(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019018
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】金属粒子担持触媒、γ-ブチロラクトンの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 27/185 20060101AFI20230202BHJP
C07D 307/33 20060101ALI20230202BHJP
B01J 33/00 20060101ALI20230202BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230202BHJP
【FI】
B01J27/185 Z
C07D307/33 150
B01J33/00 C
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123466
(22)【出願日】2021-07-28
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊
(72)【発明者】
【氏名】レ ディン ソン
【テーマコード(参考)】
4C037
4G169
4H039
【Fターム(参考)】
4C037EA02
4G169AA03
4G169BA22A
4G169BA22B
4G169BB05A
4G169BB05B
4G169BB14A
4G169BB14B
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169CB02
4G169CB38
4G169DA05
4G169EE01
4G169FC08
4H039CA42
4H039CB20
4H039CG10
(57)【要約】
【課題】コハク酸からγ-ブチロラクトンを選択性よく製造できる、金属粒子担持触媒の提供。
【解決手段】銅およびパラジウムを含む金属粒子とポリビニルピロリドンとを含む高分子保護金属粒子と、高分子保護金属粒子を担持するハイドロキシアパタイトと、を含む、金属粒子担持触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅およびパラジウムを含む金属粒子とポリビニルピロリドンとを含む高分子保護金属粒子と、前記高分子保護金属粒子を担持するハイドロキシアパタイトと、を含む、金属粒子担持触媒。
【請求項2】
前記パラジウムに対する前記銅のモル比(前記銅のモル量/前記パラジウムのモル量)が、60/40~20/80である、請求項1に記載の金属粒子担持触媒。
【請求項3】
前記ポリビニルピロリドンの重量平均分子量が3000~500000である、請求項1または2に記載の金属粒子担持触媒。
【請求項4】
前記銅および前記パラジウムの合計担持モル量が、前記金属粒子担持触媒1グラム当たり、1.0×10-6~1.0×10-2モルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属粒子担持触媒。
【請求項5】
前記金属粒子の平均粒径が1.0~10.0nmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の金属粒子担持触媒。
【請求項6】
コハク酸からγ-ブチロラクトンを製造するために用いられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の金属粒子担持触媒。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の金属粒子担持触媒の存在下、コハク酸からγ-ブチロラクトンを製造する、γ-ブチロラクトンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粒子担持触媒、および、γ-ブチロラクトンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオマス由来原料としてコハク酸が注目されている。
例えば、非特許文献1においては、コハク酸から1,4-ブタンジオールを製造できる旨が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ACS Sustainable Chem. Eng. 2019, 7, 18483
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1のように従来技術においては、コハク酸から1,4-ブタンジオールを製造できる触媒に関する開示はあるが、コハク酸からγ-ブチロラクトンを選択性よく製造できる触媒はなく、その開発が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、コハク酸からγ-ブチロラクトンを選択性よく製造できる、金属粒子担持触媒を提供することを課題とする。
