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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018839
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】新規アルキン誘導体からなる医薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/429 20060101AFI20230202BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 31/5383 20060101ALI20230202BHJP
   A61K 31/4353 20060101ALI20230202BHJP
   C07D 513/04 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20230202BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
A61K31/429
A61K31/4985
A61K31/5383
A61K31/4353
C07D513/04 301
A61P25/28
A61P25/16
A61P35/00
A61P25/08
A61P25/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123155
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】503286424
【氏名又は名称】カルナバイオサイエンス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002912
【氏名又は名称】住友ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】澤 綾子
(72)【発明者】
【氏名】川畑 亘
(72)【発明者】
【氏名】朝光 優子
(72)【発明者】
【氏名】澤 匡明
(72)【発明者】
【氏名】岩田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】森山 英樹
(72)【発明者】
【氏名】東城 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】浦辺 大輔
【テーマコード(参考)】
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4C072AA01
4C072BB02
4C072BB06
4C072CC01
4C072CC02
4C072CC03
4C072CC04
4C072CC11
4C072CC16
4C072EE12
4C072FF15
4C072HH07
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA03
4C086BC21
4C086BC36
4C086BC38
4C086BC47
4C086BC69
4C086BC73
4C086BC82
4C086NA14
4C086ZA12
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZB26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】DYRK阻害作用を有する化合物を含有する医薬の提供。
【解決手段】本願発明は、下記の一般式(I)

(式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、トリメチルシリル基、置換されていてもよいアリール基等;RおよびRは、夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基等;Qは、ベンゾチアゾール環を含む複素環構造の基)で表される、DYRK阻害作用を有する化合物を含有する医薬を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(I):
【化1】
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、トリメチルシリル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基を表し、
R2およびR3は夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよい飽和複素環基、置換されていてもよい複素環式縮合環、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アジド基、ニトリル基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいチオエーテル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基、置換されていてもよいスルホンアミド基、ニトロ基、ホルミル基を表し、
Qは以下の構造(a)~(o)から選択される構造を示し、
【化2】


は水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基、置換されていてもよい飽和複素環基を表し、
は水素原子または置換されていてもよい低級アルキル基を表す。)
で示されるアルキン誘導体またはその薬学的に許容される塩を含有する医薬。
【請求項2】
式(I)において、Qが構造(a)~(d)または(m)から選択される、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
式(I)において、Qが構造(a)である、請求項2に記載の医薬。
【請求項4】
式(I)において、Qが構造(b)である、請求項2に記載の医薬。
【請求項5】
式(I)において、Qが構造(c)である、請求項2に記載の医薬。
【請求項6】
式(I)において、Qが構造(d)である、請求項2に記載の医薬。
【請求項7】
式(I)において、Qが構造(m)である、請求項2に記載の医薬。
【請求項8】
実施例1~84に記載されたいずれかのアルキン誘導体またはその薬学的に許容される塩を含有する医薬。
【請求項9】
以下の化合物からなる群から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩を含有する、請求項1に記載の医薬。
(R)-1-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)-5-(1-プロピン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例2);
(4S,5R)-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例5);
1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例9);
(4S,5R)-1-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例23);
(4S,5R)-1-(7,8-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2’,3’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-2-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例56);
(4S,5R)-1-(8,9-ジヒドロ-7H-クロメノ[5,6-d]チアゾール-2-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例57);
1-(7,8-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2’,3’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-2-イル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例58);
(R)-1-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル-2,2-d2)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例62);
cis-1-(7,8-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2’,3’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-2-イル)-4-(ヒドロキシメチル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例64);
cis-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-エチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例73);
cis-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-(メトキシメチル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例74);
(4R,5R)-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-((R)-1-ヒドロキシエチル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例82);および
(4R,5R)-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-((S)-1-ヒドロキシエチル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例84)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のアルキン誘導体またはその薬学的に許容される塩および医薬上許容される担体を含有する医薬組成物。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載のアルキン誘導体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、DYRKが関与する疾患の治療剤及び/又は予防剤。
【請求項12】
DYRKが関与する疾患が、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、レビー小体型認知症、血管性認知症、外傷性脳損傷、慢性外傷性脳症、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症、鬱病ならびにこれらに伴う精神遅滞、記憶障害、記憶喪失、学習障害、知的障害、認知機能障害、軽度認知障害、認知症症状あるいは脳腫瘍、膵臓がん、卵巣がん、骨肉腫、大腸がん、肺がん、骨吸収疾患、骨粗鬆症、鎌状赤血球貧血、慢性腎疾患又は骨吸収疾患である、請求項11に記載の治療剤及び/又は予防剤。
【請求項13】
DYRKが関与する疾患の治療及び/又は予防に使用するための、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬と、抗がん剤、抗精神病薬、抗認知症薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、胃腸薬、甲状腺ホルモン薬又は抗甲状腺薬に分類される薬剤から選択される少なくとも1種以上の薬剤とを組み合わせてなる医薬。
【請求項15】
抗がん剤、抗精神病薬、抗認知症薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、胃腸薬、甲状腺ホルモン薬又は抗甲状腺薬に分類される薬剤から選択される少なくとも1種以上の薬剤と併用して前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、レビー小体型認知症、血管性認知症、外傷性脳損傷、慢性外傷性脳症、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症、鬱病ならびにこれらに伴う合併症、精神遅滞、記憶障害、記憶喪失、学習障害、知的障害、認知機能障害、軽度認知障害、認知症症状進行の治療又は認知症発症の予防あるいは脳腫瘍、膵臓がん、卵巣がん、骨肉腫、大腸がん、肺がん、骨吸収疾患、骨粗鬆症、鎌状赤血球貧血、慢性腎疾患又は骨吸収疾患を治療するための、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項16】
DYRKが関与する疾患の治療剤及び/又は予防剤を製造するための、請求項1から9のいずれか一項に記載のアルキン誘導体またはその薬学的に許容される塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DYRK阻害作用を有する新規なアルキン誘導体またはその薬学的に許容される塩を含有する医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
DYRK(Dual-specificity tYrosine-phosphorylation Regulated protein Kinase)は、チロシンおよびセリン、スレオニンをリン酸化する二重特異性プロテインキナーゼの一種である。DYRKは、自己リン酸化の場合のみ、チロシンリン酸化酵素として機能し、外因性基質に対しては、セリンまたはスレオニン残基のリン酸化を触媒する。DYRKファミリーのメンバーとして、ヒトでは、DYRK1A、DYRK1B、DYRK2、DYRK3およびDYRK4の5つが知られている(非特許文献1)。
DYRK1Aは、精神神経疾患との関連性が多く報告されている。例えば、アルツハイマー病患者では、βアミロイドの発現とDYRK1Aの発現とが有意に一致しており(非特許文献2)、さらにアルツハイマー病発症の一因とされるタウ・タンパク質(Tau)の異常リン酸化に、DYRK1Aが関与すると推測されている(非特許文献3)。
また、パーキンソン病は、運動機能に重要なドーパミン神経が変性することによって引き起こされる神経変性疾患であるが、その原因の一つとして、ミトコンドリアの機能異常が考えられている(非特許文献4)。パーキンと呼ばれるタンパク質分解に関わる酵素は、異常ミトコンドリアを代謝し異常蓄積を抑える機能をもつことが知られているが、DYRK1Aは、このパーキンタンパク質の活性を抑えることが報告されている(非特許文献5)。
【0003】
DYRK1Aの遺伝子は、ダウン症クリティカル領域に位置しており、DYRK1Aの過剰発現したマウスでは、精神神経機能に異常をきたしダウン症様を示すことが報告されている(非特許文献6)。また、ダウン症患者およびダウン症様モデルマウスの脳内では、DYRK1A発現が上昇していることが報告されている(非特許文献7)。これらのことは、ダウン症患者の神経症状の発症に、DYRK1Aが関わっていることを示唆している(非特許文献8)。
また、ダウン症患者では、若年性アルツハイマー病が多発することが報告されていることからも、DYRK1Aがアルツハイマー病に密接に関係していることがわかる(非特許文献8)。
したがって、DYRK1Aを阻害する化合物は、アルツハイマー病、ダウン症、精神遅滞、記憶障害、記憶喪失およびパーキンソン病等の精神神経疾患の治療に有用であると考えられる。
最近になって、DYRK1Aがグリオブラストーマなどの脳腫瘍において高発現しており、DYRK1Aが上皮成長因子受容体(EGFR)の発現を調節していることが報告されている(非特許文献9)。したがってDYRK1Aを阻害する化合物は、EGFR依存的な脳腫瘍や腫瘍などにおいて、がん細胞の増殖を抑制し、EGFR依存的ながんの治療に有用であると考えられる。
【0004】
また、ファミリー酵素である、DYRK1B、DYRK2およびDYRK3を阻害する化合物に関しても、様々な医薬用途が考えられる。例えば、DYRK1Bは、休止期(G0期)のがん細胞において高発現し、各種の化学療法剤に対する抵抗性に寄与していることが報告されている(非特許文献10)。DYRK1Bを阻害すると、G0期からの離脱を促進し、化学療法剤に対する感受性を向上させることも報告されている(非特許文献11)。したがって、DYRK1Bを阻害する化合物は、膵臓がん、卵巣がん、骨肉腫、大腸がんや肺がんの治療に有用であると考えられる(非特許文献11、12、13、14、15)。
DYRK2については、DNA損傷に応答してp53を制御し、アポトーシスを誘導することが示唆されている(非特許文献16)。さらに、DYRK3を阻害する化合物は、鎌状赤血球貧血および慢性腎疾患の治療に有用であることが報告されている(非特許文献17)。
DYRKを阻害する化合物として特許文献1の他、DYRK1A、DYRK1B阻害剤として特許文献2が報告されている。しかし、アルキン誘導体については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2010/10797号公報
【特許文献2】WO2013/26806号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Becker W. et al.,J.Biol.Chem., 1998,273,25893-25902
【非特許文献2】Kimura R. et al.,Hum.Mol.Genet.,2007,16,15-23
【非特許文献3】Ryoo SR. et al.,J.Biol.Chem.,2007,282,34850-34857
【非特許文献4】Narendra D. et al.,J.Cell.Biol.,2008,183,795-803
【非特許文献5】Im E.,J.Neurochem.,2015,134,756-768
【非特許文献6】Branchi I. et al.,J.Neuropathol.Exp.Neurol.,2004,63,429-440
【非特許文献7】Dowjat WK. et al.,Neurosci.Lett.,2007,413,77-81
【非特許文献8】Wegiel J. et al.,FEBS J.,2011,278,236-245
【0007】
【非特許文献9】Pozo N. et al.,J.Clin.Invest.,2013,123,2475-2487.
【非特許文献10】Deng X. et al.,Cancer Res.,2006,66,4149-4158.
【非特許文献11】Ewton DZ. et al.,Mol.Cancer Ther.,2011,10,2104-2114.
