(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019205
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】照明装置、及び収納棚
(51)【国際特許分類】
F21V 3/06 20180101AFI20230202BHJP
F21V 3/00 20150101ALI20230202BHJP
F21S 8/02 20060101ALI20230202BHJP
F21S 8/04 20060101ALI20230202BHJP
F21V 33/00 20060101ALI20230202BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20230202BHJP
【FI】
F21V3/06 131
F21V3/00 320
F21S8/02 410
F21S8/04 100
F21V33/00 110
F21V3/06 110
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123736
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】矢野 秀明
(72)【発明者】
【氏名】松井 梨絵
【テーマコード(参考)】
3K014
【Fターム(参考)】
3K014AA01
(57)【要約】
【課題】一定の光拡散性を有し、また、照明カバーに一定の柔軟性も付与することも可能な照明装置を提供できる。
【解決手段】照明装置10は、光源11と、光源11を覆うように配置され、内部に気泡を有する気泡含有層13を有する照明カバー12とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源を覆うように配置され、内部に気泡を有する気泡含有層を有する照明カバーとを備える照明装置。
【請求項2】
前記気泡含有層が発泡体である請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記照明カバーが、さらに表面層を備え、前記光源側から前記気泡含有層及び表面層がこの順に配置される請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記気泡含有層の全光線透過率が0.3%以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記光源の少なくとも一部が、前記気泡含有層の内部に埋め込まれるように配置される請求項1~4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記光源が、LEDを備える請求項1~5のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記光源が、複数の発光素子と、基材シートとを備え、前記基材シート上に複数の発光素子が並べられる請求項1~6のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
反射層を備え、前記反射層が、前記光源の前記照明カバーが設けられる側とは反対側に設けられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項9】
天井、壁面、又は床面の一部に設けられた凹部に配置される、請求項1~8のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項10】
天井から吊り下げて配置させる、請求項1~8のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の照明装置を備える収納棚。
【請求項12】
前記収納棚の棚板及び側板の少なくともいずれかに照明装置が取り付けられた、請求項11に記載の収納棚。
【請求項13】
前記収納棚の棚板の一部が引き出されて机の作業台となる、請求項11又は12に記載の収納棚。
【請求項14】
机の上に配置される収納棚である、請求項11又は12に記載の収納棚。
【請求項15】
前記机の上面上に配置される棚板に前記照明装置が取り付けられた、請求項14に記載の収納棚。
【請求項16】
前記机の上面上に配置される棚板と、該棚板が架け渡される側板を備え、前記照明装置が前記側板に取り付けられた、請求項14又は15に記載の収納棚。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置、照明装置を備える収納棚に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光灯、白熱灯などの光源を使用した照明装置が一般的であったが、近年、装置の寿命が長く、かつ消費電力が少ないことから、LED発光素子を使用したLED照明装置が多く実用化されている。
照明装置は、光拡散性の高いカバー部材により拡散されたうえで、照明光として使用されることが多い。例えば、特許文献1には、LED発光素子に対向するように設けられたカバーが、拡散性を有し、かつポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の透光性樹脂等で形成されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の透光性成樹脂で形成されたカバーは、光拡散性を付与するための光拡散性粒子などを配合する必要がある。また、従来の透光性樹脂で形成されたカバーは、一般的に硬質な材料で形成されるため、カバー設置のために一定のスペースが必要で、スペース上の制約も大きい。
【0005】
さらに、近年、照明装置は、天井面だけでなく、居住空間の様々な場所に取り付けることが検討されているが、天井面以外の部分に設けられた照明装置は、日常生活において使用者が衝突したりすることがある。しかし、従来の透光性樹脂で形成されたカバーは、一般的に硬質であり、衝突した際に使用者に比較的大きな痛みを与えるため、安心感を持って使用することが難しい。
【0006】
そこで、本発明は、照明カバーに光拡散性粒子などの光拡散のための添加剤を配合しなくても、一定の光拡散性を有し、また、照明カバーに一定の柔軟性も付与することも可能な照明装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、内部に気泡を有する気泡含有層を照明カバーに使用することで上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[16]を要旨とする。
[1]光源と、前記光源を覆うように配置され、内部に気泡を有する気泡含有層を有する照明カバーとを備える照明装置。
[2]前記気泡含有層が発泡体である上記[1]に記載の照明装置。
[3]前記照明カバーが、さらに表面層を備え、前記光源側から前記気泡含有層及び表面層がこの順に配置される上記[1]又は[2]に記載の照明装置。
[4]前記気泡含有層の全光線透過率が0.3%以上である上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の照明装置。
[5]前記光源の少なくとも一部が、前記気泡含有層の内部に埋め込まれるように配置される上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の照明装置。
[6]前記光源が、LEDを備える上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の照明装置。
[7]前記光源が、複数の発光素子と、基材シートとを備え、前記基材シート上に複数の発光素子が並べられる上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の照明装置。
[8]反射層を備え、前記反射層が、前記光源の前記照明カバーが設けられる側とは反対側に設けられる、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の照明装置。
[9]天井、壁面、又は床面の一部に設けられた凹部に配置される、上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の照明装置。
[10]天井から吊り下げて配置させる、上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の照明装置。
[11]上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の照明装置を備える収納棚。
[12]前記収納棚の棚板及び側板の少なくともいずれかに照明装置が取り付けられた、上記[11]に記載の収納棚。
[13]前記棚板の一部が引き出されて机の作業台となる、上記[11]又は[12]に記載の収納棚。
[14]机の上に配置される収納棚である、上記[11]又は[12]に記載の収納棚。
[15]前記机の上面上に配置される棚板に前記照明装置が取り付けられた、上記[14]に記載の収納棚。
