前項[3]の発明によれば、溶解炉に戻して再溶解させる高純度金属塊を、全溶湯保持槽のうち後半の1/2以下にすることで、製品の回収重量の低下を抑えて、不純物を低減することができる。
【0016】
前項[4]の発明によれば、高純度金属塊を前記溶解炉に戻して再溶解させる工程を複数回繰り返すことにより、溶解炉から溶湯保持槽に供給される溶湯の純度をさらに高めることができ、より高純度の精製塊を得ることができる。
【0017】
前項[5]の発明によれば、高純度金属塊が300℃未満に冷却されてから溶解炉に戻す場合と比較して、塊溶解の時間を短縮し、優れたエネルギー効率が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の一実施形態に係る高純度金属の連続精製システムの構成を示す図である。
図2図1のシステムの一部の構成を詳細に示す図である。
図3】溶湯保持槽の詳細を示す図である。
図4】この発明の他の実施形態に係る高純度金属の連続精製システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、この発明の一実施形態に係る高純度金属の連続精製システムの構成を示す図である。
【0020】
このシステムは、金属を溶解するための溶解炉1と、溶解炉1からの溶湯が順に送り込まれる、直列的に連結された複数(この例では10基)の溶湯保持槽3‥と、各溶湯保持槽3‥と対を成し、溶湯内で高純度金属を晶出させるための回転冷却体4‥と、を備える。
【0021】
図2は、このシステムの一部の構成を詳細に示す図である。
【0022】
溶解炉1は、不純物を含んだ原料金属を溶解する。溶解炉1で溶解された溶湯5は樋2を介し、各溶湯保持槽3に送り出される。各溶湯保持槽3には、回転冷却体4が設置されている。
【0023】
図3は、溶湯保持槽の詳細を示す図である。
【0024】
溶湯保持槽3は、たとえば内径D、高さHの有底円筒状で、底面が下向き円弧状に形成される。
【0025】
回転冷却体4は、たとえば上端側が径大の円錐台形状に形成され、溶湯上面における外径d、溶湯上面から冷却体下端までの高さhとなる溶湯保持槽3内の所定位置に配置される。回転冷却体4は、エアー若しくは水蒸気のような冷却体で内部から冷却され、溶湯中で回転する。
【0026】
溶湯保持槽3の溶湯温度を凝固点を超えた温度に加熱保持しておくと、偏析凝固の原理により、回転冷却体4の表面において精製すべき純度の高い金属が晶出し、高純度金属塊が形成される。
【0027】
溶湯保持槽3中の不純物濃度の高くなった溶湯は、順次下流側に位置する次の溶湯保持槽3に送り出される。
【0028】
回転冷却体4の表面に晶出し、抽出された金属塊は、回転冷却体4を回転させながら引き上げ、溶湯保持槽3外で回転をが停止させた後、図示しない回収装置により、たとえば機械的に回収される。
【0029】
各溶湯保持槽3に浸漬された回転冷却体4に晶出し純化された金属塊を回収する場合、一斉に回収してもよいが、連続した生産を考えると順次回収していくことが望ましい。
【0030】
各溶湯保持槽3‥の溶湯は、上流側から下流側に向かって、順次、不純物濃度が高くなる。
【0031】
直列に構成された複数の溶湯保持槽3‥で回収されなかった残渣溶湯は、ドレン装置6により、系外に排出される。
【0032】
各溶湯保持槽3‥の回転冷却体4‥から回収される高純度金属塊の純度は、溶湯の純度が最も高い最上流の溶湯保持槽3から回収されるものが最も純度が高く、上流側から下流側に向かって、順次、純度が低下する。
【0033】
図1に示す高純度金属の連続精製システムでは、上流側の5基の溶湯保持槽3から回収される高純度金属塊を製品として取り出す一方、下流側の5基の溶湯保持槽3から回収される高純度金属塊を、溶解炉1に戻して再溶解させるようになっている。
【0034】
下流側の溶湯保持槽3から回収される高純度金属塊は、上流側の溶湯保持槽3から回収される高純度金属塊と比較すると純度が低いが、溶解炉1に投入される原材料よりも純度が高い。
【0035】
このため、これを溶解炉1に戻して再溶解させることで、溶解炉1の溶湯の純度は原材料よりも高くなり、溶解炉1から溶湯保持槽3‥に供給される溶湯の純度を高めることができるから、高純度の精製塊を得ることができる。
【0036】
