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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018874
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】着衣
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/06 20060101AFI20230202BHJP
   A41B 11/00 20060101ALI20230202BHJP
   A61F 13/06 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
A41D13/06
A41B11/00 B
A61F13/06 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123229
(22)【出願日】2021-07-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)掲載日:令和2年11月1日 https://www.facebook.com/activital.official/ 自社のfacebookページにて公開 (2)掲載日:令和2年11月20日 https://www.makuake.com/project/activital_doublexx/ クラウドファンディングサイトにて公開 (3)掲載日:令和2年12月1日 https://www.rakuten.ne.jp/gold/anshin/ https://www.rakuten.ne.jp/gold/regeta/ オンラインショッピングモールにて公開 (4)掲載日:令和2年12月1日 http://activital.jp/ 自社が運営する公式サイトにて公開
(71)【出願人】
【識別番号】501354587
【氏名又は名称】株式会社グッズマン
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺西 利夫
【テーマコード(参考)】
3B011
3B018
【Fターム(参考)】
3B011AA14
3B011AB08
3B011AB18
3B011AC17
3B018AA02
3B018AB02
3B018AB04
3B018AC01
3B018AD01
(57)【要約】
【課題】テーピングの代用とすることを目的として、着用者の運動機能および関節可動域を過剰に制限せずに身体をサポートでき、かつ、製造が容易でサポーター機能の低下や通気性の低下や血流の低下を抑制できる着衣を提供する。
【解決手段】着衣である靴下は、着用者の一部を包むように筒状に形成され、伸縮性を有する生地と、生地の外面に設けられ、生地の伸長を制限する伸長制限部2とを備えている。伸長制限部2は、第1直線方向D1に延びるように並べて形成された一対の第1パターン22Aおよび第2パターン22Bと、第2直線方向D2に延びるように並べて形成された一対の第3パターン22Cおよび第4パターン22Dとを有している。第1パターン22Aおよび第2パターン22Bのそれぞれが第3パターン22Cおよび第4パターン22Dと交差している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の一部を包むように筒状に形成され、伸縮性を有する生地と、
前記生地の外面に設けられ、前記生地の伸長を制限する伸長制限部とを備え、
前記伸長制限部は、所定の第1直線方向に延びるように並べて形成された一対の第1および第2パターンと、所定の第2直線方向に延びるように並べて形成された一対の第3および第4パターンとを有し、
前記第1および第2パターンのそれぞれが前記第3および第4パターンと交差している
ことを特徴とする着衣。
【請求項2】
前記生地は、前記着用者のアキレス腱を覆う部位を有し、当該部位に、前記伸長制限部が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の着衣。
【請求項3】
前記生地は、前記着用者の足の甲の関節を覆う部位を有し、当該部位に、前記伸長制限部が設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の着衣。
【請求項4】
前記生地は、前記着用者の足首の関節を覆う部位を有し、当該部位に、前記伸長制限部が設けられている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の着衣。
【請求項5】
前記生地は、前記着用者のふくらはぎを覆う部位を有し、当該部位に、前記伸長制限部が設けられている
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の着衣。
【請求項6】
前記第1および第2パターンならびに前記第3および第4パターンは、弾性ゴムにより形成されている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の着衣。