また、本発明は、γ-ブチロラクトンの製造方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、以下に示す構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0007】
(1) 銅およびパラジウムを含む金属粒子とポリビニルピロリドンとを含む高分子保護金属粒子と、高分子保護金属粒子を担持するハイドロキシアパタイトと、を含む、金属粒子担持触媒。
(2) パラジウムに対する銅のモル比(銅のモル量/パラジウムのモル量)が、60/40~20/80である、(1)に記載の金属粒子担持触媒。
(3) ポリビニルピロリドンの重量平均分子量が3000~500000である、(1)または(2)に記載の金属粒子担持触媒。
(4) 銅およびパラジウムの合計担持モル量が、金属粒子担持触媒1グラム当たり、1.0×10-6~1.0×10-2モルである、(1)~(3)のいずれかに記載の金属粒子担持触媒。
(5) 金属粒子の平均粒径が1.0~10.0nmである、(1)~(4)のいずれかに記載の金属粒子担持触媒。
(6) コハク酸からγ-ブチロラクトンを製造するために用いられる、(1)~(5)のいずれかに記載の金属粒子担持触媒。
(7) (1)~(6)のいずれかに記載の金属粒子担持触媒の存在下、コハク酸からγ-ブチロラクトンを製造する、γ-ブチロラクトンの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コハク酸からγ-ブチロラクトンを選択性よく製造できる、金属粒子担持触媒を提供できる。
また、本発明によれば、γ-ブチロラクトンの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0010】
<金属粒子担持触媒>
本発明の金属粒子担持触媒は、銅およびパラジウムを含む金属粒子とポリビニルピロリドンとを含む高分子保護金属粒子と、高分子保護金属粒子を担持するハイドロキシアパタイトと、を含む。
本発明の金属粒子担持触媒は、コハク酸からγ-ブチロラクトンを選択性良く製造できる。また、本発明の金属粒子担持触媒は、リサイクル性にも優れ、複数回にわたって再利用しても、選択性の劣化が抑制されている。
以下、金属粒子担持触媒に含まれる材料について詳述する。
【0011】
高分子保護金属粒子は、銅およびパラジウムを含む金属粒子とポリビニルピロリドンとを含む。
【0012】
金属粒子は、銅およびパラジウムを含む。つまり、金属粒子は、銅元素およびパラジウム元素を含む。
金属粒子中、銅およびパラジウムは、それぞれ0価の状態であってもよいし、2価の状態であってもよい。銅およびパラジウムは、それぞれ0価の状態であることが好ましい。
金属粒子中において、パラジウムに対する銅のモル比(銅のモル量/パラジウムのモル量)は特に制限されないが、コハク酸からγ-ブチロラクトンをより選択性よく製造できる点、または、コハク酸の転化率がより高い点の少なくとも一方の効果が得られる点(以下、単に「本発明の効果がより優れる点」ともいう。)で、60/40~20/80が好ましく、50/50~30/70がより好ましく、45/55~35/65がさらに好ましい。
金属粒子中における銅とパラジウムとの合計担持モル量の測定方法としては、原子吸光分析法(AAS)が挙げられる。
【0013】
金属粒子の平均粒径(平均直径)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、1.0~10.0nmが好ましく、1.5~5.0nmがより好ましい。
金属粒子の平均粒径の測定方法としては、透過型電子顕微鏡にて金属粒子担持触媒中の100個の金属粒子の粒径(直径)をそれぞれ測定し、それらを算術平均して得られる。
【0014】
高分子保護金属粒子は、ポリビニルピロリドンを含む。ポリビニルピロリドンは、金属粒子中の金属(銅、パラジウム)を保護する保護剤として作用する。ポリビニルピロリドンは、上記金属粒子の周りを取り囲むように配置される場合が多い。
ポリビニルピロリドンの重量平均分子量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、3000~500000が好ましく、5000~200000がより好ましく、10000~100000がさらに好ましく、20000~50000が特に好ましい。
上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定できる。
なお、市販品に関してはカタログ値を採用できる。
【0015】
金属粒子担持触媒は、ハイドロキシアパタイトを担体として含む。上述した、高分子保護金属粒子は、ハイドロキシアパタイト上に担持されている。
