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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019314
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 9/04 20060101AFI20230202BHJP
   F28D 7/04 20060101ALI20230202BHJP
   F28D 7/10 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
F28D9/04
F28D7/04
F28D7/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123943
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000149310
【氏名又は名称】株式会社大川原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 晃弘
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA01
3L103BB01
3L103DD13
(57)【要約】
【課題】安価な熱交換器を提供する。
【解決手段】本発明の熱交換器1は、内周面211aが円筒状をした円筒部211を有するシェル2と、内周面211aとは隙間をあけて円筒部211内に配置され、受熱流体が通過する第1流路F1を内部に有し、内周面211a側から円筒部211の円筒中心側に向かって渦巻形状に形成された伝熱容器3と、内周面211aにおける接線方向に開口し、伝熱容器3の外表面と内周面211aによって画定された第2流路F2に熱源流体を導入する熱源流体導入口214aとを備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面が円筒状をした円筒部を有するシェルと、
前記内周面とは隙間をあけて前記円筒部内に配置され、受熱流体が通過する第1流路を内部に有し、該内周面側から該円筒部の円筒中心側に向かって渦巻形状に形成された伝熱容器と、
前記内周面における接線方向に開口し、前記伝熱容器の外表面と該内周面によって画定された第2流路に熱源流体を導入する熱源流体導入口とを備えたことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記熱源流体導入口は、前記伝熱容器の渦巻形状における前記内周面側から前記円筒中心側に向かう巻き方向に前記熱源流体を導入するものであることを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記伝熱容器は、前記円筒中心側に前記受熱流体が流入する受熱流体流入口が設けられ、前記内周面側に該受熱流体が排出される受熱流体流出口が設けられたものであることを特徴とする請求項1または2記載の熱交換器。
【請求項4】
前記伝熱容器は、前記シェルの下端とは隙間をあけて配置されたものであることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項5】
前記シェルの下部に設けられ、前記熱源流体から生じたドレンを排出するドレン排出部を備えたことを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項6】
前記シェルは、前記円筒部を有するシェル本体と、該シェル本体に取り外し可能に取り付けられ該シェル本体の上部を塞ぐ蓋体とを備えたものであり、