[16]前記机の上面上に配置される棚板と、該棚板が架け渡される側板を備え、前記照明装置が前記側板に取り付けられた、上記[14]又は[15]に記載の収納棚。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、照明カバーに光拡散性粒子などの光拡散のための添加剤を配合しなくても、一定の光拡散性を有し、また、照明カバーに一定の柔軟性も付与することも可能な照明装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の照明装置の一実施形態の断面図である。
【
図2】本発明の照明装置の別の一実施形態の断面図である。
【
図3】本発明の照明装置の別の一実施形態の断面図である。
【
図4】本発明の照明装置の別の一実施形態の断面図である。
【
図5】照明装置において、光源と気泡含有層の構造を示す拡大断面図である。
【
図6】本発明の収納棚の第1の実施形態を示す斜視図である。
【
図7】本発明の収納棚の第2の実施形態を示す斜視図である。
【
図8】本発明の収納棚の第3の実施形態を示す斜視図である。
【
図9】本発明の収納棚の第3の実施形態の変形例を示す斜視図である。
【
図10】本発明の収納棚の第3の実施形態の別の変形例を示す斜視図である。
【
図11】本発明の収納棚の第3の実施形態の別の変形例を示す斜視図である。
【
図12】本発明の収納棚の第3の実施形態の別の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<照明装置>
本発明において、照明装置は、光源と、光源を覆うように配置され、内部に気泡を有する気泡含有層を有する照明カバーとを備える。
【0011】
[光源]
本発明において使用する光源は、蛍光灯、白熱灯、LED、有機EL素子などの照明装置の光源として使用されるいずれの光源でもよいが、これらの中では、LED,有機EL素子が好ましく、中でもLEDがより好ましい。LEDは、発光ダイオードや無機LEDともいわれるものである。
【0012】
LEDとしては、LEDチップなどから構成される、点光源を使用することが好ましい。点光源のLEDは、光直線性が高いが、気泡含有層を有する照明カバーを使用することで、後述する通り適切に光拡散させることができる。また、点光源は、厚みが小さく、照明装置を薄型にすることも可能である。
なお、点光源であるLEDは、その形状が特に限定されず、四角形などでもよいし他のいかなる形状でもよい。また、点光源であるLEDの大きさは、特に限定されず、例えば、その面積が5cm2以下程度であってもよいし、1cm2以下程度の大きさであってもよいし、1cm2以下程度の大きさであってもよく、また、例えば0.001cm2以上であってもよいし、0.005cm2以上であってもよい。
【0013】
また、光源としては、発光素子を複数並べたものであってもよく、例えばLEDを複数並べて使用してもよい。具体的には、例えば、発光素子が線状に並べられてもよいし、碁盤目状、千鳥状などあらゆる形態で並べられてもよい。
また、光源は、発光素子がシート上に複数並べられて構成された、光源シートであってもよく、中でもLEDが基材シート上に複数並べられて構成されたLEDシートが好ましい。LEDシートにおける各LEDは、通常、上記した点光源である。LEDシートなどの光源シートを使用することで、比較的広い面積を照射できる照明装置を簡単な構成で得ることができる。また、光源として、有機EL素子を使用する場合には、シート状の有機EL素子を光源シートとして使用してもよい。
【0014】
光源シートに使用される基材シートは、樹脂フィルムが好ましいが、樹脂フィルム以外を使用してもよい。基材フィルムは、透明性を有するものであってもよいし、着色フィルムなどであってもよい。基材シートとして着色フィルムを使用することで、発光素子からの光を反射させて、照明カバーが設けられる正面側に照明光として出射させやすくなる。
着色フィルムとしては、白色、淡色、メタリック色などの反射率の比較的高い色に着色されることが好ましく、中でも白色フィルムが好ましい。
【0015】
[照明カバー]
照明カバーは、上記した光源を覆うように配置され、かつ気泡含有層を備えるものである。本発明では、照明カバーが気泡含有層を備えることで、気泡により光源からの光を拡散させることができ、均一でムラのない照明が可能になる。
また、LEDのように光直線性が高くなる光源は、明るさが局所的になりやすく、また、光源を直視した場合目を傷めるおそれなどもあるが、本発明では、光直線性が高くなる光源を使用しても、気泡含有層を有する照明カバーを使用することで光源からの光を拡散させ、均一でムラのない照明が可能になる。
さらに、後述する通り、発泡倍率などを調整して、気泡含有層における拡散度合いを適宜調整することで、LEDのような直線性が高い光を発する光源であっても、間接照明のような柔らかい光にすることもできるため、居心地の良い空間を作り出すこともできる。
【0016】
照明カバーは、気泡含有層単体で構成されてもよいが、気泡含有層に加えて、表面層を備えることが好ましい。表面層が設けられる場合、照明カバーにおいて、光源側から気泡含有層及び表面層がこの順に配置されるとよい。
照明カバー(すなわち、気泡含有層、又は気泡含有層と表面層の積層体)は、所望の形状に適宜成形されてもよい。成形方法としては、真空成形、圧縮成形、スタンピング成形等が挙げられる。
【0017】
<気泡含有層>
照明カバーに使用される気泡含有層は、発泡体により構成されることが好ましい。気泡含有層を発泡体とすることで、内部に均等に形成された気泡を容易に含有させることができる。また、柔軟性を確保しやすく、変形しやすいため、照明カバー設置のためのスペース上の制約が少なくなる。また、触感が柔らかくなり使用者に安心感を与えやすくなる。
気泡含有層の厚みは、例えば6mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下であり、また、例えば0.1mm以上、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上である。気泡含有層の厚みを上記範囲内とすることで、気泡含有層で光源からの光を拡散させやすくなり、また、光源からの光を照明カバーを介して外部に照射させやすくなる。
【0018】
(全光線透過率)
気泡含有層の全光線透過率は、例えば0.3%以上である。気泡含有層の全光線透過率を0.3%以上とすることで、照明カバーに光透過性を持たせて、光源から発せられた光を外部に一定量以上の光量で出射させやすくなる。気泡含有層の全光線透過率は、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、30%以上であることがよりさらに好ましい。また、気泡含有層の全光線透過率は、光透過性の観点からは高ければ高いほどよいが、光拡散性を高めやすい観点から、例えば95%以下でもよいし、90%以下でもよいし、85%以下でもよい。
【0019】
(ヘイズ値)
気泡含有層のヘイズ値は、60%以上であることが好ましい。気泡含有層のヘイズ値を60%以上とすることで、照明カバーで光源からの光を拡散させやすくなる。光拡散性の観点から、ヘイズ値は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。ヘイズ値の上限は、特に限定されないが、光透過性の観点から、100%未満であればよい。
全光線透過率及びヘイズ値は、発泡倍率、樹脂成分、樹脂に配合される配合物等を適宜調整することにより前記範囲とすることができる。なお、全光線透過率は、ASTM D1003に準拠して、ヘーズメーターを用いて測定することができる。また、ヘイズ値は、ASTM D1003に準拠して、ヘーズメーターを用いて測定することができる。
【0020】
<見掛け密度>
本発明において、気泡含有層の見掛け密度は0.025~0.60g/cm3であることが好ましい。気泡含有層の見掛け密度が上記範囲内であると、光透過性を向上させつつ、一定の柔軟性及び機械強度が付与される。また、ヘイズ値も所望の範囲内に調整しやすくなる。これら観点から、見掛け密度は0.05~0.50g/cm3がより好ましく、0.10~0.40g/cm3がさらに好ましく、0.10~0.33g/cm3がよりさらに好ましい。
【0021】
<25%圧縮強度>
気泡含有層の25%圧縮強度は、10~2500kPaが好ましい。25%圧縮強度を前記上限値以下とすると、気泡含有層の柔軟性が向上し、様々な形状に変形して照明カバー設置のためのスペース上の制約が少なくなる。また、使用者に安心感を与えやすくなる。一方で、下限値以上とすることで、気泡含有層の機械強度が良好となる。これら観点から、気泡含有層の25%圧縮強度は、30~2000kPaがより好ましく、50~1500kPaがさらに好ましく、80~900kPaがよりさらに好ましい。
なお、25%圧縮強度は、JIS K6767に準拠した測定方法で測定した値である。
【0022】
<発泡倍率>
気泡含有層が発泡体である場合、発泡体の発泡倍率は、1.3~40倍が好ましく、1.5~20倍がより好ましく、2~15倍が更に好ましく、3~10倍がより更に好ましい。発泡倍率が前記下限値以上であると発泡体が適度に発泡され、光透過性が向上しつつ、柔軟性も良好となる。一方で、発泡倍率が高くなると光透過性も向上する傾向にあるが、機械強度を確保するためには前記上限値以下とすることが好ましい。なお、発泡倍率は、発泡前の発泡体の密度を、発泡後の発泡体の密度(見掛け密度)で除することで算出できる。