ハイドロキシアパタイトとは、Ca10(PO4)6(OH)2の基本構造を有するものをいう。Ca欠損型のアパタイトCa10-x(HPO4)y(PO4)6-y(OH)2-zや、炭酸含有アパタイトCa10-x(HPO4)y(PO4)6-y(CO3)a(OH)2-zなど(ここで、xは1~2、好ましくは1であり、yは0~6、好ましくは1であり、zは0~2、好ましくは1であり、aは1~5である。)、または、Caが他の金属に一部もしくは全部置換した、例えば、Ca8Ba2(PO4)6(OH)2などもハイドロキシアパタイトに含まれる。
【0016】
金属粒子担持触媒中における、銅およびパラジウムの合計担持モル量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、金属粒子担持触媒1グラム当たり、1.0×10-6~1.0×10-2モルが好ましく、1.0×10-5~1.0×10-3モルがより好ましい。
【0017】
金属粒子担持触媒の形状および寸法は、特に制限されない。
金属粒子担持触媒の形状としては、例えば、粉状の形状が挙げられる。
【0018】
<金属粒子担持触媒の製造方法>
金属粒子担持触媒の製造方法は特に制限されないが、効率的に金属粒子担持触媒を製造できる点で、高分子保護金属粒子を得る工程1と、高分子保護金属粒子とハイドロキシアパタイトとを接触させて金属粒子担持触媒を得る工程2と有する態様が挙げられる。
以下、各工程の手順について詳述する。
【0019】
(工程1)
工程1は、高分子保護金属粒子を得る工程である。
工程1の具体的な手順としては、ポリビニルピロリドンの存在下にて、銅イオンおよびパラジウムイオンを還元して、上記高分子保護金属粒子を得る工程が挙げられる。
ポリビニルピロリドンは、上述した通りである。
銅イオンの供給源は特に制限されず、例えば、銅塩が挙げられ、より具体的には、酢酸銅が挙げられる。
パラジウムイオンの供給源は特に制限されず、例えば、パラジウム塩が挙げられ、より具体的には、酢酸パラジウムが挙げられる。
【0020】
工程1において、ポリビニルピロリドンの存在下にて、銅イオンおよびパラジウムイオンを還元する方法としては、アルコール還元法が好ましい。還元剤として用いるアルコールとしては、例えば、2-エトキシエタノール、エタノール、および、プロパノールが挙げられる。
アルコール還元法の条件は、使用される還元剤(アルコール)によって適宜最適な条件が選択される。例えば、アルコールを加熱還流させることが好ましい。加熱還流の時間は、1~5時間が好ましい。
【0021】
工程1において、銅イオンとパラジウムイオンとを還元する順序は特に制限されず、銅イオンとパラジウムイオンとを同時に還元してもよいし、銅イオンおよびパラジウムイオンの一方を還元し、次いで他方を連続的に還元してもよい。
上記同時に還元する場合には、銅およびパラジウムが不規則に配置された合金構造が形成されやすい。また、銅イオンおよびパラジウムイオンをそれぞれ連続的に還元する場合には、タンデム構造やコアシェル構造が形成されやすい。
【0022】
(工程2)
工程2は、高分子保護金属粒子とハイドロキシアパタイトとを接触させて金属粒子担持触媒を得る工程である。
ハイドロキシアパタイトは、上述した通りである。
高分子保護金属粒子とハイドロキシアパタイトとを接触させる方法は特に制限されず、例えば、高分子保護金属粒子を含む溶液中にハイドロキシアパタイトを添加する方法や、ハイドロキシアパタイトを含む溶液中に高分子保護金属粒子を添加する方法が挙げられる。
【0023】
高分子保護金属粒子とハイドロキシアパタイトとの接触は、溶媒の存在下にて実施することが好ましい。溶媒としては、水、および、有機溶媒(例えば、アルコール)が挙げられる。
【0024】
高分子保護金属粒子とハイドロキシアパタイトとの接触は、加熱条件下にて実施してもよい。
加熱温度は特に制限されず、50℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。加熱温度は、使用する溶媒の還流温度であってもよい。
加熱時間は特に制限されず、0.5~3時間が好ましく、0.5~2時間がより好ましい。
【0025】
上記処理により得られた金属粒子担持触媒は、遠心分離や吸引ろ過などの公知の方法によって分離できる。
【0026】
<γ-ブチロラクトンの製造方法>
上述した金属粒子担持触媒は、コハク酸からγ-ブチロラクトンを製造するための触媒として好適に用いられる。
本発明のγ-ブチロラクトンの製造方法は、金属粒子担持触媒の存在下において、コハク酸からγ-ブチロラクトンを製造する方法である。上記反応においては、コハク酸の水素化(水素化反応)が進行して、コハク酸からγ-ブチロラクトンが製造される。
【0027】
コハク酸と金属粒子担持触媒との混合割合は特に制限されず、本発明の効果がより優れる点で、金属粒子担持触媒に対するコハク酸の質量割合(コハク酸の質量/金属粒子担持触媒の質量)は、0.1~10が好ましく、0.5~5がより好ましい。
