(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019380
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】壁面の補修方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20230202BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230202BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20230202BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20230202BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20230202BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C09K3/10 Z
B05D7/00 L
B05D7/00 K
B05D5/06 G
B05D1/36 Z
E04G23/02 A
C09D201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124052
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000159032
【氏名又は名称】菊水化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河合 真佑
(72)【発明者】
【氏名】林 昭人
【テーマコード(参考)】
2E176
4D075
4H017
4J038
【Fターム(参考)】
2E176AA02
2E176AA05
2E176BB01
2E176BB03
4D075AA01
4D075AC57
4D075AE03
4D075AE05
4D075BB03X
4D075BB03Z
4D075BB65X
4D075BB79X
4D075CA13
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4D075CA48
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4D075EB16
4D075EB22
4D075EB38
4D075EB43
4D075EC11
4D075EC13
4D075EC30
4D075EC47
4H017AA31
4H017AB01
4H017AB15
4H017AD06
4H017AE03
4J038CD091
4J038CG001
4J038DG001
4J038DL031
4J038KA02
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4J038NA01
4J038NA11
4J038PA06
4J038PB05
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC04
4J038PC06
(57)【要約】
【課題】クリヤー塗料を塗布することで壁面に形成された塗膜の微細な欠損部が目立つため見落とすことなく補修することができ、欠損部を補修する補修塗料が剥がれにくく、補修部分が目立ちにくい補修方法を提供する。
【解決手段】改修の対象となる壁面に対して、クリヤー塗料を塗布し、壁面にある塗膜欠損のある部分を確認した後に、その塗膜欠損部に塗膜欠損部周辺と同色に調色された補修塗料により補修することで、微細な欠損が多い塗膜欠損の部分にクリヤー塗料が吸い込まれ、塗膜欠損の部分が強化されると同時に、濡れ色となり視認し易く、補修塗料を塗布する部分の判定が容易で、塗り残しの少ないものとなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改修の対象となる壁面に対して、
クリヤー塗料を塗布し、壁面にある塗膜欠損のある部分を確認した後に、
その塗膜欠損部に塗膜欠損部周辺と同色に調色された補修塗料により補修する壁面の補修方法。
【請求項2】
請求項1に記載の補修方法であって、
基材欠損部に対して補填処理を行った後に、改修の対象となる壁面全体にクリヤー塗料を塗布し、
クリヤー塗料塗布後の基材欠損部周辺と同色に調色された補修塗料により補修する壁面の補修方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の補修方法であって、
補修塗料を塗布した後に、
改修の対象となる壁面の全体にクリヤー塗料を塗布することを特徴とする壁面の補修方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載の壁面の補修方法であって、
補修塗料を塗布した部分とその周辺部との色差がΔEで4以下である壁面の補修方法。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれかに記載の壁面の補修方法であって、
補修塗料を塗布した部分とその周辺部とが
