(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019130
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ハトメ状部品
(51)【国際特許分類】
A44B 99/00 20100101AFI20230202BHJP
【FI】
A44B99/00 611F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123621
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】504100525
【氏名又は名称】株式会社サンワ
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤松 隼平
(72)【発明者】
【氏名】大矢 大志
(57)【要約】
【課題】工具を用いずに装着することができるハトメ状部品であって、装着しやすく、かつ係止後脱落しにくいハトメ状部品を提供する。
【解決手段】中空であるか中実であるかを問わない円筒本体0110と、円筒本体の上部にせり出した自身を付着する対象である付着部材に係止するための庇状部0120とからなるハトメ状部品0100であって、円筒本体下部には、円筒本体に基部を固定するとともに、前記付着部材に円筒本体が押し込まれて挿通する際に、前記付着部材から加えられる円筒本体側面に対する押圧力によって前記基部を起点として円筒本体外面側に沿うように変位するとともに、前記力から解放された場合に再び円筒本体外面から離間するように前記基部を起点として変位するかえし板からなるかえし0112を備えたハトメ状部品を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空であるか中実であるかを問わない円筒本体と、円筒本体の上部にせり出した自身を付着する対象である付着部材に係止するための庇状部とからなるハトメ状部品であって、
円筒本体下部には、円筒本体に基部を固定するとともに、前記付着部材に円筒本体が押し込まれて挿通する際に、前記付着部材から加えられる円筒本体側面に対する押圧力によって前記基部を起点として円筒本体外面側に沿うように変位するとともに、前記力から解放された場合に再び円筒本体外面から離間するように前記基部を起点として変位するかえし板からなるかえしを備えたハトメ状部品。
【請求項2】
少なくとも前記かえしは、プラスチック材料で構成されている請求項1に記載のハトメ状部品。
【請求項3】
円筒本体外表面は、前記かえしが円筒本体外表面に沿う領域の少なくとも一部にそのかえしを迎えるためのかえし迎溝が構成されている請求項1又は請求項2に記載のハトメ状部品。
【請求項4】
前記かえしは、円筒本体外周の全周のうちの一部にのみ固定されている請求項1から請求項3のいずれか一に記載のハトメ状部品。
【請求項5】
前記かえしは、基部の円筒本体固定長よりも先端縁部長の方が長く構成されている請求項1から請求項4のいずれか一に記載のハトメ状部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象部材の穴に付着させて当該対象部材を係止するためなどに用いるハトメ状部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ハトメは、一般に、紙、衣類、靴などの対象部材の穴に付着させて、対象部材を補強したり、穴に通す紐を保護したりするための金属製、樹脂製などの環状部材をいうが、これ以外にも、例えば、プラスチック製などの装飾板を複数枚重ねて係止するといった用途にも用いられる。
【0003】
