(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019065
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】シールカバーおよびシール部材
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20230202BHJP
B60J 10/20 20160101ALI20230202BHJP
B60J 10/30 20160101ALI20230202BHJP
【FI】
B60J5/00 501E
B60J10/20
B60J10/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123531
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】沖野 文人
(72)【発明者】
【氏名】濱本 桂介
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA01
3D201BA01
3D201CA21
3D201DA05
3D201DA31
3D201DA34
3D201FA05
(57)【要約】
【課題】第1リップ部の止水性を高めて、シールカバーのシール性能を向上させること。
【解決手段】シール部材(26)は、カバー部材(18)の溝(20)に挿入されシール本体(28)を有し、シール本体(28)の車外側端部に、カバー部材(18)の溝(20)のドアホール(16)に近い側の周縁部に圧接する第1シールリップ部(34)がドアホール(16)に向かって突出して形成されている。シール部材(26)は、シール本体(28)の車外側端部に設けられたエッジシール部(40)を有し、エッジシール部(40)は、ドアインナーパネル(14)のドアホール(16)の周縁部に圧接しながら、第1シールリップ部(34)をカバー部材(18)側に押さえるように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアインナーパネルに取付けられるシールカバーであって、
車内側に向かって凹んだ溝が前記ドアインナーパネルのドアホールを囲むように形成され、前記ドアホールを車内側から覆うカバー部材と、
前記ドアインナーパネルと前記カバー部材との間に前記ドアホールを囲むように取付けられたシール部材と、を備え、
前記シール部材は、
前記カバー部材の前記溝に挿入され、車外側端部に前記カバー部材の前記溝の前記ドアホールに近い側の周縁部に圧接する第1リップ部が前記ドアホールに向かって突出して形成されたシール本体と、
前記シール本体の車外側端部に設けられ、前記ドアインナーパネルの前記ドアホールの周縁部に圧接しながら、前記第1リップ部を前記カバー部材側に押さえるように構成されたシール部と、を有していることを特徴とするシールカバー。
【請求項2】
前記シール部は、前記ドアインナーパネルの前記ドアホールの周縁部に圧接しながら、前記第1リップ部を包み込んだ状態で前記カバー部材側に押さえるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシールカバー。
【請求項3】
前記シール本体の車外側端部に、前記カバー部材の前記溝の前記ドアホールから遠い側の周縁部に圧接する第2リップ部が前記ドアホールの反対側に向かって突出して形成され、前記第2リップ部の基端部に、前記ドアインナーパネルの前記ドアホールの周縁部に圧接する第3リップ部が前記ドアホールの反対側に向かって突出して形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシールカバー。
【請求項4】
カバー部材とその取付対象である取付ベースとの間に前記取付ベースの開口部を囲むように取付けられるシール部材であって、
前記カバー部材に前記取付ベースの前記開口部を囲むように形成された凹部に挿入され、一側端部に前記カバー部材の前記凹部の前記開口部に近い側の周縁部に圧接する第1リップ部が前記シール内側に向かって突出して形成されたシール本体と、
前記シール本体の一側端部に設けられ、前記取付ベースの前記開口部の周縁部に圧接しながら、前記第1リップ部を前記カバー部材側に押さえるように構成されたシール部と、を備えることを特徴とするシール部材。
【請求項5】
前記シール部は、前記取付ベースの前記開口部の周縁部に圧接しながら、前記第1リップ部を包み込んだ状態で前記カバー部材側に押さえるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のシール部材。
【請求項6】
