(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018900
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ステータ、モータ及びファン
(51)【国際特許分類】
H02K 3/46 20060101AFI20230202BHJP
H02K 11/33 20160101ALI20230202BHJP
【FI】
H02K3/46 Z
H02K11/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123264
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】日本電産サーボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002723
【氏名又は名称】高法弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将之
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 史彦
【テーマコード(参考)】
5H604
5H611
【Fターム(参考)】
5H604BB01
5H604CC01
5H604DB01
5H604PB04
5H604PE01
5H611BB01
5H611TT01
(57)【要約】
【課題】防水性を改善したステータを提供することである。
【解決手段】アウターロータモータのステータであって、ステータコアと、前記ステータコアの少なくとも一部を覆い軸方向一方側に延びる筒部を有する下インシュレータと、前記下インシュレータを介して前記ステータコアに巻き回された巻線と、前記下インシュレータの軸方向一方側に位置し、前記巻線に通電する回路を実装する基板と、前記基板及び前記巻線と前記下インシュレータの少なくとも一部を覆う樹脂部材と、を有し、前記筒部の内側面は、前記ステータコアと軸方向に対面する段差部を有し、前記樹脂部材は、少なくとも前記ステータコアと前記段差部との間を埋め前記ステータコアと密着する端部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターロータモータのステータであって、
ステータコアと、
前記ステータコアの少なくとも一部を覆い軸方向一方側に延びる筒部を有する下インシュレータと、
前記下インシュレータを介して前記ステータコアに巻き回された巻線と、
前記下インシュレータの軸方向一方側に位置し、前記巻線に通電する回路を実装する基板と、
前記基板及び前記巻線と前記下インシュレータの少なくとも一部を覆う樹脂部材と、
を有し、
前記筒部の内側面は、前記ステータコアと軸方向に対面する段差部を有し、
前記樹脂部材は、少なくとも前記ステータコアと前記段差部との間を埋め前記ステータコアと密着する端部を有する、
ステータ。
【請求項2】
前記ステータコアから前記段差部までの軸方向長さは、前記端部の径方向厚さの2~3倍である、
請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記段差部の径方向長さは、前記端部の径方向厚さの10~30%である、
請求項1又は2に記載のステータ。
【請求項4】
前記段差部は、前記筒部の内側面の周方向に沿って配置される、
請求項1から3のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項5】
前記段差部は、前記筒部の内側面の周方向に沿って複数配置される、
請求項4に記載のステータ。
【請求項6】
前記下インシュレータは、前記筒部の外側面に、径方向外側に突出し軸方向に延びる突起部を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項7】
前記下インシュレータは、前記筒部を径方向に連通する貫通孔を有し、
前記樹脂部材は、前記貫通孔を埋める、
請求項1から6のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のステータと、
前記ステータと径方向に対向するロータと、
を有する、
モータ。
【請求項9】
請求項8に記載のモータと、
前記ロータと共に回転するインペラと、
を有する、
ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ、モータ及びファンに関する。
【背景技術】
【0002】