【0023】
発泡体を構成する樹脂は、特に制限されず、様々な種類の樹脂を使用できる。具体的には、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、各種エラストマー、ゴム成分などが使用できるが、これらの中ではポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂を使用することで、発泡シートに適度な柔軟性及び機械的強度を付与することができる。また、樹脂は、発泡を容易にする観点から、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0024】
発泡体は、樹脂を含む発泡性組成物を発泡してなるものであればよいが、少なくともポリオレフィン系樹脂を含む発泡性組成物を発泡してなるものであることが好ましく、ポリオレフィン系樹脂を含む発泡性組成物を架橋かつ発泡してなるものであることがより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、柔軟性の観点から、これらの中ではポリエチレン樹脂が好ましい。
【0025】
<架橋度(ゲル分率)>
本発明の発泡体は、上記の通り架橋したものであることが好ましく、その架橋度(ゲル分率)は、10~70質量%が好ましい。ゲル分率を前記下限値以上とすると、発泡体において十分な架橋が形成されるため機械強度が高くなりやすい。また、架橋度を上限値以下とすると、発泡体の柔軟性等を確保しやすくなる。このような観点から、架橋度は、15~60質量%がより好ましく、20~55質量%が更に好ましい。
【0026】
以下、発泡体を構成する樹脂として、ポリオレフィン系樹脂を使用する場合の発泡体(ポリオレフィン系樹脂発泡体)についてより詳細に説明する。
【0027】
[ポリオレフィン系樹脂発泡体]
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、ポリオレフィン系樹脂を含有するポリオレフィン系樹脂組成物を発泡してなるポリオレフィン系樹脂発泡体である。
また、ポリオレフィン系樹脂発泡体では、ポリオレフィン系樹脂が主成分であることが好ましい。具体的には、ポリオレフィン系樹脂の含有量は、ポリオレフィン系樹脂組成物に含まれる樹脂成分全量基準で、65質量%以上であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂を主成分として用いたポリオレフィン系樹脂発泡体においては、一般的に光透過性が低下する傾向にあるが、本発明においては、発泡倍率、樹脂成分、樹脂に配合される配合物などを適宜調整することで、全光線透過率に優れるポリオレフィン系樹脂発泡体を得ることができる。
【0028】
<ポリオレフィン系樹脂>
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体から選ばれる1種以上が好ましい。これら樹脂は、いずれか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、ポリオレフィン系樹脂を主成分であることが好ましく、具体的にポリオレフィン系樹脂の含有量は、ポリオレフィン系樹脂組成物に含まれる樹脂成分全量基準で、65質量%以上であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂の含有量が65質量%以上となることで、発泡体の機械強度、柔軟性などを確保しやすくなる。また、後述するように、1種のポリオレフィン系樹脂を主成分樹脂にしやすくなる。これら観点から、ポリオレフィン系樹脂の含有量は、発泡体樹脂組成物に含まれる樹脂成分全量基準で、好ましくは70~100質量%であり、より好ましくは75~100質量%である。なお、以下では、ポリオレフィン系樹脂組成物に含まれる樹脂成分全量基準を単に「樹脂成分全量基準」という。
【0029】
≪ポリエチレン樹脂≫
ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂(0.93g/cm3以下、LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(0.930g/cm3より大きく0.942g/cm3未満、MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(0.942g/cm3以上、HDPE)が挙げられる。また、低密度ポリエチレン樹脂の好適な具体例としては、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)が挙げられる。
【0030】
これらの中では、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂が好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂がより好ましい。これらの樹脂を使用することで、発泡体の圧縮強度変化率を低くしやすくなる。
なお、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の密度は、好ましくは0.90g/cm3以上であり、より好ましくは0.91g/cm3以上0.93g/cm3以下である。また、高密度ポリエチレン樹脂の密度は、好ましくは0.98g/cm3以下であり、より好ましくは0.95g/cm3以上0.97g/cm3以下である。高密度ポリエチレン樹脂や直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の密度をこれら範囲内とすることで、発泡体の柔軟性を損なうことなく、圧縮強度等を低くしやすくなる。
【0031】
ポリエチレン樹脂は、エチレンのホモポリマーでもよいが、エチレンを主成分(全モノマーの好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上)とした、エチレンと少量のα-オレフィンの共重合体等でもよい。α-オレフィンとしては、好ましくは炭素数3~12、より好ましくは炭素数4~10のものが挙げられ、具体的には、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン等が挙げられる。なお、共重合体において、これらのα-オレフィンは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリエチレン樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
≪ポリプロピレン樹脂≫
ポリプロピレン樹脂としては、プロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレンでもよいし、プロピレンを主成分(全モノマーの好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上)とした、プロピレンと少量のエチレン及びプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
プロピレンと、エチレン及びプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体としては、ブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)、ランダムブロック共重合体等が挙げられる。
プロピレン以外のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン等の炭素数4~10程度のα-オレフィン等が挙げられるが、これらの中でも、成形性及び耐熱性の観点から、エチレンが好ましい。なお、共重合体において、これらのα-オレフィンは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリプロピレン樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
本発明においては、チーグラー・ナッタ化合物、メタロセン化合物、酸化クロム化合物等の重合触媒で重合されたポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又はこれらの混合物のいずれを用いてもよい。メタロセン化合物の重合触媒により得られた、ポリエチレン樹脂、特に直鎖状低密度ポリエチレンを用いることにより、柔軟性が高い発泡体を得やすくなる。
【0034】
≪エチレン-酢酸ビニル共重合体≫
ポリオレフィン系樹脂として使用するエチレン-酢酸ビニル共重合体は、例えば、エチレン由来の構成単位を50質量%以上含有するエチレン-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。エチレン-酢酸ビニル共重合体はポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂との相溶性が高いため、エチレン-酢酸ビニル共重合体と、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂から選ばれる1種以上とを併用することにより発泡体の光透過性が向上する。
