(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019394
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】セメント用添加剤、セメント用混和剤、セメント配合品、及び、セメント質組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 24/24 20060101AFI20230202BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20230202BHJP
C04B 24/40 20060101ALI20230202BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20230202BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20230202BHJP
C04B 103/65 20060101ALN20230202BHJP
【FI】
C04B24/24
C04B24/26 F
C04B24/26 G
C04B24/40
C04B28/02
C08F265/06
C04B103:65
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124079
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芦田 知亮
(72)【発明者】
【氏名】石原 守雄
(72)【発明者】
【氏名】石丸 富士雄
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 彩加
【テーマコード(参考)】
4G112
4J026
【Fターム(参考)】
4G112MC00
4G112MD08
4G112PB26
4G112PB27
4G112PB31
4G112PB41
4G112PC03
4G112PC07
4J026AA45
4J026AA46
4J026AC09
4J026BA25
4J026BA27
4J026BB03
4J026DA04
4J026DA07
4J026DA16
4J026DB04
4J026DB08
4J026DB16
4J026EA03
4J026EA04
4J026FA03
4J026FA07
4J026GA08
(57)【要約】
【課題】ポリマー微粒子の粉末でありながら、防水性が良好なセメント質組成物を構成し得るセメント用添加剤の提供。
【解決手段】前記セメント用添加剤は、ポリマー微粒子の粉粒体を含む。前記ポリマー微粒子は、コア層と、該コア層の外側に位置するシェル層を含むポリマー粒子である。前記ポリマー微粒子は、断面の真円度が0.85以上である。好ましくは、前記コア層は、構成単量体として、共役ジエン、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、及び、オルガノシロキサンから選択される少なくとも1種の単量体を含む架橋重合体から形成される。好ましくは、前記シェル層は、構成単量体として、芳香族ビニル化合物と、カルボキシル基含有単量体及び/又は水酸基含有単量体とを含む共重合体から形成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント用添加剤であって、
前記セメント用添加剤は、ポリマー微粒子の粉粒体を含み、
前記ポリマー微粒子は、コア層と、該コア層の外側に位置するシェル層を含むポリマー粒子であり、
前記ポリマー微粒子は、断面の真円度が0.85以上である、セメント用添加剤。
【請求項2】
前記コア層は、架橋重合体から形成され、
前記架橋重合体が、構成単量体として、共役ジエン、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、及び、オルガノシロキサンから選択される少なくとも1種の単量体を含む、請求項1に記載のセメント用添加剤。
【請求項3】
前記架橋重合体が、構成単量体として、(メタ)アクリル酸エステルを含む、請求項2に記載のセメント用添加剤。
【請求項4】
前記シェル層が、構成単量体として、芳香族ビニル化合物と、カルボキシル基含有単量体及び/又は水酸基含有単量体とを含む共重合体から形成される、請求項1~3のいずれか1項に記載のセメント用添加剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の添加剤、並びに、
流動性改良剤及び/又は減水剤、を含有する、
セメント用混和剤。
【請求項6】
セメント、及び、請求項1~4のいずれか1項に記載の添加剤又は請求項5に記載の混和剤を含有する、セメント配合品。
【請求項7】
セメント、水、及び、請求項1~4のいずれか1項に記載の添加剤又は請求項5に記載の混和剤を含有する、セメント質組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント用添加剤、セメント用混和剤、セメント配合品、及び、セメント質組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントペーストは、セメントと水から構成される材料である。セメントモルタルは、セメント、水、細骨材(砂など)から構成される材料であり、コンクリートは上記に加えて、更に粗骨材(砂利など)を含有する材料である。本願では、セメントペースト、セメントモルタル又はコンクリートを総称して、セメント質組成物という。
【0003】
一般に、セメント質組成物には、フロー性を改良したり空気量を調整する目的で、混和剤が少量添加されている。そのような混和剤としては、従来、AE剤(カルボン酸塩系、ABS石鹸系など)、減水剤又はAE減水剤(リグニンスルホン酸塩系、ナフタリン系、メラミン系、ポリオ―ル系など)、高性能AE減水剤(ナフタリン系、ポリカルボン酸系、メラミン系、アミノスルホン酸系など)が知られている。
