(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018762
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】水中サンドポンプ
(51)【国際特許分類】
E02D 15/06 20060101AFI20230202BHJP
E02D 5/34 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
E02D15/06 101
E02D5/34 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123009
(22)【出願日】2021-07-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】391000508
【氏名又は名称】大容基功工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 幹人
(72)【発明者】
【氏名】戸田 陽三
【テーマコード(参考)】
2D041
2D045
【Fターム(参考)】
2D041AA01
2D041BA14
2D041DA01
2D045AA02
2D045CA23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】泥水を使用して掘削を完了した場所打ち杭工法における地中孔内のスライム処理のために、支持索に吊支して地中孔内に挿入し、地中孔内のスライムを泥水とともに吸引して地上に揚泥して排出する水中サンドポンプを提供する。
【解決手段】水中サンドポンプ1において、継手管10の、インペラケーシング30と連結する水平開口部と、揚泥管40と連結する鉛直開口部を、所定曲率の曲成管部25で連繋することにより、鉛直開口部を、水平開口部の位置する鉛直領域から水中サンドポンプ1の中心方向の領域に変位させて配置した水中サンドポンプ1を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
泥水を安定液として掘削を完了した地中孔内に挿入し、地中孔内のスライムを泥水とともに、インペラを囲繞して水中サンドポンプの円周方向に配置したインペラケーシングに吸引し、継手管を介してインペラケーシングから鉛直方向に配置した揚泥管に方向変換して供給することにより地上に揚泥する水中サンドポンプにおいて、
継手管の、インペラケーシングと連結する水平開口部と、揚泥管と連結する鉛直開口部を、所定曲率の曲成管部で連繋することにより、
鉛直開口部を、水平開口部の位置する鉛直領域から水中サンドポンプの中心方向の領域に変位させて配置したことを特徴とする水中サンドポンプ。
【請求項2】
曲成管部は、水平開口部の内径寸法を減少させることのない内径寸法を有する請求項1記載の水中サンドポンプ。
【請求項3】
揚泥管を、水平開口部の位置する鉛直領域から水中サンドポンプの中心方向の領域に変位させて配置した請求項1又は2記載の水中サンドポンプ。
【請求項4】
曲成管部は、水中サンドポンプの中心方向に向けて、水平開口部から鉛直開口部まで、斜め上方から鉛直方向まで多段階に曲率を変化させて、鉛直開口部に連繋した請求項1,2又は3記載の水中サンドポンプ。
【請求項5】
鉛直開口部の内径寸法を水平開口部の内径寸法より径大に形成した請求項1,2,3又は4記載の水中サンドポンプ。
【請求項6】
インペラケーシングの接線方向に開口したケーシング開口部と水平開口部を連結した請求項1,2,3,4又は5記載の水中サンドポンプ。
【請求項7】
ケーシング開口部の外周縁部に装備したケーシングフランジと、水平開口部の外周縁部に装備した鉛直フランジを連結した請求項6記載の水中サンドポンプ。
【請求項8】
揚泥管の鉛直方向の下端に開口した揚泥管開口部と、鉛直開口部を連結した請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の水中サンドポンプ。
【請求項9】
揚泥管開口部の外周縁部に装備した揚泥管フランジと、鉛直開口部の外周縁部に装備した水平フランジを連結した請求項8記載の水中サンドポンプ。
【請求項10】
次の条件1,2を充足する請求項1,2,3,4,5,6,7,8又は9記載の水中サンドポンプ。
条件1:揚程:30m以上,揚水量:1.5m3/min以上の揚泥能力を有すること。
