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特開2023-18785焦電素子を備えた電源装置および当該電源装置を用いた異常温度検出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018785
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】焦電素子を備えた電源装置および当該電源装置を用いた異常温度検出装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20230202BHJP
   H01H 37/52 20060101ALI20230202BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
H02M7/06 H
H01H37/52
H02J1/00 308P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123051
(22)【出願日】2021-07-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2019年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDO先導研究プログラム/新産業創出新技術先導研究プログラム」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】720006490
【氏名又は名称】株式会社アイビーシステム
(71)【出願人】
【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若桑 茂
(72)【発明者】
【氏名】山澤 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】馬場 将亮
(72)【発明者】
【氏名】中山 忠親
(72)【発明者】
【氏名】山田 昇
(72)【発明者】
【氏名】武田 雅敏
【テーマコード(参考)】
5G041
5G165
5H006
【Fターム(参考)】
5G041BB11
5G165AA08
5G165DA06
5G165EA06
5G165GA07
5G165HA01
5G165HA17
5G165KA02
5G165KA05
5G165LA07
5G165NA01
5G165NA07
5H006BB07
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC08
5H006DC08
5H006FA03
(57)【要約】
【課題】小型で安定した電力の供給が可能な、焦電素子を備えた電源装置1および当該電源装置を用いた異常温度検出装置21を提供する。
【解決手段】焦電素子を備えた電源装置1が、第1の焦電素子2と、第1の焦電素子2が発電する電圧を整流する第1の整流回路4と、第1の整流回路4で整流された電圧を蓄電する蓄電用キャパシタ5と、温度に応じて電気的な導通および非導通を切り替えて、蓄電用キャパシタ5に蓄電された電圧の出力端6への供給を制御する熱スイッチ3と、を備える。焦電素子を備えた電源装置1を用いた異常温度検出装置21は、焦電素子を備えた電源装置1の出力端6に無線通信回路27が接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の焦電素子と、
前記第1の焦電素子が発電する電圧を整流する第1の整流回路と、
前記第1の整流回路で整流された電圧を蓄電する蓄電用キャパシタと、
温度に応じて電気的な導通および非導通を切り替えて、前記蓄電用キャパシタに蓄電された電圧の出力端への供給を制御する熱スイッチと、
を備える、焦電素子を備えた電源装置。
【請求項2】
前記熱スイッチがバイメタル式サーモスタットである、請求項1に記載の焦電素子を備えた電源装置。
【請求項3】
前記出力端に接続される第2の焦電素子と、
前記第2の焦電素子が発電する電圧を整流する第2の整流回路と、
を備え、
前記熱スイッチが、所定の温度以上になったときに電気的に導通して、前記蓄電用キャパシタに蓄電された電圧を前記出力端に供給するように構成される、請求項1または2に記載の焦電素子を備えた電源装置。
【請求項4】
