(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019167
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】生産支援システム、及び生産支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20230202BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
G06Q50/04
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123681
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 知明
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 匡
(72)【発明者】
【氏名】吉川 裕
(72)【発明者】
【氏名】飛澤 直哉
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA38
3C100BB13
3C100BB17
3C100BB34
3C100CC02
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】
作業経験が多くない作業員の作業または判断を支援する生産支援システムを提供する。
【解決手段】
産業機器と、前記産業機器の過去の稼働情報が記憶された記憶手段と、前記産業機器に関連する作業を行う作業員の立ち入り領域と、前記作業員の動作を検出する検出手段と、作業員の作業の判断を支援する作業員支援手段を有する生産支援システムであって、前記検出手段は、前記作業員が前記領域内で次に行う動作の判断に困った状態であることを検出し、前記作業員支援手段は、前記作業員が困った状態の際に前記産業機器が稼働している現在の稼働情報と同一または類似する前記過去の稼働情報を特定し、特定された前記過去の稼働情報に基づいて前記作業員が行うことを推奨される作業を特定し、表示手段に前記推奨される作業を表示するように構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機器と、前記産業機器の過去の稼働情報が記憶された記憶手段と、前記産業機器に関連する作業を行う作業員の立ち入り領域と、前記作業員の動作を検出する検出手段と、作業員の作業の判断を支援する作業員支援手段を有する生産支援システムであって、
前記検出手段は、前記作業員が前記領域内で次に行う動作の判断に困った状態であることを検出し、
前記作業員支援手段は、前記作業員が困った状態の際に前記産業機器が稼働している現在の稼働情報と同一または類似する前記過去の稼働情報を特定し、特定された前記過去の稼働情報に基づいて前記作業員が行うことを推奨される作業を特定し、表示手段に前記推奨される作業を表示すること
を特徴とする生産支援システム。
【請求項2】
前記作業員支援手段は、過去の該当産業機器の稼働情報が現在の稼働情報と類似度が高い過去事例に対して過去に対応が為された対応方法の記録情報を記憶手段に記憶するデータベースより読み出し、前記作業員が利用する入出力手段に、類似度が高い過去事例の順に過去に対応が為された対応方法の一覧を表示して、前記作業員の選択を受付けることを特徴とする請求項1に記載の生産支援システム。
【請求項3】
前記作業員支援手段は、前記作業員が選択した過去の対応方法が、現在の産業機器の稼働情報との類似度が所定値より高くない過去事例である場合は、過去に対応した作業員、または上位作業員と前記作業員との電話による相談を接続し、前記作業員から対応方法を相談できるように支援することを特徴とする請求項2に記載の生産支援システム。
【請求項4】
前記データベースは、産業機器別に、過去に対応を施した事例を識別する機器状態名と、産業機器の状態値、過去の対応方法、および過去に対応した作業員名の各情報からなるデータレコードより構成されていることを特徴とする請求項2に記載の生産支援システム。
【請求項5】
前記作業員支援手段は、産業機器にどのような対応を行うべきか困った状態の前記作業員へ支援を行うインターフェースとして、前記入出力手段に、類似度が高い過去事例の順に過去に対応が為された対応方法の一覧を表示する類似機器状態表示画面と、対応方法の推奨表示画面と、および過去に該当機器状態に対して対応を行った作業員に通話を接続する通話の表示画面を表示することを特徴とする請求項2に記載の生産支援システム。