エチレン-酢酸ビニル共重合体の密度は、好ましくは0.92g/cm3以上、より好ましくは0.93g/cm3以上、更に好ましくは0.94g/cm3以上であり、そして、好ましくは0.97g/cm3以下、より好ましくは0.96g/cm3以下である。エチレン-酢酸ビニル共重合体の密度をこれら範囲内とすることで、発泡体の柔軟性を損なうことなく、圧縮強度等を低くしやすくなる。
【0035】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂組成物は、上記したポリオレフィン樹脂のうちいずれか1種を主成分樹脂として使用することが好ましい。ここで、主成分樹脂とは、ポリオレフィン樹脂のうちいずれか1種の樹脂が樹脂成分全量基準で65質量%以上含有されることを意味し、したがって、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、又はエチレン-酢酸ビニル共重合体のいずれか1種を65質量%以上含有することが好ましい。
一般的に、樹脂は、2種以上をブレンドすると、その樹脂同士は完全に混合せずに、混合に起因して曇りが生じるが、本発明では、特定の1種の樹脂(すなわち、単一樹脂成分)を主成分樹脂として使用することで、ブレンドに起因した曇りが生じにくくなり発泡体の光透過性が高められる。
【0036】
主成分樹脂とする樹脂は、上記した樹脂の中でも、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂のいずれかが好ましく、ポリプロピレン樹脂がより好ましい。発泡体は、主成分樹脂をポリプロピレン樹脂とすることで、耐熱性に優れ、光源により加熱されても長期間にわたって使用できる。
より具体的に説明すると、ポリプロピレン樹脂を主成分樹脂として使用する場合には、そのポリプロピレン樹脂を、樹脂成分全量基準で65質量%以上含有させるとよく、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上、最も好ましくは100質量%含有させる。
また、好ましくはポリプロピレン樹脂のうちでも特定の1種の樹脂を、樹脂成分全量基準で65質量%以上含有させる。例えば、ブロックポリプロピレンを65質量%以上としたり、ランダムポリプロピレンを65質量%以上としたりするとよく、この場合も、これら特定の1種の樹脂は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上、最も好ましくは100質量%含有させる。
【0037】
同様に、ポリエチレン樹脂を主成分樹脂として使用する場合には、そのポリエチレン樹脂を、樹脂成分全量基準で65質量%以上含有させるとよく、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上含有させる。
また、好ましくはポリエチレン樹脂のうちでも特定の1種の樹脂を、樹脂成分全量基準で65質量%以上含有させる。例えば、LDPEを65質量%以上としたりするとよく、この場合も、これら特定の1種の樹脂は、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上である。
【0038】
また、ポリプロピレン樹脂を主成分樹脂として使用する場合、ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン樹脂を単独使用してもよいが、ポリプロピレン樹脂に加えて、ポリエチレン樹脂及びエチレン-酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種を併用してもよい。ポリプロピレン樹脂を単独使用すると、他のポリオレフィン樹脂と相溶させる必要がなくなるので、樹脂同士の混合に起因する透明性の低下が防止される。また、ポリプロピレン樹脂と、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリエチレン樹脂から選ばれる少なくとも1種とを併用することにより相溶性が良好となり、透明性が良好に維持される。さらに、架橋度や発泡倍率を調整しやすくなるため、発泡体の全光線透過率を調整しやすくなる。
この場合、樹脂成分全量基準で、ポリプロピレン樹脂の含有量が65~95質量%であり、ポリエチレン樹脂及びエチレン-酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種が5~35質量%であることが好ましい。また、前者が75~95質量%、後者が5~25質量%がより好ましく、前者が85~95質量%、後者が5~15質量%がさらに好ましい。
また、併用する樹脂は、ポリエチレン樹脂又はエチレン-酢酸ビニル共重合体のいずれかであることが好ましいが、エチレン-酢酸ビニル共重合体であることがより好ましい。
また、ポリプロピレン樹脂を主成分樹脂として使用する場合、後述するようにエラストマーをさらに使用してもよい。この場合のエラストマーの含有量は後述するとおりである。
【0039】
一方で、ポリエチレン樹脂を主成分樹脂として使用する場合も、ポリオレフィン系樹脂として、ポリエチレン樹脂に加えて、ポリプロピレン樹脂及びエチレン-酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種を併用してもよいが、ポリエチレン樹脂を単独使用することが好ましい。ただし、ポリエチレン樹脂を単独使用する場合には、後述するエラストマーをさらに使用することが好ましく、その際のエラストマーの含有量は後述するとおりである。
【0040】
ポリオレフィン系樹脂発泡体を構成する樹脂は、ポリオレフィン系樹脂のみで構成されてもよいが、ポリオレフィン系樹脂とエラストマーとが混合されたものであってもよい。ポリオレフィン系樹脂組成物がエラストマーを含むことで、ポリオレフィン系樹脂の結晶化度を下げることができ、発泡体の全光線透過率が向上する。すなわち、本発明では、エラストマーは、いわゆる透明化剤としての機能を果たすものを使用するとよい。
また、エラストマーを使用することで、発泡体の柔軟性や衝撃吸収性を向上させることができる。
【0041】
エラストマーとしては、ポリオレフィン系樹脂と相溶性が良いエラストマーが使用され、具体的には、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、スチレンゴム等が挙げられる。
また、エラストマーとしては、熱可塑性エラストマーも挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
エラストマーは、上記成分を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。発泡体の全光線透過率を上記範囲内に調整しやすくする観点から、スチレンゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、中でもスチレンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマーがより好ましい。
【0042】
スチレンゴムとしては、スチレンと共役ジエン化合物のランダム共重合体などの各種重合体が挙げられ、その水素添加物であってもよい。具体的には、スチレンブタジエン共重合体(SBR)、又はその水素添加物(HSBR)などが挙げられる。
【0043】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、ブレンド型、動的架橋型が挙げられ、より具体的には、ハードセグメントにポリプロピレンやポリエチレン等の熱可塑性結晶性ポリオレフィンを使用し、ソフトセグメントに完全加硫又は部分加硫したゴムを使用した熱可塑性エラストマーが挙げられる。ソフトセグメント成分は、プチルゴム、ハロブチルゴム、EPDM、EPM、アクリロニトリル/ブタジエンゴム、NBR、天然ゴム等が挙げられ、好ましくはEPDMを使用する。
また、オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、ブロックコポリマータイプも挙げられる。ブロックコポリマータイプとしては、結晶性ブロックと、ソフトセグメントブロックとを有するものが挙げられ、より具体的には、結晶性オレフィンブロック-エチレン・ブチレン共重合体-結晶性オレフィンブロックコポリマー(CEBC)が例示される。CEBCにおいて、結晶性オレフィンブロックは、結晶性エチレンブロックであることが好ましく、そのようなCEBCの市販品としては、JSR株式会社製の「DYNARON 6200P」等が挙げられる。
【0044】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレンの重合体又は共重合体ブロックと、共役ジエン化合物の重合体又は共重合体ブロックとを有するブロックコポリマーなどが挙げられる。共役ジエン化合物としては、イソプレン、ブタジエンなどが挙げられる。
