(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019249
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】太陽光パネルのリサイクル装置、および太陽光パネルのリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/30 20220101AFI20230202BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20230202BHJP
H01L 31/048 20140101ALI20230202BHJP
【FI】
B09B3/00 Z ZAB
B09B5/00 C
H01L31/04 560
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123836
(22)【出願日】2021-07-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】507380425
【氏名又は名称】新虎興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】木村 高士
【テーマコード(参考)】
4D004
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
4D004AA23
4D004AA50
4D004CA02
4D004CC03
5F151BA11
5F151JA30
5F251BA11
5F251JA30
(57)【要約】
【課題】処理後のリサイクルが容易で、二酸化炭素の排出や多大なエネルギーが必要になるといった問題が生じない、太陽光パネルのリサイクル装置を提供する。
【解決手段】リサイクル装置10を、高圧水Wを発生させる高圧水発生装置12と、高圧水発生装置12に接続され、高圧水Wを太陽光パネル100に向けて噴射させる噴射ノズル22とで構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧水を発生させる高圧水発生装置と、
前記高圧水発生装置に接続され、前記高圧水を太陽光パネルに向けて噴射させる噴射ノズルとを備えている
リサイクル装置。
【請求項2】
前記噴射ノズルは、前記太陽光パネルの裏面に向けて前記高圧水を噴射し、前記太陽光パネルを構成するカバーガラスまでを除去することを特徴とする
請求項1に記載のリサイクル装置。
【請求項3】
高圧水発生装置で発生させた高圧水を、噴射ノズルを介して太陽光パネルに向けて噴射することによって前記太陽光パネルを処理する
リサイクル方法。
【請求項4】
前記太陽光パネルの裏面に向けて前記高圧水を噴射し、前記太陽光パネルを構成するカバーガラスまでを除去することを特徴とする
請求項3に記載のリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済みの太陽光パネルを処理してリサイクルする装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素排出量の制限や、商業活動におけるエコロジー意識の高まりを受けて、その対応策のひとつとして太陽光発電が選択されることが多くなってきている。
【0003】
これに伴い、太陽光発電に用いられた使用済みの太陽光パネルの処理方法についても技術開発が進められている。
【0004】
例えば、太陽光パネル全体を破砕機に投入し、すべてを粉々にする処理方法が一般的に採用されている。
【0005】
また、特許文献1には、使用済みの太陽光パネルをアニール処理によって加熱軟化した後、剥離工具(ブレード)を用いて太陽光パネルを構成するカバーガラスを構造体(太陽光セル等)から剥離する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、太陽光パネル全体を粉々にする破砕処理では、その後の有価物回収等のリサイクルに非常に手間がかかるという問題や、破砕に伴う二酸化炭素の排出という問題があった。
【0008】
また、特許文献1に開示された太陽光パネルの処理方法では、アニール処理のために多大なエネルギーが必要になるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題に鑑みて開発されたものである。それゆえに本発明の主たる課題は、処理後のリサイクルが容易で、二酸化炭素の排出や多大なエネルギーが必要になるといった問題が生じない、太陽光パネルのリサイクル装置およびリサイクル方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面によれば、
高圧水を発生させる高圧水発生装置と、
前記高圧水発生装置に接続され、前記高圧水を太陽光パネルに向けて噴射させる噴射ノズルとを備えている
リサイクル装置が提供される。
【0011】
好適には、
前記噴射ノズルは、前記太陽光パネルの裏面に向けて前記高圧水を噴射し、前記太陽光パネルを構成するカバーガラスまでを除去する。
