(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019313
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】免振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20230202BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
F16F15/02 L
E04H9/02 331E
E04H9/02 331D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123942
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】園部 真康
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC19
2E139CA13
2E139CA24
2E139CB05
2E139CB15
3J048AA07
3J048BC02
3J048BG02
3J048CB23
3J048DA01
3J048EA13
(57)【要約】
【課題】載荷物の転倒や落下を防止できるだけでなく、容器内の液体の揺れや波立ちを抑えることができる免振装置を提供する。
【解決手段】免振装置1は、ベースプレート部材10と、その上に配置される中間プレート部材20と、その上に配置され載荷物が載置される載荷プレート部材30と、ベースプレート部材10と中間プレート部材20の間及び中間プレート部材20と載荷プレート部材30の間に相対移動を可能とする転がり部材40と、これらプレート部材10,20,30の間に連結される複数の弾性部材50,60と、を備え、弾性部材50,60を、各プレート部材10,20,30の中心部側の第1の連結点Oiと、外周部側の第2の連結点Ooとを結ぶ伸縮方向Bと、各プレート部材10、20,30の中心点Oを中心とする放射方向Aとをずらして連結して構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレート部材と、
前記ベースプレート部材上に配置される中間プレート部材と、
前記中間プレート部材上に配置され載荷物が載置される載荷プレート部材と、
前記ベースプレート部材と前記中間プレート部材との間および前記中間プレート部材と前記載荷プレート部材との間に設けられ相対移動を可能とする滑り部材または転がり部材と、
前記ベースプレート部材と前記中間プレート部材との間および前記中間プレート部材と前記載荷プレート部材との間に連結される複数の弾性部材と、を備え、
前記弾性部材を、前記ベースプレート部材、前記中間プレート部材、前記載荷プレート部材それぞれの中心部側の第1の連結点と、それぞれの外周部側の第2の連結点との間で、前記ベースプレート部材、前記中間プレート部材、前記載荷プレート部材それぞれの中心点を中心とする放射方向と、前記第1の連結点と前記第2の連結点とを結ぶ伸縮方向と、をずらして連結した、
ことを特徴とする免振装置。
【請求項2】
前記中心部側の前記第1の連結点を、前記中心点を中心とする同心円上に120度間隔の3カ所に設ける一方、
前記外周部側の前記第2の連結点を、前記中心点を中心とする同心円上で前記第1の連結点と60度ずらした120度間隔の3カ所に設け、
それぞれ3カ所の前記第1の連結点と前記第2の連結点との間に6本の前記弾性部材を連結して構成した、
ことを特徴とする請求項1に記載の免振装置。
【請求項3】
前記中心部側の前記第1の連結点を、前記中心点を中心とする同心円上に90度間隔の4カ所に設ける一方、
前記外周部側の前記第2の連結点を、前記中心点を中心とする同心円上で前記第1の連結点と45度ずらした90度間隔の4カ所に設け、
それぞれ4カ所の前記第1の連結点と前記第2の連結点との間に8本の前記弾性部材を連結配して構成した、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の免振装置。
【請求項4】
前記中間プレート部材を複数枚で構成し、複数枚の前記中間プレート部材の間に前記滑り部材または前記転がり部材を設けるとともに、複数枚の隣接する前記中間プレート部材の間に前記第1の連結点と前記第2の連結点とを設けて弾性部材で転結した、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の免振装置。
【請求項5】
前記載荷プレート部材への載荷重量を10kg未満とし、前記弾性部材をコイルばねで構成しそのばね定数を0.0015以上0.0040N/mm以下とするとともに、前記載荷プレート部材への前記弾性部材の他端連結点を前記ベースプレート部材上で16cm以上移動可能に構成してなる、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の免振装置。
【請求項6】
前記載荷プレート部材への載荷重量を10kg以上50kg以下とし、前記弾性部材をコイルばねで構成しそのばね定数を0.0020以上0.0060N/mm以下とするとともに、前記載荷プレート部材への前記弾性部材の他端連結点を前記ベースプレート部材上で20cm以上移動可能に構成してなる、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の免振装置。
【請求項7】
前記請求項1~6のいずれか1項に記載の免振装置を1つのユニットとして備え、複数個の前記ユニットの前記載荷プレート部材上に、1つの載荷物を載置可能に構成した、
ことを特徴とする免振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震動のほか一般の振動を抑えるための装置として免振装置が用いられており、例えば、小型で高価な載荷物の陶芸品や美術品、小型・軽量な載荷物の機器、熱帯魚の水槽などを対象として振動を抑えるためや転倒の防止のためなどに用いられる。