本発明に用いるスチレン系熱可塑性エラストマーは、水素添加していても、していなくてもよい。水素添加する場合、水素添加は公知の方法で行うことができる。
【0045】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、通常ブロック共重合体であり、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン/ブチレンブロック共重合体(SEB)、スチレン-エチレン/プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-エチレン/ブチレン-結晶性オレフィンブロック共重合体(SEBC)などが挙げられる。
上記したスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、ブロック共重合体が好ましく、中でもSEBCがより好ましい。このようなエラストマーをポリオレフィン系樹脂と併用し、更に発泡倍率を調整することにより発泡体の光透過性を向上させることが可能になる。
【0046】
なお、スチレン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、商品名「DYNARON 1320P」(スチレン含有量10質量%)、株式会社JSR製、商品名「DYNARON 8600P」(スチレン含有量15質量%)、商品名「DYNARON 4600P」(スチレン含有量20質量%)などが挙げられる。
【0047】
本発明において、樹脂成分としてポリオレフィン系樹脂とエラストマーとを併用する場合、エラストマーの含有量は、樹脂成分量基準で、5~30質量%が好ましく、8~22質量%がより好ましい。エラストマーの含有量がこれら範囲内であれば、発泡体の機械強度を維持しつつ、発泡体の光透過性をより向上できる。
【0048】
<発泡剤>
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂、及び発泡剤などを含むポリオレフィン系樹脂組成物を発泡することで得られる。発泡剤としては、熱分解型発泡剤が好ましい。
熱分解型発泡剤としては、有機発泡剤、無機発泡剤が使用可能である。有機発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
無機発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中では、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミドがより好ましい。
熱分解型発泡剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
ポリオレフィン系樹脂組成物における発泡剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、1~30質量部が好ましく、2~25質量部がより好ましく、2~20質量部がさらに好ましい。発泡剤の配合量を1質量部以上にすることで、樹脂組成物は適度に発泡され、適度な柔軟性と衝撃吸収性を発泡体に付与することが可能になる。また、発泡剤の配合量を30質量部以下にすることで、発泡体が必要以上に発泡することが防止され、発泡体の機械強度等を良好にすることができる。
【0050】
<添加剤>
ポリオレフィン系樹脂組成物は、造核剤、架橋助剤、分解温度調整剤、及び酸化防止剤等の成分を含んでいてもよい。
【0051】
<造核剤>
本発明に用いる造核剤としては、結晶核生成過程の進行速度を向上させる効果があるものであれば特に制限はない。ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン系樹脂に造核剤を添加することにより、生じる結晶の大きさを小さくすることができるため発泡体の透明性が向上する。
本発明において用いる造核剤としては、結晶核生成過程の進行速度を向上させる効果があるものとして、重合体の分子鎖の吸着過程を経て分子鎖配向を助長する効果のある物質が挙げられる。
より具体的には、高融点ポリマー、有機カルボン酸若しくはその金属塩、脂肪族アルコール族、ジベンジリデンソルビトール若しくはその誘導体、ロジン酸部分金属塩、アミド化合物、無機微粒子、有機リン酸化合物若しくはその金属塩、イミド類、キナクリドン類、キノン類、芳香族スルホン酸塩若しくはその金属塩、糖類、及びこれらの混合物が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
本発明において造核剤を用いる場合、ポリオレフィン系樹脂組成物中の造核剤の含有量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.5~10質量部が好ましく、1.5~8質量部がより好ましく、2~7質量部がより更に好ましい。造核剤の含有量が前記下限値以上であると発泡体の透明性が向上する。一方、造核剤の含有量が前記上限値以下であると製造コストを抑えつつ発泡体の透明性を向上させることができる。
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、造核剤及びエラストマーの両方を有してもよいが、いずれか一方を有することが好ましい。いずれか一方を有することで、効果的に光透過性を向上させることができる。
【0053】
架橋助剤としては、多官能モノマーを使用することができる。架橋助剤をポリオレフィン系樹脂に添加することによって、後述する工程(2)において照射する電離性放射線量を低減して、電離性放射線の照射に伴う樹脂分子の切断、劣化を防止する。
架橋助剤としては具体的には、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート等の1分子中に3個の官能基を持つ化合物や、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ジビニルベンゼン等の1分子中に2個の官能基を持つ化合物、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、エチルビニルベンゼン、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。
これらの架橋助剤は、単独で又は2以上を組み合わせて使用する。
【0054】
架橋助剤の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.5~10質量部が好ましく、1.0~8質量部がより好ましく、1.5~5質量部が更に好ましい。該添加量を0.5質量部以上とすることにより発泡体が所望する架橋度を安定して得ることが可能となり、10質量部以下とすることにより発泡体の架橋度の制御が容易となる。
【0055】
ポリオレフィン系樹脂組成物には、分解温度調整剤が配合されていてもよい。分解温度調整剤は、熱分解型発泡剤の分解温度を低くしたり、分解速度を速めたり調節するものとして配合されるものであり、具体的な化合物としては、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、尿素等が挙げられる。分解温度調整剤は、発泡体の表面状態等を調整するために、例えばポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.01~5質量部配合される。
【0056】
ポリオレフィン系樹脂組成物には、酸化防止剤が配合されていてもよい。酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等のフェノール系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート等のイオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、例えばポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.01~5質量部配合される。
ポリオレフィン系樹脂組成物には、これら以外にも、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材等の発泡体に一般的に使用する添加剤が配合されてもよい。
【0057】
[発泡体の製造方法]
ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法に特に制限はないが、少なくとも樹脂及び熱分解型発泡剤を含むポリオレフィン系樹脂組成物からなる発泡性シートを加熱して熱分解型発泡剤を発泡させることで製造できる。その製造方法は、より具体的には、以下の工程(1)~(3)を含むことが好ましい。
工程(1):少なくとも樹脂及び熱分解型発泡剤を含むポリオレフィン系樹脂組成物からなる発泡性シートを成形する工程
工程(2):発泡性シートに電離性放射線を照射して発泡性シートを架橋させる工程
工程(3):架橋させた発泡性シートを加熱し、熱分解型発泡剤を発泡させて、発泡体を得る工程
【0058】