JIS K 5600-7-7に規定するキセノンランプ法の方法1及びサイクルAの試験条件で1200時間照射後,2500時間照射後の色差がΔEで、それぞれ5以下である壁面の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物や土木構造物等の壁面には基材の美観や耐久性を向上させるために塗膜が形成されているが、経年劣化による欠損や外部からの力による部分的な欠損で、その美観や耐久性が低下している場合がある。
このため、欠損が発生した場合には一般的に補修塗料を塗布して補修する方法が行われている。また、欠損が基材にまで達している場合には、欠損をパテやシーリング等で埋めてから補修塗料を塗布して改修する方法が行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、塗装体の損傷部に、水性プライマーサーフェイサーを塗装して下地処理塗膜(I)を形成する工程(1)、前記下地処理塗膜上に、水性着色ベース塗料組成物を塗装して着色ベース塗膜(II)を形成する工程(2)、該工程(2)で得られた着色ベース塗膜上に水性2液型クリヤ塗料組成物を塗装し、乾燥させクリヤ塗膜(III) を形成する工程(3)、を含む塗装体の補修塗装方法であって、前記塗膜(I)及び塗膜(III)の吸水率が10%未満であることを特徴とする塗装体の補修塗装方法が記載され、これにより、乾燥性に優れかつ、耐水性及び仕上り性が優れたものになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている方法では、乾燥性に優れかつ、耐水性及び仕上り性が優れたものではあるが、微細な欠損を見落とすことがあり、また、経時で補修部分とその他の部分で劣化に差が生じてしまうため補修部分が目立ってしまうことがある。
本開示の目的は、クリヤー塗料を塗布することで壁面に形成された塗膜の微細な欠損部が目立つため見落とすことなく補修することができ、欠損部を補修する補修塗料が剥がれにくく、補修部分が目立ちにくい補修方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
改修の対象となる壁面に対して、クリヤー塗料を塗布し、壁面にある塗膜欠損のある部分を確認した後に、その塗膜欠損部に塗膜欠損部周辺と同色に調色された補修塗料により補修することである。
これにより、微細な欠損が多い塗膜欠損の部分にクリヤー塗料が吸い込まれ、塗膜欠損の部分が強化されると同時に、濡れ色となり視認し易く、補修塗料を塗布する部分の判定が容易で、塗り残しの少ないものとなる。
【0007】
また、クリヤー塗料により形成されるクリヤー膜が、塗膜欠損の部分の吸い込みを調整することができるので、補修塗料を塗布した際に形成された塗膜が斑にならず、剥がれにくいものとなる。
さらに、改修対象となる壁面の意匠性を損なうことなく、維持することができるものでもある。
【0008】
基材欠損部に対して補填処理を行った後に、改修の対象となる壁面全体にクリヤー塗料を塗布し、クリヤー塗料塗布後の基材欠損部周辺と同色に調色された補修塗料により補修することである。
これにより、基材の形状が変化している基材欠損部の形状が修復され、その部分がクリヤー塗料により強化することができ、吸い込みを調整することができるため色の変化も少なく、補修部分が目立ちにくく、塗膜欠損部及びその周辺部や基材欠損部の周辺部と違和感のないものとすることができ、補修塗料により形成された塗膜が剥がれにくいものとなる。
【0009】
補修塗料を塗布した後に、改修の対象となる壁面の全体にクリヤー塗料を塗布することである。これにより、改修の対象となる壁面全体の艶を同じにすることができ、より補修部分が目立ちにくくすることができる。又、美観や耐久性を長く保つことができる。
補修塗料を塗布した部分とその周辺部との色差がΔEで4以下であることである。これにより、補修塗料を塗布した補修部分がその周辺部との色差が少なく目立ちにくいものとなる。
【0010】
補修塗料を塗布した部分とその周辺部とがJIS K 5600-7-7に規定するキセノンランプ法の方法1及びサイクルAの試験条件で1200時間照射後,2500時間照射後の色差がΔEでそれぞれ5以下である。
これにより、時間が経っても補修部分とその周辺部の色の差がわかりにくく、補修部分が目立ちにくいものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の実施形態を説明する。本開示は、改修の対象となる壁面に対して、クリヤー塗料を塗布し、壁面にある塗膜欠損のある部分を確認した後に、その塗膜欠損部に塗膜欠損部周辺と同色に調色された補修塗料により補修することである。
まず、改修の対象となる壁面とは、建築構造物や土木構造物などの構築物の壁面で、その表面に塗料などにより着色や壁面保護のために塗膜などが形成されていて、その塗膜が部分的に経年劣化などの欠損部が生じている壁面になる。又、場合によっては、その壁面を構成している基材へ割れや欠けなど基材欠損が生じている壁面も含まれる。
【0012】
この壁面を構成する基材には、コンクリート,モルタル,金属,木材,ガラス,壁板材等がある。
