(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019020
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】コンピュータプログラム、認知機能推定方法、学習モデルの生成方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G16H 50/20 20180101AFI20230202BHJP
G16H 10/00 20180101ALI20230202BHJP
【FI】
G16H50/20
G16H10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123471
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510094724
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立循環器病研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 正博
(72)【発明者】
【氏名】林 博之
(72)【発明者】
【氏名】仲辻 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】柳 達也
(72)【発明者】
【氏名】長谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】西村 邦宏
(72)【発明者】
【氏名】尾形 宗士郎
(72)【発明者】
【氏名】村田 峻輔
(72)【発明者】
【氏名】竹上 未紗
(72)【発明者】
【氏名】中奥 由里子
(72)【発明者】
【氏名】難波 雅之
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
5L099AA21
(57)【要約】
【課題】認知症の判断を行うシステムの導入容易化が期待できるコンピュータプログラム、認知機能推定方法、学習モデルの生成方法及び情報処理装置を提供する。
【解決手段】施設内の電気機器毎に推定された使用状況情報を取得し、使用状況情報を入力した場合に、前記施設を使用する対象者の認知機能に関する認知機能情報を出力するよう機械学習がなされた学習モデルに、取得した使用状況情報を入力し、当該学習モデルが出力する認知機能情報を取得し、取得した前記認知機能情報を基に、対象者の認知機能を推定する。施設内の電気機器毎に推定された使用状況情報と、前記施設を使用する対象者の認知機能に関する認知機能情報とを対応付けた訓練データを取得し、取得した前記訓練データを用いた機械学習を行うことにより、使用状況情報を入力した場合に対象者の認知機能情報を出力する学習モデルを生成する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内の電気機器毎に推定された使用状況情報を取得し、
使用状況情報を入力した場合に、前記施設を使用する対象者の認知機能に関する認知機能情報を出力するよう機械学習がなされた学習モデルに、取得した使用状況情報を入力し、当該学習モデルが出力する認知機能情報を取得し、
取得した前記認知機能情報を出力する
処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項2】
前記使用状況情報は、各電気機器の消費電力又は消費電流から推定される各電気機器の使用時間である、
請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項3】
前記学習モデルは、前記使用状況情報と、対象者の年齢、性別又は教育歴とを入力情報として受け付け、当該入力情報に応じた対象者の認知機能情報を出力する、
請求項1又は請求項2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項4】
前記学習モデルが出力する認知機能情報は、対象者が認知機能に関して正常状態、軽度認知障害又は認知障害のいずれであるかを分類した情報である、
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項5】
前記学習モデルが出力する認知機能情報は、対象者がうつ状態であるか否かを分類した情報である、
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項6】
前記学習モデルは、時系列的な前記使用状況情報の入力を受け付けて、時系列的な前記認知機能情報を出力する、
請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項7】
前記使用状況情報と前記認知機能情報とを端末装置の表示部に表示する処理を行う
請求項1から請求項6までのいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項8】
期間に関する情報と、前記期間について推定された電気機器毎の使用時間に関する情報と、前記期間について推定された対象者の認知機能に関する情報とを対応付けた表示用の情報を出力する、
請求項1から請求項7までのいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
対象者の属性に応じて別に機械学習がなされた複数の学習モデルの中から、対象者の属性に応じて一の学習モデルを選択し、
選択した前記学習モデルに使用状況情報を入力して認知機能情報を取得する、
請求項1から請求項8までのいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
前記対象者の属性は、当該対象者が単身者であるか否かである、
請求項9に記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
施設内の電気機器毎に推定された使用状況情報を取得し、
取得した各電気機器の使用状況情報に基づいて、前記施設を使用する対象者の認知機能を推定する
処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項12】
前記使用状況情報は、各電気機器の消費電力又は消費電流から推定される各電気機器の使用時間である、
請求項11に記載のコンピュータプログラム。
【請求項13】
前記使用状況情報と、対象者の年齢、性別又は教育歴とに基づいて、前記対象者の認知機能を推定する、
請求項11又は請求項12に記載のコンピュータプログラム。
【請求項14】
対象者が認知機能に関して正常状態、軽度認知障害又は認知障害のいずれであるかを推定する、
請求項11から請求項13までのいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項15】
対象者がうつ状態であるか否かを推定する、
請求項11から請求項13までのいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
【請求項16】
施設内の電気機器毎に推定された使用状況情報と、前記施設を使用する対象者の認知機能に関する認知機能情報とを対応付けた訓練データを取得し、
取得した前記訓練データを用いた機械学習を行うことにより、使用状況情報を入力した場合に対象者の認知機能情報を出力する学習モデルを生成する、
処理をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項17】
施設内の電気機器毎に推定された使用状況情報を取得し、
使用状況情報を入力した場合に、前記施設を使用する対象者の認知機能に関する認知機能情報を出力するよう機械学習がなされた学習モデルに、取得した使用状況情報を入力し、当該学習モデルが出力する認知機能情報を取得し、
取得した前記認知機能情報を基に、対象者の認知機能を推定する
認知機能推定方法。
【請求項18】
施設内の電気機器毎に推定された使用状況情報と、前記施設を使用する対象者の認知機能に関する認知機能情報とを対応付けた訓練データを取得し、
取得した前記訓練データを用いた機械学習を行うことにより、使用状況情報を入力した場合に対象者の認知機能情報を出力する学習モデルを生成する、
学習モデルの生成方法。
【請求項19】
施設内の電気機器毎に推定された使用状況情報を取得する使用状況情報取得部と、
使用状況情報を入力した場合に、前記施設を使用する対象者の認知機能に関する認知機能情報を出力するよう機械学習がなされた学習モデルに、取得した使用状況情報を入力し、当該学習モデルが出力する認知機能情報を取得する認知機能情報取得部と、
取得した前記認知機能情報を基に、対象者の認知機能を推定する推定部と
を備える情報処理装置。
【請求項20】
施設内の電気機器毎に推定された使用状況情報と、前記施設を使用する対象者の認知機能に関する認知機能情報とを対応付けた訓練データを取得する取得部と、
取得した前記訓練データを用いた機械学習を行うことにより、使用状況情報を入力した場合に対象者の認知機能情報を出力する学習モデルを生成する生成部と
