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特開2023-19061水素生成システム、および水素生成システムの運用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019061
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】水素生成システム、および水素生成システムの運用方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20230202BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALI20230202BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20230202BHJP
   H01M 8/04828 20160101ALI20230202BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20230202BHJP
   H01M 8/04694 20160101ALI20230202BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20230202BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20230202BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20230202BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20230202BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/0656
H01M8/04 J
H01M8/04858
H01M8/04828
H01M8/04014
H01M8/04694
C01B3/56 Z
C01B3/00 Z
B01D53/26 231
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123527
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】八巻 昌宏
【テーマコード(参考)】
4D052
4G140
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
4D052AA02
4D052CD01
4D052DA02
4D052DB01
4G140AB01
4G140FA02
4G140FB02
4G140FC02
4G140FE01
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB27
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA14
5H127BA23
5H127BA52
5H127BA59
5H127BB04
5H127BB39
5H127DC01
5H127DC07
5H127DC21
5H127DC86
5H127DC90
(57)【要約】
【課題】水素ガスを発生させつつ、より効率的に除湿器の再生を実施する。
【解決手段】水素生成システム(2)は、水電解により少なくとも水素ガスを生成する電解装置(4)と、気体の除湿を行う除湿装置(12)と、水素ガスを燃料として発電する燃料電池(20)と、各部の動作を制御する制御部(72)とを備える。制御部は、電解装置からの水素ガスの、除湿装置による除湿と、燃料電池の稼働に伴い生じる、燃料電池からの排熱を少なくとも利用した除湿装置の再生とを制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水電解により少なくとも水素ガスを生成する電解装置と、
気体の除湿を行う除湿装置と、
水素ガスを燃料として発電する燃料電池と、
前記電解装置からの水素ガスの少なくとも一部を前記除湿装置に供給する水素ガス除湿ラインと、
前記燃料電池の稼働に伴い生じる前記燃料電池からの排熱の少なくとも一部を前記除湿装置に供給する排熱供給ラインと、
前記電解装置、前記除湿装置、および前記燃料電池の動作を制御し、前記電解装置からの水素ガスの前記除湿装置による除湿と、前記排熱を少なくとも利用した前記除湿装置の再生とを制御する制御部とを備えた水素生成システム。
【請求項2】
前記燃料電池からの電力の少なくとも一部を前記電解装置に供給する第1電源線をさらに備え、
前記制御部は、さらに、前記第1電源線を介した、前記燃料電池から前記電解装置への電力供給を制御する請求項1に記載の水素生成システム。
【請求項3】
再生可能エネルギーを利用して発電を行う発電装置からの電力の少なくとも一部を前記電解装置に供給する第2電源線をさらに備え、
前記制御部は、さらに、前記第2電源線を介した、前記発電装置から前記電解装置への電力供給を制御する請求項1または2に記載の水素生成システム。
【請求項4】
前記除湿装置の再生は、少なくとも、前記電解装置にて生成された水素ガスの少なくとも一部を利用して実行され、
前記制御部は、さらに、前記除湿装置の、前記電解装置にて生成された水素ガスによる再生を制御する請求項1から3の何れか1項に記載の水素生成システム。
【請求項5】
前記除湿装置による除湿を経て乾燥した水素ガスの少なくとも一部と、前記燃料電池からの排熱を含む排気との、熱交換を行う熱交換器をさらに備え、
前記制御部は、さらに、少なくとも、前記熱交換器からの水素ガスの少なくとも一部を利用した、前記除湿装置の再生を制御する請求項1から4の何れか1項に記載の水素生成システム。
【請求項6】
前記除湿装置の再生により湿潤した水素ガスの少なくとも一部を、前記燃料電池に供給する湿潤水素ガス供給ラインをさらに備え、
前記制御部は、さらに、前記湿潤水素ガス供給ラインを介した、前記除湿装置から前記燃料電池への、湿潤した前記水素ガスの供給を制御する請求項1から5の何れか1項に記載の水素生成システム。
【請求項7】
前記除湿装置による除湿を経て乾燥した水素ガスの少なくとも一部を、水素ガスを貯留する水素ガス貯留装置に供給する水素ガス貯留ラインと、
前記水素ガス貯留装置に貯留された水素ガスの少なくとも一部を、前記燃料電池に供給する貯留水素ガス供給ラインとをさらに備え、
前記制御部は、さらに、前記水素ガス貯留ラインを介した、前記除湿装置から前記水素ガス貯留装置への水素ガスの供給と、前記貯留水素ガス供給ラインを介した、前記水素ガス貯留装置から前記燃料電池への水素ガスの供給とを制御する請求項1から6の何れか1項に記載の水素生成システム。
【請求項8】
前記電解装置は、水電解によりさらに酸素ガスを生成し、
前記燃料電池は、さらに酸素ガスを酸化剤として発電し、
前記電解装置からの酸素ガスの少なくとも一部を、前記燃料電池に供給する酸素ガス供給ラインをさらに備え、
前記制御部は、さらに、前記酸素ガス供給ラインを介した、前記電解装置から前記燃料電池への酸素ガスの供給を制御する請求項1から7の何れか1項に記載の水素生成システム。
【請求項9】
前記除湿装置は、少なくとも二つの除湿器を含み、
前記制御部は、少なくとも一つの前記除湿器による除湿を経て乾燥した水素ガスの少なくとも一部利用した、他の少なくとも一つの前記除湿器の再生を制御する請求項1から8の何れか1項に記載の水素生成システム。
【請求項10】
水電解により少なくとも水素ガスを生成する電解装置と、前記水素ガスの少なくとも一部の除湿を行う除湿装置とを備えた水素生成システムの運用方法であって、
水素ガスを燃料として発電する燃料電池の稼働に伴い生じる、該燃料電池からの排熱の少なくとも一部を利用して、前記除湿装置の再生を実行する水素生成システムの運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素生成システム、および当該水素生成システムの運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水の電解により水素ガスを得て、燃料電池の燃料等に利用する技術が従来から知られている。水の電解により得られる水素ガスは湿度が高いため、水素ガスの除湿を行ってから、水素ガスの貯留または使用を実施する場合があり、このような場合、除湿器等による水素ガスの除湿を実施する。特許文献1は、気体の除湿に用いられる除湿器を再生する手法について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-182894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の除湿器の再生には、ヒータ等の加熱装置を別途稼働させる必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る水素生成システムは、水電解により少なくとも水素ガスを生成する電解装置と、気体の除湿を行う除湿装置と、水素ガスを燃料として発電する燃料電池と、前記電解装置からの水素ガスの少なくとも一部を前記除湿装置に供給する水素ガス除湿ラインと、前記燃料電池の稼働に伴い生じる前記燃料電池からの排熱の少なくとも一部を前記除湿装置に供給する排熱供給ラインと、前記電解装置、前記除湿装置、および前記燃料電池の動作を制御し、前記電解装置からの水素ガスの前記除湿装置による除湿と、前記排熱を少なくとも利用した前記除湿装置の再生とを制御する制御部とを備える。
【0006】
また、本開示の他の一態様に係る水素生成システムの運用方法は、水電解により少なくとも水素ガスを生成する電解装置と、前記水素ガスの少なくとも一部の除湿を行う除湿装置とを備えた水素生成システムの運用方法であって、水素ガスを燃料として発電する燃料電池の稼働に伴い生じる、該燃料電池からの排熱の少なくとも一部を利用して、前記除湿装置の再生を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、水素ガスを発生させつつ、より効率的に除湿器の再生を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る水素生成システムの模式図である。
図2】実施形態1に係る水素生成システムの第1運用モードを説明するための水素生成システムの模式図である。
図3】実施形態1に係る水素生成システムの第2運用モードを説明するための水素生成システムの模式図である。
図4】実施形態1に係る水素生成システムの第3運用モードを説明するための水素生成システムの模式図である。
図5】実施形態1に係る水素生成システムの第4運用モードを説明するための水素生成システムの模式図である。