前記シール本体の一側端部に、前記カバー部材の前記凹部の前記開口部から遠い側の周縁部に圧接する第2リップ部がシール外側に向かって突出して形成され、前記第2リップ部の基端部に、前記取付ベースの前記開口部の周縁部に圧接する第3リップ部がシール外側に向かって突出して形成されていることを特徴とする請求項4または5に記載のシール部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアインナーパネルに取付けられるシールカバー、およびシールカバー等のシール構造体に用いられるシール部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のドアインナーパネルに形成されたドアホールから車内側への雨水等の水の浸入を防止するためにシールカバー用いられている。例えば、特許文献1に記載のシールカバーは、次のような構成を有している。
【0003】
ドアインナーパネルには、ドアホールを覆うカバー部材(特許文献1ではキャリアプレート)が設けられている。カバー部材には、車内側に向かって凹んだ凹部としての溝(特許文献1では凹条溝)がドアホールを囲むように形成されている。また、ドアインナーパネルとカバー部材との間には、シール部材(特許文献1では発泡シール材)がドアホールを囲むように取付けられている。シール部材は、ドアインナーパネルの溝に収容される基部と、基部の車外側端部に形成されたシール部とを有している。シール部材のシール部は、ドアインナーパネルのドアホールの周縁部に圧接しながら、カバー部材の溝の周縁部に圧接するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、シール部材のシール部のうち、カバー部材の溝の曲率半径の小さい箇所の縁部に位置する部分は、カバー部材の溝の形状に追従できず、カバー部材から浮き上がることがある。そのため、シール部材のシール部の止水性が低下して、シールカバーのシール性能を向上させることが困難であるという問題がある。
【0006】
なお、シールカバー以外のシール構造体においても、シール部材の一部がカバー部材の凹部の曲率半径の小さい箇所の縁部に位置する場合には、前述と同様の問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明の一態様は、シールカバーのシール性能およびシール部材のシール性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決するために、本発明の一態様に係るシールカバーは、自動車のドアインナーパネルに取付けられるシールカバーであって、車内側に向かって凹んだ溝が前記ドアインナーパネルのドアホールを囲むように形成され、前記ドアホールを車内側から覆うカバー部材と、前記ドアインナーパネルと前記カバー部材との間に前記ドアホールを囲むように取付けられたシール部材と、を備え、前記シール部材は、前記カバー部材の前記溝に挿入され、車外側端部に前記カバー部材の前記溝の前記ドアホールに近い側の周縁部(内側周縁部)に圧接する第1リップ部が前記ドアホールに向かって突出して形成されたシール本体と、前記シール本体の車外側端部に設けられ、前記ドアインナーパネルの前記ドアホールの周縁部に圧接しながら、前記第1リップ部を前記カバー部材側に押さえるように構成されたシール部と、を有していることを特徴とする。
【0009】
前記の構成により、前記第1リップ部が前記カバー部材の前記溝の前記近い側の周縁部に圧接することにより、前記カバー部材側において、前記ドアホールから前記ドアインナーパネルと前記カバー部材との隙間に浸入した水を止水する。前記シール部が前記ドアインナーパネルの前記ドアホールの周縁部に圧接することにより、前記ドアインナーパネル側において、前記ドアホールから前記ドアインナーパネルと前記カバー部材との隙間に浸入した水を止水する。これにより、前記ドアホールから車内側への水の浸入を防止することができる。
【0010】
前述のように、前記シール部は、前記ドアインナーパネルの前記ドアホールの周縁部に圧接しながら、前記第1リップ部を前記カバー部材側に押さえるように構成されている。そのため、前記第1リップ部のうち、前記カバー部材の前記溝の曲率半径の小さい箇所の縁部に位置する部分は、前記カバー部材から浮き上がる傾向にあるものの、前記カバー部材に対する前記第1リップ部の局所的な浮き上がりを抑えることができる。これにより、前記第1リップ部の止水性を高めて、前記シールカバーのシール性能が向上する。
【0011】
本発明の一態様に係るシールカバーにおいては、前記シール部は、前記ドアインナーパネルの前記ドアホールの周縁部に圧接しながら、前記第1リップ部を包み込んだ状態で前記カバー部材側に押さえるように構成されてもよい。
【0012】
