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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019309
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】テープディスペンサー
(51)【国際特許分類】
   B65H 35/07 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
B65H35/07 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123936
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100134728
【弁理士】
【氏名又は名称】奥川 勝利
(72)【発明者】
【氏名】松本 光広
【テーマコード(参考)】
3F062
【Fターム(参考)】
3F062AA04
3F062BA06
3F062BB03
3F062BC01
3F062BF01
3F062BG02
(57)【要約】
【課題】テープ引き出し時にテープディスペンサーが動いてしまう事態を抑制しつつ、一度に多くの量のテープを引き出すことを可能にする。
【解決手段】載置面100上に載置される台部2と、前記台部に支持され、テープが巻き回されたテープロール10を回転自在に保持するテープ保持部3と、前記テープ保持部に保持されたテープロールから引き出されたテープ10aを切断する切断部4とを備えるテープディスペンサー1であって、前記切断部は、前記テープ保持部に保持されたテープロールの上方領域に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置面上に載置される台部と、
前記台部に支持され、テープが巻き回されたテープロールを回転自在に保持するテープ保持部と、
前記テープ保持部に保持されたテープロールから引き出されたテープを切断する切断部とを備えるテープディスペンサーであって、
前記切断部は、前記テープ保持部に保持されたテープロールの上方領域に配置されることを特徴とするテープディスペンサー。
【請求項2】
請求項1に記載のテープディスペンサーにおいて、
前記切断部は、前記テープロールの回転中心軸の真上から外れた位置に配置されることを特徴とするテープディスペンサー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のテープディスペンサーにおいて、
前記切断部は、テープの切断方向が下方へ向くように配置されることを特徴とするテープディスペンサー。
【請求項4】
請求項3に記載のテープディスペンサーにおいて、
前記テープロールの回転中心軸の略真上に位置し、かつ、該回転中心軸と平行な方向に延びる所定の回動軸部材の回りで、前記切断部を回動させることにより、該切断部の姿勢を、テープの切断方向が略水平方向へ向くテープ引出姿勢と、テープの切断方向が下方へ向くテープ切断姿勢とに切り替える切替手段を有することを特徴とするテープディスペンサー。
【請求項5】
請求項4に記載のテープディスペンサーにおいて、
前記切替手段は、前記テープ切断姿勢から前記テープ引出姿勢へ向かう向きに前記切断部を付勢する付勢手段を含むことを特徴とするテープディスペンサー。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のテープディスペンサーにおいて、
テープ幅方向における前記テープの一方の端部の外側で前記切断部を片持ち支持する支持部を有することを特徴とするテープディスペンサー。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のテープディスペンサーにおいて、
当該テープディスペンサーの重心が前記テープロールの回転中心軸の略真下に位置するように、重り部材が配置されることを特徴とするテープディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープディスペンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、載置面上に載置される台部と、前記台部に支持され、テープが巻き回されたテープロールを回転自在に保持するテープ保持部と、前記テープ保持部に保持されたテープロールから引き出されたテープを切断する切断部とを備えるテープディスペンサーが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、床面に沿って延びる2本の脚部(台部)と、2本の脚部の一端側から上方に延びる支持部の上端部にテープリールが保持されるリール取付部(テープ保持部)と、支持部の中間部分から2本脚部の他端側に延びるカッター部の先端に取り付けられたカッター(切断部)とを備えるテープカッター(テープディスペンサー)が開示されている。このテープカッターでは、テープリールに保持されているテープロールから引き出されたテープの先端部が、テープの粘着力によってテープリールの斜め下側に位置するカッターに付着した状態になる。