【請求項7】
前記第1および第2パターンならびに前記第3および第4パターンは、不連続である
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の着衣。
【請求項8】
前記第1および第2パターンには、前記第1直線方向に対して傾斜するように延びた一定の幅を有するスリットが設けられ、
前記第3および第4パターンには、前記第2直線方向に対して傾斜するように延びた一定の幅を有するスリットが設けられている
ことを特徴とする請求項7に記載の着衣。
【請求項9】
前記伸長制限部は、前記第1および第2パターンのそれぞれの一端部を接続する第1接続パターンと、前記第1および第2パターンのそれぞれの他端部を接続する第2接続パターンと、前記第3および第4パターンのそれぞれの一端部を接続する第3接続パターンと、前記第3および第4パターンのそれぞれの他端部を接続する第4接続パターンとをさらに有している
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の着衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者が身体に着用する着衣に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、着用者が足に着用する着衣である靴下が記載されている。サポーター機能を有する当該靴下は、甲部および土踏まず領域を経て足裏へ延びる第1帯状領域と、足裏部から小指の付け根部後方領域を経て足の甲部を通り、内くるぶし領域および足首背面部を経て外くるぶし領域に至る第2帯状領域とを備えており、各帯状領域には、伸び率の小さい弾性糸を編んで形成された締め付け部が形成されている。
【0003】
ところで、特許文献1の靴下は、生地の締め付け部が特別な素材で形成されているため、その製造が容易でないという問題がある。このような問題を解決するために、靴下の生地は一般的な素材を使用し、生地の伸長を制限する伸長制限部を生地の表面に設けることが考えられる。
【0004】
しかしながら、生地の表面に、例えば図7に示すようなX字状の弾性ゴム121を伸長制限部102として設けた場合、生地の伸縮性が喪失することで、着用者の運動機能が過剰に制限されるという問題があり、血行不良による血行障害が生じるおそれがある。また、生地の伸縮性が喪失することで、サポーター機能が低下するという問題がある。また、通気性が低下するという問題があり、発汗により蒸れたりかぶれたりするおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-246601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、テーピングの代用とすることを目的として、着用者の運動機能および関節可動域を過剰に制限せずに身体(例えば足首の関節)をサポートでき、かつ、製造が容易でサポーター機能の低下や通気性の低下や血流の低下を抑制できる着衣を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の着衣は、着用者の一部を包むように筒状に形成され、伸縮性を有する生地と、前記生地の外面に設けられ、前記生地の伸長を制限する伸長制限部とを備え、前記伸長制限部は、所定の第1直線方向に延びるように並べて形成された一対の第1および第2パターンと、所定の第2直線方向に延びるように並べて形成された一対の第3および第4パターンとを有し、前記第1および第2パターンのそれぞれが前記第3および第4パターンと交差していることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の着衣は、請求項1に記載の着衣において、前記生地は、前記着用者のアキレス腱を覆う部位を有し、当該部位に、前記伸長制限部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の着衣は、請求項1または2に記載の着衣において、前記生地は、前記着用者の足の甲の関節(具体的には、例えば、MP関節およびリスフラン関節)を覆う部位を有し、当該部位に、前記伸長制限部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の着衣は、請求項1~3のいずれか一項に記載の着衣において、前記生地は、前記着用者の足首の関節(具体的には、例えば、リスフラン関節およびショパール関節)を覆う部位を有し、当該部位に、前記伸長制限部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の着衣は、請求項1~4のいずれか一項に記載の着衣において、前記生地は、前記着用者のふくらはぎを覆う部位を有し、当該部位に、前記伸長制限部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の着衣は、請求項1~5のいずれか一項に