【請求項6】
前記検出手段は、作業中の支援対象の前記作業員を所定サイクルタイムごとに撮像した画像データと、産業機器の稼動情報とを入力として、前記作業員の作業状態を表す特徴量を出力することを特徴とする請求項1に記載の生産支援システム。
【請求項7】
画像取得手段が、作業中の支援対象の作業員を所定サイクルタイムごとに撮像した画像データを取得する工程と、
検出手段が、取得した画像データと、産業機器の稼動情報より、前記作業員の作業状態を表す特徴量を抽出し、時系列に得られた前記作業員の作業状態を表す特徴量に基づき、前記作業員が担当する産業機器の状態が通常の状態とは異なると認識してその対応に困っている状態を特定する工程と、
前記作業員が対応に困っている状態の特定に従って、作業員支援手段が該当産業機器の稼働情報を取得する工程と、
作業員支援手段が、取得した現在の産業機器の稼働情報に対応する過去の該当産業機器の稼働情報をデータベースより検索し、両稼働情報の類似度を算出し、類似度が高い過去の該当産業機器の稼働情報に対する過去の対応方法の情報を読み出し、前記作業員へ推奨する対応方法の候補を提示する工程と、
を有することを特徴とする生産支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産支援システム、及び生産支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2010-257296号公報)によれば、「設備に搬入されたワークの有無を在荷センサ5により検出するとともに、設備ごとに設備への作業者の在場を在場センサ7により検出し、シーケンサ2は、これらの情報を設備の稼働情報及び作業者の在場情報として、サーバー8のデータベースに書き込み、サーバー8にLAN9により接続されたクライアント端末10は、サーバー8のデータベースに予め登録された作業者登録テーブルを用いて、設備と作業者とを関連付け、この関連付けられた設備の稼働情報及び作業者の在場情報を連合させてマンマシンチャートとして表示するようにした。」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、作業員が担当する設備を多台持ちする場合であっても設備の稼働状況と作業者の作業状況を連合させて把握することができるようにした生産改善支援システムを提供する技術が開示されている。作業員の動作についてはマット下に圧力センサを配置することで、作業員がマットに乗った時間を計測することによって作業員がどの設備に係わったかを検知する。また、作業者登録テーブルに作業者がどのような作業や設備の操作をするかが時刻と設備に対応付けられて予め登録されている。
【0005】
すなわち、作業員が担当する設備の状態のうち停止、待機、作業中、段取り替え、エラーに対して予め作業員がすべき操作や動作を指示するものであり、このように登録されていない設備の状態について作業員が対処する方法は考慮されていない。
【0006】
つまり、作業経験が多くない作業員が、設備が予め登録されていない動作や状況となった場合に、どのような操作または動作をすればよいかが判断ができない、または、判断が難しい状態が発生することがある。
【0007】
このとき、作業経験が多くない作業員が担当する設備は生産計画通りに生産できず、作業経験が多い作業者の判断や支援が得られるまで設備が稼働できず、生産システムの生産性が低下する場合がある。
【0008】
本発明は、作業経験が多くない作業員が、担当する設備に対してどのような動作や作業を行うべきか判断ができない状態を検知して、その対応方法を過去の事例を参考に作業員へ提示することにより、作業員の作業または判断の動作支援をする生産支援システム、及び生産支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の生産支援システムの好ましい例では、産業機器と、前記産業機器の過去の稼働情報が記憶された記憶手段と、前記産業機器に関連する作業を行う作業員の立ち入り領域と、前記作業員の動作を検出する検出手段と、作業員の作業の判断を支援する作業員支援手段を有する生産支援システムであって、前記検出手段は、前記作業員が前記領域内で次に行う動作の判断に困った状態であることを検出し、前記作業員支援手段は、前記作業員が困った状態の際に前記産業機器が稼働している現在の稼働情報と同一または類似する前記過去の稼働情報を特定し、特定された前記過去の稼働情報に基づいて前記作業員が行うことを推奨される作業を特定し、表示手段に前記推奨される作業を表示することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の特徴として、前記生産支援システムにおいて、前記作業員支援手段は、過去の該当産業機器の稼働情報が現在の稼働情報と類似度が高い過去事例に対して過去に対応が為された対応方法の記録情報を記憶手段に記憶するデータベースより読み出し、前記作業員が利用する入出力手段に、類似度が高い過去事例の順に過去に対応が為された対応方法の一覧を表示して、前記作業員の選択を受付ける。
