(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001881
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】ナット脱落防止具
(51)【国際特許分類】
F16B 39/20 20060101AFI20221226BHJP
F16B 41/00 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
F16B39/20 A
F16B41/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086212
(22)【出願日】2022-05-26
【出願変更の表示】U 2022001322の変更
【原出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000205557
【氏名又は名称】アイエスケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100142376
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】川原貢
(72)【発明者】
【氏名】坂上雅夫
(57)【要約】
【課題】偶発的につながる恐れを抑える。
【解決手段】ナット脱落防止具10は、リング部20と、連続部22,22の対とを備える。リング部20は線材を有する。この線材は環状に屈曲することで環状部40および交差箇所42を形成する。連続部22は、リング部20が有する線材の両端それぞれに連続するように設けられる。連続部22,22の対が、互いに近づく方向の力を連続部22,22の対が受けると互いに近づき得るように変形する。連続部22,22の対が、リング部20の環状部40が沿う面に対して交差する方向へ互いに沿って対向するようにそれぞれ突出している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に屈曲することで環状部および交差箇所を形成する線材を有するリング部と、
前記リング部が有する前記線材の両端それぞれに連続するように設けられる連続部の対とを備えるナット脱落防止具であって、
前記連続部の対が、互いに近づく方向の力を受けると互いに近づくよう変形し、
前記連続部の対が、前記リング部の前記環状部が沿う面に対して交差する方向へ互いに沿って対向するようにそれぞれ突出していることを特徴とするナット脱落防止具。
【請求項2】
前記連続部の対のうち互いに対向する面から見て背面にあたる面同士の距離の最小値が、前記環状部のうち対向する箇所間の前記環状部の中心軸に直交する方向についての差し渡しの最小値よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のナット脱落防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナット脱落防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1はナット脱落防止具を開示する。このナット脱落防止具は、螺旋状のコイルバネ部と、一対の輪状の押圧部とを備える。コイルバネ部は、ボルトのネジ外径よりも小さな内径を有する。コイルバネ部は、平面視の一部分で重複する重複部を有する。押圧部は、コイルバネ部の両端から互いに対向してコイルバネ部の中心軸から遠ざかる平面方向に向けて延びるよう設けられる。このナット脱落防止具は、押圧部を互いに近接させた場合にコイルバネ部の内径がネジの外径よりも大きくなる様に構成される。これにより、このナット脱落防止具のコイルバネ部をボルトのネジ溝に沿って嵌めることが可能となる。押圧部の少なくとも一端には、コイルバネ部よりも中心軸に向けて延びる線状突起部が設けられている。特許文献1に開示されたナット脱落防止具は、ワンタッチで取付が可能で、構造が簡単で、かつ、長期の使用にも耐え得る。
【0003】
特許文献2はナット脱落防止具を開示する。このナット脱落防止具は、ボルトの先端部に装着して、そのボルトにねじ込まれているナットの脱落を防止するものである。このナット脱落防止具は、弾性を有する線材からなる。このナット脱落防止具は、リング部と、線材の両端部に形成してリング部を拡径操作する一対の操作部とを備える。リング部は、この線材の中央部に形成される。リング部は、ボルトの外周面を把持する。その線材の一端部は、ナットに接触してこのナットの移動を規制すると共に、ナットの緩み方向への回転力に起因する摩擦力により、リング部を縮径させる方向に変位するものである。特許文献2に開示されたナット脱落防止具は、ナットとの間の摩擦力が大きくなった場合にも、ナット脱落防止具とナットとが共回りして脱落するのを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-52648号公報
【特許文献2】特開2019-203516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示されたナット脱落防止具には、複数のナット脱落防止具が互いに偶発的につながる恐れが高いという問題点がある。本発明は、このような問題を解決するものである。本発明の目的は、偶発的につながる恐れを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図面に基づき本発明のナット脱落防止具が説明される。なおこの欄で図中の符号を使用したのは発明の内容の理解を助けるためであって内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0007】
上述された課題を解決するために、本発明のある局面に従うと、ナット脱落防止具10は、リング部20と、連続部22,22の対とを備える。リング部20は線材を有する。この線材は環状に屈曲することで環状部40および交差箇所42を形成する。連続部22は、リング部20が有する線材の両端それぞれに連続するように設けられる。連続部22,22の対が、互いに近づく方向の力を連続部22,22の対が受けると互いに近づき得るように変形する。連続部22,22の対が、リング部20の環状部40が沿う面に対して交差する方向へ互いに沿って対向するようにそれぞれ突出している。
【0008】
また、上述された連続部22,22の対のうち互いに対向する面から見て背面にあたる面同士の距離の最小値Dが、環状部40のうち対向する箇所間の環状部40の中心軸Lに直交する方向についての差し渡しの最小値φAよりも大きいことが望ましい。
【0009】
