(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019058
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/28 20060101AFI20230202BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20230202BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
H05K3/28 B
H05K1/14 C
H05K1/18 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123524
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】519111866
【氏名又は名称】デゾン・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】江夏 偉鵬
【テーマコード(参考)】
5E314
5E336
5E344
【Fターム(参考)】
5E314AA40
5E314BB15
5E314CC03
5E314CC04
5E314CC20
5E314FF06
5E314FF21
5E314FF27
5E314GG01
5E336AA04
5E336BB01
5E336BB12
5E336BB16
5E336DD39
5E336EE01
5E344AA05
5E344CD18
5E344DD07
(57)【要約】
【課題】 基板部が可撓性を有する配線基板において、部品点数の増加を抑制しつつ、保護が必要な箇所に対し適切な保護がなされ、信頼性を向上できるものを提供する。
【解決手段】 このFPC(配線基板)10は、可撓性を有する基板部11と、基板部11の弾性変形に追従して変形するよう基板部11に配置され、電気伝導を許容する配線部12と、配線部12、及び、コネクタ20における端子部22が相互に接する部位であって、電気伝導を許容する接続部14と、を備える。FPC10は、被覆部15を備えている。被覆部15は、シリコンを含む微粒子で構成され、接続部14、端子部22、及び、配線部12の一部を含む領域を被覆する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する基板部と、
前記基板部の弾性変形に追従して変形するよう前記基板部に配置され、電気伝導を許容する配線部と、
前記配線部、及び、所定部品における活電部が相互に接する部位であって、電気伝導を許容する接続部と、
を備えた配線基板において、
シリコンを含む微粒子で構成され、前記接続部、前記活電部、及び、前記配線部の一部を含む領域を被覆する被覆部
を備えたことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板において、
前記所定部品は、
前記活電部としての端子部を有し、前記端子部と前記配線部とが接続されるコネクタであり、
前記接続部は、
前記配線部、及び、前記コネクタの前記端子部が相互に接する部位である
配線基板。
【請求項3】
請求項1に記載の配線基板において、
前記所定部品は、
前記活電部としての端子部を有し、前記端子部と前記配線部とが接続される電子部品であり、
前記接続部は、
前記配線部、及び、前記電子部品の前記端子部が相互に接する部位である
配線基板。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の配線基板において、
前記被覆部は、
被覆厚みが1マイクロメートル以下となるよう構成された
配線基板。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の配線基板において、
前記被覆部は、
水が付着した場合、前記水と前記被覆部との接触角が90度よりも大きくなるよう構成された
配線基板。
【請求項6】
可撓性を有する基板部と、
前記基板部の弾性変形に追従して変形するよう前記基板部に配置され、電気伝導を許容する配線部と、
前記配線部、及び、所定部品における活電部が相互に接する部位であって、電気伝導を許容する接続部と、
を備えた配線基板の製造方法であって、
シリコンを含む微粒子を溶媒に分散させた分散液を、前記接続部、前記活電部、及び、前記配線部の一部を含む領域に塗布する塗布ステップと、
前記溶媒を除去することで、前記シリコンを含む微粒子で構成され前記領域を被覆する被覆部を形成する被覆ステップと、
を備えたことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の配線基板の製造方法において、
前記塗布ステップは、
前記分散液を、前記領域にスプレーすることで塗布する
配線基板の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の配線基板の製造方法において、