前記第1の焦電素子のキュリー温度が、前記第2の焦電素子のキュリー温度よりも高い、請求項3に記載の焦電素子を備えた電源装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の焦電素子を備えた電源装置の前記出力端に無線通信回路を接続する、異常温度検出装置。
【請求項6】
前記蓄電用キャパシタと前記熱スイッチとの間にツェナーダイオードを備えた、請求項5に記載の異常温度検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度変化に応じて発電する焦電素子を備えた小型の電源装置、および、当該電源装置を用いた小型の異常温度検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電圧の発電素子として焦電効果を利用する焦電素子を用いた電源装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、従来、温度センサを備え、当該温度センサが検出する温度が所定の閾値を超えた場合に報知する制御部を備えた、異常温度検出手段が知られている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-65068号公報
【特許文献2】特開2020-101093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、受け入れた電力を負荷回路および二次電池に再配分する電力変換部を必要とし、電源装置全体としての小型化に課題がある。また特許文献1では、焦電素子がキュリー温度を超えると発電量が低下するという課題がある。
【0006】
特許文献2では、温度センサと制御部(例えばマイコンやIC等)を備える必要があり、さらにこれらの電源の問題もあるため、小型化できない課題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、小型で安定した電力の供給が可能な、焦電素子を備えた電源装置および当該電源装置を用いた異常温度検出装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題を解決するため、第1の焦電素子と、前記第1の焦電素子が発電する電圧を整流する第1の整流回路と、前記第1の整流回路で整流された電圧を蓄電する蓄電用キャパシタと、温度に応じて電気的な導通および非導通を切り替えて、前記蓄電用キャパシタに蓄電された電圧の出力端への供給を制御する熱スイッチと、を備える、焦電素子を備えた電源装置を提供する。
【0009】
前記焦電素子を備えた電源装置では、前記熱スイッチがバイメタル式サーモスタットとすることができる。
【0010】
前記焦電素子を備えた電源装置では、前記出力端に接続される第2の焦電素子と、前記第2の焦電素子が発電する電圧を整流する第2の整流回路と、を備え、前記熱スイッチが、所定の温度以上になったときに電気的に導通して、前記蓄電用キャパシタに蓄電された電圧を前記出力端に供給するように構成されることができる。
【0011】
この場合、前記第1の焦電素子のキュリー温度が、前記第2の焦電素子のキュリー温度よりも高い構成とすることができる。
【0012】
また、本発明は、前記焦電素子を備えた電源装置の前記出力端に無線通信回路を接続する、異常温度検出装置を提供する。
【0013】
前記異常温度検出装置では、前記蓄電用キャパシタと前記熱スイッチとの間にツェナーダイオードを備えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の焦電素子を備えた電源装置によれば、電源装置の小型化を実現しながら安定した電力の供給が可能である。本発明の焦電素子を備えた電源装置を用いた異常温度検出装置によれば、簡単な構成で電源の課題を解決して、対象機器の異常な発熱を検出する検出装置の大幅な小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の焦電素子を備えた電源装置の好適な一実施形態としての基本回路構成を示す図である。
図2】本発明の焦電素子を備えた電源装置の全体構成の好適な一実施例としての第1実施例を示す図である。
図3】本発明の第1実施例の焦電素子を備えた電源装置において、発電用の第2の焦電素子の温度変化の様子を示す図である。
図4】本発明の第1実施例の焦電素子を備えた電源装置において、図3に示す発電用の第2の焦電素子の温度変化に対し、蓄電用キャパシタの電圧、および、第2の焦電素子の電圧の変化を示す図である。