前記伝熱容器は、前記蓋体に取り付けられたものであることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体間で熱の交換を行う熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚泥等の被焼却物を焼却する焼却設備や被処理物を乾燥させる乾燥設備では、焼却炉や乾燥機等の熱処理装置から排出された排ガスの熱を回収するために熱交換器が備えられていている。この熱交換器において熱が回収される排ガスを、以下、熱源流体と称する。熱交換器は、外側容器であるシェルと、シェル内に配置され受熱流体が通過する流路を内部に有する伝熱容器とを備えている。熱源流体は、シェル内で伝熱容器の外側を通過する。その際、熱源流体は、伝熱容器の外表面に接することで受熱流体と熱交換を行う。熱交換器には、200℃程度の比較的温度が低い低温の熱源流体の熱を回収するものもある(例えば、特許文献1参照)。ところで、熱源流体には、硫黄酸化物や塩化水素が含まれていることがある。硫黄酸化物や塩化水素を含む熱源流体が酸露点以下の温度になると、いわゆる硫酸凝結や塩酸凝結が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭52-35656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の熱交換器は、熱源流体を上方から導入して下方から排出しているため、熱交換器の下方部分で熱源流体が酸露点以下の低温になり、硫酸凝結や塩酸凝結が生じて熱源流体が硫酸や塩酸を含む凝結液に変化してしまう虞がある。このため、外表面が熱源流体に接する伝熱容器と、熱源流体が内周面に接触するシェルを、これらの腐食成分を含む凝結液に侵されない高価な耐酸腐食性金属で構成する必要がある。これにより、熱交換器が高価になってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、安価な熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決する本発明の熱交換器は、内周面が円筒状をした円筒部を有するシェルと、
前記内周面とは隙間をあけて前記円筒部内に配置され、受熱流体が通過する第1流路を内部に有し、該内周面側から該円筒部の円筒中心側に向かって渦巻形状に形成された伝熱容器と、
前記内周面における接線方向に開口し、前記伝熱容器の外表面と該内周面によって画定された第2流路に熱源流体を導入する熱源流体導入口とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の熱交換器によれば、前記内周面には前記熱源流体導入口から導入された熱交換前の前記熱源流体が接するので、前記内周面の近傍では該熱源流体の温度が大きく低下することがない。このため、前記円筒部に耐酸腐食性金属を用いる必要がないので前記シェルを安く構成でき、結果として熱交換器を安価にできる。
【0008】
ここで、前記伝熱容器は、渦巻形状に成形された中空板状のものであってもよい。また、この熱交換器は、前記内周面における接線方向に前記熱源流体を排出する熱源流体排出口を備えていてもよい。さらに、前記熱源流体排出口は、前記熱源流体導入口よりも下方に配置されたものであってもよい。加えて、前記熱源流体導入口は、前記シェルの上側部分に配置されたものであり、前記熱源流体排出口は、前記シェルの下側部分に配置されたものであってもよい。またさらに、前記シェルは、前記円筒部に接続され内周面が該円筒部から遠ざかるにつれて断面積が漸次縮小した絞り部を有するものであってもよい。
【0009】
また、本発明の熱交換器において、前記熱源流体導入口は、前記伝熱容器の渦巻形状における前記内周面側から前記円筒中心側に向かう巻き方向に前記熱源流体を導入する態様であってもよい。
【0010】
なお、換言すれば、前記伝熱容器の前記巻き方向は、前記熱源流体導入口から流入する前記熱源流体の前記円筒部内での旋回流の旋回方向と一致する巻き回し方向とも言える。
【0011】
前記熱源流体と前記受熱流体を伝熱容器の壁を隔ててそれぞれ別に流動させる熱交換器においては、該熱源流体の流速が低下すると該熱源流体と該受熱流体との間の伝熱効率が低下する傾向がある。前記受熱流体と熱交換しながら前記熱源流体が流れていくとその流れの下流側にいくほど該熱源流体の温度が低下して該熱源流体が収縮し、通常は徐々に該熱源流体の流速は低下してしまう。これに対し、この態様では、前記シェル内に導入され前記内周面近傍を周回している前記熱源流体が前記伝熱容器の渦巻形状によって前記円筒中心側に向かって流れ込みやすい。このため、前記熱源流体が前記円筒中心側に収縮しつつ流れていくと、この流れ方向すなわち該円筒中心側に向かうにつれて該熱源流体の流路(前記第2流路)の水平面における曲率半径が小さくなり、この曲率に沿い流れる流体(熱源流体)の流速が高まる作用を及ぼし、前記内周面側から熱交換前の該熱源流体が該円筒中心側に流れ込んで該円筒中心側における該熱源流体の流速が維持される。その結果、前記円筒中心側においても伝熱効率が維持されるので、この熱交換器全体として高い伝熱効率を得ることができる。