前記の構成によれば、前記シール部が前記ドアインナーパネルの前記ドアホールの周縁部に圧接しながら、前記カバー部材の前記溝の前記近い側の周縁部に圧接する。すると、前記シール部は、前記ドアインナーパネル側および前記カバー部材側において、前記ドアホールから前記ドアインナーパネルと前記カバー部材との隙間に浸入した水を止水する。これにより、前記第1リップ部の止水性だけでなく、前記シール部の止水性を高めて、前記シールカバーのシール性能が向上する。
【0013】
本発明の一態様に係るシールカバーは、前記シール本体の車外側端部に、前記カバー部材の前記溝の前記ドアホールから遠い側の周縁部(外側周縁部)に圧接する第2リップ部が前記ドアホールの反対側に向かって突出して形成され、前記第2リップ部の基端部に、前記ドアインナーパネルの前記ドアホールの周縁部に圧接する第3リップ部が前記ドアホールの反対側に向かって突出して形成されてもよい。
【0014】
前記の構成により、前記第2リップ部が前記カバー部材の前記溝の前記遠い側の周縁部に圧接する。すると、前記第1リップ部および前記第2リップ部は、前記カバー部材側において、前記ドアホールから前記ドアインナーパネルと前記カバー部材との隙間に浸入した水を二重で止水する。また、前記第3リップ部が前記ドアインナーパネルの前記ドアホールの周縁部に圧接する。すると、前記シール部および前記第3リップ部は、前記ドアインナーパネル側において、前記ドアホールから前記ドアインナーパネルと前記カバー部材との隙間に浸入した水を二重で止水する。これにより、前記ドアホールから車内側への水の浸入を十分に防止することができる。
【0015】
前述の課題を解決するため、本発明の一態様に係るシール部材は、カバー部材とその取付対象である取付ベースの間に前記取付ベースの開口部を囲むように取付けられるシール部材であって、前記カバー部材に前記取付ベースの前記開口部を囲むように形成された凹部に挿入され、一側端部に前記カバー部材の前記凹部の前記開口部に近い側の周縁部に圧接する第1リップ部がシール内側に向かって突出して形成されたシール本体と、前記シール本体の一側端部に設けられ、前記取付ベースの前記開口部の周縁部に圧接しながら、前記第1リップ部を前記カバー部材側に押さえるように構成されたシール部と、を備える。
【0016】
前記の構成によれば、前記第1リップ部が前記カバー部材の前記凹部の前記近い側の周縁部に圧接することにより、前記カバー部材側において流体をシールする。前記シール部が前記取付ベースの前記開口部の周縁部に圧接することにより、前記取付ベース側において流体をシールする。これにより、前記取付ベースの前記開口部からの流体の侵入、または前記取付ベースの前記開口部への流体の侵入を防止することができる。
【0017】
前述のように、前記シール部は、前記取付ベースの前記開口部の周縁部に圧接しながら、前記第1リップ部を前記カバー部材側に押さえるように構成されている。そのため、前記第1リップ部のうち、前記カバー部材の前記溝の曲率半径の小さい箇所の縁部に位置する部分は、前記カバー部材から浮き上がる傾向にあるものの、前記カバー部材に対する前記第1リップ部の局所的な浮き上がりを抑えることができる。これにより、前記第1リップ部のシール性を高めて、前記シール部材のシール性能が向上する。
【0018】
本発明の一態様に係るシール部材において、前記シール部は、前記取付ベースの前記開口部の周縁部に圧接しながら、前記第1リップ部を包み込んだ状態で前記カバー部材側に押さえるように構成されてもよい。
【0019】
前記の構成によれば、前記シール部が前記取付ベースの前記開口部の周縁部に圧接しながら、前記カバー部材の前記凹部の前記近い側の周縁部に圧接する。すると、前記シール部は、前記取付ベース側および前記カバー部材側において流体をシールする。これにより、前記シール部のシール性を高めて、前記シール部材のシール性能が向上する。
【0020】
本発明の一態様に係るシール部材において、前記シール本体の一側端部に、前記カバー部材の前記凹部の前記開口部から遠い側の周縁部に圧接する第2リップ部がシール外側に向かって突出して形成され、前記第2リップ部の基端部に、前記取付ベースの前記開口部の周縁部に圧接する第3リップ部がシール外側に向かって突出して形成されてもよい。
【0021】
前記の構成によれば、前記第2リップ部が前記カバー部材の前記凹部の前記遠い側の周縁部に圧接する。すると、前記第1リップ部および前記第2リップ部は、前記カバー部材側において、流体を二重にシールする。また、前記第3リップ部が前記取付ベースの前記開口部の周縁部に圧接する。すると、前記シール部および前記第3リップ部は、前記取付ベース側において、流体を二重にシールする。これにより、前記取付ベースの前記開口部からの流体の侵入、または前記取付ベースの前記開口部への流体の侵入を十分に防止することができる。
【0022】