ハトメには、ハトメパンチなどの工具を用いて付着させるもののほか、工具を用いずに手で押し込むだけで装着することができるものも知られている。例えば、特許文献1には、時計の文字盤などに用いられるエレクトロルミネセンス板を係止するためのハトメであって、円板状の頭部と、先端に係止爪を備えた複数の細長い弾性脚部とを有し、当該エレクトロルミネセンス板に穿たれた穴を貫通させると通過時にいったん圧縮された弾性脚が元の形に広がって同板などを係止することができるようにしたものが開示されている(特許文献1、特に第4図参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1において開示されたハトメ部材は、複数の細長い脚部が頭部の付け根を起点として大きく変形可能なため、係止後に脚部先端の係止爪に穴の中心部に向けた力が加わることなどにより脱落しやすいといった問題があった。
【0006】
なお、以上では、もっぱらハトメ、すなわち環状(中空)の部材について述べたが、同様の課題は、ハトメと同様に対象部材の穴に付着させて当該対象部材を補強するための部材であって、紐を通す必要がないため環状でなく中実に形成されたものについても同様に当てはまる。そこで、本明細書においては、中空(環状)であるか中実であるかを問わず、対象部材の穴に付着させて当該対象部材補強するための円筒状の部材を「ハトメ状部品」と称し、これらに共通する課題を解決するための手段として本発明を提供する。
【0007】
本発明は、以上の課題に鑑みたものである。すなわち、本発明の解決すべき課題は、工具を用いずに装着することができるハトメ状部品であって、装着しやすく、かつ係止後脱落しにくいハトメ状部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、本発明のうち、第一の発明は、中空であるか中実であるかを問わない円筒本体と、円筒本体の上部にせり出した自身を付着する対象である付着部材に係止するための庇状部とからなるハトメ状部品であって、円筒本体下部には、円筒本体に基部を固定するとともに、前記付着部材に円筒本体が押し込まれて挿通する際に、前記付着部材から加えられる円筒本体側面に対する押圧力によって前記基部を起点として円筒本体外面側に沿うように変位するとともに、前記力から解放された場合に再び円筒本体外面から離間するように前記基部を起点として変位するかえし板からなるかえしを備えたハトメ状部品を提供する。
【0009】
また、第二の発明は、第一の発明を基礎として、少なくとも前記かえしは、プラスチック材料で構成されているハトメ状部品を提供する。
【0010】
また、第三の発明は、第一又は第二の発明を基礎として、円筒本体外表面は、前記かえしが円筒本体外表面に沿う領域の少なくとも一部にそのかえしを迎えるためのかえし迎溝が構成されているハトメ状部品を提供する。
【0011】
また、第四の発明は、第一から第三のいずれか一の発明を基礎として、前記かえしは、円筒本体外周の全周のうちの一部にのみ固定されているハトメ状部品を提供する。
【0012】
また、第五の発明は、第一から第四のいずれか一の発明を基礎として、前記かえしは、基部の円筒本体固定長よりも先端縁部長の方が長く構成されているハトメ状部品を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、工具を用いずに装着することができるハトメ状部品であって、装着しやすく、かつ係止後脱落しにくいハトメ状部品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態1のハトメ状部品の外観の一例を示す図
【
図2】実施形態1のハトメ状部品の使用状態の一例を示す図
【
図3】実施形態1のハトメ状部品の外観の一例を示す図
【
図4】実施形態1のかえしの構成について詳細に説明するための図
【
図5】円筒本体が付着部材から脱落しにくい構成について説明するための図
【
図6】かえし迎溝が円筒本体外表面に沿う領域に構成されていることを示すための図
【
図7】実施形態4におけるかえしの構成について説明するための図
【
図8】実施形態1にかかるハトメ状部品の製造方法の一例を示すフロー図
【符号の説明】
【0015】
0100 ハトメ状部品
0110 円筒本体
0111 穴
0112 かえし
0113 基部
0114 かえし迎溝
0120 庇状部
0121 円弧状の穴
