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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018788
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】脱脂装置
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/638 20060101AFI20230202BHJP
   F27B 17/00 20060101ALI20230202BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20230202BHJP
   F27D 7/04 20060101ALI20230202BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C04B35/638
F27B17/00 C
B22F3/10 C
F27D7/04
F27D7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123056
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100094248
【弁理士】
【氏名又は名称】楠本 高義
(72)【発明者】
【氏名】田中 優
【テーマコード(参考)】
4K018
4K063
【Fターム(参考)】
4K018DA04
4K063AA12
4K063BA04
4K063CA03
4K063CA06
4K063DA24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】処理対象物から発生した分解ガス等の揮発物質が、脱脂ガスとともに可及的速やかに加熱炉の外部に排出される脱脂装置を提供する。
【解決手段】処理対象物Wが収容される加熱炉1と、該加熱炉1を加熱するヒータ2と、加熱炉1内に脱脂ガスを外部から供給するガス供給口3a及び処理対象物Wから離脱した揮発物質を脱脂ガスとともに外部に排出するガス排出口4aと、加熱炉1内で脱脂ガスを循環させるファン5とを備えたものであって、前記ガス排出口4aは、前記ファン5によって加熱炉1内に形成されたガス循環経路上に開口させてある一方、前記ガス供給口3aは、前記ガス循環経路外に開口させてある。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物が収容される加熱炉と、
該加熱炉を加熱するヒータと、
該加熱炉内に脱脂ガスを外部から供給するガス供給口及び処理対象物から離脱した揮発物質を脱脂ガスとともに外部に排出するガス排出口と、
加熱炉内で脱脂ガスを循環させるファンとを備え、
前記ガス排出口は、前記ファンによって加熱炉内に形成されたガス循環経路上に開口しており、
前記ガス供給口は、前記ガス循環経路外に開口している、脱脂装置。
【請求項2】
前記加熱炉をガス流通可能に仕切る第1隔壁をさらに備え、
該第1隔壁によって仕切られた一方の室である主室に前記ファンが配置されているとともに前記ガス排出口が開口しており、
前記第1隔壁によって仕切られた他方の室である副室に前記ガス供給口が開口している、請求項1記載の脱脂装置。
【請求項3】
前記ヒータが前記主室に配置されており、該ヒータの配置領域に隣接するように前記第1隔壁が配置されている請求項2記載の脱脂装置。
【請求項4】
前記副室の下部に前記ガス供給口が開口しているとともに、前記第1隔壁の上方に前記主室と副室とを連通する連通口が形成されている請求項2又は3記載の脱脂装置。
【請求項5】
前記主室をガス流通可能に仕切る第2隔壁をさらに備え、
該主室のうち、前記第2隔壁によって仕切られた一方の室である加熱送風室に前記ファン及びヒータが配置されており、
該加熱送風室で加熱された脱脂ガスが、前記第2隔壁の一端側に設けられた第1循環口から他方の室である処理室に吐き出され、前記第2隔壁の他端側に設けられた第2循環口から加熱送風室に戻るように、前記第2隔壁が構成されている請求項2乃至4いずれか記載の脱脂装置。
【請求項6】
