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特開2023-19218リニア搬送システム、リニア搬送システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019218
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】リニア搬送システム、リニア搬送システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/064 20160101AFI20230202BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20230202BHJP
   B60L 13/03 20060101ALI20230202BHJP
   B60L 13/10 20060101ALI20230202BHJP
   B65G 54/02 20060101ALI20230202BHJP
   B65G 35/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
H02P25/064
H02K41/03 A
B60L13/03 F
B60L13/03 J
B60L13/10 N
B65G54/02
B65G35/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123752
(22)【出願日】2021-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 整
(72)【発明者】
【氏名】海老原 由行
(72)【発明者】
【氏名】永井 丈介
【テーマコード(参考)】
3F021
5H113
5H540
5H641
【Fターム(参考)】
3F021AA05
3F021BA02
5H113BB09
5H113CC04
5H113CD02
5H113CD12
5H113DA06
5H113DB03
5H113DB15
5H113GG02
5H113GG08
5H113GG26
5H113HH06
5H113HH14
5H113HH27
5H540AA01
5H540BA03
5H540BB03
5H540BB05
5H540BB09
5H540EE02
5H540EE05
5H540EE06
5H540EE08
5H540FA02
5H540FA12
5H540FB01
5H540GG01
5H540GG07
5H641BB06
5H641GG02
5H641GG26
5H641GG28
5H641HH03
(57)【要約】
【課題】処理速度を速くして信頼性を向上する。
【解決手段】リニア搬送システム1は、複数のコイル17を備えた固定子3と、マグネット21を備え、固定子3に沿って移動する複数の可動子5と、可動子5に設けられたスケール23と、固定子3に沿って所定の間隔で配置され、スケール23を検出する複数のセンサヘッド25と、所定の間隔の設定値と測定値との誤差を補正するための誤差値又は測定値を原点から累積したセンサ間隔誤差補正累積値又はセンサ間隔誤差補正込みオフセットを、センサヘッド25ごとに別々のパラメータとして記録したパラメータ記録部27と、スケール23を検出したセンサヘッド25の検出データと、スケール23を検出したセンサヘッド25に設定されたセンサ間隔誤差補正累積値又はセンサ間隔誤差補正込みオフセットとに基づいて、可動子5の機械座標位置を算出する位置算出部29と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコイルを備えた固定子と、
マグネットを備え、前記固定子に沿って移動してワークを搬送する複数の可動子と、
前記可動子に設けられたスケールと、
前記固定子に沿って所定の間隔で配置され、前記スケールを検出する複数のセンサと、
前記所定の間隔の設定値と測定値との誤差を補正するための誤差補正値を原点から累積した第1累積値を、前記センサごとに別々のパラメータとして記録したパラメータ記録部と、
前記スケールを検出した前記センサの検出データと、前記スケールを検出した前記センサに設定された前記第1累積値とに基づいて、前記可動子の位置を算出する位置算出部と、
を有する、リニア搬送システム。
【請求項2】
前記第1累積値は、
前記所定の間隔の設定値と測定値との誤差値である前記誤差補正値を前記原点から累積した値であり、
前記パラメータ記録部は、
前記所定の間隔の設定値を前記原点から累積した第2累積値を、前記センサごとに別々のパラメータとして記録し、
前記位置算出部は、
前記スケールを検出した前記センサの検出データと、前記スケールを検出した前記センサに設定された前記第1累積値及び前記第2累積値とに基づいて、前記可動子の位置を算出する、
請求項1に記載のリニア搬送システム。
【請求項3】
前記パラメータ記録部は、
前記可動子が前記原点としたい位置に位置する際に、当該可動子の前記スケールを検出した前記センサの検出データである原点補正値を、前記複数のセンサに共通のパラメータとして記録し、
前記位置算出部は、
前記スケールを検出した前記センサの検出データと、前記スケールを検出した前記センサに設定された前記第1累積値と、前記原点補正値とに基づいて、前記可動子の位置を算出する、
請求項1又は2に記載のリニア搬送システム。
【請求項4】
前記固定子の一部の区間の前記コイルに対する通電制御を行う第1の制御装置と、
複数の第1の制御装置に接続され、前記複数の可動子の位置を管理する第2の制御装置と、
をさらに有し、
前記第2の制御装置は、
前記位置算出部により算出された前記可動子の位置に基づいて、前記複数の可動子間の距離を監視して衝突を防止する衝突防止処理部を有し、
前記第1の制御装置は、
前記位置算出部により算出された前記可動子の位置に基づいて前記固定子の所定の区間内に2以上の前記可動子が存在するか否かを判定し、前記2以上の可動子が存在すると判定した場合に前記可動子を緊急停止させる緊急停止処理部を有する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のリニア搬送システム。
【請求項5】
前記衝突防止処理部は、
前記複数の可動子の移動方向において後方に位置する第1の可動子と前方に位置する第2の可動子との可動子間距離がしきい値以下であるか否かを判定する距離判定部と、
前記距離判定部により前記可動子間距離が前記しきい値以下であると判定された場合に、前記第1の可動子の速度を前記第2の可動子の速度と等しくなるように減速させる加減速制御部と、
を有する、
請求項4に記載のリニア搬送システム。
【請求項6】
前記しきい値は、
前記可動子間距離として予め設定された設定値と、
前記第1の可動子が停止するまでに要する距離と、
の合計値である、
請求項5に記載のリニア搬送システム。
【請求項7】
前記加減速制御部は、
前記第1の可動子の速度を前記第2の可動子の速度と等しくなるように減速させた場合に、前記しきい値から前記可動子間距離を差し引いた差分値に基づいて追加減速を実行する、
請求項5又は6に記載のリニア搬送システム。
【請求項8】
前記衝突防止処理部は、
前記第1の可動子の速度を前記第2の可動子の速度と等しくなるように減速させた場合に、前記第2の可動子の速度が前記第1の可動子の指令速度より大きいか否かを判定する速度判定部を有し、
前記加減速制御部は、
前記速度判定部により前記第2の可動子の速度が前記第1の可動子の指令速度より大きいと判定された場合に、前記第1の可動子の速度を前記指令速度に追従するように制御する、
請求項5乃至7のいずれか1項に記載のリニア搬送システム。
【請求項9】
複数のコイルを備えた固定子と、
マグネットを備え、前記固定子に沿って移動してワークを搬送する複数の可動子と、
前記可動子に設けられたスケールと、
前記固定子に沿って所定の間隔で配置され、前記スケールを検出する複数のセンサと、
前記固定子の一部の区間の前記コイルに対する通電制御を行う第1の制御装置と、
複数の第1の制御装置に接続され、前記複数の可動子の位置を管理する第2の制御装置と、
を有し、
前記第2の制御装置は、
前記センサの検出データに基づいて、前記複数の可動子間の距離を監視して衝突を防止する衝突防止処理部を有し、
前記第1の制御装置は、
前記センサの検出データに基づいて前記固定子の所定の区間内に2以上の前記可動子が存在するか否かを判定し、前記2以上の可動子が存在すると判定した場合に前記可動子を緊急停止させる緊急停止処理部を有する、
リニア搬送システム。
【請求項10】
前記衝突防止処理部は、
前記複数の可動子の移動方向において後方に位置する第1の可動子と前方に位置する第2の可動子との可動子間距離がしきい値以下であるか否かを判定する距離判定部と、