【0028】
上記反応は、加熱条件下にて実施することが好ましい。つまり、金属粒子担持触媒の存在下、コハク酸に対して加熱処理を実施することが好ましい。
加熱温度は特に制限されず、本発明の効果がより優れる点で、150~250℃が好ましく、175~225℃がより好ましく、190~210℃がさらに好ましい。
加熱時間は特に制限されず、本発明の効果がより優れる点で、3~72時間が好ましく、20~60時間がより好ましい。
【0029】
上記反応は、溶媒の存在下にて実施することが好ましい。
使用される溶媒は特に制限されず、水、および、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、エーテル系溶媒がより好ましく、1,4-ジオキサンがさらに好ましい。
【0030】
上記反応は、水素ガスの存在下にて実施することが好ましい。
反応系内の水素ガスの圧力は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、0.1MPa以上が好ましく、0.3MPa以上がより好ましい。また、水素ガスの圧力の上限は特に制限されず、本発明の金属粒子担持触媒を使用するとより低圧力で反応が進行しやすく、10.0MPa以下が好ましい。
【0031】
上記反応においては、γ-ブチロラクトンを製造した後に、金属粒子担持触媒を反応系から分離する処理を実施してもよい。
金属粒子担持触媒は、実質的に溶媒に不溶性の不均一系触媒である。それ故、容易に反応系から分離できる。金属粒子担持触媒を反応系から分離する手段は特に制限されず、デカンテーション、遠心分離または濾過のような、当該技術分野で慣用される通常の分離手段を使用すればよい。
反応系から分離された使用済みの金属粒子担持触媒は、再使用することが好ましい。
よって、上記製造方法は、分離された使用済の金属粒子担持触媒を、さらなるγ-ブチロラクトンの製造に再使用する、再使用工程を含んでもよい。
【実施例0032】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
<実施例A>
(実施例A1)
銅およびパラジウムの合計質量に対する銅の含有量が40質量%となるように、Cu(OAc)2・H2O(8.1mg)とPd(OAc)2(13.7mg)とを2-エトキシエタノール(50mL)に添加した。得られた溶液にさらに、ポリビニルピロリドン(重量平均分子量40000)(0.425g)を添加した。
次に、得られた溶液を140℃で2時間加熱した。
その後、得られた溶液にハイドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)(1.0g)を添加して、1時間にわたって加熱還流させた。
得られた溶液をろ過して、固形分を回収した。得られた固形分を水(3L)で洗浄して、その後、真空下にて室温で乾燥させて、金属粒子担持触媒A1を得た。
【0034】
得られた金属粒子担持触媒A1は、担体であるハイドロキシアパタイト上に、銅およびパラジウムを含む高分子保護金属粒子が担持されていた。
金属粒子担持触媒A1中における銅およびパラジウムの合計担持モル量は、金属粒子担持触媒1g当たり、0.07ミリモル(AAS分析結果)であった。
得られた金属粒子担持触媒A1を透過型電子顕微鏡(日立:H-7100、加速電圧:100kV)にて観察したところ、高分子保護金属粒子中の金属粒子の平均直径は、3.7nmであった。
また、得られた金属粒子担持触媒A1のX線光電子分光(島津-Kratоs:Axis-Ultra DLD)測定を行ったところ、Cu2P3/2に由来するピークが0.4eV程度シフトし、Pd3d5/2に由来するピークが0.3eV程度シフトしていた。この結果より、PdとCuとの強い相互作用によりPdからCuへの電荷移動が生じていることがわかり、両者が合金化していることがわかった。
さらに、得られた金属粒子担持触媒A1のX線吸収スペクトル(Saga-LS、BL07:課題番号2010105R)測定を行った。参照試料としてPdブラック(金属パラジウム)についても同様にスペクトルを得た。Pd-K吸収端由来の広域X線吸収微細構造をフーリエ変換した波形ピークから、金属パラジウムとは異なり2.2Å付近にもピークが認められ、PdとCuが合金化していることがわかった。
【0035】
次に、1,4-ジオキサン(10mL)にコハク酸(0.1g)および触媒A1(0.1g)をオートクレーブ内に加えて、オートクレーブに水素(8MPa)を導入した。次に、熱源(温度200℃)を用いてオートクレーブを48時間加熱して反応を進行させた。得られた生成物をガスクロマトグラフィーにて分析し、γ-ブチロラクトンの生成を確認した。生成物中におけるγ-ブチロラクトンの選択率は99%超であった。なお、コハク酸の転化率は、95%であった。
【0036】
(実施例A2)