この壁板材には、窯業系サイディングボード,フレキシブルボード,ケイ酸カルシウム板,押し出し成型板,木片セメント板,プレキャストコンクリート板,軽量気泡コンクリート板及び石膏ボード等の壁板材や、アルミニウム,鉄及びステンレス等の金属材料で形成されたものなどがある。
【0013】
このような基材の表面に塗料などにより形成された塗膜が積層され壁面を構成している。この塗膜としては、有機質塗膜,無機質塗膜,有機無機複合塗膜等があり、その塗膜には、単色のものや複数色のものがあり、これらを保護するために、更にクリヤー塗膜を積層している場合もある。
また、この塗膜は、その塗装方法や塗料の種類により、その厚みが異なることが多く、
ローラー,刷毛,吹付等で塗装された塗料により形成された塗膜は、比較的厚いものになり、インクジェット,フレキソ等の印刷で塗装された場合の塗膜は、比較的薄いものになる。
【0014】
このような塗膜の中には、石材などを模した多彩模様,タイルや石張りを模したような多色により仕上げられたものなどがあり、このような複数色の塗膜に覆われた壁面が近年多くなってきている。
本開示の壁面の補修方法では、このような複数色で構成された壁面の改修に好適に用いられるものである。本開示の補修方法はクリヤー仕上げであるため、複数色で構成された壁面の意匠を活かすことができる。
【0015】
また、複数色で構成される壁面では、その色により、塗膜の劣化が異なる場合が多く、劣化した部分である後述する塗膜欠損部を効率的に補修することができる。
これら塗膜に生じた欠損が塗膜欠損部となる。この塗膜欠損部は、壁面を構成する基材表面にある塗膜が経年劣化や基材の動きなどや外部からの力により、割れ,剥がれ,変退色などが発生した部分のことで、基材まで達しないような壁面の表層に形成されている塗膜厚以下の深さのわれや塗膜のはがれ等の小さな欠損である。
【0016】
一方、基材欠損部は、基材にまで達している割れ,剥がれのことであり、基材の動きなどや外部からの力により発生するものである。
このような塗膜欠損や基材欠損がある壁面は、壁面保護や美観や耐久性を向上させるために補修する必要がある。そのため、これら塗膜欠損や基材欠損が発生している改修の対象となる壁面に対して、クリヤー塗料を塗布し、塗膜欠損部を確認し、その塗膜欠損部にその周辺と同色に調色された補修塗料により補修する。
【0017】
このクリヤー塗料は、壁面全体に塗布し、微細な欠損が多い塗膜欠損部に吸い込ませ、塗膜欠損の部分が強化されるものである。又、塗膜欠損部を濡れ色とすることができるため、その欠損部を目立つようにすることができる。
ここでいう濡れ色となるとは、水,有機溶剤,クリヤー塗料等の液体を塗布した際に塗布していない箇所と比べて濃い色になるということで、特に塗膜欠損部などは吸い込みやすいため濡れ色になりやすく、クリヤー塗料の場合は塗膜が形成されることによりその濡れ色が持続される。
【0018】
そのため、塗膜欠損部を視認し易くすることができ、補修塗料を塗布する部分の判定が容易で、塗り残しの少ないものとなる。
また、クリヤー塗料により形成されるクリヤー膜が、塗膜欠損の部分の吸い込みを調整することができるので、補修塗料を塗布した際に形成された塗膜が斑にならず、剥がれにくいものとすることができる。
【0019】
このクリヤー塗料は、主な成分として合成樹脂が含まれたものである。この合成樹脂は、特に制限はなく従来公知のものを使用することができる。
この合成樹脂には、アクリル樹脂,シリコン樹脂,アクリルシリコン樹脂,フッ素樹脂,ポリウレタン樹脂,スチレン樹脂,エポキシ樹脂,メラミン樹脂,アルキッド樹脂,塩化ビニル樹脂,酢酸ビニル樹脂,ポリエステル樹脂,ポリエーテル樹脂,フェノール樹脂,ケトン樹脂などの樹脂を単独又は2種類以上を混合して用いても良い。
【0020】
このクリヤー塗料により形成される塗膜は、補修塗料を塗布しない部分では、露出されるものであるため、これらの合成樹脂の中でも、耐候性の良いアクリル樹脂,ポリウレタン樹脂,シリコン樹脂,アクリルシリコン樹脂,フッ素樹脂等を用いることが好ましく用いられる。
耐候性の他にも塗料適性,塗膜の物性や入手の容易性などの点でも好適に用いられるものである。
【0021】
このクリヤー塗料には必要に応じて通常の塗料に使用される添加剤を含有することができる。この添加剤には、消泡剤、分散剤,湿潤剤などとして用いられる界面活性剤、造膜助剤,防凍剤などとして用いられる高沸点溶剤、粘度や粘性調整のための増粘剤やレベリング剤などがある。
また、防腐剤、防藻剤、防黴剤、pH調整剤、艶消し材、架橋剤、シランカップリング剤等も添加することもあり、この中でも湿潤剤や有機溶剤を添加することにより、塗膜欠損部への濡れ性が向上し、視認性や吸い込み性が良好になるため好ましく添加するものである。
【0022】
特に、水を溶媒とする水性塗料は、有機溶剤を溶媒とする溶剤塗料に比べ表面張力が大きく濡れ性が悪いため湿潤剤を添加することが好ましく、この湿潤剤としては、シリコーン系、フッ素系、非イオン系、アニオン系などが挙げられる。
さらに、このクリヤー塗料には、形成されるクリヤー塗膜の耐候性を向上せるために、光安定化剤,紫外線吸収剤(以下、「UVA」と言う。)が好ましく添加される。
【0023】
