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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018958
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】対象物良否判定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123361
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】504174434
【氏名又は名称】レボックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】羽田 圭司
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA04
2G051AB02
2G051BA02
2G051BB17
2G051CA04
2G051CA07
2G051CB03
2G051EA11
2G051EA12
2G051EB01
2G051EC01
2G051ED01
2G051ED12
2G051ED15
2G051ED21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易な構成で的確にかつ全体的に、農作物などの対象物の良否を判定できる対象物等級判定システムを提供する。
【解決手段】対象物が第一の面162と第二の面164とを有し透光性を有する保持部160と、保持部を挟んで配置され、上側照明部112と、下側照明部114とを有する照明部と、上側カメラ122と、下側カメラ124とを備え、上側カメラによる第一の撮像結果と下側カメラによる第二の撮像結果との少なくとも一方に基づいて対象物の状態を取得する状態取得部と、対象物の状態に基づいて、対象物の良否を判定する良否判定部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体形状を有する少なくとも一つの対象物を保持するための保持部であって、透光性を有し、第一の面と前記第一の面の反対側の第二の面とを有し、前記対象物が前記第一の面と前記第二の面とのうちの少なくとも一方に配置される、保持部と、
前記保持部を挟んで配置され、前記第一の面を照明する光を発する第一の発光面と、前記第二の面を照明する光を発する第二の発光面とを有する照明部と、
保持部を挟んで配置され、前記第一の面を撮像する第一の撮像面と、前記第二の面を撮像する第二の撮像面とを有する撮像部と、
前記第一の撮像面による第一の撮像結果から得られる前記対象物の第一の配置状態と、 前記第二の撮像面による第二の撮像結果から得られる前記対象物の第二の配置状態とに基づいて、前記第一の撮像結果と前記第二の撮像結果との少なくとも一方を調整する調整部と、
調整後の前記第一の撮像結果と調整後の前記第二の撮像結果との少なくとも一方に基づいて前記対象物の状態を取得する状態取得部と、
前記対象物の状態に基づいて、前記対象物の良否を判定する良否判定部と、を備える対象物良否判定装置。
【請求項2】
前記対象物の種類に応じて、前記第一の発光面から発する光の明るさと、前記第二の発光面から発する光の明るさと、を決定する照度決定部を、さらに備える、請求項1に記載の対象物良否判定装置。
【請求項3】
前記照度決定部は、
前記対象物の輪郭を定めるための明るさと、
前記対象物の状態を取得するための明るさと、を決定する、請求項2に記載の対象物良否判定装置。
【請求項4】
前記第一の配置状態は、前記第一の面において、第一の対象物を基準にして、前記第一の対象物から離隔した第二の対象物までの距離と方向であり、
前記第二の配置状態は、前記第二の面において、前記第一の対象物を基準にして、前記第二の対象物までの距離と方向であり、
前記調整部は、前記第一の面における距離及び方向と、前記第二の面における距離及び方向と、を揃えるように、前記第一の撮像結果と前記第二の撮像結果との少なくとも一方を調整する、請求項1に記載の対象物良否判定装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
農作物などの対象物の良否を判定するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、穀物などの農作物の良否を判定するための装置が知られている。例えば、2つの波長の光を穀物に照射して判定するものがある(特許文献1)。また、光の反射を利用するものがある(特許文献2)。分光分析装置を用いて良否を判定するものもある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-200089号公報
【特許文献2】特開2008-175760号公報
【特許文献3】特開平10-078379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の装置は、光学系が複雑になったり、移動している農作物を個別に検査するもので精度を高めるのが困難になったりした。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成で的確にかつ全体的に、農作物などの対象物の良否を判定できる対象物良否判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による対象物良否判定装置の特徴は、
立体形状を有する少なくとも一つの対象物を保持するための保持部であって、前記対象物が少なくとも一方に配置される第一の面と前記第一の面の反対側の第二の面とを有し透光性を有する保持部と、
前記保持部を挟んで配置され、前記第一の面を照明する光を発する第一の照明部と、前記第二の面を照明する光を発する第二の照明部とを有する照明部と、
保持部を挟んで配置され、前記第一の面を撮像する第一の撮像部と、前記第二の面を撮像する第二の撮像部とを有する撮像部と、
前記第一の撮像部による第一の撮像結果から得られる前記対象物の第一の配置状態と、 前記第二の撮像部による第二の撮像結果から得られる前記対象物の第二の配置状態とに基づいて、前記第一の撮像結果と前記第二の撮像結果との少なくとも一方を調整する調整部と、
調整後の前記第一の撮像結果と調整後の前記第二の撮像結果との少なくとも一方に基づいて前記対象物の状態を取得する状態取得部と、
前記対象物の状態に基づいて、前記対象物の良否を判定する良否判定部と、を備えることである。
【発明の効果】
【0007】
簡易な構成で的確にかつ全体的に対象物の良否を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態による豆類等級判定システム10の構成を示す斜視図である。