図5】本発明の第1実施例の第1の焦電素子を備えず、第2の焦電素子のみの電源装置において、第2の焦電素子の温度変化の様子を示す図である。
図6図5に示す第2の焦電素子の温度変化に対し、第2の焦電素子の電圧の変化を示す図である。
図7】本発明の第1実施例の焦電素子を備えた電源装置において、図4の150秒後以降の第2の焦電素子の電圧の様子を拡大して示す図である。
図8図6の150秒後以降の第2の焦電素子の電圧の様子を拡大して示す図である。
図9】本発明の焦電素子を備えた電源装置を用いた異常温度検出装置の全体構成の好適な一実施例としての第2実施例を示す図である。
図10】本発明の第2実施例の異常温度検出装置において、第1の焦電素子の温度変化の様子を示す図である。
図11】本発明の第2実施例の異常温度検出装置において、図10に示す第1の焦電素子の温度変化に対し、蓄電用キャパシタの電圧、および、第1の焦電素子の電圧の変化を示す図である。
図12】本発明の第2実施例の異常温度検出装置において、熱スイッチの温度が所定の温度に達して電気的に導通したとき(1040秒の時点)の蓄電用キャパシタの電圧の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の焦電素子を備えた電源装置および当該電源装置を用いた異常温度検出装置の好ましい実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明の焦電素子を備えた電源装置1の基本回路構成を示す図である。焦電素子を備えた電源装置1は、第1の焦電素子2と、第1の焦電素子2が発電する電圧を整流する第1の整流回路4と、第1の整流回路4で整流された電圧を蓄電する蓄電用キャパシタ5と、温度に応じて電気的な導通および非導通を切り替えて、蓄電用キャパシタ5に蓄電された電圧の出力端6への供給を制御する熱スイッチ3と、を備える。
【0018】
第1の焦電素子2は、任意の焦電素子を使用することができる。焦電素子は時間的な温度変化で発電するため、一定の温度変化をする熱源では交流的に電気が生じる。また、一定の温度変化をしない場合は非常に不規則に電気が生じる。このような発電特性は、それにより生じた電気を利用する場合においては問題である。本発明では、このような不規則で質の悪い電気エネルギーを直流として取り出すことができる。
【0019】
第1の整流回路4は、例えば図1に示すようなダイオードブリッジ等の全波整流回路とすることができる。しかしながら、整流作用を有するものであれば任意の整流回路を使用することができ、例えばダイオードを用いた半波整流回路としてもよい。
【0020】
蓄電用キャパシタ5は、第1の整流回路4で整流された電圧を蓄電する。熱スイッチ3が温度条件によって電気的に導通すると、蓄電用キャパシタ5に蓄電された電圧が出力端6に供給されるように構成される。
【0021】
熱スイッチ3は、バッテリ等の電源を必要とすることなく、熱スイッチ3の状態温度に応じて、出力端6への電力の供給のオン/オフの切り替え動作が可能である。熱スイッチ3は、例えば、熱スイッチ3が通常の温度のときに電気的に非導通の状態であり、熱スイッチ3が所定の温度以上になったときに電気的に導通の状態になる、例えば機械式のスイッチである。この場合、熱スイッチ3が所定の温度以上になったときに、蓄電用キャパシタ5に蓄電された電圧が出力端6に供給される。熱スイッチ3は、例えば、熱スイッチ3が通常の温度のときに電気的に導通の状態であり、熱スイッチ3が所定の温度以上になったときに電気的に非導通の状態になる、例えば機械式のスイッチであってもよい。熱スイッチ3は、例えばバイメタル式サーモスタットとすることができる。
【0022】
以上のように、本実施形態の焦電素子を備えた電源装置1は、第1の焦電素子2と、第1の焦電素子2が発電する電圧を整流する第1の整流回路4と、第1の整流回路4で整流された電圧を蓄電する蓄電用キャパシタ5と、温度に応じて電気的な導通および非導通を切り替えて、蓄電用キャパシタ5に蓄電された電圧の出力端6への供給を制御する熱スイッチ3と、を備える。
【0023】
この場合、出力端6に、所定の温度条件で電力を必要とする回路や装置を接続すれば、非常に簡単な構成の小型の電源装置として、当該回路や装置に電力を供給することができる。また、熱スイッチ3が電気的に導通または非導通したときの出力端6の電圧信号により、温度管理の対象とする機器が所定の温度以上になったことを検知することができる。
【実施例0024】
