(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019097
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】足裏用パッド
(51)【国際特許分類】
A61F 5/02 20060101AFI20230202BHJP
A43B 17/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
A61F5/02 N
A43B17/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123579
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】592178163
【氏名又は名称】三進興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 陽一
【テーマコード(参考)】
4C098
4F050
【Fターム(参考)】
4C098AA01
4C098BB11
4C098BC02
4C098BC34
4F050EA06
4F050HA56
4F050JA30
(57)【要約】
【課題】
足底筋の緊張と弛緩を補助する機能をより向上させた足裏用パッドを提供する。
【解決手段】
足裏の足底アーチを支える足裏用パッドであって、
足裏用パッドの上面は、足裏と接する平坦な面であり、かつ、下面は、足裏用パッドの長手方向に亘って山型形状に盛り上がるとともに、その盛り上がった頂部を通る頂上線から足裏用パッドの左右側縁に向けて夫々傾斜する部分を含む急傾斜の第一傾斜面と緩傾斜の第二傾斜面とを有し、そして、前記下面には、足裏用パッドの長手方向に延びる縦溝と足裏用パッドの幅方向に延びる横溝とが交差するように形成されていることを特徴とする、足裏用パッド。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足裏の足底アーチを支える足裏用パッドであって、
足裏用パッドの上面は、足裏と接する平坦な面であり、かつ、下面は、足裏用パッドの長手方向に亘って山型形状に盛り上がるとともに、その盛り上がった頂部を通る頂上線から足裏用パッドの左右側縁に向けて夫々傾斜する部分を含む急傾斜の第一傾斜面と緩傾斜の第二傾斜面とを有し、そして、前記下面には、足裏用パッドの長手方向に延びる縦溝と足裏用パッドの幅方向に延びる横溝とが交差するように形成されていることを特徴とする、足裏用パッド。
【請求項2】
前記山型形状の頂部を通る頂上線に前記縦溝を設けてなることを特徴とする、請求項1に記載の足裏用パッド。
【請求項3】
前記縦溝及び横溝が、垂直断面の形状が多角形の角溝若しくは垂直断面の形状が一部又は全体において弯曲線を有する形状の丸溝、又はこれらの組み合わせからなることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の足裏用パッド。
【請求項4】
前記溝の幅が1mm乃至5mmであり、溝深さが0.3mm乃至3mmであることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の足裏用パッド。
【請求項5】
前記足裏用パッドを構成する材料が粘弾性を有するものであることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載の足裏用パッド。
【請求項6】
前記材料の40℃における損失正接(tanδ)が0.2以上であることを特徴とする、請求項5に記載の足裏用パッド。
【請求項7】
前記足裏用パッドの硬度が30°乃至60°であることを特徴とする、請求項1乃至請求項6のうちいずれか一項に記載の足裏用パッド。
【請求項8】
足底部および該足底部に連なる足甲部を含む、伸縮性生地からなる略筒状の本体部と、該足底部に前記下面が接するように請求項1乃至請求項7のうちいずれか一項に記載の足裏用パッドを備えることを特徴とするサポーター。
【請求項9】