【非特許文献12】Deng X. et al.,Genes Cancer.,2014,5,201-211
【非特許文献13】Yang C. et al.,Carcinogenesis.,2010,31,552-558
【非特許文献14】Jin K. et al.,J.Biol.Chem.,2009,284,22916-22925
【非特許文献15】Gao J et al.,Cancer Cell Int.2013,13,2
【非特許文献16】Taira N. et al.,Mol.Cell.,2007,25,725-738
【非特許文献17】Bogacheva O. et al.,J.Biol.Chem.,2008,283,36665-36675
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、DYRK阻害作用を有する新規化合物およびその薬学的に許容される塩を含有する医薬を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は以下の(1)~(15)によって達成される。
(1)下式(I):
【化1】
(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、トリメチルシリル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基を表し、
およびRは夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよい飽和複素環基、置換されていてもよい複素環式縮合環、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アジド基、ニトリル基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいチオエーテル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基、置換されていてもよいスルホンアミド基、ニトロ基、ホルミル基を表し、
Qは以下の構造(a)~(o)から選択される構造を示し、
【化2】

は水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基、置換されていてもよい飽和複素環基を表し、
は水素原子または置換されていてもよい低級アルキル基を表す。)
で示されるアルキン誘導体(本明細書において、「式(I)で表される化合物」または「化合物(I)」と称することもある。)またはその薬学的に許容される塩を含有する医薬。
【0010】
(2)上記式(I)において、Qが構造(a)~(d)および(m)から選択される、上記(1)に記載の医薬。
(3)上記式(I)において、Qが構造(a)である、上記(2)に記載の医薬。
(4)上記式(I)において、Qが構造(b)である、上記(2)に記載の医薬。
(5)上記式(I)において、Qが構造(c)である、上記(2)に記載の医薬。
(6)上記式(I)において、Qが構造(d)である、上記(2)に記載の医薬。
(7)上記式(I)において、Qが構造(m)である、上記(2)に記載の医薬。
(8)後記実施例1~84に記載されたいずれかのアルキン誘導体またはその薬学的に許容される塩を含有する医薬。
(9)以下の化合物からなる群から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩を含有する、上記(1)に記載の医薬。
(R)-1-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)-5-(1-プロピン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例2);
(4S,5R)-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例5);
1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例9);
(4S,5R)-1-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例23);
(4S,5R)-1-(7,8-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2’,3’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-2-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例56);
(4S,5R)-1-(8,9-ジヒドロ-7H-クロメノ[5,6-d]チアゾール-2-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例57);
1-(7,8-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2’,3’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-2-イル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例58);および
(R)-1-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル-2,2-d2)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例62)
cis-1-(7,8-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2’,3’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-2-イル)-4-(ヒドロキシメチル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例64);
cis-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-エチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例73);
cis-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-(メトキシメチル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例74);
(4R,5R)-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-((R)-1-ヒドロキシエチル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例82);および
(4R,5R)-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-((S)-1-ヒドロキシエチル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例84)。
(10)上記(1)から(9)のいずれか一項に記載のアルキン誘導体またはその薬学的に許容される塩および医薬上許容される担体を含有する医薬組成物。
(11)上記(1)から(9)のいずれか一項に記載のアルキン誘導体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、DYRKが関与する疾患の治療剤及び/又は予防剤。
(12)DYRKが関与する疾患が、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、レビー小体型認知症、血管性認知症、外傷性脳損傷、慢性外傷性脳症、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症、鬱病ならびにこれらに伴う精神遅滞、記憶障害、記憶喪失、学習障害、知的障害、認知機能障害、軽度認知障害、認知症症状あるいは脳腫瘍、膵臓がん、卵巣がん、骨肉腫、大腸がん、肺がん、骨吸収疾患、骨粗鬆症、鎌状赤血球貧血、慢性腎疾患又は骨吸収疾患である、上記(11)に記載の治療剤及び/又は予防剤。
(13)DYRKが関与する疾患の治療及び/又は予防に使用するための、上記(10)に記載の医薬組成物。
(14)上記(1)から(9)のいずれか一項に記載の医薬と、抗がん剤、抗精神病薬、抗認知症薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、胃腸薬、甲状腺ホルモン薬又は抗甲状腺薬に分類される薬剤から選択される少なくとも1種以上の薬剤とを組み合わせてなる医薬。
(15)抗がん剤、抗精神病薬、抗認知症薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、胃腸薬、甲状腺ホルモン薬又は抗甲状腺薬に分類される薬剤から選択される少なくとも1種以上の薬剤と併用して前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、レビー小体型認知症、血管性認知症、外傷性脳損傷、慢性外傷性脳症、脳卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症、鬱病ならびにこれらに伴う合併症、精神遅滞、記憶障害、記憶喪失、学習障害、知的障害、認知機能障害、軽度認知障害、認知症症状進行の治療又は認知症発症の予防あるいは脳腫瘍、膵臓がん、卵巣がん、骨肉腫、大腸がん、肺がん、骨吸収疾患、骨粗鬆症、鎌状赤血球貧血、慢性腎疾患又は骨吸収疾患を治療するための、上記(10)に記載の医薬組成物。
(16)DYRKが関与する疾患の治療剤及び/又は予防剤を製造するための、上記(1)から(9)のいずれか一項に記載のアルキン誘導体またはその薬学的に許容される塩の使用。
【発明の効果】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決するために種々検討を重ねた結果、前記式(I)で示される新規アルキン誘導体およびその薬学的に許容される塩を含有する医薬が、優れたDYRK阻害作用を有することを見出し、本発明を完成させた。本発明により提供される医薬は、DYRK1Aを介した異常な細胞応答に関連していることが知られている疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症、鬱病のような精神・神経疾患、ならびにこれらに伴う精神遅滞、記憶障害、記憶喪失、学習障害、知的障害、認知機能障害、軽度認知障害、認知症症状進行の治療薬又は認知症発症の予防薬、さらに脳腫瘍などの腫瘍に対する予防または治療用医薬(又は医薬組成物)として有用である。本発明により提供される医薬は、DYRK1Bの阻害剤として、膵臓がん、卵巣がん、骨肉腫、大腸がん、肺がんなどの腫瘍に対する予防または治療用医薬(又は医薬組成物)として有用である。さらに本発明により提供される医薬は、DYRK2について、DNA損傷に応答してp53を制御し、アポトーシスを誘導することから、骨吸収疾患および骨粗鬆症に対する予防または治療用医薬(又は医薬組成物)として有用である。また本発明により提供される医薬は、DYRK3の阻害剤として、鎌状赤血球貧血、慢性腎疾患、骨吸収疾患および骨粗鬆症に対する予防または治療用医薬(又は医薬組成物)として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の医薬は、式(I):
【化3】
(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、トリメチルシリル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基を表し、
およびRは夫々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよい飽和複素環基、置換されていてもよい複素環式縮合環、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アジド基、ニトリル基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいチオエーテル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基、置換されていてもよいスルホンアミド基、ニトロ基、ホルミル基を表し、
Qは以下の構造(a)~(o)から選択される構造を示し、
【化4】


は水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基、置換されていてもよい飽和複素環基を表し、
は水素原子または置換されていてもよい低級アルキル基を表す。)
で示される化合物またはその薬学的に許容される塩を含有する医薬である。
【0013】
「DYRK」とは、Dual-specificity tYrosine-phosphorylation Regulated protein Kinaseを表し、DYRKファミリー(DYRK1A,DYRK1B、DYRK2、DYRK3、DYRK4)の一または二以上を意味する。
【0014】
「低級アルキル基」とは、炭素原子数が1から6の直鎖状又は分枝鎖状の飽和炭化水素基(C1-6アルキル基)を意味する。低級アルキル基として、好ましくは「C1-4アルキル基」が挙げられ、より好ましくは「C1-3アルキル基」が挙げられる。「低級アルキル基」の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、1-メチルエチル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、n-ペンチル基、1、1-ジメチルプロピル基、1、2-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
「シクロアルキル基」とは、炭素原子数3から10の環状の飽和炭化水素基を意味し、一部不飽和結合を有するもの及び架橋された構造のものも含まれる。「シクロアルキル基」として、好ましくは「C3-7シクロアルキル基」が挙げられ、より好ましくは「C3-6シクロアルキル基」が挙げられる。「シクロアルキル基」の具体例としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、アダマンチル基などが挙げられる。
「アリール基」とは、炭素原子数6から14の芳香族環状基を意味する。「アリール基」として、好ましくは「C6-10アリール基」が挙げられ、より好ましくは「Cアリール基」が挙げられる。「アリール基」の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
「ヘテロアリール基」とは、窒素原子、硫黄原子および酸素原子の群から選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子を含む5から10員の複素環式芳香族環状基を意味する。「ヘテロアリール基」として、好ましくは5から8員のヘテロアリール基が挙げられ、より好ましくは5または6員のヘテロアリール基が挙げられる。「ヘテロアリール基」の具体例としては、例えば、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、チエニル基、フリル基、ピロール基、ピリジル基などが挙げられる。