【0012】
また、本発明の熱交換器において、前記伝熱容器は、前記円筒中心側に前記受熱流体が流入する受熱流体流入口が設けられ、前記内周面側に該受熱流体が排出される受熱流体流出口が設けられたものであってもよい。
【0013】
こうすることで、前記受熱流体は、前記受熱流体流出口側に近づくにつれて高温の前記熱源流体と熱交換されるので、該受熱流体の温度が高まりやすい。
【0014】
さらに、本発明の熱交換器において、前記伝熱容器は、前記シェルの下端とは隙間をあけて配置されたものであってもよい。
【0015】
前記円筒中心側まで流動した前記熱源流体が、前記伝熱容器の下端と前記シェルの下端の間では前記内周面側に流動できるので、該伝熱容器の外表面どうしによって形成される空間に流入した該熱源流体は、前記円筒中心側まで流れやすく該熱源流体の流れが該円筒中心側まで円滑な流れになる。これによっても、前記熱源流体の流速が維持されやすいので、高い伝熱効率を得ることができる。なお、前記内周面に沿って周回しながら前記伝熱容器よりも下方まで流下した前記熱源流体は比較的高温を維持しており、片や前記円筒中心側まで流動した該熱源流体は比較的低温になっているが、この両者が該伝熱容器の下端と前記シェルの下端との間の空間で混合され、混合された該熱源流体が熱源流体排出口から排出される。このため、前記シェルの下端近傍では、前記熱源流体がそれほど低温化せず、ある程度高温で維持される。これにより、前記シェルの下端を構成する部材にも耐酸腐食性金属を用いる必要がなくなり、該シェルをより安く構成できる。また、前記伝熱容器の外表面どうしによって形成される空間に流入した前記熱源流体の低温化が進むと該熱源流体から凝結液(凝結液滴)が生成され、その凝結液滴が該伝熱容器の外表面(伝熱面)に付着する場合がある。この場合、前記伝熱容器の外表面に付着した凝結液滴は、当該空間を流れる前記熱源流体の作用により渦巻形状の中心方向(前記円筒中心側)に移動し、その移動によって各凝結液滴が接触して結合して大きな滴となるため、伝熱面を流下しやすい。従って、前記伝熱容器の外表面は、その伝熱性能が阻害されにくく伝熱面として有効に機能しやすい。
【0016】
ここで、前記伝熱容器は、前記熱源流体を排出する熱源流体排出口と同じ高さ位置または該熱源流体排出口よりも上方に下端が配置されたものであってもよい。このように配置することで、前記熱源流体の流れがより円滑になる。
【0017】
またさらに、本発明の熱交換器において、前記シェルの下部に設けられ、前記熱源流体から生じたドレンを排出するドレン排出部を備えてもよい。
【0018】
前記ドレン排出部を備えることで、前記シェルの下部に溜まった前記ドレンを容易に排出できる。
【0019】
加えて、本発明の熱交換器において、前記シェルは、前記円筒部を有するシェル本体と、該シェル本体に取り外し可能に取り付けられ該シェル本体の上部を塞ぐ蓋体とを備えたものであり、
前記伝熱容器は、前記蓋体に取り付けられたものであってもよい。
【0020】
前記蓋体を前記シェル本体から取り外すことで、前記伝熱容器を該シェル本体から抜き出すことができるので、該伝熱容器の清掃や交換などのメンテナンスが容易になる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の熱交換器によれば、安価な熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態である熱交換器の正面図である。
図2図1に示した熱交換器の右側面図である。
図3】(a)は、図1に示した熱交換器の平面図であり、(b)は、図1に示した熱交換器のA-A断面図である。
図4図1に示した熱交換器における伝熱容器の内部構造を示す展開断面図である。
図5図1に示した熱交換器のシェル本体から蓋体を取り外して伝熱容器を抜き出す様子を示す右側面図である。
図6図1に示した熱交換器における伝熱容器の容器本体から上面板を取り外す様子を示す右側面図である。