光安定化剤は、例えば、ヒンダードアミンライトスタビライザー(以下、「HALS」と言う。)が挙げられ、クリヤー塗膜の合成樹脂の劣化に影響を与える遊離ラジカルを捕捉するもので、UVAは、有害な紫外線を吸収し、無害な熱又は運動エネルギーに変換するものである。
より好ましくは、このHALSとUVAとを併用することである。これは、HALSがクリヤー塗膜の劣化を起こす有害な光を吸収するものではないため、UVAを併用することにより、クリヤー塗膜の耐候性がより増すからである。
【0024】
さらに、クリヤー塗膜の熱酸化劣化を防止するために酸化防止剤を添加することがある。これにより、より一層の耐候性を得ることができる。これらHALS,UVA,酸化防止剤は、合成樹脂と容易に混ざり合うものが良い。
HALSは、平均分子量が200~1000の範囲のものが好ましく、200より小さいものは、クリヤー塗膜から流出し易く、耐候性の向上が少なくなることがある。平均分子量が1000より大きいものは、クリヤー塗料の貯蔵安定性を損なうことがある。
【0025】
HALSの添加量は、その種類にもよるが、合成樹脂中に、0.1重量%~5.0重量%の割合の範囲が好ましく、0.1重量%より少ない場合では、クリヤー塗膜の耐候性の向上を期待することができない場合がある。
5.0重量%より多い場合には、耐候性の効果が格段に向上することが期待できないことがある。より好ましくは、0.1~3.0重量%の割合の範囲で、この範囲である場合には、十分な塗膜の耐候性を期待できるものである。
【0026】
UVAには、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、オキザニリド系のUVAが挙げられる。
これらのUVAの中でも、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系のUVAが、熱及び光に安定であるため好ましく用いられる。さらに、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系のUVAは、HALSとの相乗効果が大きいためより好ましく用いられる。
【0027】
UVAの添加量は、その種類にもよるが、合成樹脂エマルションの固形分中に、0.2~10.0重量%の割合の範囲が好ましく、0.2重量%より少ない場合では、クリヤー塗膜の耐候性の向上を期待することができない場合がある。
10.0重量%より多い場合には、耐候性の効果が格段に向上することが期待できないことがある。より好ましくは、0.2~5.0重量%の割合の範囲である。この範囲である場合には、十分な塗膜の耐候性を期待できるものである。
【0028】
酸化防止剤には、リン系,フェノール系,イオウ系の酸化防止剤を挙げることができる。これらの中でもリン系,フェノール系の酸化防止剤が好ましく用いられる。また、リン系酸化防止剤は、HALSとの相乗効果が大きいためより好ましく用いられ、UVAと併用することも可能である。
このように構成されるクリヤー塗料の表面張力は、20℃で50mN/m以下が好ましく、この場合であれば、被塗物への濡れ性が良く、塗膜欠損部に塗布した際にクリヤー塗料が浸透し濡れ色となるため、塗膜欠損部が視認し易くなり、補修が必要な塗膜欠損部の見落としが少なくなる。
【0029】
より好ましくは20℃で30mN/m以下で、この場合、より濡れ性が良く微細な塗膜欠損部にもクリヤー塗料が浸透し濡れ色となるため、微細な欠損部が視認しやすくなり補修箇所の見落としがより少なくなる。尚、表面張力の値は、ウェルヘルミー表面張力計により測定された値である。
この表面張力は、クリヤー塗料に湿潤剤や有機溶剤を添加することで下げることができ、溶媒として有機溶剤を使用している溶剤塗料は、溶媒として水を使用している水性塗料よりも比較的に表面張力が小さいため好ましいものである。
【0030】
補修塗料は、クリヤー塗膜が形成されている塗膜欠損部に塗布し、その形成された塗膜により塗膜欠損部の補修を行い、基材を保護するためのものである。
また、塗膜欠損部をその周辺との外見の差を小さくして塗膜欠損があった箇所を目立たなくするためのものでもある。
【0031】
この補修塗料は、合成樹脂を主な成分とし、各種顔料などにより構成されたものである。この合成樹脂は、特に制限はなく従来公知のものを使用することができるが、上記クリヤー塗料と同様に耐候性の良いアクリル樹脂,ポリウレタン樹脂,シリコン樹脂,アクリルシリコン樹脂,フッ素樹脂等を用いることが好ましい。
より好ましくは、上記クリヤー塗料に含有する合成樹脂と同じような耐候性の性能を持つ合成樹脂を用いることで、このことにより、クリヤー塗料と補修塗料とにより形成される塗膜の劣化が同じように進みやすくなるため時間が経っても補修箇所が分かりにくくなる。
【0032】
この補修塗料に含まれる顔料には、着色顔料と体質顔料がある。
着色顔料としては、一般的に塗料に用いられるものを含有すればよく、酸化チタン,酸化亜鉛,黄鉛,亜鉛華,黄色酸化鉄,ベンガラ,カーボンブラック,カドミウムレッド,モリブデンレッド,クロムエロー,酸化クロム,プルシアンブルー,コバルトブルー等の無機系着色顔料、アゾ顔料,ジケトピロロピロール顔料,ベンズイミダゾロン顔料,フタロシアニン顔料,キナクリドン顔料,イソインドリン顔料,イソインドリノン顔料,ペリレン顔料,ペリノン顔料,ジオキサン顔料等の有機系着色顔料等を挙げることができる。