【0004】
この状態からユーザーがテープを引き出すとき、一般的なテープディスペンサーのように略水平方向に引き出すのではなく、カッターの近傍を通るように斜め下側へと引き出すことになる。これにより、テープを引き出す力によって引っ張られるテープロールを支持しているテープカッターには、斜め下側の向きの力が作用し、テープカッターが床面に押し付けられる。そのため、特許文献1によれば、従来のテープカッターのように重量の大きい重りを備えていなくても、テープ引き出し時にテープカッターが動いてしまう事態を抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-16936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述した従来のテープディスペンサーは、テープロールからテープを引き出す際、テープを斜め下側へ引き出す必要がある。そのため、引き出し時にテープ先端付近を摘んでいるユーザーの手が間もなくテープディスペンサーの載置されている載置面に接触し、一度に引き出すことのできるテープ量が少ないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、載置面上に載置される台部と、前記台部に支持され、テープが巻き回されたテープロールを回転自在に保持するテープ保持部と、前記テープ保持部に保持されたテープロールから引き出されたテープを切断する切断部とを備えるテープディスペンサーであって、前記切断部は、前記テープ保持部に保持されたテープロールの上方領域に配置されることを特徴とする。
一般に、ユーザーは、テープディスペンサーのテープ保持部に保持されているテープロールからテープを引き出して使用する場合、切断部の近傍を通るようにテープを引き出す。そして、ユーザーは、切断部に対向するテープの位置を確認しながら所望の量までテープを引き出したら、引き出したテープを切断部に向けて押圧する方向(テープ切断方向)へ力を加え、テープを切断する。
本テープディスペンサーにおいては、切断部が、テープ保持部に保持されたテープロールの上方領域(テープロールを鉛直方向上側に投影したときの投影領域)に配置される。そのため、ユーザーは、この切断部の近傍を通るように、テープをテープロールから真上又は真上から若干外れる斜め上側(以下「略真上」という。)へ引き出すことになる。したがって、テープをテープロールから引き出すのに必要なテープ引出力の水平方向成分が極力抑えられ、テープディスペンサーの台部が載置面に沿って摺動することが抑制される。よって、本テープディスペンサーがテープ引出力に抗する十分な重量を備えていることで、本テープディスペンサーをユーザーが手で押さえなくても、テープ引き出し時にテープディスペンサーが動いてしまう事態を抑制することができる。
しかも、本テープディスペンサーにおいては、テープの引き出し方向が略真上であることから、引き出し時にテープ先端付近を摘んでいるユーザーの手が載置面に接触することがない。したがって、一度に引き出すことのできるテープ量が載置面によって制限されることがなく、一度に多くの量のテープを引き出すことが可能である。
なお、本テープディスペンサーは、上述した従来のテープディスペンサーの重量よりも重いものとなるが、載置面上に常設して使用される使用態様においては重量がユーザーの利便性を損なうものではない。
【0008】
また、前記テープディスペンサーにおいて、前記切断部は、前記テープロールの回転中心軸の真上から外れた位置に配置されてもよい。
本テープディスペンサーによれば、切断部にテープを接触させることなく、テープをテープロールの回転中心軸の真上に引き出すことができる。テープをテープロールの回転中心軸の真上に引き出すことができれば、テープ引出力の水平方向成分を実質的にゼロにすることが可能となり、テープディスペンサーの台部が載置面に沿って摺動することをなくすことができる。
【0009】