図6】実施形態1に係る水素生成システムの第5運用モードを説明するための水素生成システムの模式図である。
図7】実施形態1に係る水素生成システムの第6運用モードを説明するための水素生成システムの模式図である。
図8】実施形態2に係る水素生成システムの模式図である。
図9】実施形態2に係る水素生成システムの第7運用モードを説明するための水素生成システムの模式図である。
図10】実施形態2に係る水素生成システムの第8運用モードを説明するための水素生成システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
<水素生成システム>
図1は、本実施形態に係る水素生成システムの模式図である。図1においては、後に後述する、水素生成システムの稼働のために利用される施設、または、水素生成システムからの水素等が供給される施設等についても図示されている。
【0010】
図1に示す水素生成システム2は、電解装置4を備える。電解装置4は、水電解により少なくとも水素ガスを生成する装置であり、例えば、純水が充填された電解槽6と、当該電解槽6内の純水に浸漬した陰極8および陽極10とを含む。電解装置4は、陰極8と陽極10との間に電位差をかけることにより、電解槽6内の純水を電解して、少なくとも陰極8において水素ガスを生成する。電解装置4は、さらに、水電解によって陽極10において酸素ガスを生成してもよい。電解装置4は、例えば、電解装置4の外部から純水の供給を受けてもよい。
【0011】
水素生成システム2は、除湿装置12を備える。除湿装置12は、外部から導入された気体の湿度を低減する、換言すれば、気体の除湿を行う装置であり、例えば、図1に示すように、第1除湿器14と、第2除湿器16とを備える。第1除湿器14および第2除湿器16は、例えば、水分を吸着可能な吸湿剤により、導入された気体の除湿を行う。なお、第1除湿器14および第2除湿器16は、従来公知の気体の除湿を行う除湿器を採用可能である。例えば、第1除湿器14と第2除湿器16とは、同一の構成を備えた除湿器であってもよい。
【0012】
本実施形態において、第1除湿器14および第2除湿器16は、高温かつ乾燥した気体を導入することにより、それぞれが備える吸湿剤を乾燥させることができる。これにより、本実施形態においては、除湿装置12の再生が可能である。除湿装置12の再生の具体的な方法については後に詳述する。
【0013】
本実施形態において、除湿装置12はさらに熱交換器18を備える。熱交換器18は、外部から導入された2種の気体の熱交換を行う。例えば、熱交換器18に第1の気体と、該第1の気体より低温の第2の気体とを導入した場合、熱交換器18は、第1の気体の温度を低下させ、第2の気体の温度を上昇させた上で、第1の気体と第2の気体とのそれぞれを排出する。熱交換器18には、気体の熱交換を行う従来公知の熱交換器を採用できる。
【0014】
水素生成システム2は、燃料電池20を備える。燃料電池20は、水素ガスを燃料として発電を行う装置であり、例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。燃料電池20は、例えば、図1に示す通り、水素極22と空気極24とを備える。燃料電池20は、例えば、水素極22に導入された水素ガスを燃料とし、空気極24に導入された酸素ガスを含む空気を酸化剤とし、燃料と酸化剤との反応によって発電を行う。燃料電池20の稼働に伴い、燃料電池20からは電力の他に上述した反応に伴う排熱が生じる。燃料電池20がSOFCである場合、例えば、燃料電池20からは700℃程度の排熱が得られる。
【0015】
<気体輸送ラインおよび弁>
水素生成システム2は、種々の気体が流動する複数の気体輸送ラインを備える。また、水素生成システム2は、上述した気体輸送ラインのそれぞれを流動する気体の流量を調節する複数の弁を備える。水素生成システム2が備える弁は、例えば、開放の程度により気体の流量を変更可能な電動弁であってもよい。なお、本明細書の各図の各気体輸送ラインに示された矢印は、各気体輸送ラインにおける気体の主な流動方向を示す。
【0016】
水素生成システム2は、電解装置4の陰極8において発生した水素ガスを除湿装置12へ輸送する水素ガス除湿ライン26を備える。水素ガス除湿ライン26は、例えば、陰極8からの水素ガスを第1除湿器14に供給する第1水素ガス除湿ライン28と、陰極8からの水素ガスを第2除湿器16に供給する第2水素ガス除湿ライン30とに分岐する。第1水素ガス除湿ライン28および第2水素ガス除湿ライン30には、それぞれ、弁B1および弁B2が形成されている。
【0017】
水素生成システム2は、除湿装置12の第1除湿器14からの水素ガスを、除湿装置12の外部に輸送する第1水素ガス供給ライン32を備える。第1水素ガス供給ライン32は、第1燃料供給ライン34と第1水素ガス貯留ライン36とに分岐する。第1燃料供給ライン34は、第1除湿器14からの水素ガスを燃料電池20の水素極22に供給する。第1水素ガス貯留ライン36は、第1除湿器14からの水素ガスを、水素生成システム2の外部に位置する水素ガス貯留装置Rに供給する。第1燃料供給ライン34および第1水素ガス貯留ライン36には、それぞれ、弁B3および弁B4が形成されている。
【0018】
ここで、水素ガス貯留装置Rは、例えば、水素吸蔵合金を含み、水素ガスを少なくとも一時的に貯留することができる装置である。本実施形態において、水素生成システム2は、水素ガス貯留装置Rが貯留する水素ガスを燃料電池20の水素極22に供給する貯留水素ガス供給ライン38を備える。貯留水素ガス供給ライン38には、弁B5が形成されている。
【0019】
水素生成システム2は、除湿装置12の第2除湿器16からの水素ガスを、除湿装置12の外部に輸送する第2水素ガス供給ライン40を備える。第2水素ガス供給ライン40は、第2燃料供給ライン42と第2水素ガス貯留ライン44とに分岐する。第2燃料供給ライン42は、第2除湿器16からの水素ガスを燃料電池20の水素極22に供給する。第2水素ガス貯留ライン44は、第2除湿器16からの水素ガスを、前述の水素ガス貯留装置Rに供給する。第2燃料供給ライン42および第2水素ガス貯留ライン44には、それぞれ、弁B6および弁B7が形成されている。
【0020】
水素生成システム2は、燃料電池20の稼働に伴い生じた排熱を含む排気を、除湿装置12の熱交換器18に輸送する第1排熱供給ライン46を備える。また、水素生成システム2は、第1除湿器14および第2除湿器16からの水素ガスをそれぞれ熱交換器18に輸送する第1熱交換ライン48および第2熱交換ライン50を備える。第1排熱供給ライン46、第1熱交換ライン48、および第2熱交換ライン50には、それぞれ、弁B8、弁B9、および弁B10が形成されている。
【0021】
本実施形態において、熱交換器18は、第1排熱供給ライン46を介して供給された燃料電池20の排熱を含む排気と、第1熱交換ライン48または第2熱交換ライン50を介して供給された水素ガスとの間において、熱交換を行う。本実施形態においては、燃料電池20の排熱を含む排気は、電解装置4が生成された水素ガスよりも高温である。このため、熱交換器18は、上記熱交換により、温度の低下した排熱を含む排気と、温度の上昇した第1除湿器14または第2除湿器16からの水素ガスとを排出する。
【0022】
水素生成システム2は、熱交換器18における熱交換の結果、温度が低下した排熱を含む排気を、水素生成システム2の外部に流出させる排気ライン52を備える。また、水素生成システム2は、熱交換器18における熱交換の結果、温度の上昇した第1除湿器14および第2除湿器16からの水素ガスを、それぞれ第2除湿器16および第1除湿器14に輸送する第1再生ライン54および第2再生ライン56を備える。排気ライン52、第1再生ライン54、および第2再生ライン56には、それぞれ、弁B11、弁B12、および弁B13が形成されている。
【0023】
なお、本実施形態において、熱交換器18は、除湿装置12の外部に位置してもよい。この場合、熱交換器18を介して水素ガスまたは燃料電池20の排熱を含む排気を輸送する各気体輸送ラインは、除湿装置12の外部まで延伸していてもよい。
【0024】
水素生成システム2は、電解装置4の陽極10において発生した酸素ガスを燃料電池20に空気極24へ輸送する酸素ガス供給ライン58を備える。酸素ガス供給ライン58には弁B14が形成されている。燃料電池20の空気極24には、電解装置4からの酸素ガスに加えて、図示しない外気の取り込み口を介した空気が酸化剤として供給されてもよい。例えば、空気極24には、外気と酸素ガスとが混合された混合ガスが供給されてもよい。この場合、燃料電池20における、燃料である水素ガスと酸化剤である上記混合ガスとの反応をより促進させることができ、燃料電池20をより高出力にて稼働させることができる。
【0025】
なお、一般に、燃料である水素ガスと酸化剤である酸素ガスを含む空気とを反応させて発電を行う燃料電池においては、当該反応の結果、電力および排熱の他に水蒸気が発生する。ここで、水素生成システム2は、燃料電池20の稼働により生じた水蒸気を回収して液化し、電解装置4の電解槽6に供給してもよい。この場合、水素生成システム2は、燃料電池20からの水蒸気から得られた水分中の不純物を取り除き純度を向上させるための精製装置を備えていてもよい。上記構成により、電解装置4の稼働による電解槽6中の純水の消費を低減することができる。
【0026】
<電源線および制御部>
水素生成システム2は、燃料電池20の稼働により生成された電力の少なくとも一部を電解装置4に送電する第1電源線60を備える。加えて、水素生成システム2は、当該水素生成システム2の外部に位置する発電装置Pの稼働により生成された電力の少なくとも一部を電解装置4に送電する第2電源線62を備える。電解装置4は、第1電源線60を介して送電された燃料電池20からの電力と、第2電源線62を介して送電された発電装置Pからの電力とにより稼働する。本実施形態において、発電装置Pは、例えば、太陽光発電、風力発電、地熱発電、波力発電、潮力発電等を含む、一般に再生可能エネルギーと称されるエネルギーを利用して発電を行う装置である。
【0027】
なお、水素生成システム2は、燃料電池20の稼働により生成された電力の一部を、水素生成システム2の外部に位置する需要施設Cに送電する第3電源線64を備えていてもよい。また、水素生成システム2は、燃料電池20の稼働により生じた排熱の一部を、需要施設Cに輸送する第2排熱供給ライン66を備えていてもよい。第2排熱供給ライン66には弁B15が形成されていてもよい。需要施設Cは、例えば、熱または電力を必要とする一般需要家またはその他の施設を含む。
【0028】