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を説明する。実施形態と請求項の相互の関係は以下のとおりである。実施形態1は主に請求項1、請求項2などに関し、実施形態2は主に請求項3などに関し、実施形態3は主に請求項4などに関し、実施形態4は主に請求項5などに関する。なお、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
<実施形態1>
【0017】
<実施形態1:概要>
実施形態1は主に請求項1、請求項2などに関する。
本実施形態のハトメ状部品は、円筒本体の下部に特殊なかえしを備えたことを特徴とする。このかえしは、基部が円筒本体に固定され、この基部を起点として円筒本体が付着部材を挿通する際には付着部材からの押圧力によって円筒本体外面側に沿うように変位し、円筒本体下部が挿通後に押圧力から解放された場合には再び円筒本体外面から離間するように変位するかえし板からなる。
【0018】
<実施形態1:構成>
(全般)
図1は、本実施形態のハトメ状部品の外観の一例を示す図である。このうち、(a)は、斜視図であり、(b)は、(a)のX-X断面図である。本図に示すように、ハトメ状部品0100は、円筒本体0110と、庇状部0120とからなる。(b)において、薄墨で示した部分がハトメ状部品の断面形状である。右側の吹出し円内に示したものは、このうちかえし0112及びその近傍の拡大図である。
【0019】
ハトメ状部品の素材は、適度の弾性を有するものが望ましく、例えばナイロン(登録商標)などのプラスチックが用いられる。なかでも、ナイロン(登録商標)は、弾力性及び復元性に優れていることから好適な素材である。特に、後述のように、かえしは押圧により変位するとともに押圧からの解放により元の状態に復元するように構成されることから、少なくとも、かえしにはナイロン(登録商標)を用いることが極めて望ましい。また、ハトメ状部品の素材は、例えば銅などの弾性金属であってもよい。
【0020】
図2は、本実施形態のハトメ状部品の使用状態の一例を示す。本図の例は、ハトメ状部品0200が、デザインを施した複数(本図の例では3枚)のプラスチック製の装飾版0230のそれぞれに設けられた穴に装着されてこれら複数の板を回動可能に保持するものである。例えば、透明の各板にこれらデザインを施すことにより、(a)に示すように各板を重ねた状態で現れるデザインと、(b)に示すように各板を回動させることによりそれぞれの板に施されたデザインの両方を楽しむことができる。
(円筒本体)
円筒本体は、ハトメ状部品の本体部分をなす円筒形状の部分であり、付着部材に設けられた穴に挿通される部分である。なお、付着部材とは、ハトメ状部品を付着させる対象である部材をいい、例えば靴、衣類、紙や、プラスチック製の装飾版などである。
【0021】
円筒本体は、中空であるか中実であるかを問わない。
図1に示した例は、円筒本体が中空である例である。この場合、円筒本体の中心に穿たれた穴0111に紐を通すことができる。
【0022】
図3は、本実施形態のハトメ状部品の外観の別の一例を示す図であって、円筒本体0310が中実である例を示したものである。かかる構造のハトメ状部品は、付着部材の穴に紐を通す必要のない場合に用いられる。
【0023】
(円筒本体:かえし)
図1に戻り、円筒本体下部には、かえし板からなるかえし0112が備えられる。かえし板は、円筒本体に基部0113を固定するとともに、前記付着部材に円筒本体が押し込まれて挿通する際に、前記付着部材から加えられる円筒本体側面に対する押圧力によって前記基部を起点として円筒本体外面側に沿うように変位するとともに、前記力から解放された場合に再び円筒本体外面から離間するように前記基部を起点として変位するように構成される板状の部材である。したがって、かえし板と円筒本体外面の間には、基部から返し板先端部に向かって広がるすき間が設けられていることが望ましい。かえし板の寸法の一例は、例えば円筒本体の寸法が後述のようなものである場合にかえし板の厚みNが0.2ミリメートル、円筒本体外面とかえし板先端部とのすき間Mが0.3ミリメートルであるものが挙げられる。なお、かえし板はかえしの唯一の構成要素であることから、以下の説明ではかえし板を含めてかえしと称する。
【0024】