工程(1)において、発泡性シートを成形する方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂及び添加剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機からポリオレフィン系樹脂組成物をシート状に押出すことによって成形すればよい。また、発泡体は、ポリオレフィン系樹脂組成物をプレス等することにより成形してよい。
発泡性シートの成形温度(すなわち、押出し時の温度、又はプレス時の温度)は、50℃以上250℃以下が好ましく、80℃以上180℃以下がより好ましい。
【0059】
工程(2)においてポリオレフィン系樹脂組成物を架橋する方法としては、発泡性シートに電子線、α線、β線、γ線等の電離性放射線を照射する方法を用いる。上記電離放射線の照射量は、得られる発泡体の架橋度が上記した所望の範囲となるように調整すればよいが、1~12Mradであることが好ましく、1.5~8Mradであることがより好ましい。
【0060】
工程(3)において、ポリオレフィン系樹脂組成物を加熱し熱分解型発泡剤を発泡させるときの加熱温度は、熱分解型発泡剤の発泡温度以上であればよいが、好ましくは200~300℃、より好ましくは220~280℃である。
【0061】
また、本製造方法において、発泡体は、MD又はTDのいずれか一方又は両方に延伸させてもよい。発泡体の延伸は、発泡性シートを発泡させて発泡体を得た後に行ってもよいし、発泡性シートを発泡させつつ行ってもよい。なお、発泡性シートを発泡させて発泡体を得た後、発泡体を延伸する場合には、発泡体を冷却することなく発泡時の溶融状態を維持したまま続けて発泡体を延伸してもよく、発泡体を冷却した後、再度、発泡体を加熱して溶融又は軟化状態とした上で発泡体を延伸してもよい。発泡体は延伸することで薄厚にしやすくなる。また、延伸時に発泡体は、例えば100~280℃、好ましくは150~260℃に加熱すればよい。本発明では、発泡体を延伸することで、発泡体の気泡径がMD又はTDの一方又は両方に沿って大きくなり、光透過性が高くなりやすくなる。
【0062】
ただし、本製造方法は、上記に限定されずに、上記以外の方法により、発泡体を得てもよい。例えば、電離性放射線を照射する代わりに、ポリオレフィン系樹脂組成物に予め有機過酸化物を配合しておき、発泡性シートを加熱して有機過酸化物を分解させる方法等により架橋を行ってもよい。
また、本発明の発泡体の製造においては、得られた発泡体をスライスすることにより所望の厚みを有する発泡体としてもよい。
【0063】
[表面層]
上記のとおり、発泡体の表面側(すなわち、光源が設けられる側とは反対側)には表面層が設けられることが好ましい。表面層が設けられることで、発泡体が表面に露出しないので、照明カバーの意匠性を高めることができる。なお、表面層は、表面化粧シートなどと呼ばれることもある。
照明カバーに使用される表面層としては、具体的には、ポリ塩化ビニルシート、ポリ塩化ビニルとABS樹脂との混合樹脂、熱可塑性エラストマーシートなどで例示される樹脂シート、天然繊維や人造繊維を用いた織物、編物、不織布、人工皮革や合成皮革等のレザー等が挙げられる。表面層としては、これらの中では、樹脂シートが好ましい。
【0064】
表面層には、適宜幾何学模様の凹凸などを付されてもよいし、表面に印刷などが施されてもよい。さらに、傷つきを防止する観点から、表面層表面に、各種コーティングが施されていてもよい。
凹凸としては、意匠性を高める観点から、表面層の表面に形成されたシボ模様などでもよい。また、本革、石、木等から転写した凹凸を付したシリコーンスタンパ等を用いて、表面層の表面に皮目や木目模様などを付してもよい。表面層の表面に施される印刷は、特に限定されず、木目調、皮革調の印刷などであってもよい。
【0065】
表面層は、光透過性を有するものを使用するとよい。表面層が光透過性を有することで、光源から発した光を気泡含有層及び表面層を介して外部に適切に照射することができる。表面層の全光線透過率は、光源からの光の出射効率を高めるために、例えば0.3%以上、好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上である。また、発泡体などの気泡含有層が外部から視認しにくくするためには、表面層の全光線透過率は、例えば80%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下である。
【0066】
表面層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.08~5mm、好ましくは0.1~2mmであり、より好ましくは0.2~1mmである。表面層の厚みをこれら範囲内とすることで、表面層の機械強度などを良好にしつつ、高い光透過性なども確保できる。また、表面層の厚みを大きくすることで、発泡体などの内部が透けて見えることを防止することができる。
【0067】
表面層は、気泡含有層に貼り合わせるとよい。表面層を気泡含有層に貼り合わせる方法としては、例えば、押出ラミネート法、接着剤を塗布した後貼り合わせる接着ラミネート法、熱ラミネート法(熱融着法)、ホットメルト法、高周波ウェルダー法等が挙げられる。また、表面層は、接着剤、粘着テープなどにより気泡含有層に貼り合わせてよいが、如何なる方法でも両者を接着させてもよい。
【0068】
本発明の照明カバーは、印刷層などの上記表面層、及び気泡含有層以外の層を有してもよい。例えば、照明カバーの最表面(例えば、表面層の表面、表面層の表面が設けられない場合には、発泡体の表面)に印刷層が設けられることで、照明カバーの意匠性を高めることができる。また、印刷層により、照明光が透過されない遮光領域などが設けられてもよい。印刷層を形成させる方法としては、インクジェット法など公知の方法を適宜用いることができる。
【0069】
本発明では、上記の通り表面層を設ける場合でも、一定以上の全光線透過率を有するとよく、したがって、照明カバーの透過率は、一定以上であればよい。照明カバーの全光線透過率は、光源からの光の出射効率を高めるために、例えば0.3%以上であればよいが、好ましくは1%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上である。また、照明カバーの全光線透過率は、例えば95%以下でもよいし、80%以下でもよいし、50%以下でもよいし、30%以下でもよい。
なお、照明カバーは、上記の通り、表面層や気泡含有層に印刷層が設けられて部分的に全光線透過率が低下する領域があるが、そのような場合には、照明カバーの全光線透過率が最大となる領域の全光線透過率及を意味する。なお、照明カバーの全光線透過率は、表面層や気泡含有層の厚み、組成などにより調節することができる。
【0070】
本発明の照明装置の具体的な構成について、
図1~4を用いてより詳細に説明する。なお、以下の説明においては、光源11として光源シートを使用する場合を例示するが、光源は光源シートに限定されない。また、
図1~4では、照明カバーとして、表面層及び気泡含有層を備える例を示すが、表面層を適宜省略してもよい。
照明装置10は、
図1に示すとおり、例えば、光源11と、照明カバー12とを備え、例えば、光源11の表面に照明カバー12が積層されるように配置されるとよい。また、照明カバー12は、光源11側から気泡含有層13、表面層14がこの順に配置される積層構造を有するとよい。
【0071】
(反射層)
また、照明装置は、反射層を有してもよい。
図2に示すように、反射層16は、光源11の背面側、すなわち、照明カバー12が設けられる側とは反対側に設けられるとよい。反射層16が設けられると、光源から背面側に放射される迷光が、反射層16で反射されて正面側に出射され、照明装置における光源からの光の出射効率が良好となる。
反射層としては、特に限定されないが、例えば着色フィルム、着色板が使用される。着色フィルムとしては、白色、淡色、メタリック色などの反射率の比較的高い色に着色されることが好ましく、中でも白色フィルムが好ましい。着色板としては、白色、淡色、メタリック色などの反射率の比較的高い色に着色されることが好ましく、中でも白色板が好ましい。
着色フィルムとしては、公知の着色フィルムを使用すればよく、例えば、酸化チタン、二酸化珪素、炭酸カルシウムなどの着色剤を配合した樹脂フィルムなどが使用される。また、着色板としては、着色剤を配合した樹脂板などが挙げられる。
なお、反射層16は、光源11からの光が背面側に放射される場合に有効であり、例えば、光源11が光源シートである場合には、光源シートを構成する基材シートが光透過性を有する場合に使用すると有効である。
【0072】
上記した反射層は、特に限定されないが、光源に貼り合わせるとよい。反射層は、例えば接着剤、粘着テープを使用して光源に貼り合わせてもよい。また、反射層が樹脂フィルムである場合には、例えば、押出ラミネート法、接着剤を塗布した後貼り合わせる接着ラミネート法、熱ラミネート法(熱融着法)、ホットメルト法、高周波ウェルダー法等により光源に貼り合わせてもよいが、如何なる方法で光源に貼り合わせてもよい。
【0073】
