(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019253
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】気泡検出センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 29/032 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
G01N29/032
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123843
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】391040870
【氏名又は名称】紀州技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(74)【代理人】
【識別番号】100150762
【弁理士】
【氏名又は名称】阿野 清孝
(72)【発明者】
【氏名】栗田 雅章
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA03
2G047BA01
2G047BC03
2G047CA01
2G047EA10
2G047EA16
2G047GF06
2G047GG20
2G047GG28
2G047GG33
(57)【要約】
【課題】受信感度のバラツキが少なく、また製造時の共振周波数の調整が不要で、製造コストの低減が可能な気泡検出センサを提供する。
【解決手段】本発明の気泡検出センサは、金属薄板の一方の面に圧電素子が貼り付けられ、かつ当該金属薄板が、所定の間隔を隔てて対向するように配置された第1および第2の圧電振動板と、当該第1および第2の圧電振動板の間に形成された液体の流路と、第1の圧電振動板の圧電素子に単一のパルスを印加して、第1の圧電振動板に音波を発生させるパルス発生器と、液体を伝搬した音波を受けて第2の圧電振動板の圧電素子に発生した信号を検出する信号検出器と、信号検出器で検出した信号の強さに基づいて、液体に含まれる気泡の割合を判定する判定器と、で構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属薄板の一方の面に圧電素子が貼り付けられた、音波のトランスミッタとして機能する第1の圧電振動板と、
金属薄板の一方の面に圧電素子が貼り付けられ、かつ当該金属薄板が、前記第1の圧電振動板の金属薄板と所定の間隔を隔てて対向するように配置され、音波のレシーバとして機能する第2の圧電振動板と、
前記第1および第2の圧電振動板の間に形成された液体の流路と、
前記第1の圧電振動板の圧電素子に単一のパルスを印加し、当該第1の圧電振動板に音波を発生させるパルス発生器と、
前記液体を伝搬した音波を受けて前記第2の圧電振動板の圧電素子に発生した信号を検出する信号検出器と、
前記信号検出器で検出した信号の強さに基づいて、前記液体に含まれる気泡の割合を判定する判定器と、を備えたことを特徴とする気泡検出センサ。
【請求項2】
前記第1および第2の圧電振動板は、絶縁性の第1の板の両面に配置され、かつ当該第1の板のうち前記圧電素子に近接する箇所には、液体の流路を構成する開口部が形成されている、請求項1に記載の気泡検出センサ。
【請求項3】
前記第1および第2の圧電振動板の外面に接して第2および第3の絶縁性の板が配置され、
当該第2および第3の板には、
前記第1および第2の圧電振動板の圧電素子に近接する箇所にそれぞれ開口部が形成され、
かつ前記第1の板の開口部と連通する孔がそれぞれ形成され、当該それぞれの孔と前記第1の板の開口部とで前記液体の流路を構成する、請求項2に記載の気泡検出センサ。
【請求項4】
前記パルス発生器は、単一の矩形波パルスを発生し、
前記信号検出器は、前記パルス発生器からパルスが出力されてから所定の時間が経過したときの前記第2の圧電振動板の圧電素子の受信信号を抽出し、
前記判定器は、当該抽出された信号の強さを、予め定めた閾値と比較することで、前記液体に含まれる気泡の割合を判定する、請求項1乃至3のいずれかに記載の気泡検出センサ。
【請求項5】
前記液体は、インクジェットプリンタのインクタンクからプリントヘッドに供給されるインクであり、