条件2:内径1000mmの地中孔に対して、[最大幅寸法×110%<1000mm]であること。
【請求項11】
次の条件1,3を充足する請求項1,2,3,4,5,6,7,8又は9記載の水中サンドポンプ。
条件1:揚程:30m以上,揚水量:1.5m3/min以上の揚泥能力を有すること。
条件3:地中孔に配備した内径890mmのケーシングに対して、[最大幅寸法×105%<890mm]であること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥水を使用して掘削を完了した場所打ち杭工法における地中孔内のスライム処理のために、支持索に吊支して地中孔内に挿入し、地中孔内のスライムを泥水とともに吸引して地上に揚泥して排出する水中サンドポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から建築物の基礎杭としての場所打ち杭工法として、アースドリル工法やオールケーシング工法等が提供されており、これらのいずれの工法においても掘削土砂の搬出,掘削機の冷却,地下水等の噴出防止,孔壁の崩壊防止等のため、安定液として泥水を孔内に満して掘削作業を行なっている。使用済みの泥水は劣化して比重が大きくなり、掘削によって生じた微細な泥砂等の残渣であるスライムを含んでいる。
【0003】
スライムが孔底に沈澱して堆積したり、孔壁に付着して残存したままの状態では、地中孔の掘削状況を確認する超音波測定において、孔底の掘削先端部や孔壁を測定できないことがあり、所定の掘削ができているか否かを確認する上での障害となってしまう。なにより、孔底にスライムが残存したままの状態で、生コンクリートを打設して杭を構築すると、杭底と掘削した支持層との間にスライムの層が存在して、緩衝材の役割を果たすため、打設した杭が本来の性能,支持力を果たすことができないことがある。そのため、場所打ち杭工法において、スライムの除去、中でも孔底に沈殿しているスライムの除去は最も重要な課題の一つである。
【0004】
そこで、生コンクリートの打設を行う前に、掘削完了後の地中孔から使用済みの泥水を新しい泥水に交換するとともに、掘削によって生じたスライムを除去するための手段を講じる必要がある。出願人はスライム除去手段として、地上に設置したベースマシンから鋼製ワイヤ等の所定の支持索で吊支した水中サンドポンプを地中孔内に挿入し、泥水とともにスライムを水中サンドポンプ内に吸引して地上に揚泥して除去する手段を従来より種々提供している(特許文献1)。
【0005】
地中孔内のスライムを泥水とともに吸引して地上に揚泥するための水中サンドポンプには、何よりスライム除去を実効可能な揚泥能力が要求される。出願人は豊富な施工経験に基づき、比重の大きいスライムや近時の拡底杭を考慮して、[揚程:30m,揚水量:1.5m3/min]程度の揚泥能力を有することを基準として定め、耐久性や補修部品の供給体制等を総合的に勘案し、「株式会社東洋電機工業所」(北九州市八幡西区則松一丁目7番10号)の「製品名:水中攪乱サンドポンプ」,「機種名:DPF-30」をスライム処理用の水中サンドポンプ(以下、「水中サンドポンプ101」という)として汎用的に使用している(非特許文献1)。この水中サンドポンプ101は、種々の孔径の地中孔に対して安定したスライム処理の実績を残している。
【0006】
地中孔内のスライムを除去する水中サンドポンプには、前記した所定の揚泥能力を有するとともに、その前提として、地上から支持索で吊支して地中孔内にスムーズに挿入し、取り出す必要がある。そのためには、掘削した地中孔の内径に対して、水中サンドポンプの最大幅寸法が、挿入・取り出しのために必要なクリアランスを保持した寸法内に収まっている必要がある。即ち、[水中サンドポンプの最大幅寸法+クリアランス寸法<地中孔の内径]の関係を充足する必要がある。いくら揚泥能力が高くても、地中孔への挿入がスムーズに行えなければ、その能力を発揮することができない。
【0007】
クリアランスが十分に確保できないと、掘削にケーシングを使用しない場合は水中サンドポンプが直接地中孔に接触して孔壁を破壊することもあり、又オペレータの円滑な操作が阻害され、作業効率に悪影響を与えるためである。なお、掘削にケーシングを使用する場合は、孔壁はケーシングによって守られているため破壊されることがなく、ケーシングを使用しない場合に比較してクリアランスは少なくて済む。
【0008】
図17は水中サンドポンプ101の要部正面図、
図18はその要部平面図、