かえしの基部は、円筒本体に固定される。この基部は、後述のように、円筒本体が付着部材の穴に挿通される際のかえしの変位の起点となるものである。
【0025】
本実施形態のかえしの目的は、付着部材に円筒本体が押し込まれて挿通する際に付着部材から加えられる円筒本体側面に対する押圧力によって基部を起点として円筒本体外面側に沿うように変位し、また、円筒本体下部が付着部材を通過して前記力から解放された場合に再び円筒本体外面から離間するように前記基部を起点として変位することように構成されることで、ハトメ状部材の付着部材への挿通を円滑にするとともに、挿通後のハトメ状部材の脱落を防止することにある。
【0026】
(円筒本体:かえし:付着部材への付着が容易であることについて)
図4は、本実施形態のかえしの構成について、さらに詳細に説明するための図であり、円筒本体が付着部材を挿通する過程を通じてかえしが変位する状態を断面図で示したものである(ただし、煩雑を避けるため、中央の穴は図示を省略した)。
【0027】
(a)は、円筒本体0400がまだ付着部材0430に挿通されていない状態を示したものである。ここで、かえしの上端外縁によって形成される円の直径D2は、付着部材の穴の内径D3よりも若干長い寸法に設計される。例えば、付着部材の穴の内径D3が4.3ミリメートルである場合に、円筒本体のかえしの上端外縁によって形成される円の直径D2は、4.5ミリメートルである。なお、この場合おいて、かえしと円筒本体外面との間には0.3ミリメートルのすき間が形成されている。
【0028】
(b)は、円筒本体のかえしが付着部材の穴に挿通されている状態を示す。このとき、かえしは、付着部材から加えられる円筒本体側面に対する押圧力によって基部0413を起点として円筒本体外面側に沿うように変位する。これにより、かえしの上端外縁によって形成される円の直径は、付着部材の穴の内径以下にまで圧縮されるため、かえしを含む円筒本体が付着部材の穴を挿通することができる。例えば、円筒本体のかえしの上端外縁によって形成される円の直径やかえしと円筒本体外面とのすき間の寸法が(a)に示したようなものである場合、かえしの上端が円筒本体外面に接する位置まで変位するため、円筒本体のかえしの上端外縁によって形成される円の直径D2´は、3.9ミリメートルとなり、付着部材の穴の内径以下にまで圧縮されることとなる。
【0029】
(c)は、円筒本体の挿通がさらに進行し、かえしが付着部材の穴を通過した位置にまで達した状態を示す。このとき、かえしは、付着部材から円筒本体側面に対して加えられていた押圧力から解放されるため、円筒本体外面側に沿うように変位していたかえしが再び円筒本体外面から離間するように基部を起点として変位し、挿通前の状態に戻ることとなる。つまり、かえしの上端外縁によって形成される円の直径が付着部材の穴の内径よりも若干長い寸法となっている状態に戻るので、ハトメ状部品が付着部材にしっかりと係止されて、容易に脱落することがない状態となる。
【0030】
以上の動作は、すべて工具を用いずに手作業だけで行うことができる。
【0031】
なお、かえしは、円筒本体外周の全周にわたってスカート状に形成されていてもよいが、付着部材から加えられる円筒本体側面に対する押圧力による変形をより大きくして付着を容易にするため、かえしが筒本体外周の全周のうちの一部にのみ固定されているようにしてもよい。かかる構成の詳細については別の実施例にて後述する。
【0032】
(円筒本体:かえし:付着部材から脱落しにくいことについて)
次に、装着後の円筒本体が付着部材から脱落しにくいようにするためのかえしの構成について説明する。
【0033】
図5は、円筒本体が付着部材から脱落しにくい構成について説明するための図であり、先行技術と比較して説明したものである。
【0034】
(a)は、従来のハトメの構成の一例として、前述の特許文献1で開示されているのと同様の複数本設けられた穴部の全長にわたる長さを有する脚部を備えたハトメ0500´が付着部材0530を係止している状態を示す断面図であり、薄墨で示した部分が当該ハトメの断面形状である。この場合、脚部の爪0512´に矢印方向の力が加わると、脚部がその付け根0513´を基点としてたわむため、爪の先端が穴の内径より内側の位置にまで移動して、ハトメが付着部材から脱落するおそれがある。