また、前記テープディスペンサーにおいて、前記切断部は、テープの切断方向が下方へ向くように配置されてもよい。
切断部は、テープの切断方向(テープ切断時に切断部に加わるテープ切断力の方向)が略水平方向や上方へ向くように配置されてもよい。しかしながら、テープの切断方向が略水平方向を向くような切断部の構成では、テープ切断時にテープディスペンサーに対して略水平方向へのテープ切断力が加わり、テープディスペンサーの台部が載置面に沿って摺動しやすくなる。また、テープの切断方向が上方へ向くような切断部の構成では、その切断部に切断されない状態でテープを略真上に引き出すことのできる構成が必要となり、構成が煩雑化しやすい。
本テープディスペンサーによれば、テープの切断方向が下方へ向くので、引き出したテープを切断部で切断する際、切断部には下方へ押圧されるテープ切断力が加わる。これによれば、テープ切断力がテープディスペンサーの台部を載置面に押さえつける力として作用するため、テープ切断時にテープディスペンサーが動いてしまう事態を抑制することができる。しかも、切断部に切断されない状態でテープを略真上に引き出すことのできる構成を簡易に実現できる。
【0010】
また、前記テープディスペンサーにおいて、前記テープロールの回転中心軸の略真上に位置し、かつ、該回転中心軸と平行な方向に延びる所定の回動軸部材の回りで、前記切断部を回動させることにより、該切断部の姿勢を、テープの切断方向が略水平方向へ向くテープ引出姿勢と、テープの切断方向が下方へ向くテープ切断姿勢とに切り替える切替手段を有してもよい。
テープの切断方向が下方へ向くように配置される切断部でテープを切断する場合、ユーザーは、テープロールからテープを略真上に引き出した後、テープを下方へ引き下げて切断部に向けて押圧するという作業を行う。このとき、テープ切断時における切断部の位置がテープロールの回転中心軸の真上から外れた位置に配置される場合、当該切断部によるテープ上の切断位置を適切に把握するためには、テープロールから略真上に引き出したテープを一旦下方へ引き下げて切断部に近づける必要がある。そのため、引き出したテープの量がユーザーの所望量に合わない場合には、テープをテープロールから略真上に引き出し、テープを下方へ引き下げて切断部に近づけるという作業を繰り返し行う必要が生じ、ユーザーの利便性を損なうことになる。
本テープディスペンサーによれば、所定の回動軸部材の回りで切断部を回動させることにより、テープ引き出し時には、切断部を、テープの切断方向が水平へ向くテープ引出姿勢とすることができる。このときの切断部の姿勢は、テープロールから略真上に引き出したテープを切断部に向けて略水平方向へ押圧すればテープを切断できるような姿勢である。一方で、所定の回動軸部材の回りで切断部を回動させることにより、テープ切断時には、切断部を、テープの切断方向が下方へ向くテープ切断姿勢とすることができる。ここで、前記所定の回動軸部材は、テープロールの回転中心軸の略真上に位置し、かつ、回転中心軸と平行な方向に延びている。これにより、所定の回動軸部材の回りで切断部を回動させて切断部の姿勢をテープ引出姿勢からテープ切断姿勢へ切り替えたとき、これに伴い、略真上に引き出されたテープが回動軸部材を中心に屈曲することで、略真上に引き出されたテープがテープ引出姿勢の切断部に向けて略水平方向へ押圧されて切断されることになるテープ上の位置と、テープ切断姿勢の切断部に向けて下方へ押圧されて切断されるときのテープ上の位置とが略同じ位置となる。したがって、ユーザーは、テープを略真上に引き出した状態において、略真上に引き出されたテープとテープ引出姿勢の切断部との位置関係から、テープ切断姿勢の切断部によって切断される切断位置を把握することができる。よって、テープをテープロールから略真上に引き出し、テープを下方へ引き下げて切断部に近づけるという作業を繰り返すことなく、ユーザーは切断位置を適切に把握することができ、ユーザーに高い利便性を提供することができる。
【0011】
また、前記テープディスペンサーにおいて、前記切替手段は、前記テープ切断姿勢から前記テープ引出姿勢へ向かう向きに前記切断部を付勢する付勢手段を含んでもよい。
この場合、付勢手段の付勢力に抗する外力を加えない限り、切断部はテープ引出姿勢をとることができる。したがって、ユーザーがテープロールから略真上にテープを引き出す間は、切断部をテープ引出姿勢に維持することができる。そして、引き出したテープを下方へ引き下げて切断部に向けて押圧することで、この押圧力により付勢手段の付勢力に抗して切断部をテープ切断姿勢へと回動させるとともに、テープ切断姿勢になった切断部によってテープを切断することができる。そして、テープ切断後は、再び付勢手段の付勢力によって切断部がテープ引出姿勢をとることができる。よって、本テープディスペンサーによれば、ユーザーは、テープを切断するための一連の作業以外に、切断部の姿勢を切り替えるための別個の作業を行う必要がなくなり、ユーザーに更に高い利便性を提供することができる。