を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の認知機能を推定するためのコンピュータプログラム、認知機能推定方法、学習モデルの生成方法及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会の高齢化が進み、高齢の単身者も増加している。年齢が高まるほど認知機能が低下する虞があるが、認知機能がどの程度であるかを一般人が判断することは難しく、特に高齢の単身者の場合には認知機能が低下しても気付かれにくい。従来、例えば医者又は専門家等が対象者に対して問診等を行うことで認知機能の評価が行われてきたが、対象者の協力を得る必要があり、また問診等を行った時点での認知機能しか評価できなかった。
【0003】
特許文献1においては、ユーザの体動の測定結果に基づいてユーザの睡眠時間帯を日毎に特定し、ユーザにより使用される電気機器が電源オン状態であるか否かを判別し、特定された睡眠時間帯に電気機器が電源オン状態であると判別される日の発生頻度を消し忘れ頻度として算出し、算出した消し忘れ頻度に基づいてユーザが軽度認知症等を発症している可能性を判定する認知症情報出力システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の認知症情報出力システムは、体動を測定するための機器を対象者の居室等に設置する必要があり、コスト及び設置作業等の問題で導入の敷居が高かった。また介護施設の居室のように対象者の移動範囲が一部屋等の狭い空間に限られている場合には体動の測定は可能であるが、例えば一戸建て住宅のように複数の部屋が含まれる場合には、測定装置が設置された部屋以外では対象者の体動を測定できず、全ての部屋に測定装置を設置するには更なるコストの増加が懸念される。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、認知症の判断を行うシステムの導入容易化が期待できるコンピュータプログラム、認知機能推定方法、学習モデルの生成方法及び情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るコンピュータプログラムは、施設内の電気機器毎に推定された使用状況情報を取得し、使用状況情報を入力した場合に、前記施設を使用する対象者の認知機能に関する認知機能情報を出力するよう機械学習がなされた学習モデルに、取得した使用状況情報を入力し、当該学習モデルが出力する認知機能情報を取得し、取得した前記認知機能情報を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
一実施形態による場合は、認知症の判断を行うシステムの導入容易化が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る情報処理システムの概略を説明するための模式図である。
【
図2】電気機器の使用状況及び認知機能の状態の調査結果の一例を示すグラフである。
【
図3】電気機器の使用状況及び認知機能の状態の調査結果の一例を示すグラフである。
【
図4】電気機器の使用状況及び認知機能の状態の調査結果の一例を示すグラフである。
【
図5】本実施の形態に係るサーバ装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】実施の形態1に係る学習モデルの構成を説明するための模式図である。
【
図9】本実施の形態に係る端末装置の構成を示すブロック図である。
【
図10】本実施の形態に係るサーバ装置が行う学習モデル生成処理の手順を示すフローチャートである。
【
図11】本実施の形態に係るサーバ装置が行う認知機能の推定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図12】端末装置が表示する通知画面の一例を示す模式図である。
【
図13】実施の形態2に係る学習モデルの構成を説明するための模式図である。
【
図14】実施の形態3に係る学習モデルの構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る情報処理システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
<システム概要>
図1は、実施の形態1に係る情報処理システムの概略を説明するための模式図である。本実施の形態に係る情報処理システムは、例えば住宅又は介護施設の居室等の施設101に設置されたセンサ1が測定した電流、電圧又は電力等の値を含む電力情報を利用して、この施設101に住む人の認知機能を推定するシステムである。センサ1は、施設101の分電盤等に設置され、例えば1秒間に1回から数回程度の頻度で、施設101内で消費される電力等の測定を行う。センサ1は、例えば無線LAN(Local Area Network)又は携帯電話通信網等を利用した無線通信の機能を備えている。センサ1は、施設101について測定した消費電力等の測定結果を電力情報としてサーバ装置3へ送信する。
【0012】
サーバ装置3は、施設101のセンサ1から送信される電力情報を受信し、受信した電力情報をデータベース等に記憶して蓄積する。サーバ装置3は、センサ1から取得した電力情報に基づいて、施設101内に備えられた複数の電気機器、例えばテレビ(テレビジョン装置)、エアコン(エアコンディショナ)、電子レンジ、洗濯機及び照明器具等の種々の電気機器について、個別の消費電力及び使用時間等を推定する処理を行う。センサ1が測定する消費電力等は、施設101の全体での消費電力等であり、複数の電気機器での消費電力等の合計値である。サーバ装置3は、センサ1から取得した施設101全体での消費電力等の情報に基づいて、例えば消費電流の時間的な変化のパターン解析又は周波数成分の解析等を行うことにより、施設101内に備えられた各電気機器の個別の消費電力等を算出する。またサーバ装置3は、各電気機器が動作を開始した時点、動作が停止した時点、及び、動作していた時間等を算出する。なお、サーバ装置3が行う電気機器の個別の消費電力及び動作時間等の推定処理は、NILM(Non-Instrusive Load Monitoring:機器分離推定技術、非侵襲型負荷モニタリング)と呼ばれる技術を用いたものである。NILMは既存の技術であるため、本実施の形態においては詳細な説明を省略する。
【0013】
本実施の形態に係るサーバ装置3は、施設101のセンサ1から取得した電力情報からNILMの技術を利用して推定した電気機器の個別の消費電力及び使用時間等の情報を利用し、この施設101に住む対象者の認知機能を推定する処理を行う。本願発明者は、施設101内における電気機器の消費電力又は使用時間等に基づいて、この施設101に住む人の行動を一定程度推定することが可能であり、人の行動に基づいて認知症等のリスクの度合いを推定することが可能であることを見出した。本願発明者は、施設101に設けられた電気機器の消費電力又は使用時間等と、この施設101に住む人の認知機能の程度との情報を収集し、収集したこれらの情報を用いて機械学習による学習モデル(いわゆるAI(Artificial Intelligence))を生成した。本実施の形態に係るサーバ装置3は、生成された学習モデルを用いて、電気機器の消費電力又は使用時間等の情報に基づき、施設101に住む人の認知機能を推定する。
【0014】
サーバ装置3は、機械学習済の学習モデルを用いて施設101に住む人の認知機能を推定し、推定結果をユーザ102の端末装置5へ送信する。ユーザ102は、例えば施設101に住む人、即ち認知機能の推定対象となる本人であってもよく、また例えば認知機能の推定対象となる人の配偶者、子供、親、孫、主治医又は介護人等の人、即ち認知機能の推定対象とは別の人であってもよい。端末装置5は、例えばスマートフォン、タブレット型端末装置又はパーソナルコンピュータ等の汎用的な情報処理装置が用いられ得る。サーバ装置3から認知機能の推定結果を受信した端末装置5は、推定結果の受信をユーザ102に通知し、対象者の認知機能の推定結果を表示する。
【0015】
なお本実施の形態に係る情報処理システムは、学習モデルを生成する処理と、生成した学習モデルを用いて認知機能を推定する処理とを1つのサーバ装置3が行う構成であるが、これに限るものではない。例えば、学習モデルの生成処理を行うサーバ装置と、学習モデルを用いた推定処理を行うサーバ装置とが別に設けられていてもよい。また学習モデルを用いた推定処理を、端末装置5が行ってもよい。学習モデルを生成する処理を、端末装置5が行ってもよい。
【0016】
学習モデルを生成する処理又は生成した学習モデルを用いて認知機能を推定する処理は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット型端末装置、ゲーム機、ウェアラブルデバイス及びこれら以外の様々な情報処理装置で行われてよい。また学習モデルを生成する処理又は生成した学習モデルを用いて認知機能を推定する処理を行う情報処理装置は、他の装置との通信を行わない構成、いわゆるスタンドアロンの構成であってよい。スタンドアロンの情報処理装置でこれらの処理を行う場合、情報処理装置による施設101の電力情報の取得は、例えば記録媒体を介して行われてもよく、また例えば紙媒体等に印刷された情報をユーザが情報処理装置へ入力する作業が行われてもよい。
【0017】
<電気機器の使用状況と認知機能の状態との関係について>