足底部及び該足底部に連なる左右の足甲部及び左右の該足甲部にそれぞれ取り付けられた係合可能な留具を含み、該留具の係合を解くことによって開放可能になっている本体部と、前記足底部に前記下面が接するように請求項1乃至請求項7のうちいずれか一項に記載の足裏用パッドを備えることを特徴とするサポーター。
【請求項10】
インソール本体部と、インソール本体部の裏面に前記上面が接するように請求項1乃至請求項7のうちいずれか一項に記載の足裏用パッドを備えることを特徴とするインソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サポーターやインソールなどに使用される足裏用パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの足は第二の心臓とも言われており、従来より、足の動きのサポート、足の運動性能の向上、足へのフィット性の向上、及び足に発生した問題の治療及び予防を目的とした足に装着する製品が多数開発されている。特に偏平足、ハイアーチによって引き起こされる足の問題は非常に報告が多く、その治療及び予防を目的とした足に装着する製品の開発が求められている。
例えば、特許文献1には、足裏の足底アーチを支えるパッドが記載されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のパッドは足裏の筋肉の緊張と弛緩を補助し、足底筋膜炎等の予防又は治療のために開発されたパッドである。しかしながら、特許文献1のパッドは、足裏の舟状骨に対応する部分に頂部を有しているため、足裏と接する足裏面に凹凸がある。ヒトの足裏の神経は非常に鋭敏であって、微細な凹凸も感じることができ、したがって、該パッドでは足当たりが悪く感じられる。
よって、足当たりが良好であるとともに、足底筋の緊張と弛緩を補助する機能がより向上した足裏用パッドの開発が求められている。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、足当たりが良好であるとともに、足底筋の緊張と弛緩を補助する機能をより向上させた足裏用パッドを提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、足当たりが良好であるとともに、足底筋の緊張と弛緩を補助する機能をより向上させた足裏用パッドを備えるサポーター及びインソールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題解決を目標に鋭意検討した結果、足裏と接する足裏用パッドの上面を平坦にするとともに、下面にパッドの長手方向に延びる縦溝とパッドの幅方向に延びる横溝とが交差するように溝を形成することで、下面がブロック状になり、荷重がかかった際に上下左右に衝撃が分散され、従来の溝無しの足裏用パッドと比べて足当たりがよりソフトになるとともに、パッドの変形量も大きいため、歩行時の追従性も溝無しの足裏用パッドよりも高まることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、
(1)足裏の足底アーチを支える足裏用パッドであって、
足裏用パッドの上面は、足裏と接する平坦な面であり、かつ、下面は、足裏用パッドの長手方向に亘って山型形状に盛り上がるとともに、その盛り上がった頂部を通る頂上線から足裏用パッドの左右側縁に向けて夫々傾斜する部分を含む急傾斜の第一傾斜面と緩傾斜の第二傾斜面とを有し、そして、前記下面には、足裏用パッドの長手方向に延びる縦溝と足
裏用パッドの幅方向に延びる横溝とが交差するように形成されていることを特徴とする、足裏用パッド、
(2)前記山型形状の頂部を通る頂上線に前記縦溝を設けてなることを特徴とする(1)に記載の足裏用パッド、
(3)前記縦溝及び横溝が、垂直断面の形状が多角形の角溝若しくは垂直断面の形状が一部又は全体において弯曲線を有する形状の丸溝、又はこれらの組み合わせからなることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の足裏用パッド、
(4)前記溝の幅が1mm乃至5mmであり、溝深さが0.3mm乃至3mmであることを特徴とする、(1)乃至(3)のうちいずれか一に記載の足裏用パッド、
