(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019079
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】延伸ベルトコンベヤにおけるベルト反転装置
(51)【国際特許分類】
B65G 21/14 20060101AFI20230202BHJP
B65G 23/44 20060101ALI20230202BHJP
E21D 9/12 20060101ALI20230202BHJP
E21F 13/08 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
B65G21/14 A
B65G23/44
E21D9/12 B
E21F13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123553
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594145297
【氏名又は名称】タグチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】西村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】前田 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】佐別當 法時
(72)【発明者】
【氏名】斑目 修平
【テーマコード(参考)】
2D054
3F025
【Fターム(参考)】
2D054DA02
2D054DA04
3F025AA04
(57)【要約】
【課題】作業環境の改善と部品の寿命を長くすることができ、メンテナンスや部材にかかる費用や手間を低減することができ、稼働率と作業効率の向上を図ることができる。
【解決手段】第1固定プーリー11は、キャリア上におけるベルト表面2Aが下方を向く姿勢でベルト2を支持し、第1傾斜ローラー12は、ベルト表面2Aが斜め下方を向き、かつベルト裏面2Bが斜め上方に向く姿勢でベルト2を支持し、垂直ローラー13は、ベルト表面2Aおよびベルト裏面2Bが水平方向を向く姿勢でベルト2を支持し、第2傾斜ローラー14は、ベルト表面2Aが斜め上方を向き、かつベルト裏面2Bが斜め上方を向く姿勢でベルト2を支持し、第2固定プーリー15は、ベルト表面2Aが上方を向き、かつベルト裏面2Bが下方を向く姿勢でベルト2を支持し、ベルト2は、これらの順に通過することでベルト軸回りの一方向に180°回転するベルト反転装置を提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸ベルトコンベヤのキャリア側のベルト表面に載せられて搬送される搬送物を放出する位置よりベルトの下流側に位置するリターン側に配置され、前記ベルトを上下反転させる延伸ベルトコンベヤにおけるベルト反転装置であって、
前記リターン側において上流側から下流側に向かう順に、第1固定プーリー、第1傾斜ローラー、垂直ローラー、第2傾斜ローラー、第2固定プーリーが設けられ、
前記第1固定プーリーは、前記キャリア側で移動する前記ベルトのベルト表面が下方を向き、かつベルト裏面が上方を向く姿勢で前記ベルトを支持し、
前記第1傾斜ローラーは、前記ベルト表面が斜め下方を向き、かつ前記ベルト裏面が斜め上方を向く姿勢で前記ベルトを支持し、
前記垂直ローラーは、前記ベルト表面および前記ベルト裏面がそれぞれ水平方向を向く姿勢で前記ベルトを支持し、
前記第2傾斜ローラーは、前記ベルト表面が斜め上方を向き、かつ前記ベルト裏面が斜め上方を向く姿勢で前記ベルトを支持し、
前記第2固定プーリーは、前記ベルト表面が上方を向き、かつ前記ベルト裏面が下方を向く姿勢で前記ベルトを支持し、
前記ベルトは、前記第1固定プーリー、前記第1傾斜ローラー、前記垂直ローラー、前記第2傾斜ローラー、前記第2固定プーリーの順に通過することでベルト軸回りの一方向に180°回転することを特徴とする延伸ベルトコンベヤにおけるベルト反転装置。
【請求項2】
前記第1傾斜ローラー及び前記第2傾斜ローラーのベルト傾斜角は、水平方向に対して45°であることを特徴とする請求項1に記載の延伸ベルトコンベヤにおけるベルト反転装置。