図19はインペラケーシング130と継手管100の連結状態を示す正面図、
図20はその側面図である。水中サンドポンプ101は、下面に配置した吸引用のインペラ(図示略)を囲繞してインペラケーシング130を円周方向に配置するとともに接線方向に開口したケーシング開口部135(
図4,
図5参照)のケーシングフランジ135a(
図20参照)に、直角状に曲成した90度エルボ継手からなる継手管100の鉛直フランジ115a(
図20参照)を連結し、継手管100の水平フランジ120aに、鉛直方向に配置した揚泥管140の下端に開口した揚泥管開口部145の外周縁部に装備した揚泥管フランジ145aを連結することにより、インペラケーシング130内に吸引したスライムを含む泥水(以下、両者を合わせて「泥水」という)の方向を、水平方向から鉛直方向に変換している。
【0009】
この水中サンドポンプ101を、地上に設置したベースマシンから支持索を介して繰り出し・巻き取り可能に吊支して、泥水を安定液として掘削を完了した地中孔内に挿入するとともに、同様にベースマシンからキャブタイヤケーブルを介して給電し、インペラを回転させることによって、地中孔内の泥水をインペラケーシング130内に吸引する。インペラケーシング130に吸引した泥水を、インペラケーシング130のケーシング開口部135から継手管100に供給して水平方向から鉛直方向に方向変換し、鉛直方向に設置した揚泥管140に供給して地上に揚泥する。なお、105は撹拌羽根であり、沈殿したスライムを撹拌することにより、浮遊させてインペラによる吸引を容易とするものである。上記した水中サンドポンプ101の構成及び泥水の揚泥は従来より公知である。
【0010】
水中サンドポンプ101では、90度エルボ継手からなる継手管100を採用しており、インペラケーシング130のケーシング開口部135と連結した継手管100の一方の開口と、揚泥管140の揚泥管開口部145と連結した継手管100の他方の開口は、同一の鉛直領域に位置することとなる。そのため、
図18に示すように、継手管100はインペラケーシング130の接線方向に突出して配置されることとなり、継手管100の揚泥管140側の水平フランジ120aが水中サンドポンプ101の最大幅寸法W1を決定する一方の基準点αを決定することとなる。そして、水中サンドポンプ101の中心に対して継手管100の基準点αと点対称位置のインペラケーシング130が他方の基準点βを決定することとなる。これらの双方の基準点α,β間の寸法、即ち、水中サンドポンプ101の最大幅寸法W1は910mmである。
【0011】
クリアランス寸法は、出願人の経験則に照らせば、アースドリル工法等の掘削に際してケーシングを使用しない地中孔であれば、使用する水中サンドポンプの最大幅寸法の10%程度は必要であり、又オールケーシング工法等の掘削に際してケーシングを使用する地中孔であれば、使用する水中サンドポンプの最大幅寸法の5%程度は必要である。よって、水中サンドポンプ101を使用してスライム処理を行うためには、前者のケーシングを使用しない地中孔であれば、地中孔の内径が1001mm(最大幅寸法W1:910mm+クリアランス寸法:91mm=1001mm)を超えていることが、後者のケーシングを使用する地中孔であれば、地中孔の内径が955.5mm(最大幅寸法W1:910mm+クリアランス寸法:45.5mm=955.5mm)を超えていることが前提となる。
【0012】
地中孔の孔径は、打設する場所打ち杭の仕様に応じて様々であるが、前記した挿入時のクリアランスを確保する必要性から、水中サンドポンプ101は、孔径1100mm以上の地中孔において使用していた。孔径1100mmの地中孔の内径は、掘削にケーシングを使用しない工法であれば、そのまま1100mmであり、[最大幅寸法W1:910mm+クリアランス寸法:91mm=1001mm<地中孔の内径:1100mm]の関係を充足する。また、掘削にケーシングを使用する工法であれば、孔径1100mmの地中孔に配備したケーシングの内径は990mmであり、[最大幅寸法W1:910mm+クリアランス寸法:45.5mm=955.5mm<地中孔の内径:990mm]の関係を充足する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】株式会社東洋電機工業所製の水中攪乱サンドポンプDPF-30の製品仕様書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