前記距離判定部により前記可動子間距離が前記しきい値以下であると判定された場合に、前記第1の可動子の速度を前記第2の可動子の速度と等しくなるように減速させる加減速制御部と、
を有する、
請求項9に記載のリニア搬送システム。
【請求項11】
前記しきい値は、
前記可動子間距離として予め設定された設定値と、
前記第1の可動子が停止するまでに要する距離と、
の合計値である、
請求項10に記載のリニア搬送システム。
【請求項12】
前記加減速制御部は、
前記第1の可動子の速度を前記第2の可動子の速度と等しくなるように減速させた場合に、前記しきい値から前記可動子間距離を差し引いた差分値に基づいて追加減速を実行する、
請求項10又は11に記載のリニア搬送システム。
【請求項13】
前記衝突防止処理部は、
前記第1の可動子の速度を前記第2の可動子の速度と等しくなるように減速させた場合に、前記第2の可動子の速度が前記第1の可動子の指令速度より大きいか否かを判定する速度判定部を有し、
前記加減速制御部は、
前記速度判定部により前記第2の可動子の速度が前記第1の可動子の指令速度より大きいと判定された場合に、前記第1の可動子の速度を前記指令速度に追従するように制御する、
請求項10乃至12のいずれか1項に記載のリニア搬送システム。
【請求項14】
前記所定の間隔の設定値と測定値との誤差を補正するための誤差補正値を原点から累積した第1累積値を、前記センサごとに別々のパラメータとして記録したパラメータ記録部と、
前記スケールを検出した前記センサの検出データと、前記スケールを検出した前記センサに設定された前記第1累積値とに基づいて、前記可動子の位置を算出する位置算出部と、
をさらに有する、
請求項9乃至13のいずれか1項に記載のリニア搬送システム。
【請求項15】
前記第1累積値は、
前記所定の間隔の設定値と測定値との誤差値である前記誤差補正値を前記原点から累積した値であり、
前記パラメータ記録部は、
前記所定の間隔の設定値を前記原点から累積した第2累積値を、前記センサごとに別々のパラメータとして記録し、
前記位置算出部は、
前記スケールを検出した前記センサの検出データと、前記スケールを検出した前記センサに設定された前記第1累積値及び前記第2累積値とに基づいて、前記可動子の位置を算出する、
請求項14に記載のリニア搬送システム。
【請求項16】
前記パラメータ記録部は、
前記可動子が前記原点としたい位置に位置する際に、当該可動子の前記スケールを検出した前記センサの検出データである原点補正値を、前記複数のセンサに共通のパラメータとして記録し、
前記位置算出部は、
前記スケールを検出した前記センサの検出データと、前記スケールを検出した前記センサに設定された前記第1累積値と、前記原点補正値とに基づいて、前記可動子の位置を算出する、
請求項14又は15に記載のリニア搬送システム。
【請求項17】
複数のコイルを備えた固定子と、
マグネットを備え、前記固定子に沿って移動してワークを搬送する複数の可動子と、
前記可動子に設けられたスケールと、
前記固定子に沿って所定の間隔で配置され、前記スケールを検出する複数のセンサと、を有するリニア搬送システムの制御方法であって、
前記センサごとに別々のパラメータとして記録された、前記所定の間隔の設定値と測定値との誤差を補正するための誤差補正値を原点から累積した第1累積値を、取得することと、
前記スケールを検出した前記センサの検出データと、前記スケールを検出した前記センサに設定された前記第1累積値とに基づいて、前記可動子の位置を算出することと、
を有する、リニア搬送システムの制御方法。
【請求項18】
複数のコイルを備えた固定子と、
マグネットを備え、前記固定子に沿って移動してワークを搬送する複数の可動子と、
前記可動子に設けられたスケールと、
前記固定子に沿って所定の間隔で配置され、前記スケールを検出する複数のセンサと、を有するリニア搬送システムの制御方法であって、
前記固定子の一部の区間の前記コイルに対する通電制御を行う第1の制御装置により、前記センサの検出データに基づいて前記固定子の所定の区間内に2以上の前記可動子が存在するか否かを判定し、前記2以上の可動子が存在すると判定した場合に前記可動子を緊急停止させることと、
複数の第1の制御装置に接続され、前記複数の可動子の位置を管理する第2の制御装置により、前記センサの検出データに基づいて、前記複数の可動子間の距離を監視して衝突を防止することと、
を有する、リニア搬送システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、リニア搬送システム及びリニア搬送システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガイドレールに沿って所定の移動方向にスライダを移動させるリニアコンベア装置が記載されている。このリニアコンベア装置では、複数のセンサ構造体の各々における各ドライバは、データ記憶部と、センサ位置算出部と、位置特定部とを有する。データ記憶部は、自身が属するセンサ構造体のセンサと、スライダ移動方向の上流側に配置されるセンサ構造体のセンサとの間の間隔を第1センサ間隔データとして記憶している。センサ位置算出部は、自身が属するセンサ構造体を構成するセンサのセンサ位置データを、データ記憶部に記憶されている第1センサ間隔データに基づき算出する。位置特定部は、センサ位置算出部によるセンサ位置データと、自身が属するセンサ構造体を構成するセンサによる検出データとを加算した加算データに基づき、スライダの位置を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/055772号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のリニアコンベア装置では、センサ位置算出部は、原点を構成するセンサから自身のセンサに至るまでの複数の第1センサ間隔データを累積加算することにより、センサ位置データを算出する。このように、自身が属するセンサ構造体が保有する第1センサ間隔データだけでなく、他の複数のセンサ構造体が保有する第1センサ間隔データを使用しないとセンサ位置データを算出することができないため、処理速度が遅くなり、スライダの位置特定が遅れて信頼性が低下する可能性があった。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、信頼性を向上することができるリニア搬送システム及びリニア搬送システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の観点によれば、複数のコイルを備えた固定子と、マグネットを備え、前記固定子に沿って移動してワークを搬送する複数の可動子と、前記可動子に設けられたスケールと、前記固定子に沿って所定の間隔で配置され、前記スケールを検出する複数のセンサと、前記所定の間隔の設定値と測定値との誤差を補正するための誤差補正値を原点から累積した第1累積値を、前記センサごとに別々のパラメータとして記録したパラメータ記録部と、前記スケールを検出した前記センサの検出データと、前記スケールを検出した前記センサに設定された前記第1累積値とに基づいて、前記可動子の位置を算出する位置算出部と、を有する、リニア搬送システムが適用される。
【0007】
また、本発明の別の観点によれば、複数のコイルを備えた固定子と、マグネットを備え、前記固定子に沿って移動してワークを搬送する複数の可動子と、前記可動子に設けられたスケールと、前記固定子に沿って所定の間隔で配置され、前記スケールを検出する複数のセンサと、前記固定子の一部の区間の前記コイルに対する通電制御を行う第1の制御装置と、複数の第1の制御装置に接続され、前記複数の可動子の位置を管理する第2の制御装置と、を有し、前記第2の制御装置は、前記センサの検出データに基づいて、前記複数の可動子間の距離を監視して衝突を防止する衝突防止処理部を有し、前記第1の制御装置は、前記センサの検出データに基づいて前記固定子の所定の区間内に2以上の前記可動子が存在するか否かを判定し、前記2以上の可動子が存在すると判定した場合に前記可動子を緊急停止させる緊急停止処理部を有する、リニア搬送システムが適用される。
【0008】
また、本発明の別の観点によれば、複数のコイルを備えた固定子と、マグネットを備え、前記固定子に沿って移動してワークを搬送する複数の可動子と、前記可動子に設けられたスケールと、前記固定子に沿って所定の間隔で配置され、前記スケールを検出する複数のセンサと、を有するリニア搬送システムの制御方法であって、前記センサごとに別々のパラメータとして記録された、前記所定の間隔の設定値と測定値との誤差を補正するための誤差補正値を原点から累積した第1累積値を、取得することと、前記スケールを検出した前記センサの検出データと、前記スケールを検出した前記センサに設定された前記第1累積値とに基づいて、前記可動子の位置を算出することと、を有する、リニア搬送システムの制御方法が適用される。