また、前述の課題を解決するため、本発明の一態様に係るシールカバーは、自動車のドアインナーパネルに取付けられるシールカバーであって、車内側に向かって凹んだ溝が前記ドアホールを囲むように形成され、前記ドアホールを車内側から覆うカバー部材と、前記ドアインナーパネルと前記カバー部材との間に前記ドアホールを囲むように取付けられたシール部材と、を備え、前記シール部材は、前記カバー部材の前記溝に挿入され、ソリッドゴムからなり、前記ドアホール側に向かう部位に窪み部が形成されたシール本体と、前記シール本体の前記窪み部に設けられ、スポンジゴムからなり、前記ドアインナーパネルの前記ドアホールの周縁部に圧接しながら、前記カバー部材の前記溝の前記ドアホールに近い側の周縁部(内側周縁部)に圧接するように構成されたシール部と、を有している。
【0023】
前記の構成によれば、前記シール部が前記ドアインナーパネルの前記ドアホールの周縁部に圧接しながら、前記カバー部材の前記溝の前記ドアホールに近い側の周縁部に圧接する。すると、前記シール部は、前記ドアインナーパネル側および前記カバー部材側において、前記ドアホールから前記ドアインナーパネルと前記カバー部材との隙間に浸入した水を止水する。これにより、前記ドアホールから車内側への水の浸入を防止することができる。
【0024】
また、前述のように、前記シール本体の前記ドアホール側に向かう部位に前記窪み部が形成され、前記シール本体の前記窪み部にスポンジゴムからなるシール部が設けられている。前記シール部は、前記ドアインナーパネルの前記ドアホールの周縁部に圧接しながら、前記カバー部材の前記溝の前記近い側の周縁部に圧接するように構成されている。そのため、前記シール部の一部分が前記カバー部材の前記溝の曲率半径の小さい箇所の縁部に位置しても、前記シール部の一部分が前記カバー部材から浮き上がることがない。これにより、前記シール部の止水性を高めて、前記シールカバーのシール性能が向上する。
【0025】
また、前述の課題を解決するため、本発明の一態様に係るシール部材は、カバー部材とその取付対象である取付ベースとの間に前記取付ベースの開口部を囲むように取付けられるシール部材であって、前記カバー部材に前記取付ベースの前記開口部を囲むように形成された凹部に挿入され、前記開口部側に向かう部位に窪み部が形成されたシール本体と、前記シール本体の前記窪み部に設けられ、スポンジゴムからなり、前記取付ベースの前記開口部の周縁部に圧接しながら、前記カバー部材の前記段部の前記開口部に近い側の周縁部に圧接するように構成されたシール部と、を備える。
【0026】
前記の構成によれば、前記シール部が前記取付ベースの前記開口部の周縁部に圧接しながら、前記カバー部材の前記段部の前記近い側の周縁部に圧接する。すると、前記シール部は、前記取付ベース側および前記カバー部材側において流体をシールする。これにより、前記取付ベースの前記開口部からの流体の侵入、または前記取付ベースの前記開口部への流体の侵入を防止することができる。
【0027】
また、前述のように、前記シール本体の前記開口部側に向かう部位に前記窪み部が形成され、前記シール本体の前記窪み部にスポンジゴムからなるシール部が設けられている。前記シール部は、前記取付ベースの前記開口部の周縁部に圧接しながら、前記カバー部材の前記段部の前記近い側の周縁部に圧接するように構成されている。そのため、前記シール部の一部分が前記カバー部材の前記凹部の曲率半径の小さい箇所の縁部に位置しても、前記シール部の一部分が前記カバー部材から浮き上がることがない。これにより、前記シール部のシール性を高めて、前記シール部材のシール性能が向上する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一態様によれば、第1リップ部の止水性を高めて、シールカバーのシール性能が向上する。また、第1リップ部のシール性を高めて、シール部材のシール性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態1または実施形態2に係るシールカバーがドアインナーパネルに取付けられた自動車のドアの車内側の構造を示す模式図である。
【
図2】実施形態1または実施形態2に係るシールカバーを車外側から見た模式図である。
【
図3】実施形態1に係るシール部材の断面図である。
【
図4】実施形態1に係るシールカバーの部分断面図であって、
図2におけるIV-IV線に沿った断面図である。
【
図5】実施形態1に係るシールカバーの部分断面図であって、
図2におけるV-V線に沿った断面図である。
【
図6】実施形態1に係るシールカバーの部分断面図であって、
図2におけるVI-VI線に沿った断面図である。
【
図7】実施形態2に係るシール部材の断面図である。
【
図8】実施形態2に係るシールカバーの部分断面図であって、
図2におけるIV-IV線に沿った断面図である。
【
図9】実施形態2に係るシールカバーの部分断面図であって、
