IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルムヘルスケア株式会社の特許一覧

特開2023-19医用画像処理装置および医用画像処理方法
<>
  • 特開-医用画像処理装置および医用画像処理方法 図1
  • 特開-医用画像処理装置および医用画像処理方法 図2
  • 特開-医用画像処理装置および医用画像処理方法 図3
  • 特開-医用画像処理装置および医用画像処理方法 図4
  • 特開-医用画像処理装置および医用画像処理方法 図5
  • 特開-医用画像処理装置および医用画像処理方法 図6
  • 特開-医用画像処理装置および医用画像処理方法 図7
  • 特開-医用画像処理装置および医用画像処理方法 図8
  • 特開-医用画像処理装置および医用画像処理方法 図9
  • 特開-医用画像処理装置および医用画像処理方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000019
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】医用画像処理装置および医用画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/02 20060101AFI20221222BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20221222BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20221222BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20221222BHJP
   G06T 7/11 20170101ALI20221222BHJP
【FI】
A61B6/02 300M
A61B6/03 360T
G06T5/00 710
G06T7/00 350C
G06T7/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100583
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山川 恵介
(72)【発明者】
【氏名】松崎 和喜
【テーマコード(参考)】
4C093
5B057
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA11
4C093AA26
4C093CA08
4C093CA34
4C093CA35
4C093CA37
4C093FD03
4C093FD09
4C093FD13
4C093FF04
4C093FF07
4C093FF16
4C093FF28
4C093FF29
4C093FF34
4C093FF37
4C093FG04
5B057AA08
5B057BA03
5B057CC03
5B057CE03
5B057CH07
5B057DC40
5L096BA06
5L096BA13
5L096DA02
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】医用デバイスが挿入される被検体のトモシンセシス画像において、医用デバイスの先端を鮮明にすることが可能な医用画像処理装置および医用画像処理方法を提供する。
【解決手段】180度未満の角度範囲で被検体を撮影して得られた複数の投影画像を用いて生成されるトモシンセシス画像を扱う医用画像処理装置であって、撮影空間の座標毎のボケデータを予め記憶する記憶部と、前記ボケデータを用いて前記トモシンセシス画像を補正する補正部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
180度未満の角度範囲で被検体を撮影して得られた複数の投影画像を用いて生成されるトモシンセシス画像を扱う医用画像処理装置であって、
撮影空間の座標毎のボケデータを予め記憶する記憶部と、
前記ボケデータを用いて前記トモシンセシス画像を補正する補正部と、を備えることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記記憶部は、前記座標毎に前記ボケデータが対応付けられたテーブルを記憶することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記記憶部は、前記撮影空間の座標から前記ボケデータを算出する式を記憶することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記記憶部に記憶される前記座標毎のボケデータは、X線シミュレーションまたはファントム撮影によって生成される点応答関数であることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記補正部は、前記被検体に挿入された医用デバイスの領域である医用デバイス領域を前記トモシンセシス画像から抽出し、前記医用デバイス領域に基づいて前記トモシンセシス画像を補正する範囲を設定することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の医用画像処理装置であって、