図2】第1の実施の形態による豆類等級判定システム10の機能を示す機能ブロック図である。
図3】豆類良否判定処理を示すフローチャートである。
図4】豆類良否判定処理を示すフローチャートである。
図5】上側カメラ122で撮像した上面輪郭用画像の例を示す図である。
図6】下側カメラ124で撮像した下面輪郭用画像の例を示す図である。
図7】隣り合う豆類が接している状態を示す図(a)と、分割処理を施した状態を示す図(b)である。
図8】上面の豆類画像領域を示す図(a-1)と、下面の豆類画像領域を示す図(a-2)と、上下面一致・不一致対応情報を示す表(b)とである。
図9】上面の豆類の良品・不良品と、下面の豆類の良品・不良品と、両面の判定結果との例を示す表である。
図10】第2の実施の形態による光学系100-2の機能を示す機能ブロック図である。
図11】第3の実施の形態による光学系100-3の機能を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<<<<実施の形態の概要>>>>
穀物などの農作物は、立体的な形状を有する。農作物の表面の情報を得るためには、少なくとも一の方向から情報を得る必要がある。一の方向のみから取得した情報であっても、ある程度は、農作物の良否を判定することは可能である。一の方向のみで判定するので、迅速に判定でき、多数の農作物を対象にしても、判定の効率を高めることができる。
【0010】
しかしながら、一の方向とは異なる方向の部位に、不良の原因が発生していた場合には、農作物の良否を的確に判断することは困難である、良否判定の信頼性の低下を招かざるを得ない。
【0011】
このような事情から、複数の方向からの情報を取得することが所望されている。一方、多数の農作物について判定する場合でも、農作物ごとに良否を決定する必要がある。このため、複数の農作物の表面の情報を、複数の方向から取得する場合には、各方向の情報を農作物ごとに対応づける必要が生ずる。例えば、上方向から撮像した情報と、下方向から撮像した情報とを、豆類ごとに対応付けて、豆類ごとに判定する必要がある。すなわち、複数の農作物の表面の情報を、複数の方向から取得した場合であっても、まず、複数の農作物の各々を的確に識別したうえで、識別した農作物の各々に、複数の方向から情報を対応づけ、農作物ごとに良否を判断できるシステムなどが望まれている。
【0012】
<<第1の実施の態様>>
第1の実施の態様によれば、
立体形状を有する少なくとも一つの対象物(例えば、後述する豆類など)を保持するための保持部であって、透光性を有し、第一の面(例えば、後述する載置面162など)と前記第一の面の反対側の第二の面(例えば、後述する非載置面164など)とを有し、前記対象物が前記第一の面と前記第二の面とのうちの少なくとも一方に配置される、保持部(例えば、後述するトレイ160など)と、
前記保持部を挟んで配置され、前記第一の面を照明する光を発する第一の発光面(例えば、後述する上側照明112や上側発光部134Uなど)と、前記第二の面を照明する光を発する第二の発光面(例えば、後述する下側照明114や下側発光部134Bなど)とを有する照明部(例えば、後述する照明110や照明110-2など)と、
保持部を挟んで配置され、前記第一の面を撮像する第一の撮像面(例えば、後述する上側カメラ122や上側撮像面144Uなど)と、前記第二の面を撮像する第二の撮像面(例えば、後述する下側カメラ124や下側撮像面144Bなど)とを有する撮像部(例えば、後述するカメラ120やカメラ120-3など)と、
前記第一の撮像面による第一の撮像結果(例えば、後述する上面検査用画像など)から得られる前記対象物の第一の配置状態(例えば、後述する上面検査用画像による豆類の配置など)と、前記第二の撮像面による第二の撮像結果(例えば、後述する下面検査用画像など)から得られる前記対象物の第二の配置状態(例えば、後述する下面検査用画像による豆類の配置など)とに基づいて、前記第一の撮像結果と前記第二の撮像結果との少なくとも一方を調整する調整部(例えば、後述する制御部200やステップS329及びS331の処理など)と、
調整後の前記第一の撮像結果と調整後の前記第二の撮像結果との少なくとも一方に基づいて前記対象物の状態を取得する状態取得部(例えば、後述する制御部200やステップS419及びS421の処理など)と、
前記対象物の状態に基づいて、前記対象物の良否を判定する良否判定部(例えば、後述する判定処理部250やステップS425、S427及びS429の処理など)と、を備える対象物良否判定装置が提供される。
【0013】
対象物良否判定装置は、保持部と、照明部と、撮像部と、調整部と、状態取得部と、良否判定部とを有する。
【0014】
<保持部>
保持部は、少なくとも一つの対象物を保持する。保持部に保持される対象物は、1個でも複数でもよい。対象物は、立体形状を有する。保持部は、透光性を有する。保持部は、透光性によって、対象物の像を透過させることができる。保持部は、第一の面と第二の面とを有する。第二の面は、第一の面の反対側の面である。対象物は、第一の面と第二の面とのうちの少なくとも一方に配置される。
【0015】
<照明部>
照明部は、保持部を挟んで配置される。照明部は、第一の発光面と第二の発光面とを有する。第一の発光面は、第一の面を照明する光を発する。第二の発光面は、第二の面を照明する光を発する。第一の発光面及び第二の発光面は、光源素子自体の発光面や、独立した光源装置の発光面にすることができる。例えば、第一の発光面及び第二の発光面は、LEDなどの発光面にすることができる。
【0016】
さらに、第一の発光面及び第二の発光面は、各種の光学素子の出射面にすることができる。第一の発光面及び第二の発光面は、光源素子から案内された光を出射できる出射面であればよい。例えば、光源素子から発せられた光をライトガイドなどによって案内し、ライトガイドの出射面から光を発することができる。この場合には、第一の発光面及び第二の発光面は、ライトガイドの出射面(端面など)である。
【0017】
<撮像部>
撮像部は、保持部を挟んで配置される。撮像部は、第一の撮像面と第二の撮像面とを有する。第一の撮像面は、第一の面を撮像する面である。第二の撮像面は、第二の面を撮像する面である。第一の撮像面及び第二の撮像面は、撮像素子自体の撮像面や、独立した撮像装置(カメラなど)の撮像面や、レンズなどの入射面などにすることができる。
【0018】
さらに、第一の撮像面及び第二の撮像面は、各種の光学素子の入射面にすることができる。例えば、光学素子は、光ファイバなどにすることができる。光学素子は、入射面と出射面とを有する。光学素子の出射面は、撮像素子自体の撮像面や、独立した撮像装置(カメラなど)の撮像面に向かって配置される。光学素子の入射面(第一の撮像面及び第二の撮像面)で光を受光し、光学素子の出射面から光を出射することで、撮像素子自体の撮像面や、独立した撮像装置(カメラなど)の撮像面に光を入射させることができる。