【0004】
また、セメント質組成物の曲げ強度向上などを目的として、セメント質組成物にポリマー(ポリマーセメント用混和剤)を配合することも行われている。そのようなポリマーとしては、EVA、SBR、アクリルラテックスなどが知られている。
【0005】
特許文献1では、コアシェル型構造を有するポリマー微粒子からなるポリマーラテックスを、セメントモルタル及び/又はコンクリート用添加剤として使用することが記載されている。
【0006】
特許文献2では、特定のモノマー組成を有するコア重合体とシェル重合体を含むコア-シェル構造を有する樹脂を噴霧乾燥することにより、セメント混和剤を製造することが記載されている。
【0007】
特許文献3では、アクリル系重合体からなるコア重合体と、アクリル系重合体からなるシェル重合体とを含むコア-シェル構造の微粒子からなるアクリル系重合体粉体を、スプレードライ法にて乾燥して得ること、及び、セメント質材料の改質材として使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平3-205333号公報
【特許文献2】特開2000-178055号公報
【特許文献3】国際公開第97/3112号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1で記載されているポリマー微粒子のラテックスは、セメントに対する分散性が良好で、セメントと混合した時の流動性に優れるものの、ラテックスには多量の水が含まれるため輸送にコストがかかるという難点がある。
一方、特許文献2又は3で記載されているポリマー微粒子の噴霧乾燥品は、水を実質的に含まないため輸送時のコストを抑制でき、更に、セメントとプレミックスしてセメント配合品を調製できるので利便性が高い。
しかし、特許文献2又は3で記載されているような噴霧乾燥品は、セメントに対する分散性が低く、これをセメント及び水と混合して硬化させてなるセメント質組成物には防水性能が低下するという問題があることが判明した。
【0010】
本発明は、上記現状に鑑み、ポリマー微粒子の粉末でありながら、防水性が良好なセメント質組成物を構成し得るセメント用添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、セメント用添加剤として従来知られているポリマー微粒子の粉末を顕微鏡で観察すると、その断面形状が真円ではなく、扁平した形状を呈していることを発見した。これに対し、ポリマー微粒子の粉末の断面形状を真円に近くなるように調節すると、当該粉末を配合したセメント質組成物の防水性が向上することを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、セメント用添加剤であって、前記セメント用添加剤は、ポリマー微粒子の粉粒体を含み、前記ポリマー微粒子は、コア層と、該コア層の外側に位置するシェル層を含むポリマー粒子であり、前記ポリマー微粒子は、断面の真円度が0.85以上である、セメント用添加剤に関する。
好ましくは、前記コア層は、架橋重合体から形成され、前記架橋重合体が、構成単量体として、共役ジエン、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、及び、オルガノシロキサンから選択される少なくとも1種の単量体を含む。より好ましくは、前記架橋重合体が、構成単量体として、(メタ)アクリル酸エステルを含む。
好ましくは、前記シェル層が、構成単量体として、芳香族ビニル化合物と、カルボキシル基含有単量体及び/又は水酸基含有単量体とを含む共重合体から形成される。
また本発明は、前記添加剤、並びに、流動性改良剤及び/又は減水剤、を含有する、セメント用混和剤にも関する。
さらに本発明は、セメント、及び、前記添加剤又は前記混和剤を含有する、セメント配合品にも関する。
さらにまた、本発明は、セメント、水、及び、前記添加剤又は前記混和剤を含有する、セメント質組成物にも関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリマー微粒子の粉末でありながら、防水性が良好なセメント質組成物を構成し得るセメント用添加剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施例1で得たポリマー微粒子の粉粒体を撮影した顕微鏡写真
【
図2】比較例1で得たポリマー微粒子の粉粒体を撮影した顕微鏡写真
【
図3】比較例2で得たポリマー微粒子の粉粒体を撮影した顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態に係るセメント用添加剤は、ポリマー微粒子の粉粒体を含むものである。前記ポリマー微粒子は、コア層と、該コア層の外側に位置するシェル層を含む、所謂コアシェル構造を有するポリマー粒子であることが好ましい。
【0016】
コア層は、シェル層よりも重合体粒子の内側に位置する重合体層のことを指し、好ましくは架橋重合体から構成される。コア層は、一層のみであってもよいし、互いにモノマー組成が異なる二層以上から構成されてもよい。
【0017】
シェル層は、重合体粒子の表面側に位置する重合体層のことを指し、グラフト層ともいう。シェル層は、コア層にグラフト結合していることが好ましい。
シェル層は、コア層の表面を被覆するものであるが、コア層の表面の全面を被覆するものに限られず、コア層の表面の少なくとも一部を被覆していればよい。
【0018】
前記ポリマー微粒子は、発明の効果を奏する限り、コア層とシェル層の間に、中間層をさらに有するものであってもよい。中間層は、重合体から構成される層であり、コア層にグラフト結合していることが好ましい。このような中間層を有する場合、中間層が、コア層の表面の少なくとも一部を被覆し、シェル層は、中間層の表面の少なくとも一部を被覆することになる。
【0019】
(コア層)