【0003】
小型・軽量の載荷物を対象とした免振装置では、転がり免振や滑り免振といった原理を応用し、例えば上下2層構造とし、この間にローラやボールなどを配して、転がり摩擦を利用して地震動や振動の加速度の低減を図るようにしている。
【0004】
例えば美術工芸品などの小型・軽量の載荷物を対象とした免振装置が、特許文献1に開示されており、下部の基板と、この基板の上に位置する上部の台板を有し、球状回転体を下部に位置する基板と上部に位置する台板に当接させて回転可能に支持した中板を、基板と台板の間に摺動自在に非固定的に配設し、基板と台板が複数のコイルばねやゴム製ばねなどの弾性部材により基板の直上に台板が復帰するように付勢されて構成されている。
【0005】
このような特許文献1の免振装置では、基板の直上に台板を復帰させるため複数本の弾性部材、例えば4本のコイルばねが台板の中心に対し90度の等間隔で基板と台板との間に連結されている。これらのコイルばねは、台板の中心に対して放射方向に配置され、コイルばねの伸縮方向がコイルばねの取付方向である放射方向と一致するようになっている。このため、地震動によって台板が移動すると、台板の中心はいずれかの放射方向に移動することになり、地震動の方向によってはコイルばねの固有振動数での共振が起こり、伸縮方向が一致したコイルばねによって振動が増幅される虞がある。
【0006】
そこで、コイルばね同士の伸縮方向が取付方向と一致しないようにすることで振動の増幅を抑えるようにした免振装置が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-239907号公報
【特許文献2】特開2015-87014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記免振装置では、いずれも地震動などの加速度に対して抑えることで、載荷物、例えば容器や水槽などの転倒や落下などを防止できるものの、容器や水槽に入った水などの液体は激しく波立ってしまい容器や水槽からこぼれることがあり、このような現象を抑えることができる免振装置が望まれている。
【0009】
本発明は、かかる従来技術における課題と要望に鑑みてなされたものであり、載荷物の転倒や落下を防止できるだけでなく、容器内の液体の揺れや波立ちを抑えることができる免振装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、免振装置の地震動や振動と容器内の液体の揺れについて考察し、鋭意検討を重ねたところ、地震動などの振動の方向と反対側の液面が高くなって波立ちが生じることや長周期の振動で共振が生じることがわかり、長周期の振動などによる共振を抑えることや振動方向と逆方向の免振が容器内の液体の波立ちを抑えるのに有効であることを見い出し、本願発明を完成したものである。
かかる知見に基づく本願発明の具体的な構成は以下の通りである。
【0011】
すなわち、本発明の免振装置は、
ベースプレート部材と、
前記ベースプレート部材上に配置される中間プレート部材と、
前記中間プレート部材上に配置され載荷物が載置される載荷プレート部材と、
前記ベースプレート部材と前記中間プレート部材との間および前記中間プレート部材と前記載荷プレート部材との間に設けられ相対移動を可能とする滑り部材または転がり部材と、
前記ベースプレート部材と前記中間プレート部材との間および前記中間プレート部材と前記載荷プレート部材との間に連結される複数の弾性部材と、を備え、
前記弾性部材を、前記ベースプレート部材、前記中間プレート部材、前記載荷プレート部材それぞれの中心部側の第1の連結点と、それぞれの外周部側の第2の連結点との間で、前記ベースプレート部材、前記中間プレート部材、前記載荷プレート部材それぞれの中心点を中心とする放射方向と、前記第1の連結点と前記第2の連結点とを結ぶ伸縮方向と、をずらして連結した、
ことを特徴とする。
【0012】
前記中心部側の前記第1の連結点を、前記中心点を中心とする同心円上に120度間隔の3カ所に設ける一方、前記外周部側の前記第2の連結点を、前記中心点を中心とする同心円上で前記第1の連結点と60度ずらした120度間隔の3カ所に設け、それぞれ3カ所の前記第1の連結点と前記第2の連結点との間に6本の前記弾性部材を連結して構成した、ものが好ましい。
【0013】
前記中心部側の前記第1の連結点を、前記中心点を中心とする同心円上に90度間隔の4カ所に設ける一方、前記外周部側の前記第2の連結点を、前記中心点を中心とする同心円上で前記第1の連結点と45度ずらした90度間隔の4カ所に設け、それぞれ4カ所の前記第1の連結点と前記第2の連結点との間に8本の前記弾性部材を連結配して構成した、ものが好ましい。
【0014】
前記中間プレート部材を複数枚で構成し、複数枚の前記中間プレート部材の間に前記滑り部材または前記転がり部材を設けるとともに、複数枚の隣接する前記中間プレート部材の間に前記第1の連結点と前記第2の連結点とを設けて弾性部材で転結した、ものが好ましい。
【0015】
前記載荷プレート部材への載荷重量を10kg未満とし、前記弾性部材をコイルばねで構成しそのばね定数を0.0015以上0.0040N/mm以下とするとともに、前記載荷プレート部材への前記弾性部材の他端連結点を前記ベースプレート部材上で16cm以上移動可能に構成してなる、ものが好ましい。
【0016】
前記載荷プレート部材への載荷重量を10kg以上50kg以下とし、前記弾性部材をコイルばねで構成しそのばね定数を0.0020以上0.0060N/mm以下とするとともに、前記載荷プレート部材への前記弾性部材の他端連結点を前記ベースプレート部材上で20cm以上移動可能に構成してなる、ものが好ましい。
【0017】