本願の発明者は、電気機器の使用状況と認知機能の状態とについての調査を行い、両者に関係があることを見出した。
図2~
図4は、電気機器の使用状況及び認知機能の状態の調査結果の一例を示すグラフである。
【0018】
図示のグラフは、2019年からの数年間について、宮崎県延岡市に在住の健常者約80名を対象に、電気機器の使用時間と対象者の認知機能の状態との関係を調査した結果である。調査の対象者が住む施設101に設置したセンサ1により取得した情報、例えば施設101の全体での消費電力量もしくは消費電流量等の電気量の情報、又は、これらの電気量の時間的な変化もしくは周波数成分等の情報を収集して蓄積した。蓄積したこれらの情報に対して、欠損値の補完及びフォーマット変換等の処理を施し、NILMの技術を用いた解析を行うことで、施設101内の電気機器毎の使用時間を推定している。
【0019】
対象者の認知機能の状態は、MMSE-J(Mini-Mental State Examination-Japanese:ミニメンタルステート検査-日本版)及びGDS15(Geriatric depression scale 15:老年期うつ病評価尺度)に基づき、国立循環器病研究センターにおいて判定がなされたものである。また参考用として、電話による認知機能スクリーニングであるTICS-J(Telephone Interview for Cognitive Status in Japanese)による認知機能検査を行い、その検査結果を得た。MMSE-J、GDS15及びTICS-Jに基づく認知機能の判定方法の詳細についての説明は省略する。本調査では、MMSE-Jによる30点満点の判定において、23点以下を認知障害の状態とし、24点から27点を軽度認知障害の状態とし、28点以上を正常状態とした。またGDS15を用いたうつ状態の判定においては、5点以上をうつ状態とした。
【0020】
図2には、電気機器としてIH(Induction Heating)調理器の使用時間と、対象者の認知症に関する判定結果との対応関係がグラフとして示されている。電気機器の使用時間は、春夏秋冬の季節毎の1日の平均使用時間を対象者毎に算出したものである。グラフには、認知症の判定結果毎に算出した電気機器の使用時間の平均値と、この平均値に対する信頼区間を示す高低線とが描かれている。
図2のグラフに基づき、認知機能の低下に伴ってIH調理器の使用時間が短くなる傾向があることが確認できる。
【0021】
図3には、電気機器として電子レンジの使用時間と、対象者のうつの状態に関する判定結果との対応関係がグラフとして示されている。また
図4には、電気機器としてテレビの使用時間と、対象者のうつの状態に関する判定結果との対応関係がグラフとして示されている。
図3及び
図4のグラフに基づき、うつ症状のある人は電子レンジ及びテレビの使用時間が短くなる傾向があることが確認できる。例えば電子レンジの使用については、うつ症状がある人は食欲及び活動量等が低下し、電子レンジの使用時間が短くなると推定される。
【0022】
なお本実施の形態においては、IH調理器、電子レンジ及びテレビの3つの電気機器について、電気器の使用時間と対象者の認知機能の状態との関係の調査結果を示したが、これら以外の電気機器、例えばエアコン、照明器具、オーディオ機器、冷蔵庫及び炊飯器等においても、使用時間と認知機能の状態とに関連が伺えた。これらの結果から、施設101内の電気機器毎に推定された使用時間を取得し、取得した各電気機器の使用時間に基づいて、対象者の認知機能を推定することができる。また本実施の形態においては、施設101内における総合的な電力使用量又は個別機器の電力使用量ではなく、施設101内の個別又は複数の電気機器において推定された使用時間に基づいて対象者の認知機能を推定することができる。
【0023】
また更に、認知機能と電気機器に対する使用時間の特徴とのそれぞれは、対象者の年齢、性別及び教育歴等の属性によって異なる。そこで、対象者の年齢、性別及び教育歴等の属性情報を取得して、認知機能の推定に対する入力情報として利用することで、推定精度を向上することが期待できる。例えば電気機器の使用時間に対して認知機能の状態を判定する判定基準を設ける場合に、対象者の属性情報に応じた判定基準を設けることができる。
【0024】
<装置構成>
図5は、本実施の形態に係るサーバ装置3の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係るサーバ装置3は、処理部31、記憶部(ストレージ)32及び通信部(トランシーバ)33等を備えて構成されている。なお本実施の形態においては、1つのサーバ装置にて処理が行われるものとして説明を行うが、複数のサーバ装置が分散して処理を行ってもよい。
【0025】
処理部31は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を用いて構成されている。処理部31は、記憶部32に記憶されたサーバプログラム32aを読み出して実行することにより、施設101に設けられたセンサ1からの電力情報を収集する処理、収集した電力情報に基づいて施設101に備えられた電気機器の個別の消費電力及び使用時間等を推定する処理、推定した電気機器の使用時間に基づいて施設101に住む人の認知機能を推定する処理、並びに、認知機能の推定に用いられる学習モデルを生成する処理等の種々の処理を行う。
【0026】
記憶部32は、例えばハードディスク等の大容量の記憶装置を用いて構成されている。記憶部32は、処理部31が実行する各種のプログラム、及び、処理部31の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部32は、処理部31が実行するサーバプログラム32aを記憶すると共に、学習モデルを生成する処理に用いられる訓練データを記憶する訓練データ記憶部32bと、未学習の又は学習済の学習モデルに関する情報を記憶する学習モデル記憶部32cと、認知機能を推定する対象者に関する情報を記憶する対象者情報DB(データベース)32dと、施設101のセンサ1から収集した電力情報を記憶する電力情報DB32eとが設けられている。
【0027】
本実施の形態においてサーバプログラム(プログラム製品)32aは、メモリカード又は光ディスク等の記録媒体99に記録された態様で提供され、サーバ装置3は記録媒体99からサーバプログラム32aを読み出して記憶部32に記憶する。ただし、サーバプログラム32aは、例えばサーバ装置3の製造段階において記憶部32に書き込まれてもよい。また例えばサーバプログラム32aは、遠隔の他のサーバ装置等が配信するものをサーバ装置3が通信にて取得してもよい。例えばサーバプログラム32aは、記録媒体99に記録されたものを書込装置が読み出してサーバ装置3の記憶部32に書き込んでもよい。サーバプログラム32aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体99に記録された態様で提供されてもよい。
【0028】
訓練データ記憶部32bは、学習モデルの生成(学習)処理に用いる複数の訓練データを記憶する。訓練データは、例えば学習モデルに対する入力情報と出力情報とを対応付けたデータである。本実施の形態においては、電気機器の個別の使用時間及び認知機能推定の対象者の属性等の情報と、対象者の認知機能を示すラベルとを対応付けたデータを訓練データとして用いる。訓練データは、例えば本実施の形態に係る情報処理システムの設計者等により予め作成されて、サーバ装置3の記憶部32の訓練データ記憶部32bに記憶される。
【0029】
学習モデル記憶部32cは、対象者の認知機能を推定する学習モデルに関する情報を記憶する。学習モデル記憶部32cに記憶される情報は、例えば学習モデルの構造に関する情報、及び、機械学習により決定されたパラメータ等の情報である。学習モデル記憶部32cには、機械学習が完了した学習モデルの情報の他に、機械学習が行われる前の初期状態の学習モデル、又は、機械学習の途中経過として一時的に保存された学習モデル等が記憶され得る。
【0030】
図6は、実施の形態1に係る学習モデルの構成を説明するための模式図である。本実施の形態に係る学習モデル7は、施設101のセンサ1が測定した電力情報に基づいてサーバ装置3が推定した個別の電気機器の使用時間と、認知機能を推定する対象者の属性情報とを入力として受け付け、対象者の認知機能の状態を出力するように機械学習がなされた学習モデル7である。学習モデル7は、例えばニューラルネットワーク、ディープニューラルネットワーク、SVM(Support Vector Machine)、決定木、ランダムフォレスト又はロジスティック回帰等の種々の構成のモデルが採用され得る。また機械学習には、深層学習又はアンサンブル学習等が含まれ得る。
【0031】
学習モデル7に入力する電気機器の使用時間には、例えば施設101のセンサ1から数か月間(1ヶ月間又は3ヶ月間等)にわたって収集した電力情報に基づいて、各電気機器について算出した使用時間の1日の平均値及び標準偏差値等の統計値が用いられ得る。例えば学習モデル7には、テレビの平均使用時間、エアコンの平均使用時間、電子レンジの平均使用時間…、のように、各電気機器の平均使用時間の数値が入力される。
【0032】