記載の着衣において、前記第1および第2パターンならびに前記第3および第4パターンは、弾性ゴムにより形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の着衣は、請求項1~6のいずれか一項に記載の着衣において、前記第1および第2パターンならびに前記第3および第4パターンは、不連続であることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の着衣は、請求項7に記載の着衣において、前記第1および第2パターンには、前記第1直線方向に対して傾斜するように延びた一定の幅を有するスリットが設けられ、前記第3および第4パターンには、前記第2直線方向に対して傾斜するように延びた一定の幅を有するスリットが設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の着衣は、請求項1~8のいずれか一項に記載の着衣において、前記伸長制限部は、前記第1および第2パターンのそれぞれの一端部を接続する第1接続パターンと、前記第1および第2パターンのそれぞれの他端部を接続する第2接続パターンと、前記第3および第4パターンのそれぞれの一端部を接続する第3接続パターンと、前記第3および第4パターンのそれぞれの他端部を接続する第4接続パターンとをさらに有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、着用者の運動機能および関節可動域を過剰に制限せずに身体(例えば足首の関節)をサポートでき、かつ、製造が容易でサポーター機能の低下や通気性の低下や血流の低下を抑制できる着衣を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る着衣である靴下の側面図であって、着用者が靴下を着用した状態を示す図である。
図2】同実施形態に係る靴下の斜視図であって、着用者が靴下を着用した状態を示す図である。
図3】同実施形態に係る靴下の斜視図であって、着用者が靴下を着用した状態を示す図である。
図4】同実施形態に係る靴下が備える伸長制限部の平面図である。
図5】(A)~(D)は、足を構成する骨、靭帯、および、関節を示す人体図である。
図6】変形例に係る着衣である靴下の側面図であって、着用者が靴下を着用した状態を示す図である。
図7】比較例に係る伸長制限部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係る着衣を説明する。図1~3は、本実施形態の着衣である靴下Sを着用者(不図示)が着用した状態を示している。靴下Sは、接骨院、整体院、および、整形外科医院における医療従事者、または、スポーツトレーナーが行うテーピングの代用となる。
【0019】
図1~3に示すように、靴下Sは、伸縮性を有する生地1と、生地1の伸長を制限する伸長制限部2と、生地1の摺動を抑制する摺動抑制部3(図3参照)とを備えている。
【0020】
生地1は、着用者の一部である足を包むように筒状に形成されるとともに、足の指先を覆うように袋状に形成されている。生地1は、例えばパイル編みにより形成されている。生地1は、着用者の身体を覆う部位として、足の指先を覆う部位である爪先部11と、足の裏を覆う部位である足底部12と、足の甲(すなわち足背)の関節を覆う部位である足背部13と、アキレス腱を覆う部位であるアキレス腱部14と、足首の関節を覆う部位である足首関節部15とを有している。
【0021】
伸長制限部2および摺動抑制部3は、生地1の外面に設けられている。本実施形態では、伸長制限部2は、足背部13、アキレス腱部14、および、足首関節部15のそれぞれに設けられ、摺動抑制部3は、足底部12に設けられている。以下、図4を参照して、伸長制限部2について説明する。
【0022】
図4は、足背部13および足首関節部15に設けられた伸長制限部2の態様であって、生地1を平坦にしたときの伸長制限部2の形状を示している。なお、アキレス腱部14に設けられた伸長制限部2の形状は、図4に示す形状を反転させたものである。
【0023】
図4に示すように、伸長制限部2は、生地1に対してラバープリント加工で設けられたシリコンラバーである弾性ゴム21により形成されており、第1直線方向D1に延びるように並べて形成された一対の第1パターン22Aおよび第2パターン22Bと、第2直線方向D2に延びるように並べて形成された一対の第3パターン22Cおよび第4パターン22Dとを有している。第1パターン22Aおよび第2パターン22Bのそれぞれは、第3パターン22Cおよび第4パターン22Dと交差しており、このような構成により、細いX形状が2つ並んだパターンが生地1の外面に形成されている。第1~第4パターン22A~22Dは、複数の弾性ゴム21により形成されることで不連続に構成されている。具体的には、第1~第4パターン22A~22Dには、一定の幅を有するとともに直線状に形成された切れ目であるスリット24が設けられている。第1パターン22Aおよび第2パターン22Bに設けられたスリット24は、第1直線方向D1に対して傾斜するように延び、第3パターン22Cおよび第4パターン22Dに設けられたスリット24は、第2直線方向D2に対して傾斜するように延びている。幅が変化しないスリット24が弾性ゴム21を分断することにより、隣り合う弾性ゴム21の外縁は平行に延びている。