【0019】
撮像素子は、第一の撮像面及び第二の撮像面に入射した光を受光することで、対象物を撮像することができる。
【0020】
<調整部>
調整部は、第一の撮像結果と第二の撮像結果との少なくとも一方を調整する。第一の撮像結果は、第一の撮像で入射した光によって得られる対象物の撮像結果である。第二の撮像結果は、第二の撮像で入射した光によって得られる対象物の撮像結果である。対象物の第一の配置状態は、第一の撮像結果から得られる。対象物の第二の配置状態は、第二の撮像結果から得られる。配置状態は、対象物の位置や向きなどである。
【0021】
前述したように、対象物は、保持部の第一の面と第二の面とのうちの少なくとも一方に配置される。第一の撮像結果及び第二の撮像結果は、同じ対象物を撮像した結果であるが、保持部を挟んで得られた第一の撮像結果と第二の撮像結果とは、相違する場合がある。相違は、第一の撮像面及び第二の撮像面の位置や向きなどの配置の違いによって生ずる。また、保持部の光学特性によっても相違が生ずる可能性がある。光学特性は、保持部の反射率や透過率などがある。
【0022】
調整部による調整は、第一の配置状態及び第二の配置状態によって行われる。例えば、調整部は、第一の配置状態である対象物の位置や大きさと、第二の配置状態である対象物の位置や大きさなどが一致するように調整する。調整は、単に位置や大きさなどを一致させるだけでなく、所定の配置関係や幾何学的関係などを満たせばよい。
【0023】
<状態取得部>
状態取得部は、調整後の第一の撮像結果と調整後の第二の撮像結果との少なくとも一方に基づいて対象物の状態を取得する。例えば、状態取得部は、
調整後の第一の撮像結果と未調整の第二の撮像結果とから対象物の状態を取得したり、
未調整の第一の撮像結果と調整後の第二の撮像結果とから対象物の状態を取得したり、
調整後の第一の撮像結果と調整後の第二の撮像結果とから対象物の状態を取得したり、
することができる。
【0024】
<良否判定部>
良否判定部は、対象物の状態に基づいて、対象物の良否を判定する。良否判定部は、対象物の状態から対象物の品質を判定する。例えば、良否判定部は、対象物の表面の状態から品質を判定する。
【0025】
照明部と撮像部とは、保持部を挟んで配置されればよく、光軸の微調整など光学的な位置合わせなどをすることなく対象物の状態を取得することができる。簡易な構成で的確に対象物の良否を判定できる。
【0026】
保持部に載置された対象物の数と関係なく、全体的に対象物の良否を判定できる。載置とは、物を台などに載せる形で置くことをいう。
【0027】
<<第2の実施の態様>>
第2の実施の態様は、第1の実施の態様において、
前記対象物の種類に基づいて、前記第一の発光面から発する光の明るさと、前記第二の発光面から発する光の明るさと、を決定する照度決定部を、さらに備える。
【0028】
対象物の種類、例えば、大豆や小豆などの種類によって、反射率などの光学特性が異なる。また、対象物の状態によっても、反射率などの光学特性が異なる。対象物の状態には、正常な状態や異常な状態などがある。対象物の種類に応じた光の明るさを事前に定めておき、照度決定部によって光の明るさを決定して光を発すればよい。
【0029】
<<第3の実施の態様>>
第3の実施の態様は、第2の実施の態様において、
前記照度決定部は、
前記対象物の輪郭を定めるための明るさ(例えば、後述する輪郭用照明条件など)と、
前記対象物の状態を取得するための明るさ(例えば、後述する検査用照明条件など)と、を決定する。
【0030】
対象物の輪郭を的確に抽出できるとともに、対象物の状態を的確に取得することができる。
【0031】
<<第4の実施の態様>>
第4の実施の態様は、第1の実施の態様において、
前記第一の配置状態は、前記第一の面において、第一の対象物を基準にして、前記第一の対象物から離隔した第二の対象物までの距離と方向(例えば、後述する拡大/縮小や回転角度など)であり、
前記第二の配置状態は、前記第二の面において、前記第一の対象物を基準にして、前記第二の対象物までの距離と方向(例えば、後述する拡大/縮小や回転角度など)であり、
前記調整部は、前記第一の面における距離及び方向と、前記第二の面における距離及び方向と、を揃えるように、前記第一の撮像結果と前記第二の撮像結果との少なくとも一方を調整する(例えば、後述する制御部200やステップS329及びS331の処理など)。
【0032】
的確に対象物を抽出して、対象物ごとに状態を取得することができる。
【0033】
<<<<第1の実施の形態>>>>
以下に、第1の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0034】
<<<方向>>>
第1の実施の形態では、方向として、上下方向や水平方向を用いる。
<<上下方向(Z方向)>>
上下方向は、鉛直線の方向であり、重力の方向である。例えば、物体を吊り下げた糸の示す方向をいう。上面や下面、上側や下側や、上方や下方なども同様である。
<<水平方向(XY方向)>>
地球の重力と直角に交わる方向、鉛直と直角に交わる方向をいう。第1の実施の形態では、後述するトレイ160が延在する方向は、水平方向に沿っている。延在とは、延びて存在することをいう。
【0035】
<<<豆類>>>
豆とは、ダイズ・アズキ・ソラマメ・エンドウなど実を食用とするものの総称をいう。豆類は、豆のほか、豆に類する立体的形状を有する食用の農作物であればよい。さらに、穀物でもよい。穀物は、種子を食用とする作物で、多くは人類の主食となるものである。穀物は、すなわち、米・大麦・小麦・燕麦・粟あわ・稗ひえ・黍きび・玉蜀黍とうもろこし・豆などである。豆類等級判定システム10の対象物は、主に、イネ科とマメ科に属するものを対象としている。なお、等級や評価を要する農作物であればよい。対象物の大きさや形状や色は問わない。
【0036】
<<<光軸OA>>>
光軸OAは、光学系においてレンズ・反射鏡などの中心を結ぶ直線である。具体的には、光軸OAは、上側カメラ122のレンズの中心と、下側カメラ124のレンズの中心とを結ぶ直線である。第1の実施の形態では、光軸OAは、上下方向に沿っている。
【0037】
<<<豆類等級判定システム10の具体的な構成>>>
豆類等級判定システム10は、主に、光学系100と機構系150と制御部200とを有する。これらは、フレームなどの支持部材(図示せず)によって、支持されている。