前記判定器は、当該インクに含まれる気泡の割合が多いか否かを判定する、請求項1乃至4のいずれかに記載の気泡検出センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内を流れる液体に含まれる気泡の割合を検出する気泡検出センサに関し、特に、インクジェットプリンタにおいてインクの残量を確認するのに好適な気泡検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
カートリッジを用いてインクを供給するタイプのインクジェットプリンタ(以降「IJP」と云う)において、インク残量の確認は、カートリッジに設けられた窓を介して使用者が目視により行うか、カートリッジに内蔵された残量検出センサによって行っている。また近年では、インク補給用のポンプの稼働時間からインクの残量を推定している。
【0003】
上述の確認方法のうち目視による検査は、作業者が行う必要があるため、省力化の妨げとなり、一方、カートリッジ内にセンサを設けた場合、コストアップの原因となる。またポンプの稼働時間からインクの残量を推定する方法では、補給量のバラツキによる誤差が生じる。
【0004】
これらの問題を解決する手段として、カートリッジとプリントヘッドとを結ぶチューブ(配管)にセンサを取り付け、インク内に含まれる気泡の割合が増えたときに、それを検出することによってインクの残量を確認することが考えられる。
【0005】
発明者等は先に、ステンレス鋼管(SUS管)の外側に超音波センサを取り付け、管内に液体または空気のいずれが存在するかによって、センサで受信する信号に違いが生じることを利用して、液体内の気泡の多少を検出する気泡検出センサを提案した(特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に記載の気泡検出センサは、構造が簡単でありながら十分な感度を備えており、インクの残量を確認するセンサとして好適であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のセンサは、その反面、SUS管とリング状の圧電素子の接着にバラツキがあり、同一の波形を入力しても出力される波形に差が生じるという問題があった。
【0009】
また同センサでは、共振周波数に合わせた連続波を入力しているが、共振周波数は、圧電素子の配置や組み立て状態に依存するため、SUS管への装着の都度、共振周波数を測定する必要があり、製造コストを上昇させる要因となっていた。更には、圧電素子の電極を保護するケースが必要となる。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、受信感度のバラツキが少なく、また製造時の共振周波数の調整が不要で、製造コストの低減が可能な気泡検出センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明に係る気泡検出センサは、
金属薄板の一方の面に圧電素子が貼り付けられた、音波のトランスミッタとして機能する第1の圧電振動板と、
金属薄板の一方の面に圧電素子が貼り付けられ、かつ当該金属薄板が、前記第1の圧電振動板の金属薄板と所定の間隔を隔てて対向するように配置され、音波のレシーバとして機能する第2の圧電振動板と、
前記第1および第2の圧電振動板の間に形成された液体の流路と、
前記第1の圧電振動板の圧電素子に単一のパルスを印加し、当該第1の圧電振動板に音波を発生させるパルス発生器と、
前記液体を伝搬した音波を受けて前記第2の圧電振動板の圧電素子に発生した信号を検出する信号検出器と、
前記信号検出器で検出した信号の強さに基づいて、前記液体に含まれる気泡の割合を判定する判定器と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
ここで、前記第1および第2の圧電振動板は、絶縁性の第1の板の両面に配置され、かつ当該第1の板のうち前記圧電素子に近接する箇所には、液体の流路を構成する開口部が形成されていることが好ましい。
【0013】
また前記第1および第2の圧電振動板の外面に接して第2および第3の絶縁性の板が配置され、
当該第2および第3の板には、前記第1および第2の圧電振動板の圧電素子に近接する箇所にそれぞれ開口部が形成され、かつ前記第1の板の開口部と連通する孔がそれぞれ形成され、当該それぞれの孔と前記第1の板の開口部とで前記液体の流路を構成することが好ましい。