「飽和複素環基」とは、窒素原子、硫黄原子および酸素原子の群から選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子を含む3から8員の飽和または一部不飽和の単環性複素環基を意味する。「飽和複素環基」として、好ましくは3から6員の飽和複素環基が挙げられ、より好ましくは5または6員のヘテロシクロ基が挙げられる。「飽和複素環基」の具体例としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、アゼチジニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基などが挙げられる。
「複素環式縮合環基」とは、3から8員の環が縮合した二環性の環状基であって、窒素原子、硫黄原子および酸素原子の群から選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子を含む3から8員の脂環式または芳香族環式の複素環基を有する縮合複素環基を意味する。「複素環式縮合環基」として、好ましくは3から6員の脂環式または芳香族環式の複素環基を有する複素環式縮合環基が挙げられ、より好ましくは5または6員の脂環式または芳香族環式の複素環基を有する複素環式縮合環基が挙げられる。「複素環式縮合環基」の具体例としては、例えば、テトラヒドロイソキノリル基、ベンゾチオフェニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、インドリルき、イソキノリル基、フタルイミド基などが挙げられる。
「アルコキシ基」とは、前記「低級アルキル基」または3から6員の環状のアルキル基で置換されたオキシ基を意味する。「アルコキシ基」としては、好ましくは「C1-6アルコキシ基」が挙げられ、より好ましくは「C1-3アルコキシ基」が挙げられる。「アルコキシ基」の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、1-メチルエトキシ基、ブトキシ基、1,1-ジメチルエトキシ基、1-メチルプロポキシ基、2-メチルプロポキシ基、ペンチロキシ基、1,1-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、1-メチルブトキシ基、2-メチルブトキシ基、4-メチルペンチロキシ基、3-メチルペンチロキシ基、2-メチルペンチロキシ基、1-メチルペンチロキシ基、ヘキシロキシ基、シクロプロピルオキシ基などが挙げられる。
「アルキニル基」とは、1から3個の三重結合を有する炭素原子数が2から6の直鎖状又は分枝鎖状の不飽和炭化水素基(C2-6アルキニル基)を意味する。「アルキニル基」として、好ましくは「C2-5アルキニル基」が挙げられ、より好ましくは「C2-4アルキニル基」が挙げられる。「アルキニル基」の具体例としては、例えば、エチニル基、プロパルギル基、2-ブチニル基などが挙げられる。
「アルケニル基」とは、1から3個の二重結合を有する炭素原子数が2から6の直鎖状又は分枝鎖状の不飽和炭化水素基(C2-6アルケニル基)を意味する。「アルケニル基」として、好ましくは「C2-5アルケニル基」が挙げられ、より好ましくは「C2-4アルケニル基」が挙げられる。「アルケニル基」の具体例としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-メチルアリル基などが挙げられる。
「アルキルカルボニル基」とは、前記「低級アルキル基」または3から6員の環状のアルキル基で置換されたカルボニル基を意味し、例えばアセチル基などが挙げられる。
「アルキルスルホニル基」とは、前記「低級アルキル基」または3から6員の環状のアルキル基で置換されたスルホニル基を意味し、例えばメチルスルホニル基などが挙げられる。
置換されていてもよいスルホンアミド基としては、例えば、メチルスルホンアミド基、エチルスルホンアミド基などが挙げられる。
置換されていてもよいアミノ基としては、例えば、炭素数1から3の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基を有するアミノ基のいずれでもよく、具体的には、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基などが挙げられる。
置換されていてもよいカルバモイル基としては、例えば、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基などが挙げられる。
置換されていてもよいチオエーテル基としては、例えば、炭素数1から3の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基を有するチオエーテル基のいずれでもよく、具体的には、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、イソプロピルスルファニル基、シクロプロピルスルファニル基などが挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が例示される。
【0015】
置換されていてもよい低級アルキル基、置換されていてもよいシクロアルキル基、置換されていてもよい飽和複素環基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキルカルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいチオエーテル基、置換されていてもよいアルキルスルホニル基、置換されていてもよいスルホンアミド基の「置換基」としては、特に記載のない限り、1または2個以上の任意の種類の置換基を、化学的に可能な任意の位置に有してもよく、置換基が2個以上の場合、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよい。置換基の具体例としては、C3-6シクロアルキル基、ハロゲン原子、C1-4アルコキシ基、シアノ基、ベンジルオキシ基、フェニル基、ヒドロキシ基、メタンスルホニル基、置換もしくは非置換アミノ基が例示される。
置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、置換されていてもよい複素環式縮合環の「置換基」としては、特に記載のない限り、1または2個以上の任意の種類の置換基を、化学的に可能な任意の位置に有してもよく、置換基が2個以上の場合、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよい。置換基の具体例としては、ハロゲン原子、ビニル基、メトキシ基、シアノ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基等が例示される。
【0016】
本願明細書では、ハロゲン原子としては、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、フッ素原子(F)およびヨウ素原子(I)が該当し、特にCl、Br、Fが好ましい。
式(I)で表される化合物において、R、R、R、R、R、Qの各定義および好ましい範囲としては以下のとおりであるが、本発明の技術的範囲は下記に挙げる化合物の範囲に限定されるものではない。
として好ましくは、水素原子、置換されていてもよい低級アルキル基または置換されていてもよいシクロアルキル基であり、より好ましくは置換されていてもよい低級アルキル基である。
として好ましくは、水素原子または置換されていてもよい低級アルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
として好ましくは、置換されていてもよい低級アルキル基または水素原子であり、より好ましくは置換されていてもよい低級アルキル基である。
として好ましくは、置換されていてもよい低級アルキル基である。
として好ましくは、水素原子である。
Qとして好ましくは、(a)、(b)、(c)、(d)、(f)、(g)、(i)、(j)(m)、(n)または(o)であり、より好ましくは(a)、(b)、(d)、(g)、(m)、または(n)または(o)である。
式(I)で表される化合物のうちで、好ましい化合物としては以下のようなアルキン誘導体またはその薬学的に許容される塩が挙げられる。
が水素原子または「C1-4アルキル基」であり、Rが水素原子または「C1-4アルキル基」であり、Rが水素原子または「C1-4アルキル基」であり、
Qが(a)、(b)、(d)、(m)、(n)または(o)である化合物。
より好ましい化合物としては以下のようなアルキン誘導体又はその薬学的に許容される塩が挙げられる。
が「C1-3アルキル基」であり、Rが水素原子または「C1-3アルキル基」であり、Rが水素原子であり、
Qが(a)、(b)、(m)または(o)である化合物。
さらにより好ましい化合物としては以下のような化合物又はその薬学的に許容される塩が挙げられる。
が「C1-3アルキル基」であり、Rが「C1-3アルキル基」であり、Rが水素原子であり、
Qが(a)、(b)または(m)である化合物。
式(I)で表される化合物のうちで、好ましい化合物として具体的には以下のようなアルキン誘導体またはその薬学的に許容される塩が挙げられる。
(R)-1-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)-5-(1-プロピン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例2);
(4S,5R)-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例5);
1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例9);
(4S,5R)-1-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例23);
(4S,5R)-1-(7,8-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2’,3’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-2-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例56);
(4S,5R)-1-(8,9-ジヒドロ-7H-クロメノ[5,6-d]チアゾール-2-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例57);
1-(7,8-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2’,3’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-2-イル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例58);
(R)-1-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル-2,2-d2)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例62);
cis-1-(7,8-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2’,3’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-2-イル)-4-(ヒドロキシメチル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例64);
cis-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-エチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例73);
cis-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-(メトキシメチル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例74);
(4R,5R)-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-((R)-1-ヒドロキシエチル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例82);および
(4R,5R)-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-((S)-1-ヒドロキシエチル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(実施例84)。
また、化合物(I)の薬学的に許容される塩としては、塩酸、硫酸、炭酸、リン酸等との無機酸塩、フマル酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等との有機酸塩等が挙げられる。また、ナトリウム、カリウム等とのアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等とのアルカリ土類金属塩、低級アルキルアミン、低級アルコールアミン等との有機アミン塩、リジン、アルギニン、オルニチン等との塩基性アミノ酸塩の他、アンモニウム塩等も式(I)で表される化合物に包含される。
化合物(I)は、例えば、置換基の種類によって、異性体が存在する場合がある。本明細書において、それらの異性体の一形態のみの化学構造で記載することがあるが、本発明には、構造上生じ得るすべての異性体(幾何異性体、立体異性体、互変異性体など)も包含され、異性体単体、またはそれらの混合物もすべて包含される。また、本発明において、「水素原子」にはH及びH(D)が含まれ、式(I)で表される化合物のいずれか1つ又は2つ以上のHをH(D)に変換した重水素変換体も、式(I)で表される化合物に包含される。
化合物(I)およびその薬学的に許容される塩は、たとえば以下の方法によって製造することができる。なお、以下に示した製造法において、定義した基が実施方法の条件下で変化するか、または方法を実施するのに不適切な場合、有機合成化学で通常用いられる方法、例えば、官能基の保護、脱保護[T.W.Greene、Protective Groups in Organic Synthesis 3rd Edition、John Wiley &Sons、lnc.、1999]などの手段を付すことにより容易に製造することができる。また、必要に応じて置換基導入などの反応工程の順序を変えることもできる。
【0017】
以下の説明で使用される略語、記号の意味は次の通りである。
DCM : ジクロロメタン
THF : テトラヒドロフラン
DMF : N,N-ジメチルホルムアミド
TEA : トリエチルアミン
EtOH : エタノール
LAH : 水素化リチウムアルミニウム
DMA : N,N-ジメチルアセトアミド
LDA : リチウムジイソプロピルアミド
【0018】
[化合物(I)の製法]
式(I)で表される化合物は、例えばスキーム1によって製造することができる。
【化5】
(式中、R、R、RおよびQは前記(I)の記載と同義である。)
【0019】