支持部材は、一定の形状及び大きさを有する。支持部材は、光学系100と機構系150と制御部200とを一定の位置に保持する。光学系100及び制御部200は、ケーブルやハーネスなどによって電気的に接続されている。光学系100には、電源が供給される。光学系100と制御部200との間では、各種の信号が送受信される。
【0038】
<<光学系100>>
光学系100は、主に、照明110(照明部)とカメラ120(撮像部)とを有する。照明110は、上側照明112及び下側照明114を有する。カメラ120は、上側カメラ122及び下側カメラ124を有する。
【0039】
<照明110(照明部)>
照明110は、対象物を照明する。照明110は、対象物の表面の状態を判定できる程度の明るさで照明できればよい。照明110から発する光は、可視光や紫外光や赤外光などにすることができる。照明110から発する光は、例えば、白色光にすることができる。対象物の種類や、判定すべき表面の状態などに応じて、照明110から発する光の波長や強度などを適宜に定めればよい。
【0040】
照明110は、いわゆるフラットドーム照明である。照明110は、導光板及びLEDを有する(図示せず)。照明110は、平坦な形状の発光面(図示せず)を有する。照明110は、発光面の全体に亘って光を発する。すなわち、照明110は、発光面の全面から光を発する。
【0041】
図1及び図2に示すように、上側照明112及び下側照明114は、後述するトレイ160とカメラ120との間に配置される。なお、判定の対象物は、トレイ160に載置される。
【0042】
上側照明112及び下側照明114は、薄板状の形状を有する。上側照明112及び下側照明114は、水平方向に沿って配置される。上側照明112は、上側発光面(図示せず)を有する。前述したように、上側発光面は、平坦な形状を有する。下側照明114は、下側発光面(図示せず)を有する。前述したように、下側発光面は、平坦な形状を有する。上側発光面及び下側発光面は、水平方向に延在する。
【0043】
上側照明112の上側発光面は、後述するトレイ160の載置面162と平行に位置付けられる。上側照明112の上側発光面は、トレイ160の載置面162と略同じ大きさであるか、又はトレイ160の載置面162よりも大きい。トレイ160の載置面162は、上側照明112によって、載置面162の端部に至るまで全面に亘って明るく照明される。
【0044】
下側照明114の下側発光面は、トレイ160の非載置面164と平行に位置付けられる。下側照明114の下側発光面は、トレイ160の非載置面164と略同じ大きさであるか、又はトレイ160の非載置面164よりも大きい。トレイ160の非載置面164は、下側照明114によって、非載置面164の端部に至るまで全面に亘って明るく照明される。
【0045】
上側照明112は、上側発光面の反対側に上側透光面(図示せず)を有する。上側照明112の上側発光面に入射した光は、上側透光面を透過する。なお、上側照明112のLEDの光は、上側発光面のみから発せられる。
【0046】
下側照明114は、下側発光面の反対側に下側透光面(図示せず)を有する。下側照明114の下側発光面に入射した光は、下側透光面を透過する。なお、下側照明114のLEDの光は、下側発光面のみから発せられる。
【0047】
このように、上側照明112及び下側照明114は、透光性を有する。上側カメラ122は、上側照明112の上側発光面に入射し上側透光面を透過した光を受光する(図2の破線の矢印UI参照)。下側カメラ124は、下側照明114の下側発光面に入射し下側透光面を透過した光を受光する(図2の破線の矢印BI参照)。
【0048】
上側照明112及び下側照明114は、一定の明るさの光を発する。上側照明112から発する光の明るさと、下側照明114から発する光の明るさとは異なっていてもよい。例えば、一方を点灯させ、他方を消灯させてもよい。
【0049】
後述する制御部200からの制御信号によって、上側照明112の光の明るさと、下側照明114の光の明るさとを、適宜に変更できる。上側照明112の光の明るさと下側照明114の光の明るさとを調節して照明条件を定めることができる。例えば、対象物の輪郭や外形を取得するときの照明条件や、対象物の表面の状態を取得するときの照明条件などを定めて切り替えることができる。
【0050】
第1の実施の形態では、明るさのみを調節する例を示した。明るさだけでなく、色などの波長や、点灯時間などを切り替えて照明してもよい。対象物の種類や、対象物の表面の状態などに応じて適宜に照明条件を定めればよい。
【0051】
<上側照明112>
上側照明112は、トレイ160よりも上方に配置される。上側照明112は、トレイ160から離隔した位置に配置される。上側照明112は、トレイ160と上側カメラ122との間に配置される。上側照明112は、上側カメラ122から離隔した位置に配置される。上側照明112は、トレイ160の上方からトレイ160の載置面162に向かって光を発する。上側照明112の光の明るさ(照度、輝度など)は、制御部200からの制御信号によって適宜に変更できる。
【0052】
<下側照明114>
下側照明114は、トレイ160よりも下方に配置される。下側照明114は、トレイ160から離隔した位置に配置される。下側照明114は、トレイ160と下側カメラ124との間に配置される。下側照明114は、下側カメラ124から離隔した位置に配置される。下側照明114は、トレイ160の下方からトレイ160の非載置面164に向かって光を発する。下側照明114の光の明るさ(照度、輝度など)は、制御部200からの制御信号によって適宜に変更できる。
【0053】
<上側照明112、下側照明114、トレイ160>
上側照明112及び下側照明114は、トレイ160を挟んで向かい合って配置される。
【0054】
<カメラ120(撮像部)>
カメラ120は、撮像素子を有する。例えば、カメラ120は、CMOS素子を有する。撮像素子は、光の波長や、処理速度などに応じて、適宜に定めればよい。
【0055】
カメラ120は、上側カメラ122及び下側カメラ124を有する。上側カメラ122及び下側カメラ124は、トレイ160を挟んで向かい合って配置される。
【0056】
上側カメラ122は、上側照明112よりも上方に配置される。上側カメラ122は、上側照明112よりもトレイ160から離隔した位置に配置される。上側カメラ122は、上側照明112を介して、トレイ160の載置面162に載置された対象物を撮像する。
【0057】
下側カメラ124は、下側照明114よりも下方に配置される。下側カメラ124は、下側照明114よりもトレイ160から離隔した位置に配置される。下側カメラ124は、下側照明114を介して、トレイ160の載置面162に載置された対象物を撮像する。
【0058】