前記いずれかに記載の免振装置を1つのユニットとして備え、複数個の前記ユニットの前記載荷プレート部材上に、1つの載荷物を載置可能に構成した、ものが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の免振装置によれば、載荷物の転倒や落下を防止できるだけでなく、容器内の液体の揺れや波立ちを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の免振装置の一実施形態に係り、(a)は概略断面図、(b)は(a)中のb-b矢印に沿う概略矢視図、(c)は(a)中のc-c矢印に沿う概略矢視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る免振状態の概略断面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係り、(a)は概略断面図、(b)は(a)中のb-b矢印に沿う概略矢視図である。
【
図4】免振状態に係り、(a)は本発明の概略断面図、(b)は従来例の概略断面図である。
【
図5】免振状態の応答加速度の測定結果に係り、(a)は本発明例のグラフ、(b)は従来例のグラフである。
【
図6】兵庫県沖地震に対する免振状態の応答加速度の測定結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について、図面(
図1~
図6)を参照して詳細に説明する。
本発明の免振装置1は、小型・軽量の機器などの載荷物の免振や液体を入れた容器での液体の揺れや波立ちを抑えるために用いられる装置である。免振装置1は、例えば、1つの免振装置1での載荷物の重量が10kg以下、重いものであっても50kg以下のものを対象として免振するのに好適なものである。なお、免振装置1を1つのユニットとして複数個、例えば4つのユニットを組み合わせて機器の4隅に使用することで、ユニットの個数に応じた大きさや重量の載荷物の免振に用いることができるものである。また、本発明の免振装置は原理的には、載荷物の重量や載荷物の種類などについては何ら限定するものではない。
【0021】
免振装置1は、ベースプレート部材10と、ベースプレート部材10上に配置される中間プレート部材20と、中間プレート部材20上に配置され載荷物が載置される載荷プレート部材30と、ベースプレート部材10と中間プレート部材20との間および中間プレート部材20と載荷プレート部材30との間に設けられ相対移動を可能とする滑り部材または転がり部材40と、ベースプレート部材10と中間プレート部材20との間および中間プレート部材20と載荷プレート部材30との間に連結される複数の弾性部材50,60と、を備える。
さらに、免振装置1では、弾性部材50,60を、ベースプレート部材10、中間プレート部材20、載荷プレート部材30それぞれの中心部側の第1の連結点Oi,Oi1と、それぞれの外周部側の第2の連結点Oo,Oo1との間で、ベースプレート部材10、中間プレート部材20、載荷プレート部材30それぞれの中心点Oを中心とする放射方向Aと、第1の連結点Oi,Oi1と第2の連結点Oo,Oo1を結ぶ方向(伸縮方向)Bと、をずらして連結して構成される。
【0022】
本実施の形態の免振装置1は、ベースプレート部材10と載荷プレート部材30との間に、例えば1枚の中間プレート部材20を設けて、ベースプレート部材10と中間プレート部材20との間の転がり部材40および弾性部材50を備えた第1の免振機構1Aと、中間プレート部材20と載荷プレート部材30との間の転がり部材40および弾性部材60を備えた第2の免振機構1Bとの2段の免振機構を備えて構成されている。なお、中間プレート部材20は、1枚で構成する場合に限らず、複数枚で構成することも可能である。
【0023】
免振装置1は、
図1に示すように、第1の免振機構1Aが床面などや台などの上に置かれるベースプレート部材10と、このベースプレート部材10上に転がり部材40を介して相対移動を可能とされる中間プレート部材20と、ベースプレート部材10と中間プレート部材20との間に連結される複数の弾性部材50と、を備えている。
【0024】
ベースプレート部材10は、例えば円板状の下部プレート11と、その中心で上方に突き出して設けられた円柱状の支柱部12と、外周部で上方に突き出した環状の外枠部13と、を備えている。支柱部12には、外周部に120度間隔に弾性部材50の中心側の第1の連結点Oiとしての一端連結部51が3カ所設けてある。外枠部13は、下部プレート11の外周部で上方に突き出すことで、下部プレート11上で移動する中間プレート部材20の外周部側への可動域(移動範囲)を規制する。なお、外枠部13を省略しても良く、下部プレート11を中間プレート部材20の可動域よりも大きいものとすることも可能である。
【0025】
また、中間プレート部材20は、環状の内周部と下部プレート11の支柱部12との間が相対移動可能な内周部側の可動域となり、中間プレート部材20は、外周部側が下部プレート11の外枠部13によって可動範囲が規制されることから外周部側と内周部側の可動域のいずれか狭い範囲で可動域が規制されることになる。
【0026】
中間プレート部材20は、ベースプレート部材10の下部プレート11上に、ベースプレート部材10の中心点Oを中心とする同心状に配置される。中間プレート部材20は、円形環状の中間プレート21を備えている。中間プレート21には、環状の内周部に弾性部材50の外周部側の第2の連結点Ooとしての他端連結部52が、下部プレート11の中心側の第1の連結点Oiの一端連結部51とは、60度ずらした120度間隔で3カ所設けてある。
【0027】
転がり部材40は、中間プレート21の下面22に、下方に突き出して円周等間隔に少なくとも3個(図示例では6個)設けてある。転がり部材40は、球状回転体の下ボール41と、下ボール41を支持する下支持枠42とを備えて構成されている。転がり部材40は、下部プレート11上を任意の方向に中間プレート21を相対移動可能とし、免振装置1の載荷物の荷重などを支持する。なお、転がり部材40は、円周等間隔に6個設ける場合に限らず、少なくとも3個より多くの転がり部材40を設けるようにしてもよく、多ければ、より安定した状態で載荷物の支持と相対移動できるようになる。