【請求項3】
前記延伸ベルトコンベヤの延長方向の端部には、前記延長方向に移動可能に設けられ、前記ベルトに所定の張力を付与する移動プーリーが設けられ、
前記移動プーリーには、
ベルト張力を計測する張力計測部と、前記張力計測部で計測したベルト張力値に基づいて前記移動プーリーを前記延長方向に移動させる張力調整部と、を有するベルト張力調整機構が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の延伸ベルトコンベヤにおけるベルト反転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延伸ベルトコンベヤにおけるベルト反転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、延伸ベルトコンベヤは、無端状に設けられるベルトがキャリア側及びリターン側に巻き回されて配置され、キャリア側に土砂を積載して搬送している。このような延伸ベルトコンベヤは、主に長距離や高速施工が求められるトンネル工事での採用されるケースがあり、トンネル延長の進捗に伴って延伸ベルトコンベヤの全長が延伸される(例えば、特許文献1参照)。そのため、延伸ベルトコンベヤには、固定式コンベヤとは異なり、施工中のベルト張力変化にも対応可能な機構や延伸用ベルトを収納する装置等が設けられている。
また、トンネル内に配置されベルトを支持するフレーム構造は、延伸可能で、かつ簡易的な構造とされ、ベルトから落下する土砂を受ける受け構造や防護構造を有していないのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなトンネル工事で採用される延伸ベルトコンベヤでは、キャリア側の搬送面(以下、ベルト表面)に土砂が積載される。そして、延伸ベルトコンベヤには、土砂搬送後にベルト表面に付着した土砂を洗い落とすためにベルト洗浄装置が設けられている。しかしながら、傷の有無、乾燥具合等のベルトの状態、土質、含水比、粘性、添加材の種類等の土砂の性状、あるいはベルト洗浄装置の整備状況(クリーナーや洗浄ノズルの調整)等の要因により、ベルトに付着した土砂をすべて取り除くことは困難であるのが現状である。
【0005】
そして、ベルトに土砂が付着していると、以下のような不具合を誘発することになる。
すなわち、キャリア側のベルト表面はリターン側で下向きとなってリターンローラーに接触することになる。そのため、ベルト表面に付着した土砂は、稼働時に接触するリターン側のローラー等に再付着し、乾燥とともに固化するという問題がある。また、ベルト表面に付着した土砂によりベルトとローラーとの接触状態が変化することになり、ベルトに蛇行が生じたり、ベルトやローラーの損傷や張力異常等が発生するという問題があった。
【0006】
さらに、ベルト表面に付着した土砂は、他の設備への付着だけではなく、乾燥や振動とともに、土砂や粉じんとして下部に落下する。とくにトンネル工事の場合には、ベルトコンベヤの下部で躯体の構築や二次製品の据付を並行して施工するケースが多く、ベルトから落下する土砂や粉じんによって作業効率が低下したり、製品の品質が低下するという問題があった。
【0007】
また、落鉱した土砂や粉じんは、施工の進捗と共にトンネル坑内に堆積し、施工車両の通行や施工環境の変化により、浮遊、拡散し、坑内環境の悪化を引き起こすことから、その点で改善の余地があった。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、作業環境の改善と部品の寿命を長くすることができ、メンテナンスや部材にかかる費用や手間を低減することができ、稼働率と作業効率の向上を図ることができる延伸ベルトコンベヤにおけるベルト反転装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る延伸ベルトコンベヤにおけるベルト反転装置は、延伸ベルトコンベヤのキャリア側のベルト表面に載せられて搬送される搬送物を放出する位置よりベルトの下流側に位置するリターン側に配置され、前記ベルトを上下反転させる延伸ベルトコンベヤにおけるベルト反転装置であって、前記リターン側において上流側から下流側に向かう順に、第1固定プーリー、第1傾斜ローラー、垂直ローラー、第2傾斜ローラー、第2固定プーリーが設けられ、前記第1固定プーリーは、前記キャリア側で移動する前記ベルトのベルト表面が下方を向き、かつベルト裏面が上方を向く姿勢で前記ベルトを支持し、前記第1傾斜ローラーは、前記ベルト表面が斜め下方を向き、かつ前記ベルト裏面が斜め上方を向く姿勢で前記ベルトを支持し、前記垂直ローラーは、前記ベルト表面および前記ベルト裏面がそれぞれ水平方向を向く姿勢で前記ベルトを支持し、前記第2傾斜ローラーは、前記ベルト表面が斜め上方を向き、かつ前記ベルト裏面が斜め上方を向く姿勢で前記ベルトを支持し、前記第2固定プーリーは、前記ベルト表面が上方を向き、かつ前記ベルト裏面が下方を向く姿勢で前記ベルトを支持し、前記ベルトは、前記第1固定プーリー、前記第1傾斜ローラー、前記垂直ローラー、前記第2傾斜ローラー、前記第2固定プーリーの順に通過することでベルト軸回りの一方向に180°回転することを特徴としている。
【0010】
本発明では、リターン側において、ベルトを上流側から下流側に向けて第1固定プーリー、第1傾斜ローラー、垂直ローラー、第2傾斜ローラー、第2固定プーリーベルトをその順で通過させることにより上下反転させることができる。すなわち、ベルトにおける搬送物が積載されるベルト表面がキャリア側のローラーのみでなく、リターン側のローラーにも接触することがなくなる。
このような構成により、例えば搬送物が土砂の場合に、リターン側を通過するベルトに付着した土砂がリターン側のローラーに接触することがなくなる。これにより、ローラーやベルトが損傷することを抑えることができ、これらローラーやベルトの部品の寿命を長く延ばすことができる。したがって、これらの部品の交換や修理にかかる頻度や手間といったメンテナンスに係る時間や費用を低減することができる。さらに、ベルトとローラー接触状態の変化を抑制できるので、ベルトの蛇行や張力異常等の発生を低く抑えることが可能となり、延伸ベルトコンベヤとしての稼働率と作業効率の向上を図ることができる。
【0011】
また、本発明では、ベルトのリターン側で土砂等が付着したベルト表面とローラーとの接触がなくなるので、ベルト表面に付着した土砂がベルト下方に落下することを防止できる。そのため、延伸ベルトコンベヤのベルトの下方で例えば躯体を構築する際に、落下防護シート等の設置を省略することが可能となるうえ、落下した土砂によって躯体の品質が低下するといった不具合を防ぐことができる。また、落下した土砂を清掃する作業を低減することができる。
さらに、本発明では、ベルト表面に付着した土砂の落下を抑制することにより、坑内に堆積する粉じんを軽減し、坑内環境の改善を図ることができる。
【0012】
また、本発明に係る延伸ベルトコンベヤにおけるベルト反転装置は、前記第1傾斜ローラー及び前記第2傾斜ローラーのベルト傾斜角は、水平方向に対して45°であることを特徴としてもよい。
【0013】
この場合には、ベルトを水平に配置する第1固定プーリー及び第2固定プーリーと、ベルトを垂直に配置する垂直ローラーとの間で、ベルト傾斜角が水平方向に対して45°となる第1傾斜ローラーと第2傾斜ローラーとが配置されることで、バランスよい姿勢で上下反転させることができる。
【0014】
また、本発明に係る延伸ベルトコンベヤにおけるベルト反転装置は、前記延伸ベルトコンベヤの延長方向の端部には、前記延長方向に移動可能に設けられ、前記ベルトに所定の張力を付与する移動プーリーが設けられ、前記移動プーリーには、ベルト張力を計測する張力計測部と、前記張力計測部で計測したベルト張力値に基づいて前記移動プーリーを前記延長方向に移動させる張力調整部と、を有するベルト張力調整機構が設けられていることを特徴としてもよい。
【0015】
この場合には、移動プーリーに設けられた張力計測部でベルト張力を計測し、張力計測部で計測したベルト張力値に基づいて張力調整部で移動プーリーをベルト延在方向に移動させることができる。これにより、トンネル延長の進行に伴って刻々と変化するベルトの張力を一定に保つことができ、ベルトの蛇行、垂れ、折れ等の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の延伸ベルトコンベヤにおけるベルト反転装置によれば、作業環境の改善と部品の寿命を長くすることができ、メンテナンスや部材にかかる費用や手間を低減することができ、稼働率と作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態による延伸ベルトコンベヤの全体概要を示す側面図である。