前記ヒータが、前記加熱送風室におけるファンの上流側に配置されている請求項5記載の脱脂装置。
【請求項7】
前記ガス排出口が、前記加熱送風室におけるファンの上流側に開口している請求項5又は6記載の脱脂装置。
【請求項8】
前記各循環口の少なくともいずれかの一方の開口面積又は開口形状を変化させる開口調整機構をさらに備えている請求項5乃至7いずれか記載の加熱送風室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック材料等の処理対象物に対し脱脂処理を施す脱脂装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の脱脂装置は、特許文献1に示すように、加熱炉内によってその内部の処理対象物を加熱し、それに伴って処理対象物から離脱した分解ガス等を、ファンによって加熱炉内を循環する脱脂ガスとともに外部に排出するものである。そのために加熱炉には、新規の脱脂ガスを供給するガス供給口と、分解ガス等を含んだ脱脂ガスを外部に排出するガス排出口とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-43704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の脱脂装置においては、分解ガスを含んだ脱脂ガスの効果的な排出について検討がなされていないため、処理対象物から一旦離脱した分解ガスが当該処理対象物に再度吹き付けられ、効率的な脱脂処理を阻害するという問題が生じ得る。
【0005】
本発明はかかる課題を見出し、それを解決すべくなされたものであって、処理対象物から発生した前記分解ガス等の揮発物質が、脱脂ガスとともに可及的速やかに加熱炉の外部に排出されるようにすべく図ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る脱脂装置は、処理対象物が収容される加熱炉と、該加熱炉を加熱するヒータと、該加熱炉内に脱脂ガスを外部から供給するガス供給口及び処理対象物から離脱した揮発物質を脱脂ガスとともに外部に排出するガス排出口と、加熱炉内で脱脂ガスを循環させるファンとを備え、前記ガス排出口は、前記ファンによって加熱炉内に形成されたガス循環経路上に開口しており、前記ガス供給口は、前記ガス循環経路外に開口していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上の構成によれば、処理対象物から発生した前記分解ガス等の揮発物質を脱脂ガスとともに可及的速やかに加熱炉の外部に排出することができ、より効果的な脱脂処理を行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態における脱脂装置の全体模式図である。
図2】同実施形態における加熱炉の内部構造を示す概略斜視図である。
図3】同実施形態における加熱炉の天井面を外した時の内部構造を示す概略平面図であり、上から視たときの加熱炉内での脱脂ガスの流れを説明するための説明図である。
図4図3におけるA-A線断面図であり、正面から視たときの副室及び加熱送風室での脱脂ガスの流れを説明するための説明図である。
図5】本発明の他の実施形態における脱脂装置の第2隔壁及び開口調整機構を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態にかかる脱脂装置100は、図1に示すように、処理対象物Wが収容される加熱炉1と、該加熱炉1を加熱するヒータ2と、加熱炉1内に脱脂ガスを供給するガス供給管3と、処理対象物Wから離脱した揮発性の分解ガス等を脱脂ガスとともに加熱炉1外に排出するガス排出管4と、加熱炉1内で脱脂ガスを循環させるファン5とを備えたものである。
以下では、本脱脂装置100の特徴部分である加熱炉1について詳述する。
【0011】
この加熱炉1は、図2等に示すように、例えば、概略直方体状をなす金属製のものであり、該加熱炉1を構成する外壁体のうち、正面の壁体には前記処理対象物Wを出し入れするための開閉扉11(図3に図示する。)が、該開閉扉11に対向する背面の壁体には炉内圧力が異常に上昇した場合に開放される安全蓋12(図3に図示する。)がそれぞれ設けられている。