【0024】
また、伸長制限部2は、第1パターン22Aおよび第2パターン22Bのそれぞれの一端部を接続する第1接続パターン23Aと、第1パターン22Aおよび第2パターン22Bのそれぞれの他端部を接続する第2接続パターン23Bと、第3パターン22Cおよび第4パターン22Dのそれぞれの一端部を接続する第3接続パターン23Cと、第3パターン22Cおよび第4パターン22Dのそれぞれの他端部を接続する第4接続パターン23Dとを有している。第1~第4接続パターン23A~23Dは、生地1の軸方向Y(生地1の周方向Xに対して垂直な方向)に延びるように形成されている。第1~第4接続パターン23A~23Dの一部は、第1~第4パターン22A~22Dの少なくとも一部と連続している。また、第1~第4接続パターン23A~23Dは、第1~第4パターン22A~22Dと同様に不連続に構成されており、第1~第4接続パターン23A~23Dには、生地1の軸方向Yに対して傾斜するように延びたスリット24が設けられている。
【0025】
また、第1直線方向D1と第2直線方向D2とは、生地1の軸方向Yを対象軸として、線対称となるように構成されている。また、第1直線方向D1と第2直線方向D2とが鋭角θを成し、この鋭角θの二等分線が、生地1の軸方向Yに延びるように構成されている。こうして、生地1の軸方向Yにおける伸長制限部2の寸法は、生地1の周方向Xの伸長制限部2の寸法に比べて大きくなるように構成されている。
【0026】
本実施形態では、伸長制限部2が設けられる部位に応じて、伸長制限部2の大きさが異なっている。具体的には、足首関節部15に設けられた伸長制限部2は、足背部13およびアキレス腱部14の各々に設けられた伸長制限部2に比べて、弾性ゴム21の面積(すなわち第1~第4パターン22A~22Dと第1~第4接続パターン23A~23Dの合計面積)が大きくなるように構成されている。
【0027】
図3に示す摺動抑制部3は、伸長制限部2と同じく、生地1に対してラバープリント加工で設けられた弾性ゴムにより形成されている。摺動抑制部3は、靴下Sおよび靴下Sを履いた足が靴(図示略)の内部で滑ることを抑制する。すなわち、摺動抑制部3は、靴内での足裏のグリップ力を高める。
【0028】
図5(A)~(D)は、足背部13および足首関節部15に設けられた伸長制限部2の作用効果に関連する骨、靭帯、および、関節を示す人体図である。図5は、以下に記載する伸長制限部2の作用効果の説明において参照する。
【0029】
本実施形態によれば以下の効果が得られる。
(1)生地1の外面に設けられた伸長制限部2は、一対の第1パターン22Aおよび第2パターン22Bと、一対の第3パターン22Cおよび第4パターン22Dとを有しており、第1パターン22Aおよび第2パターン22Bのそれぞれが第3パターン22Cおよび第4パターン22Dと交差している。この構成によれば、生地1の表面に第1~第4パターン22A~22Dを設けるだけで生地1の伸長が制限されるため、生地1の編み方や素材を特別なものとすることなく、着用者の身体をサポートできる靴下Sを容易に製造できる。また、第1パターン22Aと第2パターン22Bとの間隔、および、第3パターン22Cと第4パターン22Dとの間隔を大きくすることで、生地1の伸長の制限を小さくすることができ、第1パターン22Aと第2パターン22Bとの間隔、および、第3パターン22Cと第4パターン22Dとの間隔を小さくすることで、生地1の伸長の制限を大きくすることができる。このため、第1パターン22Aと第2パターン22Bとの間隔、および、第3パターン22Cと第4パターン22Dとの間隔を調整することで、着用者の運動機能および関節可動域を過剰に制限せずに身体をサポートでき、図7に示す伸長制限部102を生地1に設ける構成に比べて、サポーター機能の低下や血流の低下を抑制できる。また、第1パターン22Aと第2パターン22Bとの間、および、第3パターン22Cと第4パターン22Dとの間で、生地1の通気性が低下しないため、生地1に伸長制限部2を設けながらも、通気性の低下を抑制できるため、蒸れたりかぶれたりすることを抑制できる。
【0030】
(2)アキレス腱部14に伸長制限部2が設けられているため、靴下Sを履くだけで伸長制限部2をアキレス腱へのテーピングの代用とすることができ、アキレス腱、腓腹筋、および、ヒラメ筋等に係る運動機能を過剰に制限せずに、アキレス腱周辺の部位をサポートできる。
【0031】
(3)足背部13に伸長制限部2が設けられているため、靴下Sを履くだけで伸長制限部2を足の甲へのテーピングの代用とすることができ、図5(A)に示す中足趾節関節(MP関節)、中足骨群、および、リスフラン関節等に係る運動機能および関節可動域を過剰に制限せずに、足の甲周辺の部位をサポートできる。したがって、伸長制限部2を開張足の予防または治療に利用できる。