(5)前記足裏用パッドを構成する材料が粘弾性を有するものであることを特徴とする、(1)乃至(4)のうちいずれか一に記載の足裏用パッド、
(6)前記材料の40℃における損失正接(tanδ)が0.2以上であることを特徴とする、(5)に記載の足裏用パッド、
(7)前記足裏用パッドの硬度が30°乃至60°であることを特徴とする、(1)乃至(6)のうちいずれか一に記載の足裏用パッド、
(8)足底部および該足底部に連なる足甲部を含む、伸縮性生地からなる略筒状の本体部と、該足底部に前記下面が接するように(1)乃至(7)のうちいずれか一に記載の足裏用パッドを備えることを特徴とするサポーター、
(9)足底部及び該足底部に連なる左右の足甲部及び左右の該足甲部にそれぞれ取り付けられた係合可能な留具を含み、該留具の係合を解くことによって開放可能になっている本体部と、前記足底部に前記下面が接するように(1)乃至(7)のうちいずれか一に記載の足裏用パッドを備えることを特徴とするサポーター、
(10)インソール本体部と、インソール本体部の裏面に前記上面が接するように(1)乃至(7)のうちいずれか一に記載の足裏用パッドを備えることを特徴とするインソールである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の足裏用パッドは、足底筋の緊張と弛緩を補助する機能を従来の溝無しの足裏用パッドよりも向上させることができる。したがって、本発明の足裏用パッドを備えたサポーターやインソールは、偏平足及びハイアーチによる痛みをより緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は、本発明の実施形態1に係る足裏用パッド1を示す底面図であり、(b)は、(a)に示されるパッドのA-A’断面図であり、(c)は、本発明の実施形態1に係る足裏用パッド1を示す斜視図である。
【
図2】(a)は、本発明の実施形態2に係る足裏用パッド1を示す底面図であり、(b)は、本発明の実施形態3に係る足裏用パッド1を示す底面図であり、(c)は、本発明の実施形態4に係る足裏用パッド1を示す底面図であり、(d)本発明の実施形態5に係る足裏用パッド1を示す底面図である。
【
図3】縦溝及び横溝の形状((a)三角形、(b)四角形、(c)五角形、(d)六角形及び(e)半円形)を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態6に係るサポーター11を足(右足)に装着した状態を示す側面図である。
【
図5】本発明の実施形態7に係るサポーター11を示す平面図である。
【
図6】本発明の実施形態8に係るインソール18の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の足裏用パッド1は、例えば
図1に示すように、足裏用パッド1の上面2は、足裏と接する平坦な面であり、かつ、下面3は、足裏用パッド1の長手方向に亘って山型形状に盛り上がるとともに、その盛り上がった頂部4を通る頂上線5から足裏用パッド1の
左右側縁6に向けて夫々傾斜する部分を含む急傾斜の第一傾斜面7と緩傾斜の第二傾斜面8とを有し、そして、上記下面3には、足裏用パッド1の長手方向に延びる縦溝9と足裏用パッド1の幅方向に延びる横溝10とが交差するように形成されている。
足裏用パッド1は、足の土踏まず部分に合わせて使用されるものであり、その大きさは、長さ方向80mm乃至110mm、幅方向40mm乃至60mm、最大厚み7mm乃至11mm程度であって、
図1に示すような半円形状又は半楕円形状である。
なお、本発明において、足裏用パッド1の上面2とは、足裏に接する面のことをであり、下面3とは、前記上面とは反対側の面であって、床や靴中底側に接する面のことをいう。
【0012】
本発明の足裏用パッド1は、
図1(b)においても示されるが、足裏と接する上面2が平坦になっていることで足当たりを従来のパッドよりも良好にすることができる。
【0013】
また、足裏用パッド1の下面3は、足裏用パッド1の長手方向に亘って山型形状に盛り上がるとともに、その盛り上がった頂部4を通る頂上線5からパッドの左右側縁6に向けて夫々傾斜する部分を含む急傾斜の第一傾斜面7と緩傾斜の第二傾斜面8とを有する。