図7】(a)は、変形例の熱交換器の平面図であり、(b)は、同図(a)に示した熱交換器の内部構成を示す図3(b)と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態である熱交換器の正面図である。また、図2は、図1に示した熱交換器の右側面図であり、図3(a)は、図1に示した熱交換器の平面図である。なお、図2では、後述するドレン排出部213を図示省略している。
【0024】
図1に示すように、この実施形態の熱交換器1は、シェル2と、伝熱容器3とを備えている。この熱交換器1は、受熱流体の温度を高めるために受熱流体と熱源流体との間で熱交換を行うものである。
【0025】
シェル2は、シェル本体21と蓋体22とを有している。シェル本体21は、円筒部211と、絞り部212と、ドレン排出部213と、熱源流体導入部214と、熱源流体排出部215とを有している。円筒部211は、内周面および外周面が円筒状をしたSUS304製の中空体である。円筒部211の内径は500mmで高さは2mである。なお、円筒部211は、一般構造用圧延鋼材(SS)であってもよく、その他の鋼材や鋼材以外の金属材料で構成されていてもよい。また、円筒部211の内径や高さは、熱交換器1が使用される運転条件や設置環境などに応じて適宜設定すればよい。
【0026】
絞り部212は、その上端が円筒部211の下端に結合している。絞り部212の下端には、ドレン排出部213が結合している。この絞り部212では、内部空間の断面積がドレン排出部213に向かうに従って減少する。換言すれば、絞り部212は、円筒部211から離れるにつれて漸次縮径する逆円錐状の内周面を有している。この絞り部212には不図示のレベル計が設けられている。
【0027】
ドレン排出部213は、シェル2の最も下部に設けられている。ドレン排出部213は、ドレン排出管2131と、開閉弁2132と、ポンプ2133とを有する。ドレン排出管2131は、絞り部212に接続されている。開閉弁2132は電動弁である。ポンプ2133は、開閉弁2132の後流側に配置されている。通常時、開閉弁2132は閉塞され、ポンプ2133は停止している。そしてその状態では、ドレン排出管2131の、開閉弁2132よりも上流側および絞り部212には、熱源流体から生じたドレン(凝結液)が蓄積される。開閉弁2132とポンプ2133の動作は制御装置によって制御されている。制御装置は、絞り部212に設けられたレベル計から所定量のドレンが蓄積されたことを示す信号を受信したら、開閉弁2132を解放し、ポンプ2133を起動して、蓄積されたドレンを排出する。なお、ドレン排出部の構成によっては、開閉弁2132とポンプ2133のうち一方を省略してもよい。例えば、ポンプ2133より下流側のドレン排出管2131が上方に向かって延びている場合(ドレン排出管2131による液封状態を取り得る場合)は、開閉弁2132を省略してもよい。逆に、開閉弁2132より下流側のドレン排出管2131が下方に向かって延びており、重力による排液が可能である場合は、ポンプ2133を省略してもよい。また、開閉弁2132として手動弁を用い、ドレンの排出を手動で行ってもよい。
【0028】
熱源流体導入部214は、円筒部211の上端近傍に設けられている。図2に示すように、熱源流体導入部214は、内面が長方形をした管で構成されている。熱源流体導入部214は、円筒部211から、円筒部211の接線方向に向かって突出している。円筒部211の、熱源流体導入部214との結合部には、円筒部211の内周面211a(図3(b)参照)における接線方向に開口した熱源流体導入口214aが開口している。熱源流体導入部214の突出端は、不図示の熱源流体供給管に接続される。その熱源流体供給管を通って、熱源流体導入部214内には、熱交換される前の熱源流体が流入してくる。熱源流体導入部214内に流入してきた熱源流体は、円筒部211の内周面211aの接線方向に沿って熱源流体導入口214aを通ってシェル本体21内に導入される。これにより、シェル本体21内には熱源流体の旋回流が形成される。この熱源流体には、焼却炉や乾燥機等の熱処理装置から排出された排ガスが用いられる。ただし、熱源流体として他の気体や液体を用いてもよい。
【0029】