【0033】
体質顔料としては、炭酸カルシウム,水酸化アルミニウム,アルミナ,シリカ,セラミック,タルク,クレー,寒水砂,珪砂,珪藻土等の無機質充填材、プラスチック粉粒体等の有機質充填材を挙げることができる。
この補修塗料には、必要に応じて通常の塗料に使用される添加剤を含有することができる。
【0034】
この添加剤には、消泡剤、分散剤,湿潤剤などとして用いられる界面活性剤、造膜助剤,防凍剤などとして用いられる高沸点溶剤、粘度や粘性調整のための増粘剤やレベリング剤、防腐剤、防藻剤、防黴剤、pH調整剤、艶消し材、架橋剤、シランカップリング剤、光安定化剤、紫外線吸収剤等がある。
この補修塗料は、その形成される塗膜の色が塗膜欠損部にクリヤー塗料塗布後の塗膜欠損部周辺と同色に調色される必要がある。これにより、補修部分が目立ちにくくなるものである。
【0035】
補修塗料により形成される塗膜と塗膜欠損部周辺とが目視で同色と判断することができれば良いが、色差がΔEで4以内が好ましい。
このΔEは、L*a*b*表色系の色差であり、ΔL*=L*(基準)-L*(対象),Δa*=a*(基準)-a*(対象),Δb*=b*(基準)-Δb*(対象)としたときに、ΔE=(ΔL*2+Δa*2+Δb*2)0.5で表される。
【0036】
ΔEが4以内であれば補修された塗膜欠損部が分かりにくい。より好ましくはΔEが2以内である。この範囲であるとき、近くで目視しても補修した部分が分かりにくい。
この補修塗料により形成された塗膜は、JIS K 5660 7.9に規定する試験に準じて測定した隠ぺい率が80%以上であることが好ましく、これにより、塗膜欠損部を覆い隠すことができる。
【0037】
隠ぺい率が80%以下の場合、補修塗料がクリヤー塗料塗布後の塗膜欠損部周辺と同色に調色されても補修塗料を塗布した箇所が透けて塗膜欠損部とその周辺に色差ができ補修部分が目立つ場合がある。
より好ましくは隠ぺい率が90%以上である。隠ぺい率が90%以上の場合、補修塗料を塗布した箇所が透けることなく補修部分が目立ちにくくなる。
【0038】
この補修塗料により形成された塗膜は、クリヤー塗料により形成された塗膜と同等な耐候性の性能であることが好ましい。補修塗料とクリヤー塗料の耐候性の性能が同等であることにより、時間が経っても一様に劣化し、補修部分とその他の部分の差がより分かりにくくなる。
また、補修塗料とクリヤー塗料が、JIS K 5600-7-7に規定するキセノンランプ法の方法1及びサイクルAの試験条件で2500時間照射した後において、光沢保持率が80%以上であることが好ましい。このことにより、長い時間が経っても劣化しにくいため補修部分とその他の部分の差がより分かりにくくなる。
【0039】
さらに、改修の対象となる壁面には、基材に達する欠損(基材欠損)がある場合がある。この基材欠損部が小さい場合は、上述したような塗膜欠損部と同様な補修方法で良いが、基材欠損で基材の形状が変形しているような場合は、補填処理を行うことが好ましい。
その後、改修の対象となる壁面全体にクリヤー塗料を塗布し、クリヤー塗料塗布後の基材欠損部周辺と同色に調色された補修塗料により補修することで、補修部分が目立ちにくく、塗膜欠損部及びその周辺部や基材欠損部の周辺部と違和感のないものとすることができる。
【0040】
この補填処理で使用する補填材には、パテ材やシーリング材が代表的なものであるが、セメント系下地調整塗材,樹脂系下地調整塗材なども使用することができ、基材欠損部を修復することができるものであれば特に制限はなく、基材の材質により選ぶことができる。
これらの中でもパテ材やシーリング材が好ましく用いられる。これらは、作業性や柔軟性、基材との密着の汎用性が高いものである。
【0041】
また、必要に応じ基材欠損部に補填材を補填する前にプライマーを使用することもできる。これは、基材欠損部と補填材の密着性を向上させるためである。
しかし、一般的にプライマーを使用した場合では、そのプライマー塗布部を露出させることができないため、そのプライマーを露出させないように、補填材で十分に覆うようにしなければならない。又、プライマー塗布部が覆いきれない場合では、補修用塗料により覆うことも可能である。
【0042】
このように基材欠損部に対して補填処理を行った後に、改修の対象となる壁面全体にクリヤー塗料を塗布し、クリヤー塗料塗布後の基材欠損部周辺と同色に調色された補修塗料により補修する。
これにより、基材の形状が変化している基材欠損部の形状が修復され、その部分をクリヤー塗料により強化し、吸い込みを調整することができるため補修塗料を塗布した際に形成された塗膜が斑にならず、塗膜欠損部及びその周辺部や基材欠損部の周辺部と違和感のないものとすることができ、補修塗料により形成された塗膜が剥がれにくいものとなる。
【0043】
本開示の壁面の補修方法は、塗膜欠損部や基材欠損部が発生している壁面に対して、上記記載のクリヤー塗料,補修塗料,必要に応じ補填材を用いて行うもので、具体的に説明する。
塗膜欠損部や基材欠損部が発生している壁面が改修の対象となる壁面となり、必要に応じ、その壁面の洗浄を行う。