急傾斜の第一傾斜面7と緩傾斜の第二傾斜面8は傾斜する部分以外に例えば平坦部分を含んでもよい。また、第一傾斜面7の傾斜する部分の傾斜角度は30度乃至40度程度であって、緩傾斜の第二傾斜面8の傾斜する部分の傾斜角度は10度乃至20度程度である。上記傾斜する部分の傾斜角度は一定でなくともかまわない。したがって、傾斜する部分は二つ以上の傾斜角度からなる傾斜面からなってもよい。したがって、例えば、第一傾斜面7は、35度の傾斜角度を有する傾斜する部分と、30度の傾斜角度を有する傾斜する部分と平坦部分を有してもかまわない。同様に、例えば、第二傾斜面8は、15度の傾斜角度を有する傾斜する部分と、10度の傾斜角度を有する傾斜する部分と平坦部分を有してもかまわない。頂上線5から足裏用パッド1の左右側縁6に向けて夫々傾斜する部分を含む急傾斜の第一傾斜面7と緩傾斜の第二傾斜面8とを有することは、足裏用パッド1を足裏に圧着した際、足の幅方向における足の内側のパッドの不要な変形を少なくすることに寄与する。
【0014】
足裏用パッド1の下面3が山型形状に盛り上がっているために、荷重がかかった際には足裏用パッド1は、足底アーチの降下防止のために特に重要な舟状骨を支えるように上面側に盛り上がるように変形することが可能となる。その変形量は、縦溝9及び横溝10が設けられたことによって従来のパッドよりも大幅に増え、したがって、舟状骨を支えるように上面側に盛り上がるような変形に加えて、足裏用パッド1の下面3が床あるいは靴中底にも合うように変形する変形量も増加する。したがって、足裏用パッド1の使用者は、安定性や衝撃吸収性等の足底筋の緊張と弛緩を補助する機能が従来のパッドよりも向上していることを実感するとともに足へのフィット感の向上及び歩行時の追従性等の向上も感じることができる。
足裏用パッド1の下面3は、山型形状に盛り上がっているために、荷重がかかると上記のように素早く変形し、足裏の形状にフィットする。したがって、荷重がかからない状態においては、足裏と接する上面2は平坦であって、足当たりがよく、違和感なく装着することができ、荷重がかかるとすみやかに上記のように変形して、舟状骨を適切に支えることができ、従来のパッドの欠点が克服されている。したがって、頂上線5が、舟状骨粗面に沿うように配置されるように足裏用パッド1を足裏に設けることが好ましい。
【0015】
図1及び
図2に示すように、足裏用パッド1の長手方向に延びる縦溝9と足裏用パッド1の幅方向に延びる横溝10とが交差するように形成されていれば、該縦溝9と該横溝10の本数は特に限定されない。例えば、
図1(a)の足裏用パッド1は、頂上線5に設けられた1本の縦溝9を含む合計2本の縦溝9とそれに交差するように設けられた合計3本の横溝10を備える。また、
図2(a)の足裏用パッド1のように縦溝9及び横溝10の
本数を増やし、頂上線5上の1本の縦溝9を含む合計3本の縦溝9とそれに交差するように合計5本の横溝10を設けてもよい。また、
図2(b)の足裏用パッド1のように縦溝9及び横溝10の本数を減らし、頂上線5上の1本の縦溝9とそれに交差するように1本の横溝10を設けてもよい。また、
図2(c)の足裏用パッド1のように必ずしも頂上線5上に縦溝9を設ける必要はない。また、
図2(d)の足裏用パッド1のように、左右側縁6に縦溝9及び横溝10が必ずしも繋がる必要はない。
【0016】
本発明の足裏用パッド1の山型形状の頂部4を通る頂上線5に縦溝9を設けることが好ましい。最も荷重がかかるのが頂上線5の位置であり、頂上線5に縦溝9を有することでより安定感が増す。
また、頂上線5に縦溝9を有することでより靴を履いた時のフィット感が増す。
【0017】
縦溝9と横溝10を交差するように設けて下面3をブロック状にできれば本発明の効果は奏するが、縦溝9と横溝10の好ましい本数は、使用者の体重(足裏への荷重)によって適宜変化する。例えば、一般的な成人期の男性の場合は、縦溝9と横溝10がそれぞれ一本あれば、足裏用パッド1の変形量が適当なものとなり、本発明の効果が十分発現する。一方で、一般的な老年期の女性においては、縦溝9と横溝10は、合わせて3本以上あった方が好ましく、かつ頂上線5に縦溝9を設けてあった方がより好ましい。