【0035】
これに対し、(b)に示す本発明にかかる構成によれば、ハトメ状部品0500のかえし0512に矢印方向の力が加わったとしても、かえしはあくまで基部0513を起点として変位するものにすぎず、基部は円筒本体の外周部に固定されているので、(a)の例とは異なり、かえしの外縁部が穴の内径より内側の位置にまで移動してハトメ状部品が付着部材から脱落するおそれは(a)の場合に比べて極めて低い。
【0036】
(円筒本体:寸法)
円筒本体の寸法は、付着部材の穴の寸法に応じて適宜設計されるべきものであるが、その一例は、長さLが6.8ミリメートル、直径(かえし部分を除く)D1が3.5ミリメートル、かえしの高さHが0.8ミリメートル、かえしの上端外縁の直径D2が4.5ミリメートルである。
【0037】
(庇状部)
庇状部は、円筒本体の上部にせり出した自身を付着する対象である付着部材に係止するための部材である。なお、
図1の例では、庇状部には2個の円弧状の穴0211が設けられている。この穴は、例えば
図2に示した使用例のように、ぴったりと重ねられた複数の板を回動可能に保持する場合に、各板間に生じる摩擦力を軽減して各板の回動を容易にすることを可能にするものである。
【0038】
庇状部の寸法も適宜設計されるべきものであるが、例えば円筒本体の寸法が上述の寸法である場合に、最大部分(
図1の例では下端部)の直径D3が6.9ミリメートル、厚みWが1.1.ミリメートルであるものが挙げられる。
【0039】
<実施形態1:製造方法>
次に、ハトメ状部品の製造方法について説明する。
図8は、本実施形態にかかるハトメ状部品の製造方法の一例を示すフロー図である。本図に示すように、本実施形態のハトメ状部品は、例えば射出成型の方法により製造される。具体的には、まず、金型準備工程S0801において、例えば複数の分割された部分からなるプリハードン鋼製などの金型を型締めしたものを準備する。次に、材料射出工程S0802において、加熱溶融させたハトメ状部品材料を、前記金型準備工程で準備した金型内に射出する。射出機には例えばヒーターが備えられ、例えば材料がナイロン(登録商標)6である場合、その融点である225℃以上で射出機内において加熱溶融させた後、当該射出機から金型内に射出される。次に、固化工程S0803において、ハトメ状部品材料を金型内で冷却して固化させる。さらに、取出工程S0804において、金型を開き、固化したハトメ状部品を金型から取り出す。
【0040】
<実施形態1:効果>
本実施形態の発明によれば、工具を用いずに装着することができるハトメ状部品であって、装着しやすく、かつ係止後脱落しにくいハトメ状部品を提供することが可能となる。
<実施形態2>
【0041】
<実施形態2:概要>
実施形態2は主に請求項3などに関する。
本実施形態のハトメ状部品は、実施形態1で述べた構成に加え、円筒本体外表面にかえし迎溝が構成されている点に特徴を有する。
【0042】
<実施形態2:構成>
(全般)
本実施形態のハトメ状部品の構成は、実施形態1のハトメ状部品の構成と基本的に共通する。ただし、本実施形態のハトメ状部品において、円筒本体外表面には、かえしが円筒本体外表面に沿う領域の少なくとも一部にそのかえしを迎えるためのかえし迎溝が構成されている。以下、かえし迎溝の構成について説明する。その余の構成は、実施形態1で述べたところと同様であるから、説明を省略する。
【0043】
(円筒本体:かえし迎溝)
かえし迎溝は、かえしが円筒本体外表面に沿う領域の少なくとも一部にそのかえしを迎えるために構成されているものである。前出の
図1にも、かかるかえし迎溝0114が備えられている例が示されている。
【0044】
「円筒本体外表面に沿う領域」とは、かえしが付着部材の穴を挿通する際に押圧力によって円周本体の外表面に対して押し付けられる形になることから、このようにかえしが押し付けられる円周本体外表面の領域をいう。具体的には、円筒本体の外表面よりも円筒本体の中心にやや近いあたりを占める領域をいう。