化合物(I)は、化合物(II)を、溶媒中、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)や炭酸ジ(N-スクシンイミジル)(DSC)などの縮合剤と反応させることによって得ることができる。縮合剤は過剰量を用いることができるが、好ましくは1~5モル当量のCDIやDSCと反応させることによって合成することができる。溶媒は反応に不活性なものであればいずれでもよく、特に限定されるものではないが、例えばTHF、DMF、DMAなどを用いることができ、好ましくはDMFを用いることができる。反応は0℃から室温の範囲において、数分から数時間で実施することができるが、好ましくは室温で、30分間から1時間程度、反応させることにより合成することができる。
【0020】
スキーム1の原料として用いられる化合物(II)は、例えばスキーム2に表す方法によって製造することができる。
【化6】
(式中、R、R、RおよびQは前記(I)の記載と同義であり、Lは低級アルキル基を表し、PGは保護基を表す。)
化合物(II)は、化合物(III)をTHF、アセトニトリル、DMAなどの溶媒中または無溶媒で、アミン(IV)と反応させ、脱保護することによって製造することができる。すなわち、化合物(II)は、化合物(III)と、3~10モル当量のアミン(IV)を反応させ、アミノ基が保護された化合物(II)を合成することができる。反応は室温から150℃の範囲において、数分から数日間で実施することができるが、好ましくは80℃から120℃で、数時間から24時間反応させることにより、合成することができる。化合物(II)は、アミノ基の保護基を有機化学で一般的に用いられる条件で脱保護することによって得ることができる。
【0021】
スキーム1の原料として用いられる化合物(II)のうちQの構造が(b)である化合物(II-b)は、例えばスキーム3に表す方法によっても製造することができる。
【化7】
(式中、R、RおよびRは前記(I)の記載と同義であり、PGは保護基を表す。)
【0022】
化合物(II-b)は、アニリン(V)をイソチオシアネート(VI)に変換したのち、アミン(IV)と反応させて合成したチオウレア(VII)を、臭素化剤で処理したのち、脱保護することによって製造することができる。すなわち、イソチオシアネート(VI)は、アニリン(V)を水溶液中、1~10モル当量のチオホスゲンと反応させることによって得ることができ、反応は-30℃から室温の範囲において、数分~24時間で実施することができるが、好ましくは-10℃から0℃で、1時間から4時間反応させることにより合成することができる。
【0023】
得られたイソチオシアネート(VI)をエタノールなどの溶媒中、ナトリウムエトキシドなどの塩基存在下もしくは非存在下、1~1.5モル当量のアミン(IV)と反応させることによってチオウレア(VII)を得ることができる。反応は0℃から室温の範囲において、数分~数日間で実施することができるが、好ましくは10℃から室温で、数時間から24時間反応させることにより合成することができる。
【0024】
得られたチオウレア(VII)をアセトニトリル、DCMなどの溶媒中、大過剰の酢酸および0.9~1モル当量の臭素と反応させることによって、アミノ基が保護された化合物(II-b)を得ることができる。また5~10モル当量の炭酸水素ナトリウムおよび0.9~1モル当量のベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド等の臭素化剤と反応させることによっても、アミノ基が保護された化合物(II-b)を合成することができる。反応は0℃から室温の範囲において、数分~数日間で実施することができるが、好ましくは10℃から室温で、数時間から24時間反応させることにより合成することができる。化合物(II-b)は、アミノ基の保護基を、有機化学で一般的に用いられる条件で脱保護することによっても得ることができる。
スキーム3においてアニリン(V)を他の相当するアニリン誘導体を用いることで、Qが(a)、(c)~(o)の構造である式(I)の化合物も同様にして製造することができる。
【0025】
スキーム1の原料として用いられる化合物(II)のうちQの構造が(c)である化合物(II-c)は、例えばスキーム4に表す方法によっても製造することができる。
【化8】
(式中、R、RおよびRは前記(I)の記載と同義であり、PGは保護基を表す。)
【0026】
化合物(II-c)は、アミン(VIII)と1,1’-ジチオカルボニルジイミダゾールから調製できるチオカルボニルイミダゾール(IX)とアミン(IV)を反応させて得られるチオウレア(X)を溶媒中、臭素化剤と反応させてチアゾール環を形成させたのち、脱保護することによって製造することができる。すなわち、アミン(VIII)をTHF、DCMなどの溶媒中、1~10モル当量の1,1’-ジチオカルボニルジイミダゾールと反応させることによってチオカルボニルイミダゾール(IX)を得ることができる。反応は-30℃から60℃の範囲において、数分~24時間で実施することができるが、好ましくは10℃から室温で、1時間から24時間反応させることにより合成することができる。
【0027】
得られたチオカルボニルイミダゾール(IX)をTHFなどの溶媒中、1~1.5モル当量のアミン(IV)と反応させることによってチオウレア(X)を得ることができる。反応は0℃から室温の範囲において、数分~24時間で実施することができるが、好ましくは10℃から室温で、30分から2時間反応させることにより合成することができる。
【0028】
得られたチオウレア(X)をアセトニトリルなどの溶媒中、大過剰の酢酸および0.9~1モル当量の臭素と反応させることによって、アミノ基が保護された化合物(II-c)を得ることができる。反応は0℃から室温の範囲において、数分~18時間で実施することができるが、好ましくは10℃から室温で、30分から2時間反応させることにより合成することができる。また5~10モル当量の炭酸水素ナトリウムおよび0.9~1モル当量のベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド等の臭素化試薬と反応させることによっても、アミノ基が保護された化合物(II-c)を合成することができる。反応は0℃から室温の範囲において、数分~数日間で実施することができるが、好ましくは10℃から室温で、数時間から24時間反応させることにより合成することができる。化合物(II-c)は、アミノ基の保護基を、有機化学で一般的に用いられる条件で脱保護することによって得ることができる。
スキーム4においてアミン(VIII)を他の相当するアニリン誘導体を用いることで、Qが(a)、(b)、(d)~(o)の構造である式(I)の化合物も同様にして製造することができる。
【0029】
スキーム1の原料として用いられる化合物(II)のうちQの構造が(d)である化合物(II-d)は、例えばスキーム5に表す方法によっても製造することができる。
【化9】
(式中、R、RおよびRは前記(I)の記載と同義であり、PGは保護基を表す。)
【0030】
化合物(II-d)は、アミン(XI)と1,1’-ジチオカルボニルジイミダゾールおよびアミン(IV)を反応させて得られるチオウレア(XII)を溶媒中、臭素化剤と反応させてチアゾール環を形成させたのち、脱保護することによって製造することができる。すなわち、THFなどの溶媒中、アミン(IV)に、1~5モル当量の1,1’-ジチオカルボニルジイミダゾール及び1~5モル当量のアミン(XI)を同時に加えて、反応させることによってチオウレア(XII)を得ることができる。反応は-30℃から60℃の範囲において、数分~24時間で実施することができるが、好ましくは10℃から室温で、30分から4時間反応させることにより合成することができる。
【0031】
得られたチオウレア(XII)をアセトニトリル、DCMなどの溶媒中、大過剰の酢酸および0.9~1モル当量の臭素と反応させることによって、アミノ基が保護された化合物(II-d)を得ることができる。また5~10モル当量の炭酸水素ナトリウムおよび0.9~1モル当量のベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド等の臭素化剤と反応させることによっても、アミノ基が保護された化合物(II-d)を得ることができる。反応は-30℃から室温の範囲において、数分~18時間で実施することができるが、好ましくは-10℃から0℃、30分から2時間反応させることにより合成することができる。化合物(II-d)は、アミノ基の保護基を、有機化学で一般的に用いられる条件で脱保護することによって得ることができる。
【0032】
スキーム5において、アミン(XI)を他の相当するアニリン誘導体を用いることで、Qが(a)~(c)、(e)~(o)の構造である式(I)の化合物も同様にして製造することができる。
【0033】
スキーム2~5の原料として用いられるアミン(IV)は、例えばスキーム6に表す方法によって製造することができる。
【化10】
(式中、R、RおよびRは前記(I)の記載と同義であり、PGは保護基を表す。)
【0034】
アミン(IV)は、化合物(XIII)の水酸基を光延反応を用いてフタロイル基に変換し、フタルイミドを脱保護することによって製造することができる。すなわち、化合物(XIII)をTHFなどの溶媒中、1~5モル当量のアゾジカルボン酸ジエチル、1~5モル当量のトリフェニルホスフィンおよび1~5モル当量のフタルイミドと反応させることによってアミン(IV)のフタロイル保護体を得ることができる。反応は-30℃から室温の範囲において、数分~24時間で実施することができるが、好ましくは-10℃から0℃、2時間から24時間反応させることにより合成することができる。得られたアミン(IV)のフタロイル保護体を、エタノールなどの溶媒中、大過剰のヒドラジン水和物と反応させることによってアミン(IV)を得ることができる。反応は室温から100℃の範囲において、数分~24時間で実施することができるが、好ましくは40℃から70℃、2時間から24時間反応させることにより合成することができる。
【0035】
スキーム6の原料として用いられる化合物(XIII)は、例えばスキーム7に表す方法によって製造することができる。
【化11】
(式中、R、RおよびRは前記(I)の記載と同義であり、Mはリチウムあるいはマグネシウム等の金属を表し、PGは保護基を表す。)
【0036】
化合物(XIII)は、アルデヒド(XIV)とアルキン(XV)のグリニャール反応によって製造することができる。すなわち、アルデヒド(XIV)をTHFなどの溶媒中、5~10モル当量のアルキン(XV)から調製したグリニャール試薬を反応させることによって化合物(XIII)を得ることができる。反応は-80℃から室温の範囲において、数分~24時間で実施することができるが、好ましくは-80℃から-20℃、30分から2時間反応させることにより合成することができる。
スキーム7の原料として用いられるアルデヒド(XIV)は、市販品として入手するか、または公知の方法あるいは有機合成化学で通常用いられる方法によって製造することができる。
【0037】
スキーム6の原料として用いられる化合物(XIII)は、例えばスキーム8に表す方法によっても製造することができる。
【化12】
(式中、R、RおよびRは前記(I)の記載と同義であり、Mはリチウムあるいはマグネシウム等の金属を表し、PGは保護基を表す。)
【0038】
化合物(XIII)は、ワインレブアミド(XVI)とアルキン(XV)のグリニャール試薬の反応によって得られるケトン(XVII)を還元することにより製造することができる。すなわち、ワインレブアミド(XVI)をTHFなどの溶媒中、5~10モル当量のアルキン(XV)から調製したグリニャール試薬を反応させることによってケトン(XVII)を得ることができる。反応は-80℃から室温の範囲において、数分~24時間で実施することができるが、好ましくは-80℃から-20℃、1時間から4時間反応させることにより合成することができる。得られたケトン(XVII)をメタノール、THFなどの溶媒中、触媒の存在下もしくは非存在下、1~5モル当量の水素化ホウ素ナトリウム、ボラン錯体等の還元剤と反応させることによって化合物(XIII)を得ることができる。反応は-80℃から室温の範囲において、数分~24時間で実施することができるが、好ましくは-20℃から0℃、30分から2時間反応させることにより合成することができる。
スキーム8の原料として用いられるワインレブアミド(XVI)は、市販品として入手するか、または公知の方法あるいは有機合成化学で通常用いられる方法によって製造することができる。
【0039】
スキーム2の原料として用いられる化合物(III)のうちQの構造が(a)である化合物(III-a)は例えばスキーム9に表す方法によって製造することができる。
【化13】
(式中、Lは低級アルキル基を表し、Xはハロゲンを表す。)
【0040】
化合物(III-a)は、ブロモアニリン(XVIII)をエチルキサントゲン酸カリウムで環化させて得られるメルカプトベンゾチアゾール(XIX)をハロゲン化アルキルにてアルキル化し、得られたアルキルチオエーテルを酸化剤で酸化することにより製造することができる。すなわち、ブロモアニリン(XVIII)を、例えばDMFなどの溶媒中、2.5~3モル当量のエチルキサントゲン酸カリウムと加熱反応させることによってメルカプトベンゾチアゾール(XIX)を得ることができる。反応は90℃から還流温度の範囲において、数分~数日間で実施することができるが、好ましくは100℃から120℃で、1日から2日間反応させることにより合成することができる。得られたメルカプトベンゾチアゾール(XIX)を、例えばDMFなどの溶媒中、炭酸カリウムなどの塩基存在下、3~4モル当量のハロゲン化アルキルと反応させることによって相当するアルキルチオエーテルを得ることができる。反応は0℃から室温の範囲において、数分~数日間で実施することができるが、好ましくは10℃から室温で、30分から4時間反応させることにより合成することができる。得られたアルキルチオエーテルを、例えば酢酸、水あるいはDCM等の溶媒中、0.8~2.5モル当量のメタクロロ過安息香酸(m-CPBA)、過酸化水素等の過酸化物やKMnO(過マンガン酸カリウム)などの通常の有機合成で用いられる酸化剤で酸化させることによって化合物(III-a)を得ることができる。反応は0℃から室温の範囲において、10分間~2日間で実施することができるが、好ましくは10℃から室温で、10分から2時間反応させることにより合成することができる。
スキーム9において、ブロモアニリン(XVIII)を他の相当するブロモアニリン誘導体を用いることで、Qが(b)~(o)の構造である式(I)の化合物も同様にして製造することができる。
【0041】
また、式(I)で表される化合物は、例えばスキーム10に示す方法によっても製造することができる。
【化14】
(式中、R、R、RおよびQは前記(I)の記載と同義であり、Lは低級アルキル基を表し、PGは保護基を表す。)
【0042】
化合物(I)は、化合物(XX)をTHF、アセトニトリル、DMAなどの溶媒中、炭酸カリウム、炭酸セシウムおよび水素化ナトリウムなどの塩基存在下、化合物(III)を反応させることによりアミド基が保護された化合物(I)を合成することができる。反応は0℃から150℃の範囲において、数分~数日間で実施することができるが、好ましくは室温から100℃で、数時間から24時間反応させることにより合成することができる。得られたアミド基が保護された化合物(I)の保護基を、有機化学で一般的に用いられる条件で脱保護することによって化合物(I)を得ることができる。
【0043】
スキーム10の原料として用いられる化合物(XX)は例えばスキーム11に示す方法によって製造することができる。