【
図2】
図1に示す延伸ベルトコンベヤにおけるベルト反転装置の構成を示す側面図である。
【
図3】トンネルに設置される延伸ベルトコンベヤの断面図である。
【
図5】ベルト反転装置で反転されるベルトの状態を示す図である。
【
図6】ベルト張力調整機構の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態による延伸ベルトコンベヤにおけるベルト反転装置について、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1乃至
図3に示すように、本実施形態の延伸ベルトコンベヤ1におけるベルト反転装置10は、NATM工法やTBM工法などによって施工されるトンネル工事の施工に採用される。本実施形態では、NATM工法に適用された例を用いて説明する。
ベルト反転装置10は、延伸ベルトコンベヤ1のキャリア側においてベルト2に載せられて搬送される土砂M(搬送物)を放出する位置よりベルト2の下流側でリターン側に配置され、ベルト2を上下反転させるものである。
【0020】
延伸ベルトコンベヤ1は、坑内の切羽付近で発生した掘削土砂等の搬送物(以下、土砂M)を坑外に効率よく搬出する搬送設備である。本実施形態の延伸ベルトコンベヤ1は、土砂Mの積載位置となるトンネルの切羽近傍から土砂Mの放出位置となる坑外まで連続的に配置されている。
【0021】
延伸ベルトコンベヤ1は、延伸方向をトンネル軸方向に向けて配置され、無端状のベルト2が掘進に伴って延伸方向に延伸される。延伸ベルトコンベヤ1は、延伸方向の一端(切羽側端部1B)が切羽の近傍において掘削進行に合わせて移動可能に設けられ、延伸方向の他端(坑外側端部1A)が坑外に配置される例えば坑外ずり仮置ヤード(図示省略)に固定されている。
図3に示すように、トンネル内を通過する延伸ベルトコンベヤ1のベルト2は、トンネルの側壁1aに支持されてトンネル断面の側方に配置されている。
【0022】
図1に示すように、延伸ベルトコンベヤ1の切羽側端部1Bには、従動プーリー32を備え、掘削に伴って切羽側に移動するテールピース台車33が設けられている。なお、NATM工法の場合には、テールピース台車33の切羽側に不図示のクラッシャーが配置される。クラッシャーは、テールピース台車33の移動とともに移動可能である。すなわち、クラッシャーで破砕された土砂Mがテールピース台車33に設けられるホッパーからベルト2上に積み込まれる。
また、延伸ベルトコンベヤ1は、テールピース台車33より坑口側におけるリターン側に第2反転装置10B(詳しくは後述する)が設置されている。
【0023】
延伸ベルトコンベヤ1の坑外側端部1Aには、ヘッドプーリー35、メインドライブ31、ベルトストレージ34、移動プーリー30、ベルト張力調整機構5、およびベルト反転装置10(10A)が設けられている。延伸ベルトコンベヤ1のベルト2は、坑外側端部1Aのヘッドプーリー35と切羽側端部1Bの従動プーリー32との間で掛け回されている。坑外側端部1Aにおいて、延伸ベルトコンベヤ1のリターン側には、メインドライブ31、ベルトストレージ34、移動プーリー30、第1反転装置10Aの設備がその順で配置されている。
【0024】
ベルトストレージ34内には複数のローラーが多段に配置され、これらローラーにベルト2が無端状に掛け回されている。リターン側においてメインドライブ31を通過したベルト2は、下流側がベルトストレージ34より引き出され、トンネル内を切羽側に向けて移動してテールピース台車33に設けた従動プーリー32に掛け回され、さらにキャリア側でトンネル内を坑外へ移動した後に坑外側端部1Aの移動プーリー30に掛け回されてベルト反転装置10を通過してベルトストレージ34内に戻される。メインドライブ31は、ベルト2に搬送駆動力を与える。
【0025】