連続部22,22の対のうち互いに対向する面から見て背面にあたる面同士の距離の最小値Dが上述された最小値φAよりも大きいと、あるナット脱落防止具10の連続部22,22の対が次に述べられる部分へ共に進入する可能性が抑えられる。その部分は、他の同一サイズのナット脱落防止具10のリング部20の環状部40である。これにより、前者のナット脱落防止具10の連続部22,22の対が後者のナット脱落防止具10のリング部20の環状部40へ押付けられることで前者のナット脱落防止具10と後者のナット脱落防止具10とがつながる可能性が低くなる。その結果、複数のナット脱落防止具10,10が互いに偶発的につながる恐れが抑えられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、偶発的につながる恐れが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具の平面図である。
【
図2】本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具の側面図である。
【
図3】本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具の背面図である。
【
図4】本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具がボルトに固定された状況が示されている図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明が図面に基づき詳細に説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付される。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0013】
[構成の説明]
図1は、本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具10の平面図である。
図2は、本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具10の側面図である。
図3は、本発明のある実施形態にかかるナット脱落防止具10の背面図である。
図1乃至
図3に基づいて、本実施形態にかかるナット脱落防止具10の構成が説明される。
【0014】
本実施形態にかかるナット脱落防止具10は、リング部20と、連続部22,22の対とを備える。
【0015】
本実施形態にかかるリング部20および連続部22,22の対は線材によって構成される。リング部20は、その線材のうち両端を除いた部分からなる。その部分が、環状部40および交差箇所42を形成する。この環状部40において対向する箇所間の、環状部40の中心軸Lに直交する方向についての差し渡しの最小値φAに応じて、本実施形態にかかるナット脱落防止具10の使用に適したボルト120の呼び径が決まる。
【0016】
連続部22,22の対は、上述された線材の両端からなる。より具体的には、本実施形態にかかる連続部22,22の対は、上述された線材の両端を屈曲させたものからなる。これにより、連続部22,22の対は、リング部20を構成する部分の両端それぞれに連続するように設けられることとなる。なお、本実施形態の場合、連続部22,22の対の間隔の最小値Cは、環状部40の外周のうち環状部40の中心から見て互いに反対側となる箇所間の環状部40の中心軸Lに直交する方向についての距離の最小値φBより小さい。一方、連続部22,22の対の間隔の最小値Cは、環状部40のうち対向する箇所間の環状部40の中心軸Lに直交する方向についての差し渡しの最小値φAよりも大きい。当然、連続部22,22の対のうち互いに対向する面から見て背面にあたる面同士の距離の最小値Dは、環状部40のうち対向する箇所間の環状部40の中心軸Lに直交する方向についての差し渡しの最小値φAよりも大きい。
【0017】
本実施形態にかかる連続部22,22の対は、互いに沿って対向している。また、特に
図2および
図3において明らかなように、本実施形態にかかる連続部22,22の対は、リング部20から共に立ち上がっている。これにより、本実施形態にかかる連続部22,22の対は、リング部20の環状部40が沿う面に対して交差する方向へそれぞれ突出していることとなる。
【0018】
[製造方法の説明]
本実施形態にかかるナット脱落防止具10は、線材加工工程を経て製造される。線材加工工程は、周知の線材が周知の方法で加工されることにより
図1および
図2に示されているようにリング部20と連続部22,22の対とが形成される工程である。
【0019】
[使用方法の説明]
本実施形態にかかるナット脱落防止具10は、ボルト120にねじ込まれたナット122がそのボルト120から抜けることを防止するために使用される。本実施形態にかかるナット脱落防止具10は、次に述べられる手順で使用される。
【0020】
本実施形態にかかるナット脱落防止具10は、しばしば、ポケットその他の図示されない収容手段において保管される。その収容手段には、しばしば、本実施形態にかかるナット脱落防止具10が多数収容される。本実施形態にかかるナット脱落防止具10を使用する者(以下「使用者」と称される)は、それら多数のナット脱落防止具10のうち一個を収容手段からつまみ取る。使用者は、収容手段からつまみ取ったナット脱落防止具10の連続部22,22の対をつまんでそれらを近づける。これにより、連続部22,22の対は互いに近づく方向の力を受けることとなる。連続部22,22の対がその力を受けたことにより、リング部20のうち環状の部分の直径は大きくなる。また、対間材24はたわむように変形する。
【0021】
対間材24がたわむように変形すると、使用者は、連続部22,22の対をつまんだまま環状部40をボルト120に嵌める。環状部40がボルト120に嵌められると、使用者は、連続部22,22の対から手を離す。連続部22,22の対から使用者の手が離れると、環状部40は元に戻る。環状部40が元に戻ったことに伴い、環状部40はボルト120を締め付ける。環状部40がボルト120を締め付けることで、本実施形態にかかるナット脱落防止具10はボルト120に固定される。
図4は、本実施形態にかかるナット脱落防止具10がボルト120に固定された状況が示されている図である。本実施形態にかかるナット脱落防止具10がボルト120に固定されると、ナット122がゆるんだ際にそのナット122の動きが妨げられるので、そのナット122の脱落は防止される。
【0022】
[効果の説明]
本実施形態にかかるナット脱落防止具10によれば、複数のナット脱落防止具10,10が互いに偶発的につながる恐れが抑えられる。
【0023】
〈変形例の説明〉
上述されたナット脱落防止具10は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものである。上述されたナット脱落防止具10は、本発明の技術的思想の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0024】
例えば、連続部22は、リング部20が有する線材の端に取付けられる板状の部材からなるものでもよい。連続部22は、その板状の部材に加え何かの部品を有していてもよい。すなわち、連続部22の構成は上述されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0025】
10…ナット脱落防止具
20…リング部
22…連続部
40…環状部
42…交差箇所
120…ボルト
122…ナット