熱源流体排出部215は、円筒部211の下端近傍に設けられている。熱源流体排出部215は、内面が長方形をした管で構成されている。熱源流体排出部215は、円筒部211から、円筒部211の接線方向に向かって突出している。図3(a)に示すように、熱源流体排出部215は、円筒部211の円筒中心を通る面に対して、平面視において熱源流体導入部214とは面対称に配置されている。なお、熱源流体導入部214と熱源流体排出部215とは必ずしも面対称に配置しなくてもよい。ただし、熱源流体排出部215は、シェル本体21内に形成される旋回流の流れ方向に沿って突出していることが好ましい。円筒部211の上端近傍に熱源流体導入部214を配置し、円筒部211の下端近傍に熱源流体排出部215を配置し、これらを共に円筒部211の接線方向に突出させることで、円筒部211の上部から下部の全域にわたり熱源流体による旋回流が形成され易く、それにより伝熱容器3の外表面どうしで形成される空間を流れる熱源流体の流速も維持されやすい。図2に示すように、円筒部211の、熱源流体排出部215との結合部には、円筒部211の内周面211a(図3(b)参照)における接線方向に開口した熱源流体排出口215aが形成されている。熱源流体排出部215の突出端は、不図示の熱源流体排出管に接続される。熱交換された後の熱源流体は、円筒部211から熱源流体排出部215内に流れ込み、熱源流体排出管を通ってこの熱交換器1から排出される。
【0030】
図2に示すように、蓋体22は、蓋本体221と、受熱流体流入部222と、2つの受熱流体流出部223とを有している。この蓋体22は、シェル本体21に取り外し可能に取り付けられ、取り付けられた状態ではシェル本体21の上部を塞いでいる。蓋本体221は、円板状をしている。この蓋本体221が、円筒部211の上端に不図示のボルト及びシール材によって気密に締結されることで、蓋体22はシェル本体21に着脱可能に取り付けられている。
【0031】
受熱流体流入部222は、蓋本体221の中心部分に配置され、蓋本体221から上方に向かって突出している。受熱流体流入部222は、下端が蓋本体221に固定されている。受熱流体流入部222は、上側部分が中空の筒状をしており、下側部分は蓋本体221に近づくに従って細くなる中空の逆円錐状をしている。図3(a)に示すように、蓋本体221の、受熱流体流入部222との結合部には、受熱流体流入部222下端の孔形状と同一形状の蓋中央開口が形成されている。受熱流体流入部222の上端は、不図示の受熱流体供給管に接続される。受熱流体流入部222内には、その受熱流体供給管から熱交換される前の受熱流体が流入してくる。この実施形態の受熱流体は水であるが、受熱流体として他の液体や気体を用いてもよい。受熱流体流入部222内に流入してきた受熱流体は、蓋中央開口と後述する受熱流体流入口3aを通って伝熱容器3に流入する。
【0032】
図2に示すように、2つの受熱流体流出部223は、蓋本体221の縁側部分に配置され、蓋本体221から上方に向かって突出している。受熱流体流出部223は、受熱流体流入部222と同一形状をしている。図3(a)に示すように、2つの受熱流体流出部223は、受熱流体流入部222を挟んでちょうど反対側にあり、下端が蓋本体221に固定されている。蓋本体221の、受熱流体流出部223との結合部には、短辺が伝熱容器3の内側面の間隔と同一幅で、長辺が受熱流体流入部222下端の孔の直径よりもほんの少し短い長さをした長方形の蓋端部開口が形成されている。熱交換により温度が高められた受熱流体は、後述する受熱流体流出口3bとこの蓋端部開口を通って受熱流体流出部223内に流出する。受熱流体流出部223の上端は、不図示の受熱流体送出管に接続される。受熱流体流出部223内に流出した受熱流体は、その受熱流体送出管に送り出される。
【0033】