【化15】
(式中、R、R、RおよびQは前記(I)の記載と同義であり、PGは保護基を表す。)
【0044】
化合物(XX)は化合物(IV)を、溶媒中、TEA等の塩基存在下、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)などのイミダゾール系縮合剤や炭酸ジ(N-スクシンイミジル)(DSC)などの炭酸エステル系縮合剤などと反応させることによって得ることができる。縮合剤は過剰量を用いることができるが、好ましくは1~3モル当量のCDIやDSCと反応させることによって合成することができる。溶媒は反応に不活性なものであればいずれでもよく、特に限定されるものではないが、例えばTHF、DCM、DMAなどを用いることができ、好ましくはDCMを用いることができる。反応は0℃から室温の範囲において、数分から数時間で実施することができるが、好ましくは室温で、30分間から5時間程度、反応させることにより合成することができる。
【0045】
なお、上記の方法を適宜組み合わせ、有機合成化学で通常用いられる方法(例えば、アミノ基のアルキル化反応、アシル化反応、カルバモイル化反応、カルバメート化反応、ヒドロキシル基のアルコキシ化、アシル化、カルバメート化、もしくはその逆へ変換する反応)を実施することにより、所望の位置に所望の官能基を有する化合物(I)を得ることができる。
【0046】
[本発明の用途]
本発明の、式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を含有する医薬は、経口投与、非経口投与または局所的投与に適した従来の薬学製剤(医薬組成物)の形態に調製することができる。
【0047】
経口投与のための製剤は、錠剤、顆粒、粉末、カプセルなどの固形剤、およびシロップなどの液体製剤を含む。これらの製剤は従来の方法によって調製することができる。固形剤は、ラクトース、コーンスターチなどのデンプン、微結晶性セルロースなどの結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルシウムカルボキシメチルセルロース、タルク、ステアリン酸マグネシウムなどのような従来の薬学的担体を用いることによって調製することができる。カプセルは、このように調製した顆粒または粉末をカプセルに包むことによって調製することができる。シロップは、ショ糖、カルボキシメチルセルロースなどを含む水溶液中で、式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を溶解または懸濁することによって調製することができる。
【0048】
非経口投与のための製剤は、点滴注入などの注入物を含む。注入製剤もまた従来の方法によって調製することができ、等張化剤(例えば、マンニトール、塩化ナトリウム、グルコース、ソルビトール、グリセロール、キシリトール、フルクトース、マルトース、マンノース)、安定化剤(例えば、亜硫酸ナトリウム、アルブミン)、防腐剤(例えば、ベンジルアルコール、p-オキシ安息香酸メチル)中に適宜組み入れることができる。
【0049】
本発明の医薬の用量は、疾患の種類、重症度、患者の年齢、性別、および体重、投薬形態などに従って変化させることができるが、通常は成人において1日あたり1mg~1,000mgの範囲であり、それは経口経路または非経口経路によって、1回、または2回もしくは3回に分割して投与することができる。
【実施例0050】
以下に実施例および試験例などを挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
化合物の同定は水素核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)及びマススペクトル(MS)により行った。1H-NMRは、特に指示のないかぎりは400MHzで測定されたものであり、また化合物及び測定条件によっては交換性水素が明瞭に観測されない場合がある。なお、br.は幅広いシグナル(ブロード)を意味する。HPLC分取クロマトグラフィーは、市販のODSカラムを用い、特に記載のない限りは水/メタノール、あるいは水/アセトニトリル(ギ酸を含む)を溶出液としてグラジェントモードにて分取した。
【0051】
参考例1
7-(エチルスルホニル)-[1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾールの製造
【化16】
(第1工程)
ジイソプロピルアミン(1.3mL,9.2mmol)のTHF溶液(40mL)に、-80℃で、n-ブチルリチウム(1.6M ヘキサン溶液,5.7mL,9.1mmol)を滴下し、20分間撹拌した。この溶液に、4-ブロモ-1,2-(メチレンジオキシ)ベンゼン(1.0mL,8.4mmol)のTHF溶液(10mL)を滴下し、40分間撹拌した。この溶液に炭酸ガスを吹き込みながら、45分間撹拌した後、さらに室温で19時間撹拌した。反応溶液に2M塩酸を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去後、析出した固体をろ取し、ヘキサンで洗浄後、乾燥させて4-ブロモ-3-カルボキシ-1,2-メチレンジオキシベンゼンを得た(収量1.1g)。
1H NMR (DMSO-d6)δ(ppm) 13.66 (br. s, 1H), 7.12 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.95 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.13 (s, 2H)
【0052】
(第2工程)
4-ブロモ-3-カルボキシ-1,2-メチレンジオキシベンゼン(1.0g,4.1mmol)のジオキサン溶液(15mL)に、室温でTEA(0.63mL,4.5mmol)、tert-ブタノール(3.2mL,34mmol)およびジフェニルホスホリルアジド(0.97mL,4.5mmol)を加え、3時間加熱還流した。反応溶液を水で希釈し、酢酸エチルで抽出後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去後、乾燥させた。この中間体の酢酸エチル溶液(6.0mL)に、氷冷で4M塩酸-酢酸エチル溶液(10mL,40mmol)を加え、室温で16時間撹拌した。反応溶液に2M水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去後、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、3-アミノ-4-ブロモ-1,2-メチレンジオキシベンゼンを得た(収量0.80g)。
1H NMR (DMSO-d6)δ(ppm) 6.89 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.22 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 5.98 (s, 2H), 5.05 (br. s, 2H)
【0053】
(第3工程)
3-アミノ-4-ブロモ-1,2-メチレンジオキシベンゼン(0.79g,3.1mmol)のDMF溶液(15mL)に、室温でキサントゲン酸カリウム(1.2g,7.3mmol)を加え、120℃で5日間撹拌した。この反応溶液に、氷冷で炭酸カリウム(2.2g,mmol)およびヨウ化エチル(0.76mL,9.4mmol)を加え、室温で2時間撹拌した。反応溶液を水で希釈し、酢酸エチルで抽出後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順に洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去後、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、7-(エチルチオ)-[1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾールを得た(収量0.26g)。
1H NMR (DMSO-d6)δ(ppm) 7.46 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.06 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.16 (s, 2H), 3.28 - 3.41 (m, 2H), 1.41 (t, J = 7.3 Hz, 3H)
【0054】
(第4工程)
7-(エチルチオ)-[1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール(0.14g,0.59mmol)のDCM溶液(2.0mL)に、氷冷でm-クロロ過安息香酸(0.36g,0.48mmol)を加え、室温で1日間撹拌した。反応溶液を水で希釈し、酢酸エチルで抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去後、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム)で精製し、表題化合物を得た(収量0.11g)。
1H NMR (DMSO-d6)δ(ppm) 7.81 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.44 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 6.30 (s, 2H), 3.70 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 1.27 (t, J = 7.3 Hz, 3H)
【0055】
参考例2
4-イソチオシアネート-2,3-ジヒドロベンゾフランの製造
【化17】
2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-アミン(1.0g, 7.41mmol)の水溶液(10mL)にチオホスゲン(1.41mL, 18.52mmol)を0℃で加えて、混合物を室温で4時間撹拌した。反応完結後、反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機層を水および飽和食塩溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル)で精製して、表題化合物を得た(収量0.9g)。
1H NMR (CDCl3)δ(ppm) 7.07 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 6.70 (dd, J = 1.1, 7.9 Hz, 2H), 4.62 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 3.30 (t, J = 8.6 Hz, 2H). GC-MS: 177.1 (M+).
【0056】
参考例3
tert-ブチル(RS)-(2-アミノペンチ-3-イン-1-イル)カーバメートの製造
【化18】
(第1工程)
tert-ブチル(2,3-ジヒドロキシプロピル)カーバメート(1.5g,7.8mmol)を水(13mL)に溶かし、反応容器をアルミホイルで遮光した。次いで過ヨウ素酸ナトリウム(2g,9.4mmol)を加えた。混合液を室温で2時間攪拌後、析出物をろ過し、ろ液をクロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧留去してアルデヒド中間体を得た。これを直ちにTHF(15mL)に溶解し、別途-80℃に冷却した1-プロピニルマグネシウムブロミドの0.5M-THF溶液(31mL,16mmol)に加えた。反応液を-80℃で30分、0℃でさらに30分攪拌した後に、塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止し、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去してtert-ブチル(RS)-(2-ヒドロキシペンチ-3-イン-1-イル)カーバメートを得た(収量1.4g)。
1H NMR (CDCl3)δ(ppm) 4.93 - 4.98 (m, 1H), 4.38 - 4.43 (m, 1H), 3.40 - 3.45 (m, 1H), 3.20 - 3.30 (m, 1H), 2.59 (s, 1H), 1.85 (d, J = 2.1 Hz, 3H), 1.41 - 1.54 (m, 9H)
【0057】
(第2工程)
tert-ブチル(RS)-(2-ヒドロキシペンチ-3-イン-1-イル)カーバメート(1.3g,6.3mmol)のTHF溶液(25mL)にフタルイミド(1.0g,7.0mmol)、トリフェニルホスフィン(2.2g,8.2mmol)を加え、次いでジエチルアゾジカルボキシレートの2.2Mトルエン溶液(3.5mL,7.6mmol)を室温でゆっくり添加した。混合液を17時間攪拌後、溶媒を留去して中間体の粗生成物を得た。この中間体をTHF-メタノール1:1の混合溶媒(24mL)に溶解し、次いでヒドラジン一水和物(4.8g,95mmol)を加えて50℃で3時間攪拌した。反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮した。残渣を酢酸エチルで希釈し、1M水酸化ナトリウム水溶液で洗浄、次いで1M塩酸で抽出した。得られた酸性抽出液を2M水酸化ナトリウム水溶液でアルカリ性とし、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去して表題化合物を得た(収量0.42g)。
1H NMR (CDCl3)δ(ppm) 4.96 (s, 1H), 3.71 - 3.76 (m, 1H), 3.57 - 3.66 (m, 1H), 3.23 - 3.33 (m, 1H), 3.08 - 3.20 (m, 1H), 1.81 (d, J = 2.2 Hz, 3H), 1.45 (s, 9H)
【0058】
参考例4
2-(エチルスルホニル)-7,8-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2’,3’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾールの製造
【化19】
(第1工程)
7-(エチルチオ)-[1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール(239mg,1.0mmol)のクロロホルム溶液(2mL)に、室温で三臭化ホウ素(1M-DCM溶液,1.5mL,1.5mmol)を加え、17時間撹拌した。反応溶液にメタノールを加え濃縮後、エタノールで共沸した。残渣にエタノールを加え、析出した固体をろ取し、エタノールで洗浄後、乾燥させて2-(エチルチオ)ベンゾ[d]チアゾール-4,5-ジオールを得た(収量252mg)。
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 7.17 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.85 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 5.89 (br s, 2H), 3.31 (q, J = 7.3 Hz, 2H), 1.40 (t, J = 7.3 Hz, 3H).