前記塗布ステップは、
前記分散液に、前記領域をディップすることで塗布する
配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線部が基板部に配置された配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線基板が知られている。配線基板では、一般に、配線部が基板部に配置されている。配線部は、例えば、その端部等にて、所定部品の活電部と接する。特に、基板部が可撓性を有している場合、配線部は、基板部の弾性変形に追従して変形する。この種の配線基板として、例えば、フレキシブルプリント基板(以下、「FPC」とも称呼する。)や、フレキシブルフレックスケーブル(以下、「FFCとも称呼する。)等が、知られている。
【0003】
特許文献1に記載のコネクタは、FPCに用いられる。このコネクタは、ハウジングを備えている。FPCの端部は、ハウジングの開口を介してその内部に収容される。ハウジングの内部には、リテーナが設けられている。リテーナは、FPCの端部とターミナルとを、電気的に接続する。ハウジングの開口における外周は、FPCごとカバーで覆われている。このカバーとリテーナとの間隙に、シール部材が充填されている。これにより、コネクタの防水性能を高めることができる。
【0004】
特許文献2に記載の熱電モジュールは、FPCを備えている。このFPC上に、複数のp型・n型の熱電素子が、交互に搭載されている。各熱電素子は、防湿被膜でそれぞれ覆われている。この防湿被膜は、例えば、シリコンゴム等で構成される。この防湿被膜の厚みは、例えば、10μm~100μm程度である。これにより、各熱電素子の信頼性を、向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-124337号公報(
図1等参照)
【特許文献2】特開2006-269721号公報(段落0031等参照)
【発明の概要】
【0006】
特許文献1の技術によれば、防水効果により、信頼性の向上が期待される。しかしながら、防水のために、カバーや、シール部材等が追加されている。このため、部品点数が、多くなる。特許文献2の技術によれば、同様に、防湿効果により、信頼性の向上が期待される。この防湿被膜の材料は、シリコンゴムである。この種の材料による被覆は、一般に、簡易であるとは言えない。結果的に、防湿被膜が、不均一となったり、厚くなる可能性がある。即ち、保護が必要な箇所に対し、適切な保護が求められる。
【0007】
本発明の目的は、部品点数の増加を抑制しつつ、保護が必要な箇所に対し適切な保護がなされ、信頼性を向上できる配線基板を提供することにある。
【0008】
本発明の配線基板は、可撓性を有する基板部と、前記基板部の弾性変形に追従して変形するよう前記基板部に配置され電気伝導を許容する配線部と、前記配線部及び所定部品における活電部が相互に接する部位であって電気伝導を許容する接続部と、を備える。
【0009】
本発明の配線基板の特徴は、シリコンを含む微粒子で構成され、前記接続部、前記活電部、及び、前記配線部の一部を含む領域を被覆する被覆部を備えたことにある。
【0010】
本発明によれば、被覆部にて、接続部、活電部、及び、配線部に、異物が接触することを抑制できる。従って、信頼性を向上できる。この被覆部は、シリコンを含む微粒子で構成される。接続部、活電部、及び、配線部は、電気伝導を許容する部位である。これらの部位の表面に対して、シリコンを含む微粒子は、非常に強く結び付く。このため、シリコンを含む微粒子による被覆は、簡易である。従来技術に比して、被覆部の厚みを、均一に、薄くすることができる。従って、保護が必要な箇所に対して、適切な保護がなされ得る。加え、上述のようなカバーや、シール部材等の追加部品が不要である。従って、部品点数の増加が抑制され得る。また、耐衝撃性を向上する観点で、カバーを取り付けてもよい。カバーを備えた場合に、カバー内部にて発生する水分(例えば、結露水等)からも、保護が可能となる。
【0011】
本発明に係る配線基板においては、前記所定部品は、前記活電部としての端子部を有し前記端子部と前記配線部とが接続されるコネクタであり、前記接続部は、前記配線部、及び、前記コネクタの前記端子部が相互に接する部位であると好適である。
【0012】
本発明に係る配線基板においては、前記所定部品は、前記活電部としての端子部を有し前記端子部と前記配線部とが接続される電子部品であり、前記接続部は、前記配線部、及び、前記電子部品の前記端子部が相互に接する部位であると好適である。
【0013】
本発明に係る配線基板においては、前記被覆部は、被覆厚みが1マイクロメートル以下となるよう構成されると好適である。
【0014】
本発明に係る配線基板においては、前記被覆部は、水が付着した場合、前記水と前記被覆部との接触角が90度よりも大きくなるよう構成さると好適である。