OA機器などの冷却に使用される軸流ファン等のモータ部分は、使用環境によっては防水性を求められる。従来、特許文献1に記載のように、モータのステータ部分の巻線や、モータの駆動回路等が実装された基板を樹脂モールドすることが知られ、この構成によれば基板の防水性を確保することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、モータのステータは、環境温度や、巻線や回路に電流が流れ発熱することにより温度が変化する。その温度変化により樹脂モールドは膨張、収縮する。樹脂モールドが膨張、収縮することにより、密着していたインシュレータから剥がれてしまい、防水効果が低下するおそれがある。
【0005】
このように、従来、ステータの防水性に改善の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、防水性を改善したステータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の例示的な第1発明は、アウターロータモータのステータであって、ステータコアと、前記ステータコアの少なくとも一部を覆い軸方向一方側に延びる筒部を有する下インシュレータと、前記下インシュレータを介して前記ステータコアに巻き回された巻線と、前記下インシュレータの軸方向一方側に位置し、前記巻線に通電する回路を実装する基板と、前記基板及び前記巻線と前記下インシュレータの少なくとも一部を覆う樹脂部材と、を有し、前記筒部の内側面は、前記ステータコアと軸方向に対面する段差部を有し、前記樹脂部材は、少なくとも前記ステータコアと前記段差部との間を埋め前記ステータコアと密着する端部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本願の例示的な第1発明によれば、防水性を改善したステータを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るステータを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示したステータ10をZ軸と直交する面で切断して示す斜視断面図である。
【
図3】
図1に示したステータ10をX軸と直交する面で切断して示す側断面図である。
【
図5】
図1に示したステータ10を、Z軸と平行で
図4のA-A線とを含む面で切断して示す斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るステータについて説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。
【0011】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、
図1に示す中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。Y軸方向は、中心軸Jに対する径方向のうち
図3の左右方向とする。X軸方向は、Y軸方向とZ軸方向の両方と直交する方向とする。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のいずれにおいても、図中に示す矢印が指す側を+側、反対側を-側とする。
【0012】
また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側)を「フロント側」又は「一方側」と呼び、Z軸方向の負の側(-Z側)を「リア側」又は「他方側」と呼ぶ。なお、リア側(他方側)及びフロント側(一方側)とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。径方向において中心軸Jに近づく側を「径方向内側」と呼び、中心軸Jから遠ざかる側を「径方向外側」と呼ぶ。
【0013】
なお、本明細書において、「軸方向に延びる」とは、厳密に軸方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、「径方向に延びる」とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また「平行」とは、厳密に平行な場合に加えて、互いに成す角が45°未満の範囲で傾いた場合も含む。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係るステータを示す斜視図である。
ステータ10は、アウターロータモータのステータである。ステータ10の径方向外側には、アウターロータモータのロータが配置される。アウターロータモータのシャフトは、中心軸Jに沿って配置される。ロータ及びシャフトは、既知の構成を用いることが出来るため、図示及び説明を省略する。また、ステータ10を備えるアウターロータモータは、ファンに用いることが出来る。このファンは、ステータ10を備えるアウターロータモータと、アウターロータモータのロータと共に回転するインペラと、を有する。