特に、この下流側の溶湯保持槽から回収される高純度金属塊を溶解炉1に戻す工程を繰り返し行うことにより、さらに溶解炉1の溶湯の純度を高め、製品として得られる高純度金属塊の純度を高い物とすることができる。
【0037】
ライン数を増やすことは純度を高める上で有効だが、その分設備面積が必要になるところ、下流側の溶湯保持槽3から回収される高純度金属塊を溶解炉1に戻すことで、ライン数を増やすことに因るのではなく、より高純度な金属塊を得ることができる。
【0038】
なお上記の説明では、高純度金属塊を製品として取り出す溶湯保持槽3を上流側5基、高純度金属塊を溶解炉1に戻す溶湯保持槽3を下流側5基としたが、高純度金属塊を製品として取り出す溶湯保持槽3は上流側の1ないし複数とし、高純度金属塊を溶解炉1に戻す溶湯保持槽3を残る下流側の1ないし複数としてもよい。
【0039】
製品として取り出す溶湯保持槽3を減らして溶解炉に戻す溶湯保持槽3を増やすと、溶解炉1の溶湯の純度をより高めることができるため、より高純度な金属塊を得ることができる一方、製品として得られる金属塊が少なくなるため、生産効率は低下する。
【0040】
これに対して、溶解炉1に戻す溶湯保持槽3を減らせば、製品として得られる金属塊は多くなり、生産効率は高まるが、製品として得られる金属塊の純度は低下する。
【0041】
溶解炉1に戻す溶湯保持槽3の数は、求められる金属塊の純度と、生産効率(生産量)とを勘案して適宜設定すればよいが、溶解炉1に戻す溶湯保持槽の数は、全溶湯保持槽の数の1/2以下にすることが好ましい。1/2以下にすることで、製品の回収重量の低下を抑えて、不純物を低減することができる。
【0042】
なお下流側の溶湯保持槽3から回収された高純度金属塊を溶解炉1に戻して再溶解させる際は、回収された高純度金属塊が冷えてしまう前に、温度が300℃以上を有しているうちに溶解炉1に戻すことが好ましい。
【0043】
高純度金属塊が冷却されてしまうと再溶解に要する時間およびエネルギーが大きくなるが、300℃以上の温度を保っている間に溶解炉1に戻すことができれば、塊溶解の時間を短縮し、優れたエネルギー効率が得られる。
【0044】
次に、複数ラインを有する連続精製システムに適用した本発明の他の実施形態について説明する。
【0045】
図4は、この発明の他の実施形態に係る高純度金属の連続精製システムの構成を示す図である。
【0046】
この精製システムでは、10基の溶湯保持槽13‥を有する1次ラインと、5基の溶湯保持槽23‥を有する2次ラインを備えている。
【0047】
1次ラインでは、溶解炉11で溶解された溶湯は、樋12を介して直列的に連結された溶湯保持槽13‥に順次送り込まれる。
【0048】
各溶湯保持槽13‥には対をなす回転冷却体14‥が備えられ、各溶湯保持槽13‥から高純度金属塊が回収されるようになっており、複数の溶湯保持槽13‥で回収されなかった残渣溶湯は、ドレン装置16により、系外に排出される。
【0049】
そしてこの実施形態では、下流側2基の溶湯保持槽13,13から回収された高純度金属塊は溶解炉11に戻されて再溶解される一方、上流側8基の溶湯保持槽13‥から回収された高純度金属塊は2次ラインの溶解炉21に送り込まれるようになっている。
【0050】
2次ラインの構成は1次ラインと同様に、溶解炉21で溶解された溶湯は、樋22を介して直列的に連結された溶湯保持槽23‥に順次送り込まれ、各溶湯保持槽23‥には対をなす回転冷却体24‥が備えられ、各溶湯保持槽23‥から高純度金属塊が回収され、これが製品として供される。
【0051】
2次ラインの複数の溶湯保持槽23‥で回収されなかった残渣溶湯は、ドレン装置により系外に排出してもよいが、溶湯回収装置27により1次ラインの溶解炉11に戻すことが好ましい。
【0052】
2次ラインの出発材料はすべて1次ラインの溶湯保持炉13‥において晶出した高純度金属塊であり、1次ラインの出発材料である金属原料より通常は純度が高いため、これを1次ラインに戻すことにより、1次ラインの溶湯の純度を高められるとともに、系外に排出される金属量を低減することができる。
【0053】
この実施形態では、1次ラインにおいて下流側の溶湯保持槽13‥から回収される高純度金属塊を溶解炉11に戻すので、戻さない場合と比較して、1次ラインで回収される高純度金属塊の純度を高めることができる。
【0054】