さらに、水素生成システム2は、燃料電池20の稼働により生成された電力の一部を、除湿装置12に送電する第4電源線68を備えていてもよい。また、水素生成システム2は、発電装置Pの稼働により生成された電力の一部を、除湿装置12に送電する第5電源線70を備えていてもよい。燃料電池20は、第4電源線68を介して送電された燃料電池20からの電力と、第5電源線70を介して送電された発電装置Pからの電力とにより稼働してもよい。なお、燃料電池20は、初期の稼働に必要な電力が外部から与えられたのち、自身が生成した電力によって稼働を継続してもよい。
【0029】
水素生成システム2は、各部の動作を制御する制御部72を備える。制御部72は、例えば、図示しない通信手段によって、電解装置4、除湿装置12、および燃料電池20の稼働を制御する。また、制御部72は、各弁の開閉を制御することにより、各気体輸送ラインを介した各気体の流動量を制御する。さらに、制御部72は、各電源線を介した電力の送電量を制御する。
【0030】
<第1運用モード>
本実施形態に係る水素生成システム2の運用方法について、図2から図5を参照してより詳細に説明する。図2から図5のそれぞれは、水素生成システムの各運用モードを説明するための水素生成システムの模式図である。以降、各図における弁のうちハッチング処理されたものは、当該弁が閉じられ、対応する気体輸送ラインにおける気体の流動が制限された状態であることを示す。また、各図における弁のうち白抜きのものは、当該弁が開放され、対応する気体輸送ラインにおける気体の流動が可能である状態であることを示す。
【0031】
図2は、本実施形態における水素生成システム2の第1運用モードを示すための、水素生成システム2の模式図である。第1運用モードにおいては、弁B1、弁B3、弁B4、弁B14、および弁B15は開放されている。また、第1運用モードにおいては、弁B2、および弁B5~13は閉塞されている。
【0032】
第1運用モードにおいて、電解装置4は、第2電源線62を介して送電される発電装置Pからの電力により稼働する。電解装置4は、例えば、発電装置Pから1,000kW程度の電力の供給を受ける。また、第1運用モードにおいて、電解装置4は、第1電源線60を介して送電される燃料電池20からの電力により稼働してもよい。電解装置4は、例えば、燃料電池20から62.5kW程度の電力の供給を受けてもよい。燃料電池20の稼働方法については後述する。
【0033】
第1運用モードにおいて、上述した電力の供給を受けた電解装置4は、電解槽6における水電解により、陰極8において、例えば、200Nm-H/hの水素ガスを生成する。なお、第1運用モードにおいて、電解装置4は、陽極10において酸素ガスを生成し、酸素ガス供給ライン58を介して、当該酸素ガスを燃料電池20の空気極24に輸送してもよい。
【0034】
陰極8において生成された水素ガスは、水素ガス除湿ライン26および第1水素ガス除湿ライン28を介して、除湿装置12の第1除湿器14に輸送される。なお、本実施形態において、第1運用モードは、例えば、第1除湿器14の吸湿剤が乾燥した状態である等、第1除湿器14による気体の除湿が可能である状態において実行される。このため、第1運用モードにおいて、第1除湿器14に輸送された水素ガスは、第1除湿器14により除湿される。なお、除湿装置12の稼働は、第5電源線70を介した発電装置Pからの電力供給により実施されてもよい。
【0035】
ここで、第1運用モードは、第2除湿器16による気体の除湿を行うために、第2除湿器16の再生を行う必要がある状態において実行される。例えば、第1運用モードにおいては、第2除湿器16の吸湿剤が湿潤した状態である。このため、第1運用モードにおいては、陰極8からの水素ガスが第2除湿器16に輸送されないように、第2水素ガス除湿ライン30の弁B2が閉塞されている。
【0036】
一般に、水電解により生成された水素ガスは、生成される過程において水に接触するため、ある程度の湿度を有しており、例えば、露点が摂氏-20度程度となる湿度を有している。このため、水電解により生成された水素ガスは、使用されるまたは貯留されるまでに除湿されてもよい。除湿装置12の第1除湿器14は、例えば、輸送された水素ガスの露点が摂氏-70度程度となる湿度まで、水素ガスの除湿を行う。
【0037】
第1運用モードにおいて、第1除湿器14における除湿を経た水素ガスの一部は、第1水素ガス供給ライン32と第1燃料供給ライン34とを介して、燃料電池20の水素極22に供給される。第1運用モードにおいて、燃料電池20の水素極22には、例えば、25Nm-H/hの水素ガスが供給される。
【0038】
また、第1除湿器14における除湿を経た水素ガスの他の一部は、第1水素ガス供給ライン32と第1水素ガス貯留ライン36とを介して、水素ガス貯留装置Rに貯留される。第1運用モードにおいて、水素ガス貯留装置Rには、例えば、175Nm-H/hの水素ガスが供給される。燃料電池20の水素極22に供給される水素ガスと、水素ガス貯留装置Rに貯留される水素ガスとの比の調整は、例えば、弁B3と弁B4との開放度合の差を調節することによって実施してもよい。
【0039】
第1運用モードにおいて、燃料電池20は、水素極22に供給された水素ガスを燃料として稼働する。これにより、燃料電池20は、上述の通り、電解装置4に62.5kW程度の電力を、第1電源線60を介して供給してもよい。また、燃料電池20は、電解装置4への電力供給後の余剰電力および稼働により生じた排熱を、それぞれ、第3電源線64および第2排熱供給ライン66を介して需要施設Cに供給してもよい。さらに、燃料電池20は、第4電源線68を介して、除湿装置12への電力供給を行ってもよい。
【0040】
第1運用モードにおいて、燃料電池20は、空気極24に供給された酸素ガスを酸化剤として利用してもよい。これにより、燃料電池20における燃料である水素ガスと酸化剤である酸素ガスとの反応がより促進し、燃料電池20の出力がより向上する。したがって、上記構成により、水素生成システム2は、燃料電池20において生成される排熱をより高温とでき、生成される電力をより増加させることができる。ゆえに、水素生成システム2は、より高温の排熱とより多くの電力とを、需要施設Cへ供給することができる。
【0041】
以上により、第1運用モードにて水素生成システム2を運用することにより、電解装置4から水素ガスを発生させ、当該水素ガスの一部を利用した燃料電池20の稼働、および、当該水素ガスの他の一部の貯留が可能である。特に、第1運用モードにおいては、電解装置4からの水素ガスを除湿装置12において除湿するため、燃料電池20に供給する、または、水素ガス貯留装置Rに貯留する水素ガスを乾燥させることができる。したがって、第1運用モードにおいては、燃料電池20がより効率よく稼働し、また、水素ガス貯留装置Rに貯留する水素ガスの品質が向上する。
【0042】
<第2運用モード>
図3は、本実施形態における水素生成システム2の第2運用モードを示すための、水素生成システム2の模式図である。第2運用モードにおいては、弁B1、弁B5、弁B6、弁B8、弁B9、弁B11、弁B12、および弁B14は開放されている。また、第2運用モードにおいては、弁B2~4、弁B7、弁B10、弁B13、および弁B15は閉塞されている。
【0043】
第2運用モードは、例えば、第1運用モードに引き続いて実行される。水素生成システム2の運用モードの、第1運用モードから第2運用モードへの移行は、例えば、制御部72が、発電装置Pにおける発電量が第1の発電量以下であることを検知した場合に実行される。例えば、第1の発電量は、100kW、または電解装置4の定格消費電力の10%である。例えば、第1の発電量は、電解装置4が、後述する除湿装置12の再生に必要な水素ガスを生成できる電力に設定してもよい。また、例えば、昼間から夜間等、発電装置Pにおける発電量はある時点から漸減する場合がある。このような場合、第1の発電量は、運用モードの移行から燃料電池20の出力の上昇までに多少の遅れが生じても、電解装置4の運用が継続できる値に設定してもよい。
【0044】
一般に、再生可能エネルギーを利用した発電は、発電量が安定しない場合が多い。例えば発電装置Pが太陽光発電により発電を行う場合、夜間または天候不良時における発電は困難となる。このため、制御部72は、第1運用モードから第2運用モードへの移行を即座に実行できるように、発電装置Pにおける発電量を監視してもよい。
【0045】
例えば、本実施形態において、第2運用モードにおける、発電装置Pから第2電源線62を介した電力供給は行われない。このため、第2運用モードにおいて、電解装置4は、第1電源線60を介して送電される燃料電池20からの電力により稼働する。電解装置4は、例えば、燃料電池20から125kW程度の電力の供給を受ける。燃料電池20の稼働方法については後述する。
【0046】
第2運用モードにおいて、上述した電力の供給を受けた電解装置4は、電解槽6における水電解により、陰極8において水素ガスを生成する。ただし、第2運用モードにおいて電解装置4に供給される電力は、第1運用モードにおいて電解装置4に供給される電力よりも少ない。このため、第2運用モードにおける電解装置4の水素ガスの生成量は、第1運用モードにおける電解装置4の水素ガスの生成量よりも少ない。第2運用モードにおいて、電解装置4は、陰極8において、例えば、20Nm-H/hの水素ガスを生成する。なお、第2運用モードにおいても、陽極10において酸素ガスを生成してもよい。
【0047】
第2運用モードが第1運用モードに引き続いて実行される場合、電解装置4の稼働を停止せず、連続して稼働させてもよい。電解装置4の稼働を停止しない場合、電解装置4に停止に伴い陰極8と陽極10との間に生じる残電圧により過酸化水素が生成されることを防止できる。したがって、電解装置4の稼働を停止しない場合、過酸化水素による、陰極8と陽極10とを含む電解槽6の酸化分解を防止し、電解装置4の劣化を低減できる。
【0048】
陰極8において生成された水素ガスは、水素ガス除湿ライン26および第1水素ガス除湿ライン28を介して、除湿装置12の第1除湿器14に輸送される。これにより、第1除湿器14に輸送された水素ガスは、例えば、露点が摂氏-70度程度となる湿度まで除湿される。
【0049】
第2運用モードにおいて、第1除湿器14における除湿を経た水素ガスは、第1熱交換ライン48を介して、熱交換器18に輸送される。ここで、第2運用モードにおいて、熱交換器18には、後述する方法によって稼働する燃料電池20からの排熱を含む排気が、第1排熱供給ライン46を介して輸送される。このため、第2運用モードにおいては、熱交換器18において、第1除湿器14における除湿を経た水素ガスと、燃料電池20からの排熱を含む排気との熱交換が実行される。
【0050】