【0012】
また、前記テープディスペンサーにおいて、テープ幅方向における前記テープの一方の端部の外側で前記切断部を片持ち支持する支持部を有してもよい。
本テープディスペンサーによれば、切断部を支持する支持部が、テープ幅方向におけるテープの一方の端部の外側で切断部を片持ち支持する構成であるため、テープ幅方向におけるテープの他方の端部側には支持部が存在しない。これにより、テープ幅方向におけるテープの他方の端部側からは、支持部に邪魔されることなく、指でテープを把持することができ、また、指で把持したテープを操作することができる。
【0013】
また、前記テープディスペンサーにおいて、当該テープディスペンサーの重心が前記テープロールの回転中心軸の略真下に位置するように、重り部材が配置されてもよい。
これによれば、テープロールからテープを略真上に引き出す際に、テープディスペンサーに回転モーメントが発生することが抑制される。よって、より安定してテープを引き出すことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、テープ引き出し時にテープディスペンサーが動いてしまう事態を抑制しつつ、一度に多くの量のテープを引き出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係るテープディスペンサーを模式的に示す側面図。
図2】同テープディスペンサーを模式的に示す正面図。
図3】同テープディスペンサーを模式的に示す平面図。
図4】同テープディスペンサーのテープロールから引き出されたテープをテープ付着部から剥がすときに作用するテープ剥がし力を説明するための説明図。
図5】同テープディスペンサーのテープロールからテープを引き出すときに作用するテープ引出力を説明するための説明図。
図6】同テープディスペンサーのテープロールから引き出したテープを切断部で切断するときに作用するテープ切断力を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るテープディスペンサーの一実施形態について、図面に用いて説明する。
本実施形態のテープディスペンサーは、略水平面である机面などの載置面上に載置された状態で使用されるものであり、テープが巻き回されたテープロールを保持し、テープロールから引き出されたテープを所望の長さで切断して使用するものである。本実施形態のテープは、テープ基材(例えばセロファン)の一方の面に接着剤が付着した粘着テープの例であるが、このような接着剤が付着していない非粘着性のテープであってもよい。
【0017】
図1は、本実施形態に係るテープディスペンサーを模式的に示す側面図である。
図2は、本実施形態に係るテープディスペンサーを模式的に示す正面図である。
図3は、本実施形態に係るテープディスペンサーを模式的に示す平面図である。
【0018】
本実施形態に係るテープディスペンサー1は、載置面100上に載置される台部2と、台部2に支持され、テープが巻き回されたテープロール10を回転自在に保持するテープ保持部3と、テープ保持部3に保持されたテープロール10から引き出されるテープ10aを切断する切断部4と、テープ保持部3から延出して切断部4を支持する支持部5と、を備えている。
【0019】
台部2は、略直方体形状であって、テープディスペンサー1が容易に倒れない十分な広さの底面積を持つ。台部2の底面には、載置面100との間の摩擦係数を高めるためのポリウレタン樹脂等からなる滑り止め部材2aが設けられている。滑り止め部材2aは、粘着性樹脂であってもよい。また、台部2には、磁性体の載置面100に磁力で台部2を固定するための磁石を配置してもよい。また、台部2には、載置面100に設けられる被係合部と係合する係合部を設けて、台部2が載置面100上に固定される構成を採用してもよい。
【0020】
また、台部2の内部には、鋳鉄などからなる重り部材6が設けられている。この重り部材6は、テープディスペンサー1の重量を重くして、テープディスペンサー1に保持されたテープロール10からテープ10aを引き出して切断するという一連のユーザー作業中に、テープディスペンサー1が動くのを抑制する。本実施形態では、テープディスペンサー1の重心Gがテープロール10の回転中心軸Oの略真下に位置するように、重り部材6を配置している。