【0015】
本発明の配線基板の製造方法は、可撓性を有する基板部と、前記基板部の弾性変形に追従して変形するよう前記基板部に配置され電気伝導を許容する配線部と、前記配線部及び所定部品における活電部が相互に接する部位であって電気伝導を許容する接続部と、を備える配線基板の製造方法である。
【0016】
本発明の配線基板の製造方法の特徴は、シリコンを含む微粒子を溶媒に分散させた分散液を、前記接続部、前記活電部、及び、前記配線部の一部を含む領域に塗布する塗布ステップと、前記溶媒を除去することで、前記シリコンを含む微粒子で構成され前記領域を被覆する被覆部を形成する被覆ステップと、を備えたことにある。
【0017】
本発明に係る配線基板の製造方法においては、前記塗布ステップは、前記分散液を、前記領域にスプレーすることで塗布すると好適である。
【0018】
本発明に係る配線基板の製造方法においては、前記塗布ステップは、前記分散液に、前記領域をディップすることで塗布すると好適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る配線基板を用いた、FPCモジュールを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すFPCモジュールの縦断面図である。
【
図4】
図1に示すFPCが備える被覆部に対し、被水した場合の被覆部表面の状態を示す断面図である。
【
図5】
図1に示すFPCの製造方法及びFPCモジュールの組立方法を説明するための図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る配線基板を用いた、FPCモジュールを示す斜視図である。
【
図7】
図6に示すFPCモジュールの縦断面図である。
【
図8】
図6に示すFPCの製造方法及びFPCモジュールの組立方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明による配線基板の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
[第1実施形態]
先ず、第1実施形態について説明する。
【0022】
<FPCモジュール>
図1に示すように、第1実施形態のFPCモジュール100は、FPC(フレキシブルプリント基板)10、コネクタ20、及び、プリント基板30を備えている。なお、各図において、左・右方向、上・下方向、手前・奥手方向は、図中の矢印におけるL(Left)・R(Right)方向、U(Up)・D(Down)方向、F(Front)・B(Back)方向に、それぞれ対応している。
【0023】
FPC10は、平面視にて略長方形状を呈している。FPC10は、全体として、帯状を呈している。FPC10の長辺方向、短辺方向、及び、厚み方向は、F・B方向、L・R方向、及び、U・D方向に、それぞれ対応している。FPC10の厚みは、その長辺および短辺に比して、十分に小さい。FPC10は、基板部11、配線部12、カバーレイ13、接続部14、及び、被覆部15を備えている。本実施形態のFPC10は、多層構造の片面FPCであるが、これに限定されず、例えば、両面FPCであってもよい。なお、FPC10は、配線基板に相当する。
【0024】
基板部11は、FPC10の最下層を構成している。基板部11は、可撓性を有している。基板部11は、弾性変形するため、FPC10は、U・D方向へ湾曲できる。また、FPC10は、F・B方向を軸としたねじれが可能である。基板部11のU・D方向における厚みは任意であるが、薄い方が好ましい。この厚みは、例えば、10μm以下、10μm~100μm、100μm以上であってもよい。基板部11は、絶縁性の材料で構成されると好ましい。基板部11の材料は、例えば、PI(ポリイミド)フィルム、PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルム、LCP(液晶ポリマー)フィルム等でもよい。
【0025】
図1(a)に示すように、配線部12は、基板部11の上面(片面)に配置されている。配線部12は、平面視にて複数の略直線状を呈している。配線部12のB方向における一端側は、配線端部12aとして規定される。配線部12の各直線は、配線端部12aから他端側に亘り、基板部11の長辺に沿って連続的に伸びている。配線部12の各直線は、互いに平行となるよう、それぞれ配置されている。配線部12の各直線は、基板部11の短辺に沿って等間隔にそれぞれ配置されている。本実施形態では、直線は7本であるが、この本数は限定されない。また、配線部12の形状は、略直線状であるのに代えて、例えば、屈曲線状、湾曲線状、直線と曲線とを組合せた形状等でもよい。
【0026】