前記ポリマー微粒子のコア層は、架橋重合体から形成されることが好ましい。コア層が架橋重合体から形成されることで、本実施形態に係るポリマー微粒子の粉粒体が添加されたセメント質組成物は、基材への付着強度が大きく、かつ、良好な流動性を確保することができる。また、好適な実施形態によれば、セメント質組成物の硬化後の曲げ強度を向上させることもできる。該架橋重合体は、構成単量体として、共役ジエン、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、及び、オルガノシロキサンから選択される少なくとも1種の単量体を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸エステルを含むことがより好ましい。
【0020】
前記架橋重合体としては、例えば、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン-スチレン)、アクリル系ゴム、ポリシロキサンゴム系弾性体、芳香族ビニル架橋体等が挙げられる。中でも、耐候性や扱いやすさの観点から、アクリル系ゴムが好ましい。
【0021】
ポリブタジエン、又はポリ(ブタジエン-スチレン)は、ブタジエンとスチレン以外のビニル系単量体を含まないものであって良いし、そのようなビニル系単量体を含むものであってもよい。そのようなビニル系単量体としては、例えば、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル系単量体(スチレンを除く);アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジルなどの(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル系単量体等が挙げられる。
【0022】
また、ポリブタジエン、又はポリ(ブタジエン-スチレン)は、その重合時に、ジビニルベンゼン、メタクリル酸アリル、ジメタクリル酸エチレングリコール、1,3-ブチレンジメタクリレート等の多官能性単量体を使用したものであってもよい。
【0023】
さらに、ポリブタジエン、又はポリ(ブタジエン-スチレン)は、連鎖移動剤を使用せずに重合されたものであってもよいし、連鎖移動剤の存在下で重合されたものであってもよい。使用可能な連鎖移動剤としては特に限定されないが、例えば、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、t-デシルメルカプタン、n-デシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン類、2-エチルヘキシルチオグリコレートなどのアルキルエステルメルカプタン類、等が挙げられる。
【0024】
前記アクリル系ゴムを構成するアクリル系単量体としては特に限定されないが、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニルなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ベンジルなどの芳香環含有アクリレート;グリシジルアクリレート、グリシジルアルキルアクリレートなどのグリシジルアクリレート;アルコキシアルキルアクリレート等が挙げられる。なかでも、アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸ブチルが特に好ましい。
【0025】
また、アクリル系単量体以外の単量体を併用してもよいし、併用しなくともよい。他の単量体としては、メタクリル系単量体や、スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル;エチレン、プロピレン等のアルケン類等が挙げられる。アクリル系ゴム全体に対してアクリル系単量体の重合割合は50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましく、90重量%以上が特に好ましい。
【0026】
前記架橋重合体では、アクリル系単量体以外の単量体として、カルボキシル基含有単量体及び/又は水酸基含有単量体を用いてもよい。前記カルボキシル基含有単量体及び水酸基含有単量体の具体例としては、後述する化合物を挙げることができる。これらのうち、カルボキシル基含有単量体が好ましい。なかでも、アクリル酸及び/又はメタクリル酸がより好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
【0027】
前記アクリル系ゴムは架橋構造を有するものである。架橋構造を導入するには、例えば、単量体成分を重合してコア層の重合体を合成する際に、多官能性単量体等の架橋性単量体を使用すればよい。
【0028】
前記多官能性単量体としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、アリルアルキル(メタ)アクリレート等のアリルアルキル(メタ)アクリレート類;アリルオキシアルキル(メタ)アクリレート類;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート類;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。好ましくはアリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンであり、特に好ましくはアリルメタクリレートである。
【0029】
アクリル系ゴムにおける多官能性単量体の総使用比率としては、アクリル系ゴムを構成する単量体成分(多官能性単量体以外の単量体)の合計100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部であり、より好ましくは0.05~5重量部であり、さらに好ましくは0.1~3重量部である。
【0030】