【0011】
また、本発明の生産支援方法の好ましい例では、画像取得手段が、作業中の支援対象の作業員を所定サイクルタイムごとに撮像した画像データを取得する工程と、検出手段が、取得した画像データと、産業機器の稼動情報より、前記作業員の作業状態を表す特徴量を抽出し、時系列に得られた前記作業員の作業状態を表す特徴量に基づき、前記作業員が担当する産業機器の状態が通常の状態とは異なると認識してその対応に困っている状態を特定する工程と、前記作業員が対応に困っている状態の特定に従って、作業員支援手段が該当産業機器の稼働情報を取得する工程と、作業員支援手段が、取得した現在の産業機器の稼働情報に対応する過去の該当産業機器の稼働情報をデータベースより検索し、両稼働情報の類似度を算出し、類似度が高い過去の該当産業機器の稼働情報に対する過去の対応方法の情報を読み出し、前記作業員へ推奨する対応方法の候補を提示する工程とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の生産支援装置は、作業経験が多くない作業員の作業または判断を支援することにより、産業機器の稼働率を上げることにより生産システムの生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】生産システムに本発明の生産支援装置を導入したイメージ図である。
【
図2】本発明の生産システムのシステムブロック図の一例を示す図である。
【
図3】本発明の生産システムに記憶されるデータベースの一例を示す図である。
【
図4】本発明の生産システムの入出力手段に表示されるユーザーインターフェースの例を示す図である。
【
図5】支援対象の担当作業員を支援する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
近年では、労働人口減少に伴い作業員ひとりひとりの作業量が増加し、判断対象が増え、上長への相談が難しい場合もあり、このような状況下で普段の作業によって所属先への不安が募る。こうした状況下で働く作業員は、エンゲージメント低下により離職率が向上し、新たな作業員の採用や採用後の教育またはひきとめにかかる固定費の増加が予想される。
【0015】
そのため、労働人口が減る将来の産業界においては、上記した固定費の増加を効果的に削減することや生産性を向上させるためには、生産システム内で作業する作業員の作業経験を積み作業の熟練度を早期に高めること、作業経験が少ない作業員を作業経験の豊富な作業員が支援すること、または、作業経験が高まりつつある作業員が退職や転職を希望せずに働きやすいモチベーションを有する職場環境を提供することが求められるようになる。
【0016】
本発明により作業員の作業経験を効率的に上げることや作業熟練度の早期向上、作業経験が豊富な作業員のエンゲージメント向上に貢献する生産システムを提供できる。
【0017】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。
【0018】
以下の説明では、「xxxテーブル」といった表現にて、入力に対して出力が得られる情報を説明することがあるが、当該情報は、どのような構造のデータでもよいし(例えば、構造化データでもよいし非構造化データでもよいし)、入力に対する出力を発生するニューラルネットワークのような学習モデルでもよい。従って、「xxxテーブル」を「xxx情報」と言うことができる。また、以下の説明において、各テーブルの構成は一例であり、一つのテーブルは、二つ以上のテーブルに分割されてもよいし、二つ以上のテーブルの全部又は一部が一つのテーブルであってもよい。
【実施例0019】