杭径等の場所打ち杭の仕様は、その杭に対する建築物の設計上及び強度計算上の要求能力によって決定される。近時は、場所打ち杭に対する要求能力も細分化され、上記した杭径1100mm以上の大径の場所打ち杭(以下、「杭径1100mm杭」という)に加えて、下記の理由によって、杭径1000mmの小径の場所打ち杭(以下、「杭径1000mm杭」という)に対する需要が増大している。
理由1:例えば、建築物周辺の外部階段や立体駐車場等の構造耐力上の問題のない箇所は、建築物自体を支持する杭径1100mm杭に代えて、杭径1000mm杭で対応可能であること。
理由2:杭径1100mm杭の施工が困難な狭隘地でも、杭径1000mm杭であれば施工可能な場合があること。
理由3:既存の場所打ち杭を残したまま、新たに施工する場合、既設杭に干渉しないように杭径1000mm杭を用いて、建物の支持力の設計を行うことがあること。
理由4:杭径1000mm杭は、杭径1100mm杭に比べて、掘削土,コンクリート,鉄筋の使用量が少なく、コスト面で安価であること。
【0016】
杭径1000mm杭を打設するための地中孔であっても、掘削完了後にスライムを泥水とともに吸引して地上に揚泥することに変わりなく、そのためには杭径1100mm杭の地中孔と同様に[揚程:30m,揚水量:1.5m3/min]程度の揚泥能力が要求される。揚泥能力が劣ると処理時間が長くかかり、直接的に作業効率に影響するばかりか、場合によってはスライム処理が困難となることもある。特に近時は拡底杭が主流となっており、揚泥能力が劣ると拡底部のスライム除去が困難となる。また、掘削にケーシングを使用する工法であれば、孔径1100mmの地中孔に配備したケーシングの内径は990mmであり、[最大幅寸法W1:910mm+クリアランス寸法:45.5mm=955.5mm<地中孔の内径:990mm]の関係を充足する。
【0017】
そのため、杭径1000mm杭の地中孔についても、前記した揚泥能力を有する水中サンドポンプ101を使用することが可能であれば何ら問題ない。しかしながら、掘削にケーシングを使用する工法であれば、孔径1000mmの地中孔に配備したケーシングの内径は890mmであり、最大幅寸法W1:910mmの水中サンドポンプ101は物理的に挿入できない。また、掘削にケーシングを使用しない工法であれば、杭径1000mm杭の地中孔の内径は1000mmであり、水中サンドポンプ101の最大幅寸法W1:910mmより大きいものの、スムーズな操作のために必要なクリアランス91mmを考慮すると、[最大幅寸法W1:910mm+クリアランス寸法:91mm=1001mm>地中孔の内径:1000mm]となり、クリアランスが不足し、使い勝手が悪く実際の施工現場では使用することができない。
【0018】
そこで、出願人は杭径1000mm杭の地中孔に対しては、別途配管式のスライム処理装置を使用したり、水中サンドポンプ101と同じ「株式会社東洋電機工業所」の最大幅寸法が825mmの「製品名:水中攪乱サンドポンプ」,「機種名:DPF-20」をスライム処理用の水中サンドポンプ(以下、「水中サンドポンプDPF-20」という)として使用してスライム処理を行っている。しかしながら、水中サンドポンプDPF-20の揚泥能力は[揚程:20m,揚水量:1.5m3/min]に止まり、水中サンドポンプ101に比べて、揚泥能力が劣るため、その分処理時間が長くかかり、直接的に作業効率に影響するばかりか、スライムを含む安定液の比重が高い場合には揚泥が困難となることもある。更に、拡底杭の拡底部のスライム除去に不安が残るものの、他に手段がないため、やむを得ず長時間をかけて水中サンドポンプDPF-20を使用したり、或いは揚泥能力が劣る他機種の小型ポンプを使用した配管式のスライム処理装置でスライム処理を行っている。
【0019】
加えて、杭径1100mm杭の地中孔と、杭径1000mm杭の地中孔の双方のスライム処理に対応するために、杭径1100mm杭の地中孔用の水中サンドポンプ101に加えて、杭径1000mm杭の地中孔用の水中サンドポンプDPF-20を装備しておくことは、機材の重複となるばかりか、その交換作業にも時間や手間を要し、作業効率に悪影響を与える。
【0020】