ポリビニルピロリドンの重量平均分子量を3500に変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果は後述する表1に示す。
【0037】
(実施例A3)
ポリビニルピロリドンの重量平均分子量を8000に変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果は後述する表1に示す。
【0038】
(実施例A4)
ポリビニルピロリドンの重量平均分子量を58000に変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果は後述する表1に示す。
【0039】
(実施例A5)
ポリビニルピロリドンの重量平均分子量を360000に変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果は後述する表1に示す。
【0040】
(比較例CA1)
ポリビニルピロリドンの代わりに1-ビニル-2-ピロリドンを用いた以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果は後述する表1に示す。
【0041】
(比較例CA2)
ポリビニルピロリドンの代わりに1-エチル-2-ピロリドンを用いた以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果は後述する表1に示す。
【0042】
(比較例CA3)
ポリビニルピロリドンの代わりにポリビニルアルコール(PVA、平均重合度3500)を用いた以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果は後述する表1に示す。
【0043】
(比較例CA4)
ポリビニルピロリドンの代わりにデンプンを用いた以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果は後述する表1に示す。
【0044】
(比較例CA5)
ポリビニルピロリドンを用いない以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果は後述する表1に示す。
【0045】
上記実施例A1~A5および比較例CA1~CA5の結果を表1にまとめて示す。
表1中、「平均粒径(nm)」欄は、金属粒子担持触媒中の金属粒子の平均粒径(nm)を表す。
表1中、「転化率」欄は、コハク酸の変化した割合(%)を表す。なお、後段での表でも同様である。
表1中、「選択率」欄は、得られた生成物中のγ-ブチロラクトンの選択率(%)を表す。なお、後段での表でも同様である。
表1中、「-」は未測定であることを意味する。
【0046】
【0047】
表1に示すように、本発明の金属粒子担持触媒を使用すると、所望の効果が得られることが確認された。
表1に示すように、ポリビニルピロリドンの重量平均分子量が5000~200000(好ましくは10000~100000、より好ましくは20000~50000)の場合、コハク酸の転化率がより優れることが確認された。
表1に示すように、ポリビニルピロリドン以外の高分子保護剤を用いた場合、または、保護配位剤を用いない場合では、所望の効果が得られなかった。
【0048】
<実施例B>
(実施例B1)
銅およびパラジウムの合計質量に対する銅の含有量が50質量%となるように調整した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果は後述する表2に示す。
【0049】
(実施例B2)
銅およびパラジウムの合計質量に対する銅の含有量が60質量%となるように調整した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果は後述する表2に示す。
【0050】
(実施例B3)
銅およびパラジウムの合計質量に対する銅の含有量が20質量%となるように調整した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果は後述する表2に示す。
【0051】
表2中、「Pdに対するCuのモル比」は、金属粒子中のパラジウムに対する銅のモル比を表す。
【0052】
【0053】
表2に示すように、Pdに対するCuのモル比を変更しても所望の効果が得られることが確認された。
なかでも、Pdに対するCuのモル比が50/50~30/70(好ましくは45/55~35/65)の場合、より効果が優れることが確認された。
【0054】
<実施例C>
反応時間を48時間から24時間に変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。
次に、反応終了後の反応液から金属粒子担持触媒を遠心分離で回収し、回収した金属粒子担持触媒を1,4-ジオキサンで4回洗浄し、真空下にて室温で乾燥した。回収された金属粒子担持触媒を用いて、反応時間を48時間から24時間に変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。