前記補正部は、前記医用デバイスの進行方向を算出することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の医用画像処理装置であって、
前記補正部は、前記医用デバイスの3次元形状を算出することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項8】
請求項5に記載の医用画像処理装置であって、
前記補正部は、既知の医用デバイス領域を含む断層画像を教師データとして学習することにより生成された機械学習エンジンを用いて、前記医用デバイス領域を抽出することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の医用画像処理装置であって、
前記教師データはX線CT画像を含むことを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項10】
請求項5に記載の医用画像処理装置であって、
前記補正部は、前記医用デバイス領域を順投影演算して得られる順投影データと、前記投影画像から抽出される医用デバイスの領域との差異が所定の範囲に収まるように、前記医用デバイス領域を修正することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項11】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記補正部は、前記被検体に挿入された医用デバイスの種類に応じて設定される調整係数を用いて前記ボケデータを調整し、調整されたボケデータを用いて前記トモシンセシス画像を補正することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項12】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記補正部は、前記トモシンセシス画像のコントラストに応じて設定される調整係数を用いて前記ボケデータを調整し、調整されたボケデータを用いて前記トモシンセシス画像を補正することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項13】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記トモシンセシス画像の時間分解能を設定する時間分解能設定部をさらに備え、
前記補正部は、前記時間分解能に基づいて設定される枚数の投影画像を用いて生成されるトモシンセシス画像を補正することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項14】
請求項13に記載の医用画像処理装置であって、
前記時間分解能設定部は、操作ウィンドウに入力される時間分解能を受け付けることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項15】
請求項13に記載の医用画像処理装置であって、
前記時間分解能設定部は、前記トモシンセシス画像の生成に先立って撮影されるX線透視画像を用いて前記被検体に挿入される医用デバイスの速度を算出し、算出された速度に基づいて前記時間分解能を設定することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項16】
180度未満の角度範囲で複数の投影画像を撮影するとともに、前記投影画像を用いてトモシンセシス画像を生成するX線トモシンセシス装置であって、
請求項1に記載の医用画像処理装置を備えることを特徴とするX線トモシンセシス装置。
【請求項17】
180度未満の角度範囲で撮影された複数の投影画像を用いて生成されるトモシンセシス画像を扱う医用画像処理方法であって、撮影空間の座標毎のボケデータを読み出す読み出しステップと、前記ボケデータを用いて前記トモシンセシス画像を補正する補正ステップを備えることを特徴とする医用画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線トモシンセシス装置によって得られる医用画像を扱う医用画像処理装置および医用画像処理方法に係り、被検体に挿入される医用デバイスの先端を鮮明にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
X線トモシンセシス装置は、被検体を多方向から撮影して得た複数の投影画像を用いて、寝台と平行な面での断層画像であるトモシンセシス画像を生成する装置である。また、複数のトモシンセシス画像から生成される3次元画像は、被検体に挿入されるガイドシース等の医用デバイスの3次元配置を確認するために用いられる。一方、複数の投影画像を撮影するX線トモシンセシス装置は、X線透視撮影装置に比べて被ばく量が多く、被ばく量の抑制が望まれる。
【0003】