【0028】
弾性部材50は、ベースプレート部材10と相対移動可能な中間プレート部材20との間に連結される。弾性部材50は、ベースプレート部材10の支柱部12に設けた中心側の3カ所の第1の連結点Oiと中間プレート部材20の内周部側の第1の連結点Oiとは60度ずらした3カ所の第2の連結点Ooとの間に連結され、それぞれの第1の連結点Oiと第2の連結点Ooに2本ずつ、合計6本の弾性部材50として引張りコイルばねの一端連結部51と他端連結部52が連結してある。
こうすることで、6本の引張コイルばねによる弾性部材50は、中心点Oを通る放射方向Aと、各弾性部材50の一端連結部51が取り付けられる中心側の第1の連結点Oiと他端連結部52が取り付けられる外周部側の第2の連結点Ooとを結ぶ伸縮方向Bとが一致しないようになる。また、各第1の連結点Oiおよび各第2の連結点Ooには、それぞれ2本の弾性部材50の一端連結部51あるいは他端連結部52が連結され、それぞれ2本の弾性部材50が各第1の連結点Oiおよび各第2の連結点Ooを通る放射方向Aを挟む両側(線対称の位置)に均等に配置される。
以上のように、免振装置1の1段目の免振機構1Aが構成され、ベースプレート部材10に対して中間プレート部材20が転がり部材40を介して転がり免振が行われるとともに、中間プレート部材20の放射方向Aの移動方向とずらした伸縮方向Bの弾性部材50によって共振を抑えながら加速度を低減し中間プレート部材20を元の位置に復帰させる。
【0029】
さらに、免振装置1は、上記の免振機構1Aの上に免振機構1Bを備える。
免振機構1Bでは、中間プレート部材20上に相対移動可能に載荷プレート部材30が設けられ、載荷プレート部材30上に載荷物が載置される。中間プレート部材20と載荷プレート部材30との間には、弾性部材60が設けられ、中心部側の一端連結部61が載荷プレート部材30に、外周部側の他端連結部62が中間プレート部材20にそれぞれ連結される。
こうすることで、免振装置1では、中間プレート部材20を相対移動する2段目のベースプレートとして載荷プレート部材30を免振する免振機構1Bとして機能させる。
【0030】
免振装置1の免振機構1Bでは、中間プレート部材20の中間プレート21の上面23に、上方に突き出して転がり部材40が下面22の転がり部材40とは60度ずらした120度間隔で少なくとも3個(図示例では6個)設けてある。転がり部材40は、下面のものと同様に、球状回転体の上ボール43と、上ボール43を支持する上支持枠44とを備えて構成されている。転がり部材40は、下面22の下ボール41および下支持枠42と上面の上ボール43および上支持枠44とをずらして配置することで、中間プレート部材20の高さを抑えることができる。なお、転がり部材40は、上下それぞれの円周等間隔に6個設ける場合に限らず、少なくとも3個より多くの転がり部材40を設けるようにしてもよく、多ければ、より安定した状態で載荷物の支持と相対移動ができるようになる。この場合も上下の転がり部材40の位置をずらすようにすることが好ましい。
【0031】
中間プレート部材20には、環状の内周部に、弾性部材60の外周部側の他端連結部62を連結する第2の連結点Oo1が円周等間隔に3カ所設けてあり、弾性部材50の他端連結部52を連結する第2の連結点Ooとは60度ずらした中間に配置している。
【0032】
載荷プレート部材30は、中間プレート部材20上に配置され、載荷プレート部材30上に載荷物を載置する。載荷プレート部材30は、中間プレート部材20の上面23の転がり部材40を介して任意の方向に相対移動可能とされている。載荷プレート部材30は、円板状の載荷プレート31を備え、載荷プレート31の中心部下面に突き出して上支柱部32が設けられて構成される。上支柱部32には、弾性部材60の一端連結部61を連結する中心側の第1の連結点Oi1が円周等間隔に3カ所設けてある。上支柱部32の第1の連結点Oiとは60度ずらした中間に配置されている。
【0033】
弾性部材60は、中間プレート部材20と相対移動可能な載荷プレート部材30に設けた中心側の3カ所の第1の連結点Oi1と、中間プレート部材20の環状の内周部側の3カ所の第2の連結点Oo1との間に連結される。弾性部材60は、それぞれの第1の連結点Oi1と第2の連結点Oo1に2本ずつ、合計6本の弾性部材60として引張りコイルばねの一端連結部61と他端連結部62が連結してある。
こうすることで、6本の引張コイルばねによる弾性部材60は、中心点Oを通る放射方向Aと、各弾性部材60の一端連結部61が取り付けられる中心側の第1の連結点Oi1と他端連結部62が取り付けられる外周部側の第2の連結点Oo1とを結ぶ伸縮方向Bとが一致しない状態となる。また、各第1の連結点Oi1および各第2の連結点Oo1には、それぞれ2本の弾性部材60の一端連結部61あるいは他端連結部62が連結され、それぞれ2本の弾性部材60が各第1の連結点Oi1および各第2の連結点Oo1を通る放射方向Aを挟む両側(線対称の位置)に均等に配置される。
以上のように、免振装置1の2段目の免振機構1Bが構成され、中間プレート部材20に対して載荷プレート部材30が転がり部材40を介して転がり免振が行われるとともに、載荷プレート部材30の放射方向Aの移動方向とずらした伸縮方向Bの弾性部材60によって共振を抑えながら加速度を低減し載荷プレート部材30を元の位置に復帰させる。
【0034】
免振装置1としては、ベースプレート部材10に対して中間プレート部材20が転がり部材40により転がり免振されるとともに、弾性部材50によって元の位置に復帰されることで1段目の免振がなされ、さらに、中間プレート部材20に対して載荷プレート部材30が転がり部材40により転がり免振されるとともに、弾性部材60によって元の位置に復帰されることで、2段目の免振がなされる。
【0035】