第2運用モードにおいて、熱交換器18における熱交換により温度が上昇した水素ガスは、熱交換器18から第1再生ライン54を介して第2除湿器16に輸送される。これにより、第2除湿器16には、高温かつ乾燥した水素ガスが供給される。なお、熱交換器18における熱交換により温度が低下した、燃料電池20の排熱を含む排気は、熱交換器18から排気ライン52を介して水素生成システム2の外部に排出されてもよい。
【0051】
第2運用モードにおいては、第2除湿器16に高温かつ乾燥した水素ガスを供給することにより、第2除湿器16の再生を実行する。第2除湿器16の再生は、例えば、高温かつ乾燥した水素ガスにより第2除湿器16の吸湿剤を加熱して乾燥させることにより実行してもよい。例えば、熱交換器18において200℃程度に加熱された、第1再生ラインからの水素ガスによって加熱されることにより、第2除湿器16の吸湿剤は再生される。
【0052】
換言すれば、第2運用モードにおいて、水素生成システム2は、除湿装置12の再生を、少なくとも、電解装置4にて生成された水素ガスの少なくとも一部を利用して実行する。このため、水素生成システム2は、除湿する対象である水素ガスを利用して、除湿装置12の再生が可能である。このため、水素生成システム2は、除湿装置12に外気を導入するための機構を不要とでき、構成および制御がより簡素となる。
【0053】
また、第2運用モードにおいて、水素生成システム2は、除湿装置12の再生を、熱交換器18により加熱した水素ガスを利用して実行する。このため、水素生成システム2は、除湿装置12の吸着剤等の加熱と、当該加熱により発生した水蒸気の回収とを、加熱した水素ガスを利用して同時に実施することができる。
【0054】
このため、水素生成システム2は、除湿装置12の吸着剤等を加熱するためのヒータ等の加熱装置と、発生した水蒸気を回収するためのファン等の送風装置とが不要である。したがって、上記構成により、水素生成システム2はより簡素に構成できる。また、例えば、燃料電池20からの排熱を含む排気を利用して除湿装置12の吸着剤等を加熱する構成と比較して、発生した水蒸気をより簡素な構成により回収できる。
【0055】
本実施形態において、第2除湿器16の再生により、第2除湿器16から除去された水分は、熱交換器18から供給された水素ガスに溶解した状態にて、第2除湿器16の外部に排出される。換言すれば、第2除湿器16に供給され、第2除湿器16の再生に利用された水素ガスは、湿潤した水素ガスとなる。
【0056】
第2除湿器16の再生により生じる、湿潤した水素ガスは、第2水素ガス供給ライン40および第2燃料供給ライン42を介して、燃料電池20の水素極22に供給される。このため、第2運用モードにおいて、第2水素ガス供給ライン40および第2燃料供給ライン42は、湿潤した水素ガスを燃料電池20に供給する湿潤水素ガス供給ラインとして機能する。
【0057】
一般に、SOFCを含む、水素ガスを燃料として稼働する燃料電池における燃料と酸化剤との反応は、高温下にて実行される。このため、水素極22に湿潤した水素ガスが供給された場合においても、燃料電池20は発電および排熱の生成を行うことが可能である。したがって、第2運用モードにおいて、燃料電池20は、水素極22に供給された湿潤した水素ガスを燃料として稼働する。
【0058】
なお、第2運用モードにおいても、燃料電池20は、陽極10において生成され、酸素ガス供給ライン58を介して空気極24に供給された酸素ガスを酸化剤として利用してもよい。上記構成により、水素生成システム2は、燃料電池20において生成される排熱をより高温とでき、熱の生成効率を含む燃料電池20の総合効率をより高めることができる。換言すれば、水素生成システム2は、燃料電池20において、除湿装置12の再生に利用される排熱をより効率的に生成でき、また、電解装置4の稼働に必要な電力をより安定して生成できる。
【0059】
ここで、第2運用モードにおいて、燃料電池20は、少なくとも、電解装置4に送電する電力と、熱交換器18に輸送する排気が含む排熱とを生成する。ここで、第2運用モードにおいて、水素極22に供給された湿潤した水素ガスを燃料とした燃料電池20の稼働によって生成される電力または排熱が、電解装置4の稼働または熱交換器18における熱交換を実行するためには不足している場合がある。特に、第2運用モードにおいて、電解装置4の稼働に発電装置Pからの電力を使用しないため、電解装置4の稼働に必要な電力を燃料電池20から得られない場合がある。
【0060】
このため、第2運用モードにおいては、水素ガス貯留装置Rから貯留水素ガス供給ライン38を介して、水素ガス貯留装置Rに貯留された水素ガスを、第2除湿器16から供給された湿潤した水素ガスと併せて、水素極22に供給してもよい。例えば、第2運用モードにおいては、水素ガス貯留装置Rから、30Nm-H/hの水素ガスを水素極22に供給してもよい。
【0061】
これにより、第2運用モードにおいては、燃料電池20の稼働出力を向上させて、電解装置4の稼働または熱交換器18における熱交換を実行するために必要な電力および排熱を生成してもよい。第2運用モードにおいて水素ガス貯留装置Rから水素極22に供給される水素ガスは、第1運用モードにおいて水素ガス貯留装置Rに貯留された水素ガスであってもよい。
【0062】
第2運用モードにおいては、水素ガス貯留装置Rに貯留された水素ガスの一部を、燃料電池20の燃料として使用する。これにより、水素生成システム2は、発電装置Pからの電力が得られず、電解装置4の出力が低下した場合においても、安定して燃料電池20を稼働させることができる。さらに、第2運用モードにおいては、除湿装置12の再生により生成された湿潤した水素ガスを、燃料電池20の燃料として使用する。これにより、水素生成システム2は、水素ガス貯留装置Rから燃料電池20に供給される水素ガスを削減しつつ、燃料電池20の稼働に必要な水素ガスを確保することができる。
【0063】
以上により、第2運用モードにおいては、発電装置Pからの電力供給を受けることなく、電解装置4から水素ガスを発生させ、また、第2除湿器16の再生を実行できる。特に、第2運用モードにおいては、第2除湿器16の再生を燃料電池20からの排熱を利用して実行する。
【0064】
なお、第2運用モードにおいては、第1運用モードと比較して、除湿装置12の電力供給源を変更してもよい。例えば、水素生成システム2の運用モードを第1運用モードから第2運用モードに切り替える場合に、換言すれば、発電装置Pにおける発電量が第1の発電量以下となった場合に、除湿装置12の電力供給源を、発電装置Pから燃料電池20に切り換えてもよい。これにより、水素生成システム2は、第1運用モードから第2運用モードにかけて、継続して除湿装置12を稼働させてもよい。
【0065】
<第3運用モード>
図4は、本実施形態における水素生成システム2の第3運用モードを示すための、水素生成システム2の模式図である。第3運用モードにおいては、弁B2、弁B6、弁B7、弁B14、および弁B15は開放されている。また、第3運用モードにおいては、弁B1、弁B3~5、および弁B8~13は閉塞されている。
【0066】
ここで、本実施形態において、第3運用モードは、例えば、第1運用モードおよび第2運用モードの順に水素生成システム2が運用された後に、引き続いて実行される。第1運用モードおよび第2運用モードにおいては、第1除湿器14を使用した水素ガスの除湿が実行される。このため、第1運用モードおよび第2運用モードを経た後に実行される第3運用モードは、第1除湿器14の再生を行う必要がある状態において実行される。一方、第2運用モードにおいては第2除湿器16の再生が実行されるため、第2運用モードを経た後に実行される第3運用モードは、第2除湿器16による水素ガスの除湿が可能である状態において実行される。
【0067】
第2運用モードから第3運用モードへの移行は、例えば、制御部72が、発電装置Pにおける発電可能な電力量が第2の発電量以上となったことを検知し、かつ、第2除湿器16の再生の完了を検知した場合に実行される。例えば、第2の発電量は、50kW、または電解装置4の定格消費電力の5%である。例えば、第2の発電量は、電解装置4の運用に必要な最低消費電力、または、燃料電池20の最低発電量を考慮して設定してもよい。このため、制御部72は、第2運用モードから第3運用モードへの移行を即座に実行できるように、発電装置Pにおける発電可能な電力量および第2除湿器16の再生時間等を監視してもよい。
【0068】
第3運用モードにおいて、電解装置4は、第1運用モードにおける電解装置4の稼働と同一の条件において稼働する。換言すれば、電解装置4は、発電装置Pおよび燃料電池20からの電力を使用して稼働する。電解装置4の稼働により陰極8において生成された水素ガスは、水素ガス除湿ライン26および第2水素ガス除湿ライン30を順に介して、第2除湿器16に輸送される。
【0069】
本実施形態において、第3運用モードにおける第2除湿器16は、第2運用モードにおける再生を経ているため、陰極8から輸送された水素ガスの除湿を実行できる。このため、第2除湿器16は、例えば、輸送された水素ガスの露点が摂氏-70度程度となる湿度まで、水素ガスの除湿を行う。
【0070】
第3運用モードにおいて、第2除湿器16における除湿を経た水素ガスの一部は、第2水素ガス供給ライン40と第2燃料供給ライン42とを介して、燃料電池20の水素極22に供給される。第3運用モードにおいて、燃料電池20の水素極22には、例えば、25Nm-H/hの水素ガスが供給される。
【0071】
また、第2除湿器16における除湿を経た水素ガスの他の一部は、第2水素ガス供給ライン40と第2水素ガス貯留ライン44とを介して、水素ガス貯留装置Rに貯留される。第3運用モードにおいて、水素ガス貯留装置Rには、例えば、175Nm-H/hの水素ガスが供給される。燃料電池20の水素極22に供給される水素ガスと、水素ガス貯留装置Rに貯留される水素ガスとの比の調整は、例えば、弁B6と弁B7との開放度合の差を調節することによって実施してもよい。
【0072】
第3運用モードにおける燃料電池20の稼働は、第1運用モードにおける燃料電池20の稼働と比較して、第2除湿器16から水素極22に供給された水素ガスを燃料として稼働する点を除き、同一の条件にて稼働する。したがって、燃料電池20は、電解装置4への電力供給後の余剰電力および稼働により生じた排熱を、それぞれ、第3電源線64および第2排熱供給ライン66を介して需要施設Cに供給してもよい。さらに、燃料電池20は、第4電源線68を介して、除湿装置12への電力供給を行ってもよい。
【0073】
以上により、第3運用モードにおいては、発電装置Pおよび燃料電池20からの電力供給により、電解装置4から水素ガスを発生させ、当該水素ガスの一部を利用した燃料電池20の稼働、および、当該水素ガスの他の一部の貯留が可能である。特に、第3運用モードにおいては、第1運用モードと同一の理由から、燃料電池20がより効率よく稼働し、また、水素ガス貯留装置Rに貯留する水素ガスの品質が向上する。