【0012】
また、本発明の他の局面によれば、
高圧水発生装置で発生させた高圧水を、噴射ノズルを介して太陽光パネルに向けて噴射することによって前記太陽光パネルを処理する
リサイクル方法が提供される。
【0013】
好適には、
前記太陽光パネルの裏面に向けて前記高圧水を噴射し、前記太陽光パネルを構成するカバーガラスまでを除去する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高圧水発生装置で発生させた高圧水で太陽光パネルを処理するようになっているので、処理後のリサイクルが容易で、かつ、二酸化炭素の排出や多大なエネルギーが必要になるといった問題を回避することのできるリサイクル装置およびリサイクル方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明が適用されたリサイクル装置10の全体を示す図である。
【
図2】リサイクル装置10を用いて処理される太陽光パネル100の構造の一例を示す図である。
【
図3】リサイクル装置10を用いて太陽光パネル100をカバーガラス104までを除去した状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(リサイクル装置10の構成)
以下、本発明が適用された太陽光パネル100のリサイクル装置10の実施例について説明する。このリサイクル装置10は、
図1に示すように、高圧水噴射装置12と、ワーク保持装置14とを備えている。
【0017】
高圧水噴射装置12は、高圧水発生装置20と、噴射ノズル22と、高圧水ホース24と、噴射ノズル移動装置26とを備えている。
【0018】
高圧水発生装置20は、供給された水を加圧することによって高圧水Wを発生させる装置である。この高圧水発生装置20は、水受入口30と、高圧水吐出口32とを有している。
【0019】
噴射ノズル22は高圧水発生装置20からの高圧水Wを噴射するものである。この噴射ノズル22は、高圧水ホース24を介して高圧水発生装置20に接続されている。
【0020】
噴射ノズル移動装置26は、ワーク(太陽光パネル)100に対して噴射ノズル22の位置を移動させるための装置であり、噴射ノズル22を三次元的に移動させることができるものが使用されている。もちろん、ワーク(太陽光パネル)100に対する噴射ノズル22の距離が一定で問題なければ、噴射ノズル22を水平方向に二次元的に移動させる噴射ノズル移動装置26であってもよい。
【0021】
また、噴射ノズル移動装置26は、高圧水噴射装置12を噴射ノズル22と一緒に移動させてもよいし、高圧水噴射装置12を固定式にして噴射ノズル22のみを移動させてもよい。
【0022】
ワーク保持装置14は、ワーク(太陽光パネル)100を保持するものである。また、必要に応じて、ワーク(太陽光パネル)100を水平方向に二次元的に移動させる機能をワーク保持装置14に付加してもよい。
【0023】
(太陽光パネル100の構成)
次に、一般的な太陽光パネル100の構造について、
図2を用いて簡単に説明する。一般的な太陽光パネル100は、太陽光を受ける表面から裏面に向けて順に、フレーム102、カバーガラス104、第1封止剤層106、太陽電池セル108、第2封止剤層110、バックシート112、およびジャンクションボックス114が積層されることによって構成されている。なお、本実施形態に係るリサイクル装置10によって処理される太陽光パネル100の構造はこれに限定されるものではなく、上述した構造に他の層を加えたものであってもよいし、少なくともカバーガラス104および太陽電池セル108を含んでいれば、いずれかの層が省略されているものでもよい。
【0024】
第1封止剤層106や第2封止剤層110の封止剤には、例えばEVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)が使用されているが、もちろん他の材質であってもよい。
【0025】
また、バックシート112には、例えばプラスチック(例えば、PET[ポリエチレンテレフタラート])が使用されているが、こちらについても他の材質であってもよい。
【0026】
太陽光パネル100には、上述した一般的な構成のものの他に、両面タイプや湾曲するタイプ、あるいは、種類としてシリコン系や化合物系等があるが、本発明に係るリサイクル装置10およびリサイクル方法は、これらすべての太陽光パネル100の処理に対応する。
【0027】
(リサイクル装置10による太陽光パネル100の処理)
本実施形態に係るリサイクル装置10による太陽光パネル100の処理について説明する。最初に、リサイクル装置10のワーク保持装置14にワーク(太陽光パネル)100を載置し、必要に応じて固定する。このとき、太陽光パネル100の裏面が高圧水噴射装置12に向くようにして、当該太陽光パネル100をワーク保持装置14に載置する。
【0028】
然る後、高圧水発生装置20で発生させた高圧水Wを、高圧水ホース24を介して噴射ノズル22から太陽光パネル100の裏面に向けて噴射する。
【0029】