図2におけるV-V線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本願の明細書および特許請求の範囲において、圧接とは、圧力をもって接触することをいう。取付ベースとは、カバー部材の取付対象となる部材であり、ドアインナーパネルを含む意である。取付ベースの開口部とは、ドアインナーパネルの形成されたドアホールを含む意である。カバー部材の凹部とは、カバー部材の溝、カバー部材の段部を含む意である。シール外側とは、カバー部材と取付ベースとの間にシール部材が取付ベースの開口部を囲むように取付けられた状態において、取付ベースの開口部の外側に向かう側のこと、もしくはドアホールの反対側のことである。シール内側とは、取付ベースとカバー部材との間にシール部材が取付ベースの開口部を囲むように取付けられた状態において、取付ベースの開口部の外側に向かう側のこと、もしくはドアホール側のことである。図面中、「CE」は車外側、「CI」は車内側、「SE」はシール外側(ドアホールの反対側)、「SI」はシール内側(ドアホール側)、「U」は上側、「D」は下側をそれぞれ指している。
【0031】
〔実施形態1〕
実施形態1について
図1から
図6を参照して説明する。
図1は、実施形態1に係るシールカバーがドアインナーパネルに取付けられた自動車のドアの車内側の構造を示す模式図である。
図2は、実施形態1に係るシールカバーを車外側から見た模式図である。
図3は、実施形態1に係るシール部材の断面図である。
図4は、実施形態1に係るシールカバーの部分断面図であって、
図2におけるIV-IV線に沿った断面図である。
図5は、実施形態1に係るシールカバーの部分断面図であって、
図2におけるV-V線に沿った断面図である。
図6は、実施形態1に係るシールカバーの部分断面図であって、
図2におけるVI-VI線に沿った断面図である。
【0032】
(シールカバー10の概要)
図1および
図2に示すように、実施形態1に係るシールカバー10は、自動車のドア12の一部を構成するドアインナーパネル14に取付けられ、ドアインナーパネル14に形成されたドアホール16から車内側への雨水等の水の浸入を防止するシール構造体である。ここで、ドアホール16は、例えば、ドア12の内部に配置された各種部品を修理するときに、作業者が手または工具等を入れるための開口部である。なお、
図1には、ドア12の一例としてフロントドアが図示されている。
【0033】
(カバー部材18)
図2に示すように、シールカバー10は、ドアインナーパネル14にクリップ(不図示)を介して設けられかつドアホール16を車内側から覆うカバー部材18を備えている。カバー部材18には、車内側に向かって凹んだ凹部としての溝20がドアホール16を囲むように形成されている。溝20の一端部と他端部は、平行な状態で連結されており、換言すれば、溝20は、平行な状態で連結する連結部22を有している。溝20の連結部22の中央には、中間壁24(
図5参照)が形成されている。
【0034】
カバー部材18は、例えば加硫ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、または金属等からなる。加硫ゴムの例としては、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンモノマー)、IR(イソプレンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、またはアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)が挙げられる。熱可塑性エストラマーの例としては、オレフィン系(TPO)またはスチレン系(TPS)が挙げられる。熱可塑性成形樹脂の例としては、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVA(ポリビニルアルコール)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、ABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)、またはEVA(エチレン酢酸ビニル)が挙げられる。複合体の例としては、ガラス繊維ブレンドなどの繊維の集合体を挙げることができる。金属の例としては、アルミまたは鉄が挙げられる。
【0035】
(シール部材26)
図2に示すように、シールカバー10は、ドアインナーパネル14とカバー部材18との間にドアホール16を囲むように取付けられた紐状のシール部材26を備えている。そして、実施形態1に係るシール部材26の具体的な構成は、次の通りである。
【0036】
(シール本体28)
図3から