また1次ラインの上流側の溶湯保持槽13‥から回収される高純度金属塊は、下流側の溶湯保持槽13‥から回収される高純度金属塊より純度が高いが、これをさらに2次ラインの出発材料として2次ラインで偏析凝固を行い、その溶湯保持槽23‥から回収される高純度金属塊を製品とするので極めて高純度な金属塊を得ることができる。
【0055】
上記2つの実施形態における連続精製システムで精製する金属の種類は問わないが、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金を好適な金属として挙げることができる。
【0056】
アルミニウムを採用した場合、最終的に製造された精製塊はアルミニウム純度が高いので、各種の加工や用途に用いることで優れた性能や機能を発揮させることができる。
【0057】
一例を挙げると、精製金属を鋳造に用いて鋳造品を製作しても良いし、この鋳造品を圧延して各種の金属板や金属箔として用いても良い。
【0058】
また、この金属箔を例えばアルミニウム電解コンデンサの電極材として用いても良い。
【0059】
なお、上記2つの実施形態では、溶解炉1には原料金属のみを投入し、溶解炉1から樋2を介して直列に配置された溶湯保持槽3‥に溶湯を送る構成を説明したが、本発明を適用したシステムにおいても、金属の純度を高める公知の方法を併用してもよい。
【0060】
たとえば、金属としてアルミニウムに適用する場合、溶解炉1にホウ素を添加し、Ti、Zr、V等の包晶系の不純物とホウ素を反応させてもよい。
【0061】
また、溶解炉1と回転冷却体4を伴う溶湯保持槽3の間に、ホウ素の添加が可能な撹拌槽が設置されてもよい。
【0062】
さらに、溶湯各搬送3と溶湯各搬送の間に、溶湯表面に分離した浮滓を溶湯保持槽以外の系へ分離する分離槽を構成することも有効である。
【実施例0063】
次に、直列的に連結した20基の溶湯保持槽を備えた1ラインの連続精製システムにおいて、下流側の溶湯保持槽から回収される高純度金属塊を溶解炉に戻して再溶解した本発明の実施例と、溶解炉に戻す操作を行わない比較例について説明する。
【0064】
各溶湯保持槽は内径Dが500mm、高さHが800mmの有底円筒状で底面が下向き円弧状に形成されたものを用いた。
【0065】
回転冷却体は上端側が径大の円錐台形状に形成され、溶湯上面における外径dが210mm、溶湯上面から冷却体下端の高さhが150mmのグラファイト製のものを使用した。
【0066】
冷却媒体として、2000L/分の圧縮空気を冷却体4の内部に流通させ、回転数200rpmで15分間の精製処理を実施した。
【0067】
その他、精製条件として、冷却エアー圧力0.15MPa、溶湯温度670℃、回収率81%とした。
【0068】
実施例1では、上流側18基の溶湯保持槽から回収される高純度金属塊を製品とし、下流側2基の溶湯保持槽から回収された高純度金属塊を溶解炉に戻すものとし、この高純度金属塊を回収して溶解炉に再投入する工程を5回繰り返し行った。
【0069】
実施例2では、下流側10基の溶湯保持槽の金属塊を溶解炉に戻し、実施例3では下流側15基の溶湯保持槽の金属塊を溶解炉に戻した。
【0070】
原材料組成はいずれもSi:150~155ppm、Fe:195~200ppmのアルミニウムとして、再投入を5回繰り返し行った際の、5回目に回収された上流側の溶湯保持槽から得られた製品としての高純度金属塊の平均組成を表1に示す。
【0071】
溶湯保持槽から回収される高純度金属塊を全て製品とし、溶解炉に戻す工程を行わない場合を比較例1として、製品としての高純度金属塊の平均組成を表1に併せて示す。
【0072】
【表1】
【0073】
表1に示すように、実施例の精製塊平均組成は比較例より高純度のものが得られた。
【0074】
また溶解炉に戻す個数が多いほど、さらに高純度なものが得られた。
【0075】
単位時間当たりの生産量は、溶解炉に戻す精製塊の数に反比例するので、実施例1,2,3の順に低下した。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、偏析凝固を利用した高純度金属の連続精製に利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 溶解炉
2 樋
3 溶湯保持槽
4 回転冷却体
5 溶湯
6 ドレン装置
図1
図2
図3
図4