【0021】
テープ保持部3は、テープ幅方向におけるテープロール10の両端外側で台部2の上面から上方へ延びる2つの脚部3a,3aと、2つの脚部3a,3aの間で配置される回転リール3bと、から構成されている。回転リール3bの中心軸部材の各端は、2つの脚部3a,3aの上部に回転自在に支持されている。これにより、回転リール3bは、2つの脚部3a,3aに対して回転自在に構成される。回転リール3bには、回転リール3bの外周面にテープロール10の内周面が当接するように、テープロール10が取り付けられる。これにより、テープロール10は、回転リール3bと一体となって回転可能となり、テープ保持部3の脚部3a,3aに対して回転自在に配置される。
【0022】
切断部4は、テープロール10から引き出されたテープ10aを切断するための切断刃4aを有する。具体的には、本実施形態の切断部4は、矩形状の板部材の一辺にノコギリ状の切断刃4aが形成された構成であり、切断部4の板面と略平行な方向から切断部4の切断刃4aに対してテープ10aを押圧することで、テープ10aが切断部4によって切断される。このときの押圧方向がテープ切断方向である。
【0023】
支持部5は、図1に示すように、略コの字状の部材で構成され、その一端部(下側に位置する端部)がテープ保持部3を構成する2つの脚部3a,3aのうちの一方の脚部の上部に固定されている。支持部5の他端部(上側に位置する端部)には、テープロール10の回転中心軸Oと平行な方向へ延びる取付部5aが一体的に設けられている。この取付部5aは、テープ保持部3に保持されたテープロール10の上方領域に配置される。この取付部5aには、切断部4を保持する切替手段としての回動部7が取り付けられる。したがって、支持部5は、回動部7を介して切断部4を支持している。
【0024】
回動部7は、軸部材7a,7aを有する回動部材7bによって構成されている。軸部材7a,7aは、回動部材7bの軸方向両端面上にそれぞれ形成され、テープロール10の回転中心軸Oの略真上に位置し、かつ、その回転中心軸Oと平行な方向に延びている。各軸部材7a,7aの端部は、支持部5の取付部5aに回動可能に支持されている。これにより、回動部7は、支持部5に対し、軸部材7a,7aの軸回りで回動可能に構成される。
【0025】
また、回動部7には、軸部材7a,7aの間で軸部材7a,7aと同軸上に、円柱状部材からなるテープ付着部7cが設けられている。テープロール10から引き出されたテープ10aは、テープの粘着力によりテープ付着部7cに付着して保持される。
【0026】
軸部材7a,7aの径方向外側へ向く回動部7の面には、切断部4が取り付けられている。図1に示すように、切断部4の姿勢がテープ引出姿勢となる回動位置に回動部7が位置するとき、切断部4は回動部7に対して鉛直方向上側に位置することになる。このとき、切断部4の板面は略水平となり、切断部4の切断刃4aが略水平方向を向くので、テープ切断方向が略水平方向へ向くことになる。
【0027】
図4図6は、テープディスペンサー1に保持されたテープロール10からテープ10aを引き出して切断するというユーザーによる一連の作業中に作用する力をそれぞれ説明するための説明図である。
一般に、テープディスペンサーに保持されているテープロールからテープを引き出して使用する場合、ユーザーは、まず、テープロールから引き出されているテープを指で把持する。そして、切断部の近傍に配置されているテープ付着部にテープの粘着力によって付着しているテープ部分をテープ付着部から剥がす。その後、ユーザーは、切断部の近傍を通るようにテープを引っ張って、切断部の切断刃に対向するテープの位置を確認しながら所望の量までテープを引き出す。最後に、ユーザーは、引き出したテープを切断部の切断刃に向けて押圧する方向(テープ切断方向)へ力を加え、テープを切断する。
【0028】
本実施形態のテープディスペンサー1も同様であり、ユーザーは、まず、テープロール10から引き出されているテープ10aを指で把持する。具体的には、本実施形態のテープディスペンサー1の場合、図1に示すように、テープロール10から引き出されたテープ10aは、テープロール10の上方領域に配置されている回動部7のテープ付着部7cに対し、テープの粘着力で付着して保持されている。ユーザーは、テープロール10とテープ付着部7cとの間のテープ10aの部分を指で把持し、テープ10aをテープ付着部7cから剥がす。
【0029】