また、反射層16は、光源(例えば、光源シート)の背面に形成された塗膜や、後述する金属板、グラファイトシートなどにより構成される放熱層の正面側に形成された塗膜などであってもよい。塗膜は、例えば、着色層であり、着色剤を含有するインクを塗布して形成した層などであればよい。着色剤の具体例は上記の通りである。
【0074】
(放熱層)
また、照明装置は、放熱層を有してもよい。
図3に示すように、放熱層17は、光源11の背面側、すなわち、照明カバー12が設けられる側とは反対側に設けられるとよい。放熱層17は、熱伝導率が高い材料により形成される層であり、例えばアルミニウム板、ステンレス板などの金属板などにより構成される金属層でもよいし、グラファイトシートなど金属層以外の層であってもよい。また、放熱層は、金属層により構成される場合には、反射層としての機能も果たす。
照明装置10に放熱層17が設けられる場合、反射層16と共に放熱層17が設けられてもよい。この場合、
図4に示すように光源11側から反射層16及び放熱層17の順に設けられるとよい。
放熱層17は、特に限定されないが、例えば、接着剤、粘着テープなどを使用して光源(光源シートなど)の背面や反射層に貼り合わせるとよい。
【0075】
図5は、光源がLEDシートである場合のLEDシートと気泡含有層の積層構造の具体例の一例を示す。LEDシート20は、
図1に示すように、基材シート21と、基材シート21の一方の面に設けられた複数のLED22を備える。また、LEDシート20の上には、典型的には気泡含有層13が積層されるが、気泡含有層13は、上記の通り柔軟性を有するのでLED22が設けられた部分において圧縮変形して、LED22が気泡含有層13の内部に埋め込まれるように配置される。このように、本発明では、光源の一部を気泡含有層13の内部に埋め込むように配置することで、照明装置をより薄型化することが可能になる。
なお、以上の説明では、光源としてLEDシートを使用する例を説明したが、LEDシート以外の場合でも、発光素子などの光源の少なくとも一部が埋め込まれてもよいし、本発明では、必ずしも光源の少なくとも一部が気泡含有層13の内部に埋め込まれる必要もない。
【0076】
<使用方法>
本発明の照明装置は、様々な用途に使用できるが、例えば、天井に設けられて、室内などを照明するために使用される。天井に設けられた照明装置は、いわゆる埋め込み型であってもよい。埋め込み型の照明装置は、天井の一部に設けられた凹部に設けられた照明装置である。本発明の照明装置は、例えばLEDシートなどの光源シートを使用することで薄型にできるので、埋め込み型とする場合、比較的浅い凹部の内部に照明装置を設置することができる。埋め込み型の照明装置は、照明カバーの表面(例えば、表面層)を天井面と同一平面上に配置させたりすることなどで、デザイン性の高い照明装置とすることができる。
【0077】
また、天井に設ける照明装置は、埋め込み型に限定されず、吊り下げ型にしてもよい。吊り下げ型の照明装置は、治具などを用いて上記照明装置を天井面から吊り下げて使用するものである。ただし、天井面に設ける照明装置は、埋め込み型及び吊り下げ型に限定されず、いかなる方式のものでもよく、例えば、凹部以外の天井面に照明装置を吊り下げずに取り付けてもよい。
本発明の照明装置は、天井以外に設けられてもよく、例えば、壁面、床面などに設けられてもよい。壁面、床面などに設けられた照明装置は、壁面又は床面の一部に設けられる凹部に配置される埋め込み型であってもよいが、埋め込み型以外であってもよい。
【0078】
本発明の照明装置は、天井面、壁面、床面などに取り付けられて使用されるもの以外であってもよく、建築物、特に住居用建築物の天井面、壁面、床面以外の部分に取り付けられてもよい。また、照明装置は、家具などに取り付けられて使用されてもよい。
照明装置は、特に限定されないが、粘着テープ、接着剤、ビスなどいかなる固定手段によって家具、天井面、壁面、床面、これら以外の部分に取り付けられるとよい。
【0079】
中でも照明装置は、収納棚に取り付けられて使用されることが好ましい。収納棚は、いかなる種類の収納棚でもよいが、典型的には横方向に沿って配置される棚板を有する。また、収納棚は、典型的には縦方向に沿って配置される側板も有し、棚板が側板間に架け渡されるとよい。また、棚板は、最も上側のものを天板といい、最も下側のものを地板ということがある。収納棚は、一般的に衣類、本類、生活用品、食料品などの収納物をその上に収納する。
収納棚は、いかなるタイプの収納棚でもよく、本棚でもよいし、衣類用収納棚でもよいし、食料品用収納棚などであってもよい。また、収納棚は、机の上などに設けられた収納棚であってもよい。
【0080】
図6は、収納棚の第1の実施形態を示す。本実施形態では、収納棚は机の上に設けられた収納棚50である。収納棚50は、机51の上面(デスク面)上に配置される棚板52を備え、棚板52は、机51の上面上に設置された両側板53、53間に架け渡されている。本実施形態において、照明装置10は、棚板52の前端面52Aに取り付けられる。照明装置10は、薄型化でき、前端面52Aより大きく突出することがないので、使用者に圧迫感を与えることがなく、また、デザイン性にも優れる。
ここで、照明装置10が取り付けられた棚板52は、机51の上面に近接した位置に配置される棚板であり、棚板52の前端面52Aに取り付けられた照明装置10によって、机51の上面を照明することができ、手元照明として有効に使用できる。さらに、照明装置10は、柔軟性を有する気泡含有層を備えることで、触感が柔らかく使用者に安心感を与えることができる。
【0081】
図7は、収納棚を机の上に設けた収納棚の第2の実施形態を示す。
図7に示す収納棚60は、複数の棚板62、62を備え、さらに、棚板62が架け渡される側板63、63も設けられる。側板63、63は、机51の上面に取り付けられている。また、収納棚60は、背面側に背面板64が設けられるが、背面板64は適宜省略されてもよい。
本実施形態において、照明装置10は、
図7に示すように、複数の棚板62のうち、最も机に近い位置に配置される棚板62の前端面62Aに配置される。また、照明装置10は、側板63の前端面63Aにも設けられる。なお、側板63の前端面に設けられる照明装置10は、本実施形態では、側板63の下側部分に配置される。側板63の下側部分は、例えば、最も机に近い位置に配置される棚板62よりも下側の部分であり、その棚板62と机51の上面とを接続する部分である。
【0082】
本実施形態でも、照明装置10は、薄型化でき、前端面62A、63Aに取り付けられても、前端面62A、63Aより大きく突出することがなく、デザイン性に優れたものとすることができる。また、机51の上面に近い位置にある、棚板62の前端面62A、側板63の前端面63Aの下側部分に照明装置を配置することで、机51の上面を適切に照明することができる。さらに、照明装置10は、柔軟性を有する気泡含有層を備えることで、触感が柔らかく使用者に安心感を与えることができる。
【0083】
なお、上記のように側板及び棚板の少なくともいずれかの前端面に照明装置が設けられる収納棚は、机の上に設けられる収納棚に限定されず、いかなる収納棚であってもよい。
また、以上の第2の実施形態において、照明装置10を配置した位置は一例であって、上記配置位置に限定されず、例えば、棚板62の内面や、側板63の内面に照明装置を配置してもよいし、背面板64の前面に照明装置を配置してもよい。そのような場合も、照明装置が配置される棚板62、側板63、及び背面板64は、特に限定されないが、机51の上面を適切に照明させるために、複数の棚板62のうち、最も机(デスク面)に近い位置に配置される棚板62や、最も机に近い位置に配置される棚板62よりも下側の部分における側板63や背面板64であることが好ましい。
【0084】
図8は、収納棚の別の形態(第3の実施形態)を示す。本実施形態における収納棚70は、箱型であり、両側板73、73と、天板75と、地板76それぞれにより、収納棚70の側面、天面、及び地面を構成している。また、収納棚70は、背面を構成する背面板74が設けられている。また、棚板72が設けられ、棚板72は両側板73、73間に架け渡されている。
収納棚70は、特に限定されないが、固定式でもよいし、キャスターがつけられた可動式であってもよい。また、収納棚70は、一般的に前面に開閉可能な扉(図示しない)が設けられている。
【0085】
収納棚70において照明装置10は、
図8に示す通り、例えば両側板73、天板75、及び地板76(すなわち、両側面、天面、及び地面)それぞれの内面に設けられている。収納棚70は、箱型であり、内部が暗くなりやすいが、内面に照明装置10が設けられることで、収納棚70の内部を適切に照明することができる。
また、照明装置10は、サイズが小さく、収納棚の内面より大きく突出することがない。そのため、収納棚70の内面に設けられても、圧迫感がなく収納スペースを必要以上に小さくすることもなく、デザイン性にも優れる。さらに、触感が柔らかく使用者に安心感を与えることができる。
【0086】
また、本実施形態において、照明装置10は、内面(すなわち、両側面、天面、及び地面)の前方側に配置されている。このように、前方側に配置されることで、使用者の視認しやすいところが少ない消費電力で適切に照明されやすくなる。そして、前方側に配置された照明装置10は、収納棚70の内部において、周方向に沿って延在するように配置されるとよく、それにより、収納棚70の内部を両側、及び上下より照明することができる。