したがって、機能性、加工性及び万人に対する汎用性の観点から
図1(a)の足裏用パッド1のように頂上線5上に1本の縦溝9を含む合計2本の縦溝9とそれに交差するように合計3本の横溝10を設けることが望ましい。
【0018】
前記縦溝9及び横溝10が、垂直断面の形状が多角形の角溝若しくは垂直断面の形状が一部又は全体において弯曲線を有する形状の丸溝、又はこれらの組み合わせからなることが好ましい。したがって、例えば、縦溝9の全てが角溝であり、横溝10の全てが丸溝であってもよく、縦溝9の全てが丸溝であり、横溝10の全てが角溝であってもよい。また、縦溝9及び横溝10にそれぞれ角溝及び丸溝が混在していてもよい。また、垂直断面の形状が一部又は全体において弯曲線を有する形状の丸溝には、例えばU字溝も含まれる。
【0019】
前記角溝の垂直断面の形状は、例えば、
図3に示すように三角形、四角形、五角形若しくは六角形であることが加工性の観点からより好ましい。また、前記丸溝の垂直断面の形状は、例えば、
図3に示すように半円形であることが加工性の観点からより好ましい。
前記溝の垂直断面の形状は、変形性の観点からは荷重がかかった際に際にブロック同士がつながりにくく、かつ溝自体の形状がより平坦になれるものが好ましい。したがって、前記溝の垂直断面の形状は、加工性及び変形性の観点から三角形であることが望ましい。
【0020】
本発明の足裏用パッド1に設けられる縦溝9及び横溝10の幅は、一般的な成人の足のサイズに合わせて作製された足裏用パッド1の大きさであれば、好ましくは、1mm乃至5mmであり、より好ましくは、1mm乃至4mmであり、さらに好ましくは1mm乃至3mmである。ただし、溝の幅は、荷重がかかった際に、縦溝9及び横溝10で形成されるブロック同士がつながり一体化してしまう程度に細くなるようなことがなければその好適な幅の太さは変化し得る。
【0021】
本発明の足裏用パッド1に設けられる縦溝9及び横溝10の溝深さは、一般的な成人の足のサイズに合わせて作製された足裏用パッド1の大きさであれば、好ましくは0.3mm乃至3mmであり、より好ましくは、0.3mm乃至2mmであり、さらに好ましくは0.3mm乃至1mmである。溝深さが3mm以上であると、一般的な成人の足のサイズに合わせて作製された足裏用パッド1の場合には適度な硬さがなくなる虞がある。
【0022】
本発明の足裏用パッド1を構成する材料は、粘弾性を有するものが好ましい。そのよう
な材料としては、例えば、エーテル系ポリウレタン樹脂及びエステル系ポリウレタン樹脂等のポリウレタン樹脂を挙げることができるがこれに限定されない。より具体的には、エーテル系ポリウレタン樹脂が望ましい。
【0023】
また、上記材料としては、40℃における損失正接(tanδ)が0.2以上であることがより好ましい。
粘弾性を有し、損失正接(tanδ)が0.2以上の衝撃吸収性のよい材料ほど、溝を有する効果が顕著に現れる。
【0024】
本発明の足裏用パッド1の硬度は、ショア00基準(ショアゼロゼロ基準)にて30°乃至60°であることが好ましい。上記硬度は、デュロメータで測定することで決定される。
足裏用パッド1の硬度が30°未満であると衝撃吸収性に劣る虞があり、また、60°を超えると、硬く感じられて足当たりが悪化する虞がある。
【0025】
本発明の足裏用パッド1は、溝を設けることで、足裏用パッド1の変形量が増す。したがって、後述する実施例においても示すが、同じ硬度において溝の有る足裏用パッド1と溝の無い足裏用パッドで比較すると、溝の有る足裏用パッド1のほうが柔らかく感じられる。一般に硬度が高いほうが、安定感があるため、溝の有る足裏用パッド1の場合、安定でありながらソフトで、しかも衝撃吸収性に優れるものとなっている。
【0026】
本発明は、また、
図4に示すような足底部12および該足底部12に連なる足甲部13を含む、伸縮性生地からなる略筒状の本体部14と、該足底部12に前記下面3が接するように足裏用パッド1を備えるサポーター11に関する。
【0027】