免振装置1では、2段の免振機構1A,1Bにより、ベースプレート部材10を床などに置き、載荷プレート部材30に液体を入れた容器D(
図4参照)を載荷物として置いた状態で、例えば、
図2に示すように、地震動がベースプレート部材10の+X方向(
図2における右方向)に作用したとすると、地震動の揺れや加速度に対して中間プレート部材20は、地震動とは逆の-X方向(
図2における左方向)に相対移動することで免振され、揺れや加速度が抑えられる。
これと同時に、中間プレート部材20の-X方向の免振された揺れに対して載荷プレート部材30は、中間プレート部材20の揺れとは逆の+X方向に相対移動することで免振され、揺れが抑えられる。
【0036】
免振装置1では、地震動がベースプレート部材10に作用し、この振幅や加速度が中間プレート部材20で抑えられることになるが、中間プレート部材20と載荷プレート部材30との免振機構1Bでは、中間プレート部材20に加わる地震動としては、1段目の免振機構1Aで振幅や加速度が抑えられ加速度を低減した地震動が作用することと同等であり、1段のみの免振装置(2段目だけの免振装置)として見れば、小さく抑えられた地震動に対して免振すればよいことになり、免振装置1として大幅に振幅を抑え、加速度の低減を図ることが可能となる。
このような2段の免振作用により、地震動による大きな揺れが中間プレート部材20による免振効果で振幅や加速度が小さくなり、小さくなった振幅や加速度に対して載荷プレート部材30の振幅や加速度が小さく抑えられ、載荷物が受ける振幅や加速度が地震動に対して大きく抑えられる。これにより、載荷物として液体を入れた容器D(
図4参照)では、水面の揺れや波立ちが大きく抑えられることになり、これまでの容器Dから液体がこぼれることが防止される。
【0037】
免振装置1では、免振時には、ベースプレート部材10と、中間プレート部材20との間には、弾性部材50として、例えば6本の引張りコイルばねが連結されていることで、弾性部材50で中間プレート部材20をベースプレート部材10の中心点Oに保持(原点復帰)するとともに、地震による加震時のエネルギーを吸収し、応答加速度を低下させる。同時に、中間プレート部材20と、載荷プレート部材30との間が弾性部材60としての例えば6本の引張りコイルばねで連結されていることで、弾性部材60で載荷プレート部材30を中間プレート部材20の中心点Oに保持(原点復帰)するとともに、地震による加震時のエネルギーを吸収し、応答加速度を低下させる。
【0038】
免振装置1を用いた実験では、
図4(a)に示すように、内径が8.2cmのガラスの容器Dに液体として水1を高さ10cm入れた状態とし、兵庫県沖地震波(測定値:神戸中央区中山手 1995年1月17日5時46分)相当の揺れを振動台で加えた。その結果、免振装置1での液面の高さの変化は、1cmであった。これに対し、
図4(b)に示す1段の免振機構1Aだけとした場合に相当する中間プレート部材20上のガラスの容器Dでは、液面の高さの変化が5cmであった。この実験から、免振装置1による大きな免振効果を奏することが確認できた。
【0039】
また、免振装置1では、1段目の免振機構1Aで120度の間隔をとった中心側の第1の連結点Oiに弾性部材50の一端連結部51が、第1の連結点Oiと60度ずらした120度間隔の3カ所の外周部側の第2の連結点Ooに弾性部材50の他端連結部52が連結されている。さらに、2段目の免振機構1Bで120度の間隔をとった中心部側の第1の連結点Oi1に弾性部材60の一端連結部61が、第1の連結点Oi1と60度ずらした120度間隔の3カ所の外周部側の第2の連結点Oo1に弾性部材60の他端連結部62が連結されている。
これにより、弾性部材50,60の一端連結部51,61と、他端連結部52,62とを結ぶ方向が伸縮方向Bであって、中間プレート部材20や載荷プレート部材30の中心点Oを中心とする放射方向Aとはずらして配置されている。したがって、各弾性部材50,60の伸縮方向Bが放射方向Aと重なることがなく共振を防止でき、万一、地震動が弾性部材50,60のばねの固有振動数と共振するようなことがあっても、互いの弾性部材50,60による振動の増幅を防ぐことができる。なお、弾性部材50,60の固有振動数は、設計段階で予め共振を極力避けるようにすることでも対応可能である。また、1段目の免振機構1Aの弾性部材50の伸縮方向Bが、2段目の免振機構1Bの弾性部材60の伸縮方向Bとはずらして配置されていることが好ましい。1段目の免振機構1Aの伸縮方向Bと2段目の免振機構1Bの伸縮方向Bをずらすことで伸縮方向 B同士の共振がより抑えられる。
【0040】
また、弾性部材50,60の伸縮方向Bが、中間プレート部材20および載荷プレート部材30の中心点Oを中心とする放射方向Aとずれていることで、弾性部材50,60の伸縮により中間プレート部材20と載荷プレート部材30の可動域を制限することが防止され、十分な可動域(中間プレート部材20と載荷プレート部材30の移動範囲)を確保することができ、免振装置1を小型化することができる。さらに、弾性部材50,60を、放射方向Aを挟んで両側に均等に配置することで、各々の弾性部材50,60の荷重を集中させず分散させることができ、集中荷重による破損などを抑制する効果もある。また、中間プレート部材20や載荷プレート部材30がそれぞれ6本の弾性部材50または弾性部材60によって連結されることによってねじれること(鉛直軸回りの回動)を防止でき、載荷プレート部材30上の積載物の鉛直軸回りの回転を抑えることができる。
【0041】
このような免振装置1では、弾性部材50,60の配置による免振効果を、より有効にするためには、載荷プレート部材30に加わる載荷物の荷重に対して適切なばね定数kとする必要がある。
例えば免振装置1の場合の弾性部材50,60を6本設けて構成する場合で、載荷プレート部材30の載荷重量を10kg未満とする場合には、ばね定数kを0.0015以上0.0040N/mm以下とするのが好ましい。