特許文献1には、トモシンセシス撮影における被ばく量を抑制するために、複数の撮影対象の大きさと位置を特定して、各撮影対象を分離可能な角度範囲を算出し、当該角度範囲で投影画像を取得することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6502188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1では、被検体に挿入されるカテーテルや内視鏡等の医用デバイスの先端を鮮明することに対する配慮が不十分である。X線トモシンセシス装置では、投影画像が撮影される角度範囲が180度未満であって限定的であるため、生成されるトモシンセシス画像に歪みが生じ、医用デバイスの先端がぼける。トモシンセシス画像の歪みが大きい場合、医用デバイス先端の3次元配置を確認できず治療等に支障をきたす。
【0006】
そこで本発明の目的は、医用デバイスが挿入される被検体のトモシンセシス画像において、医用デバイスの先端を鮮明にすることが可能な医用画像処理装置および医用画像処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、180度未満の角度範囲で撮影された複数の投影画像を用いて生成されるトモシンセシス画像を扱う医用画像処理装置であって、撮影空間の座標毎のボケデータを予め記憶する記憶部と、前記ボケデータを用いて前記トモシンセシス画像を補正する補正部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、180度未満の角度範囲で撮影された複数の投影画像を用いて生成されるトモシンセシス画像を扱う医用画像処理方法であって、撮影空間の座標毎のボケデータを読み出す読み出しステップと、前記ボケデータを用いて前記トモシンセシス画像を補正する補正ステップを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、医用デバイスが挿入される被検体のトモシンセシス画像において、医用デバイスの先端を鮮明にすることが可能な医用画像処理装置および医用画像処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】医用画像処理装置の全体構成図
図2】医用画像撮影装置の一例であるX線トモシンセシス装置の全体構成図
図3】実施例1の処理の流れの一例を示す図
図4】撮影空間の座標毎のボケデータが記録されたテーブルの一例を示す図
図5】実施例2の処理の流れの一例を示す図
図6】医用デバイスの種類毎の調整係数が記録されたテーブルの一例を示す図
図7】実施例2の表示ウィンドウの一例を示す図
図8】調整係数とコントラストとの関係の一例を示す図
図9】実施例3の処理の流れの一例を示す図
図10】実施例3の操作ウィンドウの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に従って本発明に係る医用画像処理装置及び医用画像処理方法の実施例について説明する。なお、以下の説明及び添付図面において、同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略することにする。
【実施例0012】
図1は医用画像処理装置1のハードウェア構成を示す図である。医用画像処理装置1は、演算部2、メモリ3、記憶装置4、ネットワークアダプタ5がシステムバス6によって信号送受可能に接続されて構成される。また医用画像処理装置1は、ネットワーク9を介して医用画像撮影装置10や医用画像データベース11と信号送受可能に接続される。さら医用画像処理装置1には、表示装置7と入力装置8が接続される。ここで、「信号送受可能に」とは、電気的、光学的に有線、無線を問わずに、相互にあるいは一方から他方へ信号送受可能な状態を示す。
【0013】
演算部2は、各構成要素の動作を制御する装置であり、具体的にはCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processor Unit)等である。演算部2は、記憶装置4に格納されるプログラムやプログラム実行に必要なデータをメモリ3にロードして実行し、医用画像に対して様々な画像処理を施す。メモリ3は、演算部2が実行するプログラムや演算処理の途中経過を記憶するものである。記憶装置4は、演算部2が実行するプログラムやプログラム実行に必要なデータを格納する装置であり、具体的にはHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等である。ネットワークアダプタ5は、医用画像処理装置1をLAN、電話回線、インターネット等のネットワーク9に接続するためのものである。演算部2が扱う各種データはLAN(Local Area Network)等のネットワーク9を介して医用画像処理装置1の外部と送受信されても良い。
【0014】
表示装置7は、医用画像処理装置1の処理結果等を表示する装置であり、具体的には液晶ディスプレイ等である。入力装置8は、操作者が医用画像処理装置1に対して操作指示を行う操作デバイスであり、具体的にはキーボードやマウス、タッチパネル等である。マウスはトラックパッドやトラックボール等の他のポインティングデバイスであっても良い。