このとき、テープディスペンサー1には、図4に示すように、テープ10aを剥がすテープ剥がし力Fが作用する。具体的には、回動部7のテープ付着部7cに対し、テープ10aを剥がす向き(略水平方向)のテープ剥がし力Fが作用する。本実施形態のテープディスペンサー1の重心Gは、テープ付着部7cよりも下方に位置しているため、テープ剥がし力Fによりテープディスペンサー1には回転モーメントが生じる。ただし、テープ剥がし力Fは、比較的弱い力であり、台部2内の重り部材6等によるテープディスペンサー1の重量や重心位置、台部2の底面の広さなどにより、テープディスペンサー1を回転させたり載置面100に沿って摺動させたりするには及ばない。
【0030】
テープ付着部7cからテープ10aを剥がした後、ユーザーは、切断部4の近傍を通るようにテープ10aを引き出す。ここで、本実施形態における切断部4は、図3に示すように、テープ保持部3に保持されたテープロール10の上方領域に配置されている。詳しくは、切断部4は、テープロール10を鉛直方向上側に投影したときの投影領域に切断部4の少なくとも一部が含まれるように配置されている。そのため、ユーザーは、図5に示すように、切断部4の近傍を通るように、テープ10aをテープロール10から真上に又は真上から若干外れる斜め上側(略真上)へ引き出すことになる。この場合、テープ10aをテープロール10から引き出すのに必要なテープ引出力Fは、水平方向成分が極力抑えられたものとなり、テープディスペンサー1の台部2が載置面100に沿って摺動すること(水平方向への移動)が抑制される。
【0031】
また、テープディスペンサー1の重量がテープ引出力Fよりも小さいと、テープ引出力Fによってテープディスペンサー1が持ち上げられ、鉛直方向へ移動してしまう。しかしながら、本実施形態のテープディスペンサー1は、台部2内の重り部材6等により、テープ引出力Fよりも十分に大きな重量を持っている。したがって、テープ引出力Fによってテープディスペンサー1が持ち上げられること(鉛直方向への移動)も抑制される。
【0032】
よって、本実施形態によれば、テープディスペンサー1をユーザーが手で押さえなくても、テープ引き出し時にテープディスペンサーが動いてしまう事態を抑制することができる。
【0033】
しかも、本実施形態のテープディスペンサー1では、テープ10aの引き出し方向が略真上であることから、テープ引き出し時にテープ10aを指で把持しているユーザーの手が載置面100に接触することがない。したがって、一度に引き出すことのできるテープの量が載置面100によって制限されることがなく、一度に多くの量のテープを引き出すことが可能である。
【0034】
切断部4は、テープロール10の回転中心軸Oの真上に重なる位置に配置されていてもよい。しかしながら、この場合、切断部4が邪魔になってテープ10aをテープロール10から真上に引き出すことができず、テープ引出力Fが斜め上側を向くようになって、テープ引出力Fの水平方向成分が増える。その結果、テープディスペンサー1が倒れたり載置面100に沿って摺動したりしやすくなるおそれがある。
【0035】
したがって、本実施形態においては、切断部4がテープロール10の回転中心軸Oの真上から外れた位置に配置されている。これによれば、切断部4に邪魔されることなく、テープ10aをテープロール10から真上に引き出すことができ、テープ引き出し時にテープディスペンサー1が動くのを抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態においては、テープ引き出し時に、切断部4の姿勢が図5に示すようにテープ切断方向が水平へ向くテープ引出姿勢をとる。このときの切断部4の姿勢は、テープロール10から略真上に引き出したテープ10aを切断部4に向けて略水平方向へ押圧すればテープ10aを切断できるような姿勢である。したがって、ユーザーは、テープ10aを略真上に引き出した状態において、略真上に引き出されたテープ10aとテープ引出姿勢をとる切断部4との位置関係から、テープ上のどの位置が切断部4によって切断されるのかを目視で容易に把握することができる。
【0037】
ここで、切断部4の姿勢が図5に示すテープ引出姿勢で固定されている場合、ユーザーは、テープロール10から略真上に引き出したテープ10aを切断部4に向けて略水平方向へ押圧することで、テープ10aを切断することになる。このときの押圧力(テープ切断力F)は、切断部4に対して略水平方向に向くため、テープディスペンサー1に対して回転モーメントを生じさせる。しかも、このテープ切断力Fは、通常、図4に示すテープ剥がし力Fよりも大きいため、テープ切断力Fによってテープディスペンサー1が回転したり載置面100に沿って摺動したりするのを抑制するためには、重り部材6等によるテープディスペンサー1の重量を更に重くしたり、台部2の底面の広さを更に広くしたりする必要が生じる。これは、テープディスペンサー1の重量化と大型化を招く。