図1に、生産システム100に本実施例の生産支援装置200を導入したイメージ図を示す。生産システム100は、産業機器110a、110b、110c、110dを有しており、110aから110dで加工対象となるワーク120に対して所定の加工を施す。加工されたワーク120は担当作業員130または搬送手段140によって次の産業機器へ搬送される。担当作業員130は、経験が豊富、熟練度が高い、および/または、高度な判断ができる上位作業員(図示しない)の指示を受けて作業を行う作業員である。なお、本実施例では単に作業員と呼ぶ場合がある。
【0020】
産業機器110a等は工作機械とも呼び、例えば、フライス盤、旋盤、ボール盤等の金属加工を行うものや射出成形機や積層造形等の付加製造を行う樹脂または金属加工機であってもよい。搬送手段140の一例としてマテハン用ロボットでもよく、または、AVG(Automatic Guided Vehicle)であってもよい。ワーク120は部材120や被加工対象120とも呼ぶ。
【0021】
担当作業員130は入出力手段250aに表示される作業手順書にしたがって、産業機器110aから110dに必要な作業を行う。例えば、産業機器110a等のツールや治具または切削油の交換、ワーク120の搬送、装着および取り外し、切削により発生した切り屑、切り粉、サポート材や積層造形の溶着していない粉体または廃材の除去や、産業機器110a等のメンテナンスを行う。
【0022】
撮像装置150は、担当作業員130や産業機器110aから110dが画角に含まれるように配置または可動するように配置されている。撮像装置150は、担当作業員の作業領域を視野に収められるように、各産業機器に対応させて、または適宜必要に応じて複数個設置してもよい。そして、撮像装置150は、担当作業員130と産業機器110a等との位置関係や担当作業員130の動作の確認に用いる。撮像装置150は、マイクを有しており、担当作業員130や産業機器110a等から発せられる音声を取得することができる。本実施例では、代表して撮像装置150を用いる方法について説明するが、担当作業員130が装着するウェアラブルセンサ、担当作業員130が有するスマートフォン等の端末が有するジャイロセンサや加速度センサ、その他LIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)やレーザーレンジファインダー等によって担当作業員130の動作を計測する場合であっても実施できる。
【0023】
生産支援装置200は、撮像装置150からの画像データを入力して、画像処理を行い、担当作業員130の位置、担当作業員130が通常通りの作業を行っているか、または通常とは異なる事態に対応に困っている状態かを判定する。もし、担当作業員130が対応に困っている状態(不安や困惑状態)と判定した場合は、該当産業機器の状態値より類似する過去の状態値とその対応履歴情報をデータベースより検索して、入出力手段250aに表示して担当作業員130を支援する。
【0024】
生産支援装置200は、通常時は、入出力手段250aに担当作業員130が次にすべき作業である作業手順書や作業指示書を表示する。必要に応じて、上位作業員が担当作業員130の作業を設定または指示することができる。
【0025】
図2は、本実施例による生産支援装置200の構成図である。
生産支援装置200は、汎用の計算機上に構成することができて、そのハードウェア構成は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)などにより構成される制御部210、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリなどを用いたSSD(Solid State Drive)などにより構成される記憶部220、NIC(Network Interface Card)などにより構成される通信部230、などを備える。生産支援装置200の機能の一部をエッジ端末とサーバーとで分担して実施することもできる。
通信部230は、ネットワーク260を介して上位の製造実行システム240、産業機器110a等、入出力手段250a等、および撮像装置150と接続されている。
【0026】
制御部210は、記憶部220に記憶されている生産支援プログラム221をRAMへロードしてCPUで実行することにより以下の各機能部を実現する。制御部210は、生産計画取得部211、画像取得部212、産業機器状態値取得部213、画像処理部214、作業員支援部215、画像学習部216、および異常音検出部217を有する。
【0027】
生産計画取得部211は、上位システムの製造実行システム240から、生産日時より事前に生産計画、作業手順書、および作業指示書の各データを取得して、記憶部220の生産計画222、作業手順書、指示書227に記憶する。