図1および図2に示すように、伝熱容器3は、円筒部211内に配置されている。なお、伝熱容器3は、円筒部211内から絞り部212内にわたって延在していてもよい。この実施形態の伝熱容器3は、SUS316で構成されているが、例えばチタンなどの他の耐酸腐食性金属で構成されていてもよい。伝熱容器3は、上端が蓋本体221に接し、蓋本体221に着脱可能に取り付けられている。また、伝熱容器3は、シェル2の下端とは隙間をあけて配置されている。伝熱容器3の下端は、熱源流体排出口215aの上端と下端の間に配置されている。換言すれば、伝熱容器3の下端の高さ位置は、熱源流体排出口215aと同じ高さ位置にある。換言すれば、伝熱容器3の下端の高さ位置は、熱源流体排出口215aの上端と下端の間の高さ位置にある。なお、伝熱容器3の下端の高さ位置は、熱源流体排出口215aの高さ位置よりも上方であってもよく、熱源流体排出口215aの高さ位置よりも下方であってもよい。ただし、伝熱容器3の下端近傍における熱源流体の流れを考慮すると、伝熱容器3の下端の高さ位置は、熱源流体排出口215aの開口高さ位置の範囲内か、熱源流体排出口215aの上端位置よりも上方であることが好ましい。
【0034】
図3(b)は、図1に示した熱交換器のA-A断面図である。図3(b)には、シェル本体21内に導入された熱源流体の流れが白抜きの矢印で示され、伝熱容器3内に流入した受熱流体の流れが太い矢印で示されている。
【0035】
図3(b)に示すように、伝熱容器3は、内部に第1流路F1を有する中空板状の容器であり、円筒部211の内周面211a側から円筒部211の円筒中心側に向かう2条の渦巻形状に成形されている。この伝熱容器3の渦巻形状における外表面どうしの距離Lは、内周面211a側から円筒部211の円筒中心近傍まで略一定で20mmに設定されている。伝熱容器3は、円筒部211の内周面211aとも内周面211aの上部から下部にかけて略一定の間隔で隙間をあけて配置されている。この隙間と伝熱容器3の外表面どうしの間が、熱源流体が流れる第2流路F2になる。換言すれば、第2流路F2は、円筒部211の内周面211aと伝熱容器3の外表面によって画定されている。伝熱容器3の渦巻形状における、円筒部211の内周面211a側から円筒部211の円筒中心側に向かう巻き方向は、熱源流体導入口214aから導入された熱源流体が形成する旋回流の旋回方向と一致している。すなわち、熱源流体導入口214aは、伝熱容器3の渦巻形状における、内周面211a側から円筒部211の円筒中心側に向かう巻き方向に熱源流体を導入している。これにより、熱源流体導入口214aから導入された熱源流体の一部は、伝熱容器3の渦巻形状における外表面どうしの間を通って伝熱容器3内の受熱流体と熱交換しながら円筒部211の円筒中心側に向かって流れていく。そして、その熱源流体の一部は、最終的に伝熱容器3の下端から漏出して熱源流体排出口215aに向かう。また、熱源流体導入口214aから導入された熱源流体の他の一部は、内周面211aに沿って旋回しながら下方に移動し、円筒部211の下方に形成された熱源流体排出口215aに向かう。なお、熱源流体の他の一部のうちのさらに一部は、内周面211aに沿って旋回しながら下方に移動している途中で伝熱容器3の渦巻形状における外表面どうしの間に入り込んで円筒部211の円筒中心側に向かって流れていく。
【0036】
図4は、図1に示した熱交換器における伝熱容器の内部構造を示す展開断面図である。なお、この図4は、渦巻形状に成形する前の伝熱容器3の断面を示しているともいえる。
【0037】
図4に示すように、伝熱容器3は、容器本体31と上面板32とを有している。容器本体31は、内部に第1流路F1である空間が形成され、上面が開口した有底板状の容器である。上面板32は、容器本体31の上面開口を塞いでいる。この上面板32は、容器本体31に着脱可能に取り付けられている。上面板32には、受熱流体流入口3aと、2つの受熱流体流出口3bが形成されている。受熱流体流入口3aは、上面板32の中央部分に開口している。図3(a)に示すように、受熱流体流入口3aは、伝熱容器3が渦巻形状に成形されて蓋体22に取り付けられた状態では、円筒部211の円筒中心側に配置され、蓋本体221の蓋中央開口に連なっている。また、図4に示すように、2つの受熱流体流出口3bは、上面板32の両端部分にそれぞれ開口している。図3(a)に示すように、受熱流体流出口3bは、伝熱容器3が渦巻形状に成形されて蓋体22に取り付けられた状態では、円筒部211の内周面211a(図3(b)参照)側部分に配置され、蓋本体221の蓋端部開口に連なっている。
【0038】