(第1実施例)焦電素子のデポーリングを防止した電源装置
図2は、本実施形態の焦電素子を備えた電源装置11の全体構成の好適な一実施例としての第1実施例を示す図である。前記焦電素子を備えた電源装置11は、出力端6に接続される第2の焦電素子13と、第2の焦電素子13が発電する電圧を整流する第2の整流回路15と、を備える。
【0025】
図2において、符号12は図1の第1の焦電素子2に、符号14は図1の第1の整流回路4に、符号16は図1の蓄電用キャパシタ5に、符号17は図1の熱スイッチ3に、それぞれ対応する。本実施例の熱スイッチ17は、熱スイッチ17が通常の温度のときに電気的に非導通の状態であり、熱スイッチ17が所定の温度以上になったときに電気的に導通の状態になる。
【0026】
第2の焦電素子13は、第1の焦電素子12と同様に、任意の焦電素子を使用することができる。第2の焦電素子13は、第1の焦電素子12と同じ仕様のものであってもよいし、別の仕様のものであってもよい。例えば各焦電素子12,13のキュリー温度については、特に限定されないが、例えば、第1の焦電素子12のキュリー温度が、第2の焦電素子13のキュリー温度よりも高い場合、第2の焦電素子13のキュリー温度を超えてしまったときでも第1の焦電素子12のキュリー温度以下の温度域であれば、発電機能を損ねることがないため、電源装置と電力を供給される回路や装置とを含むシステム全体としての堅牢性を向上することができる。ただし、第1の焦電素子12のキュリー温度を超えてしまった場合や、第1の焦電素子12のキュリー温度が第2の焦電素子13のキュリー温度よりも低い場合であっても、所定の温度以上になって熱スイッチ17が電気的に導通したときに第2の焦電素子13に電場を印加するのに十分な電圧を蓄電用キャパシタ16に蓄電できる構成であれば、安定した電力を供給する電源装置としての機能を維持することができる。
【0027】
本実施例の焦電素子を備えた電源装置11は任意の回路や装置への電力供給が可能である。図2では、焦電素子を備えた電源装置11に抵抗器18が接続されており、焦電素子を備えた電源装置11から供給された電力が抵抗器18で消費される。焦電素子を備えた電源装置11にキャパシタやバッテリへの蓄電回路等を取り付ければ、これらのキャパシタやバッテリに発電電力を貯めることができる。
【0028】
本実施例の焦電素子を備えた電源装置11は、排熱回生技術として研究開発されている焦電素子を用いた焦電発電器において、焦電素子がキュリー温度を超えると発電量が低下するという課題を、非常に簡単な構成で解決するものである。キュリー温度を超えると焦電素子が発電しなくなる場合、常に上限温度が決まった熱源しか用いることができず、素子の信頼性が低いシステムとなってしまう。これに対して、適切な電場を焦電素子に印加することで、発電量の低下を防止する手法がある。しかしながら、従来は、キュリー温度以上に温度が晒されたときでも焦電素子の発電特性を損ねないようにするための電場を印加するための外部電源を追加することは、焦電発電器の小型化の妨げになっていた。
【0029】
本実施例の焦電素子を備えた電源装置11は、2つの焦電素子(発電素子)12,13を組み合わせることによって、一方の発電素子が貯めた電力をもう一方の発電素子に印加する小型な電場印可型焦電発電器である。これにより、外部電源が無くても、キュリー温度以上に素子が晒されたときでも発電し続ける事ができるようになる。
【0030】
さらに、第2の焦電素子13は極めて単純な構造で小さいものであるため、例えば定電圧直流電源等の外部からの電源を用いることなく、電源装置の構成全体を小型化できるメリットがある。
【0031】
焦電素子を備えた電源装置11の具体的な動作を説明すると、電場印可用の電圧を供給する第1の焦電素子12が発電した電力が第1の整流回路14によって整流されて電場印可用キャパシタ16に貯まる。熱スイッチ17は発電用焦電素子である第2の焦電素子13に貼り付けてある。第2の焦電素子13がキュリー温度に達すると熱スイッチ17が電気的に導通し、電場印可用キャパシタ16から第2の焦電素子13に電場が印可され、第2の焦電素子13の発電量の低下を抑制する。
【0032】