そのため、本発明は掘削の完了した地中孔内の泥水を効率よく揚泥して除去するために、[揚程:30m,揚水量:1.5m3/min]の水中サンドポンプ101の揚泥能力を前提として、杭径1100mm杭の地中孔はもとより、杭径1000mm杭の地中孔にもスムーズに挿入・取り出しが可能な汎用性の高い水中サンドポンプを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記したとおり、水中サンドポンプ101の最大幅寸法W1は、継手管100の基準点αとインペラケーシング130の基準点β間の寸法である(
図18参照)。発明者は、上記課題を解決するために、所定の揚泥能力を有する水中サンドポンプ101の揚泥メカニズム、特に地中孔への挿入・取り出しの可否を決定する最大幅寸法W1の縮小化について鋭意研究を行い、次の知見を得た。
知見1:インペラケーシング130の位置や構成を変更することは実現可能性が薄いこと。
知見2:インペラケーシング130によって決定される基準点βを変更することは困難であること。
知見3:基準点αとなるのは、揚泥管140側の水平フランジ120aであること。
知見4:継手管100の作用は、水中サンドポンプ101の円周方向に配置したインペラケーシング130に吸引した泥水の方向を転換して鉛直方向に配置した揚泥管140に供給すること。
知見5:継手管100はインペラケーシング130のケーシング開口部135の内径寸法を減少させることなく、揚泥管140に連結する必要があること。または、継手管100はインペラケーシング130のケーシング開口部135の内径寸法を減少させることなく、ケーシング開口部135より内径の大きい揚泥管140に連結する必要があること。
【0022】
上記知見1~5に基づき、発明者は最大幅寸法W1の縮小化に関して、次の着想を得た。
着想1:基準点βを決定するインペラケーシング130は変更できないものの、基準点αを決定する継手管100は、その機能を保持していさえすれば、90度エルボ継手を使用する必要はないこと。
着想2:継手管100の構成を変更することによって、基準点αの位置を変更できる可能性があること。
【0023】
この着想1,2に基づいて、揚泥管140を、インペラケーシング130のケーシング開口部135の位置する鉛直領域、即ち、インペラケーシング130の直上の位置から水中サンドポンプ101の中心方向に変位させた状態で連結することができる新たな継手管を提供することができれば、最大幅寸法W1を短縮することができるとの推論を立て、試行錯誤の結果、本発明に想到した。
【0024】
本発明はその目的を達成するために、請求項1により、泥水を安定液として掘削を完了した地中孔内に挿入し、地中孔内のスライムを泥水とともに、インペラを囲繞して水中サンドポンプの円周方向に配置したインペラケーシングに吸引し、継手管を介してインペラケーシングから鉛直方向に配置した揚泥管に方向変換して供給することにより地上に揚泥する水中サンドポンプにおいて、継手管の、インペラケーシングと連結する水平開口部と、揚泥管と連結する鉛直開口部を、所定曲率の曲成管部で連繋することにより、鉛直開口部を、水平開口部の位置する鉛直領域から水中サンドポンプの中心方向の領域に変位させて配置した水中サンドポンプを基本として提供する。
【0025】
請求項2により、曲成管部は、水平開口部の内径寸法を減少させることのない内径寸法を有する構成を、請求項3により、揚泥管を、水平開口部の位置する鉛直領域から水中サンドポンプの中心方向の領域に変位させて配置した構成を、請求項4により、曲成管部は、水中サンドポンプの中心方向に向けて、水平開口部から鉛直開口部まで、斜め上方から鉛直方向まで多段階に曲率を変化させて、鉛直開口部に連繋した構成を提供する。
【0026】
また、請求項5により、鉛直開口部の内径寸法を水平開口部の内径寸法より径大に形成した構成を、請求項6により、インペラケーシングの接線方向に開口したケーシング開口部と水平開口部を連結した構成を、請求項7により、ケーシング開口部の外周縁部に装備したケーシングフランジと、水平開口部の外周縁部に装備した鉛直フランジを連結した構成を提供する。
【0027】
更に、請求項8により、揚泥管の鉛直方向の下端に開口した揚泥管開口部と、鉛直開口部を連結した構成を、請求項9により、揚泥管開口部の外周縁部に装備した揚泥管フランジと、鉛直開口部の外周縁部に装備した水平フランジを連結した構成を提供する。
【0028】
そして、請求項10により、次の条件1,2を充足する水中サンドポンプを提供する。
条件1:揚程:30m以上,揚水量:1.5m3/min以上の揚泥能力を有すること。
条件2:内径1000mmの地中孔に対して、[最大幅寸法×110%<1000mm]であること。