また、載荷プレート部材30への載荷重量を10kg以上50kg以下とする場合には、弾性部材50,60のばね定数kを0.0020以上0.0060N/mm以下とするのが好ましい。なお、弾性部材50,60のばね定数kは、必ずしも同一にする必要はないが、本実施の形態では、同一のものを用いた。
【0042】
また、弾性部材50,60で連結された中間プレート部材20および載荷プレート部材30は、ベースプレート部材10上での中間プレート部材20の移動範囲と、中間プレート部材20上での載荷プレート部材30の移動範囲が移動距離(可動域)となるが、載荷荷重が10kg未満の場合には、ベースプレート部材10上において弾性部材50で連結された中間プレート部材20が例えば、16cm(左右に移動するので、左右それぞれに8cm)以上移動可能に構成するのが望ましい。また、載荷重量が10kg以上50kg以下の場合には、弾性部材60で連結された載荷プレート部材30が中間プレート部材20上で20cm(左右に移動するので、左右それぞれに10cm)以上移動可能に構成するのが望ましい。
このような中間プレート部材20および載荷プレート部材30の移動距離を確保する場合には、移動に伴って押し縮められる弾性部材50,60のスペースを確保する必要があるが、免振装置1では、弾性部材50,60の伸縮方向Bと、載荷プレート部材30が移動する放射方向Aとがずらしてあるので、弾性部材50,60の伸縮スペースの確保が簡単にでき、免振装置1の小型化をはかることができる。
【0043】
さらに、免振装置1では、ベースプレート部材10の下部プレート11上を転がり部材40が任意の方向に転がることおよび中間プレート部材20の中間プレート21上を転がり部材40が任意の方向に転がることで免振するので、免振効果を確実にするため、ベースプレート部材10自体や載荷プレート部材30を摩擦の低い部材で構成する、あるいは転がり摩擦を低減してスムーズに転動できるように下部プレート11上や載荷プレート31の下面に摩擦低減部材を取り付けることが好ましい。
【0044】
摩擦低減部材としては、例えば、アクリル系樹脂材料やPTFE(Polytetrafluoroethylene)などのフッ素系樹脂材料が、摩擦係数が低く最も好ましいが、ポリエチレンやその他の低摩擦係数材料を用いることもできる。また、摩擦低減部材は、フラットな平面形状であっても凹凸を設けて下部プレート11や載荷プレート31の全面積に対し、下部プレート11等との接触面積を減らすようにすることがより好ましい。
さらに、摩擦低減部材は、シート状のものを下部プレート11等の上に取り付ける場合に限らず、上記の材料の塗布材を下部プレート11等の上に塗布することで摩擦低減部材とすることもできる。この場合、摩擦低減部材との間の摩擦が小さすぎると、転がり部材40が転動せずに滑ることになり、転がりの効果が得られなくなることから適切な摩擦の範囲があり、例えば表面粗さ(Ra)が0.01~0.1μmとすることが好ましい。
さらに、摩擦低減部材を含むベースプレート部材10等は、荷重が加わった場合でも転がり部材40がスムーズに転動できる硬さが必要であり、ベースプレート部材10等の表面の硬さは、転がり部材40の球体の大きさによっても異なるが、例えば、アスカーA硬度を50以上とすることが好ましい。
【0045】
この実施の形態では、ベースプレート部材10の下部プレート11および載荷プレート部材30の載荷プレート31自体を摩擦の低い部材で構成し、転がり部材40の下ボール41および上ボール43がスムーズに転動できるようにしてある。この場合の摩擦の低い部材は、下ボール41および上ボール43が滑らずに転動できるように表面粗さが選定される。
なお、ベースプレート部材10の下部プレート11や載荷プレート部材30の載荷プレート31に別に摩擦を低減するため摩擦低減部材を取り付けるようにすることもできる。また、転がり部材40に代えて滑り部材を中間プレート部材20の下面22や上面23に設けていわゆる滑り免振が行われるようにしても良い。この場合には、中間プレート部材20自体を低摩擦材料として下面22や上面23を滑り部材と兼用するようにしても良い。
【0046】
免振装置1は、ベースプレート部材10と、中間プレート部材20と、載荷プレート部材30と、中間プレート部材20に設けた転がり部材40と、これらの間に配置される弾性部材50,60とで構成される免振装置1を1つのユニットとし、複数個のユニットを備えた免振装置として構成することができる。この免振装置では、複数個のユニットの載荷プレート部材30上に、1つの載荷物を載置して使用する。
例えば、載荷物が大型の方形状である場合には、4つのユニット(免振装置1)を載荷物の四隅に配置することで、安定して載荷物を支えることができるとともに十分な免振効果が得られる。なお、免振装置として用いるユニットの個数は、4つのユニットで構成する場合に限らず、2つ以上で構成すれば良く、載荷物の平面への投影面積や重量に応じて定めれば良い。
【0047】
次に、免振装置の他の実施の形態について、
図3により説明する。
免振装置2は、ベースプレート部材10Aと、中間プレート部材20Aと、載荷プレート部材30Aとを四角形状に形成して構成したものであり、四角形状以外の基本的な構成は、すでに説明した円形状の免振装置1と同一であり、以下に相違する転がり部材40Aおよび弾性部材50A,60Aの構成を主に説明する。
転がり部材40Aは、中間プレート部材20Aの各辺の下面および上面に2個ずつ、下ボール41Aと上ボール43Aとが合計16個設けてある。
弾性部材50Aは、ベースプレート部材10Aと中間プレート部材20Aとの間に、90度の等間隔とされた4カ所に2本ずつの8本で構成されて一端連結部51Aと他端連結部52Aが連結されている。
弾性部材60Aは、弾性部材50Aと同様に、中間プレート部材20Aと載荷プレート部材30Aとの間に、図示省略したが弾性部材50Aの中間で90度の等間隔とした4カ所に2本ずつの8本で構成されて一端連結部61Aと他端連結部62Aが連結される。