【0009】
また、本発明の別の観点によれば、複数のコイルを備えた固定子と、マグネットを備え、前記固定子に沿って移動してワークを搬送する複数の可動子と、前記可動子に設けられたスケールと、前記固定子に沿って所定の間隔で配置され、前記スケールを検出する複数のセンサと、を有するリニア搬送システムの制御方法であって、前記固定子の一部の区間の前記コイルに対する通電制御を行う第1の制御装置により、前記センサの検出データに基づいて前記固定子の所定の区間内に2以上の前記可動子が存在するか否かを判定し、前記2以上の可動子が存在すると判定した場合に前記可動子を緊急停止させることと、複数の第1の制御装置に接続され、前記複数の可動子の位置を管理する第2の制御装置により、前記センサの検出データに基づいて、前記複数の可動子間の距離を監視して衝突を防止することと、を有する、リニア搬送システムの制御方法が適用される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリニア搬送システム等によれば、信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るリニア搬送システムの全体構成の一例を概念的に表す図である。
図2】実施形態に係るリニア搬送システムの制御系の構成例の一部を抽出して概念的に表す図である。
図3】多軸アンプの制御部の機能構成の一例を表すブロック図である。
図4】可動子が原点に位置する場合における、センサヘッドに設定された各パラメータ及び可動子の機械座標位置の算出手法の具体例を表す説明図である。
図5】可動子が原点から移動方向に移動した場合における、センサヘッドに設定された各パラメータ及び可動子の機械座標位置の算出手法の具体例を表す説明図である。
図6】各センサヘッドの間隔に誤差がある場合における、センサヘッドに設定された各パラメータ及び可動子の機械座標位置の算出手法の一例を表す説明図である。
図7】各センサヘッドの間隔に誤差がある場合における、センサヘッドに設定された各パラメータ及び可動子の機械座標位置の算出手法の他の例を表す説明図である。
図8】多軸アンプにより実行される処理手順の一例を表すフローチャートである。
図9】リニアコントローラの機能構成の一例を表すブロック図である。
図10】リニアコントローラにより実行される処理手順の一例を表すフローチャートである。
図11】リニアコントローラの衝突防止処理部による可動子の動作の一例を表す説明図である。
図12】リニアコントローラの衝突防止処理部による可動子の動作の他の例を表す説明図である。
図13】多軸アンプ又はリニアコントローラのハードウェア構成例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
<1.リニア搬送システムの全体構成>
図1及び図2を参照しつつ、実施形態に係るリニア搬送システムの全体構成の一例について説明する。図1は、実施形態に係るリニア搬送システムの全体構成の一例を概念的に表す図、図2は、実施形態に係るリニア搬送システムの制御系の構成例の一部を抽出して概念的に表す図である。
【0014】
図1に示すように、リニア搬送システム1は、固定子3を有する。固定子3は、ループ状に配置されており、複数の可動子5が配置されている。可動子5の各々は、固定子3に沿って移動し、ワークWを搬送する。固定子3は複数のコイルを備えており、可動子5の各々はマグネットを備えている。リニア搬送システム1は、いわゆるムービングマグネット型である。各可動子5は、移動方向の長さが統一されていてもよいし、移動方向の長さが異なる複数種類の可動子が含まれてもよい。固定子3の周囲には、例えばワークWの加工や組み立て等を行う加工装置R1、ワークWを搬入する搬入装置R2、ワークWを搬出する搬出装置R3等が配置されている。リニア搬送システム1は、可動子5を図1中矢印7の方向にそれぞれ移動させることによりワークWを搬送し、加工や組立等を行う。
【0015】
図2に示すように、リニア搬送システム1は、多軸アンプ11と、リニアコントローラ13と、運行コントローラ15とを有する。図2では固定子3の一部区間を例示しているが、固定子3の他の区間も同様の構成である。
【0016】
多軸アンプ11(第1の制御装置の一例)は、固定子3の一部の区間のコイルに対する通電制御を行う。図2に示す例では、多軸アンプ11は、例えば固定子3が備えるU相コイル17U、V相コイル17V、W相コイル17Wからなるコイルを1組のコイル17とした場合に、例えば3組のコイル17に対して電力を供給する。多軸アンプ11は、3組のコイル17の各々に対して独立して通電制御を行い、可動子5の位置制御又は速度制御を行う。多軸アンプ11は、複数台(例えば3組のコイル17ごとに1台)設置されている。共通の固定子3に属するコイル17に通電を行う複数の多軸アンプ11同士は、通信ケーブル19を介して接続されており、例えばSPI(Serial Peripheral Interface)通信等によりデータの送受信が可能である。
【0017】
図2に示すように、各可動子5は、永久磁石であるマグネット21とスケール23とを有する。スケール23には、各可動子5を識別するための可動子IDと、各可動子5の機械座標位置を検出するための目盛りが設けられている。図2に示すように、複数のセンサヘッド25(センサの一例)が、固定子3に沿って所定の間隔で配置されている。所定の間隔は、例えば可動子5がどの位置でも検出できるように、スケール23の長さよりも短い間隔に設定されている。各センサヘッド25は、対向する可動子5のスケール23の可動子IDと目盛りを検出する。各多軸アンプ11には、制御対象である3組のコイル17に対応する3つのセンサヘッド25がそれぞれ接続されている。各多軸アンプ11は、3つのセンサヘッド25の検出データをそれぞれ受信する。各多軸アンプ11は、隣接する多軸アンプ11(移動方向において前後に対応する多軸アンプ11)との間で、通信ケーブル19を介してセンサヘッド25の検出データを共有する。これにより、可動子5の移動に伴う多軸アンプ11の制御の切替えをスムーズに行うことができる。
【0018】
リニアコントローラ13(第2の制御装置の一例)は、共通の固定子3に対応する複数の多軸アンプ11に通信ケーブル19を介して接続されている。リニアコントローラ13は、当該固定子3のループ上に位置する複数の可動子5の位置を管理する。リニア搬送システム1は、複数台のリニアコントローラ13を有する。リニアコントローラ13は、運行コントローラ15から受信した各可動子5の固定子3におけるループ上の位置を指定するための位置指令を、各多軸アンプ11に対応する固定子3の一部区間ごとの位置指令に変換して、各多軸アンプ11に送信する。リニアコントローラ13は、固定子3のループ上において可動子5間の衝突を防止するための速度指令を生成し、各多軸アンプ11に送信する。
【0019】
運行コントローラ15は、複数のリニアコントローラ13に通信ケーブル19を介して接続されている。運行コントローラ15は、固定子3のループ上に位置する複数の可動子5、すなわちリニア搬送システム1が備える全部の可動子5の位置を管理する。運行コントローラ15は、各可動子5の固定子3におけるループ上の位置を指定するための位置指令を、各リニアコントローラ13にそれぞれ送信する。
【0020】
リニアコントローラ13及び運行コントローラ15は、例えば演算装置(CPU)、記録装置、入力装置等を有する制御装置である。リニアコントローラ13及び運行コントローラ15として、例えば汎用コンピュータ(PC)、モーションコントローラ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)等を使用してもよい。
【0021】
上述したリニア搬送システム1の構成は一例であり、上述の内容に限定されるものではない。例えば、固定子3は水平に設置されてもよいし、垂直あるいは水平に対して所定の角度で傾斜して設置されてもよい。固定子3の数は単数に限るものではなく、複数としてもよい。多軸アンプ11が電力を供給する対象は3組のコイル17に限るものではなく、2組又は4組以上のコイル17に対して電力を供給してもよい。1組のコイル17に電力を供給する単軸のアンプとしてもよい。
【0022】
<2.多軸アンプの制御部の機能構成>