【0074】
<第1遷移運用モード>
なお、第2運用モードにおいて、発電装置Pが発電可能な発電量が、第2の発電量未満である一方、第2除湿器16の再生が完了する場合が考えられる。この場合には、水素生成システム2は、第3運用モードに移行する前に、第1遷移運用モードにおいて運用されてもよい。第1遷移運用モードにおける弁の開閉状況は、例えば、図4に示す、第3運用モードにおける弁の開閉状況と比較して、弁B7が閉塞されている点のみが異なる。
【0075】
第1遷移運用モードにおいては、第3運用モードと比較して、電解装置4に発電装置Pからの電力が供給されず、燃料電池20からの電力のみが供給される。このため、第1遷移運用モードにおいては、第3運用モードと比較して、電解装置4の稼働出力を低下させ、電解装置4が生成する水素ガスの量を低下させる。例えば、第1遷移運用モードにおいて、電解装置4は、燃料電池20から125kW程度の電力の供給を受け、20Nm-H/hの水素ガスを生成する。
【0076】
第1遷移運用モードにおいて、電解装置4が生成する水素ガスは、第3運用モードと同一の方法により、第2除湿器16において除湿される。第1遷移運用モードにおいて、第2除湿器16における除湿を経た水素ガスは燃料電池20の水素極22に供給される。
【0077】
なお、第1遷移運用モードにおいて、燃料電池20の稼働出力が十分に確保できる水素ガスを電解装置4が生成している場合には、弁B7を開放し、第2除湿器16における除湿を経た水素ガスの一部を水素ガス貯留装置Rに貯留してもよい。また、第1遷移運用モードにおいては、弁B5を開放して、水素ガス貯留装置Rに貯留された水素ガスの一部を水素極22に供給してもよい。これにより、電解装置4が発電装置Pからの電力供給を受けられない場合においても、より安定して燃料電池20を稼働させることができる。
【0078】
これにより、第1遷移運用モードにおいて、燃料電池20は電解装置4に電力の供給を行う。したがって、第1遷移運用モードにおける水素生成システム2の運用により、水素生成システム2は、発電装置Pからの電力が得られない場合においても、運用を継続することが可能である。第1遷移運用モードにおいて、燃料電池20からの排熱は、需要施設Cへ供給されてもよい。また、制御部72は、第1遷移運用モードにおける水素生成システム2の運用中に、発電装置Pにおける発電可能な電力量が第2の発電量以上となったことを検知した場合に、水素生成システム2の運用モードを第3運用モードに変更してもよい。
【0079】
<第4運用モード>
図5は、本実施形態における水素生成システム2の第4運用モードを示すための、水素生成システム2の模式図である。第4運用モードにおいては、弁B2、弁B3、弁B5、弁B6、弁B8、弁B10、弁B11、弁B13、および弁B14は開放されている。また、第4運用モードにおいては、弁B1、弁B4、弁B7、弁B9、弁B12、および弁B15は閉塞されている。
【0080】
第4運用モードは、例えば、第3運用モードに引き続いて実行される。第3運用モードから第4運用モードへの移行は、例えば、制御部72が、発電装置Pにおける発電量が第1の発電量以下であることを検知した場合に実行される。換言すれば、第3運用モードから第4運用モードへの移行の条件は、第1運用モードから第2運用モードへの移行の条件と同一であってもよい。
【0081】
第4運用モードにおいて、電解装置4は、第2運用モードにおける電解装置4の稼働と同一の条件において稼働する。換言すれば、電解装置4は、発電装置Pからの電力の供給を受けず、燃料電池20からの電力を使用して稼働する。電解装置4の稼働により陰極8において生成された水素ガスは、水素ガス除湿ライン26および第2水素ガス除湿ライン30を順に介して、第2除湿器16に輸送される。
【0082】
第4運用モードにおいて、第2除湿器16における除湿を経た水素ガスは、第2熱交換ライン50を介して、熱交換器18に輸送される。ここで、第4運用モードにおいて、熱交換器18には、後述する方法によって稼働する燃料電池20からの排熱を含む排気が、第1排熱供給ライン46を介して輸送される。このため、第4運用モードにおいては、熱交換器18において、第2除湿器16における除湿を経た水素ガスと、燃料電池20からの排熱を含む排気との熱交換が実行される。
【0083】
第4運用モードにおいては、熱交換器18における熱交換により温度が上昇した水素ガスは、熱交換器18から第2再生ライン56を介して第1除湿器14に輸送される。これにより、第1除湿器14には、高温かつ乾燥した水素ガスが供給される。これにより、第4運用モードにおいては、第2運用モードにおける第2除湿器16の再生と同一の方法により、第1除湿器14の再生を実行される。このため、第4運用モードにおいても、第1除湿器14に供給され、第1除湿器14の再生に利用された水素ガスは、湿潤した水素ガスとなる。
【0084】
第1除湿器14の再生により生じる、湿潤した水素ガスは、第1水素ガス供給ライン32および第1燃料供給ライン34を介して、燃料電池20の水素極22に供給される。このため、第4運用モードにおいて、第1水素ガス供給ライン32および第1燃料供給ライン34は、湿潤した水素ガスを燃料電池20に供給する湿潤水素ガス供給ラインとして機能する。
【0085】
第4運用モードにおける燃料電池20の稼働は、第2運用モードにおける燃料電池20の稼働と比較して、水素極22に供給される湿潤した水素ガスが第1除湿器14からの水素ガスである点を除き、同一の条件にて稼働する。換言すれば、第4運用モードにおいては、水素ガス貯留装置Rから貯留水素ガス供給ライン38を介して、水素ガス貯留装置Rに貯留された水素ガスを、第1除湿器14から供給された湿潤した水素ガスと併せて、水素極22に供給してもよい。
【0086】
これにより、第4運用モードにおいては、燃料電池20の稼働出力を向上させて、電解装置4の稼働または熱交換器18における熱交換を実行するために必要な電力および排熱を生成してもよい。第4運用モードにおいて水素ガス貯留装置Rから水素極22に供給される水素ガスは、第3運用モードにおいて水素ガス貯留装置Rに貯留された水素ガスであってもよい。
【0087】
以上により、第4運用モードにおいては、発電装置Pからの電力供給を受けることなく、電解装置4から水素ガスを発生させ、また、第1除湿器14の再生を実行できる。特に、第4運用モードにおいては、第1除湿器14の再生を燃料電池20からの排熱を利用して実行する。
【0088】
本実施形態において、第4運用モードに引き続き、第1運用モードにて水素生成システム2が運用されてもよい。第3運用モードおよび第4運用モードにおいては、第2除湿器16を使用した水素ガスの除湿が実行される。このため、第3運用モードおよび第4運用モードを経た後に実行される第1運用モードは、第2除湿器16の再生を行う必要がある状態において実行される。一方、第4運用モードにおいては第1除湿器14の再生が実行されるため、第4運用モードを経た後に実行される第1運用モードは、第1除湿器14による水素ガスの除湿が可能である状態において実行される。
【0089】
第4運用モードから第1運用モードへの移行は、例えば、制御部72が、発電装置Pにおける発電可能な電力量が第2の発電量以上となったことを検知し、かつ、第1除湿器14の再生の完了を検知した場合に実行される。このため、制御部72は、第4運用モードから第1運用モードへの移行を即座に実行できるように、発電装置Pにおける発電可能な電力量および第1除湿器14の再生時間等を監視してもよい。
【0090】
<第2遷移運用モード>
なお、第4運用モードにおいて、発電装置Pが生成できる電力が第2の発電量未満である一方、第1除湿器14の再生が完了した場合には、水素生成システム2は、第1運用モードに移行する前に、第2遷移運用モードにおいて運用されてもよい。第2遷移運用モードにおける弁の開閉状況は、例えば、図2に示す、第1運用モードにおける弁の開閉状況と比較して、弁B4が閉塞されている点のみが異なる。
【0091】
第2遷移運用モードにおいては、例えば、第1遷移運用モードと同一の条件にて、電解装置4が稼働する。電解装置4が生成する水素ガスは、第1運用モードと同一の方法により、第1除湿器14において除湿され、燃料電池20の水素極22に供給される。第2遷移運用モードにおける、燃料電池20の稼働条件は、第1遷移運用モードにおける、燃料電池20の稼働条件と同一であってもよい。
【0092】
第2遷移運用モードにおける水素生成システム2の運用により、水素生成システム2は、発電装置Pからの電力が得られない場合においても、運用を継続することが可能である。制御部72は、第2遷移運用モードにおける水素生成システム2の運用中に、発電装置Pにおける発電可能な電力量が第2の発電量以上となったことを検知した場合に、水素生成システム2の運用モードを第1運用モードに変更してもよい。
【0093】
なお、第2遷移運用モードにおいて、燃料電池20の稼働出力が十分に確保できる水素ガスを電解装置4が生成している場合には、弁B4を開放し、第1除湿器14における除湿を経た水素ガスの一部を水素ガス貯留装置Rに貯留してもよい。また、第2遷移運用モードにおいては、弁B5を開放して、水素ガス貯留装置Rに貯留された水素ガスの一部を水素極22に供給してもよい。これにより、電解装置4が発電装置Pからの電力供給を受けられない場合においても、より安定して燃料電池20を稼働させることができる。
【0094】
<水素生成システムが奏する効果>
本実施形態に係る水素生成システム2は、例えば、上述した第1運用モードから第4運用モードまでの何れか運用モードに基づいて運用される。水素生成システム2の運用モードの切り替えは、例えば、制御部72による、電解装置4、除湿装置12、および燃料電池20の動作の制御と、各弁の開閉の制御とにより実行される。
【0095】
これにより、本実施形態に係る水素生成システム2は、運用モードを上述した第1運用モードから第4運用モードまでを切り替えつつ繰り返し運用することにより、継続して運用が可能である。特に、本実施形態に係る水素生成システム2は、水素ガスの生成、除湿、および貯留と、生成した水素ガスを利用した発電と、生成した水素ガスの除湿に利用した除湿装置の再生とを、継続して実行できる。
【0096】
特に、制御部72は、電解装置4が生成した水素ガスを利用した発電により燃料電池20から生じた排熱を利用した、除湿装置12の再生の制御を行う。したがって、水素生成システム2は、除湿装置12の再生に、別途ヒータ等を用いた吸湿剤の加熱等が不要である。このため、水素生成システム2は、より効率よく除湿装置12の再生が可能である。
【0097】