配線部12の下面と、基板部11の上面との間には、例えば、接着剤等が介装されている。これにより、配線部12は、基板部11の弾性変形に追従して変形する。配線部12は、電気伝導性の材料で構成されると好ましい。配線部12の材料は、例えば、銅、銀、金、合金、カーボン等を原料とした箔や、当該原料のペースト等でもよい。配線部12のU・D方向における厚みは任意であるが、薄い方が好ましい。この厚みは、例えば、10μm以下、10μm~100μm、100μm以上であってもよい。
図1(a)に示すように、配線部12のL・R方向における線幅は、基板部11の一端側から他端側に亘って一定でもよいし、配線端部12aにて幅広形状となっていてもよい。上述した配線部12の線幅、線長、間隔、厚み、形状、配置等は、任意であり、本実施形態のものに限定されない。
【0027】
配線部12が配置された基板部11の上面は、カバーレイ13にて被覆されている。カバーレイ13は、FPC10の最上層を構成している。カバーレイ13は、可撓性を有している。カバーレイ13は、絶縁性の材料で構成されると好ましい。カバーレイ13の下面と、配線部12及び基板部11の上面との間には、例えば、接着剤等が介装されている。即ち、配線部12は、基板部11及びカバーレイ13の間に介装されている。
図1(a)に示すように、基板部11のB方向における一端側は、カバーレイ13にて被覆されない。配線端部12aも、カバーレイ13にて被覆されない。このため、配線端部12aの上面は、露出している。
【0028】
配線端部12aの上面は、接続部14として規定される。
図1(b)に示すように、接続部14は、コネクタ20の端子部22(端子端部22a)に接する部位である。接続部14は、配線部12及び端子部22の電気伝導を許容する。なお、コネクタ20及びコネクタ20の端子部22は、所定部品及び活電部に相当する。
【0029】
コネクタ20は、ハウジング21、及び、端子部22を備えている。ハウジング21は、略直方体状の筐体である。ハウジング21は、樹脂で構成されている。ハウジング21のF方向の面には、開口21aが設けられている。開口21aは、略長方形状を呈している。開口21aの長辺方向及び短辺方向は、L・R方向及びU・D方向に、それぞれ対応している。
図1(a)に示すように、開口21aを介して、ハウジング21の内部空間21bは、ハウジング21の外部と連通している。
図1(b)に示すように、FPC10のB方向における一端側は、開口21aを介して、内部空間21bへ挿入される。FPC10が挿入される場合、FPC10の短辺と、開口21aの長辺とは、互いに平行となる。
【0030】
図1(a)に示すように、端子部22は、ハウジング21の内部に配置されている。端子部22は、電気伝導性の材料で構成されると好ましい。端子部22は、開口21aの長辺に沿って等間隔にそれぞれ配置されている。端子部22の個数及び位置は、配線部12の個数及び位置に対応している。端子部22は、開口21a近傍において、ハウジング21の上面内壁からD方向へ突出している。この突出部位の先端は、端子端部22aとして規定される。端子端部22aは、例えば、圧着等により接続部14と接続される。
【0031】
端子部22は、開口21a近傍から内部空間21bにおいてB方向へ伸長している。端子部22は、ハウジング21の壁内部を介し、ハウジング21の底面外壁からも、D方向へ突出している(
図2(b)を参照)。この突出部位の先端は、端子端部22bとして規定される。端子端部22bは、例えば、ハンダ付け等によりプリント基板30と接続される。各端子端部22a及び22bは、電気的に接続されている。
図1(b)に示すように、コネクタ20に、FPC10及びプリント基板30がそれぞれ接続された場合、端子部22を介して、FPC10及びプリント基板30が、電気的に接続される。本実施形態では、プリント基板30は、剛体の板形状を呈している。
【0032】
<被覆部>
一般的なFPCを、一般的なコネクタに接続する場合を想定する。この場合、コネクタの端子は、FPCの配線部に、接続部を介して接する。端子部、接続部、及び、配線部は、外部に露出する場合が多い。端子部、接続部、及び、配線部は、電気伝導を許容する部位である。この部位に異物が接触すると、FPCモジュールの信頼性が低下する可能性がある。異物は、例えば、結露による水、雨水、埃、砂塵、漏出した冷却媒体、漏出した潤滑媒体等である。特に、異物が水分を含む場合、腐食、短絡等が生じる可能性がある。このため、端子部、接続部、及び、配線部は、保護が必要な箇所であると言える。
【0033】
本実施形態のFPC10は、被覆部15を備えている。被覆部15は、接続部14、端子部22、及び、配線部12を被覆する。
図1(b)におけるA1-A1切断線は、L・R方向と平行である。この切断線は、開口21aの近傍における縦断面を規定する。A2-A2切断線は、F・B方向と平行である。この切断線は、コネクタ20全体に亘る縦断面を規定する。
図2(a)は、A1-A1縦断面図である。
図2(b)は、A2-A2縦断面図である。