【0028】
画像取得部212は、支援対象の担当作業員130が作業中の場合は、担当作業員を視野に収める撮像装置から所定サイクルごとに画像データを取得する。支援対象の担当作業員130が複数の場合は、各担当作業員を視野に収める画像データを所定サイクルごとに取得する。
【0029】
産業機器状態値取得部213は、接続する全ての産業機器110a等の稼動情報、例えば、停止、待機、作業中、段取り替え、エラーなどの状態モードを定期的に、または状態モードが変わった時点で、各産業機器から取得して記憶部220の産業機器状態値223に記憶する。稼働情報はこれらの状態に限らず対象の産業機械が動作するGコード等の情報を用いることもできる。また、担当作業員の画像処理によって、担当作業員が産業機器の状態への対応に困っていると判定した場合に、該当産業機器の状態値(産業機器に設置された各センサの値)を取得して記憶部220の産業機器状態値223に記憶する。これに限られず、産業機器状態値取得部213は、該当産業機器の状態値は適宜取得してもよい。例えば、担当作業員が困っている状態であると判定された場合に、判定される以前の所定時間の該当産業機器の状態値から判定されるまでの産業機器の状態値を時系列でトレースすることによって、該当産業機器に生じていることが別途説明する上位作業員の判断を仰ぐことや、作業員が該当産業機器に行うべきより適切な動作や作業を特定する際に利用することができる。
【0030】
画像処理部214は、画像取得部212が取得した画像データを入力して、併せて担当作業員が担当している産業機器の稼動情報(状態モード)も入力して、担当作業員の作業状態を表す特徴量を出力する。そして、担当作業員の特徴量の時系列データに基づいて、後述する方法により、担当作業員が担当する産業機器の状態が通常の状態とは異なると認識して、その対応に困っているかどうかを判定する。
【0031】
作業員支援部215は、通常時は生産計画222に従って、作業手順書、指示書227を読み出して、担当作業員130が参照する入出力手段250a等に作業手順書、作業指示書を表示する。
画像処理部214が、担当作業員が担当する産業機器の状態への対応に困っていると判定した場合は、作業員支援部215は該当産業機器の状態値を取得して、記憶部220の産業機器対応履歴224に記憶している過去の該当産業機器の状態値とを比較して、類似するレコードを検索する。類似するレコードに記録される過去の対応履歴を、担当作業員の参考のために入出力手段250a等に表示して支援する。
【0032】
画像学習部216は、画像処理部214は所定の画像データに対して学習を行う。学習は、学習用作業員に、通常の作業動作、移動動作、段取り替え作業、メンテナンス作業、異常を確認する動作などを撮像し、その際の画像データを説明変数とし動作を目的変数とする入力データとして学習される。学習によって得られた分類器や学習器のハイパーパラメータを画像特徴抽出用パラメータ225に記憶する。併せて、目的変数に産業機器の稼働情報を学習データとして利用することもできる。なお、教師あり学習について説明したが、教師なし学習として実際の作業現場の担当作業員の動作を取得することで、通常の作業とは異なる困った状態することも可能である。
【0033】
異常音検出部217は、撮像装置150に併設したマイクから入力した音を検出して、その検出結果を、画像処理部214が、担当作業員が担当する産業機器の状態への対応に困っているかどうかを判定するのに役立てる。
【0034】
記憶部220は、生産支援プログラム221、生産計画222、産業機器状態値223、産業機器対応履歴224、画像特徴抽出用パラメータ225、作業員情報226、および作業手順書、指示書227の各記憶領域を有する。
【0035】
図3に、記憶部220の産業機器対応履歴224に記憶されるデータテーブルの一例を示す。産業機器対応履歴224には、過去に産業機器において何らかの対応が必要となった事態(担当作業員が対応に困った事態でありエラーとは限らない)に、如何なる対応方法を採ったかの履歴を記録したデータベースを構成している。
【0036】
産業機器対応履歴224のデータテーブルのカラムには、産業機器名224a、機器状態名224b、特徴224c、過去の対応方法224d、作業員名224eが記憶されている。例えば、