【0044】
この洗浄方法は、特に制限させるものではなく、壁面の汚れを落とし、クリヤー塗料や充填材の密着を阻害しない程度であれば良い。多くの場合では、水洗により行われ、ブラシなどで擦って壁面の汚れや脆弱部を除去し再度水により洗い流す方法や、高圧洗浄機により高圧の水により洗い流す方法がある。
好ましくは、高圧洗浄機により洗浄を行うことで、この高圧洗浄機による高圧の水により洗浄することで、壁面に着いた汚れや脆弱部を簡単に除去することができる。
【0045】
この脆弱部は、目視で確認できる塗膜欠損部や基材欠損部の周囲に多くあり、これらを除去することで、よりこれら欠損部が大きくなり、的確に確認することができる。
この高圧洗浄機の水圧は、3~20MPaの高水圧が好ましく、3MPaより低い場合では、汚れや脆弱部の除去が不十分な場合があり、20MPaより高い場合では、脆弱部周辺の健全な壁面も除去することもあり、壁面の形状も大きく変わることがある。
【0046】
より好ましくは、5~10MPaの高水圧であり、この範囲内であれば、壁面の劣化した表層のみ除去することができ、壁面の形状をある程度残すことができ、その風合いを損なうことが少ないものである。
この水洗により、壁面が水で濡れるため塗膜欠損部が濡れ色となって確認することができ、乾燥により消えてしまうが補修箇所の目安を付けることができる。
【0047】
壁面の汚れや脆弱部を除去した後に、補修作業を行う。この壁面に基材欠損部の有無を確認し、基材欠損部がある場合には、補填処理を行う。
この補填処理には、パテ材などの補填材を用いる。また、この補填材を用いる場合には、基材欠損部との密着性を向上させるため必要に応じプライマーを使用することもできる。
【0048】
この補填処理では、基材欠損部に補填材を充填し、コテやヘラなどを用いて形状を整える。この形状は、基材欠損部の周辺と調和するような形状に成型する。又、補填材が硬化した後にサンドペーパーなどで形状を整えることも行われる。
次に、壁面全体にクリヤー塗料を塗布する。このクリヤー塗料を塗布することで、微細な塗膜欠損部に吸い込ませ、塗膜欠損の部分が強化されるものである。更に、基材欠損部の補填処理した部分についても強化することができる。
【0049】
また、塗膜欠損部を濡れ色とすることができるため、その欠損部が濃い色となり、目立つようにすることができ、その部分が視認し易くすることができ、補修塗料を塗布する部分の判定が容易にすることができる。
さらに、クリヤー塗料により形成されるクリヤー塗膜がプライマー層と同様な効果を持つため、補修塗料により形成された塗膜が剥がれにくいものとすることができる。
【0050】
特に、基材に形成されている塗膜が無機質塗膜や有機無機複合塗膜,フッ素樹脂塗膜など表面に塗膜が付着しにくい場合に効果的であり、補修塗料が剥がれにくくなる。
また、既存塗膜が健全で、補修塗料を塗布しない部分についても、クリヤー塗料を塗布することで、耐久性が向上することになる。
【0051】
このクリヤー塗料の塗布方法は、特に制限のあるものではなく、壁面全体に均一に塗布することができれば良く、その塗布面積を考慮して選択することができ、吹付塗装,ローラー塗装,刷毛塗装など一般的な方法で塗布することができる。
吹付塗装の場合、大きな面積を比較的均一に塗装することができるが、飛散が多く大掛かりな養生が必要なことがある。刷毛塗装の場合では、一度に塗れる面積が小さいため、大きな面積を塗装するのに時間が掛かり、斑にもなり易い。
【0052】
ローラー塗装は、比較的簡単な養生で効率よく大きな面積を塗装できるため好ましく、また、被塗装面にローラーで塗装すると力が加わるためクリヤー塗料が欠損部に浸透しやすくなる。
使用するローラーは、塗料を塗装する際に使用する一般的な塗装用ローラーを使用することができる。この塗装用ローラーは、塗料保持層が繊維で形成されたものが好ましく、塗料保持層が繊維で形成された塗装用ローラーであれば、塗料を保持し易く、大きな面積を塗布することができる。
【0053】
このクリヤー塗料を塗布し、乾燥した後に、塗膜欠損部や補填処理された基材欠損部に補修塗料を塗布する。この補修塗料は、クリヤー塗膜が形成されている塗膜欠損部や補填処理された基材欠損部に塗布し、その形成された塗膜により欠損部の補修を行い、基材を保護するためのものである。
また、それら欠損部をその周辺との外見の差を小さくして塗膜欠損があった箇所を目立たなくするためのものでもある。
【0054】
この補修塗料の塗布方法は吹付塗装,ローラー塗装,刷毛塗装など一般的な方法で塗布することができるが、塗膜欠損部や補填処理された基材欠損部は、小さい部分が多いため、刷毛塗装による塗布が行われることが多く、いわゆるタッチアップと呼ばれる塗布方法になる。
また、刷毛塗装は吹付塗装やローラー塗装などと比較し、狭い面積を養生することなく塗布することができるため好適に用いられる。
【0055】
この補修用塗料は、調色により色を調整し、形成される塗膜と塗膜欠損部や基材欠損部の周辺との色差がΔEで4以内に調整することが好ましい。
この調色方法は、特に制限されるものではないが、その補修を行う壁面に応じ行われることになる。
【0056】