【0029】
また、請求項11により、次の条件1,3を充足する水中サンドポンプを提供する。
条件1:揚程:30m以上,揚水量:1.5m3/min以上の揚泥能力を有すること。
条件3:地中孔に配備した内径890mmのケーシングに対して、[最大幅寸法×105%<890mm]であること。
【発明の効果】
【0030】
以上記載した本発明によれば、継手管の、インペラケーシングと連結する水平開口部と、揚泥管と連結する鉛直開口部を、所定曲率の曲成管部で連繋することにより、鉛直開口部を水平開口部の位置する鉛直領域から水中サンドポンプの中心方向の領域に変位させて配置することができる。そのため、継手管によって揚泥管をインペラケーシングのケーシング開口部の位置する鉛直領域、即ち、インペラケーシングのケーシング開口部の直上の位置から水中サンドポンプの中心方向の領域に変位させた状態で、インペラケーシングと連結することができる。これにより、継手管の揚泥管との連結箇所、即ち、継手管の揚泥管側の水平フランジを水中サンドポンプの最大幅寸法を決定する基準点から解放することができる。
【0031】
そのため、泥水の揚泥のために必要な所定の揚泥能力[揚程:30m,揚水量:1.5m3/min]を保持した水中サンドポンプを杭径1000mm杭の地中孔に必要なクリアランスを保持した上で円滑に挿入し、取り出すことが可能となる。具体的には、内径1000mmの地中孔に対して、[最大幅寸法×110%<1000mm]の水中サンドポンプを得ることができるとともに、孔径1000mmのオールケーシング工法による内径890mmのケーシングに対して、[最大幅寸法×105%<890mm]である水中サンドポンプを得ることができる。
【0032】
そして、得られた水中サンドポンプの継手管は、インペラケーシングのケーシング開口部の内径寸法を減少させることなく揚泥管に連結すること、或いはインペラケーシングのケーシング開口部の内径寸法を減少させることなく、ケーシング開口部より内径の大きい揚泥管に連結することができ、継手管に要求される機能を発揮することができる。また、水中サンドポンプは支持索と揚泥管によって吊支しているため、揚泥管を水中サンドポンプの中心方向の領域に変位させることによって、水中サンドポンプの安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明にかかる水中サンドポンプの要部斜視図。
【
図13】
図6のA-B-C-D-E-F-G線組合せ断面図。
【
図14】インペラケーシングと継手管の連結状態を示す斜視図。
【
図15】インペラケーシングと継手管の連結状態を示す正面図。
【
図19】従来のインペラケーシングと継手管の連結状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明にかかる水中サンドポンプ1の要部斜視図、
図2はその正面図、
図3はその要部平面図、
図4はインペラケーシング30の斜視図、
図5はその正面図である。水中サンドポンプ1は、地上に設置したベースマシンから支持索を介して繰り出し・巻き取り可能に吊支して、泥水を安定液として掘削を完了した地中孔内に挿入し、同様にベースマシンからキャブタイヤケーブルを繰り出して給電し、下面に配置した吸引用のインペラ(図示略)を回転させ、地中孔内の泥水(スライムを含む泥水)をインペラケーシング30内に吸引する。
【0035】
インペラケーシング30は、インペラ(図示略)を囲繞して水中サンドポンプ1の円周方向に配置され、その接線方向にケーシング開口部35を開口するとともに、ケーシング開口部35の外周縁部に円盤状のケーシングフランジ35aを付設している。インペラケーシング30及びそのケーシングフランジ35aは、従来の水中サンドポンプ101のインペラケーシング130及びそのケーシングフランジ135aと同一の構成である。このインペラケーシング30に吸引した泥水を、ケーシング開口部35から継手管10に供給して水平方向から鉛直方向に方向変換し、鉛直方向に設置した揚泥管40に供給して地上に揚泥する。なお、5は撹拌羽根であり、沈殿したスライムを撹拌することにより、浮遊させてインペラによる吸引を容易とするものである。
【0036】
本発明の特徴は、解決課題である水中サンドポンプ1の最大幅寸法Wを短縮するために、インペラケーシング30に吸引した泥水を揚泥管40に供給するための継手管10を新たに開発するとともに、継手管10によってインペラケーシング30と連結する揚泥管40の配置位置を水中サンドポンプ1の中心方向に変位させたことにある。その他の構成は従来の水中サンドポンプ101と同様である。