前記ポリシロキサンゴム系弾性体としては、例えば、ジメチルシリルオキシ、メチルフェニルシリルオキシ、ジフェニルシリルオキシ等の、アルキルまたはアリール2置換シリルオキシ単位から構成されるポリシロキサンゴムを使用できる。また、前記ポリシロキサンゴム系弾性体は、必要に応じて、重合時に多官能性のアルコキシシラン化合物を一部併用するか、ビニル反応性基を持ったシラン化合物をラジカル反応させること等により、架橋構造を導入したものがより好ましい。
【0031】
前記芳香族ビニル架橋体としては、例えば、芳香族ビニル化合物と架橋性単量体の共重合体を挙げることができる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、2-ビニルナフタレン等の無置換ビニル芳香族化合物類;α-メチルスチレン等の置換ビニル芳香族化合物類;3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン等の環アルキル化ビニル芳香族化合物類;4-メトキシスチレン、4-エトキシスチレン等の環アルコキシル化ビニル芳香族化合物類;2-クロロスチレン、3-クロロスチレン等の環ハロゲン化ビニル芳香族化合物類;4-アセトキシスチレン等の環エステル置換ビニル芳香族化合物類;4-ヒドロキシスチレン等の環ヒドロキシル化ビニル芳香族化合物類が挙げられる。
【0032】
前記ポリマー微粒子中の前記コア層の含有量は、流動性と付着強度を両立する観点から、20重量%以上85重量%以下であることが好ましい。より好ましくは30重量%以上であり、さらに好ましくは40重量%以上である。また、好ましくは80重量%以下であり、より好ましくは75重量%以下である。
【0033】
(シェル層)
前記シェル層は、重合体から形成されるものであればよいが、該重合体は、構成単量体として、メタクリル酸エステル系単量体を含有することが好ましい。シェル層を形成する重合体にメタクリル酸エステル系単量体を用いることで、コア層がシェル層によって被覆されやすくなり、また、メタクリル酸エステル系単量体はガラス転移温度が高いため、前記ポリマー微粒子の造粒性または再分散性が向上し得る。
【0034】
前記メタクリル酸エステル系単量体としては特に限定されないが、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニルなどのメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸ベンジルなどの芳香環含有メタクリレート;グリシジルメタクリレート、グリシジルアルキルメタクリレートなどのグリシジルメタクリレート;アルコキシアルキルメタクリレート等が挙げられる。なかでも、メタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。
【0035】
前記シェル層を形成する重合体中の前記メタクリル酸エステル系単量体の含有量は、前記ポリマー微粒子の造粒性または再分散性の観点から、55重量%以上99重量%以下であることが好ましく、60重量%以上99重量%以下がより好ましい。好ましくは65重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上であり、さらに好ましくは75重量%以上であり、特に好ましくは80重量%以上である。また、好ましくは98重量%以下であり、より好ましくは97重量%以下であり、さらに好ましくは95重量%以下であり、特に好ましくは90重量%以下である。
【0036】
また、前記シェル層を形成する重合体は、構成単量体として、カルボキシル基含有単量体及び/又は水酸基含有単量体を含有することが好ましい。シェル層を形成する重合体にカルボキシル基含有単量体及び/又は水酸基含有単量体を用いることで、シェル層の親水性が向上し、親水性のセメント質組成物中でのポリマー微粒子の分散性が向上し得る。なお、カルボキシル基含有単量体のみを使用してもよいし、水酸基含有単量体のみを使用してもよい。また、カルボキシル基含有単量体と水酸基含有単量体を併用してもよい。
【0037】
前記カルボキシル基含有単量体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が挙げられる。カルボキシル基含有単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記水酸基含有単量体としては特に限定されず、例えば、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。水酸基含有単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このうち、カルボキシル基含有単量体を使用することが好ましい。なかでも、アクリル酸及び/又はメタクリル酸がより好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
【0038】
前記シェル層を形成する重合体中の前記カルボキシル基含有単量体及び/又は水酸基含有単量体の含有量は、流動性と付着強度を両立し、圧縮強度を向上させる観点から、1重量%以上45重量%以下であることが好ましく、1重量%以上40重量%以下がより好ましい。好ましくは2重量%以上であり、より好ましくは3重量%以上であり、さらに好ましくは5重量%以上であり、特に好ましくは10重量%以上である。また、好ましくは35重量%以下であり、より好ましくは30重量%以下であり、さらに好ましくは25重量%以下であり、特に好ましくは20重量%以下である。
【0039】
前記シェル層を形成する前記重合体は、構成単量体として、メタクリル酸エステル系単量体、カルボキシル基含有単量体、および水酸基含有単量体以外の単量体を含有してもよい。そのような単量体としては、例えば、芳香族ビニル化合物、アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリロニトリル、置換(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸イミド等が挙げられる。