図2(a)に示すように、各端子部22は、接続部14を介して、対応する配線部12とそれぞれ接している。被覆部15は、各端子部22のL・R方向の両側面に、配線部12及び接続部14を含んで密着している。被覆部15は、ハウジング21の上面内壁からFPC10に亘って連続している。
【0034】
図2(b)に示すように、端子部22は、ハウジング21の壁内部に、埋め込まれている。埋め込まれている部位は、端子埋設部22cとして、規定される。端子部22は、端子埋設部22cから、F方向及びD方向に突出している。F方向に突出した端子部22は、内部空間21bに位置し、端子端部22aを含む。被覆部15は、F方向に突出した端子部22の全面に、配線端部12a及び接続部14を含んで密着している。本実施形態においては、被覆部15にて被覆される領域は、接続部14、端子部22のうち内部空間21bに位置し、F方向に突出する部位、及び、配線部12のうち配線端部12aの部位を含む。被覆部15にて被覆される領域を、以下、「被覆領域」とも称呼する。なお、D方向に突出した端子部22は、プリント基板30と係合し、端子端部22bを含む。プリント基板30において、端子端部22bを含む領域に、被覆部15を設けてもよい。
【0035】
被覆部15の厚みは、任意であるが、薄い方が好ましい。被覆部15の厚み(被覆厚みに相当)は、被覆された面に対して垂直方向の厚みを意味する。被覆部15の厚みは、特に、FPC10を構成する部品(基板部11、配線部12、カバーレイ13等)におけるU・D方向の厚みや、FPCそのものにおけるU・D方向の厚みよりも、薄いと好適である。被覆部15の厚みは、例えば、1μm以下、1μm~10μm、10μm以上であってもよい。なお、
図2に示す被覆部15の厚みは、説明の便宜上、比較的大きく図示されている。実際の被覆部15の厚みと、他部品の大きさとの比率は、
図2に示すものと異なってもよい。
【0036】
図3は、接続部14近傍の要部拡大図である。この拡大図は、被覆部15、接続部14、端子部22、及び、配線部12の断面図である。接続部14は、端子部22及び配線部12の間に位置している。被覆部15は、上記被覆領域の表面に密着することで、接続部14を含み、端子部22及び配線部12を被覆している。被覆部15は、シリコンを含む微粒子Pで、構成されている。シリコンを含む微粒子Pは、電気伝導性を有する材料(例えば、金属等)の表面に対し、非常に強く結び付く。これは、シリコンを含む微粒子Pが、上記被覆領域の表面の微細な凹凸よりも、十分に小さいことに基づく。この凹凸のスケールは、20μm~250μm程度である場合が多い。シリコンを含む微粒子Pは、凹凸に埋め込まれ、幾重にも積み重なって、表面全体を被覆する。
【0037】
シリコンを含む微粒子Pは、種々の態様を呈してもよい。シリコンを含む微粒子Pの粒子径(平均直径)は、例えば、10nm未満、7nm未満、又は、2nm未満であると好ましい。特に、粒子径が1.5nm以上かつ2.0nm未満の範囲に推移すると、更に好ましい。
【0038】
シリコンを含む微粒子Pは、例えば、シリコン原子を骨格とする化合物であって、酸素原子、炭素原子、及び、水素原子のうち、何れか1つ、2つ、又は、全ての原子が含まれている化合物からなる微粒子でもよい。また、シリコンを含む微粒子Pは、例えば、上記化合物の複数を混合した混合物の微粒子でもよい。また、シリコンを含む微粒子Pは、例えば、シリコン原子のみからなる微粒子でもよい。また、シリコンを含む微粒子Pは、例えば、上記化合物とシリコン原子のみからなる微粒子とを混合した混合物の微粒子でもよい。シリコン原子を骨格とする化合物としては、例えば、酸化ケイ素、シラノール、シリコンエーテル、シロキサン等であり、これらに限定されない。
【0039】
図4(a)は、一例として、被覆部15に、液体の水Wが降りかかっている状態を示す。水Wは、被覆部15の表面に付着する。その後、
図4(b)に示すように、水Wは、被覆部15の表面において、液滴DRとなる。水Wは、被覆部15の内部には浸透しない。水Wは、接続部14、端子部22、及び、配線部12のいずれにも到達しない。被覆部15は、撥水性を有していると好ましい。被覆部15の表面における液滴DRは、その表面に対する接触角CAを有する。撥水性の度合いは、例えば、接触角CAが指標となる。本実施形態においては、接触角CAが、90度よりも大きく、又は、100度よりも大きくなるよう、被覆部15が構成されると好ましい。以上のように、接続部14、端子部22、及び、配線部12は、被覆部15により保護されている。
【0040】
<製造方法>
第1実施形態のFPC10の製造、及び、FPCモジュール100の組立は、例えば、
図5(a)に示す工程を経る。先ず、取付ステップ501にて、FPC10をコネクタ20に取り付ける。具体的には、コネクタ20の開口21aにFPC10の端部を挿入し、配線端部12a及び端子部22を圧着する。取付ステップ501では、例えば、汎用的な工程にて、既に製造されたコネクタおよびFPCが、用いられてもよい。