前記ガス供給管3が接続されるガス供給口3aと、前記ガス排出管4が接続されるガス排出口4aとは、この実施形態では、前記安全蓋12に設けられている。
【0012】
なお、説明の便宜上、以下では、開閉扉11及び安全蓋12に直交する水平方向を奥行方向といい、開閉扉11側を手前側、安全扉側を奥側という。また、奥行方向と直交する水平方向を左右方向といい、鉛直方向を上下方向という。
さて、この実施形態での加熱炉1は、第1隔壁8によって主室1aと副室1bとに仕切られている。
【0013】
前記第1隔壁8は、当該加熱炉1の左奥隅部に設けられたもので、加熱炉1の底面よりも上方であって前記安全蓋12の内面から手前側に延びる底壁81と、該底壁81の左右辺及び手前側の辺から加熱炉1の天井面にまでそれぞれ延びる左側壁82、右側壁83及び正面壁84とから構成されている。
【0014】
しかして、該加熱炉1の天井面、安全蓋12の内面及び前記第1隔壁8で囲まれた空間が前記副室1bであり、該加熱炉1内のその他の空間が前記主室1aである。
【0015】
この実施形態では、前記第1隔壁8の左側壁82の上端は、加熱炉1の天井面からやや離してあって、その隙間である連通口8aから脱脂ガスが流通可能に構成してある。
次に、前記主室1a及び副室1bについてさらに詳述する。
【0016】
主室1aは、左右に延びる第2隔壁9によって、奥側の加熱送風室1a1と手前側の処理室1a2との2室に仕切られている。前記加熱送風室1a1には、ヒータ2及びファン5が配置されており、前記処理室1a2には処理対象物Wが収容される。
【0017】
この第2隔壁9の左右両端辺とそれに対応する加熱炉1の左右内側面との間にはそれぞれ隙間が形成されており、これら隙間が加熱送風室1a1と処理室1a2との間で脱脂ガスを循環させるための循環口9a、9bとなっている。
次に、前記加熱送風室1a1について詳述する。
【0018】
この加熱送風室1a1において、前記ヒータ2はその一端側(具体的には左側)に配置されており、前記ファン5は、他端側(具体的には右側)に配置されている。
【0019】
前記ヒータ2は、例えば上下に伸びるロッド状のものであり、この実施形態では複数本が間欠的に配置されている。そして、このヒータ配置領域の奥側に、前記第1隔壁8を介して隣接するように前記副室1bが設けられている。
前記ファン5は、例えば、その中心からガスを吸い込み周縁からガスを吐き出す軸流タイプのものである。
【0020】
さらに、この加熱送風室1a1のヒータ配置領域とファン5との間には、奥行き方向に延びる起立仕切り板6が設けられている。この起立仕切り板6の上端と加熱炉天井面との間には間隙6aが形成されている。
【0021】
しかしてこの実施形態では、前記ガス排出口4aが前記主室1aにおける加熱送風室1a1に開口させてある。より具体的には、安全蓋12の左下部であり、副室1bの下方であってヒータ配置領域の奥側である。
一方、前記ガス供給口3aは、前記副室1bに開口させてあり、より具体的には、副室1bの下部における安全蓋12に形成してある。
次に、このように構成した加熱炉1内での脱脂ガスの流れを説明する。
【0022】
図3図4に示すように、ガス供給口3aから加熱炉1内に供給された新規脱脂ガス(点線で示す。)は、副室1bを上昇しながら隣接するヒータ2の余熱によって温められ、第1隔壁8の上側に設けられている連通口8aから主室1aの加熱送風室1a1に流入し、すでに加熱炉1内に供給され、循環している脱脂ガス(実線で示す。)と合流する。
【0023】
このようにして合流した脱脂ガスは、前記仕切り板6の間隙6aを通ってファン5に吸いこまれ、該ファン5の右側から吹き出される。そして、第2隔壁9の右端辺に設けられている第1循環口9aから処理室1a2に入り、処理対象物Wに吹き付けられる。そこで、当該処理対象物Wから揮発した分解ガス等を巻き込んで(脱脂)、第2隔壁9の左端辺に設けられている第2循環口9bから加熱送風室1a1に戻る。
【0024】
処理対象物Wに吹き付けられた脱脂ガスは、その相当量が加熱送風室1a1の下部に設けられているガス排出口4aから分解ガス等とともに排出される一方、残りは、上下に延びるヒータ2によって温められながら、加熱送風室1a1を上昇し、前述したように、前記第1隔壁8の連通口8aから流入してきた新規脱脂ガスと(ガス排出口4aよりも下流において)合流して循環する。