延伸ベルトコンベヤ1には、上述したように、坑外側端部1Aにモータ駆動側となるメインドライブ31と、切羽側端部1Bのテールピース台車33に配置される従動プーリー32と、が設けられている。延伸ベルトコンベヤ1は、
図3に示すように、トンネルの側壁1aから支持され延在方向に間隔をあけて設けられた複数のローラーブラケット41に取り付けられているローラー42A、42Bよって移動可能に支持されている。これらローラーブラケット41は、ベルト2を坑外側に移動させるキャリアローラー42Aと、坑外のベルトストレージ34から引き出されて切羽側に移動させるリターンローラー42Bと、を支持するための支持部材である。
【0026】
切羽で掘削された土砂Mは、クラッシャーに投入されて適当な大きさに破砕され、テールピース台車33のホッパーを介して延伸ベルトコンベヤ1のベルト2上に投下される。そして、ベルト2上の土砂Mは、トンネル内を移送され、坑外の最終搬送先となる坑外ずり仮置ヤード(坑外側端部1A)まで搬送される。
【0027】
ここで、延伸ベルトコンベヤ1のキャリア側のベルト2で土砂Mが積載される上面をベルト表面2Aとし、その反対面で土砂Mが積載されない下方を向く下面をベルト裏面2Bとして、以下説明する。すなわち、移動プーリー30を通過した直後でベルト反転装置10までのリターン側のベルト2においては、ベルト表面2Aが下方を向き、ベルト裏面2Bが上方を向いている。
【0028】
図1に示すように、ベルト反転装置10は、坑外側端部1Aに配置される第1反転装置10Aと、切羽側端部1Bに配置される第2反転装置10Bと、を有している。ベルト反転装置10は、リターン側でベルト2を上下反転させるための装置であり、第1反転装置10Aでベルト表面2Aが上向きとなるように上下に180°反転させ、第2反転装置10Bでベルト表面2Aが下向きとなるようにさらに上下に180°反転させる。第1反転装置10Aと第2反転装置10Bとの間のベルト2は、ベルト表面2Aを上向きにして切羽側に移動する。つまり、本実施形態では、土砂Mを搬送するキャリア側のベルト面を一方(ベルト表面2A)のみとするために、第1反転装置10Aと第2反転装置10Bが設けられている。
【0029】
次に、ベルト反転装置10の構成について説明するが、第1反転装置10Aと第2反転装置10Bとは同一の構成であるので、第1反転装置10Aについて
図4及び
図5を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明において、ベルト2の向きを示す方向とは、ベルト表面2A及びベルト裏面2Bの面方向に直交する方向であって、ベルトが幅方向に湾曲している場合には、ベルト2の幅方向中心における直交方向と定義する。
図4及び
図5に示すように、ベルト反転装置10(10A)は、リターン側において上流側(ここでは坑外側)から下流側(ここでは切羽側)に向かう順で、第1固定プーリー11、第1傾斜ローラー12、垂直ローラー13、第2傾斜ローラー14、第2固定プーリー15が互いにベルト延在方向に間隔をあけて設けられている。
【0030】
第1固定プーリー11は、キャリア側で移動するベルト2のベルト表面2Aが下方を向き、かつベルト裏面2Bが上方を向く姿勢でベルト2を支持している。
【0031】
第1傾斜ローラー12は、ベルト表面2Aが斜め下方を向き、かつベルト裏面2Bが斜め上方を向く姿勢でベルト2を支持している。第1傾斜ローラー12で支持するベルト2の向き、すなわちベルト傾斜角は45°に設定されている。
【0032】
垂直ローラー13は、ベルト表面2A及びベルト裏面2Bがそれぞれ水平方向を向く姿勢でベルト2を支持している。すなわち、垂直ローラー13は、回転軸方向が上下方向となるように配置されている。
【0033】
第2傾斜ローラー14は、ベルト表面2Aが斜め上方を向き、かつベルト裏面2Bが斜め上方を向く姿勢でベルト2を支持している。第2傾斜ローラー14で支持するベルト2の向き、すなわちベルト傾斜角は45°に設定されている。
【0034】
第2固定プーリー15は、ベルト表面2Aが上方を向き、かつベルト裏面2Bが下方を向く姿勢でベルト2を支持している。
【0035】