【0014】
また前記パルス発生器は、単一の矩形波パルスを発生し、
前記信号検出器は、前記パルス発生器からパルスが出力されてから所定の時間が経過したときの前記第2の圧電振動板の圧電素子の受信信号を抽出し、
前記判定器は、当該抽出された信号の強さを、予め定めた閾値と比較することで、前記液体に含まれる気泡の割合を判定することが好ましい。
【0015】
また前記液体は、インクジェットプリンタのインクタンクからプリントヘッドに供給されるインクであり、前記判定器は、当該インクに含まれる気泡の割合が多いか否かを判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る気泡検出センサによれば、簡単な構造でありながら十分な感度を備え、かつ出力のバラツキの少ない気泡検出センサを実現できる。しかも、トランスミッタおよびレシーバを構成する金属の薄板を、液体の流路を兼ねた3枚の板で重ね合わせるだけの構造であるため、製造コストの大幅な低減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る気泡検出センサの構成を示す展開図である。
【
図3】同気泡検出センサの電気系の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態に係る気泡検出センサにおいて、2枚の圧電振動板の間隔を1mmとしたときのパルス発信器のパルス波形と信号検出器の受信波形を示した図である。
【
図5】実施の形態に係る気泡検出センサにおいて、2枚の圧電振動板の間隔を3mmしたときのパルス発信器のパルス波形と信号検出器の受信波形を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る気泡検出センサについて、図面を参照して説明する。
【0019】
<気泡検出センサの構成と各部の機能>
図1は、本実施の形態に係る気泡検出センサの展開図、
図2は、同センサの断面図である。また
図2(b)は、
図2(a)の断面のうち円Bの領域を拡大して示した図である。
【0020】
気泡検出センサ1は、インクの流路となるひし形の開口部21が形成された絶縁性の樹脂板2を、2枚の圧電振動板3および4で挟持した構造を採用している。圧電振動板3は、四角形の金属製の薄板31の一方の面に、薄膜状の円形の圧電素子32が貼り付けられたもので、市販されている圧電ブザーと同様の構造を有している。
【0021】
圧電振動板4も、圧電振動板3と同様に、四角形の金属製の薄板41の一方の面に、薄膜状の円形の圧電素子42が貼り付けられたものである。
【0022】
圧電振動板3および4は、音波に対してトランスミッタまたはレシーバとして機能する。そのうち圧電振動板3は、音波のトランスミッタとして機能し、パルス発生器11で生成されたパルス電圧を圧電素子32に印加すると、圧電素子が伸長または短縮し、それにつれて圧電素子32が張り合わされた金属薄板31が曲がり、金属薄板31から音波が放出される。
【0023】
一方、圧電振動板4は、音波のレシーバとして機能し、金属薄板41に音波が入射すると、それに張り合わされた圧電素子42が歪み、圧電素子42から電気信号が出力される。信号検出器14は、圧電素子42から出力された電気信号によって圧電振動板4で受けた音波の強さを検出する。
【0024】
後述するように、圧電振動板3から放射された音波の伝搬は、圧電振動板4との間に介在するインクの特性によって大きく変わり、圧電振動板3、4間がインクで満たされている場合、音波の減衰は小さく、インクに気泡すなわち空気の含まれる割合が高まるにつれて減衰の程度が大きくなる。
【0025】
従って、実験を通して、インクに含まれる気泡の割合と、圧電素子42の出力信号との関係を調べておけば、圧電素子42の出力信号の強度から、インクに含まれる気泡の量を推定できる。
【0026】
2枚の圧電振動板3および4の外側は、インク流路の一部を構成する絶縁性の樹脂板5および6で覆われており、樹脂板5,6の中心部の圧電素子32および42に近接する箇所には、圧電振動板3および4の振動を妨げないように円形の開口部51および61が形成されている。
【0027】
また樹脂板5の開口部51の近くには孔が形成され、その穴にジョイント7の先端が挿入され、接着されている。ジョイント7はインクの流路を構成するもので、中心部に孔71が形成され、孔71の一方の先端は、樹脂板2の中央に形成された開口部21に連通している。また孔71の他方の先端はIJPの配管(図示せず)に連結される。