上記金属粒子担持触媒を再回収して、γ-ブチロラクトンの製造を行う操作をさらに3回繰り返した。つまり、金属粒子担持触媒を合計3回再利用した。結果を表3に示す。
【0055】
表3中、「1回目」~「4回目」は、金属粒子担持触媒の利用回数を表す。
【0056】
【0057】
表3に示すように、本発明の金属粒子担持触媒を繰り返し使用しても、効果の劣化がほとんど見られないことが確認された。
【0058】
<実施例D>
(実施例D1)
反応時間を48時間から12時間に変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果を表4に示す。
【0059】
(実施例D2)
反応時間を48時間から24時間に変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果を表4に示す。
【0060】
(実施例D3)
反応時間を48時間から72時間に変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果を表4に示す。
【0061】
【0062】
表4に示すように、反応時間を変更した場合も所望の効果が得られることが確認された。
【0063】
<実施例E>
(実施例E1)
反応温度を200℃から180℃に変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果を表5に示す。
【0064】
【0065】
表5に示すように、反応温度を変更した場合も所望の効果が得られることが確認された。
【0066】
<実施例F>
(実施例F1)
金属粒子担持触媒中における銅およびパラジウムの合計担持モル量を0.1ミリモルから0.2ミリモルに変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果を表6に示す。
【0067】
(実施例F2)
金属粒子担持触媒中における銅およびパラジウムの合計担持モル量を0.1ミリモルから0.5ミリモルに変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果を表6に示す。
【0068】
(実施例F3)
金属粒子担持触媒中における銅およびパラジウムの合計担持モル量を0.1ミリモルから1.0ミリモルに変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果を表6に示す。
【0069】
表6中、「担持量(ミリモル)」は、金属粒子担持触媒中における銅およびパラジウムの合計担持モル量を表す。
【0070】
【0071】
表6に示すように、金属粒子担持触媒中における銅およびパラジウムの合計担持モル量を変更した場合も所望の効果が得られることが確認された。
【0072】
<実施例G>
(比較例CG1)
ハイドロキシアパタイトを酸化アルミニウムに変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果を表7に示す。
【0073】
(比較例CG2)
ハイドロキシアパタイトを二酸化ケイ素に変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果を表7に示す。
【0074】
【0075】
表7に示すように、ハイドロキシアパタイト以外の担体では、所望の効果が得られなかった。
【0076】
<実施例H>
(実施例H1)
水素の圧力を8MPaから6MPaに変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果を表8に示す。
【0077】
(実施例H2)
水素の圧力を8MPaから4MPaに変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果を表8に示す。
【0078】
(実施例H3)
水素の圧力を8MPaから2MPaに変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果を表8に示す。
【0079】
(実施例H4)
水素の圧力を8MPaから1MPaに変更した以外は、実施例A1と同様の手順に従って、γ-ブチロラクトンを製造した。結果を表8に示す。
【0080】
【0081】
表8に示すように、水素圧を変更しても同様の効果が得られることが確認された。
【0082】
<実施例I>
実施例1Aで使用した金属粒子担持触媒A1をステンレスチューブに充填した。得られたステンレスチューブを200℃に加熱し、ステンレスチューブ内に水素を0.8MPa加圧しつつ、ステンレスチューブ内に0.05Mコハク酸の液体を0.3mL/min、水素を10mL/min流したところ、γ-ブチロラクトンの製造が確認された。