図3は、本実施例の焦電素子を備えた電源装置11において、発電用の第2の焦電素子13の温度変化の様子を示す図である。図4は、図3に示す発電用の第2の焦電素子13の温度変化に対し、蓄電用キャパシタ(電場印加用キャパシタ)16の電圧、および、第2の焦電素子13の電圧の変化を示す図である。第2の焦電素子13が高温になると電場印加用キャパシタ16から第2の焦電素子13に対して電場印可がされている。電場印可した電力はすぐさま抵抗器18で消費されているが、電場印可したことで、第2の焦電素子13が高温になる前後で電圧の振幅の変化がほとんどなく、第2の焦電素子13の発電性能が低下していないことが分かる。
【0033】
図5は、本実施例の第1の焦電素子12を備えず、第2の焦電素子13のみの電源装置において、第2の焦電素子13の温度変化の様子を示す図である。図6は、図5に示す第2の焦電素子13の温度変化に対し、第2の焦電素子13の電圧の変化を示す図である。第2の焦電素子13が高温になった後に電圧の振幅が小さくなり、第2の焦電素子13の発電性能が低下していることがわかる。
【0034】
本実施例の焦電素子を備えた電源装置11の発電性能の維持の効果は、図4の150秒後の第2の焦電素子13の電圧の様子を拡大して示す図7、および、図6の150秒後の第2の焦電素子13の電圧の様子を拡大して示す図8から、より明らかである。
【0035】
以上のように、本実施例の焦電素子を備えた電源装置11は、第1の焦電素子12と、第1の焦電素子12が発電する電圧を整流する第1の整流回路14と、第1の整流回路14で整流された電圧を蓄電する蓄電用キャパシタ16と、所定の温度以上になったときに電気的に導通して、蓄電用キャパシタ16に蓄電された電圧を出力端6に供給する熱スイッチ17と、出力端6に接続される第2の焦電素子13と、第2の焦電素子13が発電する電圧を整流する第2の整流回路15と、を備える。
【0036】
この場合、電源装置の小型化を実現しながら安定した電力の供給が可能である。
【0037】
また、本実施例の焦電素子を備えた電源装置11は、第1の焦電素子12のキュリー温度が、第2の焦電素子13のキュリー温度よりも高い構成とすることができる。
【0038】
この場合、第2の焦電素子13のキュリー温度を超えてしまったときでも第1の焦電素子12のキュリー温度以下の温度域であれば、発電機能を損ねることがないため、電源装置と電力を供給される回路や装置とを含むシステム全体としての堅牢性を向上することができる。
【実施例0039】
(第2実施例)異常温度検出装置
図9は、本実施形態の焦電素子を備えた電源装置1を用いた異常温度検出装置21の全体構成の好適な一実施例としての第2実施例を示す図である。
【0040】
図9において、符号22は図1の第1の焦電素子2に、符号23は図1の熱スイッチ3に、符号25は図1の第1の整流回路4に、符号26は図1の蓄電用キャパシタ5に、それぞれ対応する。本実施例の熱スイッチ23は、好ましくは、熱スイッチ23が通常の温度のときに電気的に非導通の状態であり、熱スイッチ23が所定の温度以上になったときに電気的に導通の状態になる。
【0041】
図9では、焦電素子を備えた電源装置1の出力端6に無線通信回路27を接続し、焦電素子を備えた電源装置1を用いた異常温度検出装置21を構成している。図9の異常温度検出装置21は、蓄電用キャパシタ25と熱スイッチ23との間に、無線通信回路27への過大な電圧の印加を防止するためのツェナーダイオード26を備える。ツェナーダイオード26により、第1の焦電素子22で発電される高い電圧で無線通信回路27を破壊しないための保護回路を構成する。
【0042】
焦電素子は、他の発電素子と比較して出力の電圧が高いという利点がある。高い電圧であるという利点を用いて、第1の整流回路24と蓄電用キャパシタ25を組み合わせることで、無線通信回路27を動かすために適した電圧で蓄電する。
【0043】
いわゆるIoTという言葉のもと、様々なセンサを様々な装置に取り付け、センサから得られたデータをスマートフォン等に送り、そのビックデータを解析することで機器の故障の未然予測等を取り組む研究が進んでいる。ここで、非常に問題になるのが電源である。センサを動作させるにも、センサと外部との間で通信するにも電力が必要であるが、この電力の供給源である電源をボタン電池にすると交換が面倒であるし、100Vのコンセント等からの給電になると配線が複雑になるといった課題がある。
【0044】
これに対し、本実施例では、様々な装置の排熱を生かすことで、排熱から発電をし、これで無線通信をすることができるシステムを実現できる。特に、本実施例では、マイコンやIC等の高度な素子を必要とせず、バッテリや外部電源も不要であることから、非常に小型の異常温度検出装置とすることができる。