【0025】
しかしてこのように構成した本実施形態に係る脱脂装置100によれば、加熱炉1の主室1a内に、処理対象物Wから発生した分解ガスを含んだ脱脂ガスの循環経路が形成され、その循環経路が形成されている主室1aにガス排出口4aが開口しているので、脱脂ガスとともに分解ガスが外部に確実に排出される。したがって、一旦、処理対象物Wから離脱した分解ガスが繰り返し当該処理対象物Wに吹き付けられることを低減でき、効率のよい脱脂処理を行える。
【0026】
また、ガス供給口3aは前記第1隔壁8によって、内部のガス循環経路からは外れた位置に形成してあり、該ガス供給口3aから加熱炉1内に流入した新規脱脂ガスは、処理対象物Wが収容される主室1aの下流側に設けられたガス排出口4aよりもさらに下流側の連通口8aにおいて、循環している脱脂ガスに混合されるので、新規脱脂ガスが、処理対象物Wに到達する前にガス排出口4aから排出されてしまうことを防止できる。
【0027】
したがって、新規脱脂ガスのほとんどすべてが確実に処理対象物Wに吹き付けられることになり、この点も、分解ガスが繰り返し当該処理対象物Wに吹き付けられることの防止に寄与し得る。
【0028】
さらに、新規脱脂ガスは、副室1bの下部に設けられたガス供給口3aから加熱炉1内に入り、副室1bの上部に設けられた連通口8aから主室1a内に流れ込むので、その間に、ヒータ2の余熱により暖められる。このように新規脱脂ガスは、主室1a内を循環する脱脂ガスの温度に可及的に近づけられてから主室1aに流入するので、循環する脱脂ガス、ひいては処理対象物Wの不測の温度低下を引き起こすこともない。
【0029】
また、加熱送風室1a1において、ヒータ2とファン5の間に前記仕切り板が設けられており、その上方に設けられた間隙6aから脱脂ガスが流れるので、ヒータ2で確実に暖められて加熱炉上部に到達した脱脂ガスのみがファン5に送り込まれることになり、この点においても、循環する脱脂ガスの温度低下を防止できる。
このように新規脱脂ガス及び循環する脱脂ガスの加熱に、ヒータ2の全体が無駄なく利用されるので、効率的な加熱が実現できる。
【0030】
一方、処理対象物Wが収容されている処理室1a2に流れる脱脂ガスに着目すれば、該脱脂ガスは、処理室1a2の一端(左側端)に上下に亘って延びる第1循環口9aから入って、該処理室1a2の他端(右側端)に上下に亘って延びる第2循環口9bから出ていくので、処理室1a2全体に亘って偏りなく脱脂ガスが流れ、処理対象物Wをより均一に加熱及び脱脂することができる。
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0031】
例えば、図5に示すように、前記各循環口9a、9bの開口面積乃至開口形態を変化させる開口調整機構10を設ければ、処理室でのガス循環態様を処理対象物の形状や大きさ、素材等に応じて変化させることができ、例えば、処理室内での分解ガス等の無用な循環を抑制して、処理対象物に脱脂ガスが再付着することを防止し、より効率的で確実な脱脂処理を行うことができるようになる。また、処理室内の脱脂ガス濃度が濃くなることも防止できるので、爆発等の不測の事態を回避して安全性を高めることができる。
【0032】
同図での開口調整機構10は、前記第2隔壁9の左右両端部に、例えば、長孔10aと止めネジ10bとを利用して左右に進退可能に構成した調整板101をそれぞれ取り付けて構成したものである。そして、この調整板101を左右にスライド移動させることにより、各循環口9a、9bの幅を調整できるようにしてある。
【0033】
その他に、例えばこの調整板を上下に複数枚並べ、いずれかの調整板を進退させることによって、循環口の上部幅が下部幅に比べて大きいとか、中間幅がその上下幅に比べて大きいなどというように、循環口の形状を変更できるようにしてもよいし、調整板を第2隔壁に回転可能に取り付けて循環口の面積や形状を変化させ得るようにしてもかまわない。
【0034】
また、副室1bや主室1aの形状、ファン5やヒータ2の種類などは前記実施形態に限られず種々変形可能であるし、それに応じてガス供給口3aやガス排出口4aの設定部位を変えてもかまわない。
【0035】