【0032】
(4)足首関節部15に伸長制限部2が設けられているため、靴下Sを履くだけで足首へのテーピングの代用とすることができ、図5(A)に示すリスフラン関節、楔状骨、立方骨、舟状骨、ショパール関節、および、距骨等に係る運動機能および関節可動域を過剰に制限せずに、足首周辺の部位をサポートできる。
【0033】
(5)足首関節部15とアキレス腱部14とに伸長制限部2が設けられているため、靴下Sを履くだけで伸長制限部2をくるぶしへのテーピングの代用とすることができ、これらの伸長制限部2の間に位置するくるぶし付近の運動機能、すなわち図5(B)~(D)に示す内側靭帯(三角靭帯)および外側靭帯(踵腓靱帯、前距腓靱帯、後距腓靱帯)等に係る運動機能を過剰に制限せずに、腓側および脛側の双方のくるぶし周辺の部位をサポートできる。
【0034】
(6)第1パターン22Aおよび第2パターン22B、ならびに、第3パターン22Cおよび第4パターン22Dは、弾性ゴム21により形成されているため、ラバープリント加工により生地1に伸長制限部2を設けることができるため、靴下Sを容易に製造でき、製造コストを低減できる。
【0035】
(7)生地1に比べて摩擦抵抗の大きい弾性ゴム21により、靴下Sおよび靴下Sを履いた足が靴(図示略)の内部で滑ることを抑制できるため、着用者の運動機能を向上させてケガのリスクを軽減できる。特に、本実施形態では、足背部13に設けられた伸長制限部2により、靴内での足の甲のグリップ力を高めることができ、アキレス腱部14に設けられた伸長制限部2により、靴内での踵のグリップ力を高めることができ、足首関節部15に設けられた伸長制限部2により、靴内での足首正面のグリップ力を高めることができる。したがって、運動時に靴内で靴下Sが滑ることにより発生するパワーロスを抑制し、俊敏性を向上させ、着用者の疲労軽減を図ることができる。
【0036】
(8)足底部12に設けられた摺動抑制部3により、図1中で示すA1方向における靴下Sのグリップ力が向上し、足背部13および足首関節部15に設けられた伸長制限部2により、図1で示すA2方向における靴下Sのグリップ力が向上し、アキレス腱部14に設けられた伸長制限部2により、図1で示すA3方向における靴下Sのグリップ力が向上する。したがって、三方向における靴下Sのグリップ力が向上するため、靴内で靴下Sが滑ることを効果的に抑制でき、俊敏性を向上させ、着用者の疲労軽減を図ることができる。
【0037】
(9)第1パターン22Aおよび第2パターン22B、ならびに、第3パターン22Cおよび第4パターン22Dは、不連続であるため、第1~第4パターン22A~22Dが連続している構成に比べて、生地1の伸縮性の低下を抑制でき、着用者の運動機能を向上させることができる。
【0038】
(10)第1パターン22Aおよび第2パターン22Bには、第1直線方向D1に対して傾斜するように延びたスリット24が設けられ、第3パターン22Cおよび第4パターン22Dには、第2直線方向D2に対して傾斜するように延びたスリット24が設けられている。この構成によれば、スリット24の幅を大きくすることで、生地1の伸長の制限を小さくすることができ、スリット24の幅を小さくすることで、生地1の伸長の制限を大きくすることができる。このため、スリット24の幅を調整すること、すなわち第1~第4パターン22A~22Dのデザインや構造を緻密に計算・設計することで、着用者の運動機能をより適切に制限しながら身体をサポートできる。したがって、例えば、着用者が行うスポーツに応じた所望の伸縮性を有する靴下Sが得られる。
【0039】
(11)伸長制限部2は、第1接続パターン23Aと、第2接続パターン23Bと、第3接続パターン23Cと、第4接続パターン23Dとをさらに有している。この構成によれば、第1~第4パターン22A~22Dの端部で生地1の伸長を効果的に制限でき、第1~第4接続パターン23A~23Dを有していない構成に比べて、生地1の軸方向Yにおける生地1の伸長の制限を大きくすることができる。
【0040】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明の構成は、上記の実施例に限定されるものではない。すなわち、本発明は、例えば、以下のように変更して実施することもでき、以下の変更を組み合わせて実施することもできる。
【0041】
図6に示すように、本変形例の靴下Sは、ハイソックスであって、生地1は、着用者の身体を覆う部位として、ふくらはぎを覆う部位であるふくらはぎ部16をさらに有しており、ふくらはぎ部16には、伸長制限部2が設けられている。ふくらはぎ部16に設けられた伸長制限部2は、足背部13、アキレス腱部14、足首関節部15の各々に設けられた伸長制限部2に比べて、弾性ゴム21の表面積が大きくなるように構成されている。
【0042】
本変形例によれば以下の効果がさらに得られる。
(12)ふくらはぎ部16に伸長制限部2が設けられているため、靴下Sを履くだけで伸長制限部2をふくらはぎへのテーピングの代用とすることができ、腓腹筋およびヒラメ筋に係る運動機能を過剰に制限せずに、ふくらはぎ周辺の部位をサポートできる。