上側カメラ122及び下側カメラ124は、トレイ160の載置面162に載置された対象物を撮像する。上側カメラ122は、対象物の像を示す上側撮像信号を出力する。上側撮像信号は、制御部200に供給される。下側カメラ124は、対象物の像を示す下側撮像信号を出力する。下側撮像信号は、制御部200に供給される。
【0059】
上側カメラ122は、上側レンズ(図示せず)を有する。下側カメラ124は、下側レンズ(図示せず)を有する。上側レンズ及び下側レンズは、トレイ160の載置面162に載置された対象物を、トレイ160の全体に亘って明瞭に撮像できる倍率などを有する。上側レンズ及び下側レンズは、トレイ160の大きさや、使用する光の波長や、対象物の種類などに応じて適宜に定めればよい。
【0060】
<<機構系150>>
機構系150は、トレイ160(保持部)を有する。
【0061】
<トレイ160>
トレイ160は、略薄板状の形状を有する。トレイ160は、透光性を有する材料から構成される。トレイ160は、ガラスやプラスチックなどの一定の形状を有する固体から構成される。トレイ160は、熱などの影響を受けにくい材料で構成されるのが好ましい。なお、トレイ160は、4つの側壁部を有する。トレイ160は、4つの側壁部によって囲繞される。
【0062】
トレイ160は、水平に配置される。トレイ160には、少なくとも1個の豆類などの対象物を保持される。対象物を安定して保持できれば、水平に配置しなくてもよい。例えば、挟持部材(図示せず)を有して、挟持部材によって豆類を挟持して保持してもよい。
【0063】
トレイ160は、載置面162と非載置面164との2つ面を有する。載置面162及び非載置面164は、互いに反対方向に向かう。載置面162及び非載置面164は、略平行である。載置面162及び非載置面164は、光を透過させる。トレイ160は、透光性を有して、豆類を撮像できればよい。
【0064】
トレイ160は、載置面162から非載置面164に向かって光を透過する。トレイ160は、非載置面164から載置面162に向かって光を透過する。トレイ160は、所定の透過率及び反射率を有する。
【0065】
<載置面162>
載置面162は、水平に沿って延在する。載置面162は、上方に向かって配置される。載置面162の法線は、上向きである。載置面162に、豆類などの対象物が載置される。
【0066】
<非載置面164>
非載置面164は、水平に沿って延在する。非載置面164は、下方に向かって配置される。非載置面164の法線は、下向きである。
【0067】
<<<光路>>>
上側照明112から発せられた光は、トレイ160の載置面162に向かう(矢印UL)。上側照明112から発せられた光は、載置面162に載置された対象物と、載置面162とを照明する。対象物と載置面162とによって反射された反射光は、上側照明112に向かう(矢印UI)。反射光は、上側照明112の上側発光面及び上側透光面を透過する(矢印UI)。上側透光面を透過した光は、上側カメラ122に向かう。上側カメラ122は、対象物の像及び載置面162の像を示す光として受光する。上側カメラ122は、対象物の像及び載置面162の像を示す上側撮像信号を出力する。
【0068】
下側照明114から発せられた光は、トレイ160の非載置面164に向かう(矢印BL)。下側照明114から発せられた光は、非載置面164を介して載置面162に載置された対象物と、非載置面164とを照明する。対象物と非載置面164とによって反射された反射光は、下側照明114に向かう(矢印BI)。反射光は、下側照明114の下側発光面及び下側透光面を透過する(矢印BI)。下側透光面を透過した光は、下側カメラ124に向かう。下側カメラ124は、対象物の像及び非載置面164の像を示す光として受光する。下側カメラ124は、対象物の像及び非載置面164の像を示す下側撮像信号を出力する。
【0069】
<<<制御部200(良否判定部)>>>
制御部200は、CPU(中央処理装置)、ROM(リードオンリーメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、HDD(ハードディスクドライブ)、入出力インターフェースなどを有する。なお、CPUに限られず、各種の処理を実行できればよく、以下では、プロセッサと称する。
【0070】
制御部200は、照明制御部210と、カメラ制御部220と、判定処理部250とを有する。照明制御部210、カメラ制御部220、判定処理部250は、CPU、ROM、RAM、HDD(ハードディスクドライブ)、入出力インターフェースなどによって構成される。
【0071】
<<照明制御部210>>
照明制御部210は、上側照明112及び下側照明114を制御する。照明制御部210は、上側照明112の明るさを制御するための上側照明制御信号を上側照明112に出力する。照明制御部210は、下側照明114の明るさを制御するための下側照明制御信号を下側照明114に出力する。上側照明112は、上側照明制御信号に応じた明るさの光を発する。下側照明114は、下側照明制御信号に応じた明るさの光を発する。
【0072】
<<カメラ制御部220>>
カメラ制御部220は、上側カメラ122及び下側カメラ124を制御する。カメラ制御部220は、上側カメラ122の撮像を制御するための上側カメラ制御信号を上側カメラ122に出力する。カメラ制御部220は、下側カメラ124の撮像を制御するための下側カメラ制御信号を下側カメラ124に出力する。
【0073】
カメラ制御部220は、上側カメラ122から出力される上側撮像信号と、下側カメラ124から出力される下側撮像信号とを受信する。上側撮像信号は、対象物の像及び載置面162の像を示す信号である。下側撮像信号は、対象物の像及び非載置面164の像を示す信号である。
【0074】
<<判定処理部250>>
判定処理部250は、上側撮像データ及び下側撮像データから対象物の良否を判定する。上側撮像データは、上側撮像信号によって生成されたデータである。下側撮像データは、下側撮像信号によって生成されたデータである。判定処理部250は、上側撮像データ及び下側撮像データについて、各種の画像処理を施す。判定処理部250は、対象物の輪郭を抽出し、対象物の表面に関する情報を取得し、対象物の良否を判定する。判定処理部250の処理については、後で詳述する。
【0075】
<<<豆類良否判定処理>>>
図3及び図4は、豆類良否判定処理を示すフローチャートである。
【0076】
以下では、豆類等級判定システム10は、初期化などの起動時の処理は完了しており、いずれも定常に動作しているものとする。また、以下では、対象物を豆類と称して説明する。
【0077】
最初に、制御部200のプロセッサは、豆類の種類に応じて照明条件を読み出す(ステップS311)。照明条件は、例えば、上側照明112の明るさ及び下側照明114の明るさである。明るさは、例えば、照度や輝度などである。照明条件は、HDDなどに記憶されている。豆類の種類に応じた最適な照明条件は、予備実験などによって定めることができる。なお、豆類の種類は、操作者などの操作によって、事前に選択される。