【0037】
図6は継手管10の正面図、
図7はその背面図、
図8はその平面図、
図9はその底面図、
図10はその右側面図、
図11はその左側面図、
図12はその斜視図、
図13は
図6のA-B-C-D-E-F-G線組合せ断面図である。継手管10は、インペラケーシング30の水平方向に開口したケーシング開口部35と揚泥管40の下端において鉛直方向に開口した揚泥管開口部45を連結する部材である。継手管10は、
図6に示す正面視において、水平方向に開口した水平開口部15と(
図7参照)、鉛直方向に開口した鉛直開口部20を有し(
図8参照)、鉛直開口部20と水平開口部15を所定の曲率で曲成した曲成管部25で連繋している。曲成管部25は、水中サンドポンプ1の中心方向に向けて(
図6の正面視における左方向)、水平開口部15から鉛直開口部20まで、斜め上方から鉛直方向まで、
図13に示すように多段階に曲率を変化させて、鉛直開口部20に連繋した中空管体である。
【0038】
継手管10の水平開口部15の外周縁部に円盤状の鉛直フランジ15aを垂直方向に付設するとともに、鉛直開口部20の外周縁部に円盤状の水平フランジ20aを水平方向に付設している。そして、インペラケーシング30のケーシングフランジ35aに、継手管10の鉛直フランジ15aをボルト等の適宜の固定手段で固定することにより、インペラケーシング30のケーシング開口部35と継手管10の水平開口部15を連通させる。また、揚泥管40の揚泥管フランジ45aに、継手管10の水平フランジ20aをボルト等の適宜の固定手段で固定することにより、揚泥管40の揚泥管開口部45と継手管10の鉛直開口部20を連通させる。これにより、インペラケーシング30に吸引された泥水は、インペラケーシング30のケーシング開口部35から、継手管10の水平開口部15を経て、方向が変換されて、継手管10の鉛直開口部20から揚泥管40の揚泥管開口部45に至り、揚泥管40を介して地上に揚泥される。
【0039】
継手管10の水平開口部15は、インペラケーシング30のケーシング開口部35と同一の内径寸法を有し、曲成管部25は水平開口部15の内径寸法を減少させることのない断面内径を有して、鉛直開口部20に至る。或いは、継手管10の鉛直開口部20の内径を水平開口部15の内径より径大に形成する。図示例では、地上への揚泥効率を向上させるため、鉛直開口部20を水平開口部15より径大に形成することにより揚泥管40の内径をインペラケーシング30の内径より径大としている。
【0040】
上記した構成とすることにより、継手管10の鉛直開口部20は、
図2に示すように水平開口部15の位置する鉛直領域15bから外れて、水中サンドポンプ1の中心方向の鉛直領域に配置される。そのため、継手管10の鉛直開口部20と連結される揚泥管40も、水平開口部15の鉛直領域15b、即ち、水平開口部15の直上の領域から外れて、水中サンドポンプ1の中心方向(
図6の正面視における左方向)に変位した位置に配置される。
【0041】
その結果、
図3に示すように、継手管10の曲成管部25の外端が水中サンドポンプ1の最大幅寸法Wを決定する一方の基準点γとなり、水中サンドポンプ1の中心に対して曲成管部25の基準点γと点対称位置のインペラケーシング30が他方の基準点βとなる。この他方の基準点βはインペラケーシング30によって構成されるため、従来の水中サンドポンプ101の最大幅寸法W1を決定していた基準点βと共通するものの、基準点αを構成していた水平フランジ20aは基準点γを構成することなく、基準点γより水中サンドポンプ1の中心方向に位置することとなる。
【0042】
この基準点γと基準点β間の寸法、即ち、水中サンドポンプ1の最大幅寸法Wは830mmである。水中サンドポンプ1は、最大幅寸法910mmの従来の水中サンドポンプ101とは、継手管10を変更するとともに、揚泥管40の配置位置を変更したのみでその他の構成に変更はなく、水中サンドポンプとしての能力は同一であって、[揚程:30m,揚水量:1.5m3/min]の揚泥能力を保持しており、水中サンドポンプ1に要求される「条件1」を充足している。即ち、水中サンドポンプ1は、従来の水中サンドポンプ101に対して、新たな継手管10を使用することによって、最大幅寸法Wを910mmから830mmに短縮するとともに、揚泥管40を水中サンドポンプ1の中心方向に変位させている。