図4に示すように、伝熱容器3内に形成された第1流路F1には、第1流路F1の上方から下方に向かって突出した複数の上側バッフル板41と、第1流路F1の下方から上方に向かって突出した複数の下側バッフル板42とが配置されている。複数の上側バッフル板41は、上面板32に固定されている。また、複数の下側バッフル板42は、容器本体31に固定されている。受熱流体流入口3aから第1流路F1に流入した受熱流体は、2つの受熱流体流出口3bに向かって流れていく。その際、上側バッフル板41と下側バッフル板42によって流れを乱されながら蛇行しながら流れていく。これにより、受熱流体が乱流になりやすく、かつ第1流路F1が実質的に長くなるので、熱源流体と受熱流体とが効率的に熱交換される。
【0039】
続いて、シェル本体21から伝熱容器3を取り出す方法について説明する。図5は、図1に示した熱交換器のシェル本体から蓋体を取り外して伝熱容器を抜き出す様子を示す右側面図である。
【0040】
上述したように、伝熱容器3は蓋体22に取り付けられ、蓋体22はシェル本体21に取り外し可能に取り付けられているので、蓋体22をシェル本体21から取り外すことで、伝熱容器3を蓋体22とともにシェル本体21から抜き出すことができる。図5には、伝熱容器3の上側半分が、シェル本体21から抜き出された様子が示されている。図5に示した状態から、蓋体22をさらに上方に持ち上げることで、伝熱容器3を完全にシェル本体21から抜き出すことができる。伝熱容器3をシェル本体21から抜き出すことで、伝熱容器3の清掃や交換などのメンテナンスが容易になるばかりでなく、シェル本体21の内側を容易にメンテナンスできる。
【0041】
図6は、図1に示した熱交換器における伝熱容器の容器本体から上面板を取り外す様子を示す右側面図である。
【0042】
上述したように、複数の上側バッフル板41は、上面板32に固定されている。このため、図6に示すように、容器本体31から上面板32を取り外すことで、複数の上側バッフル板41を容器本体31内から抜き出すことができる。上側バッフル板41を容器本体31から抜き出すことで、上側バッフル板41の清掃や交換などのメンテナンスが容易になる。
【0043】
以上説明した本実施形態の熱交換器1は、以下の効果を奏する。この実施形態の熱交換器1では、熱源流体導入口214aから円筒部211内に導入された熱源流体の一部は、内周面211aに沿って旋回しながら下方に移動していく。そして、伝熱容器3は、内周面211aから離間しているので、内周面211a近傍では熱源流体の熱交換が行われず熱源流体の温度が低下しにくい。従って、熱源流体に硫黄酸化物や塩化水素が含まれていても硫酸や塩酸を含む凝結液を生成しない。これにより、少なくとも円筒部211に耐酸腐食性金属を用いる必要がなく、円筒部211の材料として例えば比較的安価なSUS304やSS等を用いることができるのでシェル2を廉価に構成できる。その結果、熱交換器1を安価にできる。
【0044】
熱源流体導入口214aから円筒部211内に導入された熱源流体のうち、円筒部211の円筒中心側に向かって流れた熱源流体は、熱交換することで収縮する。通常、熱源流体が収縮すると熱源流体の流速は低下する。そして、熱源流体の流速が低下すると熱源流体と受熱流体との間の伝熱効率が低下する傾向がある。この実施形態では、内周面211aに沿って旋回している熱源流体の旋回方向が伝熱容器3の渦巻形状における巻き方向と一致しているので、内周面211aに沿って旋回している熱源流体が円筒中心側に向かって流れ込みやすい。このため、熱交換しながら円筒中心側に向かって流れた熱源流体が収縮すると、内周面211aに沿って旋回している熱源流体が円筒中心側に流れ込むので円筒部211の円筒中心側に向かう流れの流速が低下してしまうことが抑制される。これにより、伝熱効率を高めることができる。
【0045】
さらに、この実施形態では、熱源流体は、第2流路F2において、内周面211a側で高温を維持し、円筒中心側に近づくに従って熱交換が進んで低温になる。これとは逆に、第1流路F1の受熱流体は、円筒部211の円筒中心側から内周面211a側部分に流れる。このため、受熱流体は内周面211a側に設けられた受熱流体流出口3bに近づくにつれて高温の熱源流体と熱交換されるので、受熱流体流出口3bに到達した際の温度が高くなりやすい。加えて、伝熱容器3は、シェル2の下端とは隙間をあけて配置されているので、円筒中心側まで流動した熱源流体は、伝熱容器3の下端に達することでその隙間から内周面211a側に流動できる。これにより、熱源流体の流れが円滑になり、熱源流体の流速が維持されやすいため、伝熱効率の低下を抑制できる。またさらに、ドレン排出部213を備えているので、シェル2内の下部に溜まったドレンを容易に排出できる。