図5に示すように、シール部材26は、カバー部材18の溝20に挿入(収容)されたシール本体28を有しており、シール本体28は、ソリッド状に構成されている。シール本体28は、加硫ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂等からなる。加硫ゴムの例としては、例えば、EPDM、IR(イソプレンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、またはアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。熱可塑性エストラマーの例としては、例えばオレフィン系(TPO)またはスチレン系(TPS)等が挙げられる。熱可塑性樹脂の例としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、またはポリ塩化ビニル等が挙げられる。
【0037】
シール本体28のシール内側の部位には、第1保持リップ部30が形成されており、第1保持リップ部30は、その弾性力によってカバー部材18の溝20のドアホール16側の内壁(内側内壁)に圧接する。シール本体28のシール外側の部位には、第2保持リップ部32が形成されており、第2保持リップ部32は、その弾性力によってカバー部材18の溝20のドアホール16側とは反対側の内壁(外側内壁)に圧接する。これにより、シール本体28は、カバー部材18の溝20に安定した状態で保持される。
【0038】
シール本体28の一側端部である車外側端部には、第1リップ部としての第1シールリップ部34がドアホール16(シール内側)に向かって突出して形成されている。第1シールリップ部34は、その弾性力によってカバー部材18の溝20のドアホール16に近い側の周縁部(内側周縁部)に圧接する。また、シール本体28の車外側端部には、第2リップ部としての第2シールリップ部36がドアホール16の反対側(シール外側)に向かって突出して形成されている。第2シールリップ部36は、その弾性力によってカバー部材18の溝20のドアホール16から遠い側の周縁部(外側周縁部)に圧接する。第2シールリップ部36の基端部には、第3リップ部としての第3シールリップ部38がドアホール16の反対側に向かって突出して形成されている。第3シールリップ部38は、その弾性力によってドアインナーパネル14のドアホール16の周縁部に圧接する。
【0039】
(エッジシール部40)
図3から
図5に示すように、シール本体28の車外側端部には、シール部としてのエッジシール部40が車外側に突出して設けられており、エッジシール部40は、発泡したスポンジ状に構成されている。エッジシール部40の一部がスポンジ状に構成されかつエッジシール部40の残り部分がソリッド状に構成されてもよい。エッジシール部40は、シール本体28と同様に、加硫ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂等からなる。エッジシール部40は、二重押出成形によってシール本体28と同時に成形してもよい。
【0040】
エッジシール部40は、その弾性力によってドアインナーパネル14のドアホール16の周縁部に圧接する。また、エッジシール部40は、その弾性力によってドアインナーパネル14のドアホール16の周縁部に圧接しながら、第1シールリップ部34を包み込んだ状態でカバー部材18の溝20の内側周縁部側に押さえるように構成されている。
【0041】
エッジシール部40は、ドアインナーパネル14のドアホール16の周縁部に圧接する前の状態から、シール本体28の中心線28cに対して第1シールリップ部34側(シール内側)に傾いている。これにより、カバー部材18をドアインナーパネル14に取付ける際に、シール部材26からドアインナーパネル14に働く荷重を低減して、カバー部材18の組付け性が向上する。なお、シール本体28の中心線28cとは、シール本体28から第1シールリップ部34、第2シールリップ部36、および第3シールリップ部38を除いた部分の中心線のことをいう。
【0042】
エッジシール部40は、前述のように、スポンジ状に構成されているため、シール本体28よりも軟質になっている。これにより、エッジシール部40が圧縮変形して、ドアインナーパネル14のドアホール16の周縁部、第1シールリップ部34、およびカバー部材18の溝の内側周縁部に密着する。ここで、軟質とは、エッジシール部40の材料が軟らかい態様の他に、エッジシール部40が中空形状のように変形しし易い形状として形成されている態様も含む意である。
【0043】
(シール部材26の他の構成)
第3シールリップ部38におけるドアホール16の下側に位置する部分は、ドアインナーパネル14のドアホール16の周縁部の直下側に形成された排水穴42の下側部分に圧接する。エッジシール部40におけるドアホール16の下側に位置する部分は、ドアインナーパネル14の排水穴42の上側部分に圧接する。これにより、ドアホール16からエッジシール部40と第3シールリップ部38との間に雨水等の水が浸入しても、その水を重力によって排水穴42から車外側(外部)に排水することができる。