図6に示すように、移動プーリー30には、ベルト2の張力を常時、監視することにより調整するベルト張力調整機構5が設けられている。ベルト張力調整機構5は、移動プーリー30を移動させる移動架台部50と、移動プーリー30を支持する架台本体501(後述する)に設けられベルト張力を計測する張力計測部51と、張力計測部51で計測したベルト張力値に基づいて移動プーリー30をベルト延在方向に移動させる張力調整部52と、を有している。
【0036】
張力計測部51としては、例えばロードセルが採用される。
移動架台部50は、移動プーリー30を回転可能に支持する架台本体501と、架台本体501をベルト延在方向に沿って移動させる案内レール502と、を備えている。架台本体501と張力調整部52の後述する伸縮シリンダ521との間には、張力計測部51が設けられ、この張力計測部51によって移動プーリー30に作用するベルト張力を計測される。架台本体501には、案内レール502上を転動する車輪501aが設けられている。
【0037】
張力調整部52は、移動プーリー30の後方(坑外側)に配置され、ベルト延在方向に伸縮する伸縮シリンダ521を備えている。伸縮シリンダ521の先端521aには、張力計測部51が設けられている。伸縮シリンダ521は、張力計測部51を介して架台本体501に固定されている。
ベルト張力調整機構5では、張力計測部51で計測されたベルト張力値に基づいて伸縮シリンダ521が伸縮すると、架台本体501が案内レール502に沿ってベルト延在方向に移動し、これによりベルト2の張力が調整される。
【0038】
上述した延伸ベルトコンベヤにおけるベルト反転装置10によってベルト2を反転させる動作について具体的に説明する。
図5及び
図6に示すように、移動プーリー30及び従動プーリー32(
図1参照)によって巻き回されたベルト2は、キャリア側からリターン側に移動したときにベルト反転装置10に進入する。そして、第1固定プーリー11においてキャリア上におけるベルト表面2Aが下方に向く姿勢となるように支持されたベルト2は、第1傾斜ローラー12に向かうに従い漸次、斜めになり、第1傾斜ローラー12においてベルト表面2Aが斜め45°下方、かつベルト裏面2Bが斜め45°上方に向く姿勢になる。
【0039】
その後、ベルト2は、垂直ローラー13において垂直となり、さらに第2傾斜ローラー14に向かうに従い漸次、上下反転する方向に斜めになり、第2傾斜ローラー14においてベルト表面2Aが斜め45°上方、かつベルト裏面2Bが斜め45°上方に向く姿勢になる。そして、第2固定プーリー15において、ベルト表面2Aが上方、ベルト裏面2Bが下方に向く姿勢になり、ベルト反転装置10を通過したベルト2はベルト反転装置10の通過前に対して上下に反転される。
【0040】
次に、上述した延伸ベルトコンベヤ1におけるベルト反転装置10の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
図4及び
図5に示すように、本実施形態による延伸ベルトコンベヤ1におけるベルト反転装置10では、リターン側において、ベルト2を上流側から下流側に向けて第1固定プーリー11、第1傾斜ローラー12、垂直ローラー13、第2傾斜ローラー14、第2固定プーリー15をその順で通過させることにより上下反転させることができる。すなわち、ベルト2における土砂Mが積載されるベルト表面2Aがキャリアローラー42Aのみでなく、リターンローラー42Bにも接触することがなくなる。
【0041】
このような構成により、リターン側を通過するベルト2に付着した土砂Mがリターンローラー42に接触することがなくなる。これにより、ローラーやベルト2が損傷することを抑えることができ、これらローラーやベルト2の部品の寿命を長く延ばすことができる。したがって、これらの部品の交換や修理にかかる頻度や手間といったメンテナンスに係る時間や費用を低減することができる。
さらに、ベルト2とローラー接触状態の変化を抑制できるので、ベルト2の蛇行や張力異常等の発生を低く抑えることが可能となり、延伸ベルトコンベヤ1としての稼働率と作業効率の向上を図ることができる。
【0042】
また、本実施形態では、ベルト2のリターン側で土砂M等が付着したベルト表面2Aとリターンローラー42との接触がなくなるので、ベルト表面2Aに付着した土砂Mがベルト2の下方に落下することを防止できる。そのため、延伸ベルトコンベヤ1のベルト2の下方で例えば躯体を構築する際に、落下防護シート等の設置を省略することが可能となるうえ、落下した土砂Mによって躯体の品質が低下するといった不具合を防ぐことができる。また、落下した土砂Mを清掃する作業を低減することができる。