図3を参照しつつ、多軸アンプ11の制御部の機能構成の一例について説明する。多軸アンプ11は、例えば演算装置(CPU)、記録装置等を有する制御部と、固定子3のコイル17に電力を供給する給電部(例えばインバータ部やPWM制御回路等)とを有する。図3は、多軸アンプ11の制御部の機能構成の一例を表すブロック図であり、給電部の図示を省略している。
【0023】
図3に示すように、多軸アンプ11は、パラメータ記録部27と、位置算出部29と、緊急停止処理部31と、モータ制御部33とを有する。モータ制御部33は、3組のコイル17の各々に対して通電制御を行い、3組のコイル17と可動子5とにより構成されるリニアモータの制御を行う。モータ制御部33は、位置制御部35と、速度制御部37と、電流制御部39とを有する。位置制御部35は、リニアコントローラ13からの位置指令と、センサヘッド25の検出データに基づく可動子5の機械座標位置(位置算出部29により算出)との位置偏差に基づき、速度指令を生成する。速度制御部37は、位置制御部35により生成された速度指令又はリニアコントローラ13からの速度指令と、センサヘッド25の検出データに基づく可動子速度との速度偏差に基づき、トルク指令を生成する。電流制御部39は、速度制御部37により生成されたトルク指令を電流指令に変換し、当該電流指令とコイル17に供給される電流を検出する電流センサの検出データに基づいて電圧指令を生成し、当該電圧指令に基づき制御信号(例えばPWM信号等)を生成する。制御信号は、インバータ部(図示省略)に出力される。インバータ部は、制御信号に基づき直流電力を交流電力に変換し、コイル17に供給する。
【0024】
パラメータ記録部27は、センサヘッド25の設置間隔(所定の間隔の一例)の設定値と当該設置間隔を予め測定して得られた測定値との誤差を補正するための誤差補正値を、原点に設定されたセンサヘッド25から累積した第1累積値を、センサヘッド25ごとに別々のパラメータとして記録している。誤差補正値は、測定値から設定値を差し引いた誤差値でもよいし、誤差値が組み込まれた測定値そのものでもよい。第1累積値は、誤差値を累積した累積誤差値でもよいし、測定値を累積した累積測定値でもよい。
【0025】
センサヘッド25の設置間隔は、例えば設置間隔よりも長いスケール23を備えた測定用の可動子5を固定子3に沿って移動させることで測定されてもよい。この場合、隣接するセンサヘッド25の検出データの差が設置間隔の測定値となる。
【0026】
パラメータ記録部27は、センサヘッド25の設置間隔の設定値を原点に設定されたセンサヘッド25から累積した第2累積値を、センサヘッド25ごとに別々のパラメータとして記録している。
【0027】
パラメータ記録部27は、可動子5が原点としたい位置に位置する際に、当該可動子5のスケール23を検出したセンサヘッド25の検出データである原点補正値を、同じ固定子3に配置された複数のセンサヘッド25に共通のパラメータとして記録している。
【0028】
パラメータ記録部27は、当該パラメータ記録部27が属する多軸アンプ11に接続された3つのセンサヘッド25に対する上記パラメータ(第1累積値、第2累積値、原点補正値)を記録してもよいし、共通の固定子3に配置された全てのセンサヘッド25に対する上記パラメータを記録してもよい。パラメータ記録部27として、例えばEEPROM等の不揮発性メモリや、ハードディスク等の記録装置を使用してもよい。パラメータ記録部27は、多軸アンプ11の外部、例えばリニアコントローラ13、運行コントローラ15、センサヘッド25、又はそれ以外の外部記録装置等に設けられてもよい。その場合、多軸アンプ11は外部に設置されたパラメータ記録部27から必要な情報を取得すればよい。
【0029】
位置算出部29は、スケール23を検出したセンサヘッド25の検出データと、当該スケール23を検出したセンサヘッド25に設定されたパラメータである第1累積値及び第2累積値と、複数のセンサヘッド25に共通のパラメータである原点補正値とに基づいて、可動子5の機械座標位置を算出する。算出手法の詳細については後述する。
【0030】
緊急停止処理部31は、位置算出部29により算出された可動子5の機械座標位置に基づいて、固定子3の所定の区間内に2以上の可動子5が存在するか否かを判定し、2以上の可動子5が存在すると判定した場合に当該2以上の可動子5の全部又は一部(例えば後方の可動子5)を緊急停止させる。所定の区間は、例えばU相コイル17U、V相コイル17V、W相コイル17Wからなる1組のコイル17のコイルピッチである。前述のように、多軸アンプ11は、1組のコイル17ごとに通電制御を行い、可動子5の位置制御を行う。このため、1組のコイル17のコイルピッチ内に2以上の可動子5が存在する場合、それぞれを独立して制御することができず、可動子5が制御不能となって衝突等を招くおそれがある。各可動子5を独立して制御するには、各可動子5の間隔を1組のコイル17のコイルピッチより大きくする必要がある。1組のコイル17のコイルピッチ内に2以上の可動子5が存在する場合には、緊急停止をすることで衝突を回避でき、信頼性を確保できる。
【0031】
上述したパラメータ記録部27、位置算出部29、緊急停止処理部31、モータ制御部33等における処理等は、これらの処理の分担の例に限定されるものではない。例えば、更に少ない数の処理部(例えば1つの処理部)で処理されてもよく、更に細分化された処理部により処理されてもよい。多軸アンプ11は、コイル17に電力を給電する部分(例えばインバータ部やPWM制御回路等)のみ実際の装置により実装され、その他の上記各処理部による機能は後述するCPU901(図13参照)が実行するプログラムにより実装されてもよい。上記各処理部による機能は、その一部又は全部がASICやFPGA、その他の電気回路等の実際の装置により実装されてもよい。上記各処理部による機能は、必ずしも多軸アンプ11のみにより実行される必要はなく、その一部又は全部がリニアコントローラ13又は運行コントローラ15により実行されてもよい。
【0032】
<3.センサヘッドの各パラメータ及び可動子の機械座標位置の算出手法の具体例>
図4図7を参照しつつ、センサヘッド25に設定された各パラメータ及び可動子5の機械座標位置の算出手法の具体例について説明する。
【0033】
図4図7に示す例では、例えば可動子5の移動方向の全長(スケール23の全長)を30mm、各センサヘッド25A~25Dがスケール23の全長を検出した場合に生成するパルス数を3000パルス(pls)、各センサヘッド25の設置間隔の設定値を20mm(=2000パルス)、固定子3のループの全長を30m(=3000000パルス)とする。可動子5の機械座標における原点を、可動子5の先端が移動方向にセンサヘッド25Bを1mm(=100パルス)通り過ぎた位置とし、センサヘッド25Bを原点に設定されたセンサとする。なお、可動子5が原点に位置する場合の機械座標位置は、0パルス(=3000000パルス)となる。
【0034】
この場合、原点に位置する可動子5のスケール23に対する、センサヘッド25Bによるセンサヘッド取得位置(検出データの一例)は100パルスとなり、原点オフセット(原点補正値の一例)は100パルスとなる。当該原点オフセットは、共通の固定子3に配置された全部のセンサヘッド25に対して共通のパラメータとして記録されている。
【0035】
各センサヘッド25の設置間隔の設定値を、原点に設定されたセンサヘッド25Bから累積したセンサ間隔オフセット(第2累積値の一例)は、センサヘッド25ごとに別々のパラメータとして記録されている。センサ間隔オフセットは、例えばセンサヘッド25Bでは0パルス、センサヘッド25Cでは2000パルス、センサヘッド25Dでは4000パルス、・・・、センサヘッド25Aでは2998000パルスとなっている。
【0036】
図4に、可動子5が原点に位置する場合を示す。この場合、上述のようにセンサヘッド25Bによるセンサヘッド取得位置は100パルスとなり、センサヘッド25Aによるセンサヘッド取得位置は2100パルスとなる。位置算出部29は、下記の計算式(1)に基づいて可動子5の機械座標位置を算出する。
【0037】
(数1)
可動子の機械座標位置[pls]=センサヘッド取得位置[pls]+センサ間隔オフセット[pls]-原点オフセット[pls] ・・・ (1)
【0038】
上記計算式(1)により、可動子5の機械座標位置は、センサヘッド25Bによるセンサヘッド取得位置を用いて算出すると0パルスとなり、センサヘッド25Aによるセンサヘッド取得位置を用いて算出すると3000000パルス(=0パルス)となる。可動子5の機械座標位置は、センサヘッド25A,25Bのいずれの検出データを用いても原点位置となる。
【0039】