なお本実施の形態においては、学習モデル7に対する入力データとして、使用時間の平均値及び標準偏差値等の統計値を用いているが、これに限るものではない。例えば学習モデル7に対して、電気機器の使用時間の時系列データが入力される構成であってもよい。この場合に学習モデル7は、例えばRNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long Short Term Memory)、Seq2Seq(sequence to sequence)又はTransformer等の構成が採用されてもよい。
【0033】
学習モデル7に入力する対象者の属性情報には、例えば対象者の年齢、性別及び教育歴等の情報が含まれ得る。教育歴は、例えば最終学歴(中学卒業、高校卒業、大学卒業等)とすることができる。
【0034】
学習モデル7が出力する認知機能の状態には、例えば認知機能が低下していない正常状態と、認知機能が少し低下した軽度認知障害の状態と、更に認知機能が低下した認知障害の状態とが含まれ得る。学習モデル7は、対象者がこれら3つの状態のいずれに該当するかを分類する学習モデルであり、正常状態、軽度認知障害及び認知障害に対応する3つの値を出力する。学習モデル7の出力値は、対応する状態であることの確率(尤度、確信度等)を示す数値であり、3つの出力値の中で最大値に対応する状態を、対象者の認知機能の状態と推定することができる。
【0035】
なお本実施の形態において学習モデル7は、正常状態と、軽度認知障害の状態と、認知障害の状態との3つの値を出力する構成としたが、これに限るものではない。学習モデル7は、2つの値を出力する構成であってよく、例えば正常状態と、軽度認知障害及び認知障害を含めた認知機能低下状態との2つの値を出力してもよい。また学習モデル7は、1つの値を出力する構成であってよく、例えば認知機能低下状態であるか否かを出力してもよい。また学習モデル7は、4つ以上の値を出力する構成であってよい。更に学習モデル7は、例えば認知機能低下状態の予測確率値、又は、認知機能の予測点数等の値を出力する構成であってよい。
【0036】
また本実施の形態においてサーバ装置3は、例えば単身者用の学習モデル7及び夫婦世帯用の学習モデル7等のように、世帯構成別に複数の学習モデル7を学習モデル記憶部32cに記憶している。これら複数の学習モデル7は、その構成、入力情報及び出力情報等は同じであるが、機械学習の際に用いられる訓練データが異なり、内部のパラメータが異なっている。サーバ装置3は、対象者の世帯構成に応じていずれか1つの学習モデル7を選択し、選択した学習モデル7に電気機器の使用時間及び対象者の属性情報の入力することで、学習モデル7が出力する認知機能の状態を取得する。
【0037】
なお本実施の形態に係る学習モデル7は、入力情報として電気機器の使用時間と対象者の属性情報とを受け付ける構成としたが、これに限るものではなく、例えば学習モデル7は、電気機器の使用時間を入力として受け付け(対象者の属性情報は入力として受け付けず)、入力された使用時間に基づいて対象者の認知機能の状態を出力する構成であってもよい。また学習モデル7は、電気機器の使用時間及び対象者の属性情報以外の各種の情報の入力を更に受け付けて対象者の認知機能の状態を出力する構成であってもよい。また学習モデル7は、電気機器の使用時間に代えて、例えば電気機器の消費電力量又は消費電流量等が入力される構成であってもよく、消費電力量又は消費電流量等から推定される電気機器の使用回数などが入力される構成であってもよい。電気機器の使用状況情報には、電気機器の消費電力量又は消費電流量等の電気的な数値の測定値、又は、これらの測定値に基づいて推測される電気機器の使用時間又は使用回数等の推定値等の様々な情報が含まれ得る。これらの情報は、適宜に組み合わされて学習モデル7へ入力されてよい。
【0038】
図7は、対象者情報DB32dの一例を示す模式図である。本実施の形態に係るサーバ装置3の対象者情報DB32dは、例えば「センサID」、「対象者ID」、「年齢」、「性別」、「教育歴」及び「世帯構成」等の情報を対応付けて記憶する。「センサID」は、施設101の分電盤等に設けられる各センサ1に対して一意に付された識別情報である。「対象者ID」は、認知機能の状態を推定する対象者に対して一意に付された識別情報であり、対象者の氏名等であってもよい。「年齢」は、対象者の年齢を示す数値の情報である。「性別」は、対象者の性別であり、「男」又は「女」が設定される。「教育歴」は、対象者の最終学歴であり、「高校」、「大学」又は「大学院」等の情報が設定される。「世帯構成」は、センサ1が設けられた施設101に住む人の人数を示す情報であり、例えば「単身(一人暮らし)」又は「夫婦(2人暮らし)」等の情報が設定される。対象者情報DB32dに記憶される各情報は、例えば本実施の形態に係る情報処理システムが提供するサービスに対する利用の申し込みを受け付ける際に、対象者又は対象者の代理人等により入力される。
【0039】
図8は、電力情報DB32eの一例を示す模式図である。本実施の形態に係るサーバ装置3の電力情報DB32eは、例えば「センサID」及び「年月日」と、複数の電気機器、例えば「テレビ」、「エアコン」、「電子レンジ」等についてそれぞれの「消費電力」及び「使用時間」とを対応付けて記憶する。「センサID」は、施設101の分電盤等に設けられる各センサ1に対して一意に付された識別情報であり、上述の対象者情報DB32dに記憶されるセンサIDと同じものである。「年月日」は、センサ1が計測を行った年月日であり、例えば「2021/6/4」等の情報が設定される。各電気機器の「消費電力」は、センサ1からの電力情報に基づいてサーバ装置3が推定した、各電気機器の消費電力の1日分の合計値である。各電気機器の「使用時間」は、センサ1からの電力情報に基づいてサーバ装置3が推定した、各電気機器の使用時間の1日分の合計値である。
【0040】
サーバ装置3の通信部33は、携帯電話通信網、無線LAN(Local Area Network)及びインターネット等を含むネットワークNを介して、種々の装置との間で通信を行う。本実施の形態において通信部33は、ネットワークNを介して、センサ1及び端末装置5との間で通信を行う。通信部33は、処理部31から与えられたデータを他の装置へ送信すると共に、他の装置から受信したデータを処理部31へ与える。
【0041】
なお記憶部32は、サーバ装置3に接続された外部記憶装置であってよい。またサーバ装置3は、複数のコンピュータを含んで構成されるマルチコンピュータであってよく、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。またサーバ装置3は、上記の構成に限定されず、例えば可搬型の記憶媒体に記憶された情報を読み取る読取部、操作入力を受け付ける入力部、又は、画像を表示する表示部等を含んでもよい。
【0042】
また本実施の形態に係るサーバ装置3には、記憶部32に記憶されたサーバプログラム32aを処理部31が読み出して実行することにより、学習モデル生成部31a、使用時間推定部31b及び認知機能推定部31c等が、ソフトウェア的な機能部として処理部31に実現される。なお本図においては、処理部31の機能部として、学習モデル7の生成処理及び対象者の認知機能の推定処理に関する機能部を図示し、これ以外の処理に関する機能部は図示を省略している。
【0043】
学習モデル生成部31aは、認知機能の推定を行う学習モデル7を生成する処理を行う。本実施の形態に係る学習モデル7は、
図6に示すようにサーバ装置3が推定した電気機器の個別の使用時間と、推定の対象者の属性情報とを入力として受け付けて、この対象者の認知機能の状態を示す情報を出力する学習モデルである。学習モデル生成部31aは、予め作成された訓練データを訓練データ記憶部32bから取得し、取得した訓練データを用いて所望の構成の学習モデル7を機械学習する処理を行うことによって、対象者の認知機能を推定する学習モデル7を生成する処理を行う。学習モデルの教師あり学習の処理は、既存の技術であるため詳細な説明は省略するが、学習モデル生成部31dは、例えば勾配降下法、確率的勾配降下法又は誤差逆伝播法等の手法により学習モデル7の学習を行うことができる。
【0044】
使用時間推定部31bは、施設101のセンサ1から取得した電力情報に基づいて、施設101が備える各電気機器の使用時間を推定する処理を行う。センサ1が繰り返し送信する電力情報には、施設101が備える複数の電気機器について消費電力又は消費電流等が合算された測定結果が含まれている。使用時間推定部31bは、センサ1からの電力情報を繰り返し受信して、受信した電力情報を電力情報DB32eに記憶して蓄積する。使用時間推定部31bは、電力情報DB32eに蓄積された電力情報を読み出し、施設101に関して合算された消費電力又は消費電力等の時間的な増減パターン又は周波数領域での分布等に基づき、施設101が備える各電気機器について個別の消費電力又は消費電流等を推定する。また使用時間推定部31bは、各電気機器の個別の消費電力又は消費電流等の時間的な変化に基づいて、各電気機器が動作していた(使用されていた)時間を推定する。使用時間推定部31bが行う推定処理は、NILMの技術を用いて行われる。NILMは既存の技術であるため、本実施の形態においては詳細な説明を省略する。