さらに、本実施形態では、ベルト表面2Aに付着した土砂Mの落下を抑制することにより、坑内に堆積する粉じんを軽減し、坑内環境の改善を図ることができる。
【0043】
また、本実施形態では、ベルト2を水平に配置する第1固定プーリー11及び第2固定プーリー15と、ベルト2を垂直に配置する垂直ローラー13との間で、ベルト傾斜角が水平方向に対して45°となる第1傾斜ローラー12と第2傾斜ローラー14とが配置されることで、バランスよい姿勢で上下反転させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、移動プーリー30に設けられた張力計測部51でベルト張力を計測し、張力計測部51で計測したベルト張力値に基づいて張力調整部52で移動プーリー30をベルト延在方向に移動させることができる。
これにより、トンネル延長の進行に伴って刻々と変化するベルト2の張力を一定に保つことができ、ベルト2の蛇行、垂れ、折れ等の発生を防止することができる。
【0045】
上述のように本実施形態による延伸ベルトコンベヤ1におけるベルト反転装置10では、作業環境の改善と部品の寿命を長くすることができ、メンテナンスや部材にかかる費用や手間を低減することができ、稼働率と作業効率の向上を図ることができる。
【0046】
以上、本発明による延伸ベルトコンベヤにおけるベルト反転装置の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0047】
例えば、本実施形態では、ベルト反転装置10を備えた延伸ベルトコンベヤ1をトンネル工事に採用した一例を示しているが、トンネル工事に限定されることはなく、ダムや造成等の明かりの工事等に適用することが可能である。また、工事の仮設備に採用することに限定されず、例えば砕石工場や長距離の搬送を伴う生産設備など本設にも適用することができる。
【0048】
また、搬送物として、本実施形態ではトンネル内で掘削した土砂としているが、土砂であることに制限されることはない。例えば、生産工場で使用される材料や穀物などベルトで搬送可能な物であればよい。
【0049】
また、本実施形態では、ベルト反転装置10が一対(第1反転装置10A、第2反転装置10B)で設ける構成としているが、このような使用形態であることに限定されることはない。すなわち、本実施形態では、土砂を搬送するキャリア側のベルト面を一方(ベルト表面2A)のみとするために第1反転装置10Aと第2反転装置10Bとを設けているが、土砂の搬送面を交互に使用する場合には1つの反転装置のみを使用する構成であってもよい。
【0050】
また、上述した実施形態では、ベルト反転装置10において、第1傾斜ローラー12及び第2傾斜ローラー14のベルト傾斜角を水平方向に対して45°としているが、このようなベルト傾斜角であることに限定されることはない。
また、本実施形態では、第1傾斜ローラー12及び第2傾斜ローラー14がそれぞれ1つずつ配置された構成であるが、それぞれ複数設けられていても良い。
【0051】
また、本実施形態では、ベルト張力調整機構5を移動プーリー30に対して設けた構成としているが、ベルト張力を計測し、張力を調整する対象として移動プーリー30であることに限定されることはない。また、ベルト張力調整機構5の構成、位置も適宜変更可能であり、さらにベルト張力調整機構5を省略することも可能である。
【0052】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 延伸ベルトコンベヤ
2 ベルト
2A ベルト表面
2B ベルト裏面
5 ベルト張力調整機構
10 ベルト反転装置
10A 第1反転装置
10B 第2反転装置
11 第1固定プーリー
12 第1傾斜ローラー
13 垂直ローラー
14 第2傾斜ローラー
15 第2固定プーリー
30 移動プーリー
31 メインドライブ
32 従動プーリー
42A キャリアローラー
42B リターンローラー
51 張力計測部
52 張力調整部
M 土砂(搬送物)