【0015】
ステータ10は、ステータコア11と、樹脂部材14を有する。ステータコア11は、軸方向一方側及び軸方向他方側から樹脂部材14で覆われる。ステータコア11は、径方向外側に外側面11aを、径方向内側に内側面11bを有する。外側面11a、内側面11bは、径方向に露出する。
【0016】
樹脂部材14は、ステータコア11よりも軸方向他方側に位置する他方側部14aを有する。樹脂部材14は、ステータコア11と軸方向位置が等しい中間部14bを有する。樹脂部材14は、ステータコア11よりも軸方向一方側に位置する一方側部14cを有する。樹脂部材14は、一方側部14cよりも軸方向一方側に位置し、基板16(
図3参照)を覆う基板部14dを有する。ステータ10は、基板16に電力供給するリード線15を有する。他方側部14aは、中間部14bと繋がる。中間部14bは、一方側部14cと繋がる。一方側部14cは、基板部14dと繋がる。
【0017】
図2は、
図1に示したステータ10を軸方向と直交する面で切断して示す斜視断面図である。
図2は、ステータコア11の位置で切断して示す図である。
図3は、
図1に示したステータ10をX軸と直交する面で切断して示す側断面図である。
図3は、中心軸Jを通る位置で切断して示す図である。
【0018】
ステータ10は、上インシュレータ12及び下インシュレータ13を有する。ステータ10は、巻線11fを有する。樹脂部材14は、基板16、及び巻線11fと上インシュレータ12及び下インシュレータ13の少なくとも一部を覆う。上インシュレータ12は、ステータコア11の軸方向他方側の少なくとも一部を覆う。下インシュレータ13は、ステータコア11の軸方向一方側の少なくとも一部を覆う。巻線11fは、上インシュレータ12及び下インシュレータ13を介してステータコア11に巻き回される。上インシュレータ12の軸方向他方側の端面は、他方側部14aの端部14aaに覆われている。
【0019】
上インシュレータ12は、筒部12aを有する。筒部12aは、軸方向に延びる。アウターロータモータのシャフトは、筒部12aの筒孔を通る。下インシュレータ13は、筒部13j(
図4参照)、筒部13e及び筒部13fを有する。筒部13j、筒部13e及び筒部13fは、軸方向に延びる。
【0020】
下インシュレータ13の筒部13jは、筒部13eよりも軸方向他方側に位置する。また、筒部13eは、筒部13fよりも軸方向他方側に位置する。筒部13eの内側面は、筒部13fの内側面よりも径方向外側にある。段差部13dは、筒部13eの内側面と筒部13fの内側面との差によって生じる段差であって、その段差面は軸方向他方側に向く。段差部13dは、ステータコア11と軸方向に対面する。樹脂部材14は、少なくともステータコア11と段差部13dとの間を埋める。樹脂部材14の一方側部14cは、下インシュレータ13の径方向内側を埋める内側面14eを有する。内側面14eは、軸方向一方側で基部14dと繋がる。内側面14eの軸方向他方側の端部は、ステータコア11の軸方向一方側の面に密着する。アウターロータモータのシャフトは、内側面14eの筒孔を通る。
【0021】
スタータコア11は、内側面11bを有する内径部11cと、内径部11cから径方向外側に延びる複数のティース11dと、を有する。ティース11dは、径方向外側で周方向に延びる外径部11eを有する。外側面11aは、外径部11eの径方向外側の側面である。複数のティース11dの少なくとも一部は、上インシュレータ12及び下インシュレータ13に覆われる。あるティース11dと、そのティース11dに隣接するティース11dとの間は、スロット部13aである。巻線11fは、上インシュレータ12及び下インシュレータ13に覆われた複数のティース11dに巻き回されることで、スロット部13aに配置される。
【0022】
ステータ10は、基板16を有する。基板16は、部品の実装面が軸方向と直交する方向に拡がる円環形状である。基板16は、スタータコア11の軸方向一方側に位置する。基板16は、巻線11fに通電する回路を実装する。基板16の径方向内側端は、下インシュレータ13の筒部13fの径方向外側に嵌まる。ステータ10は、ピン17を有する。下インシュレータ13は、ピン17が嵌まる孔13gを有する。ピン17が基板16は、ピン17が嵌まる孔を有する。
【0023】
図4は、下インシュレータ13の斜視図である。
下インシュレータ13は、筒部13eの軸方向他方側に巻線部13jを有する。巻線部13jの軸方向位置は、ステータ11の軸方向位置と少なくとも一部が一致する。
【0024】
下インシュレータ13は、巻線部13jの外側面から径方向外側に突出し、軸方向に延びる突起部13cを有する。突起部13cは、周方向において、スロット部13aに位置する。突起部13cは、周方向に複数配置される。本実施例では、4か所のスロット部13aのそれぞれに対し、4個の突起部13cを配置する。