【0045】
認知機能推定部31cは、学習モデル記憶部32cに記憶された学習済の学習モデル7を用いて、対象者の認知機能を推定する処理を行う。認知機能推定部31cは、使用時間推定部31bが推定した施設101の各電気機器の使用時間を取得すると共に、この施設101に住む対象者の属性情報を対象者情報DB32dから取得する。認知機能推定部31cは、取得した各電気機器の使用時間と、施設101に住む対象者の属性情報とを学習モデル7へ入力し、学習モデル7が出力する認知機能の状態に関する情報を取得する。認知機能推定部31cは、学習モデル7から取得した情報に基づいて、対象者が例えば正常状態、軽度認知障害の状態又は認知障害の状態のいずれであるかを推定する。学習モデル7がこれら3つの状態に対する尤度等を出力する構成である場合、認知機能推定部31cは、最も高い尤度が与えられた状態を対象者の認知機能の状態であると推定することができる。認知機能推定部31cは、認知機能の推定結果を、対象者又は対象者の家族等の端末装置5へ送信し、推定結果を通知する。
【0046】
図9は、本実施の形態に係る端末装置5の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る端末装置5は、処理部51、記憶部(ストレージ)52、通信部(トランシーバ)53、表示部(ディスプレイ)54及び操作部55等を備えて構成されている。端末装置5は、本実施の形態に係る情報処理システムが行う認知機能の推定の対象者又は対象者の家族等が使用する装置であり、例えばスマートフォン、タブレット型端末装置又はパーソナルコンピュータ等の情報処理装置を用いて構成され得る。
【0047】
処理部51は、CPU又はMPU等の演算処理装置、ROM及びRAM等を用いて構成されている。処理部51は、記憶部52に記憶されたプログラム52aを読み出して実行することにより、サーバ装置3から送信される情報を受信する処理、及び、受信した情報を表示してユーザ102に通知する処理等の種々の処理を行う。
【0048】
記憶部52は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子を用いて構成されている。記憶部52は、処理部51が実行する各種のプログラム、及び、処理部51の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部52は、処理部51が実行するプログラム52aを記憶している。本実施の形態においてプログラム(プログラム製品)52aは遠隔のサーバ装置等により配信され、これを端末装置5が通信にて取得し、記憶部52に記憶する。ただしプログラム52aは、例えば端末装置5の製造段階において記憶部52に書き込まれてもよい。例えばプログラム52aは、メモリカード又は光ディスク等の記録媒体98に記録されたプログラム52aを端末装置5が読み出して記憶部52に記憶してもよい。例えばプログラム52aは、記録媒体98に記録されたものを書込装置が読み出して端末装置5の記憶部52に書き込んでもよい。プログラム52aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体98に記録された態様で提供されてもよい。
【0049】
通信部53は、携帯電話通信網、無線LAN及びインターネット等を含むネットワークNを介して、種々の装置との間で通信を行う。本実施の形態において通信部53は、ネットワークNを介して、サーバ装置3等との間で通信を行う。通信部53は、処理部51から与えられたデータを他の装置へ送信すると共に、他の装置から受信したデータを処理部51へ与える。
【0050】
表示部54は、液晶ディスプレイ等を用いて構成されており、処理部51の処理に基づいて種々の画像及び文字等を表示する。操作部55は、ユーザ102の操作を受け付け、受け付けた操作を処理部51へ通知する。例えば操作部55は、機械式のボタン又は表示部54の表面に設けられたタッチパネル等の入力デバイスによりユーザ102の操作を受け付ける。また例えば操作部55は、マウス及びキーボード等の入力デバイスであってよく、これらの入力デバイスは端末装置5に対して取り外すことが可能な構成であってもよい。
【0051】
また本実施の形態に係る端末装置5は、記憶部52に記憶されたプログラム52aを処理部51が読み出して実行することにより、表示処理部51a等がソフトウェア的な機能部として処理部51に実現される。なおプログラム52aは、本実施の形態に係る情報処理システムに専用のプログラムであってもよく、インターネットブラウザ又はウェブブラウザ等の汎用のプログラムであってもよい。
【0052】
表示処理部51aは、サーバ装置3から送信される対象者の認知機能の推定結果に関する情報を受信し、受信した情報を表示部54に表示する処理を行う。また本実施の形態に係る情報処理システムでは、サーバ装置3は施設101に備えられた各電気機器の使用時間及び消費電力等の情報を端末装置5へ送信する処理をも行っている。表示処理部51aは、サーバ装置3から送信される電気機器の使用時間及び消費電力等の情報を受信し、受信した情報を表示部54に表示する。本実施の形態に係る端末装置5の表示処理部51aは、サーバ装置3が推定した各電気機器の使用時間又は消費電力等の情報と、サーバ装置3が推定した対象者の認知機能の情報とを表示部54に表示する。
【0053】
<学習モデルの生成処理>
本実施の形態に係る情報処理システムでは、対象者の認知機能を推定する学習モデル7を生成する処理が、予めサーバ装置3にて行われる。本実施の形態に係るサーバ装置3が学習モデル7を生成するために行う処理は、いわゆる教師あり学習の機械学習の処理である。サーバ装置3は、学習モデル7の入力情報及び出力情報が対応付けられた複数の訓練データを用いて学習モデル7の教師あり学習の処理を行う。
【0054】
本実施の形態に係る情報処理システムでは、複数の施設101に設けられた複数のセンサ1から得られる電力情報を収集して蓄積すると共に、施設101に住む人の認知機能の状態に関する情報を収集して蓄積する。センサ1から取得できる電力情報は、施設101に備えられた全ての電気機器での消費電力又は消費電流等の測定値である。本実施の形態に係る情報処理システムでは、センサ1から得られる電力情報から、NILMの技術を利用して施設101に備えられた各電気機器の個別の消費電力又は消費電流等が推定され、この推測結果かから例えば1日あたりの各電気機器の使用時間が推定される。
【0055】
本実施の形態に係る情報処理システムでは、数ヶ月から数年に亘って収集された電力情報についてNILMの技術により1日当たりの各電気機器の使用時間が推定され、例えば春(3月~5月)、夏(6月~8月)、秋(9月~11月)及び冬(12月~2月)の季節毎に各電気機器の使用時間の平均値及び標準偏差値等の統計値が算出される。本実施の形態においては、例えば1年分の季節毎の各電気機器の使用時間の平均値及び標準偏差値を、学習モデル7の訓練データの入力情報とする。
【0056】
なお本実施の形態においては、学習モデル7の訓練データの入力情報として季節毎の電気機器の使用時間の平均値及び標準偏差値等の統計値を用いているが、これに限るものではない。入力情報として、例えば1ヶ月毎又は1日毎の電気機器の使用時間の統計値が用いられてもよく、また例えば電気機器の使用時間又は消費電力等の時系列データが用いられてもよく、これら以外の情報が用いられてもよい。
【0057】
また本実施の形態に係る情報処理システムでは、学習モデル7の機械学習に用いられる訓練データには、上記の季節ごとの各電気機器の使用時間の平均値及び標準偏差値の他に、この施設101に住む人の属性情報が入力情報として含まれる。属性情報は、例えば年齢、性別及び教育歴とすることができる。
【0058】
また本実施の形態においては、施設101に住む人の認知機能の状態を例えば年に1回から数回程度の頻度で医師等が診断した診断結果が収集される。本実施の形態において診断結果は、対象者が正常状態、軽度認知障害の状態及び認知障害の状態のいずれに該当するかが示された情報である。この診断結果が、学習モデル7の訓練データの出力情報、即ち入力情報に対する正解ラベルの情報となる。
【0059】
このように、本実施の形態に係る情報処理システムにて学習モデル7の機械学習に用いられる訓練データは、施設101に備えられた各電気機器の1年分の季節毎の使用時間の平均値及び標準偏差値と、この施設101に住む人の属性情報とに対応付けて、この施設101に住む人の認知機能の状態を示すラベルを付したデータである。訓練データは、できるだけ多くの異なる施設101及び人に関するものが収集されることが好ましい。なおこれらの訓練データに必要な情報の収集、及び、収集した情報に基づく訓練データの作成は、例えばサーバ装置3が行ってもよく、サーバ装置3以外の装置が行ってもよく、システム設計者等が人手で行ってもよい。作成された訓練データは、サーバ装置3の訓練データ記憶部32bに予め記憶される。なお、センサ1から得られる電力情報から各電気機器の使用時間の推定、及び、季節毎の各電気機器の使用時間の平均値及び標準偏差値の算出等の演算処理は、例えば学習モデル7の機械学習が行われる前の段階で予め行われてもよく、また例えば演算処理が行われていない電力情報が記憶され、機械学習処理を行う際に前処理として行われてもよい。