【0038】
そこで、このようなテープディスペンサー1の重量化と大型化を避けるため、本実施形態では、上述したように、切断部4の姿勢をテープ引出姿勢からテープ切断姿勢へ切り替えるための回動部7を設けている。すなわち、本実施形態によれば、切断部4の姿勢を、図5に示すようなテープ切断方向が略水平方向へ向くテープ引出姿勢から、図6に示すようなテープ切断方向が略真下へ向くテープ切断姿勢へと切り替えることができる。
【0039】
すなわち、本実施形態においては、テープ切断時には、切断部4が図6に示すようなテープ切断姿勢をとることにより、切断部4はテープ切断方向が略真下へ向くように配置される。この場合、引き出したテープ10aを切断部4で切断する際、切断部4に加わるテープ切断力Fの向きが略真下となる。これによれば、テープ切断力Fがテープディスペンサー1の台部2を載置面100に押さえつける力として作用するため、テープ切断時にテープディスペンサー1が動いてしまう事態を抑制することができる。
【0040】
このとき、切断部4の姿勢が図6に示すテープ切断姿勢で固定されている構成(切断部4が図5に示すテープ引出姿勢をとることのできない構成)であってもよいが、この場合、ユーザーは、テープロール10からテープ10aを略真上に引き出した状態で、切断部4によるテープ上の切断位置を適切に把握することが難しい。そのため、ユーザーは、切断部4によるテープ上の切断位置を適切に把握するためには、テープロール10から略真上に引き出したテープ10aを一旦下方へ引き下げてテープ切断姿勢の切断部4に近づけ、テープ上の切断位置を確認するという作業を強いられる。そして、引き出したテープの量がユーザーの所望量に合わないことが確認されると、再び、テープ10aをテープロール10から略真上へ引き出し、その後テープを下方へ引き下げて切断部4に近づけてテープ上の切断位置を確認するという作業を行う。このような作業の繰り返しは、ユーザーの利便性を損なうことになる。
【0041】
そこで、本実施形態においては、上述したとおり、回動部7により軸部材7a,7aの回りで切断部4を回動させることで、テープ引き出し時には、切断部4を、テープ切断方向が水平へ向くテープ引出姿勢とすることができる。このときの切断部4の姿勢は、テープロール10から略真上に引き出したテープ10aを切断部4に向けて略水平方向へ押圧すればテープを切断できるような姿勢である。一方で、回動部7により軸部材7a,7aの回りで切断部4を回動させることで、テープ切断時には、切断部4を、テープ切断方向が下方へ向くテープ切断姿勢とすることができる。
【0042】
回動部7の軸部材7a,7aは、上述のとおり、テープロール10の回転中心軸Oの略真上に位置し、かつ、回転中心軸Oと平行な方向に延びている。これにより、軸部材7a,7aの回りで切断部4を回動させて切断部4の姿勢をテープ引出姿勢からテープ切断姿勢へ切り替えたとき、これに伴い、略真上に引き出されたテープ10aが軸部材7a,7aを中心に(テープ付着部7cを中心に)屈曲することで、略真上に引き出されたテープ10aがテープ引出姿勢の切断部4に向けて略水平方向へ押圧されて切断されることになるテープ上の位置と、テープ切断姿勢の切断部4に向けて略真下へ押圧されて切断されるときのテープ上の位置とが略同じ位置となる。
【0043】
したがって、ユーザーは、テープ10aを略真上に引き出した状態において、略真上に引き出されたテープ10aとテープ引出姿勢の切断部4との位置関係から、テープ切断姿勢の切断部4によって切断される切断位置を把握することができる。このようにして、ユーザーは、所望の量だけテープ10aを略真上に引き出したら、回動部7により軸部材7a,7aの回りで切断部4を回動させることで、切断部4をテープ切断姿勢にする。そして、ユーザーは、引き出したテープ10aをテープ切断姿勢の切断部4に向けて略真下へのテープ切断力Fを加え、テープを切断する。これによれば、テープをテープロール10から略真上に引き出し、テープ10aを下方へ引き下げて切断部に近づけるという作業を繰り返すことなく、ユーザーは切断位置を適切に把握することができ、ユーザーに高い利便性を提供することができる。
【0044】