前記連通口や間隙は、第1隔壁や仕切り板の上端と天井面との間に形成していたが、加熱炉の上部にあれば好ましいのであって、第1隔壁や仕切り板の上端部に貫通孔を設けるなどして形成してもよい。
その他、本発明は上述した各変形例の一部を組み合わせるなど、その趣旨を逸脱しない範囲で変形可能してもよい。
以上に述べた脱脂装置100の特徴は以下のようにまとめることができる。
【0036】
(1)本脱脂装置100は、処理対象物Wが収容される加熱炉1と、該加熱炉1を加熱するヒータ2と、加熱炉1内に脱脂ガスを外部から供給するガス供給口3a及び処理対象物Wから離脱した揮発物質を脱脂ガスとともに外部に排出するガス排出口4aと、加熱炉1内で脱脂ガスを循環させるファン5とを備え、前記ガス排出口4aは、前記ファン5によって加熱炉1内に形成されたガス循環経路上に開口し、前記ガス供給口3aは、前記ガス循環経路外に開口していることを特徴とする。
【0037】
(2)より具体的に説明すると、本脱脂装置100は、前記加熱炉1をガス流通可能に仕切る第1隔壁8をさらに備え、該第1隔壁8によって仕切られた一方の室である主室1aに前記ファン5が配置されているとともに前記ガス排出口4aが開口しており、前記第1隔壁8によって仕切られた他方の室である副室1bにガス供給口3aが開口していることを特徴とする。
【0038】
以上のような構成であれば、処理対象物Wから発生した分解ガスを含んだ脱脂ガスの循環経路上にガス排出口4aが開口しており、他方、前記ガス供給口3aは、前記ガス循環経路外に開口しているので、新規脱脂ガスが直接的にガス排出口4aから排出されることを防止できるだけでなく、循環する脱脂ガスに含まれる分解ガスが外部に確実に排出される。したがって、処理対象物Wから一旦離脱した分解ガスが繰り返し当該処理対象物Wに吹き付けられることを低減でき、効率のよい脱脂処理を行えるようになる。
【0039】
(3)前記ヒータ2が前記主室1aに配置されており、該ヒータ2の配置領域に隣接するように前記第1隔壁8が配置されていれば、この第1隔壁8によって形成されている副室1b内の新規脱脂ガスを、既存のヒータ2の余熱を利用して効率的に暖めることができるので、低温の新規脱脂ガスの混入による不測の温度低下を、新たな加熱手段を設けることなく、簡単な構成で防止することかできる。
【0040】
(4)前記副室1bの下部に前記ガス供給口3aが開口しているとともに、前記第1隔壁8の上方に前記主室1aと副室1bとを連通する連通口8aが形成されていれば、新規脱脂ガスが副室1bの下部から連通口8aへと流れることにより、新規脱脂ガスを、加熱炉1内で循環する脱脂ガスに混入する前に確実に暖めることができる。
【0041】
(5)処理対象物Wをより均一に加熱及び脱脂するには、前記主室1aをガス流通可能に仕切る第2隔壁9をさらに備え、該主室1aのうち、前記第2隔壁9によって仕切られた一方の室である加熱送風室1a1に前記ファン5及びヒータ2が配置されており、該加熱送風室1a1で加熱された脱脂ガスが、前記第2隔壁の一端側に設けられた第1循環口9a、9bから他方の室である処理室1a2に吐き出され、該第2隔壁の他端側に設けられた第2循環口9a、9bから加熱送風室1a1に戻るように該第2隔壁が構成されているものが好ましい。
(6)特に好ましくは、前記ヒータ2が、前記加熱送風室1a1におけるファン5の上流側に配置されているものを挙げることができる。
(7)分解ガスを含む脱脂ガスを効率よく排出するためには、前記ガス排出口4aを、前記加熱送風室1a1におけるファン5の上流側に開口させておけばよい。
【0042】
(8)前記各循環口9a、9bの開口面積又は開口形状を変化させる開口調整機構を設ければ、処理室1a2でのガス循環態様を処理対象物Wに応じて変化させることができ、処理対象物Wの形態や大きさ、素材に応じたより効率的で確実な脱脂処理を行える。
【符号の説明】
【0043】
100・・・脱脂装置
W・・・処理対象物
1・・・加熱炉
2・・・ヒータ
3a・・・ガス供給口
4a・・・ガス排出口
5・・・ファン
8・・・第1隔壁
1a・・・主室
1b・・・副室
8a・・・連通口
9・・・第2隔壁
1a1・・・加熱送風室
1a2・・・処理室
9a・・・第1循環口
9b・・・第2循環口
10・・・開口調整機構
図1
図2
図3
図4
図5