図3のデータテーブルの例では、産業機器Aが過去に何らかの対応が必要となった事態が生じた障害やトラブルの内容を表すA1からA4が機器状態名224bのカラムに記憶されている。特徴224cは、機器状態名に対応する、エラーを起こした原因やセンサが取得した値等の産業機器の状態値(通常、複数の状態値が記憶される)が記憶されている。
【0037】
また、過去の対応方法224dのカラムには、対応方法名が記載されており、対応方法名は実際に過去の対応内容や作業手順内容の情報が紐付けられており、産業機器対応履歴224に記憶された対応内容のデータテーブルを呼び出すことができる。
【0038】
次に、作業員名224eのカラムは、先に説明した過去の対応内容等を行った作業員の氏名や作業員コードが記載される。併せて、作業担当部署や連絡先を紐付けて産業機器対応履歴224に記憶させるとよい。
【0039】
図4に、産業機器にどのような対応を行うべきか困った状態の担当作業員130へ支援を行うインターフェース例を示し、説明する。
図2に示す担当作業員が利用する入出力手段250aに示される作業員支援用の画面の一例が画面250cである。画面250cには、類似機器状態表示画面410と、対応方法の推奨表示画面420と、通話の表示画面430が表示されている。
【0040】
類似機器状態表示画面410には、産業機器対応履歴224のデータテーブルのカラムのうち機器状態名、過去の対応方法、作業員名が表示される。さらに、類似度として、産業機器対応履歴224のデータテーブルの特徴224cに記憶される産業機器の状態値と、産業機器状態値取得部213が取得した現在の産業機器が生じた障害やトラブルの状態や稼働状況を表す産業機器の状態値と比較して類似する度合いを示す。この度合いが高いほど産業機器の状態が類似するため過去に行った対処が有効と考えられるため、類似度の高い対応方法を試すことや、過去に対応を行った作業員に連絡することで、より適切な産業機器への対処が可能となる。なお、類似度の算出方法例は後述する。
【0041】
通話の表示画面430には、対象の産業機器が過去の機器状態名A1に85%類似しているため、過去に機器状態名A1に対して対応を行った経験が担当作業員よりも豊富な上位作業員XXAに通話する状態を示す。
【0042】
担当作業員が困った状態を検出した際に、当該作業員が困った状態で待機することを防止し、速やかな対応を促すために、上位作業員に直接連絡をすることができる。上位作業員も当該作業員の近くにいない場合であっても、当該作業員が困った状態であることを知ることができるため、直接会話することで不安状態のケアをすることができる。
【0043】
一方で、担当作業員の困った状態の誤検出であった場合や、担当作業員が類似機器状態表示画面410または対応方法の推奨表示画面420に示される過去の対応方法をタップすることで、対応方法や作業手順書を確認し、自身で対応できる場合には、通話の表示画面430のアイコンをタップすることで、通話せずに電話を切ることができる。この場合は、通話の表示画面430の表示を切り替え、上位作業員に作業員自身で解決できることや、これから行う過去の対応方法AAAを行うことを報告することができる。担当作業員が困った状態であっても、経験豊富な上位作業員や過去に担当や対応した作業員がその際の該当産業機器の状態を通常の動作であると判断し、担当作業員が該当産業機器に作業や対応を行わなくてよい場合もある。この場合は、担当作業員が困った状態であれば、上位作業員や過去に対応した作業員に通話することが有効であり、該当産業機器を停止することがないので、該当産業機器のスループットを下げずに運用を継続することができる。
【0044】
また、産業機器110a等の機器状態情報や担当作業員130が困った状態を検出した情報やその際の担当作業員130が行う予定の対応内容を上位作業員だけでなく、生産支援装置200の管理者等や上位の製造実行システム(MES:Manufacturing Execution System)240または基幹系情報システム(ERP:Enterprise Resources Planning)へ送信することができる。この情報を受け取った管理者やMES等は、今後の生産計画へ反映させることができる。併せて、担当作業員130や上位作業員の配置やシフトを調整することで、実際の現場で起こった事象を基にした生産計画を立案できる。
【0045】
これにより、上位作業員の通話時間を節約することができる。また、入出力手段250aに表示された対応方法を担当作業員130がタップした場合に、
図2に示す上位作業員が利用する入出力手段250bには、タップされた対応方法と産業機器の機器状態名が表示され、上位作業員は、担当作業員130の判断が適切であるか否かを確認することができる。