【0059】
(第2工程)
2-(エチルチオ)ベンゾ[d]チアゾール-4,5-ジオール(252mg,1mmol)のDMF溶液(3mL)に、室温で炭酸セシウム(652mg,2.0mmol)および1,2-ジブロモエタン(0.172mL,2.0mmol)を加え、70℃で2時間攪拌した。反応溶液に水と飽和重層水を加え、酢酸エチルで抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去後、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、2-(エチルチオ)-7,8-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2’,3’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾールを得た(収量0.14g)。
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.16 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 4.46-4.42 (m, 2H), 4.34-4.30 (m, 2H), 3.33 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 1.46 (t, J = 7.5 Hz, 3H).
【0060】
(第3工程)
2-(エチルチオ)-7,8-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2’,3’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール(0.14g,0.56mmol)のクロロホルム溶液(5.0mL)に、氷冷でm-クロロ過安息香酸(0.41g,1.67mmol)を加え、室温で66時間撹拌した。反応溶液に飽和重層水と飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出後、有機層を飽和重層水と飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液の混合溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去後、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、表題化合物を得た(収量0.10g)。
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.40 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 7.18 (d, J = 9.1 Hz, 1H), 4.49-4.47 (m, 2H), 4.38-4.36 (m, 2H), 3.55 (q, J = 7.5 Hz, 2H), 1.40 (t, J = 7.5 Hz, 3H).
【0061】
参考例5
(RS)-2-オキソ-4-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルの製造
【化20】
N,N′-ジスクシンイミジルカーボネート(194 mg、0.76mmol)のクロロホルム懸濁液(1mL)に、氷冷下でトリエチルアミン(0.14mL、1.51mmol)を加えた後、tert-ブチル(RS)-(2-アミノペンチ-3-イン-1-イル)カーバメート(100mg,0.504mmol)のクロロホルム溶液(2mL)を40分かけて滴下した。室温で2時間撹拌した後、水を加えた。クロロホルムで抽出した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去後、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、表題化合物を得た(収量0.84g)。
1H-NMR (CDCl3) δ: 4.87 (s, 1H), 4.33-4.29 (m, 1H), 3.99 (dd, J = 8.5, 10.4 Hz, 1H), 3.77 (dd, J = 5.5, 10.4 Hz, 1H), 1.81 (d, J = 1.8 Hz, 3H), 1.51 (s, 9H).
【0062】
実施例1
(RS)-1-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)-5-(プロピ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オンの製造
【化21】
【0063】
(第1工程)
7-(エチルスルホニル)-[1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール(100mg,0.369mmol)およびtert-ブチル(RS)-(2-アミノペンチ-3-イン-1-イル)カーバメート(292mg,1.474mmol)の混合物を100℃で6時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、1M塩酸で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去し得られた残渣に4M塩酸-ジオキサン溶液(3mL)を加え、室温で30分攪拌した。反応液に水酸化ナトリウム水溶液を加えてアルカリ性とし、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去して、(RS)-N2-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)ペンチ-3-イン-1,2-ジアミンを得た(収量40mg)。
1H NMR (CDCl3)δ(ppm) 7.03 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.70 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.05 (s, 2H), 4.69 (s, 1H), 3.61 - 3.69 (m, 1H), 3.06 (dd, J = 12.7, 4.6 Hz, 1H), 2.98 (dd, J = 12.7, 5.2 Hz, 1H), 1.84 (d, J = 2.2 Hz, 3H)
【0064】
(第2工程)
(RS)-N2-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)ペンチ-3-イン-1,2-ジアミン(40mg,0.15mmol)のDMF溶液(2.0mL)に炭酸N,N’-ジスクシンイミジル(0.11g,0.44mmol)を加えた。室温で30分間攪拌後、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(アミンシリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製して表題化合物を得た(収量18mg)。
1H NMR (DMSO-d6)δ(ppm) 8.05 (s, 1H), 7.38 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.95 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.07 - 6.16 (m, 2H), 5.29 - 5.37 (m, 1H), 3.84 (dd, J = 9.0 Hz, 1H), 3.25 - 3.48 (m, 1H), 1.80 (d, J = 2.1 Hz, 3H); LCMS (m/z): 302.1 [M+H]+.
【0065】
実施例2
(R)-1-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)-5-(1-プロピン-1-イル)イミダゾリジン-2-オンの製造
【化22】
実施例1で製造した(RS)-1-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)-5-(プロピニル)イミダゾリジン-2-オン(0.15g,0.49mmol)を、超臨界流体クロマトグラフィー(Chiralpak IG (30×250 mm)、二酸化炭素/メタノール)を用いて精製し、先に溶出した画分として(保持時間2.37分)、表題化合物を得た(収量54mg)。
1H NMR (500MHz, DMSO-d6)δ(ppm) 8.04 (br. s, 1H), 7.38 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.94 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.12 (d, J = 4.9 Hz, 2H), 5.28 - 5.36 (m, 1H), 3.83 (t, J = 9.0 Hz, 1H), 3.40 - 3.48 (m, 1H), 1.80 (d, J = 2.0 Hz, 3H); LCMS (m/z): 302.3 [M+H]+.
【0066】
実施例3
(S)-1-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)-5-(1-プロピン-1-イル)イミダゾリジン-2-オンの製造
【化23】
実施例2と同様にして(RS)-1-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)-5-(プロピニル)イミダゾリジン-2-オン(実施例1)(0.15g,0.49mmol)を、超臨界流体クロマトグラフィー(Chiralpak IG (30×250 mm)、二酸化炭素/メタノール)を用いて精製し、実施例2のR体(保持時間2.37分)の後に溶出した画分(保持時間4.19分)を、逆の立体配置を有する表題化合物として得た(収量40mg)。
1H NMR (500MHz, DMSO-d6)δ(ppm) 8.04 (br. s, 1H), 7.38 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.94 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.12 (d, J = 4.9 Hz, 2H), 5.28 - 5.36 (m, 1H), 3.83 (t, J = 9.0 Hz, 1H), 3.40 - 3.48 (m, 1H), 1.80 (d, J = 2.0 Hz, 3H); LCMS (m/z): 302.3 [M+H]+.
【0067】
実施例4
(4S,5S)-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オンの製造
【化24】
【0068】
(第1工程)
-75℃に冷却したtert-ブチル(S)-{1-[メトキシ(メチル)アミノ]-1-オキソプロパン-2-イル}カーバメート(5.0g,21.55mmol)のTHF溶液(50mL)に1-プロピニルマグネシウムブロミドの0.5M-THF溶液(128.31mL,64.65mmol)を滴下し、室温で16時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、tert-ブチル(S)-(3-オキソヘキサ-4-イン-2-イル)カーバメートを得た(収量4.4g)。
1H NMR (DMSO-d6)δ(ppm) 7.35 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 4.04 - 3.89 (m, 1H), 2.06 (s, 3H), 1.39 (s, 9H), 1.20 (d, J = 7.3 Hz, 3H). LCMS (m/z): 212.40 [M+H]+.
【0069】
(第2工程)
tert-ブチル(S)-(3-オキソヘキサ-4-イン-2-イル)カーバメート(3.9g,18.48mmol)のメタノール溶液(50mL)に氷冷下、塩化セリウム(III)七水和物(8.93g,24.03mmol)および水素化ホウ素ナトリウム(0.913g,24.03mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、粗精製のtert-ブチル((2S,3RS)-3-ヒドロキシヘキサ-4-イン-2-イル)カーバメートを得た(収量4.1g)。
1H NMR (DMSO-d6)δ(ppm) 6.52- 6.47 (m, 1H), 5.26 (dd, J = 3.2, 5.9 Hz, 1H), 4.15 - 4.09 (m, 1H), 3.50 (br. s, 1H), 1.82 - 1.76 (m, 3H), 1.40 - 1.35 (m, 9H), 1.05 - 1.01 (m, 3H). LCMS (m/z): 214.24 [M+H]+.
【0070】
(第3工程)
tert-ブチル((2S,3RS)-3-ヒドロキシヘキサ-4-イン-2-イル)カーバメート(4.1g,19.25mmol)のTHF溶液(50mL)に氷冷下、フタルイミド(2.26g,15.40mmol)、トリフェニルホスフィン(5.54g,21.17mmol)を加え、次いでジエチルアゾジカルボキシレート(3.67g,21.17mmol)をゆっくり添加し、混合液を室温で17時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製してtert-ブチル[(2S,3RS)-3-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)ヘキサ-4-イン-2-イル]カーバメートを得た(収量3.0g)。
1H NMR (DMSO-d6)δ(ppm) 7.94 - 7.80 (m, 4H), 6.88 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 4.65 (dd, J = 2.4, 9.8 Hz, 1H), 4.20 - 4.09 (m, 1H), 1.81 (d, J = 2.4 Hz, 3H), 1.28 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 0.97 (s, 9H). LCMS (m/z): 343.43 [M+H]+.
【0071】
(第4工程)
tert-ブチル[(2S,3RS)-3-(1,3-ジオキソイソインドリン-2-イル)ヘキサ-4-イン-2-イル]カーバメート(3.0g,8.77mmol)をTHF-メタノールの混合溶媒(1:1,60mL)に溶解し、次いでヒドラジン一水和物(4.38g,87.72mmol)を加えて80℃で3時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去してtert-ブチル((2S,3RS)-3-アミノヘキサ-4-イン-2-イル)カーバメートを得た(収量1.6g)。
LCMS (m/z): 213.19 [M+H]+.
【0072】
(第5工程)
4-イソチオシアネート-2,3-ジヒドロベンゾフラン(0.85g,4.80mmol)のエタノール溶液(15mL)にTEA(2.02mL,14.41mmol)およびtert-ブチル((2S,3RS)-3-アミノヘキサ-4-イン-2-イル)カーバメート(1.32g,6.24mmol)を加え、室温で16時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/酢酸エチル)で精製してtert-ブチル{(2S,3RS)-3-[3-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-イル)チオウレイド]ヘキサ-4-イン-2-イル}カーバメートを得た(収量1.5g)。
1H NMR (DMSO-d6)δ(ppm) 9.28 (br. s, 1H), 7.85 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 7.10 - 6.98 (m, 2H), 6.77 (br. s, 1H), 6.59 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 5.32 - 5.22 (m, 1H), 4.54 - 4.48 (m, 2H), 3.74 - 3.69 (m, 1H), 3.20 - 3.00 (m, 2H), 1.81 (d, J = 2.0 Hz, 3H), 1.39 (s, 9H), 1.13 (d, J = 6.6 Hz, 3H). LCMS (m/z): 390.55 [M+H]+.