【0015】
医用画像撮影装置10は、例えば被検体を多方向から撮影して複数の投影画像を取得し、複数の投影画像から断層画像を生成するX線トモシンセシス装置であり、図2を用いて後述される。医用画像データベース11は、医用画像撮影装置10によって取得された投影画像や断層画像、断層画像に画像処理が施された補正画像等を記憶するデータベースシステムである。
【0016】
図2を用いて医用画像撮影装置10の一例であるX線トモシンセシス装置200の全体構成を説明する。なお、図2において、紙面に垂直な方向をX軸、縦方向をY軸、横方向をZ軸とする。X線トモシンセシス装置200は、X線源201、X線検出器202、寝台204、操作卓205を備える。
【0017】
X線源201は寝台204に載置された被検体203にX線を照射する装置である。操作卓205で設定された撮影条件に応じた高電圧がX線源201に印加されると被検体203にX線が照射される。
【0018】
X線検出器202は被検体203を透過したX線を検出することにより透過X線の空間的な分布を計測する装置である。X線検出器202はX線源201と対向配置され、ZX面内に多数の検出素子が二次元に配列される。X線検出器202で計測された信号に基づき2次元の投影画像が生成される。
【0019】
被検体203を多方向から撮影して複数の投影画像を得るために、X線源201とX線検出器202の少なくとも一方はZ軸方向に移動させられる。得られた複数の投影画像は、寝台204と平行な面、すなわちZX面での断層画像であるトモシンセシス画像の生成に用いられる。
【0020】
操作卓205は、撮影条件の設定やトモシンセシス画像の生成、表示が実行される装置であり、いわゆるコンピュータで構成される。図2に例示される操作卓205には、被検体203の胸部のトモシンセシス画像が表示される。操作卓205は、図1に示した医用画像処理装置1であっても良い。
【0021】
X線トモシンセシス装置200では、投影画像を撮影する角度範囲が180度未満、例えば20度~40度に限定されるため、生成されるトモシンセシス画像に歪みが生じ、被検体203に挿入されるカテーテルや内視鏡等の医用デバイスの先端がぼける。トモシンセシス画像の歪みが大きい場合、医用デバイス先端の3次元配置を確認できず治療等に支障をきたす。そこで実施例1では、トモシンセシス画像を鮮明にするための処理の流れを実行する。
【0022】
図3を用いて、実施例1で実行される処理の流れの一例についてステップ毎に説明する。
【0023】
(S301)
演算部2は、被検体203が多方向から撮影された複数の投影画像を取得する。演算部2は、X線トモシンセシス装置200で撮影された投影画像を受信しても良いし、記憶装置4や医用画像データベース11に予め記憶される投影画像を読み出しても良い。
【0024】
(S302)
演算部2は、S301で取得された複数の投影画像を用いてトモシンセシス画像を生成する。
【0025】
(S303)
演算部2は、撮影空間の座標毎のボケデータを読み出す。座標毎のボケデータは、例えば図4に示されるようなテーブルの形式で記憶装置4に予め記憶される。図4に例示されるテーブルでは、3次元の座標毎にボケデータが対応付けられる。例えば(x1、y1、z1)の座標にはボケデータBlr_111が、(x2、y1、z1)にはBlr_211が、(xn、yn、zn)にはBlr_nnnが対応付けられる。
【0026】
また記憶装置4は、撮影空間の座標からボケデータを算出する式を記憶しても良い。ボケデータを算出する式が記憶される場合、記憶装置4の記憶容量を節約できる。
【0027】
なおボケデータは、X線シミュレーションまたはファントム撮影によって生成される点応答関数PSF(Point Spread Function)として記憶装置4に記憶されても良い。ファントム撮影には、1点の座標または画素の大きさと同程度未満の微小球体ファントムが用いられる。
【0028】
(S304)
演算部2は、S302で生成されたトモシンセシス画像をS303で読み出されたボケデータを用いて補正する。すなわち演算部2は、トモシンセシス画像を補正する補正部として機能する。例えば座標毎の点応答関数をトモシンセシス画像に逆畳み込み演算することにより、トモシンセシス画像に含まれるボケが補正される。演算部2は、補正されたトモシンセシス画像を表示装置7に表示させる。
【0029】
以上説明した処理の流れにより、トモシンセシス画像に含まれるボケが補正されるので、被検体に挿入される医用デバイスの先端を鮮明にすることが可能になる。その結果、医用デバイスを用いる治療に支障をきたさずに済む。
【実施例0030】
実施例1では、撮影空間の座標毎のボケデータを用いてトモシンセシス画像を補正することについて説明した。ボケデータを用いる補正は、高周波成分を強調する処理に相当し、トモシンセシス画像に含まれるホワイトノイズ等を強調し顕在化させる場合がある。そこで実施例2では、ホワイトノイズ等の顕在化を抑制するために、トモシンセシス画像を補正する範囲を限定することについて説明する。なお実施例2の医用画像処理装置1のハードウェア構成は実施例1と同じであるので説明を省略する。