このように補修塗料を塗布した後に、改修の対象となる壁面の全体にクリヤー塗料を塗布することが好ましい。このことにより、改修の対象となる壁面全体の艶を同じにすることができ、より補修部分を目立ちにくくし、美観や耐久性を長く保つことができる。
このクリヤー塗料は、この補修方法の最初に塗布したクリヤー塗料と同じものであっても異なるものでも良いが、最初に塗布したクリヤー塗料を用いることで形成されるクリヤー塗膜同士の馴染みが良く密着性が高くなるためより好ましい。
【0057】
本開示の壁面の補修方法は、上記記載のように行われる。この補修が行われた壁面では、 補修塗料を塗布した部分とその周辺部とがJIS K 5600-7-7に規定するキセノンランプ法の方法1及びサイクルAの試験条件で1200時間照射後,2500時間照射後の色差がΔEでそれぞれ5以下であることが好ましい。
このことにより、塗膜の劣化速度が同程度で、一様に劣化し、時間が経っても補修部分とその周辺部分の色の差がわかりにくく、補修部分が目立ちにくいものとなる。
【0058】
また、クリヤー塗料のみ塗布した部分と補修塗料を塗布した部分であっても、経時での色の差が小さいことが好ましい。
具体的には、前記同様でJIS K 5600-7-7に規定するキセノンランプ法の方法1及びサイクルAの試験条件で2500時間照射した後において、クリヤー塗料のみ塗布した部分と補修塗料を塗布した部分の色差がΔEで5以下であることが好ましい。
【0059】
さらに、ひび割れ、はがれ、変色がないことが好ましく、壁面の美観や耐久性を長く保つことができる。
また、補修塗料が塗布されていない部分と、補修塗料が塗布されている部分との経時での艶の差が小さいことが好ましい。
【0060】
具体的には、JIS K 5600-7-7に規定するキセノンランプ法の方法1及びサイクルAの試験条件で2500時間照射した後において、60°光沢度の差が20以下であることが好ましい。
このように一様に劣化することで時間が経っても補修部分とその他の部分の差がよりわかりにくくなる。
【0061】
上記のように構成された壁面の補修方法について、より具体的な例により、詳細に説明する。
住宅の壁面に設置後10年経過した複数色塗装された窯業系サイディングボードを10MPa程度の高圧水洗で洗浄し汚れや壁面の劣化した表層を除去した。壁面の劣化した表層のみ除去することができ、壁面の形状をある程度残すことができ、その風合いを損なうことが少ないものであった。
【0062】
乾燥後、基材まで達している欠損部には市販されているエマルションパテをヘラで補填し、このパテ材が硬化した後、サンドペーパーをかけて基材表面の形状を整えた。その際、基材とパテ材の密着性を向上させるためにプライマーを塗布した。この基材欠損部を補填処理により修復したことで、補修部分の形状は違和感のないものとすることができた。
補填処理を行った後、クリヤー塗料を壁面全面にウールローラーで塗布した。ただし、一部の箇所は比較としてクリヤー塗料を塗らない箇所を設けた。クリヤー塗料は、アクリルシリコン樹脂エマルション、シリコーン系の湿潤剤、HALS、UVA、その他添加剤が含有されているクリヤー塗料Aを使用した。
【0063】
このクリヤー塗料Aはウェルヘルミー表面張力計により測定された表面張力の値が20℃で29mN/mであった。
また、クリヤー塗料Aから湿潤剤を抜いたクリヤー塗料Bを比較として一部分に塗布した。このクリヤー塗料Bは、表面張力の値が20℃で33mN/mであった。
【0064】
クリヤー塗料Aを塗布したことにより、壁面が濡れ色になり、塗膜欠損部がより濃い色となったため確認しやすくなった。特に、ローラーで塗装したことによりクリヤー塗料を塗布する際に圧力がかかったためより浸透したと考えられる。
クリヤー塗料Bは、クリヤー塗料Aと比較したら若干濡れ色が薄い色だった。
【0065】
この塗膜欠損部と補填処理を行った基材欠損部に補修塗料を刷毛で塗布した。上記クリヤー塗料を塗布したことで微細な欠損部も見落とすことなく補修することができた。補修塗料は、アクリルシリコン樹脂エマルション,着色顔料,HALS,UVA,その他添加剤が含有されている水性塗料を使用した。
この補修塗料は、その形成される塗膜の色が塗膜欠損部にクリヤー塗料塗布後の塗膜欠損部周辺との色差ΔEが1に調色されたものを使用した。ただし、クリヤー塗料を塗布していない箇所は、塗膜欠損部周辺との色差ΔEが1に調色されたものを使用した。この補修塗料を塗布したことにより補修部分が目立ちにくくなった。
【0066】
このように補修塗料を塗布した後に、壁面全体にクリヤー塗料を塗布した。ただし、このクリヤー塗料は、この補修方法の最初に塗布したクリヤー塗料がクリヤー塗料Aの箇所にはクリヤー塗料Aを、最初に塗布したクリヤー塗料がクリヤー塗料Bの箇所にはクリヤー塗料Bを塗布し、最初にクリヤー塗料を塗布していない箇所にはクリヤー塗料Aを塗布した。
このクリヤー塗料を塗布したことにより、元の意匠を活かしつつ壁面全体の艶が均一になり、より補修部分が目立ちにくくなったが、最初にクリヤー塗料を塗っていない箇所については、微細な塗膜欠損が濡れ色となって視認され目立つ結果となった。
【0067】