【0028】
樹脂板6についても、開口部61の近くで、前記ジョイント7と対向しない位置に孔が形成され、その穴にジョイント8の先端が挿入され、接着されている。ジョイント8は、ジョイント7と同様にインクの流路を構成し、中心部に孔81が形成され、孔81の一方の先端は、樹脂板2の中央に形成された開口部21に連通している。また孔81の他方の先端はIJPの配管(図示せず)に連結される。
【0029】
樹脂板2,5および6、ならびに圧電振動板3および4は、複数本のビス9によって上下両面からかしめられて一体化しており、センサを簡単に組み立てることができる。
【0030】
上述したように、ジョイント7の孔71、ジョイント8の孔81および樹脂板2の開口部21はインクの流路を構成しており、図示しないポンプを用いてインクタンクから汲み上げられたインクは、
図2(a)に矢印で示すように、ジョイント7の孔71を通って樹脂板2の開口部21に移送され、更にジョイント8の孔81を通って、図示しないプリントヘッドに供給される。
【0031】
図では省略しているが、薄膜状の圧電素子32の外面には電極が形成されており、その電極には、
図2(b)に示すように、半田付けによりリード線33が接続されている。同様に、薄膜状の圧電素子42の外面にも電極が形成され、その電極には、半田付けによりリード線43が接続されている。
【0032】
3枚の樹脂板2、5および6の周辺部の2カ所には、それぞれの板を貫通するように小孔が形成され、その小孔には金属製のピン34および44が挿入されている。これらのピン34、44は、圧電素子32および42を接地するために用いられる。
【0033】
すなわち、圧電素子32が貼り付けられた金属薄板31は電極を兼ねており、ピン34を介して接地される。同様に、圧電素子42が貼り付けられた金属薄板41は、ピン44を介して接地される。
【0034】
前述したように、本実施の形態では、圧電振動板3を音波のトランスミッタとして用い、圧電振動板4を音波のレシーバとして用いている。そして圧電振動板3と4の間に介在するインク中を通過する音波を圧電振動板4の圧電素子42で電気信号に変換し、その値によってインク中に含まれる気泡の割合を推定している。
【0035】
インク中を伝搬する音波の強さは、インク中に含まれる気泡の量によって大きく変わり、気泡が含まれないとき、音波は最大となり、気泡が含まれる割合が大きいほど音波は減衰する。従って、圧電素子42で発生した信号の値を、予め定めた閾値と比較することによって、インク中に含まれる気泡の割合を判定できる。
【0036】
なお、本実施の形態では、絶縁性の樹脂板2、5、6として合成樹脂製の板を用いたが、必ずしも合成樹脂製である必要はなく、絶縁性および加工性に優れていれば、他の材料を用いてもよい。
【0037】
図3に、気泡検出センサ1の電気系の構成を示す。本実施の形態では、従来の気泡検出センサと異なり、トランスミッタ(圧電振動板3)の駆動信号として単一の矩形波パルスを用い、このパルスによって生成された音波をレシーバ(圧電振動板4)で受信しており、電気系の構成が非常に単純化されている。
【0038】
具体的に説明すると、パルス発生器11で発生した単一の矩形波パルスは、アンプ12で増幅された後、圧電素子32に入力され、圧電振動板3で音波Aに変換される。そしてインク中を伝搬した音波Aは、圧電振動板4の圧電素子42で電気信号に変換され、アンプ13で増幅された後、信号検出器14に入力される。
【0039】
後述するように、信号検出器14は、パルス発生器11からのタイミング信号に基づいてパルス発生後一定時間経過したときの圧電素子42の出力を抽出し、その信号を平滑化して出力信号としている。
【0040】
信号検出器14で検出された信号の強さは、判定器15において、予め定めた閾値と比較され、信号の強さが閾値より大きい場合には、インクに含まれる気泡の割合が少ないと判定し、閾値より小さい場合には、インクに含まれる気泡の割合が大きいと判定する。
【0041】
そして判定器15は、インクに含まれる気泡が多いと判定した場合、IJPの使用者に、インクタンク内のインクが少なくなって気泡で満たされていることを、音声または光によって報知する。報知は、例えば、一定の周期でビープ音を鳴らしたり、LEDを点滅させたりする。
【0042】
<測定結果の説明>