【0045】
本実施例では、第1の焦電素子22と熱スイッチ23(サーモスタット)を組み合わせることで、巧みに無線通信を可能としている。すなわち、本実施例では、熱スイッチ23はある温度を超えるとスイッチが入る仕組みであるため、これを利用することで機器の異常な発熱を検知する。具体的な動作としては、対象装置が異常発熱した際に、熱スイッチ23によって、蓄電用キャパシタ25に貯まっている電力を無線通信回路27に供給する。
【0046】
図10は、本実施例の異常温度検出装置21において、第1の焦電素子22の温度変化の様子を示す図である。図11は、図10に示す第1の焦電素子22の温度変化に対し、蓄電用キャパシタ25の電圧、および、第1の焦電素子22の電圧の変化を示す図である。第1の焦電素子22の電圧は温度変化に合わせて交流である。一方、第1の整流回路24を通した後の蓄電用キャパシタ25の電圧は直流になり、第1の焦電素子22が発電した電力が少しずつ貯まっているのが分かる。これらの第1の焦電素子22および蓄電用キャパシタ25の電圧はツェナーダイオード26の効果で無線通信回路27を動かすために必要な電圧に達すると一定になる。
【0047】
図12は、本実施例の異常温度検出装置21において、熱スイッチ23の温度が所定の温度に達して電気的に導通したとき(1040秒の時点)の蓄電用キャパシタ25の電圧の変化を示す図である。1040秒の時点で、熱スイッチ23の温度が所定の温度に達して電気的に導通し、蓄電用キャパシタ25に蓄電された電圧が無線通信回路27に供給され、無線通信回路27がオン状態になって通信が行われたことが分かる。
【0048】
以上のように、本実施例の焦電素子を備えた電源装置1を用いた異常温度検出装置21は、第1の焦電素子22と、第1の焦電素子12が発電する電圧を整流する第1の整流回路24と、第1の整流回路24で整流された電圧を蓄電する蓄電用キャパシタ25と、温度に応じて電気的な導通および非導通を切り替えて、蓄電用キャパシタ25に蓄電された電圧の出力端6への供給を制御する熱スイッチ23と、焦電素子を備えた電源装置1の出力端6に接続された無線通信回路27と、を備え、好ましくは、熱スイッチ23が、所定の温度以上になったときに電気的に導通して、蓄電用キャパシタ25に蓄電された電圧を出力端6に供給する。
【0049】
この場合、様々な装置の排熱を生かすことで、排熱から発電をし、これで無線通信をすることができるシステムを実現できる。特に、マイコンやIC等の高度な素子を必要とせず、バッテリや外部電源も不要であることから、非常に小型の異常温度検出装置とすることができる。
【0050】
また、本実施例の焦電素子を備えた電源装置1を用いた異常温度検出装置21は、蓄電用キャパシタ25と熱スイッチ23との間に、無線通信回路27への過大な電圧の印加を防止するためのツェナーダイオード26を備えることができる。
【0051】
この場合、ツェナーダイオード26により、第1の焦電素子22で発電される高い電圧で無線通信回路27を破壊しないための保護回路を構成することができる。
【0052】
以上、本発明を実施形態および実施例に基づいて説明したが、本発明は種々の変形実施をすることができる。例えば、第2実施例の異常温度検出装置21では、焦電素子を備えた電源装置1の出力端6に無線通信回路27を接続する構成としたが、無線通信回路27以外の回路や装置を接続してもよい。例えば、出力端6から有線で電圧信号を受信して異常温度を検知する構成としてもよい。また、熱スイッチ23が所定の温度以上になったときに電気的に非導通となり、異常温度を検出するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 焦電素子を備えた電源装置
2 第1の焦電素子
3 熱スイッチ(サーモスタット)
4 第1の整流回路
5 蓄電用キャパシタ
6 出力端
11 焦電素子を備えた電源装置
12 第1の焦電素子
13 第2の焦電素子
14 第1の整流回路
15 第2の整流回路
16 蓄電用キャパシタ(電場印加用キャパシタ)
17 熱スイッチ(サーモスタット)
18 抵抗器
21 焦電素子を備えた電源装置を用いた異常温度検出装置
22 第1の焦電素子
23 熱スイッチ(サーモスタット)
24 第1の整流回路
25 蓄電用キャパシタ
26 ツェナーダイオード
27 無線通信回路
図1
図2
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