【0041】
次に、塗布ステップ502にて、取付け済のFPC10及びコネクタ20に、分散液DPを塗布する。具体的には、予め容器に分散液DPを貯留しておき、取付け済のFPC10及びコネクタ20を、分散液DPにディップする。取付け済のFPC10及びコネクタ20のうち、少なくとも上記被覆領域を含む部位を、分散液DPに十分浸漬させる。浸漬した状態を保持する時間は、例えば、数秒程度~数分程度でもよい。浸漬させた後に、FPC10及びコネクタ20を、分散液DPから取出す。これにより、上記被覆領域に、分散液DPが塗布される。
【0042】
分散液DPは、上述したシリコンを含む微粒子を溶媒に分散させた液である。分散液DPにおけるシリコンを含む微粒子の濃度は、任意である。溶媒は、シリコンを含む微粒子を分散できる液体であれば、限定されない。溶媒は、例えば、オイル等であると好ましい。これは、シリコンを含む微粒子を良好に分散させ、且つ、後のステップにて溶媒を簡単に除去する観点に基づく。溶媒としてオイル等を用いる場合、特に、粘性が小さいものが好ましい。これは、狭い隙間にも分散液DPを簡単に侵入させ、且つ、分散液DPを薄く塗布する観点に基づく。
【0043】
次に、被覆ステップ503では、分散液DPから取出したFPC10及びコネクタ20にて、上述した被覆部15を形成する。分散液DPから溶媒を除去して、上記被覆領域にて、シリコンを含む微粒子のみを残存させる。溶媒の除去は、例えば、溶媒を気化させて行うと好ましい。加熱により、溶媒の蒸気圧を上げることで、より短時間での溶媒の除去が可能となる。これにより、
図2に示すように、被覆部15が形成される。
【0044】
FPC10の製造、及び、FPCモジュール100の組立は、例えば、
図5(b)に示す工程を経る。この工程は、塗布ステップ504のみ、
図5(a)に示す工程と異なる。取付ステップ501の次の塗布ステップ504では、取付け済のFPC10及びコネクタ20に、分散液DPをスプレーする。具体的には、予め容器に分散液DPを貯留しておき、ノズルを介して貯留した分散液DPをスプレーする。取付け済のFPC10及びコネクタ20のうち、少なくとも上記被覆領域を含む部位に、分散液DPを十分スプレーする。これにより、上記被覆領域に、分散液DPが塗布される。その後、被覆ステップ503を行う。これによっても、
図2に示すように、被覆部15が形成される。
【0045】
ここでは図示しないが、コネクタ20は、別途、プリント基板30に端子端部22bを介して接続される(
図1を参照)。例えば、取付ステップ501よりも前に、コネクタ20をプリント基板30に取付けてもよい。例えば、被覆ステップ503よりも後に、コネクタ20をプリント基板30に取付けてもよい。また、被覆ステップ503の後、再び塗布ステップ502又は504を行い、形成される被覆部15の被覆厚みを増大させてもよい。
【0046】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係る配線基板(FPC10)によれば、被覆部15にて、接続部14、端子部22、及び、配線部12に、異物が接触することを抑制できる。従って、信頼性を向上できる。この被覆部15は、シリコンを含む微粒子で構成される。接続部14、端子部22、及び、配線部12は、電気伝導を許容する部位である。これらの部位の表面に対して、シリコンを含む微粒子Pは、非常に強く結び付く(
図3を参照)。このため、シリコンを含む微粒子による被覆は、簡易である。従来技術に比して、被覆部15の厚みを、均一に、薄くすることができる。従って、保護が必要な箇所に対して、適切な保護がなされ得る。加え、従来技術のようなカバーや、シール部材等の追加部品が不要である。従って、部品点数の増加が抑制され得る。また、耐衝撃性を向上する観点で、カバーを取り付けてもよい。カバーを備えた場合に、カバー内部にて発生する水分(例えば、結露水等)からも、保護が可能となる。
【0047】
また、本実施形態では特に、コネクタ20が用いられる。コネクタ20は、活電部としての端子部22を有する。コネクタ20では、端子部22と配線部12とが接続される。接続部14は、配線部12、及び、端子部22が相互に接する部位である。これによれば、FPC10と合わせて、コネクタ20が用いられる場合において、信頼性を向上できる。
【0048】
また、本実施形態では特に、被覆部15は、被覆厚みが1マイクロメートル以下となるよう構成されると好適である。これによれば、被覆厚みを、FPC10を構成する部品の厚みや、FPCそのものの厚みよりも、十分に薄くできる。このため、FPC10の機能が、阻害され難い。
【0049】
また、本実施形態では特に、被覆部15は、水Wが付着した場合、液滴DRの接触角CAが90度よりも大きくなるよう構成さると好適である(
図4を参照)。これによれば、液滴DRが、被覆部15から弾かれ易くなる。このため、上記被覆領域を、水Wから確実に保護することができる。