次に、
図4および
図5を参照して、
図1および
図2に示した気泡検出センサ1を用いて、水中の気泡の多少を測定した結果について説明する。
図4は、圧電振動板3と4の間隔を1mmとしたときのパルス発生器11のパルス波形と信号検出器14の受信波形を示した図、
図5は、圧電振動板3と4の間隔を3mmとしたときのパルス発生器11のパルス波形と信号検出器14の受信波形を示した図である。
【0043】
本実施の形態では、圧電素子として、直径9mm、厚み0.35mmの富士セラミックス製のPZT(製品番号C-6)を用い、金属薄板として、縦43mm、横26mm、厚み0.05mmのSUS鋼の薄板を用いた。また絶縁性を備えた樹脂板2、5、6として、縦43mm、横26mm、厚み3.0mmのポリフェニレンサルファイド製の板を用いた。
【0044】
また、本実施の形態では、パルス発生器11および信号検出器14を、集積回路の一種であるFPGA(Field-Programmable Gate Arrey)を用いて実現した。
【0045】
そして、圧電振動板3と4の間隔を1mmに設定した気泡検出センサでは、圧電素子32に、
図4(a)に示すパルス幅1μs、電圧10ボルトの単一の矩形波パルスを印加したところ、圧電素子42に、
図4(c)に示す信号が得られた。
【0046】
図4(b)に示した窓W1は、
図4(c)に示した受信波形から閾値と比較するための信号を抽出する期間を示したものであり、単一の矩形波パルスの立下りから時間T1後に窓W1を設定している。
【0047】
図4(c)の受信波形は、圧電振動版3と4の間が水または空気で満たされたときの波形を示し、窓W1を設定した時刻において、圧電振動版3、4間が水で満たされた場合は強い受信信号が得られる。これに対し、圧電振動板3、4間が空気で満たされたとき、出力信号は零に近い値を示している。
【0048】
圧電振動板3、4間が空気で満たされた状態は、特性的にインク流路内が気泡で充満した状態と変わらない。そのため、窓W1を用いて抽出した信号の値が閾値を下回ったときは、インクタンク内のインクが空に近いと判定してかまわない。
【0049】
図5(c)に示した出力信号の波形についても、
図4(c)に示した波形と変わらない傾向を示している。
図5(b)に示した窓W2の位置は、
図4(b)に示した窓W1の位置と比較し、後方に若干ずれている(矩形波パルスの立下りから時刻T2後)。この時間遅れは、圧電振動板3と4の間隔の差(1mmと3mm)に起因している。
【0050】
図4(b)および
図5(b)に示した窓W1、W2の出力値を比較すると、圧電振動版3、4間に水または空気のいずれが介在するかによって、出力信号の強さが明らかに異なる。従って、閾値として適切な値を設定すれば、圧電振動板の間が気泡で満たされた状態を確実に判定できる。
【0051】
なお、
図4および
図5に示したグラフでは、流路内が水で満たされたときの測定結果を示したが、インクの物理的特性は水と近似しているため、流路内がインクで満たされた場合と同様の結果が得られると考えてよい。
【0052】
また流路内が気泡で満たされた状態も、空気で満たされた状態と物理的特性がほとんど変わらないため、流路内が気泡で満たされていると考えてもよい。
【0053】
上述したように、本実施の形態に係る気泡検出センサを用いれば、インク流路内が気泡で満たされているか否かを確実に検出でき、従って、本実施の形態に係る気泡検出センサを、IJPのインク配管の途中に設置すれば、インクタンク内のインクが残り少なくなったことを、使用者に確実に報知できる。
【0054】
また本実施の形態に係る気泡検出センサは、2枚の圧電振動版と3枚の樹脂板を積層した状態において、両面からビスでかしめることによって作製しており、構造が非常に簡単で、製造もしやすい。
【0055】
更に、本実施の形態に係る気泡検出センサは、市販されている圧電ブザーの部材を用いて安価に実現でき、更に、インク流路が樹脂板内に形成されており、流路用の特別の部材が不要であるため、従来のセンサに比較し、コスト的にも優れている。
【符号の説明】
【0056】
1 気泡検出センサ
2、5、6 樹脂板
3、4 圧電振動板
7、8 ジョイント
9 ビス
11 パルス発生器
12、13 アンプ
14 信号検出器
15 判定器
21、51、61 開口部
31、41 金属薄板
32、42 圧電素子
33、43リード線
34、44 ピン
71、81 孔