図5に、可動子5が原点から移動方向に例えば40mm(=4000パルス)だけ移動した場合を示す。この場合、センサヘッド25A,25Bではスケール23が検出されなくなる。センサヘッド25Dによるセンサヘッド取得位置は100パルスとなり、センサヘッド25Cによるセンサヘッド取得位置は2100パルスとなる。上記計算式(1)により、可動子5の機械座標位置は、センサヘッド25Dによるセンサヘッド取得位置を用いて算出しても4000パルスとなり、センサヘッド25Cによるセンサヘッド取得位置を用いて算出しても4000パルスとなる。
【0040】
図6に、各センサヘッド25の設置間隔に誤差がある場合における可動子の機械座標位置の算出手法の一例を示す。図6に示す例では、各センサヘッド25の設置間隔の設定値が20mm(=2000パルス)であるのに対し、例えばセンサヘッド25B,25C間の設置間隔の測定値が23mm(=2300パルス)、センサヘッド25C,25D間の設置間隔の測定値が21mm(=2100パルス)となっている。
【0041】
この場合、予め各センサヘッド25間の設置間隔を測定して得られた測定値から設定値を差し引いた誤差値(誤差補正値の一例)を、原点に設定されたセンサヘッド25Bから累積したセンサ間隔誤差補正累積値(第1累積値の一例)が、センサヘッド25ごとに別々のパラメータとして記録されている。センサ間隔誤差補正累積値は、例えばセンサヘッド25Bでは0パルス、センサヘッド25Cでは300パルス、センサヘッド25Dでは400パルスとなっている。原点オフセットとセンサ間隔オフセットについては、前述の図4及び図5と同様である。
【0042】
図6に示す例では、可動子5が原点から移動方向に例えば44mm(=4400パルス)だけ移動している。この場合、センサヘッド25Dによるセンサヘッド取得位置は100パルスとなり、センサヘッド25Cによるセンサヘッド取得位置は2200パルスとなる。位置算出部29は、下記の計算式(2)に基づいて可動子5の機械座標位置を算出する。
【0043】
(数2)
可動子の機械座標位置[pls]=センサヘッド取得位置[pls]+センサ間隔誤差補正累積値[pls]+センサ間隔オフセット[pls]-原点オフセット[pls]・・・(2)
【0044】
上記計算式(2)により、可動子5の機械座標位置は、センサヘッド25Dによるセンサヘッド取得位置を用いて算出しても4400パルスとなり、センサヘッド25Cによるセンサヘッド取得位置を用いて算出しても4400パルスとなる。
【0045】
図7に、各センサヘッド25の設置間隔に誤差がある場合における可動子の機械座標位置の算出手法の他の例を示す。各センサヘッド25の設置間隔の測定値は、上記図6と同様である。図7に示す例では、各センサヘッド25の設置間隔の測定値を、原点に設定されたセンサヘッド25Bから累積したセンサ間隔誤差補正込みオフセット(第1累積値の一例)が、センサヘッド25ごとに別々のパラメータとして記録されている。センサ間隔誤差補正込みオフセットは、例えばセンサヘッド25Bでは0パルス、センサヘッド25Cでは2300パルス、センサヘッド25Dでは4400パルスとなっている。
【0046】
図7に示す例では、可動子5が原点から移動方向に例えば44mm(=4400パルス)だけ移動している。この場合、センサヘッド25Dによるセンサヘッド取得位置は100パルスとなり、センサヘッド25Cによるセンサヘッド取得位置は2200パルスとなる。位置算出部29は、下記の計算式(3)に基づいて可動子5の機械座標位置を算出する。
【0047】
(数3)
可動子の機械座標位置[pls]=センサヘッド取得位置[pls]+センサ間隔誤差補正込みオフセット[pls]-原点オフセット[pls] ・・・ (3)
【0048】
上記計算式(3)により、可動子5の機械座標位置は、センサヘッド25Dによるセンサヘッド取得位置を用いて算出しても4400パルスとなり、センサヘッド25Cによるセンサヘッド取得位置を用いて算出しても4400パルスとなる。
【0049】
以上では、可動子の機械座標位置をセンサヘッド25が生成するパルス数で算出するようにしたが、他の単位を用いて算出してもよい。例えば、所定の指令単位(例えば1指令単位=1mm)を用いて算出してもよい。
【0050】
以上では、各累積値を、原点に設定されたセンサヘッド25Bから累積するようにしたが、機械座標における原点から累積した値としてもよい。この場合、例えばセンサ間隔オフセット(第2累積値の一例)は、センサヘッド25Bでは2999900パルス、センサヘッド25Cでは1900パルス、センサヘッド25Dでは3900パルス、・・・、センサヘッド25Aでは2997900パルスとしてもよい。例えば、図6に示すセンサ間隔誤差補正累積値(第1累積値の一例)は、センサヘッド25Bでは-100パルス、センサヘッド25Cでは200パルス、センサヘッド25Dでは300パルスとしてもよい。例えば、図7に示すセンサ間隔誤差補正込みオフセット(第1累積値の一例)は、センサヘッド25Bでは-100パルス、センサヘッド25Cでは2200パルス、センサヘッド25Dでは4300パルスとしてもよい。これらの場合には、原点オフセットは不要となる。
【0051】
<4.多軸アンプの処理手順>
図8を参照しつつ、多軸アンプ11により実行される処理手順の一例について説明する。図8は、多軸アンプ11により実行される処理手順の一例を表すフローチャートである。
【0052】
ステップS10では、多軸アンプ11は、各センサヘッド25のパラメータをパラメータ記録部27から取得する。センサヘッド25のパラメータには、センサ間隔オフセット、原点オフセット、センサ間隔誤差補正累積値等が含まれる。
【0053】
ステップS20では、多軸アンプ11は、接続されたセンサヘッド25がスケール23を検出したか否かを判定する。スケール23を検出していない場合には(ステップS20:NO)、スケール23を検出するまで本ステップS20を繰り返す。スケール23を検出した場合には(ステップS20:YES)、次のステップS30に移る。
【0054】
ステップS30では、多軸アンプ11は、スケール23を検出したセンサヘッド25から検出データを取得する。検出データには、可動子IDやセンサヘッド取得位置が含まれる。
【0055】
ステップS40では、多軸アンプ11は、位置算出部29により、上記ステップS30で取得したセンサヘッド取得位置、及び、上記ステップS10で取得したパラメータに基づいて、可動子5の機械座標位置を算出する。なお、上記ステップS10~本ステップS40により、累積データ等のパラメータはスケール23を検出する前から取得しておき、スケール23を検出した時にはセンサヘッド取得位置データだけ取得するようにして、機械座標位置を素早く計算できる。
【0056】
ステップS50では、多軸アンプ11は、モータ制御部33により、リニアコントローラ13から受信した位置指令と、上記ステップS40で算出した可動子5の機械座標位置とに基づいてコイル17に対して通電を行い、可動子5の位置制御又は速度制御を行う。
【0057】
ステップS60では、多軸アンプ11は、センサヘッド25によるスケール23の検出が終了したか否かを判定する。スケール23を検出中である場合には(ステップS60:NO)、先のステップS30に戻る。スケール23の検出が終了するまでステップS30~ステップS50の手順を繰り返す。スケール23の検出を終了した場合には(ステップS60:YES)、先のステップS20に戻る。
【0058】
なお、上述した処理手順は一例であって、上記手順の少なくとも一部を削除又は変更してもよいし、上記以外の手順を追加してもよい。また、上記手順の少なくとも一部の順番を変更してもよいし、複数の手順が単一の手順にまとめられてもよい。
【0059】
<5.リニアコントローラの機能構成>
図9を参照しつつ、リニアコントローラ13の機能構成の一例について説明する。図9は、リニアコントローラ13の機能構成の一例を表すブロック図である。
【0060】
図9に示すように、リニアコントローラ13は、衝突防止処理部41を有する。衝突防止処理部41は、多軸アンプ11の位置算出部29により算出された可動子5の機械座標位置を取得し、当該可動子5の機械座標位置に基づいて、複数の可動子5間の距離を監視して衝突を防止する。衝突防止処理部41は、距離判定部43と、加減速制御部45と、速度判定部47とを有する。
【0061】
距離判定部43は、複数の可動子5の移動方向において、後方に位置する後方可動子5R(第1の可動子の一例)と前方に位置する前方可動子5F(第2の可動子の一例)との実際の可動子間距離である実可動子間距離(可動子間距離の一例)が、予め設定された走行時可動子間距離(しきい値の一例)以下であるか否かを判定する。走行時可動子間距離は、例えば可動子間距離として予め設定された値である可動子間距離設定値と、後方可動子5Rが停止するまでに要する制動距離である後方可動子減速距離との合計値である。可動子間距離設定値は、区間に応じて値が変動する。例えば、カーブ区間の手前では直線区間よりも可動子間距離設定値を増加させてもよい。