【0050】
また、本実施形態の配線基板は、例えば、塗布ステップ502又は504と、被覆ステップ503とを経て、製造される。塗布ステップ502又は504では、シリコンを含む微粒子を溶媒に分散させた分散液DPが、上記被覆領域に塗布される。被覆ステップ503では、溶媒が除去されて、上記被覆領域を被覆する被覆部15が形成される。これによれば、被覆部15の形成に際し、専用装置等は不要となる。このため、簡易且つ低コストで、被覆部15を形成できる。
【0051】
また、本実施形態では特に、塗布ステップ502にて、分散液DPに、上記被覆領域がディップされて塗布されると好適である。これによれば、上記被覆領域に、確実に分散液DPを塗布できる。例えば、FPC10及びコネクタ20のサイズが小さい場合に、上記被覆領域全体を、分散液DPに確実に浸漬させることができ、均一に分散液DPを塗布することができる。
【0052】
また、本実施形態では特に、塗布ステップ504にて、分散液DPが、上記被覆領域にスプレーされて塗布されると好適である。これによれば、塗布に必要な分散液DPの量を、必要最小限に抑えることができる。例えば、FPC10及びコネクタ20のサイズが大きい場合に、分散液DPへの浸漬が困難であっても、均一に分散液DPを塗布することができる。
【0053】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
【0054】
<FPCモジュール>
図6に示すように、第2実施形態のFPCモジュール100は、第1実施形態のコネクタ20に代えて、IC(集積回路)40を備えている。IC40が、FPC10に接続されている点で、第1実施形態と異なる。以下、第2実施形態の第1実施形態と異なる点についてのみ、説明する。第2実施形態において、第1実施形態の部位と同一・等価な部位については、同じ符号を付すことで説明を省略する。
【0055】
図6(a)に示すように、FPC10は、基板部11に対し、2つの配線部12を備えている。一方の配線部12は、配線端部12bからF方向へ延びている。他方の配線部12は、配線端部12cからB方向へ延びている。配線端部12b及び12cは、基板11上にて、それぞれ離間している。配線端部12b及び12cは、カバーレイ13にて被覆されない。このため、配線端部12b及び12cの上面は、それぞれ露出している。
【0056】
配線端部12b及び12cの上面は、接続部14b及び14cとして、それぞれ規定される。
図6(b)に示すように、接続部14b及び14cは、IC40の端子部42(端子端部42b及び42c)に接する部位である。接続部14b及び14cは、配線部12及び端子部42の電気伝導を許容する。なお、IC40及びIC40の端子部42は、電子部品及び活電部に相当する。
【0057】
IC40は、モールド部41、及び、端子部42を備えている。IC40は、半導体パッケージであり、モールド部41内にチップが内蔵されている。モールド部41は、平面視にて略長方形状の平板である。モールド部41は、樹脂で構成されている。モールド部41の長辺方向及び短辺方向は、L・R方向及びF・B方向に、それぞれ対応している。
図6(b)に示すように、IC40がFPC10に接続される場合、FPC10の長辺と、モールド部41の短辺とは、互いに平行となる。
【0058】
図6(a)に示すように、端子部42は、モールド部41の2つの長辺にそれぞれ配置されている。端子部42は、モールド部41に内蔵されるチップと、電気的に接続されている。端子部42は、モールド部41の2つの長辺に沿って等間隔にそれぞれ配置されている。端子部42の個数及び位置は、配線部12の個数及び位置に対応している。端子部42は、モールド部41の長辺下縁から、D方向へ突出している。モールド部41のF方向側にて、この突出部位の先端は、端子端部42bとして規定される。モールド部41のB方向側にて、この突出部位の先端は、端子端部42cとして規定される。端子端部42b及び42cは、例えば、ハンダ付け等により接続部14b及び14cと接続される。本実施形態では、端子部42は、モールド部41におけるF・B方向の長辺に設けられている。これに限定されず、端子部42は、モールド部41の一方の長辺のみに設けられていてもよい。端子部42は、モールド部41の全ての辺に設けられていてもよい。IC40の端子部42の態様に応じて、配線部12及び接続部14を適合させると、好適である。
【0059】
<被覆部>
本実施形態のFPC10も、被覆部15を備えている。被覆部15は、接続部14b及び14c、端子部42、及び、配線部12を被覆する。
図6(b)におけるA3-A3切断線は、L・R方向と平行である。この切断線は、端子端部42bの近傍における縦断面を規定する。A4-A4切断線は、F・B方向と平行である。この切断線は、IC40全体に亘る縦断面を規定する。
図7(a)は、A3-A3縦断面図である。