【0040】
前記芳香族ビニル化合物としては特に限定されず、コア層に関して上述した化合物が挙げられる。
【0041】
前記アクリル酸エステル系単量体としては特に限定されないが、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニルなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ベンジルなどの芳香環含有アクリレート;グリシジルアクリレート、グリシジルアルキルアクリレートなどのグリシジルアクリレート;アルコキシアルキルアクリレート等が挙げられる。
【0042】
前記シェル層を形成する重合体中の、カルボキシル基含有単量体、水酸基含有単量体、メタクリル酸エステル系単量体以外の単量体の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0重量%以上30重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以下であり、特に好ましくは5重量%以下であり、最も好ましくは1重量%以下である。
【0043】
前記ポリマー微粒子中の前記シェル層の含有量は、流動性と付着強度を両立する観点から、15重量%以上80重量%以下であることが好ましい。より好ましくは20重量%以上であり、さらに好ましくは25重量%以上である。また、好ましくは70重量%以下であり、より好ましくは60重量%以下である。
【0044】
(ポリマー微粒子の体積平均粒子径)
前記ポリマー微粒子は、重合の安定性とラテックスの安定性を両立する観点から、体積平均粒子径が70nm以上2500nm以下であることが好ましい。より好ましくは80nm以上であり、さらに好ましくは90nm以上であり、より更に好ましくは100nm以上である。更には、110nm以上であってもよく、120nm以上であってもよく、130nm以上であってもよく、140nm以上であってもよい。特に好ましくは150nm以上であり、160nm以上であってもよく、170nm以上であってもよく、180nm以上であってもよく、190nm以上であってもよい。最も好ましくは200nm以上である。また、より好ましくは2000nm以下であり、さらに好ましくは1500nm以下であり、より更に好ましくは1000nm以下であり、特に好ましくは500nm以下であり、最も好ましくは300nm以下である。なお、ポリマー微粒子の体積平均粒子径は、ポリマー微粒子のラテックスの状態で、粒子径の測定装置を使用することによって測定される値である。ポリマー微粒子の粒子径は、重合開始剤、連鎖移動剤、酸化還元剤、乳化剤等の種類や量、重合温度、重合時間等によって制御することができる。
【0045】
(ポリマー微粒子の真円度)
前記ポリマー微粒子は、その断面の真円度が0.85以上1.0以下を示す。このようにポリマー微粒子の断面の形状が真円に近いことによって、当該ポリマー微粒子の粉粒体をセメントに添加した時の分散性が向上し、セメント質組成物の流動性や防水性が向上し得る。前記真円度は、好ましくは0.86以上であり、より好ましくは0.87以上であり、さらに好ましくは0.88以上である。
【0046】
前記真円度は次のようにして算出される。測定対象の粉粒体を凍結した後、100nm厚の薄片サンプルを切り出し、当該サンプルを酸化オスミウム(OsO4)で染色した後、透過型電子顕微鏡によって撮影する。得られた画像において、各ポリマー微粒子の周囲長と面積を計測し、下記式に従い真円度を算出する。ランダムに選択した複数個のポリマー微粒子について真円度を算出し、その平均値を求めることが望ましい。
(真円度)=4π×(面積)/(周囲長)2
【0047】
(ポリマー微粒子の粉粒体)
前記ポリマー微粒子の粉粒体とは、通常、ポリマー微粒子が凝集して形成されるものを指す。より具体的には、粉粒体は、粉体と流体の双方を含む概念であり、粉や粒などが集まった集合体を意味する。特に限定されないが、通常、「粉体」とは体積平均粒子径が0.01mm~0.1mmのものを指し、「粒体」とは体積平均粒子径が0.1mm~10mmのものを指す。また10μm未満の範囲の「体積平均粒子径」は、動的光散乱式(DLS)粒度分布測定装置Nanotrac WaveII-EX150(マイクロトラックベル株式会社製)を用いて測定でき、10μm以上の範囲の「体積平均粒子径」は、レーザー回折式粒度分布測定装置マイクロトラックMT3000II(マイクロトラックベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0048】
前記ポリマー微粒子の粉粒体の体積平均粒子径は、10~1000μmであることが好ましく、50~800μmがより好ましく、100~500μmがさらに好ましい。
【0049】
前記ポリマー微粒子の粉粒体を製造する方法は特に限定されないが、例えば、ポリマー微粒子含有ラテックスの調製工程、スペーサー添加工程、凝固剤添加工程、脱水工程、及び、乾燥工程をこの順で実施することで製造することができる。以下、各工程について詳細に説明する。
【0050】
(ポリマー微粒子含有ラテックスの調製工程)
ポリマー微粒子含有ラテックスの製造法としては、特に限定されないが、例えば、乳化重合、ミニエマルション重合、マイクロエマルション重合、無乳化剤(ソープフリー)乳化重合を用いることができる。
【0051】
乳化重合において用いることができる乳化剤としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを使用可能である。また、ポリビニルアルコール、アルキル置換セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸誘導体などの分散剤を併用してもよい。