【0046】
また、伝熱容器3の外表面どうしの距離Lが、伝熱容器3の長手方向(上下方向)全長で維持され、障害物がないので、熱源流体に多少の混入物があっても、第2流路F2が閉塞しにくい。加えて、伝熱容器3の外表面どうしの間に障害物がないので、その外表面の清掃がしやすい。さらに、伝熱容器3の長手方向全長で、内周面211a近傍に熱源流体が旋回可能な空間が形成されている上に、上述したように伝熱容器3の下端とシェル2の下端との間に隙間があり円筒中心側に流れ込んだ熱源流体も滞りなく流動できるので、この熱交換器1における熱源流体の圧力損失を微小に留めることができる。なお、本実施形態に示した熱交換器1を複数用意し、それらの熱交換器1を熱源流体または受熱流体の流れに沿って並列配置や直列配置することで熱交換における多様なニーズに対応することもできる。
【0047】
続いて、これまで説明してきた熱交換器1の変形例について説明する。以下の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ構成要素の名称には、これまで用いた符号と同じ符号を付すことがあり、重複する説明は省略する。
【0048】
図7(a)は、変形例の熱交換器の平面図であり、図7(b)は、同図(a)に示した熱交換器の内部構成を示す図3(b)と同様の断面図である。
【0049】
図7(a)および図7(b)に示す熱交換器1は、先の実施形態に示した熱交換器1とは伝熱容器3の構成が異なる。図7(a)および図7(b)に示すように、この変形例の伝熱容器3は、円筒部211の内周面211a側から円筒部211の円筒中心側に向かって1条の渦巻形状に成形されている。この変形例でも、先の実施形態と同様の効果を奏する。ただし、本発明者の検討結果では、伝熱容器3を複数条の渦巻形状にした方が伝熱効率がより高いことが判明しているため、伝熱容器3は複数条の渦巻形状にすることが好ましい。
【0050】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことが出来る。たとえば、本実施形態の熱交換器1は、蓋体22に伝熱容器3が取り付けられていたが、伝熱容器3は、シェル本体21に取り付けられていてもよい。また、本実施形態では、円筒部211の円筒中心と、伝熱容器3の渦巻形状の中心とが一致していたが、これらの中心がずれていてもよい。さらに、伝熱容器3の外表面どうしの距離Lは、内周面211a側から円筒部211の円筒中心近傍まで略一定である例を示したが、円筒中心に近づくに従って外表面どうしの距離Lが短くなるように構成してもよい。このように構成した場合、熱源流体の流速がより低下しにくくなるので、伝熱効率をより高めることができる。また、円筒部211の形状は、円筒でなく、下部に向かうに従い内径をわずかに減ずる逆円錐形状であっても構わない。この場合、伝熱容器3も逆円錐形状を成して構成することが好ましい。熱源流体は、シェル本体21の下部にいくほど低温化して流速が低下するが、このように逆円錐形状にすることで、これを補償して熱源流体の流速低下を防止できる。またさらに、上面板32は、容器本体31に取り外し不能に固定されていてもよく、容器本体31と上面板32が一体に形成されていてもよい。加えて、伝熱容器3の上面板32を省略し、蓋体22で伝熱容器3の上面開口を塞ぐようにしてもよい。この場合、容器本体31の上面開口のうち、蓋本体221に形成された蓋中央開口に対面する部分が受熱流体流入口になり、蓋端部開口対面する部分が受熱流体流出口になる。またこの場合、上側バッフル板41は、蓋本体221に固定されていてもよい。
【0051】
なお、以上説明した各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 熱交換器
2 シェル
3 伝熱容器
211 円筒部
211a 内周面
214a 熱源流体導入口
F1 第1流路
F2 第2流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7