足底部12に本発明の足裏用パッド1を取着ける方法としては、接着剤による方法や、足底部12と足裏用パッド1の寸法よりも大の補助布との間に足裏用パッド1を設置し、足底部12と補助布を縫い合わせる方法が挙げられる。なお、熱融着性を有する補助布を用いれば、縫製ではなく、該熱誘着性を利用して足底部12と補助布を固定することも可能である。
【0028】
上記サポーター11の本体部を構成する伸縮性生地は、伸縮性があることに加えて、通気性及び吸湿性が良好なものが好ましい。そのような伸縮性生地としては、例えば、綿、麻、毛及び絹などの天然繊維、またはポリエステル、ナイロン、レーヨン及びアクリル等の化学繊維が挙げられるがこれらに限定されない。
【0029】
本発明はまた、
図5に示すような足底部及び該足底部に連なる左右の足甲部及び左右の該足甲部にそれぞれ取り付けられた係合可能な留具16を含み、該留具16の係合を解くことによって開放可能になっている本体部15と、前記足底部3に前記下面3が接するように本発明の足裏用パッド1を備えるサポーター11に関する。
【0030】
上記サポーター11の留具16は、係合可能であれば特に限定されない。そのような留具16としては、例えば、点ファスナー及び面ファスナー等が挙げられるがこれらに限定されない。より具体的には、足の周方向に締め付ける強さを調整可能にする観点からベルクロ(登録商標)やマジックテープ(登録商標)が望ましいが、それ以外のものでもよい。
【0031】
本発明は、また、
図6に示すような本発明の足裏用パッド1をインソール本体部17の裏面に取着けてなるインソール18に関する。このとき、インソール本体部17の裏面に足裏用パッド1の上面2が接するように備える。
インソール本体部17としては、その裏面に本発明の足裏用パッド1が取着けられるようなものであれば従来公知のいずれのものでも使用できる。
【0032】
本発明の足裏用パッド1は、上面2が足裏と接する面であり、下面3が前記上面とは反対側の面であって、床や靴中底側に接する面であるが、上面2と下面3を逆にして使用することを妨げるものではなく、使用者の好みに応じて使用可能である。
【実施例0033】
以下に本発明の実施例を示し、さらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
実施例1乃至実施例3で使用した足裏用パッド1及び比較例1乃至比較例3で使用した足裏用パッドは、長さ方向が94mm、幅方向が51mm、最大厚みが8.8mmの
図1に示す形状のものである。
【0034】
[実施例1]
実施例1の足裏用パッド1は、ショア00基準にて40°のエーテル系ポリウレタン樹脂からなり、損失正接(tanδ)は0.65である。下面3には頂上線5に設けられた1本の縦溝9を含む合計2本の縦溝9とそれに交差するように設けられた合計3本の横溝10を備える。なお、各溝の幅は3mm、溝の深さは1mmであり、溝の垂直断面の形状は三角形である。
【0035】
[実施例2]
実施例2の足裏用パッド1は、ショア00基準にて50°のエーテル系ポリウレタン樹脂からなり、損失正接(tanδ)は0.52である。下面3には頂上線5に設けられた1本の縦溝9を含む合計2本の縦溝9とそれに交差するように設けられた合計3本の横溝10を備える。なお、各溝の幅は3mm、溝の深さは1mmであり、溝の垂直断面の形状は三角形である。
【0036】
[実施例3]
実施例3の足裏用パッド1は、ショア00基準にて60°のエーテル系ポリウレタン樹脂からなり、損失正接(tanδ)は0.42である。下面3には頂上線5に設けられた1本の縦溝9を含む合計2本の縦溝9とそれに交差するように設けられた合計3本の横溝10を備える。なお、各溝の幅は3mm、溝の深さは1mmであり、溝の垂直断面の形状は三角形である。
【0037】
[比較例1乃至比較例3]
比較例1乃至比較例3の足裏用パッドは、ショア00基準にてそれぞれ40°、50°及び60°のエーテル系ポリウレタン樹脂からなり、下面3に、縦溝9及び横溝10を備えていない点以外は実施例1乃至実施例3の足裏用パッド1と同様の形状である。
【0038】
(衝撃吸収性評価)