【0078】
照明条件は、以下の4つがある。
(1)上側カメラ122を使って豆類の輪郭を取得するための上面輪郭用照明条件
(2)上側カメラ122を使って豆類の表面の状態を取得するための上面検査用照明条件
(3)下側カメラ124を使って豆類の輪郭を取得するための下面輪郭用照明条件
(4)下側カメラ124を使って豆類の表面の状態を取得するための下面検査用照明条件
である。なお、以下では、上側カメラ122を使って撮像した画像や照明条件などについては、「上面」を付して示す。下側カメラ124を使って撮像した画像や照明条件などについては、「下面」を用付して示す。
【0079】
前述した(1)~(4)の照明条件として、上側照明112の明るさ及び下側照明114の明るさが定められている。ステップS311では、これらの4つの照明条件をHDDから読み出す。
【0080】
例えば、小豆や大豆の場合には、上側照明112及び下側照明114のうち、一方の明るさを0%にし、他方の明るさを70%にした条件を輪郭用照明条件とする。また、一方の明るさを80%にし、他方の明るさを60%にした条件を検査用照明条件とする。
【0081】
次に、制御部200のプロセッサは、上面輪郭用照明条件で上側照明112及び下側照明114から発する光の明るさを決定し、上側照明112及び下側照明114から光を発する(ステップS313)。
【0082】
次に、制御部200のプロセッサは、上側カメラ122で上面輪郭用画像を撮像する(ステップS315)。これによって、豆類の輪郭を抽出するための画像を取得することができる。
【0083】
次に、制御部200のプロセッサは、上面検査用照明条件で上側照明112及び下側照明114から発する光の明るさを決定し、上側照明112及び下側照明114から光を発する(ステップS317)。
【0084】
次に、制御部200のプロセッサは、上側カメラ122で上面検査用画像を撮像する(ステップS319)。これによって、豆類の表面の状態を取得するための画像を取得することができる。
【0085】
次に、制御部200のプロセッサは、下面輪郭用照明条件で上側照明112及び下側照明114から発する光の明るさを決定し、上側照明112及び下側照明114から光を発する(ステップS321)。
【0086】
次に、制御部200のプロセッサは、下側カメラ124で下面輪郭用画像を撮像する(ステップS323)。これによって、豆類の輪郭を抽出するための画像を取得することができる。
【0087】
次に、制御部200のプロセッサは、下面検査用照明条件で上側照明112及び下側照明114から発する光の明るさを決定し、上側照明112及び下側照明114から光を発する(ステップS325)。
【0088】
次に、制御部200のプロセッサは、下側カメラ124で下面検査用画像を撮像する(ステップS327)。これによって、豆類の表面の状態を取得するための画像を取得することができる。
【0089】
次に、制御部200のプロセッサは、取得した画像について補正をする必要があるか否かを判断する(ステップS328)。画像の補正の内容は、後で詳述する。上側カメラ122や下側カメラ124の位置や、上側カメラ122のレンズや下側カメラ124のレンズの位置を変更したときには、光学的な位置関係が異なるため、補正用情報を算出して、画像の補正をする必要がある。言い換えれば、上側カメラ122や下側カメラ124の位置や、上側カメラ122のレンズや下側カメラ124のレンズの位置を変更していない場合には、記憶されている補正用情報を用いて補正すればよく、改めて補正用情報を算出する必要はない。
【0090】
次に、制御部200のプロセッサは、補正をする必要があると判別したときには(YES)、上面輪郭用画像を上側位置補正用画像とし、下面輪郭用画像を下側位置補正用画像として、拡大/縮小、XYオフセット、回転角度を含む補正用情報を算出して記憶する(ステップS329)。補正用情報は、HDDやRAMなどに記憶することができる。なお、上面検査用画像を上側位置補正用画像とし、下面検査用画像を下側位置補正用画像として拡大/縮小、XYオフセット(並進)、回転角度を含む補正用情報を算出してもよい。
【0091】
上側カメラ122から撮像した画像と、下側カメラ124とから撮像した画像とでは、豆類の大きさや位置や角度や形状が異なる場合がある。図5は、上側カメラ122で撮像した上面輪郭用画像の例を示す図である。図6は、下側カメラ124で撮像した下面輪郭用画像の例を示す図である。図5及び図6の破線で囲った領域に示すように、豆類の各々の大きさや位置や角度や形状は異なる。
【0092】
この違いは、上側カメラ122及び下側カメラ124の撮像条件の相違によって生ずる。具体的には、上側カメラ122のレンズの倍率と、下側カメラ124のレンズの倍率とが異なる場合には、豆類の像の大きさが異なる可能性が生ずる。上側カメラ122と載置面162との距離と、下側カメラ124と非載置面164との距離とが異なる場合には、豆類の像の大きさが異なる可能性が生ずる。上側カメラ122の光軸OAからの位置と、下側カメラ124の光軸OAからの位置とが異なる場合には、豆類の像の位置が異なる可能性が生ずる。上側カメラ122の光軸OAを中心とした角度と、下側カメラ124の光軸OAを中心とした角度とが異なる場合には、豆類の像の角度が異なる可能性が生ずる。上側カメラ122の光軸OAに対する角度と、下側カメラ124の光軸OAに対する角度とが異なる場合には、豆類の像の大きさや位置が異なる可能性が生ずる。
【0093】
また、上側カメラ122は、載置面162に載置された豆類と載置面162とを直接に撮像する。一方、下側カメラ124は、載置面162に載置された豆類を、トレイ160を介して撮像し、非載置面164の表面を直接に撮像する。このため、上側カメラ122が撮像する画像と下側カメラ124が撮像する画像とは、トレイ160の透過率や反射率などの光学特性によって影響される。
【0094】
このため、拡大/縮小、XYオフセット、回転角度を用いて、画像を補正して、上側カメラ122から撮像した画像と、下側カメラ124とから撮像した画像とを整合させることができる。
【0095】
例えば、トレイ160に載置された互いに離隔した2個の豆類を使って補正する。下面輪郭用画像に撮像された2個の豆類の距離と、上面輪郭用画像に撮像された2個の豆類の距離とが同じになるように、拡大/縮小率を算出する。下面輪郭用画像に撮像された一方の豆類を回転中心とした他方の豆類の角度と、上面輪郭用画像に撮像された一方の豆類を回転中心とした他方の豆類の角度とが同じになるように、水平方向に沿った回転角度を算出する。
【0096】