【0043】
水中サンドポンプ1の最大幅寸法Wは830mmであるため、地中孔へのクリアランスを確保した上で、孔径1000mmの地中孔に円滑に挿入し、取り出すことができる。即ち、掘削に際してケーシングを使用しない孔径1000mmで内径も1000mmの地中孔に対して、[830mm×110%=913mm<1000mm]となり、水中サンドポンプ1に要求される《条件2:内径1000mmの地中孔に対して、[最大幅寸法×110%<1000mm]》を充足している。
【0044】
また、掘削に際してケーシングを使用する孔径1000mmの地中孔に配備した内径890mmのケーシングに対して、[830mm×105%=871.5mm<890mm]となり、水中サンドポンプ1に要求される《条件3:地中孔に配備した内径890mmのケーシングに対して、[最大幅寸法×105%<890mm]》を充足している。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上記載した本発明によれば、継手管の、インペラケーシングと連結する水平開口部と、揚泥管と連結する鉛直開口部を、所定曲率の曲成管部で連繋することにより、鉛直開口部を水平開口部の位置する鉛直領域から水中サンドポンプの中心方向の領域に変位させて配置することができる。そのため、継手管によって揚泥管をインペラケーシングのケーシング開口部の位置する鉛直領域、即ち、インペラケーシングのケーシング開口部の直上の位置から水中サンドポンプの中心方向の領域に変位させた状態で、インペラケーシングと連結することができる。これにより、継手管の揚泥管との連結箇所、即ち、継手管の揚泥管側の水平フランジを水中サンドポンプの最大幅寸法を決定する基準点から解放することができる。
【0046】
そのため、泥水の揚泥のために必要な所定の揚泥能力[揚程:30m,揚水量:1.5m3/min]を保持した水中サンドポンプを杭径1000mm杭の地中孔に必要なクリアランスを保持した上で円滑に挿入し、取り出すことが可能となる。具体的には、内径1000mmの地中孔に対して、[最大幅寸法×110%<1000mm]の水中サンドポンプを得ることができるとともに、孔径1000mmのオールケーシング工法による内径890mmのケーシングに対して、[最大幅寸法×105%<890mm]である水中サンドポンプを得ることができる。
【0047】
そして、得られた水中サンドポンプの継手管は、インペラケーシングのケーシング開口部の内径寸法を減少させることなく揚泥管に連結すること、或いはインペラケーシングのケーシング開口部の内径寸法を減少させることなく、ケーシング開口部より内径の大きい揚泥管に連結することができ、継手管に要求される機能を発揮することができる。また、水中サンドポンプは支持索と揚泥管によって吊支しているため、揚泥管を水中サンドポンプの中心方向の領域に変位させることによって、水中サンドポンプの安定性が向上する。
【符号の説明】
【0048】
1,101…水中サンドポンプ
5,105…撹拌羽根
10,100…継手管
15…水平開口部
15a,115a…鉛直フランジ
15b…鉛直領域
20…鉛直開口部
20a,120a…水平フランジ
25…曲成管部
30,130…インペラケーシング
35,135…ケーシング開口部
35a,135a…ケーシングフランジ
40,140…揚泥管
45,145…揚泥管開口部
45a,145a…揚泥管フランジ
W,W1…最大幅寸法
α,β,γ…基準点
【手続補正書】
【提出日】2022-09-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項4
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項4】
曲成管部は、水中サンドポンプの中心方向に向けて、水平開口部から鉛直開口部まで多段階に曲率を変化させてなる請求項1,2又は3記載の水中サンドポンプ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
請求項2により、曲成管部は、水平開口部の内径寸法を減少させることのない内径寸法を有する構成を、請求項3により、揚泥管を、水平開口部の位置する鉛直領域から水中サンドポンプの中心方向の領域に変位させて配置した構成を、請求項4により、曲成管部は、水中サンドポンプの中心方向に向けて、水平開口部から鉛直開口部まで多段階に曲率を変化させてなる構成を提供する。