【0073】
(第6工程)
tert-ブチル{(2S,3RS)-3-[3-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-4-イル)チオウレイド]ヘキサ-4-イン-2-イル}カーバメート(1.4g,3.60mmol)のクロロホルム溶液(15mL)に氷冷下、炭酸水素ナトリウム(3.023mg,35.99mmol)およびベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド(1.11g,2.88mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。反応液に水を加え、DCMで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/酢酸エチル)で精製してtert-ブチル{(2S,3RS)-3-[(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)アミノ]ヘキサ-4-イン-2-イル}カーバメートを得た(収量0.9g)。
1H NMR (DMSO-d6)δ(ppm) 8.19 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.36 (d, J = 4.4, 8.0 Hz, 1H), 6.77 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.52 (dd, J = 2.8, 8.4 Hz, 1H), 4.72 - 4.68 (m, 1H), 4.55 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 3.79 - 3.71 (m, 1H), 3.28 - 3.24 (m, 2H), 1.79 (s, 3H), 1.37 (s, 9H), 1.19 - 1.15 (m, 3H). LCMS (m/z): 388.35 [M+H]+.
【0074】
(第7工程)
tert-ブチル{(2S,3RS)-3-[(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)アミノ]ヘキサ-4-イン-2-イル}カーバメート(0.9g,2.32mmol)の酢酸エチル溶液(20mL)に、氷冷下、4M塩酸-酢酸エチル溶液(5mL)を加え、室温で4時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、粗精製物として(2S,3RS)-N3-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)ヘキサ-4-イン-2,3-ジアミン塩酸塩を得た(収量0.9g)。
LCMS (m/z): 288.23 [M+H]+.
【0075】
(第8工程)
(2S,3RS)-N3-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)ヘキサ-4-イン-2,3-ジアミン塩酸塩(0.8g,2.79mmol)のDMF溶液(8mL)に氷冷下、TEA(3.91mL,27.87mmol)と炭酸N,N’-ジスクシンイミジル(0.713g,2.79mmol)を加えた。室温で3時間攪拌後、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去して、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/酢酸エチル)で精製して(4S,5RS)-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オンをジアステレオマー混合物として得た(収量0.43g)。得られたジアステレオマー混合物を超臨界流体クロマトグラフィー(Chiralpak IC (30×250 mm)、二酸化炭素/メタノール)を用いて精製し、先に溶出した画分として(保持時間2.527分)、表題化合物を得た(収量248mg)。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6)δ(ppm) 8.18 (br. s, 1H), 7.60 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.76 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 4.89 (t, J = 2.5 Hz, 1H), 4.62 (t, J = 9.5 Hz, 2H), 3.82 - 3.72 (m, 1H), 3.38 (t, J = 9.0 Hz, 2H), 1.80 (d, J = 2.0 Hz, 3H), 1.24 (d, J = 6.0 Hz, 3H). LCMS (m/z): 314.28 [M+H]+.
【0076】
実施例5
(4S,5R)-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オンの製造
【化25】
実施例4の第8工程で得られたジアステレオマー混合物を超臨界流体クロマトグラフィー(Chiralpak IC (30×250 mm)、二酸化炭素/メタノール)を用いて精製し、(4S,5S)-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(保持時間2.527分)の後に溶出した画分として(保持時間4.450分)、(4S,5R)-1-(7,8-ジヒドロベンゾフロ[4,5-d]チアゾール-2-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オン(表題化合物)を得た(収量30mg)。
1H NMR (DMSO-d6)δ(ppm) 8.00 (br. s, 1H), 7.60 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.76 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 5.35 (d, J = 5.9 Hz, 1H), 4.62 (t, J = 8.7 Hz, 2H), 4.10 - 4.00 (m, 1H), 3.38 (t, J = 8.7 Hz, 2H), 1.81 (d, J = 1.0 Hz, 3H), 1.29 (d, J = 6.1 Hz, 3H). LCMS (m/z): 314.19 [M+H]+.
【0077】
実施例6
(RS)-1-(イミダゾ[1,2-a]チアゾロ[5,4-e]ピリジン-2-イル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オンの製造
【化26】
【0078】
(第1工程)
イミダゾ[1,2-a]ピリジン-5-アミン(1.99g,14.95mmol)を氷冷下、THF-DCM混合溶媒(1:1,266mL)に懸濁させ、1,1’-ジチオカルボニルジイミダゾール(8.88g,44.8mmol)を加えて室温で18時間攪拌した。反応混合物をろ過し、固体をヘキサンで洗浄後、乾燥させ、N-(イミダゾ[1,2-a]ピリジン-5-イル)-1H-イミダゾール-1-カルボチオアミドを得た(収量2.0g)。
1H NMR (DMSO-d6)δ(ppm) 8.74 - 8.70 (m, 1H), 8.34 (dd, J = 7.9, 1.0 Hz, 1H), 8.24 (dd, J = 2.1, 0.8 Hz, 1H), 8.09 - 8.06 (m, 1H), 7.96 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.81 - 7.74 (m, 1H), 7.37 - 7.31 (m, 1H), 7.25 - 7.21 (m, 1H), 6.98 - 6.94 (m, 1H).
【0079】
(第2工程)
tert-ブチル(RS)-(2-アミノペンチ-3-イン-1-イル)カーバメート(300mg,1.51mmol)のTHF溶液(15mL)にN-(イミダゾ[1,2-a]ピリジン-5-イル)-1H-イミダゾール-1-カルボチオアミド(368mg,1.51mmol)を加えた。反応混合物を室温で30分間攪拌後、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(アミンシリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製してtert-ブチル(RS)-{2-[3-(イミダゾ[1,2-a]ピリジン-5-イル)チオウレイド]ペンタ-3-イン-1-イル}カーバメートを得た(収量142mg)。
LCMS (m/z): 374.3 [M+H]+.
【0080】
(第3工程)
tert-ブチル(RS)-{2-[3-(イミダゾ[1,2-a]ピリジン-5-イル)チオウレイド]ペンタ-3-イン-1-イル}カーバメート(142mg,0.38mmol)のアセトニトリル溶液(15mL)に臭素(17.63μL,0.342mmol)の酢酸溶液(76μL)を加えた。反応混合物を室温で30分間攪拌後、溶媒を減圧留去し、酢酸エチル加え、2M水酸化ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)で精製してtert-ブチル(RS)-[2-(イミダゾ[1,2-a]チアゾロ[5,4-e]ピリジン-2-イルアミノ)ペンタ-3-イン-1-イル]カーバメートを得た(収量43mg)。
LCMS (m/z): 372.3 [M+H]+.
【0081】
(第4工程)
tert-ブチル(RS)-[2-(イミダゾ[1,2-a]チアゾロ[5,4-e]ピリジン-2-イルアミノ)ペンタ-3-イン-1-イル]カーバメート(43mg,0.116mmol)の酢酸エチル溶液(5.0mL)に4M塩酸-酢酸エチル溶液(2mL)を加え、室温で16時間撹拌した。溶媒を減圧留去し得られた残渣のDMF溶液(1.15mL)にTEA(161μL,1.158mmol)と炭酸N,N’-ジスクシンイミジル(29.7mg,0.116mmol)を加えた。室温で3時間攪拌後、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去して表題化合物を得た(収量21mg)。
1H NMR (DMSO-d6)δ(ppm) 8.21 (s, 1H), 8.12 - 8.06 (m, 1H), 7.84 (d, J = 9.34 Hz, 1H), 7.66 (d, J = 1.28 Hz, 1H), 7.47 (dd, J = 0.76, 9.29 Hz, 1H), 5.42 (dp, J = 2.19, 8.98 Hz, 1H), 3.89 (t, J = 9.07 Hz, 1H), 3.48 (ddd, J = 1.06, 2.80, 9.18 Hz, 1H), 1.80 (d, J = 2.11 Hz, 3H). LCMS (m/z): 298.1 [M+H]+.
【0082】
実施例7
(RS)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)-1-(チアゾロ[5’,4’:5,6]ベンゾ[1,2-d]オキサゾール-7-イル)イミダゾリジン-2-オンの製造
【化27】
【0083】
(第1工程)
ベンゾ[d]オキサゾール-4-アミン(0.5g,3.70mmol)のTHF溶液(10mL)に氷冷下、1,1’-ジチオカルボニルジイミダゾール(0.96g,4。81mmol)を徐々に加えて室温で3時間攪拌し、水(0.1mL)を加え、さらに15分間撹拌した。反応混合液にtert-ブチル(RS)-(2-アミノペンチ-3-イン-1-イル)カーバメート(0.88g,4.44mmol)のTHF溶液(5mL)を加え、室温で2時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、tert-ブチル(RS)-{2-[3-(ベンゾ[d]オキサゾール-4-イル)チオウレイド]ペンタ-3-イン-1-イル}カーバメートを得た(収量0.5g)。
LCMS (m/z): 375.29 [M+H]+.
【0084】
(第2工程)
tert-ブチル(RS)-{2-[3-(ベンゾ[d]オキサゾール-4-イル)チオウレイド]ペンタ-3-イン-1-イル}カーバメート(0.5g,1.33mmol)のDCM溶液(10mL)に氷冷下、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド(0.42g,1.07mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。反応液に水を加え、DCMで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/酢酸エチル)で精製してtert-ブチル(RS)-[2-(チアゾロ[5’,4’:5,6]ベンゾ[1,2-d]オキサゾール-7-イルアミノ)ペンタ-3-イン-1-イル]カーバメートカーバメートを得た(収量0.26g)。
LCMS (m/z): 373.52 [M+H]+.
【0085】
(第3工程)
tert-ブチル(RS)-[2-(チアゾロ[5’,4’:5,6]ベンゾ[1,2-d]オキサゾール-7-イルアミノ)ペンタ-3-イン-1-イル]カーバメート(0.06g,0.163mmol)のDCM溶液(3mL)に、氷冷下、4M塩酸-ジオキサン溶液(1mL)を加え、室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、粗精製物として(RS)-N2-(チアゾロ[5’,4’:5,6]ベンゾ[1,2-d]オキサゾール-7-イル)ペンタ-3-イン-1,2-ジアミン塩酸塩を得た(収量0.05g)。
【0086】
(第4工程)
(RS)-N2-(チアゾロ[5’,4’:5,6]ベンゾ[1,2-d]オキサゾール-7-イル)ペンタ-3-イン-1,2-ジアミン塩酸塩(0.18g,0.58mmol)のDMF溶液(5mL)に氷冷下、TEA(0・4mL,2.92mmol)と炭酸N,N’-ジスクシンイミジル(0.165g,0・64mmol)を加えた。室温で16時間攪拌後、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去して、得られた残渣をHPLC分取システムを用いて精製し、表題化合物を得た(収量15mg)。
1H NMR (500 MHz, DMSO-d6)δ(ppm) 8.81 (s, 1H), 7.98 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.90 (br. s, 1H), 7.71 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 5.46 - 5.44 (m, 1H), 3.87 (t, J = 9.0 Hz, 1H), 3.47 (dd, J = 2.5, 9.0 Hz, 1H), 1.79(s, 3H). LCMS (m/z): 299.17 [M+H]+.