【0062】
なお、走行時可動子間距離は、上述した可動子間距離設定値と後方可動子減速距離との合計値に限るものではない。例えば、走行時可動子間距離は、可動子間距離設定値と、後方可動子5Rが前方可動子5Fの速度へ減速するまでに要する相対距離との合計値でもよい。また、走行時可動子間距離は、可動子間距離設定値と、後方可動子減速距離と、後方可動子5Rが前方可動子5Fの速度へ減速するまでに要する相対距離との合計値でもよい。
【0063】
加減速制御部45は、上記距離判定部43により実可動子間距離が走行時可動子間距離以下であると判定された場合に、後方可動子5Rの速度を前方可動子5Fの速度と略等しくなるように減速させる。加減速制御部45は、後方可動子5Rの速度を前方可動子5Fの速度と略等しくなるように減速させた場合に、走行時可動子間距離から実可動子間距離を差し引いた差分値に基づいて追加減速を実行する。追加減速により、実可動子間距離を増大させることが可能となり、実可動子間距離が走行時可動子間距離より大きくなるまで追加減速を実行することで、適切な可動子間距離を保持することができる。差分値は、後方可動子5Rと前方可動子5Fとの間隔が走行時可動子間距離より縮まってどれだけ接近したかを表す接近量である。追加減速は、接近後の実可動子間距離が小さいほど(接近量が大きいほど)減速量が大きくなるように実行される。例えば、走行時可動子間距離を100mmとした場合に、実可動子間距離が99mmである場合(接近量が1mmの場合)には後方可動子5Rを+1%減速、実可動子間距離が90mmである場合(接近量が10mmの場合)には後方可動子5Rを+10%減速、実可動子間距離が10mmである場合(接近量が90mmの場合)には後方可動子5Rを+90%減速といったように、接近量に比例して追加減速を実行してもよい。
【0064】
速度判定部47は、後方可動子5Rの速度を前方可動子5Fの速度と略等しくなるように減速させた場合に、前方可動子5Fの速度が後方可動子5Rの指令速度より大きいか否かを判定する。後方可動子5Rの指令速度は、後方可動子5Rに対する位置指令に基づく速度プロファイルによる指令速度である。前述の加減速制御部45は、速度判定部47により前方可動子5Fの速度が後方可動子5Rの指令速度より大きいと判定された場合に、後方可動子5Rの速度を指令速度に追従するように制御する。
【0065】
上述した衝突防止処理部41、距離判定部43、加減速制御部45、速度判定部47等における処理等は、これらの処理の分担の例に限定されるものではない。例えば、更に少ない数の処理部(例えば1つの処理部)で処理されてもよく、更に細分化された処理部により処理されてもよい。上記各処理部による機能は、後述するCPU901(図13参照)が実行するプログラムにより実装されてもよいし、その一部又は全部がASICやFPGA、その他の電気回路等の実際の装置により実装されてもよい。上記各処理部による機能は、必ずしもリニアコントローラ13のみにより実行される必要はなく、その一部又は全部が運行コントローラ15又は多軸アンプ11により実行されてもよい。
【0066】
<6.リニアコントローラの処理手順>
図10を参照しつつ、リニアコントローラ13により実行される処理手順の一例について説明する。図10は、リニアコントローラ13により実行される処理手順の一例を表すフローチャートである。
【0067】
ステップS110では、リニアコントローラ13は、運行コントローラ15から受信した位置指令に基づく速度プロファイルに追従するように、可動子5の位置又は速度を制御する。
【0068】
ステップS120では、リニアコントローラ13は、距離判定部43により、処理対象である可動子5(以下「後方可動子5R」という)とその前方に位置する前方可動子5Fとの実可動子間距離が、走行時可動子間距離以下であるか否かを判定する。実可動子間距離が走行時可動子間距離より大きい場合には(ステップS120:NO)、上記ステップS110に戻る。実可動子間距離が走行時可動子間距離以下である場合には(ステップS120:YES)、次のステップS130に移る。
【0069】
ステップS130では、リニアコントローラ13は、加減速制御部45により、後方可動子5Rの速度を前方可動子5Fの速度と略等しくなるように減速させる。さらにリニアコントローラ13は、後方可動子5Rの速度が前方可動子5Fの速度と略等しくなった場合に、加減速制御部45により、走行時可動子間距離から実可動子間距離を差し引いた差分値(接近量)に比例して追加減速を実行する。
【0070】
ステップS140では、リニアコントローラ13は、速度判定部47により、前方可動子5Fの速度が後方可動子5Rの速度プロファイルによる指令速度以下であるか否かを判定する。前方可動子5Fの速度が後方可動子5Rの指令速度よりも大きい場合には(ステップS140:NO)、先のステップS110に戻り、速度プロファイルに追従するように後方可動子5Rの位置又は速度を制御する。前方可動子5Fの速度が後方可動子5Rの指令速度以下である場合には(ステップS140:YES)、次のステップS150に移る。
【0071】
ステップS150では、リニアコントローラ13は、距離判定部43により、後方可動子5Rと前方可動子5Fとの実可動子間距離が、走行時可動子間距離よりも大きいか否かを判定する。実可動子間距離が走行時可動子間距離以下である場合には(ステップS150:NO)、上記ステップS130に戻り、減速を継続する。実可動子間距離が走行時可動子間距離よりも大きい場合には(ステップS150:YES)、次のステップS160に移る。
【0072】
ステップS160では、リニアコントローラ13は、加減速制御部45により、後方可動子5Rに対する減速を終了する。その後、先のステップS120に戻る。
【0073】
なお、上述した処理手順は一例であって、上記手順の少なくとも一部を削除又は変更してもよいし、上記以外の手順を追加してもよい。また、上記手順の少なくとも一部の順番を変更してもよいし、複数の手順が単一の手順にまとめられてもよい。
【0074】
<7.リニアコントローラの衝突防止処理部による可動子の動作の具体例>
図11及び図12を参照しつつ、リニアコントローラ13の衝突防止処理部41による可動子5の動作の具体例について説明する。
【0075】
図11(a)に示すように、処理対象である後方可動子5R(第1の可動子の一例)と、その前方に位置する前方可動子5F(第2の可動子の一例)とが、実可動子間距離を300mm、走行時可動子間距離を262.5mm、後方可動子5Rの速度を1500mm/sec、前方可動子5Fの速度を1000mm/sec、加減速の加速度を10m/sとして、走行しているものとする。この状態では、実可動子間距離が走行時可動子間距離よりも大きいため(図10中ステップS120:NO)、後方可動子5Rは速度プロファイルに追従するように制御される(図10中ステップS110)。
【0076】
図11(b)に示すように、後方可動子5Rが前方可動子5Fに近づき、実可動子間距離が262.5mm以下になると(図10中ステップS120:YES)、前方可動子5Fの速度と略等しくなるように後方可動子5Rの速度の減速が開始される(図10中ステップS130)。
【0077】
図11(c)に示すように、減速により後方可動子5Rの速度が前方可動子5Fの速度と略等しくなるまでは、後方可動子5Rが前方可動子5Fに近づき、実可動子間距離が短くなる。図11(c)に示す例では、例えば後方可動子5Rの速度が1250mm/secまで減速され、実可動子間距離は228.125mmとなっている。
【0078】
図11(d)に示すように、後方可動子5Rの速度が前方可動子5Fの速度と略等しくなるまで減速される。図11(d)に示す例では、例えば後方可動子5Rの速度が前方可動子5Fと同じ1000mm/secとなるまで減速され、実可動子間距離は200mmとなっている。さらに、後方可動子5Rに対して追加減速が開始される。図11(d)に示す例では、走行時可動子間距離が262.5mm、実可動子間距離が200mmであるため(接近量が62.5mm)、後方可動子5Rに対して+23.8%(62.5÷262.5×100≒23.8)の追加減速が開始される。追加減速により、後方可動子5Rの速度が762mm/secとなるまで減速される。
【0079】
図11(e)に示すように、追加減速により後方可動子5Rの速度が762mm/secとなるまで減速され、実可動子間距離は262.5mmとなっている。この場合において、後方可動子5Rの速度プロファイルによる指令速度が前方可動子5Fの速度1000mm/secよりも小さい場合には(図10中ステップS140:NO)、後方可動子5Rは速度プロファイルに追従するように制御される(図10中ステップS110)。