【0044】
(作用効果)
続いて、実施形態1の作用効果について説明する。
【0045】
第1シールリップ部34がカバー部材18の溝20の内側周縁部に圧接すると共に、第2シールリップ部36がカバー部材18の溝20の外側周縁部に圧接する。すると、第1シールリップ部34および第2シールリップ部36は、カバー部材18側において、ドアホール16からドアインナーパネル14とカバー部材18との隙間に浸入した雨水等の水を二重で止水する。また、エッジシール部40および第3シールリップ部38がドアインナーパネル14のドアホール16の周縁部に圧接する。すると、エッジシール部40および第3シールリップ部38は、ドアインナーパネル14側において、ドアホール16からドアインナーパネル14とカバー部材18との隙間に浸入した雨水等の水を二重で止水する。これにより、ドアホール16から車内側への水の浸入を防止することができる。
【0046】
前述のように、エッジシール部40は、ドアインナーパネル14のドアホール16の周縁部に圧接しながら、第1シールリップ部34を包み込んだ状態でカバー部材18側に押さえるように構成されている。そのため、第1シールリップ部34のうち、カバー部材18の溝20の曲率半径の小さい箇所の縁部に位置する部分は、カバー部材18から浮き上がる傾向にあるものの、カバー部材18に対する第1シールリップ部34の局所的な浮き上がりを抑えることができる。
【0047】
従って、実施形態1によれば、第1シールリップ部34の止水性およびエッジシール部40の止水性を高めて、シールカバー10のシール性能(シール部材26のシール性能)が向上する。
【0048】
〔実施形態2〕
実施形態2ついて
図1、
図2、
図7~
図9を参照して説明する。
図1は、実施形態2に係るシールカバーがドアインナーパネルに取付けられた自動車のドアの車内側の構造を示す模式図である。
図2は、実施形態2に係るシールカバーを車外側から見た模式図である。
図7は、実施形態2に係るシール部材の断面図である。
図8は、実施形態2に係るシールカバーの部分断面図であって、
図2におけるIV-IV線に沿った断面図である。
図9は、実施形態2に係るシールカバーの部分断面図であって、
図2におけるV-V線に沿った断面図である。
【0049】
(シールカバー44の概要)
図1および
図2に示すように、実施形態2に係るシールカバー44は、ドアインナーパネル14に取付けられ、ドアインナーパネル14に形成されたドアホール16から車内側への雨水等の水の浸入を防止するシール構造体である。シールカバー44の構成のうち、実施形態1に係るシールカバー10(
図2参照)の構成と異なる点についてのみ説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記する。
【0050】
(シール部材46)
図2に示すように、シールカバー44は、ドアインナーパネル14とカバー部材18との間にドアホール16を囲むように取付けられた紐状のシール部材46を備えている。そして、実施形態2に係るシール部材46の具体的な構成は、次の通りである。
【0051】
(シール本体48)
図7~
図9に示すように、シール部材46は、カバー部材18の溝20に挿入(収容)されたシール本体48を有しており、シール本体48は、ソリッドゴムからなる。ソリッドゴムを構成する加硫ゴムの例としては、例えば、EPDM、IR(イソプレンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、またはアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。
【0052】
シール本体48のシール内側(ドアホール16の内側)の部位には、第1保持リップ部50が形成されており、第1保持リップ部50は、その弾性力によってカバー部材18の溝20の内側内壁に圧接する。シール本体48のシール外側の部位には、第2保持リップ部52が形成されており、第2保持リップ部52は、その弾性力によってカバー部材18の溝20の外側内壁に圧する。これにより、シール本体48は、カバー部材18の溝20に安定した状態で保持される。
【0053】
シール本体48のシール本体28の車外側端部には、リップ部としてのシールリップ部54がドアホール16の外側(シール外側)に向かって突出して形成されている。シールリップ部54は、その弾性力によってドアインナーパネル14のドアホール16の周縁部に圧接する。また、シール本体48の一側端部である車外側端部からドアホール16に向かう部位にかけて、窪み部56が形成されている。
【0054】
(エッジシール部58)