また、本実施形態に係る水素生成システム2は、除湿装置12の再生に利用する熱を生成するために、燃料電池20を稼働させる。このため、当該燃料電池20の稼働により副次的に生成された電力を、電解装置4の稼働に使用することができる。したがって、本実施形態に係る水素生成システム2は、外部からの電力供給がない、あるいは少ない場合においても、継続した運用が可能であり、かつ、より効率よく除湿装置12の再生が可能である。
【0098】
また、本実施形態に係る水素生成システム2は、除湿装置12の再生を行わない場合、電解装置4が生成した水素ガスの貯留、および、燃料電池20が生成した電力または排熱の需要施設Cへの供給が可能である。特に、制御部72は、電解装置4からの水素ガスの除湿装置12による除湿を制御する。このため、本実施形態に係る水素生成システム2は、電解装置4からの水素ガスを除湿し、乾燥した水素ガスを生成できる。したがって、本実施形態に係る水素生成システム2は、より効率よく除湿装置12の再生を行いつつ、電力または排熱の需要施設Cへの供給を、継続して実行できる。
【0099】
なお、水素生成システム2の各運用モードにおいて、電解装置4、除湿装置12、および燃料電池20の稼働に必要な電力は、発電装置Pまたは燃料電池20から得られる電力を使用する。また、燃料電池20を使用した発電は、発電装置Pからの電力により稼働する電解装置4が生成した水素ガスを燃料として実行される。
【0100】
したがって、発電装置Pが再生可能エネルギーを利用した発電を行う場合、水素生成システム2は、環境への負荷を低減しつつ、各装置の稼働、除湿装置12の再生、および電力または排熱の需要施設Cへの供給を、継続して実行できる。ゆえに、水素生成システム2は、二酸化炭素の排出量の低減を含む、地球環境の改善に貢献し、持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」および目標13「気候変動に具体的な対策を」の達成に貢献できる。
【0101】
水素生成システム2は、除湿装置12が第1除湿器14と第2除湿器16とを含む、少なくとも二つの除湿器を含む。これにより、水素生成システム2は、ある除湿器の再生の間に、他の除湿器を用いた水素ガスの除湿が可能である。より具体的に、水素生成システム2は、第2運用モードにおいて第2除湿器16を再生しつつ第1除湿器14による水素ガスの除湿を実行でき、第4運用モードにおいて第1除湿器14を再生しつつ第2除湿器16による水素ガスの除湿を実行できる。換言すれば、水素生成システム2は、運用モードを上述した第1運用モードから第4運用モードまでを切り替えつつ運用することにより、第1除湿器14と第2除湿器16とを連続して使用することができる。
【0102】
ここまで、第1運用モードを、第2除湿器16の再生が必要な状態において実施し、また、第3運用モードを、第1除湿器14の再生が必要な状態において実施する例について説明した。しかしながら、これに限られず、本実施形態においては、第1運用モードにおいて、第2除湿器16の再生が完了した状態であってもよく、また、第3運用モードにおいて、第1除湿器14の再生が完了した状態であってもよい。この場合、本実施形態に係る水素生成システム2は、運用モードを、第1運用モード、第4運用モード、第3運用モード、および第2運用モードの順に切り替えつつ繰り返し運用されてもよい。
【0103】
<第5運用モード>
次に、上述した水素生成システム2の運用モードの変形例について説明する。図6は、本実施形態における水素生成システム2の第5運用モードを示すための、水素生成システム2の模式図である。第5運用モードにおいては、弁B1、弁B3、弁B4、弁B6、弁B8、弁B9、弁B11、弁B12、および弁B14は開放されている。また、第5運用モードにおいては、弁B2、弁B5、弁B7、弁B10、弁B13、および弁B15は閉塞されている。
【0104】
第5運用モードにおいて、電解装置4は、例えば、第1運用モードにおける稼働条件と同一の条件にて稼働する。このため、第5運用モードにおいて、電解装置4は陰極8において、例えば、200Nm-H/hの水素ガスを生成し得る能力を有する。なお、第5運用モードにおいても、第1運用モードと同じく、電解装置4は、陽極10において酸素ガスを生成し、酸素ガス供給ライン58を介して、当該酸素ガスを燃料電池20の空気極24に輸送してもよい。
【0105】
陰極8において生成された水素ガスは、水素ガス除湿ライン26および第1水素ガス除湿ライン28を介して、除湿装置12の第1除湿器14に輸送される。なお、本実施形態において、第5運用モードは、例えば、第1除湿器14の吸湿剤が乾燥した状態である等、第1除湿器14による気体の除湿が可能である状態において実行される。このため、第5運用モードにおいて、第1除湿器14に輸送された水素ガスは、第1除湿器14により除湿される。除湿装置12の第1除湿器14は、例えば、輸送された水素ガスの露点が摂氏-70度程度となる湿度まで、水素ガスの除湿を行う。
【0106】
ここで、第5運用モードは、第1運用モードと同じく、第2除湿器16による気体の除湿を行うために、第2除湿器16の再生を行う必要がある状態において実行される。ここで、第5運用モードにおいては、乾燥した水素ガスの燃料電池20への供給および水素ガス貯留装置Rへの貯留に加え、第2除湿器16の再生を実施する。
【0107】
第5運用モードにおいて、第1除湿器14における除湿を経た水素ガスの一部は、第1水素ガス供給ライン32に供給される。また、第5運用モードにおいて、第1除湿器14における除湿を経た水素ガスの他の一部は、第1熱交換ライン48を介して熱交換器18に供給される。例えば、第5運用モードにおいて、第1水素ガス供給ライン32には100Nm-H/hの水素ガスが、第1熱交換ライン48には20Nm-H/hの水素ガスが、第1除湿器14からそれぞれ供給される。
【0108】
第5運用モードにおいて、第1水素ガス供給ライン32に供給された水素ガスの一部は、さらに第1燃料供給ライン34を介して、燃料電池20の水素極22に供給される。また、第5運用モードにおいて、第1水素ガス供給ライン32に供給された水素ガスの他の一部は、さらに第1水素ガス貯留ライン36を介して、水素ガス貯留装置Rに貯留される。
【0109】
燃料電池20の水素極22に供給される水素ガスと、水素ガス貯留装置Rに貯留される水素ガスと、熱交換器18に供給される水素ガスとの比の調整は、例えば、弁B3と弁B4と弁B9との開放度合の差を調節することによって実施してもよい。
【0110】
第5運用モードにおいて、熱交換器18には、さらに、後述する方法によって稼働する燃料電池20からの排熱を含む排気が、第1排熱供給ライン46を介して輸送される。このため、第5運用モードにおいては、熱交換器18において、第1除湿器14における除湿を経た水素ガスの一部と、燃料電池20からの排熱を含む排気との熱交換が実行される。
【0111】
第5運用モードにおいて、熱交換器18における熱交換により温度が上昇した水素ガスは、熱交換器18から第1再生ライン54を介して第2除湿器16に輸送される。これにより、第5運用モードにおいても、第2運用モードにおける第2除湿器16の再生と同一の方法により、第2除湿器16は再生される。これに伴い、第2除湿器16に供給され、第2除湿器16の再生に利用された水素ガスは、湿潤した水素ガスとなる。第2除湿器16の再生により生じる、湿潤した水素ガスは、第2水素ガス供給ライン40および第2燃料供給ライン42を介して、燃料電池20の水素極22に供給される。
【0112】
以上より、第5運用モードにおいては、燃料電池20の水素極22に、第1除湿器14における除湿により乾燥した水素ガスの一部と第2除湿器16の再生により湿潤した水素ガスとが供給される。また、第5運用モードにおいては、水素ガス貯留装置Rに、第1除湿器14における除湿により乾燥した水素ガスの他の一部が貯留される。第5運用モードにおいて、燃料電池20の水素極22には、例えば、30Nm-H/hの水素ガスが供給される。第5運用モードにおいて、水素ガス貯留装置Rには、例えば、90Nm-H/hの水素ガスが供給される。
【0113】
第5運用モードにおいて、燃料電池20は、水素極22に供給された水素ガスを燃料として稼働する。より具体的に、燃料電池20の水素極22には、第1燃料供給ライン34からの乾燥した水素ガスと、第2燃料供給ライン42からの湿潤した水素ガスとが供給される。これにより、燃料電池20は、上述の通り、電解装置4に62.5kW程度の電力を、第1電源線60を介して供給してもよい。また、燃料電池20は、電解装置4への電力供給後の余剰電力を、第3電源線64を介して需要施設Cに供給してもよい。さらに、燃料電池20は、熱交換器18における熱交換に利用しない余剰の排熱を、第2排熱供給ライン66を介して需要施設Cに供給してもよい。第5運用モードにおいても、燃料電池20は、空気極24に供給された酸素ガスを酸化剤として利用してもよい。
【0114】
以上により、第5運用モードにて水素生成システム2を運用することにより、電解装置4において水素ガスの一部による燃料電池20の稼働および第2除湿器16の再生を行いつつ、水素ガスの他の一部の貯留が可能である。
【0115】
第5運用モードは、例えば、上述した、第1運用モードから第4運用モードまでを繰り返す水素生成システム2の運用方法において、第1運用モードの代わりに採用してもよい。ここで、第5運用モードにおける水素生成システム2の運用中に第2除湿器16の再生が完了した場合、制御部72は、水素生成システム2の運用モードを、第5運用モードから第1運用モードに切り換えてもよい。
【0116】
この場合、第1運用モードは、第2除湿器16の再生が完了した状態において実行される。このため、第1運用モードにおいて、発電装置Pからの電力が第1の発電量以下となった場合、制御部72は、水素生成システム2の運用モードを、第1運用モードから第1遷移運用モードに切り替えてもよい。
【0117】
また、第5運用モードは、例えば、上述した、第1運用モードから第4運用モードまでを繰り返す水素生成システム2の運用方法において、第2運用モードに次いで実施してもよい。例えば、第2運用モードにおいて、発電装置Pの発電可能量が第2の発電量以上となったにも関わらず、第2除湿器16の再生が未完了である場合、制御部72は、水素生成システム2の運用モードを、第2運用モードから第5運用モードに切り替えてもよい。
【0118】
これにより、水素生成システム2は、発電装置Pからの電力供給を受け、電解装置4における水素ガスの生成、燃料電池20の稼働、および水素ガス貯留装置Rへの水素ガスの貯留を行いつつ、第2除湿器16の再生を継続することができる。ここで、第5運用モードにおける水素生成システム2の運用中に第2除湿器16の再生が完了した場合、制御部72は、水素生成システム2の運用モードを、第5運用モードから第3運用モードに切り換えてもよい。