衝撃吸収性評価の測定方法は、重錘落下方式でそれぞれ実施例1乃至実施例3の足裏用パッド1及び比較例1乃至比較例3の足裏用パッドに40cmの高さから重錘荷重100gを落下させ、足裏用パッドと合板を介した合板裏面センサーによる加速度測定を行った。測定は各サンプルごとに5回行い、平均値を加速度の値とした。上記した実施例1乃至実施例3の足裏用パッド1及び比較例1乃至比較例3の足裏用パッドの加速度の値を表1に示す。
【0039】
【0040】
表1に示すように、実施例1乃至実施例3の足裏用パッド1の方が、比較例1乃至比較例3の足裏用パッドに比べて加速度の値が低く、振動(衝撃)が小さいとの結果が得られた。各硬度別(ショア00):40°、50°及び60°に於いても同様の結果であったことから、製品硬度に関係なく、「溝有り」の実施例の足裏用パッド1の方が「溝無し」の比較例の足裏用パッドよりも衝撃吸収性に優れていることが分かる。
【0041】
[実施例4]
実施例4のサポーター11は、
図4に示すように足底部12および該足底部12に連なる足甲部13を含む、ナイロンを含む伸縮性生地からなる略筒状の本体部14と、該足底部12に下面3が接するように取着けられた実施例1の足裏用パッドを備える。
【0042】
[比較例4]
比較例4のサポーターは、足底部12および該足底部12に連なる足甲部13を含む、ナイロンを含む伸縮性生地からなる略筒状の本体部14と、該足底部12に靴底中面3が接するように取着けられた比較例1の足裏用パッドを備える。
【0043】
(官能評価)
実施例4及び比較例4のサポーターの履き心地を以下の方法で評価した。サポーターの履き心地については、<フィット感>、<足底への感触>、<クッション性>、<安定性>、<土踏まずの衝撃吸収性>及び<歩行時の追従性>の観点から評価し、<総合評価>として実施例4のサポーター11及び比較例4のサポーターのどちらが優れているか決定した。<フィット感>とは、サポーターを履いた際に足になじむかどうか否かである。<足底への感触>とは、サポーターを履いた際に足底を圧迫するような違和感があるか否かである。<クッション性>とは、サポーターを履いた状態で起立し、その際に足裏用パッドが足底にかかる負担を分散しているか否かである。<安定性>とは、サポーターを履いた状態で起立し、その際のバランスが良いか否かである。<土踏まずの衝撃吸収性>とは、サポーターを履いた状態で歩行し、その際に足裏用パッドが土踏まずににかかる衝撃を緩和しているか否かである。<歩行時の追従性>とは、サポーターを履いた状態で歩行し、その際に足裏用パッドが変形して足への食い付きがあるか否かである。
より具体的には、以下の方法を採用して評価を行った。まず、実施例4のサポーター11及び比較例4のサポーターを成人男女6人(うち2名は足底のトラブル及び偏平足のトラブルを持っている。)の被験者に履かせ、<フィット感>、<足底への感触>、<クッション性>、<安定性>、<土踏まずの衝撃吸収性>及び<歩行時の追従性>を4段階のどの段階に相当するか評価させた。そして、各人に<総合評価>として実施例4のサポー
ター11及び比較例4のサポーターのどちらが優れているか決定させた。なお、各人のサポーターの装着時間については、2人が1時間乃至3時間装着し、1人が3時間乃至5時間装着し、2人が5時間乃至7時間装着し、1人が7時間乃至9時間装着した。
各項目の4段階の内訳は、<フィット感>は、(十分ある、ややある、どちらともいえない、無い)、<足底への感触>は、(違和感が無い、やや違和感がある、違和感がある、大いに違和感がある)、<クッション性>は、(感じる、やや感じる、どちらともいえない、無い)、<安定性>は、(十分ある、ややある、どちらともいえない、無い)、<土踏まずの衝撃吸収性>は、(ある、ややある、どちらともいえない、無い)、<歩行時の追従性>は、(ある、ややある、どちらともいえない、無い)である。
【0044】
【0045】
表2に示すように、実施例4のサポーター11と比較例4のサポーターを比較するといずれの項目においても実施例4のサポーター11の方が優れており、したがって、「溝有り」の実施例4のサポーター11の方が「溝無し」の比較例4のサポーターよりも優れるとの結果が得られた。