次に、住宅の壁面に10年設置されていた表面にフッ素樹脂塗膜が形成されている窯業系サイディングボードの1枚を150mm×70mmのサイズに切断し、表面をスポンジを用いて水洗して基板とした。この基板に下記仕様で試験体1~4を作製した。
試験体1は、基材全面に水性アクリルシリコン樹脂系クリヤー塗料をウールローラーで塗布し、塗布後の基材の色と同色に調色した水性アクリルシリコン樹脂系塗料を補修塗料として基材の半分に刷毛で塗布した。
【0068】
試験体2は、試験体1にはじめに塗布したものと同じ水性アクリルシリコン樹脂系クリヤー塗料をウールローラーで全面に塗布した。
試験体3は、基材の色と同色に調色した水性アクリルシリコン樹脂系塗料を補修塗料として基材の半分に刷毛で塗布し、その後に水性アクリルシリコン樹脂系クリヤー塗料をウールローラーで全面に塗布した。
【0069】
試験体4は、基材全面に水性アクリル樹脂系クリヤー塗料をウールローラーで塗布し、塗布後の基材の色と同色に調色した水性アクリルシリコン樹脂系塗料を補修塗料として基材の半分に刷毛で塗布した。
試験体5は、試験体4に水性アクリルシリコン樹脂系クリヤー塗料をウールローラーで全面に塗布した。
【0070】
尚、試験体作製で使用した塗料は、JIS K 5600-7-7に規定するキセノンランプ法の方法1及びサイクルAの試験条件で、水性アクリルシリコン樹脂系クリヤー塗料と水性アクリルシリコン樹脂系塗料は2500時間照射し光沢保持率が80%以上、水性アクリル樹脂系クリヤー塗料は1200時間照射して光沢保持率が80%以下の性能の塗料を使用した。
各試験体について、補修塗料を塗布した箇所と塗布していない箇所の色差と、60°光沢度の差を測定した。色差は分光測色計CM-600d(コニカミノルタ株式会社製)、光沢は光沢計VG-2000(日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
【0071】
各試験体の測定結果は、
試験体1は、色差は0.4、60°光沢度の差は12だった。
試験体2は、色差は0.6、60°光沢度の差は2だった。
試験体3は、色差は0.5、60°光沢度の差は4だった。
試験体4は、色差は0.4、60°光沢度の差は11だった。
試験体5は、色差は0.5、60°光沢度の差は2だった。
【0072】
次に、各試験体をスーパーキセノンウェザーメーターSX75(スガ試験機株式会社製)を用いて、JIS K 5600-7-7に規定するキセノンランプ法の方法1及びサイクルAの試験条件で1200時間、2500時間照射し、補修塗料を塗布した箇所と塗布していない箇所の色差と、60°光沢度の差を測定した。
【0073】
1200時間照射後の各試験体の色差、60°光沢度の差は、
試験体1は、色差は1.2、60°光沢度の差は18だった。
試験体2は、色差は0.8、60°光沢度の差は2だった。
試験体3は、色差は0.9、60°光沢度の差は5だった。
試験体4は、色差は2.5、60°光沢度の差は22だった。
試験体5は、色差は1.4、60°光沢度の差は7だった。
【0074】
2500時間照射後の各試験体の色差、60°光沢度の差は、
試験体1は、色差は1.8、60°光沢度の差は20だった。
試験体2は、色差は1.0、60°光沢度の差は4だった。
試験体3は、色差は1.2、60°光沢度の差は6だった。
試験体4は、色差は4.8、60°光沢度の差は32だった。
試験体5は、色差は4.2、60°光沢度の差は9だった。
【0075】
2500時間照射後の各試験体を目視でひび割れの確認したところ、試験体4のクリヤー塗装箇所にはひび割れがあり、試験体5の補修塗料を塗布していないクリヤー塗装のみの箇所は、最初に塗布した水性アクリル樹脂系クリヤーの塗膜に微細なひび割れがあった。その他の試験体にはひび割れはなかった。
2500時間照射後の各試験体をJIS K 5600-5-6に規定する付着性試験に準拠して付着性を確認したところ、試験体3は補修塗料に剥がれがあり、試験体5は補修塗料を塗布していないクリヤー塗装のみの箇所に剥がれがあった。その他の試験体には剥がれは無かった。
【0076】
上記実施形態によれば、さらに以下の効果を得ることができる。
改修の対象となる壁面が複数色で構成された壁面の改修に好適に用いられるものであり、本開示の補修方法はクリヤー仕上げであるため、複数色で構成された壁面の元の意匠を活かすことができ、また、複数色で構成される壁面では、その色により塗膜の劣化が異なる場合が多く、劣化した部分である塗膜欠損部を効率的に補修することができる。
【0077】
本開示の補修方法で使用するクリヤー塗料の表面張力は、20℃で50mN/m以下が好ましく、この場合であれば、被塗物への濡れ性が良く、塗膜欠損部に塗布した際にクリヤー塗料が浸透し濡れ色となるため、塗膜欠損部が視認し易くなり、補修が必要な塗膜欠損部の見落としが少なくなる。
より好ましくは20℃で30mN/m以下で、この場合、より濡れ性が良く微細な塗膜欠損部にもクリヤー塗料が浸透し濡れ色となるため、微細な欠損部が視認しやすくなり補修箇所の見落としがより少なくなる。
【0078】
補修塗料を塗布した後に改修の対象となる壁面の全体に塗布するクリヤー塗料は、最初に塗布したクリヤー塗料を用いることが好ましい。このことにより、形成されるクリヤー塗膜同士の馴染みが良く密着性が高くなる。