【0119】
さらに、第1除湿器14の再生が完了した状態において運用される第3運用モードにおいて、第2除湿器16の再生が必要となった場合、制御部72は、水素生成システム2の運用モードを、第3運用モードから第5運用モードに切り替えてもよい。
【0120】
なお、本実施形態に係る電解装置4の定格消費電力は、燃料電池20の定格発電出力よりも大きい。例えば、電解装置4の定格消費電力は、1000kWであり、燃料電池20の定格発電出力は125kWである。特に、燃料電池20の定格発電出力は、電解装置4の定格消費電力の25%以下であってもよく、15%以下であってもよい。
【0121】
上述の通り、第2運用モード等においては、燃料電池20からの電力のみにより電解装置4の稼働を継続し、除湿装置12の各除湿器の再生が可能となる量の水素ガスが電解装置4から生成されてもよい。このために、燃料電池20は、電解装置4の定格消費電力の10%程度と、水素生成システム2におけるエネルギーロス分とを発電できる定格発電出力を有していてもよい。一方、第1運用モード等における、燃料電池20の低出力稼働の際の燃料電池20における水素ガスの消費量を低減する観点から、燃料電池20の定格発電出力は、電解装置4の定格消費電力に対して低くともよい。
【0122】
<第6運用モード>
図7は、本実施形態における水素生成システム2の第6運用モードを示すための、水素生成システム2の模式図である。第6運用モードにおいては、弁B2、弁B3、弁B6~8、弁B10、弁B11、弁B13、および弁B14は開放されている。また、第6運用モードにおいては、弁B1、弁B4、弁B5、弁B9、弁B12、および弁B15は閉塞されている。
【0123】
第6運用モードにおいて、電解装置4は、例えば、第3運用モードにおける稼働条件と同一の条件にて稼働する。このため、第6運用モードにおいて、電解装置4は陰極8において、例えば、200Nm-H/hの水素ガスを生成し得る能力を有する。なお、第6運用モードにおいても、第3運用モードと同じく、電解装置4は、陽極10において酸素ガスを生成し、酸素ガス供給ライン58を介して、当該酸素ガスを燃料電池20の空気極24に輸送してもよい。
【0124】
陰極8において生成された水素ガスは、水素ガス除湿ライン26および第2水素ガス除湿ライン30を介して、除湿装置12の第2除湿器16に輸送される。なお、本実施形態において、第6運用モードは、例えば、第2除湿器16の吸湿剤が乾燥した状態である等、第2除湿器16による気体の除湿が可能である状態において実行される。このため、第6運用モードにおいて、第2除湿器16に輸送された水素ガスは、第2除湿器16により除湿される。除湿装置12の第2除湿器16は、例えば、輸送された水素ガスの露点が摂氏-70度程度となる湿度まで、水素ガスの除湿を行う。
【0125】
ここで、第6運用モードは、第3運用モードと同じく、第1除湿器14による気体の除湿を行うために、第1除湿器14の再生を行う必要がある状態において実行される。ここで、第6運用モードにおいては、乾燥した水素ガスの燃料電池20への供給および水素ガス貯留装置Rへの貯留に加え、第1除湿器14の再生を実施する。
【0126】
第6運用モードにおいて、第2除湿器16における除湿を経た水素ガスの一部は、第2水素ガス供給ライン40に供給される。また、第6運用モードにおいて、第2除湿器16における除湿を経た水素ガスの他の一部は、第2熱交換ライン50を介して熱交換器18に供給される。例えば、第6運用モードにおいて、第2水素ガス供給ライン40には150Nm-H/hの水素ガスが、第2熱交換ライン50には20Nm-H/hの水素ガスが、第2除湿器16からそれぞれ供給される。
【0127】
第6運用モードにおいて、第2水素ガス供給ライン40に供給された水素ガスの一部は、さらに第2燃料供給ライン42を介して、燃料電池20の水素極22に供給される。また、第6運用モードにおいて、第2水素ガス供給ライン40に供給された水素ガスの他の一部は、さらに第2水素ガス貯留ライン44を介して、水素ガス貯留装置Rに貯留される。
【0128】
燃料電池20の水素極22に供給される水素ガスと、水素ガス貯留装置Rに貯留される水素ガスと、熱交換器18に供給される水素ガスとの比の調整は、例えば、弁B7と弁B6と弁B10との開放度合の差を調節することによって実施してもよい。
【0129】
第6運用モードにおいて、熱交換器18には、さらに、後述する方法によって稼働する燃料電池20からの排熱を含む排気が、第1排熱供給ライン46を介して輸送される。このため、第6運用モードにおいては、熱交換器18において、第2除湿器16における除湿を経た水素ガスの一部と、燃料電池20からの排熱を含む排気との熱交換が実行される。
【0130】
第6運用モードにおいて、熱交換器18における熱交換により温度が上昇した水素ガスは、熱交換器18から第2再生ライン56を介して第1除湿器14に輸送される。これにより、第6運用モードにおいても、第4運用モードにおける第1除湿器14の再生と同一の方法により、第1除湿器14は再生される。これに伴い、第1除湿器14に供給され、第1除湿器14の再生に利用された水素ガスは、湿潤した水素ガスとなる。第1除湿器14の再生により生じる、湿潤した水素ガスは、第1水素ガス供給ライン32および第1燃料供給ライン34を介して、燃料電池20の水素極22に供給される。
【0131】
以上より、第6運用モードにおいては、燃料電池20の水素極22に、第2除湿器16における除湿により乾燥した水素ガスの一部と第1除湿器14の再生により湿潤した水素ガスとが供給される。また、第6運用モードにおいては、水素ガス貯留装置Rに、第2除湿器16における除湿により乾燥した水素ガスの他の一部が貯留される。第6運用モードにおいて、燃料電池20の水素極22には、例えば、40Nm-H/hの水素ガスが供給される。第6運用モードにおいて、水素ガス貯留装置Rには、例えば、130Nm-H/hの水素ガスが供給される。
【0132】
第6運用モードにおいて、燃料電池20は、水素極22に供給された水素ガスを燃料として稼働する。より具体的に、燃料電池20の水素極22には、第2燃料供給ライン42からの乾燥した水素ガスと、第1燃料供給ライン34からの湿潤した水素ガスとが供給される。これにより、燃料電池20は、上述の通り、電解装置4に62.5kW程度の電力を、第1電源線60を介して供給してもよい。また、燃料電池20は、電解装置4への電力供給後の余剰電力を、第3電源線64を介して需要施設Cに供給してもよい。さらに、燃料電池20は、熱交換器18における熱交換に利用しない余剰の排熱を、第2排熱供給ライン66を介して需要施設Cに供給してもよい。第6運用モードにおいても、燃料電池20は、空気極24に供給された酸素ガスを酸化剤として利用してもよい。
【0133】
以上により、第6運用モードにて水素生成システム2を運用することにより、電解装置4において水素ガスの一部による燃料電池20の稼働および第1除湿器14の再生を行いつつ、水素ガスの他の一部の貯留が可能である。
【0134】
第6運用モードは、例えば、上述した、第1運用モードから第4運用モードまでを繰り返す水素生成システム2の運用方法において、第3運用モードの代わりに採用してもよい。ここで、第6運用モードにおける水素生成システム2の運用中に第1除湿器14の再生が完了した場合、制御部72は、水素生成システム2の運用モードを、第6運用モードから第3運用モードに切り換えてもよい。
【0135】
この場合、第3運用モードは、第1除湿器14の再生が完了した状態において実行される。このため、第3運用モードにおいて、発電装置Pからの電力が第1の発電量以下となった場合、制御部72は、水素生成システム2の運用モードを、第3運用モードから第2遷移運用モードに切り替えてもよい。
【0136】
また、第6運用モードは、例えば、上述した、第1運用モードから第4運用モードまでを繰り返す水素生成システム2の運用方法において、第4運用モードに次いで実施してもよい。例えば、第4運用モードにおいて、発電装置Pの発電可能量が第2の発電量以上となったにも関わらず、第1除湿器14の再生が未完了である場合、制御部72は、水素生成システム2の運用モードを、第4運用モードから第6運用モードに切り替えてもよい。
【0137】
これにより、水素生成システム2は、発電装置Pからの電力供給を受け、電解装置4における水素ガスの生成、燃料電池20の稼働、および水素ガス貯留装置Rへの水素ガスの貯留を行いつつ、第1除湿器14の再生を継続することができる。ここで、第6運用モードにおける水素生成システム2の運用中に第1除湿器14の再生が完了した場合、制御部72は、水素生成システム2の運用モードを、第6運用モードから第1運用モードに切り換えてもよい。
【0138】
さらに、第2除湿器16の再生が完了した状態において運用される第1運用モードにおいて、第1除湿器14の再生が必要となった場合、制御部72は、水素生成システム2の運用モードを、第1運用モードから第6運用モードに切り替えてもよい。
【0139】
〔実施形態2〕
<水素生成システムの別例>
図8は、本実施形態に係る水素生成システムの模式図である。本実施形態に係る水素生成システム74は、前実施形態に係る水素生成システム2と比較して、除湿装置12に代えて、除湿装置76を備える。除湿装置76は、除湿装置12と比較して、第2除湿器16を含まない。換言すれば、本実施形態において、除湿装置76は、単一の除湿器として第1除湿器14を含む。さらに、除湿装置76は熱交換器18を含む。
【0140】
これに伴い、本実施形態に係る水素生成システム74は、前実施形態に係る水素生成システム2と比較して、第2除湿器と接続する気体輸送ライン、および当該気体輸送ラインに形成された弁を備えていない。加えて、本実施形態に係る水素生成システム74は、前実施形態に係る水素生成システム2と比較して、第1熱交換ライン48および弁B9を備えていない。
【0141】
本実施形態に係る水素生成システム74は、前実施形態に係る水素生成システム2と比較して、さらに追加水素ガス供給ライン78を備える。追加水素ガス供給ライン78は、水素ガス除湿ライン26から分岐し、燃料電池20の水素極22と接続する。追加水素ガス供給ライン78には、弁B16が形成されている。このため、弁B1が閉塞され、かつ、弁B16が開放されている場合、陰極8において生成された水素ガスは、水素ガス除湿ライン26と追加水素ガス供給ライン78とを順に経由して、水素極22に供給される。
【0142】
さらに、本実施形態に係る水素生成システム74は、前実施形態に係る水素生成システム2と比較して、追加水素ガス熱交換ライン80を備える。追加水素ガス熱交換ライン80は、水素ガス貯留装置Rと熱交換器18とを接続し、水素ガス貯留装置Rに貯留された乾燥した水素ガスを熱交換器18に輸送する。追加水素ガス熱交換ライン80には、弁B17が形成されている。