【0060】
例えば、施設101に備えられる電気機器がテレビ、エアコン及び電子レンジの3種類であるとする。この場合の訓練データは、テレビに関する春の使用時間の平均値及び標準偏差値と、テレビに関する夏の使用時間の平均値及び標準偏差値と、テレビに関する秋の使用時間の平均値及び標準偏差値と、テレビに関する冬の使用時間の平均値及び標準偏差値と、エアコンに関する春の使用時間の平均値及び標準偏差値と、…、エアコンに関する冬の使用時間の平均値及び標準偏差値と、電子レンジの春の使用時間の平均値及び標準偏差値と、…、電子レンジの冬の使用時間の平均値及び標準偏差値と、施設101に住む人の年齢、性別及び教育歴の属性情報とに対して、この人が正常状態、軽度認知障害の状態及び認知障害の状態のいずれに該当するかを示す正解ラベルを対応付けたデータとなる。なお、上記の訓練データに対して、RFE(Recursive Feature Elimination、再帰的特徴消去)の手法等を用いて情報量(特徴量、次元)の削減を行ってもよい。
【0061】
また本実施の形態に係る情報処理システムでは、認知機能の状態を推定する対象者として、施設101に1人で住んでいる単身者及び2人で住んでいる夫婦世帯の人を扱い、それ以上の人数が一世帯に含まれる世帯は認知機能の状態の推定について対象外とする。このため本実施の形態に係る情報処理システムでは、単身者の対象者の認知機能の状態を推定する学習モデル7と、夫婦世帯の対象者の認知機能の状態を推定する学習モデル7との2つの学習モデル7を生成する。単身者の対象者の認知機能の状態を推定する学習モデル7は、単身者の施設101にて収集された情報に基づいて作成された訓練データを用いて機械学習が行われる。夫婦世帯の対象者の認知機能の状態を推定する学習モデル7は、夫婦世帯の施設101にて収集された情報に基づいて作成された訓練データを用いて機械学習が行われる。なお本実施の形態においては、単身者又は夫婦世帯のみを対象とするが、これに限るものではなく、これら以外の世帯(例えば夫婦及び子供の2世代、夫婦及び親の2世代、夫婦、子供及び親の3世代等の世帯)を対象としてもよく、この場合には対象となる世帯にて収集された情報に基づいて訓練データが作成され、学習モデル7の機械学習が行われる。
【0062】
サーバ装置3は、予め作成された上記の訓練データを用いて機械学習を行うことにより、学習モデル7を生成する。
図10は、本実施の形態に係るサーバ装置3が行う学習モデル生成処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係るサーバ装置3の処理部31の学習モデル生成部31aは、記憶部32の訓練データ記憶部32bに記憶された訓練データを読み出す(ステップS1)。学習モデル生成部31aは、読み出したデータに対して、必要に応じてデータの成形等の前処理を行う(ステップS2)。ステップS2では、例えば1日毎の電気機器の使用時間の情報を季節毎に集計する演算等が行われ得る。
【0063】
学習モデル生成部31aは、複数の訓練データの中から一のデータを取得する(ステップS3)。学習モデル生成部31aは、取得したデータを用いた演算処理を実施し、学習モデルのパラメータの更新を行う(ステップS4)。なお学習モデル生成部31aは、ステップS3及びS4の処理について、複数のデータを用いて並列的に処理を行ってもよい。学習モデル生成部31aは、全ての訓練データについてステップS4の処理を終了したか否かを判定する(ステップS5)。全ての訓練データについて処理を終了していない場合(S5:NO)、学習モデル生成部31aは、ステップS3へ処理を戻し、別のデータを取得して処理を繰り返し行う。
【0064】
全ての訓練データについて処理を終了した場合(S5:YES)、学習モデル生成部31aは、全ての訓練データを用いた学習モデルのパラメータ更新の処理を、所定回数行って終了したか否かを判定する(ステップS6)。なおステップS6にて判定に用いられる所定回数は、本システムの設計者等により予め定められる。所定回数の繰り返し処理を終了していない場合(S6:NO)、学習モデル生成部31aは、ステップS3へ処理を戻し、同じ訓練データを用いた学習モデル7のパラメータの更新処理を繰り返し行う。所定回数の繰り返し処理を終了した場合(S6:YES)、学習モデル生成部31aは、最終的に決定した学習モデル7のパラメータ等の情報を記憶部32の学習モデル記憶部32cに記憶して(ステップS7)、処理を終了する。
【0065】
<認知機能の推定処理>
サーバ装置3は、上述の生成処理により生成した学習モデル7を用いて、施設101に住む対象者の認知機能の状態を推定する処理を行う。サーバ装置3は、施設101に設けられたセンサ1から周期的に送信される電力情報を受信し、受信した電力情報を電力情報DB32eに記憶して蓄積する。サーバ装置3は、例えば所定周期が経過する毎(毎月又は毎季節等)に、また例えば端末装置5からの要求が与えられた場合に、対象者の認知機能の状態を推定する処理を行う。
【0066】
認知機能の推定処理においてサーバ装置3は、まず前処理として、電力情報DB32eに記憶された所定期間(例えば過去1年分)の電力情報を読み出して、季節毎の使用時間の平均値及び標準偏差値を算出する。またサーバ装置3は、対象者情報DB32dに記憶された対象者の属性情報(年齢、性別、教育歴、世帯構成等)を読み出し、対象者の世帯構成が単身者又は夫婦世帯のいずれであるかを調べる。サーバ装置3は、世帯構成に応じた学習モデル7を記憶部32の学習モデル記憶部32cから読み出す。サーバ装置3は、対象者が住む施設101に備えられた各電気機器の季節毎の使用時間の平均値及び標準偏差値と、対象者の年齢、性別及び教育歴等の属性情報とを学習モデル7へ入力する。
【0067】
学習モデル7は、各電気機器の季節毎の使用時間の平均値及び標準偏差値と、対象者の年齢、性別及び教育歴等の属性情報との入力を受け付けて、対象者の認知機能の状態の推定結果を出力する。本実施の形態において学習モデル7は、認知機能の状態の推定結果として、正常状態、軽度認知障害の状態及び認知障害の状態の各状態についての尤度(確率、確信度)の数値を出力する。サーバ装置3は、学習モデル7が出力する3つの尤度の数値を取得し、最も大きい数値に対応する認知機能の状態を、対象者の認知機能の状態の推定結果とする。
【0068】
なお本実施の形態においては、学習モデル7が季節毎の電気機器の使用時間の平均値及び標準偏差値等の統計値を入力として受け付ける構成であるが、これに限るものではない。学習モデル7は、例えば1ヶ月毎又は1日毎の電気機器の使用時間の統計値を入力として受け付ける構成であってもよく、また例えば電気機器の使用時間又は消費電力等の時系列データを入力として受け付ける構成であってもよく、これら以外の情報を入力として受け付ける構成であってもよい。
【0069】
図11は、本実施の形態に係るサーバ装置3が行う認知機能の推定処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係るサーバ装置3の認知機能推定部31cは、例えば所定期間が経過したタイミング又は端末装置から推定処理の実施要求を受信したタイミング等のように、対象者の認知機能の推定処理を実施するタイミングに至ったか否かを判定する(ステップS11)。推定処理を実施するタイミングに至っていない場合(S11:NO)、認知機能推定部31cは、推定処理を実施するタイミングに至るまで待機する。
【0070】
推定処理を実施するタイミングに至った場合(S11:YES)、認知機能推定部31cは、記憶部32の電力情報DB32eに記憶された電力情報を読み出す(ステップS12)。また認知機能推定部31cは、記憶部32の対象者情報DB32dに記憶された、認知機能推定の対象者に関する属性情報を読み出す(ステップS13)。認知機能推定部31cは、ステップS12及びS13にて読み出した情報に対して、必要に応じて適宜の前処理を行う(ステップ14)ことで、学習モデル7へ入力する情報を生成する。
【0071】
認知機能推定部31cは、ステップS14にて適宜の前処理が施された入力情報を、記憶部32の学習モデル記憶部32cに記憶された学習済の学習モデル7へ入力する(ステップS15)。なおこのときに認知機能推定部31cは、ステップS13にて読み出した属性情報に基づいて対象者が単身者又は夫婦世帯のいずれであるかを調べ、対象者の属性に応じた学習モデル7を選択して情報を入力する。認知機能推定部31cは、情報の入力に対して学習モデル7が出力する出力値を取得する。認知機能推定部31cは、学習モデル7から取得した複数の出力値の中から最大値がいずれであるかを調べることによって、対象者の認知機能の状態が正常状態、軽度認知障害の状態又は認知障害の状態のいずれであるかを推定する(ステップS17)。認知機能推定部31cは、ステップS17の推定結果を含む情報を端末装置5へ送信し(ステップS18)、端末装置5に推定結果を表示させて、処理を終了する。
【0072】