シール本体48の窪み部56には、シール部としてのエッジシール部58が設けられており、エッジシール部58の一部は、カバー部材18の溝20に収容(挿入)されている。エッジシール部58は、スポンジゴムからなり、スポンジゴムを構成する加硫ゴムの例としては、例えば、EPDM、IR(イソプレンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、またはアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。エッジシール部58は、二重押出成形によってシール本体48と同時に成形してもよい。
【0055】
エッジシール部58は、その弾性力によってドアインナーパネル14のドアホール16の周縁部に圧接する。また、エッジシール部58は、その弾性力によってドアインナーパネル14のドアホール16の周縁部に圧接しながら、カバー部材18の溝20のドアホール側の周縁部(内側周縁部)に圧接するように構成されている。
【0056】
(作用効果)
続いて、実施形態2の作用効果について説明する。
【0057】
エッジシール部58がドアインナーパネル14のドアホール16の周縁部に圧接しながら、カバー部材18の溝20の内側周縁部に圧接すると共に、シールリップ部54がドアインナーパネル14のドアホール16の周縁部に圧接する。すると、エッジシール部58は、ドアインナーパネル14側およびカバー部材18側において、ドアホール16からドアインナーパネル14とカバー部材18との隙間に浸入した水を止水する。また、エッジシール部58およびシールリップ部54は、ドアインナーパネル14側において、ドアホール16からドアインナーパネル14とカバー部材18との隙間に浸入した雨水等の水を二重で止水する。これにより、ドアホール16から車内側への雨水等の水の浸入を防止することができる。
【0058】
また、前述のように、シール本体28のドアホール16側に向かう部位に窪み部56が形成され、シール本体28の窪み部56にスポンジゴムからなるエッジシール部58が設けられている。エッジシール部58の一部は、カバー部材18の溝20に収容されている。エッジシール部58は、ドアインナーパネル14のドアホール16の周縁部に圧接しながら、カバー部材18の溝20の内側周縁部に圧接するように構成されている。そのため、エッジシール部58の一部分がカバー部材18の溝20の曲率半径の小さい箇所の縁部に位置しても、エッジシール部58の一部分がカバー部材18から浮き上がることがない。カバー部材18の溝20の連結部22においてシール部材46の一端部と他端部が十分に密着する。
【0059】
従って、実施形態2によれば、エッジシール部58の止水性を高めて、シールカバー44のシール性能(シール部材46のシール性能)が向上する。
【0060】
〔他の実施態様〕
シール部材26(46)の構成をシールカバー10(44)以外の他のシール構造体に適用してもよい。他のシール構造体は、取付ベースの開口部からの流体の侵入、または取付ベースの開口部への流体の侵入を防止する。
【0061】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
10 シールカバー
12 ドア
14 ドアインナーパネル(取付ベース)
16 ドアホール(開口部)
18 カバー部材
22 連結部
24 中間壁
26 シール部材
28 シール本体
28c 中心線
30 第1保持リップ部
32 第2保持リップ部
34 第1シールリップ部(第1リップ部)
36 第2シールリップ部(第2リップ部)
38 第3シールリップ部(第3リップ部)
40 エッジシール部(シール部)
42 排水穴
44 シールカバー
46 シール部材
48 シール本体
50 第1保持リップ部
52 第2保持リップ部
54 シールリップ部(リップ部)
56 窪み部
58 エッジシール部(シール部)
【手続補正書】
【提出日】2022-06-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本願の明細書および特許請求の範囲において、圧接とは、圧力をもって接触することをいう。取付ベースとは、カバー部材の取付対象となる部材であり、ドアインナーパネルを含む意である。取付ベースの開口部とは、ドアインナーパネルの形成されたドアホールを含む意である。カバー部材の凹部とは、カバー部材の溝、カバー部材の段部を含む意である。シール外側とは、カバー部材と取付ベースとの間にシール部材が取付ベースの開口部を囲むように取付けられた状態において、取付ベースの開口部の外側に向かう側のこと、もしくはドアホールの反対側のことである。シール内側とは、取付ベースとカバー部材との間にシール部材が取付ベースの開口部を囲むように取付けられた状態において、取付ベースの開口部の内側に向かう側のこと、もしくはドアホール側のことである。図面中、「CE」は車外側、「CI」は車内側、「SE」はシール外側(ドアホールの反対側)、「SI」はシール内側(ドアホール側)、「U」は上側、「D」は下側をそれぞれ指している。