しかも、本実施形態のテープディスペンサー1によれば、テープロール10からテープ10aを略真上に引き出した後、そのテープ10aをテープ引出姿勢の切断部4に向けて押圧することで、テープ付着部7cを中心にテープ10aが屈曲するとともに、その押圧力によって回動部7が軸部材7a,7aの軸回りで回動する。そして、切断部4がテープ切断姿勢となるまで回動部7が回動すると、それ以上の回動部7の回動が規制される。その結果、ユーザーが、更に、テープ10aをテープ切断姿勢の切断部4に向けて押圧することで、図6に示すように、切断部4には略真下を向くテープ切断力Fが加わり、テープが切断される。
【0045】
したがって、本実施形態によれば、ユーザーは、テープ10aをテープ付着部7cから剥がし、テープロール10から略真上にテープ10aを引き出した後、引き出したテープを下方へ引き下げて切断部に向けて押圧してテープを切断するという一連の作業を行うにあたり、切断部の姿勢をテープ引出姿勢からテープ切断姿勢へと切り替えるための別個の作業を行う必要がない。したがって、ユーザーに高い利便性を提供することができる。
【0046】
しかも、本実施形態において、回動部7には、図6に示すテープ切断姿勢から図5に示すテープ引出姿勢へ向かう向きに切断部4を付勢する付勢手段が設けられている。この付勢手段としては、例えば、回動部材7bを軸部材7a,7aの軸回りで図中反時計回り方向へ回動させる向きに付勢するスプリングを用いることができる。このとき、例えば、スプリングの付勢力により切断部4がテープ引出姿勢となるまで回動部7が回動すると、それ以上の回動部7の回動を規制するストッパ等の規制部材を設ける。
【0047】
このような構成を採用することで、スプリングの付勢力に抗する外力を加えない限り、切断部4は図5に示すテープ引出姿勢を維持し続けることができる。したがって、ユーザーがテープロール10から略真上にテープ10aを引き出す間は、切断部4をテープ引出姿勢に維持することができる。そして、引き出したテープ10aを下方へ引き下げて切断部4に向けて押圧することで、この押圧力によりスプリングの付勢力に抗して切断部4をテープ切断姿勢へと回動させ、テープ切断姿勢になった切断部4によってテープ10aを切断することができる。そして、テープ切断後は、再びスプリングの付勢力によって切断部4がテープ引出姿勢に戻ることができる。
【0048】
よって、ユーザーは、テープ10aをテープ付着部7cから剥がし、テープロール10から略真上にテープ10aを引き出した後、引き出したテープを下方へ引き下げて切断部に向けて押圧してテープを切断するという一連の作業を行うにあたり、切断部の姿勢をテープ切断姿勢からテープ引出姿勢へと切り替えるための別個の作業を行う必要がない。したがって、ユーザーに高い利便性を提供することができる。
【0049】
更に、本実施形態においては、上述したように、切断部4を支持する支持部5が、図2に示すように、テープ幅方向におけるテープロール10の一方の端部の外側で切断部4を片持ち支持する構成となっている。これによれば、テープ幅方向におけるテープロール10の他方の端部側には支持部が存在しない。そのため、テープロール10の他方の端部側からユーザーが指でテープを把持することにより、テープ10aを指で把持したまま、支持部5に邪魔されることなく、テープロール10から略真上に引き出した後、下方へ引き下げてテープを切断部4で切断するという一連の作業を行うことができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、テープ切断姿勢の切断部4は、テープ切断方向が略真下を向くように配置される場合について説明したが、テープ切断方向が下方を向くように配置されていれば、斜め下側を向くように配置されていてもよい。この場合、引き出したテープ10aを切断部4で切断する際、切断部4に加わるテープ切断力Fの水平方向成分が増えるが、テープ切断力Fの鉛直方向成分がテープディスペンサー1の台部2を載置面100に押さえつける力として作用するため、テープ切断時にテープディスペンサー1が動いてしまう事態を十分に抑制することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 :テープディスペンサー
2 :台部
2a :滑り止め部材
3 :テープ保持部
3a :脚部
3b :回転リール
4 :切断部
4a :切断刃
5 :支持部
5a :取付部
6 :重り部材
7 :回動部
7a :軸部材
7b :回動部材
7c :テープ付着部
10 :テープロール
10a :テープ
100 :載置面
G :重心
O :回転中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6