【0143】
以上を除き、本実施形態に係る水素生成システム74は、前実施形態に係る水素生成システム2と同一の構成を備えていてもよい。例えば、制御部72は、除湿装置76、弁B16、および弁B17をさらに制御してもよい。また、除湿装置76は、第4電源線68を介した燃料電池20からの電力供給と、第5電源線70を介した発電装置Pからの電力供給との少なくとも一方を受けて稼働してもよい。
【0144】
<第7運用モード>
次いで、本実施形態に係る水素生成システムの運用方法について、図9および図10を参照して説明する。図9および図10のそれぞれは、水素生成システムの各運用モードを説明するための水素生成システムの模式図である。
【0145】
図9は、本実施形態における水素生成システム74の第7運用モードを示すための、水素生成システム74の模式図である。第7運用モードにおいては、弁B1、弁B3、弁B4、弁B14、および弁B15は開放されている。また、第1運用モードにおいては、弁B5、弁B8、弁B11、弁B13、弁B16、および弁B17は閉塞されている。
【0146】
第7運用モードにおける電解装置4の稼働は、第1運用モードにおける電解装置4の稼働と同一の方法により実行されてもよい。陰極8において生成された水素ガスは、水素ガス除湿ライン26および第1水素ガス除湿ライン28を介して、除湿装置12の第1除湿器14に輸送される。なお、本実施形態において、第7運用モードは、例えば、第1除湿器14の吸湿剤が乾燥した状態である等、第1除湿器14による気体の除湿が可能である状態において実行される。このため、第7運用モードにおいて、第1除湿器14に輸送された水素ガスは、第1除湿器14により除湿される。
【0147】
除湿装置76の第1除湿器14は、例えば、除湿装置12の第1除湿器14と同一の方法により水素ガスの除湿を行う。第7運用モードにおいて、第1除湿器14における除湿を経た水素ガスは、第1運用モードと同一の方法により、燃料電池20の水素極22と水素ガス貯留装置Rとのそれぞれに輸送されてもよい。第7運用モードにおいて、除湿装置76は、発電装置Pからの電力供給を受けて稼働してもよい。
【0148】
第7運用モードにおける燃料電池20の稼働は、第1運用モードにおける燃料電池20の稼働と同一の方法により実行されてもよい。また、燃料電池20は、電解装置4への電力供給後の余剰電力および稼働により生じた排熱を、それぞれ、第3電源線64および第2排熱供給ライン66を介して需要施設Cに供給してもよい。さらに、燃料電池20は、第4電源線68を介して、除湿装置76への電力供給を行ってもよい。
【0149】
以上により、第7運用モードにて水素生成システム74を運用することにより、電解装置4から水素ガスを発生させ、当該水素ガスの一部を利用した燃料電池20の稼働、および、当該水素ガスの他の一部の貯留が可能である。特に、第7運用モードにおいては、電解装置4からの水素ガスを除湿装置76において除湿するため、燃料電池20に供給する、または、水素ガス貯留装置Rに貯留する水素ガスを乾燥させることができる。したがって、第7運用モードにおいては、燃料電池20がより効率よく稼働し、また、水素ガス貯留装置Rに貯留する水素ガスの品質が向上する。
【0150】
<第8運用モード>
図10は、本実施形態における水素生成システム74の第8運用モードを示すための、水素生成システム74の模式図である。第8運用モードにおいては、弁B3、弁B5、弁B8、弁B11、弁B13、弁B14、弁B16、および弁B17は開放されている。また、第8運用モードにおいては、弁B1、弁B4、および弁B15は閉塞されている。
【0151】
第8運用モードは、例えば、第7運用モードに引き続いて実行される。このため、例えば、第8運用モードは、第7運用モードにおける水素ガスの除湿により、第1除湿器14の再生が必要となった状態において実行される。水素生成システム74の運用モードの、第7運用モードから第8運用モードへの移行は、例えば、制御部72が、発電装置Pにおける発電量が第1の発電量以下であることを検知した場合に実行される。
【0152】
第8運用モードにおける電解装置4の稼働は、第2運用モードにおける電解装置4の稼働と同一の方法により実行されてもよい。第8運用モードが第7運用モードに引き続いて実行される場合、電解装置4の稼働を停止せず、連続して稼働させてもよい。
【0153】
第8運用モードにおいて、陰極8において生成された水素ガスは、水素ガス除湿ライン26および追加水素ガス供給ライン78を介して、燃料電池20の水素極22に供給される。換言すれば、第8運用モードにおいて、陰極8において生成された湿潤した水素ガスは、燃料電池20の水素極22に直接供給される。ここで、上述した通り、水素極22に湿潤した水素ガスが供給された場合においても、燃料電池20は発電および排熱の生成を行うことが可能である。したがって、第8運用モードにおいても、燃料電池20は、水素極22に供給された湿潤した水素ガスを燃料として稼働する。
【0154】
第8運用モードにおいては、水素ガス貯留装置Rに貯留された乾燥した水素ガスの一部が、燃料電池20の水素極22と、除湿装置76の熱交換器18とのそれぞれに供給される。制御部72は、弁5と弁17との開放度合の差を調節することにより、水素ガス貯留装置Rから水素極22に供給する水素ガスと熱交換器18に供給する水素ガスとの割合を制御してもよい。
【0155】
第8運用モードにおいて、熱交換器18には、後述する方法によって稼働する燃料電池20からの排熱を含む排気が、第1排熱供給ライン46を介して輸送される。このため、第8運用モードにおいては、熱交換器18において、水素ガス貯留装置Rからの水素ガスと、燃料電池20からの排熱を含む排気との熱交換が実行される。
【0156】
第8運用モードにおいて、熱交換器18における熱交換により温度が上昇した水素ガスは、熱交換器18から第2再生ライン56を介して第1除湿器14に輸送される。これにより、第1除湿器14には、高温かつ乾燥した水素ガスが供給される。なお、熱交換器18における熱交換により温度が低下した、燃料電池20の排熱を含む排気は、熱交換器18から排気ライン52を介して水素生成システム2の外部に排出されてもよい。
【0157】
第8運用モードにおいては、第1除湿器14に高温かつ乾燥した水素ガスを供給することにより、第1除湿器14の再生を実行する。第1除湿器14の再生は、例えば、第4運用モードにおける第1除湿器14の再生と同一の方法により実行されてもよい。換言すれば、第8運用モードにおいて、水素生成システム74は、除湿装置76の再生を、少なくとも、電解装置4にて生成された水素ガスの少なくとも一部、および、熱交換器18により加熱した水素ガスを利用して実行する。
【0158】
本実施形態において、第1除湿器14の再生により、第1除湿器14から除去された水分は、熱交換器18から供給された水素ガスに溶解した状態にて、第1除湿器14の外部に排出される。換言すれば、第1除湿器14に供給され、第1除湿器14の再生に利用された水素ガスは、湿潤した水素ガスとなる。
【0159】
第1除湿器14の再生により生じる、湿潤した水素ガスは、第1水素ガス供給ライン32および第1燃料供給ライン34を介して、燃料電池20の水素極22に供給される。このため、第8運用モードにおいて、第1水素ガス供給ライン32および第1燃料供給ライン34は、湿潤した水素ガスを燃料電池20に供給する湿潤水素ガス供給ラインとして機能する。
【0160】
第8運用モードにおいて、燃料電池20は、電解装置4の陰極8、除湿装置76の第1除湿器14、および、水素ガス貯留装置Rのそれぞれから供給された水素ガスを燃料として発電する。ここで、第8運用モードにおいて、燃料電池20は、少なくとも、電解装置4に送電する電力と、熱交換器18に輸送する排気が含む排熱とを生成する。
【0161】
以上により、第8運用モードにおいては、発電装置Pからの電力供給を受けることなく、電解装置4から水素ガスを発生させ、また、第1除湿器14の再生を実行できる。特に、第8運用モードにおいては、第1除湿器14の再生を燃料電池20からの排熱を利用して実行する。
【0162】
本実施形態において、第8運用モードに引き続き、再び第7運用モードにて水素生成システム2が運用されてもよい。第8運用モードにおいては、第1除湿器14の再生が実行されるため、第8運用モードを経た後に実行される第7運用モードは、第1除湿器14による水素ガスの除湿が可能である状態において実行される。
【0163】
第8運用モードから第7運用モードへの移行は、例えば、制御部72が、発電装置Pにおける発電可能な電力量が第2の発電量以上となったことを検知し、かつ、第1除湿器14の再生の完了を検知した場合に実行される。
【0164】
本実施形態に係る水素生成システム74は、運用モードを上述した第7運用モードと第8運用モードとに交互に切り替えつつ繰り返し運用することにより、継続して運用が可能である。水素生成システム74の運用モードの切り替えは、例えば、制御部72による、電解装置4、除湿装置76、および燃料電池20の動作の制御と、各弁の開閉の制御とにより実行される。
【0165】
本実施形態に係る水素生成システム74は、前実施形態に係る水素生成システム2と比較して、除湿装置76が備える除湿器が第1除湿器14のみである。このため、本実施形態に係る水素生成システム74は、単一の除湿器のみにて、継続して運用することが可能であり、構造を簡素化できる。これに伴い、主に水素ガスを貯留する第7運用モード、および主に第1除湿器14を再生する第8運用モードのみにより、本実施形態に係る水素生成システム74の継続運用が可能となり、運用方法が簡素化する。
【0166】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0167】
2 水素生成システム
4 電解装置
12 除湿装置
14 第1除湿器
16 第2除湿器
18 熱交換器
20 燃料電池
26 水素ガス除湿ライン
32 第1水素ガス供給ライン
34 第1燃料供給ライン
36 第1水素ガス貯留ライン
38 貯留水素ガス供給ライン
40 第2水素ガス供給ライン
42 第2燃料供給ライン
44 第2水素ガス貯留ライン
46 第1排熱供給ライン
58 酸素ガス供給ライン
60 第1電源線
62 第2電源線
72 制御部
P 発電装置
R 水素ガス貯留装置
図1
図2
図3
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図6
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図8
図9
図10