サーバ装置3は、対象者の認知機能の状態の推定結果を、対象者に対して予め定められたユーザ102(対象者本人又は対象者の家族等)の端末装置5へ送信する。なお本実施の形態に係る情報処理システムでは、施設101に備えられた電気機器の使用時間に関する情報と、施設101に住む対象者の認知機能の推定結果に関する情報とがユーザ102に対して提供される。このため本実施の形態においてサーバ装置3は、施設101のセンサ1から取得した電力情報に基づいて推定した各電気機器の使用時間と、施設101に住む対象者の認知機能の推定結果とを端末装置5へ送信する。ただし情報処理システムは、ユーザ102に対して対象者の認知機能の推定結果に関する情報を提供し、電気機器の使用時間に関する情報を提供しない構成であってもよい。
【0073】
端末装置5は、サーバ装置3から送信された情報を受信して、受信した情報を表示部54に表示することで、電気機器の使用時間及び対象者の認知機能の推定結果等をユーザ102に通知する。
図12は、端末装置5が表示する通知画面の一例を示す模式図である。端末装置5が表示する通知画面には、例えば画面の最上部に「ユーザAAAA様」等の文字列が表示されることで、ユーザのID又はユーザの名前等が表示される。本例の通知画面には、このユーザ名の下方に、電化製品の使用時間に関する情報を表示する使用時間表示領域111、及び、対象者の認知機能の推定結果を表示する認知機能表示領域112が設けられている。
【0074】
端末装置5は、通知画面の使用時間表示領域111に、例えば「2021年3月~5月 1日の電化製品別の使用時間」等のタイトル文字列と、施設101に備えられた各電気機器の使用時間のグラフとを表示する。図示の通知画面において、端末装置5は、テレビ、エアコン、電子レンジ、照明器具及び洗濯機等の電気機器の名前に対応付けて、使用時間を示す横方向に延びた棒グラフでそれぞれ使用時間を示している。端末装置5は、サーバ装置3から受信した情報に基づいて、タイトル文字列に表示する年月日等を決定し、各電気機器に対応する棒グラフの画像等を生成して、図示の通知画面を表示部54に表示する。
【0075】
端末装置5は、通知画面の認知機能表示領域112に、例えば「電化製品の使用状況から推定した認知機能の状態」等のタイトル文字列と、「軽度認知障害の可能性があります」等の認知機能の推定結果を示す文字列とを表示する。端末装置5は、予め定められた文字列をタイトル文字列として表示する。また端末装置5は、サーバ装置3から受信した情報に基づいて、認知機能の推定結果として表示する文字列を決定する。例えば端末装置は、認知機能の推定結果が正常状態である場合、「認知機能は正常です」等の文字列を表示することができる。また例えば端末装置5は、認知機能の推定結果が認知障害の状態である場合、「認知障害の可能性があります」等の文字列を表示することができる。
【0076】
<まとめ>
以上の構成の本実施の形態に係る情報処理システムでは、施設101内の電気機器毎に推定された使用時間等の使用状況情報をサーバ装置3が取得する。使用状況情報を入力した場合に施設101を使用する対象者の認知機能に関する認知機能情報を出力するよう機械学習がなされた学習モデル7に対して、サーバ装置3は、取得した使用状況情報を入力し、学習モデル7が出力する認知機能情報を取得する。サーバ装置3は、学習モデル7から取得した認知機能情報を端末装置5へ送信することにより、端末装置5に対象者の認知機能情報を表示させる。これによりサーバ装置3は、施設101内の電気機器の使用状況に基づいて対象者の認知機能を推定することができる。各電気機器の使用時間等は、施設101の分電盤等にセンサ1を設置することで取得できる消費電力又は消費電流等の電力情報を基に、NILMの技術で推定することができる。センサ1は、施設101の分電盤等に設置するのみでよいため、本実施の形態に係る情報処理システムによる認知機能の推定サービスの導入が容易である。更には、既に電気機器毎の使用状況を通知するサービスを利用している施設101では、既にセンサ1が設置済みである可能性が高く、このセンサ1を認知機能の推定に流用することができるため、認知機能の推定サービスの導入は更に容易である。
【0077】
なお本実施の形態に係る情報処理システムは、施設101の分電盤等にセンサ1を設置して電力情報の収集を行う構成としたが、これに限るものではない。例えば同様の情報を取得することができるスマートメータ等の装置が施設101に設置されている場合、これらの装置からサーバ装置3が電力情報を取得してもよい。また本実施の形態に係る情報処理システムでは、電気機器毎の使用時間の平均値及び標準偏差値を使用状況情報として用いて学習モデル7へ入力しているが、これに限るものではなく、例えば電気機器毎の消費電力量又は消費電流量等の平均値又は標準偏差値等を使用状況情報として学習モデル7へ入力する構成であってもよく、電気機器毎の使用回数の平均値及び標準偏差値等を使用状況情報として入力する構成であってもよい。
【0078】
また本実施の形態に係る学習モデル7は、施設101の電気機器の使用状況情報と共に、施設101を使用する対象者の年齢、性別及び教育歴の属性情報の入力を受け付けて、対象者の認知機能情報を出力する。対象者の年齢、性別及び教育歴等の情報は、認知機能に与える影響が大きいため、これらの情報を用いることで、学習モデル7はより精度よく対象者の認知機能を推定することができる。なお本実施の形態に係る学習モデル7は、年齢、性別及び教育歴の3つの情報を対象者の属性情報の入力として受け付けているが、これに限るものではなく、例えば学習モデル7は年齢、性別又は教育歴のいずれか1つ又は2つの情報を属性情報の入力として受け付けてもよく、また例えば学習モデル7は、年齢、性別及び教育歴以外の情報を属性情報の入力として受け付けてもよい。
【0079】
また本実施の形態に係る学習モデル7は、対象者の認知機能に関して正常状態、軽度認知障害の状態又は認知障害の状態のいずれであるかを分類した情報を認知機能情報として出力する。これによりサーバ装置3は、学習モデル7が出力する分類結果を取得して、対象者の認知機能の状態がいずれであるかを容易に判断することができる。なお本実施の形態に係る学習モデル7は、正常状態、軽度認知障害の状態又は認知障害の状態の3つの状態を分類するものとしたが、これに限るものではない。学習モデル7は、例えば正常状態又は軽度認知障害の状態の2つの状態を分類するものであってもよく、また例えば正常状態又は認知障害の状態の2つの状態を分類するものであってよく、また例えば上記の3つの状態に別の状態を更に含む4つ以上の状態を分類するものであってよい。サーバ装置3は、例えば正常状態又は認知障害の2つの状態を分類する学習モデル7を利用して認知症であるか否かを推定し、認知障害の状態であると推定された対象者について軽度認知障害又はそれより重い認知障害の2つの状態を分類する学習モデル7を利用して認知障害の程度を推定してもよい。
【0080】
また本実施の形態に係る情報処理システムでは、サーバ装置3による電気機器の使用時間の推定結果及び認知機能の状態の推定結果を端末装置5へ送信し、これを受信した端末装置5が電気機器の使用時間と対象者の認知機能の状態とを表示部54に表示する。これにより端末装置5を使用するユーザ102は、施設101の各電気機器の使用時間と、施設101を使用する対象者の認知機能の状態とを容易に確認することができる。端末装置5が電気機器の使用時間と対象者の認知機能の状態とを共に表示することによって、ユーザ102は認知機能の状態の推定結果と電気機器の使用時間との対応関係を推測することができる。
【0081】
また本実施の形態に係る情報処理システムでは、対象者が単身者又は夫婦世帯のいずれであるかの属性情報に応じて学習モデル7が個別に生成され、サーバ装置3は対象者が単身者又は夫婦世帯のいずれであるかに応じて複数の学習モデル7から1つを選択し、選択した学習モデル7を用いて対象者の認知機能の状態を推定する処理を行う。住宅等の施設101では、この施設に対象者が1人で住んでいるか、2人又はで住んでいるか、3人以上で住んでいるかで電気機器の使用時間が大きく異なることが予測されるため、単身者又は夫婦世帯に応じて個別に学習モデル7を生成しておくことで、学習モデル7を用いた推定の精度を向上することが期待できる。ただし、学習モデル7に対して単身者又は夫婦世帯のいずれであるかを対象者の属性情報として入力する構成としてもよい。また単身者及び夫婦世帯以外の世帯構成、例えば3人家族、4人家族等についても個別に学習モデル7を生成して認知機能の状態を推定することができる。
【0082】
なお本実施の形態に係る情報処理システムは、予め機械学習がなされた学習モデル7を利用して対象者の認知機能の状態を推定する構成としたが、これに限るものではない。情報処理システムは、学習モデル7を利用するのではなく、予め定められたルール(例えば1日のテレビの使用時間がX時間以上、エアコンの使用時間がY時間以上、電子レンジの使用時間がZ時間以下…等)に合致するか否かに応じて、対象者の認知機能の状態を推定する構成であってもよい。
【0083】
<実施の形態2>
実施の形態2に係る情報処理システムは、対象者のうつの状態を推定する処理を行う。
図13は、実施の形態2に係る学習モデル207の構成を説明するための模式図である。実施の形態2に係る情報処理システムでは、電気機器の使用時間と、対象者の属性情報とを入力として受け付け、対象者のうつの状態を出力する学習モデル207がサーバ装置3により生成され、サーバ装置3による対象者のうつ状態の推定処理に用いられる。実施の形態2に係る学習モデル207へ入力される情報は、実施の形態1に係る学習モデル7へ入力される情報と同じものであってよい。実施の形態2に係る学習モデル207が出力する情報は、例えば対象者がうつ状態であるか否かを分類する情報であり、うつ状態であることの尤度及び正常状態である(うつ状態でない)ことの尤度とすることができる。