【0043】
(13)生地1に比べて摩擦抵抗の大きい弾性ゴム21により、靴下Sの上に履かれたカーフソックス(図示略)が滑り落ちることを抑制できる。すなわち、ふくらはぎ部16に設けられた伸長制限部2により、カーフソックスのグリップ力を高めることができる。
【0044】
・生地1の少なくとも一部を編み方や素材を特別なものとしてもよい。例えば、緩衝性を高めるために、爪先部11と踵を覆う部位である踵部(すなわち足底部12の後端部)とにおいてパイル編みにより生地1が形成されていてもよい。また、例えば、足裏のアーチをサポートするために、足底部12の編み方を特別なものとしてもよい。
【0045】
・伸長制限部2を形成する弾性ゴム21の形状を適宜変更してもよい。すなわち、スリット24の形状や配置を適宜変更してもよい。例えば、第1パターン22Aおよび第2パターン22Bに、第1直線方向D1に対して垂直に延びるスリットが設けられていてもよく、第3パターン22Cおよび第4パターン22Dに、第2直線方向D2に対して垂直に延びるスリットが設けられていてもよい。また、例えば、靴下Sが靴の内部で滑ることを抑制するために、弾性ゴム21とは異なる形状を有する他の弾性ゴムを足底部12に設けてもよい。
【0046】
・本発明を靴下S以外の着衣(例えば、下肢の少なくとも一部を包むように形成された下肢サポーター、または、上肢の少なくとも一部を包むように形成された上肢サポーター)に採用してもよい。
【0047】
[摩擦係数の測定試験]
ASTM D 1894を準用して、伸長制限部2が設けられた実施例に係る靴下の摩擦係数、および、伸長制限部2が設けられていない比較例に係る靴下の摩擦係数を測定する試験を行った。具体的には、面積が40cm(63mm×63mm)で重量が200g(1,961N)の滑り片に、伸長制限部2の中央が重なるように実施例に係る靴下の一部(試料)を貼り付け、当該試料をステンレス板と接触させた状態で滑り片を、150mm/分の移動速度で130mm移動させた際の静摩擦係数および動摩擦係数を測定した。また、この測定と同様にして、伸長制限部2が設けられていない比較例に係る靴下の一部(試料)を滑り片に貼り付けて静摩擦係数および動摩擦係数を測定した。
【0048】
[衣服圧の測定試験]
(株)エイエムアイ・テクノ製の接触圧測定器を用いて、伸長制限部2が設けられた実施例に係る靴下を履いた際の衣服圧、および、伸長制限部2が設けられていない比較例に係る靴下を履いた際の衣服圧を測定する試験を行った。具体的には、伸長制限部2が設けられた実施例に係る靴下を外径89mmのポリ塩化ビニール製パイプに被せるとともに、靴下とパイプとの間に直径が20mmのエアパック(受圧センサ)を設け、当該エアパックの接触圧を衣服圧として測定した。また、この測定と同様にして、伸長制限部2が設けられていない比較例に係る靴下をパイプに被せて衣服圧を測定した。
【0049】
[引張強さの測定試験]
JIS L 1096 B法(グラブ法)を準用して、伸長制限部2が設けられた実施例に係る靴下の引張強さ、および、伸長制限部2が設けられていない比較例に係る靴下の引張強さを測定する試験を行った。具体的には、伸長制限部2が設けられた実施例に係る靴下のレッグ部分(具体的には、例えばアキレス腱部14またはふくらはぎ部16のうち筒状に形成されている部分)を、生地の周方向(よこ方向)に6cmの間隔をあけて大きさが5cm×5cmの治具で把持し、当該よこ方向に10cm/分の引張速度でレッグ部分が破断するまで引っ張って、破断直前の引張荷重を引張強さとして測定した。また、この測定と同様にして、伸長制限部2が設けられていない比較例に係る靴下のレッグ部分が破断するまで引っ張って引張強さを測定した。
【0050】
上述の試験による摩擦係数の測定結果、衣服圧の測定結果、および、引張強さの測定結果を下記の表1に示す。
【表1】
【0051】
表1に示すように、実施例に係る靴下の摩擦係数は、比較例に比べて大きいため、弾性ゴム21により形成された伸長制限部2が、靴内部での靴下の滑り止めとして機能することが判る。また、表1に示すように、実施例に係る靴下を履いた際の衣服圧は、比較例に比べて大きく、実施例に係る靴下の引張強さは、比較例に比べて大きいため、伸長制限部2が設けられた実施例に係る靴下が、着用者の運動機能を制限する足(脚)のサポーターとして機能することが判る。
【符号の説明】
【0052】
1 生地
2 伸長制限部
3 摺動抑制部
11 爪先部
12 足底部
13 足背部
14 アキレス腱部
15 足首関節部
16 ふくらはぎ部
21 弾性ゴム
22A 第1パターン
22B 第2パターン
22C 第3パターン
22D 第4パターン
23A 第1接続パターン
23B 第2接続パターン
23C 第3接続パターン
23D 第4接続パターン
24 スリット
D1 第1直線方向
D2 第2直線方向
S 靴下(着衣)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7