【0080】
図11(f)に示すように、追加減速により後方可動子5Rが前方可動子5Fから遠ざかり、実可動子間距離が262.5mmより大きくなると(図10中ステップS150:YES)、後方可動子5Rに対する減速が終了される(図10中ステップS160)。
【0081】
図12に、可動子間距離設定値が変動する場合の可動子5の動作の具体例を示す。図12(a)に示すように、処理対象である後方可動子5R(第1の可動子の一例)とその前方に位置する前方可動子5F(第2の可動子の一例)とが、実可動子間距離を250mm、可動子間距離設定値を150mm、走行時可動子間距離を200mm、後方可動子5Rの速度を1000mm/sec、前方可動子5Fの速度を1000mm/sec、加減速の加速度を10m/sとして、直線区間を走行しているものとする。この状態では、実可動子間距離が走行時可動子間距離よりも大きいため(図10中ステップS120:NO)、後方可動子5Rは速度プロファイルに追従するように制御される(図10中ステップS110)。
【0082】
図12(b)に示すように、カーブ区間の手前において可動子間距離設定値が徐々に変化する。図12(b)に示す例では、例えば可動子間距離設定値が150mm-300mmの範囲で徐々に増加し、これに伴って走行時可動子間距離が350mmに変化している。その結果、実可動子間距離が走行時可動子間距離以下になるため(図10中ステップS120:YES)、後方可動子5Rに対して減速(この場合は追加減速)が開始される(図10中ステップS130)。これにより、実可動子間距離が250mmから徐々に増大する。
【0083】
図12(c)に示すように、カーブ区間に侵入するまでに、後方可動子5Rに対する減速により実可動子間距離が350mmより大きくなり(図10中ステップS150:YES)、後方可動子5Rに対する減速が終了される(図10中ステップS160)。その結果、後方可動子5Rと前方可動子5Fとは、同じ速度1000mm/secで、走行時可動子間距離(350mm)を保った状態でカーブ区間に侵入する。これにより、カーブ区間では直線区間よりも実可動子間距離を大きくして可動子5を走行させることができ、より確実に可動子同士の衝突を防止することができる。
【0084】
図12(d)に示すように、カーブ区間が終了すると、可動子間距離設定値が変化する。図12(d)に示す例では、可動子間距離設定値が例えば元の値である150mmに戻り、これに伴って走行時可動子間距離が元の値である200mmに戻る。その結果、実可動子間距離(350mm)が走行時可動子間距離よりも大きくなるため(図10中ステップS120:NO)、後方可動子5Rは速度プロファイルに追従するように制御される(図10中ステップS110)。
【0085】
<8.実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のリニア搬送システム1は、複数のコイル17を備えた固定子3と、マグネット21を備え、固定子3に沿って移動してワークを搬送する複数の可動子5と、可動子5に設けられたスケール23と、固定子3に沿って所定の設置間隔で配置され、スケール23を検出する複数のセンサヘッド25と、設置間隔の設定値と測定値との誤差を補正するための誤差値又は測定値を原点に設定されたセンサヘッド25から累積したセンサ間隔誤差補正累積値又はセンサ間隔誤差補正込みオフセットを、センサヘッド25ごとに別々のパラメータとして記録したパラメータ記録部27と、スケール23を検出したセンサヘッド25の検出データと、スケール23を検出したセンサヘッド25に設定されたセンサ間隔誤差補正累積値又はセンサ間隔誤差補正込みオフセットとに基づいて、可動子5の機械座標位置を算出する位置算出部29と、を有する。
【0086】
本実施形態のリニア搬送システム1では、可動子5が固定子3に沿って移動し、ワークを搬送する。固定子3に沿って所定の設置間隔で配置された複数のセンサヘッド25は、可動子5に設けられたスケール23を検出する。パラメータ記録部27には、センサヘッド25間の設置間隔の設定値と予め測定された測定値との誤差を補正するための誤差値又は測定値を原点に設定されたセンサヘッド25から累積したセンサ間隔誤差補正累積値又はセンサ間隔誤差補正込みオフセットが、センサヘッド25ごとに別々のパラメータとして記録されている。位置算出部29は、スケール23を検出したセンサヘッド25の検出データと、スケール23を検出したセンサヘッド25に設定されたセンサ間隔誤差補正累積値又はセンサ間隔誤差補正込みオフセットとに基づいて、可動子5の機械座標位置を算出する。このようにして、スケール23を検出したセンサヘッド25の検出データ及び当該センサヘッド25に対して設定されたパラメータのみを使用して可動子5の機械座標位置を算出できる。他のセンサヘッド25のパラメータを読み出す処理等が不要となるため、処理速度が速くなり、可動子5の機械座標位置を速やかに算出できる。したがって、リニア搬送システム1の信頼性を向上できる。また、いずれかのセンサヘッド25を交換した場合に、当該交換したセンサヘッド25以外のセンサヘッド25については、誤差に関するパラメータが累積値であるため変動しない。このため、当該取り換えたセンサヘッド25に係るパラメータのみ再設定を行えばよく、センサ交換時の設置間隔測定作業及びパラメータ設定作業が容易となる。
【0087】
本実施形態において、センサ間隔誤差補正累積値は、設置間隔の設定値と測定値との誤差値を原点に設定されたセンサヘッド25から累積した値であってもよく、パラメータ記録部27は、設置間隔の設定値を原点に設定されたセンサヘッド25から累積したセンサ間隔オフセットを、センサヘッド25ごとに別々のパラメータとして記録してもよく、位置算出部29は、スケール23を検出したセンサヘッド25の検出データと、スケール23を検出したセンサヘッド25に設定されたセンサ間隔誤差補正累積値及びセンサ間隔オフセットとに基づいて、可動子5の機械座標位置を算出してもよい。
【0088】
この場合、設置間隔の設定値の累積値と、設置間隔の誤差値の累積値とが、センサヘッド25ごとに別々のパラメータとして記録される。これにより、各センサヘッド25における誤差値の累積値の大きさが明確になり、誤差値の管理が容易となる。
【0089】
本実施形態において、パラメータ記録部27は、可動子5が原点としたい位置に位置する際に、当該可動子5のスケール23を検出したセンサヘッド25の検出データである原点オフセットを、複数のセンサヘッド25に共通のパラメータとして記録してもよく、位置算出部29は、スケール23を検出したセンサヘッド25の検出データと、スケール23を検出したセンサヘッド25に設定されたセンサ間隔誤差補正累積値と、原点オフセットとに基づいて、可動子5の機械座標位置を算出してもよい。
【0090】
この場合、固定子3上の任意の位置を原点に設定し、当該原点を基準として可動子5の機械座標位置を算出することができる。したがって、機械座標の設定の自由度が高まり、ユーザの利便性を向上できる。また、原点オフセットを各センサヘッド25に共通のパラメータとして設定できるので、パラメータ設定作業が容易となる。
【0091】
本実施形態において、リニア搬送システム1は、固定子3の一部の区間のコイル17に対する通電制御を行う多軸アンプ11と、複数の多軸アンプ11に接続され、複数の可動子5の機械座標位置を管理するリニアコントローラ13と、をさらに有してもよく、その場合には、リニアコントローラ13は、多軸アンプ11の位置算出部29により算出された可動子5の機械座標位置に基づいて、複数の可動子5間の距離を監視して衝突を防止する衝突防止処理部41を有してもよく、多軸アンプ11は、位置算出部29により算出された可動子5の機械座標位置に基づいて固定子3の所定の区間内に2以上の可動子5が存在するか否かを判定し、2以上の可動子5が存在すると判定した場合に可動子5を緊急停止させる緊急停止処理部31を有してもよい。
【0092】
この場合、リニア搬送システム1に2つの制御方式による2段階の衝突防止機能を持たせることができ、高い衝突防止機能を備えたリニア搬送システム1を実現できる。また、リニアコントローラ13よりも処理速度が速い多軸アンプ11により可動子5の機械座標位置を算出し、その可動子位置を利用して上位のリニアコントローラ13が衝突防止を実行する方式とすることで、精度の高い可動子位置を用いた可動子全体に対する衝突防止処理が可能となり、信頼性を向上できる。
【0093】