【0048】
このように構成した免振装置2では、すでに説明した免振装置1と同様に、地震動がベースプレート部材10Aに作用し、この振幅や加速度が中間プレート部材20Aで抑えられることになるが、中間プレート部材20Aと載荷プレート部材30Aとの免振機構1Bでは、中間プレート部材20Aに加わる地震動としては、1段目の免振機構1Aで振幅や加速度が抑えられ加速度を低減した地震動が作用することと同等であり、1段のみの免振装置(2段目だけの免振装置)として見れば、小さく抑えられた地震動に対して免振すればよいことになり、免振装置2として大幅に振幅を抑え、加速度の低減を図ることが可能となる。
このような2段の免振作用により、地震動による大きな揺れが中間プレート部材20Aによる免振効果で振幅や加速度が小さくなり、小さくなった振幅や加速度に対して載荷プレート部材30Aの振幅や加速度が小さく抑えられ、載荷物が受ける振幅や加速度が地震動に対して大きく抑えられる。これにより、載荷物として液体を入れた容器Dでは、水面の揺れや波立ちが大きく抑えられることになり、これまでの容器から液体がこぼれることが防止される。
また、免振装置2でも弾性部材50A,60Aの伸縮方向Bと、中間プレート部材20Aの中心点Oの放射方向Aとずらして弾性部材50A,60Aが連結してあり、共振を防止することができる。また、弾性部材50A,60Aの伸縮により中間プレート部材20Aや載荷プレート部材30Aの可動範囲が制限されにくく、可動範囲を容易に確保できるとともに、免振装置2の小型化を図ることができる。さらに、弾性部材50A,60Aが放射方向Aを挟む両側に均等に配置されることで、荷重の均等化を図り、損傷などを防止できる。
【実施例0049】
以下に、本願発明の免振装置の実施例について、比較例とともに説明する。
[実施例]
免振装置1は、ベースプレート部材10として直径200mmの合成樹脂製の円板と、中間プレート部材20として外径が150mm、内径が100mmの環状のものと、載荷プレート部材30として直径200mmの合成樹脂製の円板とで構成した。弾性部材50,60として長さが60mm、ばね定数kが0.0031N/mmの引張りコイルばねを各6本、合計12本を用意してそれぞれの一端連結部51,61および他端連結部52,62を連結した。
振動試験1
二軸振動試験機の台上に上記免振装置1を固定し、載荷プレート部材30上に1.6kg(載荷重量)のおもりを載せた。
載荷プレート部材30上に加速度センサを取り付けた。
振動台の入力加速度を200galとし周波数を8~1Hzと変化させて加振し、加速度センサで応答加速度を測定した。
測定結果を、
図5(a)に示した。
この実施例による振動試験結果から、応答加速度は、入力加速度以下であり、1Hz付近でも共振がほとんど見られない状態であった。
振動試験2
二軸振動試験機の台上に上記免振装置1を固定し、載荷プレート部材30上に
図4(a)に示すように、内径が8.2cmのガラスの容器Dに液体として水1を高さ10cm入れた状態とした。(載荷重量0.92kg)。
載荷プレート部材30上に加速度センサを取り付けた。
兵庫県沖地震波(測定値:神戸中央区中山手 1995年1月17日5時46分)相当の揺れを振動台で加えて、加速度センサで応答加速度を測定した。
測定結果を、
図6に示した。
この実施例による振動試験結果から、実施例の応答加速度は、比較例の応答加速度以下であり、共振が抑えられている状態であった。
【0050】
[比較例]
実施例と同一の免振装置1の中間プレート部材20の上面の転がり部材40を避けて板材を取り付けて仮の載荷プレート部材とした以外は同一として1段だけの免振機構とした。
比較例による振動試験1の結果は、
図5(b)に示したように、応答加速度が1Hz付近で共振が生じ、入力加速度より大きな値であった。
また、振動試験2の結果は、
図6に示したように、比較例の応答加速度は入力加速度を大きく超える領域があり、共振が生じた。
【0051】
本発明の免振装置1は、ベースプレート部材10と、ベースプレート部材10上に配置される中間プレート部材20と、中間プレート部材20上に配置され載荷物が載置される載荷プレート部材30と、ベースプレート部材10と中間プレート部材20との間および中間プレート部材20と載荷プレート部材30との間に設けられ相対移動を可能とする滑り部材または転がり部材40と、ベースプレート部材10と中間プレート部材20との間および中間プレート部材20と載荷プレート部材30との間に連結される複数の弾性部材50,60と、を備え、弾性部材50,60を、ベースプレート部材10、中間プレート部材20、載荷プレート部材30それぞれの中心部側の第1の連結点Oi,Oi1と、それぞれの外周部側の第2の連結点Oo,Oo1との間で、ベースプレート部材10、中間プレート部材20、載荷プレート部材30それぞれの中心点Oを中心とする放射方向Aと、第1の連結点Oi,Oi1と第2の連結点Oo,Oo1とを結ぶ伸縮方向Bと、をずらして連結して構成される。
かかる構成によれば、免振装置1としては、ベースプレート部材10に対して中間プレート部材20が転がり部材40により転がり免振されるとともに、弾性部材50によって元の位置に復帰されることで1段目の免振がなされ、さらに、中間プレート部材20に対して載荷プレート部材30が転がり部材40により転がり免振されるとともに、弾性部材60によって元の位置に復帰されることで、2段目の免振がなされる。このような2段の免振作用により、地震動による大きな揺れが中間プレート部材20による免振効果で振幅や加速度が小さくなり、小さくなった振幅や加速度に対して載荷プレート部材30の振幅や加速度が小さく抑えられ、載荷物が受ける振幅や加速度が地震動に対して大きく抑えられる。これにより、載荷物として液体を入れた容器Dでは、水面の揺れや波立ちが大きく抑えられることになり、これまでの容器Dから液体がこぼれることが防止される。
【0052】