【0087】
ただし、照明装置10が配置される位置は、特に限定されず、両側面、天面、及び地面それぞれの略全面に設けられてもよい。また、
図9に示すように、照明装置10は、奥向き(すなわち、前後方向)に延在するように配置されてもよい。この場合には、例えば、収納棚70の4隅(すなわち、側板と天面の接続部分又はその近傍、及び側板と天面の接続部分又はその近傍)に配置されるようにしてもよい。
また、収納棚は、
図10に示すように、縦方向に沿って設けられる間仕切り板77が設けられるようなものであってよい。
【0088】
また、収納棚は、側面、天面、及び地面以外の部分に照明装置が設けられてもよく、例えば、
図11に示すように、間仕切り板77の主面や、天面及び地面以外の棚板72の主面に照明装置が取り付けられてよい。間仕切り板77や棚板72にも照明装置10が取り付けられることで、
図11に示すように、棚板72及び間仕切り77によって、区画された各スペースが、適切に照明装置10によって照明できるようになる。
間仕切り板77や棚板72に照明装置10が取り付けられる場合、照明装置10が取り付けられる位置は、特に限定されないが、
図11に示すように、比較的大きなスペースS1,S2においては、4隅に設けられるようにしてもよい。また、比較的小さなスペースS3~S6には4隅に設けずに、例えば、各スペースを挟み込むように照明装置10が両側に設けられ、スペースに対して両側から照明するようにしてもよい。もちろん、図示しないが、照明装置10がスペースの上下に設けられ、スペースに対して上下から照明するようにしてもよいし、その他の態様でもよい。
また、例えば
図12に示すように、複数に区画されて形成された各スペースに対して、略全周を取り巻くように、各スペースの周方向に沿って延在するように配置してもよい。これにより、各スペースは、両側及び上下に設けられた照明装置により適切に照明しやすくなる。
なお、以上で説明した箱型の収納棚においては、照明装置は、上記以外にも背面板74の内面などに設けられてもよい。
【0089】
なお、
図8~12に示す収納棚は、天板及び地板を含む棚板の少なくとも一部が、他の棚板よりも手前に引き出されて、机の作業台(デスク面)になるタイプの収納棚であってもよい。棚板は、スライドされて前方に引き出されてデスク面となってもよいし、折り畳まれたものが引き出されてデスク面となってもよいし、背面板に立て掛けられた板がセットされてデスク面となってもよい。この場合、収納棚に設けられた照明装置は、デスク面を照射するものであってもよい。その場合、デスク面を照射する照明装置の配置位置は、第2の実施形態で説明したように、机の上に収納棚が設けられる場合の配置位置と同様としてもよい。
【0090】
また、
図8~12に示す第3の実施形態では、箱型の収納棚の例を示したが、箱型の収納棚に限定されない。例えば、建築物、特に住居用建築物は、押し入れなどと呼ばれる、収納部を有するが、収納部の内面に照明装置が設けられてもよい。
例えば、収納部の内面は、一般的に、
図8~12に示した収納棚と同様に、両側面、天面、地面、及び背面を有するが、それらのうちいずれか又はこれらの全部の内面に照明装置が設けられてもよい。
また、収納部においても、
図8~12で示した態様のいずれも採用することができる。したがって、照明装置は、収納部において、
図8に示すとおりに、収納スペースの内面の前方側に設けてもよいが、
図9に示すとおりに奥向きに延在するように配置されてもよいし、その他の態様で配置されてもよい。
また、収納部は、必ずしも収納棚である必要はなく、棚板や間仕切り板などがないものであってもよい。また、収納部は、収納棚や間仕切り板が設けられる場合には、
図11、12に示すように、棚板や間仕切り板に照明装置が設けられてもよい。
【0091】
そして、箱型の収納棚や収納部において、照明装置は、両側面、天面、地面、及び背面の内面、並びに、間仕切り板及び棚板の主面の少なくともいずれか1つに取り付けられれば、いかなる態様であってもよい。
また、収納棚において照明装置は、第1、第2の実施形態で示したように、側板又は棚板の前端面に取り付けられつつ、第3の実施形態で示したように、両側面、天面、地面、及び背面の内面、並びに間仕切り板及び棚板の主面の少なくともいずれか1つに取り付けられてもよい。
【実施例0092】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0093】
[測定方法]
本明細書における各物性の測定方法は、次の通りである。
<見掛け密度>
発泡体の見掛け密度は、JIS K7222:2005に準拠して測定した。
<発泡倍率>
発泡倍率は、発泡前の発泡性シートの密度を、発泡後の発泡体の密度(見掛け密度)で除することで算出した。
【0094】
<架橋度(ゲル分率)>
発泡体シートから約100mgの試験片を採取し、試験片の重量A(mg)を精秤した。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の重量B(mg)を精秤した。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出した。
架橋度(質量%)=(B/A)×100
【0095】
<25%圧縮強度>
25%圧縮強度は、JIS K6767に準拠した測定方法で測定した。
【0096】
<全光線透過率>
発泡体の全光線透過率は、表1に記載の厚みに調整した発泡体についてASTM D1003に準拠して、ヘーズメーターを用いて測定した。
【0097】
<照明光評価>
被照射台の上方に、点光源であるLED光源を配置し、LED光源の下方に接するように配置した照明カバーを介して、被照射台に対してLED光源からの光を照射し、被照射台において光が照射される領域の最大径S2を測定した。また、照明カバーを外して同様に被照射台において光が照射される領域の最大径S1を測定した。以下の式が成り立つ場合、照明カバーの光拡散性が良好であるとして「A」として評価し、成り立たない場合を「B」と評価した。なお、以下の式において、hは光源と被照射台との距離を表す。
S2>S1+h×tan20°
【0098】
<柔軟性評価>
各実施例、比較例の照明カバーについて、触感により柔軟性を以下の評価基準で評価した。
A:柔軟性が高く容易に変形し、かつ触感が柔らかく使用者に安心感を与えることができる。
B:柔軟性が低く変形できず、かつ触感が硬く使用者に安心感を与えることができない。
【0099】
<使用原料>
表1に示す実施例で用いた材料は以下のとおりである。
〔ポリオレフィン系樹脂〕
PP:住友化学株式会社製「ノーブレン AD571」(密度:0.900g/cm3)
LLDPE:東ソー株式会社「ニポロン-Z ZF231B」(密度:0.917g/cm3)
EVA(1):東ソー株式会社「ウルトラセン 636」(密度:0.941g/cm3)
EVA(2):東ソー株式会社「ウルトラセン 710」(密度:0.949g/cm3)
【0100】
〔エラストマー〕
HSBR:JSR株式会社「DYNARON 1320P」
【0101】
造核剤:糖類系、東京インキ株式会社「NAT-95」
発泡剤:栄和化成株式会社「AC#R」(アゾジカルボンアミド)
架橋助剤:共栄社化学「ライトエステル1.9-ND」(1,9-ノナンジオールジメタクリレート)
酸化防止剤:BASFジャパン「イルガノックス1010」
【0102】
実施例1
ポリプロピレン樹脂(PP)80質量部と、ポリエチレン樹脂(LLDPE)19質量部と、造核剤2質量部と、発泡剤8質量部と、架橋助剤3質量部と、酸化防止剤0.8質量部とを溶融混練後、プレスすることにより厚さ0.3mmの発泡性シートを得た。得られた発泡性シートの両面に加速電圧500keVにて電子線を3Mrad照射させて、発泡性シートを架橋させた。次に架橋した発泡性シートを250℃に加熱することによって発泡させて、見かけ密度0.09g/cm3、厚さ1.0mmの発泡体を得た。得られた発泡体を照明カバーとして各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0103】
実施例2~5
ポリオレフィン系樹脂組成物の配合を表1に示すように変更すると共に、表1の架橋度になるように電子線照射量を調整したこと以外は実施例1と同様に実施した。得られた発泡体を照明カバーとして各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0104】
<比較例1>
発泡体の代わりに市販の拡散板(商品名「スミペックス」、住友化学社製)を照明カバーとして各種評価を行った。
【0105】
【0106】
本発明の各実施例では、照明カバーとして気泡含有層である発泡体を使用することで、柔軟性を良好にしつつ、照明カバーにおいて適切に光拡散させ、かつ一定量以上の光を照明カバーで透過させることができた。一方で、従来の照明カバーとして使用される拡散板は、適切に光拡散させつつも一定量以上の光を照明カバーで透過させることができるが、柔軟性を良好にできなかった。