【0045】
図6は、かえし迎溝が円筒本体外表面に沿う領域に構成されていることを示すための図であり、
図1に示したハトメ状部品の円筒本体の水平断面図である。本図に示すように、かえし迎溝はその底部を構成する円周が円筒本体の外周の寸法より一回り小さく形成される。かえし迎溝の寸法の一例は、円筒本体の直径が3.5ミリメートルである場合に、溝の深さD4が0.1ミリメートルであるものが挙げられる。この場合、溝の底部は円筒本体の直径よりやや短い直径3.3ミリメートルの円周上に形成されることとなる。
【0046】
かえし迎溝が、かえしが円筒本体外表面に沿う領域の「少なくとも一部」に構成されるとは、
図1の例のように、かえし迎溝が円筒本体の上端から下端まで貫通する形で全面に構成されていてもよいし、例えば下端付近にのみ設置されるなど一部に構成されているもよいという意味である。
【0047】
かえし迎溝の設置位置及び数は、かえしの設置位置及び数に応じて適切に設計される。
図1の例では、かえしが2か所に設置されており、かえし迎溝がかえしの真上の位置に2箇所設置されている。
【0048】
<実施形態2:効果>
本実施形態の発明によれば、かえし迎溝を設けることで、円筒本体の付着部材の穴の挿通をさらに円滑に行うことが可能となる。
<実施形態3>
【0049】
<実施形態3:概要>
実施形態3は主に請求項4などに関する。
本実施形態のハトメ状部品は、実施形態1または2で述べた構成に加え、かえしの固定位置を円筒本体外周の全周のうちの一部に限定したものである。
【0050】
<実施形態3:構成>
(全般)
本実施形態のハトメ状部品の構成は、実施形態1または2のハトメ状部品の構成と基本的に共通する。ただし、本実施形態のハトメ状部品においては、前記かえしは、円筒本体外周の全周のうちの一部にのみ固定されている。以下、本実施形態のかえしについて説明する。その余の構成は、実施形態1または2で述べたところと同様であるから、説明を省略する。
【0051】
(円筒本体:かえし)
前出の
図1の例において、かえし0112は、円筒本体外周の全周ではなく、円周の一部にのみ固定される形で2個設置されている。このため、かえしの両側面に空間が設けられることとなる。
このように構成することで、かえしが付着部材の穴を挿通する際に押圧力を受けた時、横方向への逃げの余地が生じるため、変位がより円滑に行われ得ることとなる。
【0052】
<実施形態3:効果>
本実施形態の発明によれば、かえしの変位をより円滑に行うことができる。
<実施形態4>
【0053】
<実施形態4:概要>
実施形態4は主に請求項52などに関する。
本実施形態のハトメ状部品は、実施形態1~3で述べた構成に加え、かえし板について、付け根部分より先端部の方が長いものとしたものである。
【0054】
<実施形態4:構成>
(全般)
本実施形態のハトメ状部品の構成は、実施形態1~3のハトメ状部品の構成と基本的に共通する。ただし、本実施形態のハトメ状部品において、かえしは、基部の円筒本体固定長よりも先端縁部長の方が長く構成されている。以下、以下、本実施形態のかえしについて説明する。その余の構成は、実施形態1~3で述べたところと同様であるから、説明を省略する。
【0055】
「基部の円筒本体固定長」とは、円周本体の外表面上において水平方向に一定の長さを占めるかえしにおいて、基部が占める部分の長さをいう。また、「先端縁部長」とは、同じく、かえしの先端が占める部分の長さをいう。
【0056】
図7は、本実施形態におけるかえしの構成について説明するための図であり、
図1に示したハトメ状部品のうち、一つのかえし及びその近傍を真上から見た状態を示す図である。本図において、二つの基部0713の間を占めるかえしの部分(太線で示す)の長さが「基部の円筒本体固定長」である。また、二つの先端部0715の間を占めるかえしの部分(太線で示す)の長さが「先端縁部長」である。
【0057】
このような構成により、係止状態においてハトメ状部品を脱落しにくくすることができる。
【0058】
<実施形態4:効果>
本実施形態の発明によれば、係止状態においてハトメ状部品を脱落しにくくすることが可能となる。