ステップS328の判断処理で、制御部200のプロセッサが補正をする必要がないと判別したときには(NO)、HDDなどに記憶されている補正用情報を読み出す(ステップS330)。
【0097】
制御部200のプロセッサは、ステップS329又はステップS330の処理を実行したときには、下面輪郭用画像及び下面検査用画像を補正用情報で補正する(ステップS331)。
【0098】
次に、制御部200のプロセッサは、上面輪郭用画像の豆類領域と背景領域とを分離する(ステップS411)。制御部200のプロセッサは、下面輪郭用画像の豆類領域と背景領域とを分離する(ステップS413)。例えば、画像の明暗の度合いなどの情報によって豆類領域と背景領域と分離することができる。
【0099】
ステップS411で分離した上面輪郭用画像の背景領域を上面用のマスク画像とする。ステップS413で分離した下面輪郭用画像の背景領域を下面用のマスク画像とする。
【0100】
次に、制御部200のプロセッサは、上面検査用画像に上面用のマスク画像を用いて、豆類のみの画像を抽出して上面豆類画像を生成し、さらに、上面豆類画像を単一の豆類画像領域ごとに分割して上面豆類分割画像を生成する(ステップS415)。この処理により、上側カメラ122で撮像した上面検査用画像から、各々の豆類を示す画像に切り分けることができる。単一の豆類ごとに切り分けられた各々の豆類を示す画像を上面の豆類画像領域と称する。
【0101】
次に、制御部200のプロセッサは、下面検査用画像に下面用のマスク画像を用いて、豆類のみの画像を抽出して下面豆類画像を生成し、さらに、下面検査用画像を単一の豆類画像領域ごとに分割した下面豆類分割画像を生成する(ステップS417)。前述したステップS331の処理で、下面輪郭用画像だけでなく、下面検査用画像も補正用情報で補正している。この処理によって、下面用のマスク画像の豆類の位置を、下面検査用画像の豆類の位置に一致させることができる。的確に豆類のみの画像を抽出して下面豆類画像を生成することができる。ステップS417の処理により、下側カメラ124で撮像した下面検査用画像から、各々の豆類を示す画像に切り分けることができる。単一の豆類ごとに切り分けられた各々の豆類を示す画像を下面の豆類画像領域と称する。
【0102】
前述したように、ステップS331の処理で、補正用情報を用いて下面検査用画像を補正している。これにより、上面検査用画像による豆類の位置と、下面検査用画像による豆類の位置とを一致させることができる。言い換えれば、単一の豆類ごとに切り分けられた上面の豆類画像領域の位置と下面の豆類画像領域の位置とを一致させることができる。
【0103】
例えば、図7(a)は、隣り合う豆類が接している図であり、図7(b)は、分割処理を施した状態を示す図である。図7(b)に示すように、隣接する豆類の間に白色の直線による分割線が形成される。ステップS415及びS417の処理によって、複数の豆類を互いに分割した画像を生成することができる(図7(b))。単一の豆類ごとに分割された上面の豆類画像領域や下面の豆類画像領域から、豆類ごとに表面の状態を取得することができる。
【0104】
次に、制御部200のプロセッサは、上面の豆類画像領域の各々に対して、識別情報を付与し、位置及び面積、判定用パラメータを算出する(ステップS419)。判定用パラメータは、豆類の真円度、長径・短径の比、輝度の標準偏差、平均輝度、色彩などがある。判定用パラメータによって、未熟な豆類や異形の豆類を識別することができる。また、表面に皮切れやひびなどが生じている豆類を識別することができる。さらに、不適切な外観の豆類を識別することができる。なお、判定用パラメータは、これらだけでなく、豆類の種類や、生じうる不具合の種類に応じて、判定に必要なパラメータを適宜に選択すればよい。
【0105】
ステップS419の処理によって、上面の豆類画像領域から、各々の豆類の位置、面積、真円度、長径・短径の比、輝度の標準偏差、平均輝度、色彩などを算出する。
【0106】
次に、制御部200のプロセッサは、下面の豆類画像領域の各々に対して、識別情報を付与し、位置及び面積、判定用パラメータを算出する(ステップS421)。ステップS421の処理によって、下面の豆類画像領域から、各々の豆類の位置、面積、真円度、長径・短径の比、輝度の標準偏差、平均輝度、色彩などを算出する。
【0107】
次に、制御部200のプロセッサは、上面の豆類画像領域の位置及び面積と、下面の豆類画像領域の位置及び面積とから、上面及び下面の全ての豆類画像領域について、上下面一致・不一致対応情報を生成する(ステップS423)。すなわち、上側カメラ122で撮像した画像から取得できた豆類と、下側カメラ124で撮像した画像から取得できた豆類との対応関係を生成することができる。後述するように、上面及び下面の双方で存在する豆類について良品又は不良品の判定をする。
【0108】
図8(a-1)は、上面の豆類画像領域の例を示す概略図である。図8(a-2)は、下面の豆類画像領域の例を示す概略図である。図8(a-1)及び図8(a-2)では、豆類を白色の丸で示した。下面の豆類1(図8(a-2))は、上面(図8(a-1))に示す概略図には存在せず、図8(b)に示すように、不一致と判断される。図8(a-1)及び図8(a-2)に示す例では、下面の豆類1以外の豆類について、良品又は不良品が判定される。
【0109】
次に、制御部200のプロセッサは、上面の判定用パラメータから上面の全ての豆類について、良品又は不良品を判定する(ステップS425)。
【0110】
次に、制御部200のプロセッサは、下面の判定用パラメータから下面の全ての豆類について、良品又は不良品を判定する(ステップS427)。
【0111】
次に、制御部200のプロセッサは、上面と下面とで一致する豆類の良品又は不良品を決定する(ステップS429)。ステップS429では、さらに、良品の総和を良品数として、不良品の総和を不良品数として算出する。
【0112】
図9は、上面の豆類の良品・不良品と、下面の豆類の良品・不良品と、両面の判定結果との例を示す表である。図9は、図8の例で示した豆類の一部の判定結果である。上面の豆類A及びBは、良品であり、上面の豆類C及びDは、不良品である。下面の豆類2及び4は、良品であり、上面の豆類3及び5は、不良品である。
【0113】
上面の豆類A及び下面の豆類2が一致し、両面の判定結果は、良品である。上面の豆類B及び下面の豆類3が一致し、両面の判定結果は、不良品である。上面の豆類C及び下面の豆類4が一致し、両面の判定結果は、不良品である。上面の豆類D及び下面の豆類5が一致し、両面の判定結果は、不良品である。
【0114】
次に、制御部200のプロセッサは、良品率を算出してディスプレイ(図示せず)表示する(ステップS431)。良品率は、良品数を、良品数と不良品数とを加算した数で除し、100を乗じた値である。