図7(b)は、A4-A4縦断面図である。
【0060】
図7(a)に示すように、端子端部42bは、接続部14bを介して、対応する配線端部12bと接している。被覆部15は、各端子部42のL・R方向の両側面、及び、U方向の上面に、配線端部12b及び接続部14bを含んで密着している。なお、ここでは図示しないが、端子端部42c側も、上述と同様である。
【0061】
図7(b)に示すように、被覆部15は、モールド部41からD方向に突出した端子部42の各全面に、配線部12及び接続部14b及び14cを含んで密着している。本実施形態の被覆領域は、接続部14b及び14c、D方向に突出する端子部42、及び、配線部12のうち配線端部12b及び12cの部位を含む。なお、
図7に示す被覆部15の厚みは、説明の便宜上、比較的大きく図示されている。実際の被覆部15の厚みと、他部品の大きさとの比率は、
図7に示すものと異なってもよい。
【0062】
<製造方法>
第2実施形態のFPC10の製造、及び、FPCモジュール100の組立は、例えば、
図8(a)に示す工程を経る。先ず、取付ステップ801にて、IC40をFPC10に取り付ける。具体的には、FPC10の配線端部12b及び12cに、IC40の端子端部42b及び42cをハンダ付けする。取付ステップ801では、例えば、汎用的な工程にて、既に製造されたICおよびFPCが、用いられてもよい。
【0063】
次に、塗布ステップ502にて、取付け済のFPC10及びIC40に、分散液DPを塗布する。次に、被覆ステップ503では、分散液DPから取出したFPC10及びIC40にて、上述した被覆部15を形成する。分散液DPから溶媒を除去して、上記被覆領域にて、シリコンを含む微粒子のみを残存させる。これにより、
図7に示すように、被覆部15が形成される。
【0064】
FPC10の製造、及び、FPCモジュール100の組立は、例えば、
図8(b)に示す工程を経る。この工程は、塗布ステップ504のみ、
図8(a)に示す工程と異なる。取付ステップ801の次の塗布ステップ504では、取付け済のFPC10及びIC40に、分散液DPをスプレーする。その後、被覆ステップ503を行う。これによっても、
図7に示すように、被覆部15が形成される。
【0065】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本発明の第2実施形態に係る配線基板(FPC10)によれば、IC40が用いられる。IC40は、活電部としての端子部42を有する。IC40の端子端部42b及び42cと、配線部12の配線端部12b及び12cとが、それぞれ接続される。接続部14b及び14cは、配線部12、及び、端子部22が相互に接する部位である。これによれば、FPC10と合わせて、IC40が用いられる場合において、信頼性を向上できる。
【0066】
<変形例>
上述した第1、第2実施形態に係る配線基板は、各請求項に記載の範囲において、種々の変形例をとることができる。第1、第2実施形態においては、配線基板としてFPC10が用いられている。これに代えて、例えば、FFCが用いられてもよい。
【0067】
上述した第1、第2実施形態に係る配線基板の製造方法においては、塗布ステップ502,504が、取付ステップ501,801の後の工程となっている。これに代えて、塗布ステップ502,504が、取付ステップ501,801よりも前の工程となっていてもよい。この場合、塗布ステップ502,504にて、取付前の状態において、コネクタ20の端子部22、IC40の端子部42、配線端部12a,12b,12c、に分散液DPが塗布される。
【0068】
第1実施形態においては、FPC10のB方向における一端側が、コネクタ20に接続される。更に、FPC10のF方向における他端側が、もう一つのコネクタに接続されていてもよい。
【0069】
第2実施形態においては、電子部品としてIC40が用いられている。これに代えて、例えば、トランジスタ、ダイオード、オペアンプ、コンデンサ、キャパシタ、インダクタ、レジスタ、リレー、スイッチ等が用いられてもよい。FPC10に実装可能な電子部品であればよく、これらに限定されない。
【0070】
第2実施形態においては、FPC10に、IC40が接続される。更に、FPC10の一端側及び他端側の何れか一方、又は、両方に、コネクタ20が接続されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10…FPC、11…基板部、12…配線部、12a…配線端部、12b…配線端部、12c…配線端部、14…接続部、14b…接続部、14c…接続部、15…被覆部、20…コネクタ、22…端子部、22a…端子端部、40…IC、42b…端子端部、42c…端子端部、100…FPCモジュール、502…塗布ステップ、503…被覆ステップ、504…塗布ステップ、CA…接触角、DP…分散液、DR…液滴、P…微粒子、W…水