本実施形態において、衝突防止処理部41は、複数の可動子5の移動方向において後方に位置する後方可動子5Rと前方に位置する前方可動子5Fとの実可動子間距離が走行時可動子間距離以下であるか否かを判定する距離判定部43と、距離判定部43により実可動子間距離が走行時可動子間距離以下であると判定された場合に、後方可動子5Rの速度を前方可動子5Fの速度と等しくなるように減速させる加減速制御部45と、を有してもよい。
【0094】
この場合、後方可動子5Rを停止させることなく前方可動子5Fとの衝突を防止することができる。これにより、ワーク搬送のタクトタイムが長くなることを抑制しつつ、各可動子5の衝突を防止することが可能なリニア搬送システム1を実現できる。
【0095】
本実施形態において、走行時可動子間距離は、可動子間距離として予め設定された可動子間距離設定値と、後方可動子5Rが停止するまでに要する後方可動子減速距離との合計値であってもよい。
【0096】
この場合、走行時可動子間距離を、可動子間距離の設定値と後方可動子5Rの制動距離との合計値に設定できる。これにより、例えば前方可動子5Fが急停止することによって実可動子間距離が一定距離以内となり、後方可動子5Rを停止させた場合でも、設定値分の実可動子間距離を確保することができる。したがって、衝突防止機能の実効性を高めることができる。
【0097】
本実施形態において、加減速制御部45は、後方可動子5Rの速度を前方可動子5Fの速度と等しくなるように減速させた場合に、走行時可動子間距離から実可動子間距離を差し引いた差分値に基づいて追加減速を実行してもよい。
【0098】
この場合、後方可動子5Rと前方可動子5Fとの間隔が走行時可動子間距離より縮まってどれだけ接近したか(接近量)を算出できる。そして、当該接近量に基づいて追加減速を実行することにより、接近後の実可動子間距離が小さいほど(接近量が大きいほど)大きな追加減速を実行することが可能となる。これにより、衝突防止機能の信頼性をさらに向上できる。
【0099】
本実施形態において、衝突防止処理部41は、後方可動子5Rの速度を前方可動子5Fの速度と等しくなるように減速させた場合に、前方可動子5Fの速度が後方可動子5Rの指令速度より大きいか否かを判定する速度判定部47を有してもよく、その場合には、加減速制御部45は、速度判定部47により前方可動子5Fの速度が後方可動子5Rの指令速度より大きいと判定された場合に、後方可動子5Rの速度を指令速度に追従するように制御してもよい。
【0100】
前方可動子5Fの速度が後方可動子5Rの指令速度よりも大きい場合、後方可動子5Rを指令速度に追従させても衝突は発生しない。したがって、そのような場合には後方可動子5Rを指令速度に追従させることで、前方可動子5Fとの衝突を回避しつつ、後方可動子5Rを位置指令に基づく速度プロファイルにしたがって動作させることができる。
【0101】
<9.多軸アンプ又はリニアコントローラのハードウェア構成例>
図13を参照しつつ、上記で説明したCPU901が実行するプログラムにより実装されたパラメータ記録部27、位置算出部29、緊急停止処理部31、モータ制御部33等による処理を実現する多軸アンプ11のハードウェア構成例について説明する。図13では、多軸アンプ11のコイル17に電力を供給する機能に係る構成を省略して図示している。衝突防止処理部41、距離判定部43、加減速制御部45、速度判定部47等による処理を実現するリニアコントローラ13のハードウェア構成を同様の構成としてもよい。
【0102】
図13に示すように、多軸アンプ11(又はリニアコントローラ13)は、例えば、CPU901と、ROM903と、RAM905と、ASIC又はFPGA等の特定の用途向けに構築された専用集積回路907と、入力装置913と、出力装置915と、記録装置917と、ドライブ919と、接続ポート921と、通信装置923とを有する。これらの構成は、バス909や入出力インターフェース911を介し相互に信号を伝達可能に接続されている。
【0103】
プログラムは、例えば、ROM903やRAM905、ハードディスク等による記録装置917等に記録しておくことができる。
【0104】
また、プログラムは、例えば、フレキシブルディスクなどの磁気ディスク、各種のCD・MOディスク・DVD等の光ディスク、半導体メモリ等のリムーバブルな記録媒体925に、一時的又は非一時的(永続的)に記録しておくこともできる。このような記録媒体925は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することもできる。この場合、これらの記録媒体925に記録されたプログラムは、ドライブ919により読み出されて、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0105】
また、プログラムは、例えば、ダウンロードサイト・他のコンピュータ・他の記録装置等(図示せず)に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、LANやインターネット等のネットワークNWを介し転送され、通信装置923がこのプログラムを受信する。そして、通信装置923が受信したプログラムは、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0106】
また、プログラムは、例えば、適宜の外部接続機器927に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、適宜の接続ポート921を介し転送され、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置917に記録されてもよい。
【0107】
そして、CPU901が、上記記録装置917に記録されたプログラムに従い各種の処理を実行することにより、上記のパラメータ記録部27、位置算出部29、緊急停止処理部31、モータ制御部33等による処理が実現される。この際、CPU901は、例えば、上記記録装置917からプログラムを直接読み出して実行してもよいし、RAM905に一旦ロードした上で実行してもよい。更にCPU901は、例えば、プログラムを通信装置923やドライブ919、接続ポート921を介し受信する場合、受信したプログラムを記録装置917に記録せずに直接実行してもよい。
【0108】
また、CPU901は、必要に応じて、例えばマウス・キーボード・マイク(図示せず)等の入力装置913から入力する信号や情報に基づいて各種の処理を行ってもよい。
【0109】
そして、CPU901は、上記の処理を実行した結果を、例えば表示装置や音声出力装置等の出力装置915から出力してもよく、さらにCPU901は、必要に応じてこの処理結果を通信装置923や接続ポート921を介し送信してもよく、上記記録装置917や記録媒体925に記録させてもよい。
【0110】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0111】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさ、形状、位置等が「同一」「同じ」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「同じ」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に同じ」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0112】
但し、例えばしきい値(図8図10のフローチャート参照)や基準値等、所定の判定基準となる値あるいは区切りとなる値の記載がある場合は、それらに対しての「同一」「等しい」「異なる」等は、上記とは異なり、厳密な意味である。
【0113】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【0114】
また、上述した実施形態や変形例等が解決しようとする課題や効果は、上述した内容に限定されるものではない。すなわち、実施形態や変形例等によって、上述されていない課題を解決したり、上述されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【符号の説明】
【0115】
1 リニア搬送システム
3 固定子
5 可動子
5F 前方可動子
5R 後方可動子
11 多軸アンプ(第1の制御装置)
13 リニアコントローラ(第2の制御装置)
17 コイル
21 マグネット
23 スケール
25 センサヘッド(センサ)
27 パラメータ記録部
29 位置算出部
31 緊急停止処理部
41 衝突防止処理部
43 距離判定部
45 加減速制御部
47 速度判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13