免振装置1は、中心部側の第1の連結点Oi,Oi1を、中心点を中心とする同心円上に120度間隔の3カ所に設ける一方、外周部側の第2の連結点Oo,Oo1を、中心点Oを中心とする同心円上で第1の連結点Oi,Oi1と60度ずらした120度間隔の3カ所に設け、それぞれ3カ所の第1の連結点Oi,Oi1と第2の連結点Oo,Oo1との間に6本の弾性部材50,60を連結して構成することが好ましい。
かかる構成によれば、6本の弾性部材50,60の配置により各弾性部材50,60の伸縮方向Bが放射方向Aと重ならないようにすることができ、これにより、地震動が弾性部材50,60の固有振動数と共振した場合でも振動の増幅を防止することができる。また、弾性部材50,60の伸縮方向Bと中間プレート部材20および載荷プレート部材30の中心点Oを中心とする放射方向Aとをずらすことによって、共振を抑制することが可能となるとともに、3カ所ずつの第1の連結点Oi,Oi1と第2の連結点Oo,Oo1との間に6本の弾性部材50,60を、放射方向Aを挟む左右両側に均等に配置することで、中間プレート部材20および載荷プレート部材30が相対する弾性部材50,60によってねじれることなく進行方向に一直線に移動し、中間プレート部材20および載荷プレート部材30上の積載物の回転を抑えることができる。さらに、弾性部材50,60を放射方向Aを挟む左右両側に均等に配置することで、各々の弾性部材50,60の荷重が均等になり、耐久性が増大し、破損が抑制される。
【0053】
免振装置1は、中心部側の第1の連結点Oi,Oi1を、中心点Oを中心とする同心円上に90度間隔の4カ所に設ける一方、外周部側の第2の連結点Oo,Oo1を、中心点Oを中心とする同心円上で第1の連結点Oi,Oi1と45度ずらした90度間隔の4カ所に設け、それぞれ4カ所の第1の連結点Oi,Oi1と第2の連結点Oo,Oo1との間に8本の弾性部材50,60を連結して構成することが好ましい。
かかる構成によれば、8本の弾性部材50,60の配置により各弾性部材50,60の伸縮方向Bが放射方向Aと重ならないようにすることができ、これにより、地震動が弾性部材50,60の固有振動数と共振した場合でも振動の増幅を防止することができる。また、4カ所ずつの第1の連結点Oi,Oi1と第2の連結点Oo,Oo1との間に8本の弾性部材50,60を放射方向Aを挟む左右両側均等に配置することで、相対する弾性部材50,60によってねじれることなく中間プレート部材20および載荷プレート部材30が進行方向に一直線に移動し、中間プレート部材20の回転および載荷プレート部材30上の積載物の回転を抑えることができる。さらに、弾性部材50,60を、放射方向Aを挟む左右両側均等に配置することで、各々の弾性部材50,60の荷重が均等となり、耐久性が増大し、破損が抑制される。
【0054】
免振装置1は、中間プレート部材20を複数枚で構成し、複数枚の中間プレート部材20の間に滑り部材または転がり部材40を設けるとともに、複数枚の隣接する中間プレート部材20の間に第1の連結点Oi,Oi1と第2の連結点Oo,Oo1とを設けて弾性部材50で転結した構成することが好ましい。
かかる構成によれば、複数の中間プレート部材20により、それぞれ免震することができ、各層ごとの免振効果を加算して免震することができ、一層揺れや加速度を抑えることができる。
【0055】
免振装置1は、載荷プレート部材30への載荷重量を10kg未満とし、弾性部材50,60をコイルばねで構成しそのばね定数を0.0015以上0.0040N/mm以下とするとともに、載荷プレート部材30への弾性部材50,60の他端連結部52,62をベースプレート部材10上で16cm以上移動可能に構成してなることが好ましい。
かかる構成によれば、載荷重量が10kg未満であれば、弾性部材50,60としてのコイルばねのばね定数をこの範囲とし、移動可能な距離を16cm以上とすることで、より有効かつ確実に免振することができる。また、必要な移動距離を確保して免振装置1の小型化を図ることができる。
【0056】
免振装置1は、載荷プレート部材30への載荷重量を10kg以上50kg以下とし、弾性部材50,60をコイルばねで構成しそのばね定数を0.0020以上0.0060N/mm以下とするとともに、中間プレート部材20および載荷プレート部材30への弾性部材50,60の他端連結部52,62をベースプレート部材10および中間プレート部材20上で20cm以上移動可能に構成することが好ましい。
かかる構成によれば、載荷重量が10kg以上50kg以下であれば、弾性部材50,60としてのコイルばねのばね定数をこの範囲とし、移動可能な距離を20cm以上とすることで、より有効かつ確実に免振することができる。また、必要な移動距離を確保して免振装置1の小型化を図ることができる。
【0057】
免振装置1は、免振装置を1つのユニットとして備え、複数個のユニットの載荷プレート部材30上に、1つの載荷物を載置可能に構成することが好ましい。
かかる構成によれば、載荷物が大きい場合でも安定して支持できることができる。また、ユニットの個数を変えることで、載荷物の大きさに対する自由度を増大することができる。
【0058】
なお、上記の実施の形態では、免振装置1のベースプレート部材10、中間プレート部材20、載荷プレート部材30の外形を円形や四角形の場合を例に説明したが、外形には何ら制限はなく、任意の外形とすることができ、ベースプレート部材10、中間プレート部材20、載荷プレート部材30の外形が異なる場合であっても良い。
また、弾性部材50,60として引っ張りコイルばねを例に説明したが、これに限らずゴムなどの弾性を有する他の部材を用いることもできる。
さらに、ベースプレート部材10と中間プレート部材20との間で相対移動を可能とする転がり部材40および弾性部材50,60配置や中間プレート部材20と載荷プレート部材30との間で相対移動を可能とする転がり部材40および弾性部材50,60配置は、上記実施の形態に限らず、かかる機能を満足すれば、配置の内外などを入れ替えるなど適宜変更することが可能である。