【0031】
図5を用いて実施例2で実行される処理の流れの一例についてステップ毎に説明する。
【0032】
(S301)
実施例1と同様に、投影画像が取得される。
【0033】
(S302)
実施例1と同様に、トモシンセシス画像が生成される。
【0034】
(S503)
演算部2は、S302で生成されたトモシンセシス画像から、医用デバイスの領域である医用デバイス領域を抽出する。医用デバイスは材質が既知であるので、トモシンセシス画像の輝度値が所定の範囲である領域を医用デバイス領域として抽出しても良い。また、医用デバイスは形状が既知であるので、輝度値に基づいて抽出された医用デバイス領域の中から形状の類似性に基づいて医用デバイス領域を再抽出しても良い。
【0035】
なお医用デバイス領域の抽出には、既知の医用デバイス領域を含む断層画像を教師データとして学習することにより生成された機械学習エンジンが用いられても良い。機械学習エンジンは、例えばCNN(Convolutional Neural Network)を用いて構成される。教師データに用いられる断層画像はトモシンセシス画像でも良いし、X線CT画像でも良い。ただし、教師データとしてX線CT画像を用いる場合、X線CT画像の空間分解能がより高いため、医用デバイス領域の抽出精度を向上させることができる。
【0036】
またトモシンセシス画像から抽出された医用デバイス領域の位置は、トモシンセシス画像の生成に用いられた投影画像から抽出される医用デバイスの領域に基づいて修正されても良い。具体的な手順について説明する。(1)トモシンセシス画像の生成に用いられた複数の投影画像のそれぞれから医用デバイスの領域を抽出する。(2)トモシンセシス画像から抽出された医用デバイス領域を各投影画像と同じ投影角度で順投影演算することで、医用デバイス領域が擬似的に投影された順投影データを得る。(3)各順投影データに含まれる医用デバイス領域と、各投影画像から抽出された医用デバイスの領域との差異を算出する。(4)算出された差異が所定の範囲に収まっていれば終了となり、収まっていなければトモシンセシス画像の中の医用デバイス領域を修正したのち、(2)へ戻り、(3)、(4)を繰り返す。すなわち、トモシンセシス画像から抽出された医用デバイス領域を順投影演算して得られる順投影データと、投影画像から抽出される医用デバイスの領域との差異が所定の範囲に収まるように、トモシンセシス画像に含まれる医用デバイス領域が修正される。
【0037】
(S504)
演算部2は、S503で抽出された医用デバイス領域とその周辺領域の座標毎のボケデータを読み出す。医用デバイス領域の周辺領域とは、医用デバイス領域の境界から所定の画素数、例えば3画素までの領域である。
【0038】
(S505)
演算部2は、S302で生成されたトモシンセシス画像をS504で読み出されたボケデータを用いて補正する。すなわちトモシンセシス画像を補正する範囲が、医用デバイス領域とその周辺領域に限定される。補正される範囲が医用デバイス領域とその周辺領域に限定されることにより、ホワイトノイズ等の顕在化が抑制される。
【0039】
なおトモシンセシス画像の補正に用いられるボケデータは、医用デバイスの種類に応じて設定される調整係数を用いて調整されても良い。医用デバイスの種類に応じてX線減弱係数は異なるため、ボケの程度も変化する。そこで、医用デバイスの種類に応じてボケデータを調整しても良い。医用デバイスの種類毎の調整係数は、例えば図6に示されるようなテーブルの形式で記憶装置4に記憶される。図6に例示されるテーブルでは、カテーテルには調整係数α1が、内視鏡にはα2が、ガイドシースにはα3が設定されている。ボケデータは、医用デバイスの種類毎の調整係数が乗じられることにより調整される。被検体203に挿入される医用デバイスの種類に応じて、ボケデータが調整されることにより、医用デバイス領域がより鮮明になる。
【0040】
演算部2は、補正されたトモシンセシス画像を表示装置7に表示させる。図7に表示ウィンドウの一例を示す。図7に例示される表示ウィンドウでは、抽出された医用デバイス領域701が胸部のトモシンセシス画像に重畳表示されるとともに、医用デバイスの進行方向を示す矢印702が表示される。医用デバイスの進行方向は医用デバイスの先端と屈曲部から算出される。また医用デバイスの先端と屈曲部は、抽出された医用デバイス領域701の細線化処理によって求められる。また複数のトモシンセシス画像から生成される3次元画像に、抽出された医用デバイス領域の3次元形状が重畳表示されても良い。
【0041】
以上説明した処理の流れにより、トモシンセシス画像に含まれるボケが補正されるので、被検体に挿入される医用デバイスの先端を鮮明にすることが可能になる。また補正される範囲が医用デバイス領域とその周辺領域に限定されるので、ホワイトノイズ等の顕在化を抑制できる。
【0042】