【0115】
<<<<第2の実施の形態>>>>
第1の実施の形態の光学系100は、2つの別個の上側照明112及び下側照明114を有する。上側照明112は、トレイ160の載置面162(上面)を照明する。下側照明114は、トレイ160の非載置面164(下面)を照明する。
【0116】
これに対して、照明部(光源)を共通化させることができる。図10は、第2の実施の形態の光学系100-2を示す機能ブロック図である。図10では、制御部200を省略した。図10では、第1の実施の形態の光学系100と同様の構成については、同一の符号を付した。
【0117】
<<光学系100-2>>
光学系100-2は、光源130とライトガイド132Uとライトガイド132Bとを有する。光源130は、例えば、LEDなどからなる。光源130は、上側照明112及び下側照明114の光源部分(図示せず)から構成される。光源130は、ライトガイド132U及びライトガイド132Bに連結されている。
【0118】
ライトガイド132U及びライトガイド132Bは、例えば、光ファイバを有する。ライトガイド132U及びライトガイド132Bは、第1の端面及び第2の端面を有する。ライトガイド132U及びライトガイド132Bの第1の端面は、光源130に連結される。光源130から発せられる光は、ライトガイド132U及びライトガイド132Bによって分岐される。
【0119】
ライトガイド132Uの第2の端面は、上側発光部134Uとして機能する。上側発光部134Uは、トレイ160の載置面162に面して配置される。光源130から発せられた光は、ライトガイド132Uを伝播して上側発光部134Uから発せられトレイ160の載置面162及び豆類を照明する。
【0120】
ライトガイド132Bの第2の端面は、下側発光部134Bとして機能する。下側発光部134Bは、トレイ160の非載置面164に面して配置される。光源130から発せられた光は、ライトガイド132Bを伝播して下側発光部134Bから発せられトレイ160の非載置面164及び豆類を照明する。
【0121】
<<<<第3の実施の形態>>>>
第1の実施の形態の光学系100は、2つの別個の上側カメラ122及び下側カメラ124を有する。上側カメラ122は、トレイ160の載置面162(上面)を撮像する。下側カメラ124は、トレイ160の非載置面164(下面)を撮像する。
【0122】
これに対して、撮像部(カメラ)を共通化させることができる。図11は、第3の実施の形態の光学系100-3を示す機能ブロック図である。図11では、制御部200を省略した。図11では、第1の実施の形態の光学系100と同様の構成については、同一の符号を付した。
【0123】
<<光学系100-3>>
光学系100-3は、撮像素子140と光ファイバ142Uと光ファイバ142Bとを有する。撮像素子140と光ファイバ142Uと光ファイバ142Bとが、撮像部に対応する。撮像素子140は、例えば、CMOSなどの撮像素子からなる。撮像素子140は、光学系100や光学系100-2の上側カメラ122及び下側カメラ124が有する撮像素子と同様の構成を有する。撮像素子140は、光ファイバ142Uと光ファイバ142Bに連結されている。
【0124】
光ファイバ142Uと光ファイバ142Bは、第1の端面及び第2の端面を有する。光ファイバ142Uと光ファイバ142Bの第1の端面は、撮像素子140に連結される。光ファイバ142Uと光ファイバ142Bの第1の端面に受けた光は、撮像素子140に供給される。
【0125】
光ファイバ142Uの第2の端面は、上側撮像面144Uとして機能する。上側撮像面144Uは、トレイ160の載置面162に面して配置される。上側撮像面144Uに受けた光は、光ファイバ142Uを伝播して撮像素子140に供給される。
【0126】
光ファイバ142Bの第2の端面は、下側撮像面144Bとして機能する。下側撮像面144Bは、トレイ160の非載置面164に面して配置される。下側撮像面144Bに受けた光は、光ファイバ142Bを伝播して撮像素子140に供給される。
【0127】
<<<<変形例1>>>>
トレイ160を振動させるためのバイブレーター(図示せず)を備えてもよい。トレイ160は、バイブレーターによって振動する。トレイ160の振動によって、トレイ160に搭載された豆類の位置を調整し、側面にとどまっていて見えにくかった不良箇所を画像で捉えることができ、判定精度の向上が期待できる。
【0128】
豆類の種類や大きさに応じて、振動数や振動させる時間などを適宜に変えることができる。
【0129】
<<<<変形例2>>>>
第1の実施の形態の上側カメラ122、下側カメラ124、上側照明112、下側照明114は、一定の位置に固定されている。上側カメラ122、下側カメラ124、上側照明112、下側照明114を移動可能にしてもよい。例えば、上側カメラ移動ステージ、下側カメラ移動ステージ、上側照明移動ステージ、下側照明移動ステージ(図示せず)を設けて移動させることができる。上側カメラ122、下側カメラ124、上側照明112、下側照明114の位置や角度などを調整することができる。
【0130】
位置を調整することで、豆類の大きさやトレイ160の広がりなどに応じて、適切な条件で豆類を撮像することができる。
【0131】
<<<<変形例3>>>>
前述したように、上側カメラ122は、豆類を直接に撮像する。一方、下側カメラ124は、トレイ160を介して豆類を撮像する。このため、上側カメラ122が撮像する画像と下側カメラ124が撮像する画像とは、トレイ160の透過率や反射率などの光学特性によって影響される。
【0132】
このため、トレイ160の全体を上から覆う蓋体を設けてもよい。蓋体は、トレイ160と同じ材質によって構成するのが好ましい。さらに、蓋体は、トレイ160と同じ厚みを有するのが好ましい。このようにすることで、トレイ160の透過率や反射率などの光学特性を、上側カメラ122が撮像する画像と下側カメラ124が撮像する画像との双方で共通させることができる。
【0133】
<<<<実施の形態の範囲>>>>
上述したように、第1の実施の形態~第3の実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす記載及び図面は、限定するものと理解すべきでない。ここで記載していない様々な実施の形態等が含まれる。
【符号の説明】
【0134】
10 豆類等級判定システム
100、100-2、100-3 光学系
110、110-2 照明(照明部)
120、120-3 カメラ(撮像部)
160 トレイ(保持部)
200 制御部(判定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11