【0025】
突起部13cの径方向内側は、貫通孔13hを形成している。貫通孔13hは、筒部13jの内側面から径方向外側に凹んで軸方向に延び、軸方向一方側において筒部13eを貫通する。貫通孔13hは、周方向において、スロット部13aに位置する。貫通孔13hは、巻線部13j及び筒部13eの径方向内側と径方向外側を連通する。
【0026】
なお、段差部13dは、周方向全周に亘って連続するものではないが、本発明はこれに限られるものではなく、段差部13dは、周方向全周に亘って連続するものであってもよい。
【0027】
本実施例において、ステータコア11から段差部13dまでの軸方向長さは、ステータコア11から段差部13dまでの間の内側部14eの内側面から筒部13eまでの厚さの2~3倍である。
【0028】
また本実施例において、段差部13dの径方向長さは、段差部13dの軸方向位置での内側部14eの径方向厚さの10~30%である。
【0029】
図5は、
図1に示したステータ10を、
図4のA-A面で切断して示す斜視断面図である。
図4のA-A面は、軸方向と平行であって突起部13cを通る面である。
図5を参照してわかるように、突起部13cの径方向内側の貫通孔13hは、樹脂部材14で埋められる。
【0030】
<ステータ10、モータ及びファンの作用・効果>
次に、ステータ10、モータ及びファンの作用・効果について説明する。
【0031】
上述の実施形態に係る発明においては、アウターロータモータのステータであって、ステータコアと、前記ステータコアの少なくとも一部を覆い軸方向一方側に延びる筒部を有する下インシュレータと、前記下インシュレータを介して前記ステータコアに巻き回された巻線と、前記下インシュレータの軸方向一方側に位置し、前記巻線に通電する回路を実装する基板と、前記基板及び前記巻線と前記下インシュレータの少なくとも一部を覆う樹脂部材と、を有し、前記筒部の内側面は、前記ステータコアと軸方向に対面する段差部を有し、前記樹脂部材は、少なくとも前記ステータコアと前記段差部との間を埋め前記ステータコアと密着する端部を有する。
このため、樹脂部材が熱変形しても、段差部により下インシュレータと樹脂部材、樹脂部材とステータコアとの密着性を確保することが出来、端部からの水や埃の侵入を抑制する事で基板の防水性を高めることが出来る。
【0032】
また、前記ステータコアから前記段差部までの軸方向長さは、前記端部の径方向厚さの2~3倍である。
このため、樹脂部材とステータコアとの密着性を確保することが出来、端部からの水や埃の侵入を抑制する事で基板の防水性を高めることが出来る。
【0033】
また、前記段差部の径方向長さは、前記端部の径方向厚さの10~30%である。
このため、樹脂部材とステータコアとの密着性を確保することが出来、端部からの水や埃の侵入を抑制する事で基板の防水性を高めることが出来る。
【0034】
また、前記段差部は、前記筒部の内側面の周方向に沿って配置される。
このため、段差部によって樹脂部材は軸方向に固定され防水性を高めることが出来る。
【0035】
また、前記段差部は、前記筒部の内側面の周方向に沿って複数配置される。
このため、複数の段差部によって樹脂部材は軸方向に固定され防水性を高めることが出来る。
【0036】
また、前記下インシュレータは、前記筒部の外側面に、径方向外側に突出し軸方向に延びる突起部を有する。
このため、突起部によりスロット部の強度を高めることが出来る。またスロット部には多くの樹脂部材が入ることで、充填時に下インシュレータが変形する虞があるが、これを抑制することが出来る。
【0037】
また、前記下インシュレータは、前記筒部を径方向に連通する貫通孔を有し、前記樹脂部材は、前記貫通孔を埋める。
このため、筒部の内外で樹脂部材が繋がることが出来る。筒部の内外で樹脂部材が繋がることで、樹脂部材が下インシュレータ、ステータコアから剥がれにくく、防水性をより高めることが出来る。また、突起部13c及び貫通孔13hはリブとして作用し巻線部13jの変形を抑制することができる。
【0038】
また、モータであって、前記ステータと、前記ステータと径方向に対向するロータと、を有する。
このため、モータにおいて、基板の防水性を高めることが出来る。
【0039】
また、ファンであって、前記モータと、前記ロータと共に回転するインペラと、を有する。
このため、ファンにおいて、基板の防水性を高めることが出来る。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
10 ステータ
11 ステータコア
11f 巻線
12 上インシュレータ
13 下インシュレータ
13d 段差部
14 樹脂部材
16 基板