なお抽出された医用デバイス領域に基づいてトモシンセシス画像を補正する範囲を設定する代わりに、トモシンセシス画像のコントラストに応じて設定される調整係数を用いてボケデータを調整し、調整後のボケデータを用いてトモシンセシス画像を補正しても良い。トモシンセシス画像のコントラストに応じて設定される調整係数を用いてボケデータを調整することにより、トモシンセシス画像のコントラストに応じて補正の程度が調整される。
【0043】
図8に調整係数αとコントラストCの関係の一例を示す。図8には、コントラストCがある基準値であるときに最小を示し、コントラストCの絶対値に応じて大きくなる調整係数αが例示される。座標毎のボケデータは、当該座標のコントラストCに応じて設定される調整係数αが乗じられることにより調整される。すなわち、医用デバイス領域を抽出することなく、医用デバイス領域とその周辺領域が鮮明にすることができる。
【実施例0044】
実施例1及び実施例2では、取得された投影画像を用いて生成されるトモシンセシス画像を補正することについて説明した。補正後のトモシンセシス画像の時間分解能が不十分であると、治療等に支障をきたす場合がある。時間分解能とは、トモシンセシス画像の生成のために必要な撮影時間を意味する。なおX線源が等速に移動し撮影することを前提した場合、撮影時間は投影画像の枚数に比例する。動く医用デバイスに対して撮影時間を短く、つまり投影画像の枚数を少なくするほど、トモシンセシス画像上の医用デバイスの位置ずれが小さく、一方で撮影時間を長く、つまり投影画像の枚数を多くするほど、トモシンセシス画像上の医用デバイスの位置ずれが大きい。そこで実施例3では、許容範囲内の医用デバイスの位置ずれに対して、必要な時間分解能を有するトモシンセシス画像を表示するために、トモシンセシス画像の生成に用いる投影画像を選択することについて説明する。なお実施例3の医用画像処理装置1のハードウェア構成は実施例1と同じであるので説明を省略する。
【0045】
図9を用いて実施例3で実行される処理の流れの一例についてステップ毎に説明する。
【0046】
(S901)
演算部2は、時間分解能を設定する。すなわち演算部2は、時間分解能設定部として機能する。
【0047】
時間分解能の設定には図10に例示される操作ウィンドウが使用されても良い。図10の操作ウィンドウは、時間分解能調整部1001を有する。時間分解能調整部1001は、操作者が時間分解能を調整するときに用いられ、例えばスライドバーやテキストボックスによって構成される。
【0048】
また演算部2は、トモシンセシス画像の生成に先立って撮影されるX線透視画像から医用デバイスの速度を算出し、算出された速度に基づいて時間分解能を設定しても良い。医用デバイスの速度が大きいほど、時間分解能は高く設定される。
【0049】
(S902)
演算部2は、S901で設定された時間分解能に基づいて、トモシンセシス画像の生成に用いられる投影画像の枚数を設定する。投影画像の枚数は、設定された時間分解能が低いほど多く、時間分解能が高いほど少なく設定される。
【0050】
(S903)
演算部2は、S902で設定された枚数の投影画像を取得する。演算部2は、設定された枚数の投影画像を撮影するようにX線トモシンセシス装置200に指示を出しても良いし、記憶装置4や医用画像データベース11に予め記憶される投影画像の中から、設定された枚数の投影画像を読み出しても良い。
【0051】
(S302)
実施例1と同様に、トモシンセシス画像が生成される。
【0052】
(S503)
実施例2と同様に、トモシンセシス画像から医用デバイス領域が抽出される。
【0053】
(S504)
実施例2と同様に、医用デバイス領域とその周辺領域の座標毎のボケデータが読み出される。
【0054】
(S505)
実施例2と同様に、トモシンセシス画像が補正される。
【0055】
以上説明した処理の流れにより、トモシンセシス画像に含まれるボケが補正されるので、被検体に挿入される医用デバイスの先端を鮮明にすることが可能になる。また設定された時間分解能に応じて選択された投影画像を用いてトモシンセシス画像が生成されるので、必要な時間分解能を有するトモシンセシス画像が表示される。
【0056】
以上、本発明の複数の実施例について説明した。なお本発明は上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせても良い。さらに、上記実施例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除しても良い。
【符号の説明】
【0057】
1:医用画像処理装置、2:演算部、3:メモリ、4:記憶装置、5:ネットワークアダプタ、6:システムバス、7:表示装置、8:入力装置、10:医用画像撮影装置、11:医用画像データベース、200:X線トモシンセシス装置、201:X線源、202:X線検出器、203:被検体、204:寝台、205:操作卓、701:医用デバイス領域、702:矢印、1001:時間分解能調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10