【0084】
実施の形態2に係る情報処理システムでは、施設101に住む人のうつの状態を例えば年に1回から数回程度の頻度で医師等が診断した診断結果が収集される。本実施の形態において診断結果は、対象者がうつ状態であるか否かを示す情報である。この診断結果が、学習モデル207の出力情報に相当するものとして、入力情報に対応する正解ラベルとして付されることにより、学習モデル207を機械学習により生成するための訓練データが作成される。サーバ装置3は、予め作成された訓練データを用いた機械学習を行うことによって学習モデル207を生成し、生成した学習モデル207を学習モデル記憶部32cに記憶する。
【0085】
サーバ装置3は、施設101のセンサ1から取得した電力情報に基づいて各電気機器の使用時間を推定し、この推定結果と施設101に住む対象者の属性情報とを学習モデル207へ入力する。サーバ装置3は、学習モデル207が出力する情報を取得して対象者がうつ状態であるか否かを推定し、推定結果を端末装置5へ送信する。端末装置5は、サーバ装置3からの情報を受信して、対象者のうつの状態の推定結果を表示部54に表示する。このときに、サーバ装置3はうつ状態の推定結果と共に、電気機器の使用時間に関する情報を端末装置5へ送信し、端末装置5がうつ状態の推定結果と共に電気機器の使用時間に関する情報を表示してよい。
【0086】
以上の構成の実施の形態2に係る情報処理システムでは、施設101内の電気機器毎に推定された使用時間等の使用状況情報と、施設101を使用する対象者の属性情報との入力を学習モデル207が受け付けて、対象者のうつの状態の推定結果を学習モデル207が出力する。これによりサーバ装置3は、学習モデル207を利用して、施設101内の電気機器の使用状況に基づいて対象者のうつの状態を推定することができる。
【0087】
なおサーバ装置3は、認知機能の状態を推定する実施の形態1に係る学習モデル7と、うつの状態を推定する実施の形態2に係る学習モデル207とを共に用いて、対象者の認知機能の状態及びうつの状態を推定する処理を行ってよい。また、使用状況情報及び属性情報の入力に対して、対象者の認知機能の状態及びうつの状態の両方を認知機能情報として出力する学習モデルを生成してもよい。学習モデルが出力する認知機能情報は、正常状態、軽度認知障害及び認知障害の3つの状態の分類結果、又は、うつの状態であるか否かの分類結果に限らず、例えば認知機能の程度を示す数値情報など、これら以外の種々の情報であってよい。
【0088】
また、実施の形態2に係る情報処理システムのその他の構成は、実施の形態1に係る情報処理システムと同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0089】
<実施の形態3>
実施の形態3に係る情報処理システムは、電気機器の使用時間及び対象者の属性情報の時系列的な変化に基づいて、この対象者の将来の認知機能の状態を推定する。
図14は、実施の形態3に係る学習モデル307の構成を説明するための模式図である。実施の形態3に係る学習モデル307は、n個(n=1,2,3…)の時系列的な情報の入力を順に受け付けて、対象者の将来の認知機能の状態を推定する。学習モデル307には、例えば時点T1の情報、時点T2の情報、…、時点Tnの情報が、時系列順に入力される。
【0090】
学習モデル307へ入力される各時点の情報には、施設101の各電気機器の使用時間、及び、施設101に住む対象者の属性情報等が含まれる。ただし、学習モデル307へ入力される各時点の情報には、対象者の属性情報が含まれていなくてもよい。
【0091】
学習モデル307が出力する将来の認知機能の状態は、例えば時点T1~Tnの情報が入力される場合に、時点Tn+1の対象者の認知機能の状態である(又は、時点T2~Tn+1の対象者の認知機能の状態である)。なお学習モデル307は、将来の認知機能の状態に加えて、将来の電気機器の使用時間及び対象者の属性情報を出力してもよい。
【0092】
例えば、学習モデル307に対して2020年春の情報、2020年夏の情報、2020年秋の情報、2020年冬の情報が順に入力される場合、学習モデル307は2021年春の対象者の認知機能の状態を推定して出力する。又は、学習モデル307は、2020年春の情報、2020年夏の情報、2020年秋の情報、2020年冬の情報が順に入力される場合、2020年夏の推定結果、2020年秋の推定結果、2020年冬の推定結果、2021年春の推定結果を出力してもよい。なお、学習モデル307へ入力される時系列情報は、季節周期の情報でなくてよく、例えば1年周期、1ヶ月周期、1週間周期又は1日周期等の様々な時系列情報であってよい。学習モデル307は、入力された時系列情報に対して、次の周期における情報を推定して出力するように機械学習がなされた学習モデルである。
【0093】
実施の形態3に係る学習モデル307は、例えばRNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long Short Term Memory)、Seq2Seq(sequence to sequence)又はTransformer等の時系列情報を扱う学習モデルの構成が採用され得る。学習モデル307は、予め収集された時系列の情報を用いて、ある時点の情報を入力とし、次の時点の情報を正解ラベルとして訓練データを作成し、作成した訓練データを用いた教師ありの機械学習を行うことで生成される。
【0094】
実施の形態3に係るサーバ装置3は、施設101に設けられたセンサ1から取得した電力情報に基づいて電気機器の使用時間を推定し、推定した電気機器の使用時間の情報を記憶しておくと共に、季節毎又は1ヶ月毎等の所定期間での使用時間を集計して記憶しておく。サーバ装置3は、例えば季節毎又は1ヶ月毎等の所定周期で、最新の電気機器の使用時間及び対象者の属性情報を含む入力情報と、過去所定回数分の入力情報とを取得して、実施の形態3に係る学習モデル307へ時系列順に入力する。サーバ装置3は、学習モデル307が最終的に出力する認知機能の状態の推定結果を、対象者の将来の認知機能の状態の推定結果として取得する。
【0095】
サーバ装置3は、学習モデル307を用いて推定した将来の認知機能の状態に関する情報を、過去の認知機能の状態に関する情報と共に端末装置5へ送信する。これらの情報を受信した端末装置5は、例えば対象者の認知機能の状態の時系列的な変化を、グラフ等にて示した画像を表示部54に表示することができる。また例えばサーバ装置3は、将来の認知機能の状態が現時点の状態より悪化することが推定される場合、その旨を通知する情報を端末装置5へ送信し、ユーザに対する通知を行う。
【0096】
以上の構成の実施の形態3に係る情報処理システムでは、サーバ装置3が施設101の各電気機器の使用時間及び対象者の属性情報を含む時系列の入力情報を学習モデル307へ入力し、学習モデル307が出力する対象者の将来の認知機能の状態の推定結果を取得する。これにより実施の形態3に係る情報処理システムは、対象者の将来の認知機能の状態を推定することが期待できる。
【0097】
なお実施の形態3においては、学習モデル307が将来の認知機能の状態を推定する構成としたが、これに限るものではなく、将来のうつの状態を推定する構成としてもよい。また学習モデル307は、将来の認知機能の状態ではなく、現在の認知機能の状態を出力する構成であってもよい。即ち、時点T1~時点Tnまでの入力情報に対して、学習モデル307が、時点Tnの認知機能の状態を出力してもよい。
【0098】
また実施の形態3に係る情報処理システムでは、電気機器の使用時間及び対象者の属性情報を一組の入力情報として学習モデル307へ入力する構成としたが、これに限るものではない。学習モデル307へ入力する時系列の情報は、例えば電気機器の使用時間のみであってよく、また例えば使用時間及び属性情報以外の情報が含まれていてもよい。
【0099】
また、実施の形態3に係る情報処理システムのその他の構成は、実施の形態1,2に係る情報処理システムと同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0100】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0101】
1 センサ
3 サーバ装置
5 端末装置
7 学習モデル
31 処理部
31a 学習モデル生成部
31b 使用時間推定部
31c 認知機能推定部
32 記憶部
32a サーバプログラム
32b 訓練データ記憶部
32c 学習モデル記憶部
32d 対象者情報DB
32e 電力情報DB
33 通信部
51 処理部
51a 表示処理部
52 記憶部
52a プログラム
53 通信部
54 表示部
55 操作部
98,99 記録媒体
101 施設
102 ユーザ
111 使用時間表示領域
112 認知機能表示領域
207 学習モデル
307 学習モデル
N ネットワーク