【0087】
以下の実施例8~22、24~54、56~84の化合物[表1]~[表3]は、それぞれ対応する原料(市販品、または市販化合物から公知の方法もしくはそれに準じた方法により誘導体化した化合物)を用い、上述の実施例記載の方法に従い、必要に応じて、有機合成化学で通常用いられる方法を適宜組み合わせて製造した。また、不斉中心を持つ化合物に関しては、キラルな出発原料、不斉合成、キラルカラムによる分取精製もしくはこれらを組み合わせることにより製造した。また、各々の化合物の物理化学データを[表4]および[表5]に示した。
表中、光学活性中心の置換基の結合を波線で示した場合はラセミ体を表わし、光学活性中心の置換基の結合を実線で示した場合は、それぞれ、その置換位置についてのエナンチオマーであって、光学分割により単一の化合物として取得した化合物を表す。また、光学分割して得た立体異性体の分析条件および保持時間を[表6]に示した。
【0088】
[表1]
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0089】
実施例23
(4S,5R)-1-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オンの製造
【化28】
(第1工程)
実施例4の第4工程で得られたtert-ブチル((2S,3RS)-3-アミノヘキサ-4-イン-2-イル)カーバメート(1.0g,4.72mmol)のDCM溶液(30mL)にTEA(1.32mL,9.43mmol)、炭酸N,N’-ジスクシンイミジル(1・32g,5.17mmol)を加えた。室温で4時間攪拌後、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/酢酸エチル)で精製して(4RS,5S)-5-メチル-2-オキソ-4-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルを得た(収量0.6g)。
(第2工程)
第1工程を繰り返し得られた(4RS,5S)-5-メチル-2-オキソ-4-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル(0.74g,3.1mmol)のアセトニトリル溶液(30mL)に炭酸セシウム(1.09g,3.36mmol)および7-(エチルスルホニル)-[1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール(700mg,2.58mmol)を加えた。80℃で8時間攪拌後、反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/酢酸エチル)で精製して(4RS,5S)-3-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)-5-メチル-2-オキソ-4-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルを得た(収量0.3g)。
1H NMR (DMSO-d6) δ = 7.49 - 7.45 (m, 1H), 7.05 - 7.01 (m, 1H), 6.16 - 6.14 (m, 2H), 5.04 - 5.02 (m, 1H), 4.30 - 4.25 (m, 1H), 1.83 - 1.81 (m, 3H), 1.52 - 1.50 (m, 9H), 1.40 (d, J = 6.4 Hz, 3H) ; LCMS (m/z): 416.15 [M+H]+.
(第3工程)
(4RS,5S)-3-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)-5-メチル-2-オキソ-4-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル(0.3g,0.72mmol)のDCM溶液(15mL)に氷冷下、トリフルオロ酢酸(1.6mL,21.68mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。反応液を減圧下で濃縮し、残渣に氷水を加え飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した。析出した個体をろ取し、減圧下乾燥させ、(4S,5RS)-1-([1,3]ジオキソロ[4’,5’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-7-イル)-4-メチル-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オンをジアステレオマー混合物として得た(収量0.19g)。得られたジアステレオマー混合物を超臨界流体クロマトグラフィー(Lux Cellulose-2 (30×250 mm)、二酸化炭素/メタノール)を用いて精製し、表題化合物を得た(収量41mg)。
1H NMR (DMSO-d6) δ = 8.05 (s, 1H), 7.37 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.94 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.12 (d, J = 2.9 Hz, 2H), 5.33 (d, J = 5.9 Hz, 1H), 4.08 (quin, J = 6.4 Hz, 1H), 1.82 (s, 3H), 1.29 (d, J = 6.1 Hz, 3H) ; LCMS (m/z): 316.08[M+H]+ ;超臨界流体クロマトグラフィー(Chiralpak IC-3 (4.6x150mm), 0.5%DEA in Methanol)での保持時間:4.77分.
【0090】
[表2]
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【0091】
実施例55
(RS)-1-(7,8-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2’,3’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-2-イル)-5-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-2-オンの製造
【化29】
(第1工程)
2-(エチルスルホニル)-7,8-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2’,3’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール(55mg,0.19mmol)と(RS)-2-オキソ-4-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル(50mg,0.22mmol)のトルエン溶液(4mL)に、室温でリン酸三カリウム(62mg,0.29mmol)を加え、50℃で3時間、70℃で2時間、80℃で10時間攪拌した。反応溶液に水を加え、クロロホルムで抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去後、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/酢酸エチル)で精製し、(RS)-3-(7,8-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2’,3’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-2-イル)-2-オキソ-4-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルを得た(収量0.066g)
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.21 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.88 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 5.45-5.39 (m, 1H), 4.47-4.42 (m, 2H), 4.34-4.29 (m, 2H), 4.08-3.97 (m, 2H), 1.77 (d, J = 2.4 Hz, 3H), 1.57 (s, 9H).
【0092】
(第2工程)
(RS)-3-(7,8-ジヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2’,3’:5,6]ベンゾ[1,2-d]チアゾール-2-イル)-2-オキソ-4-(プロパ-1-イン-1-イル)イミダゾリジン-1-カルボン酸 tert-ブチル(66mg,0.16mmol)に室温でTFA(4mL)を加え、15分間攪拌した。反応溶液を減圧留去し、飽和重層水を加え、クロロホルム/エタノール(3/1)で抽出後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去後、残渣にクロロホルムを加え、析出した固体をろ取し、クロロホルムで洗浄後、乾燥させて表題化合物を得た(収量26mg)。
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 7.96 (br s, 1H), 7.29 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 6.81 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 5.32-5.28 (m, 1H), 4.41-4.27 (m, 4H), 3.84-3.77 (m, 1H), 3.43-3.39 (m, 1H), 1.78 (d, J = 2.4 Hz, 3H). LCMS (m/z): 316.1 [M+H]+.
【0093】
[表3]
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【0094】
[表4]
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0095】
[表5]
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【表5-6】
【表5-7】
【表5-8】
【表5-9】
【0096】
[表6]
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【0097】
製剤例1:錠剤の製造
実施例1の化合物(250g)、コーンスターチ(54g)、カルボキシメチルセルロースカルシウム(40g)、結晶セルロース(50g)及びステアリン酸マグネシウム(6g)を、常法により混合、造粒し、1錠あたり400mgで打錠し、1000錠を製する。
【0098】
製剤例2:散剤の製造
実施例1の化合物(500g)、乳糖(470g)、ヒドロキシプロピルセルロース(25g)及び軽質無水ケイ酸(5g)を、常法により混合した後、散剤に製する。
【0099】
試験例1
[DYRKファミリー(DYRK1A、DYRK1B、DYRK2、DYRK3)に対する活性阻害試験]
(キナーゼ活性の測定方法)
キナーゼ活性の測定は、QuickScout Screening Assist(商標)MSA(カルナバイオサイエンス社製市販キット)を用い、モビリティシフトアッセイ(MSA)法により行った。キナーゼ反応の基質は、キット付属のFITC標識DYRKtideペプチドを用いた。アッセイバッファー[20mM HEPES、0.01%Triton X-100(商標)、2mM dithiothreitol、pH7.5]を用い、基質(4μM)、MgCl(20mM)およびATP(DYRK1A;100μM、DYRK1B;200μM、DYRK2;40μM、DYRK3;20μM)の基質混合液を作成した。また、キナーゼ(DYRK1A;カルナバイオサイエンス社製、カタログNo.04-130、DYRK1B、同社製、No.04-131、DYRK2;同社製、No.04-132、DYRK3;同社製、No.04-133)をアッセイバッファーで希釈して酵素溶液(DYRK1A;0.2ng/μL、DYRK1B;0.08ng/μL、DYRK2;0.04ng/μL、DYRK3;0.25ng/μL)を調製した。被験化合物の10mM DMSO溶液から、10濃度(0.00003mM、0.0001mM、0.0003mM、0.001mM、0.003mM、0.01mM、0.03mM、0.1mM、0.3mM、1mM)にDMSOでさらに希釈し、それぞれをアッセイバッファーで25倍希釈して、薬物溶液とした(4%DMSO溶液)。薬物溶液もしくはコントロール溶液(4%DMSO-アッセイバッファー)5μL、基質混合液5μL、および酵素溶液10μLをポリプロピレン製384穴プレートのウェル中で混合し、1時間室温で反応させた後、60μLのキット付属のターミネーションバッファーを添加し反応を停止させた。ついで、反応溶液中の、基質(S)およびリン酸化された基質(P)の量をLabChip EZ Reader IIシステム(Caliper Life Sciences社製)を用い、アッセイキットのプロトコールにしたがって測定した。
【0100】
(阻害活性の評価方法)
「基質」および「リン酸化された基質」の各ピークの高さをそれぞれSおよびPとし、またブランクとして酵素溶液の代わりにアッセイバッファーを添加したものを測定した。
【0101】
被験化合物の阻害率(%)は、次の式に従って算出した。
阻害率(%)=(1-(C-A)/(B-A))×100
ただし、A、B、Cは、それぞれブランクウェルのP/(P+S)、コントロール溶液ウェルのP/(P+S)、化合物添加ウェルのP/(P+S)を示す。
【0102】
また、IC50値は、阻害率と被験化合物濃度(対数)の回帰分析により算出した。
(評価結果)
代表化合物のDYRK1A、DYRK1B、DYRK2、DYRK3に対する阻害活性を表7および8に示す。キナーゼ活性阻害作用はIC50値が、0.01μM未満を***印、0.01μM以上0.1μM未満を**印、0.1μM以上1μM未満を*印、1μM以上を-印で示した(N.D.は未測定)。
【0103】
[表7]
【表7】


【0104】
[表8]
【表8-1】


【表8-2】
この結果は、被験化合物(化合物(I))が、強いDYRK阻害活性を有することを示している。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明により提供される医薬は、DYRK1Aを介した異常な細胞応答に関連していることが知られている疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ダウン症、精神遅滞、記憶障害、記憶喪失、鬱病のような精神・神経疾患、さらに脳腫瘍などの癌に対する予防または治療剤として有用である。またDYRK1Bの阻害剤として、膵臓癌などの癌に対する予防または治療用医薬(又は医薬組成物)として有用である。さらに本発明により提供される医薬は、DYRK2については、DNA損傷に応答してp53を制御し、アポトーシスを誘導することから、骨吸収疾患および骨粗鬆症に対する予防または治療用医薬(又は医薬組成物)として有用である。また本発明により提供される医薬は、DYRK3の阻害剤として、鎌状赤血球貧血、慢性腎疾患、骨吸収疾患および骨粗鬆症に対する予防または治療用医薬(又は医薬組成物)として有用である。