【0046】
このとき、担当作業員130の対応方法が適切でない場合や上位作業員が対応内容の修正を希望する場合には、上位作業員が入出力手段250bをタップして新たな対応内容を入力することで、担当作業員130が利用する入出力手段250aに入力内容を表示することができる。また、通話によって上位作業員から担当作業員130へ指示内容を伝達することもできる。
【0047】
また、担当作業員130が困った状態であり、産業機器110a等の機器状態情報が急を要するものである場合は、担当作業員130の対応方法の入力や通話を待たず、入出力手段250aに緊急である旨を表示または音声により上位作業員に知らせ、上位作業員を担当作業員130の元へ駆けつける必要があることを表示することができる。上位作業員が担当作業員130の元へ駆けつけることで、早急に適切な対応をすることができる。
【0048】
以上により、熟練度が高くない担当作業員130が置かれている状況下に行うべき動作や対応方法の例を提供し、担当作業員130がより適切で生産性の高い対応や動作を行うことができる。ひいては、工場全体の生産スループットの向上に貢献できる。
【0049】
また、上位作業員や管理者に対して担当作業員130の不安状態を知らせることにより、担当作業員130の不安を解消する手段または相談機会を提供でき、担当作業員130が組織的にサポートを受けられると認識させることができる。これにより、担当作業員130は組織へのエンゲージメントを向上することが期待できる。さらに、エンゲージメントの向上によって普段の業務へのモチベーションも上がり作業効率をも向上させることに貢献する。
S520において、画像処理部214は、画像取得部212が取得した画像データを分類器または学習器へ入力し、必要に応じて担当作業員が担当している産業機器の稼動情報(状態モード)も入力し、担当作業員の作業状態を表す特徴量を出力する。
一つの画像データから出力される担当作業員の作業状態を表す特徴量は、繰り返し得られるので、時系列に得られた担当作業員の作業状態を表す特徴量または特徴量が通常の作業や動作とは異なる外れ値や新たな特徴量であると判定された場合等に基づき、画像処理部214は、例えば以下に示す判定方法により、その作業や対応に困っている状態か、否かを判定する。
実施例1で説明した担当作業員が困った、困惑した、通常とは異なる状態等を含む不安状態の検出方法について説明する。例えば、担当作業員の不自然な動作が該当する。不自然な動作とは、産業機器110a等には内部を確認できる窓が設けられているが、担当作業員130が窓を覗く時間が通常よりも長い場合である。通常の窓を覗く時間は作業員ごとに記憶部220の作業員情報226に記憶し、適宜、作業経験等を参考に通常の時間を設定するとよい。産業機器110a等が通常と異なる動作をしていれば、担当作業員130が窓を覗く時間が増加するためである。
また、担当作業員130が通常よりも多く産業機器110a等の窓を覗く場合も不自然な動作と判定してもよい。産業機器110a等が通常と異なる動作をしていれば、担当作業員130が窓を覗く回数が増加するためである。また、担当作業員130が窓を確認した後に通常と異なる音や振動があった場合に、再度窓を覗くと考えられるからである。
他に、産業機器110aや産業機器110a等に隣接する装置を通常よりも多く振り向く動作を行う場合やこれらの装置を繰り返しキョロキョロと目で追ったり、装置の音に耳を傾ける場合である。心配になると目や音で繰り返し確認するからである。
また、産業機器110a等が予定よりも処理時間が長い場合や異音または振動が生じている場合に、担当作業員130が産業機器110a等の方を向き、近づいた後に一旦する動作を行った場合である。担当作業員130が、すぐに産業機器110a等に近づく必要があるかを判断あるいは迷っていると考えられる動作だからである。
その他、担当作業員130が産業機器110a等に近づいた状態で緊急停止ボタンに手をかけ、いつでも緊急停止ボタンを押せる状態を継続する動作を行っている場合である。担当作業員130が産業機器110a等の動作が通常と異なり、緊急停止すべき状態となることを待っている、または、判断に迷っている状態だからである。
画像処理部214が、担当作業員130が産業機器110a等の状態への対応に困っている状態だと判定した場合は、S530へ移行する。そうでない場合は、S510へ移行する。