噴射した高圧水Wで、太陽光パネル100の裏面から、カバーガラス104までを除去する。
【0030】
ここで、「カバーガラス104までを除去する」とは、
図3に示すように、太陽光パネル100の裏面側から見て、太陽電池セル108までが除去されており、少なくともカバーガラス104の一部が露出する状態になっていることをいう。換言すれば、第1封止剤層106が完全に除去されている必要はなく、第1封止剤層106の一部がカバーガラス104上に残っている状態であっても「カバーガラス104までを除去」した状態という。
【0031】
このように、太陽光パネル100において噴射した高圧水Wが当たっている部分でカバーガラス104までを除去できたら、噴射ノズル移動装置26が噴射ノズル22を移動させて、高圧水Wが当たる位置を移動させていく。移動後、当該位置において同様にカバーガラス104までの除去を行う。
【0032】
このように、噴射ノズル22から高圧水Wを噴射させる際には噴射ノズル移動装置26による噴射ノズル22の移動を停止させるようにしてもよいし、噴射ノズル22から高圧水Wを噴射しつつ、噴射ノズル移動装置26による噴射ノズル22の移動を行うようにしてもよい。
【0033】
(リサイクル装置10の特徴)
本実施形態に係るリサイクル装置10によれば、高圧水発生装置20で発生させた高圧水Wで太陽光パネル100を処理するようになっているので、処理後のリサイクルが容易で、かつ、二酸化炭素の排出や多大なエネルギーが必要になるといった問題を回避することができる。
【0034】
また、太陽光パネル100の裏面に向けて高圧水Wを噴射し、太陽光パネル100を構成するカバーガラス104までを除去するようにしているので、処理中にカバーガラス104が粉々に割れてしまう可能性が低くなり、太陽光パネル100の処理後に当該カバーガラス104やフレーム102をリサイクルしやすい。
【0035】
(変形例1)
上述した実施形態では、太陽光パネル100の裏面に向けて高圧水Wを噴射し、太陽光パネル100を構成するカバーガラス104までを除去していたが、これに変えて、太陽光パネル100の表面に向けて高圧水Wを噴射して、カバーガラス104を含めた太陽光パネル100全体を破砕してもよい。この場合でも、処理後のリサイクルが容易で、かつ、二酸化炭素の排出や多大なエネルギーが必要になるといった問題を回避することができるからである。例えば、災害等で破損してしまった太陽光パネル100を処理するような場合であれば、表裏両面に高圧水Wを噴射することになる。
【0036】
もちろん、実施形態のように、太陽光パネル100の裏面に向けて高圧水Wを噴射し、太陽光パネル100を構成するカバーガラス104までを除去するのが好適である。
【0037】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0038】
10…リサイクル装置、12…高圧水噴射装置、14…ワーク保持装置
20…高圧水発生装置、22…噴射ノズル、24…高圧水ホース、26…噴射ノズル移動装置
30…水受入口、32…高圧水吐出口
100…太陽光パネル(ワーク)、102…フレーム、104…カバーガラス、106…第1封止剤層、108…太陽電池セル、110…第2封止剤層、112…バックシート、114…ジャンクションボックス
【手続補正書】
【提出日】2022-01-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧水を発生させる高圧水発生装置と、
前記高圧水発生装置に接続され、前記高圧水を太陽光パネルに向けて噴射させる噴射ノズルとを備えており、
前記噴射ノズルは、前記太陽光パネルの裏面に向けて前記高圧水を噴射し、前記太陽光パネルを構成するカバーガラスまでを除去することを特徴とする
太陽光パネルのリサイクル装置。
【請求項2】
高圧水発生装置で発生させた高圧水を、噴射ノズルを介して太陽光パネルの裏面に向けて噴射し、前記太陽光パネルを構成するカバーガラスまでを除去することによって前記太陽光パネルを処理する
太陽光パネルのリサイクル方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明の一局面によれば、
高圧水を発生させる高圧水発生装置と、
前記高圧水発生装置に接続され、前記高圧水を太陽光パネルに向けて噴射させる噴射ノズルとを備えており、
前記噴射ノズルは、前記太陽光パネルの裏面に向けて前記高圧水を噴射し、前記太陽光パネルを構成するカバーガラスまでを除去することを特徴とする
太陽光パネルのリサイクル装置が提供される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
また、本発明の他の局面によれば、
高圧水発生装置で発生させた高圧水を、噴射ノズルを介して太陽光パネルの裏面に向けて噴射し、前記太陽光パネルを構成するカバーガラスまでを除去することによって前記太陽光パネルを処理する
太陽光パネルのリサイクル方法が提供される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】