S540において、作業員支援部215は、取得した現在の産業機器110a等の状態値に対応する過去の該当産業機器の状態値を、データベース(産業機器対応履歴224)から検索して、これらの類似度を算出する。
現在の産業機器の状態値と過去の該当産業機器の状態値とを比較する方法について説明する。産業機器には様々なセンサが搭載されており、これらセンサの値または状態(本実施例では状態値と総称する)を取得する。例えば、振動センサ、モータの回転数、トルク、電流、電圧、作業中のGコードやCAMから送られる等の作業または制御情報である。これらを時系列やセンサの値を縦軸横軸で比較し、特徴量を特定することができる。現在の産業機器の状態または特徴と過去の産業機器の状態または特徴から求められる特徴量同士を比較することで類似度を特定する。このとき、過去の産業機器の状態または特徴は、過去に産業機器がトラブルやエラーが生じた状態のセンサの値を用いるとよい。
類似度は、それぞれ産業機器の特徴量から所定の分類方法を用いるとよい。所定の分類方法の一例として、教師ありまたはなし学習や強化学習を利用することができ、過去の産業機器のトラブルやエラーの状態を教師データとして利用することで、より精度よく分類することができる。分類には、クラス分類、SVM(Support Vector Machine)や決定木等を利用することができるがこれに限られない。
過去の産業機器の状態または特徴の特徴量の特定や分類は、予め行っておくとよい。また、現在の作業員が不自然な動作を行った際の現在の産業機器の状態または特徴は随時、記憶手段に産業機器の状態または特徴を登録し、併せて対応した作業内容や作業員の情報を記憶するとよい。
S550において、作業員支援部215は、S540で算出した類似度が所定値よりも高いデータレコードについては、過去の産業機器の状態が生じた際に作業員が過去に行った対応方法をデータベース(産業機器対応履歴224)から検索する。
S560において、作業員支援部215は、S550でデータベースから検索した現在の産業機器の状態に対応する過去の該当産業機器に作業員が過去に行った対応方法のうち推奨する対応方法(例えば、類似度が高い順に推奨する)を特定する。
S570において、作業員支援部215は、担当作業員130が利用する入出力手段250aに、S560で特定された推奨する対応方法を類似機器状態表示画面410上に表示する。
S580において、作業員支援部215は、類似機器状態表示画面410に表示された推奨される過去の対応方法の一覧の中より、担当作業員の選択指定入力を受付けて、選択されたデータレコードの類似度が所定値より高いか、否かを判定する。類似度が所定値より高い場合にはS585aへ移行する。類似度が所定値より高くない場合はS585bへ移行する。
S585aにおいて、作業員支援部215は、S580で担当作業員が選択した過去の対応方法は、現在の産業機器の状態と類似度が高い過去事例であるので、現在の担当作業員が現在の産業機器の状態に対して、過去の対応方法を参考として対応することとして、過去の対応方法の詳細を入出力手段250aに表示して支援する。
S585bにおいて、作業員支援部215は、S580で担当作業員が選択した過去の対応方法は、現在の産業機器の状態と類似度が高くない過去事例であるので、過去に対応した作業員、または上位作業員と現在の作業員との電話による相談を接続し、現在の担当作業員による対応方法を相談できるように支援する。
S540において、現在の産業機器の状態が過去の産業機器の状態に対応しない場合やどの状態にも属さない場合には、過去の産業機器との類似度が特定できないため、上位作業員に直接電話する処理を行うことも可能である(図示しない)。この場合は、過去の産業機器の状態から現在の作業員が対応する方法が不明であるため、速やかに上位作業員に次の対応を相談することができ、作業員が困った時間を従来よりも小さくすることができる。これにより、新しいトラブルまたはエラー等が生じた産業機器に対して、処置を行うことができるため、産業機器の稼働率の向上に貢献することができる。
このような状況に置かれた担当作業員130に対して、適切な対応方法を提供、上位作業員に通話やメッセージの送信または上位作業員が駆けつけることにより、不安状態を解消することができる。
本実施例により作業員の作業経験を効率的に上げることや作業熟練度の早期向上、作業経験が少ない担当作業員のエンゲージメント向上に貢献する生産支援装置を提供できる。
以上、一実施形態を説明したが、これは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実行することが可能である。