上記乳化剤のうちアニオン性界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、次の化合物が挙げられる:ラウリン酸カリウム、ヤシ脂肪酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸カリウムジエタノールアミン塩、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、混合脂肪酸ソーダ石けん、半硬化牛脂脂肪酸ソーダ石けん、ヒマシ油カリ石けんなどの脂肪酸石鹸;ドデシル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸トリエタノールアミン、ドデシル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、2-エチルヘキシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム;ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸ナトリウム;アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム;アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム;アルキルリン酸カリウム塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのリン酸エステル塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩;ポリカルボン酸型高分子アニオン;アシル(牛脂)メチルタウリン酸ナトリウム;アシル(ヤシ)メチルタウリン酸ナトリウム;ココイルイセチオン酸ナトリウム;α-スルホ脂肪酸エステルナトリウム塩;アミドエーテルスルホン酸ナトリウム;オレイルザルコシン;ラウロイルザルコシンナトリウム;ロジン酸石けんなど。
【0052】
また、上記乳化剤のうち非イオン性界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、次の化合物が挙げられる:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルあるいはポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル類、ポリエチレングルコールモノラウレート、ポリエチレングルコールモノステアレート、ポリエチレングルコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマーなど。
【0053】
また、上記乳化剤のうちカチオン性界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、次の化合物が挙げられる:ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテート、テトラデシルアミンアセテートなどのアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩など。
【0054】
また、上記乳化剤のうち両性界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、次の化合物が挙げられる:ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ジメチルラウリルベタインなどのアルキルベタイン;ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム;アミドベタイン;イミダゾリン;ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなど。
【0055】
これらの乳化剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。乳化剤のなかでは、セメント質組成物の流動性が良好になる観点から、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、又は、オキシエチレン構造を有する界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムが特に好ましい。乳化剤の使用量を調節することによって、ポリマー微粒子の平均粒子径を制御することができる。
【0056】
乳化重合法を採用する場合には、公知の重合開始剤、すなわち2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどを熱分解型開始剤として用いることができる。
【0057】
また、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ヘキシルパーオキサイドなどの有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物といった過酸化物と、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、グルコースなどの還元剤;硫酸鉄(II)などの遷移金属塩;エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムなどのキレート剤;及びピロリン酸ナトリウムなどのリン含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを併用したレドックス型開始剤を使用することもできる。
【0058】
レドックス型開始剤を用いた場合には、前記過酸化物が実質的に熱分解しない低い温度でも重合を行うことができ、重合温度を広い範囲で設定できるようになり好ましい。中でもクメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物をレドックス型開始剤として用いることが好ましい。前記開始剤の使用量、レドックス型開始剤を用いる場合には前記還元剤、遷移金属塩、キレート剤、リン含有化合物などの使用量は公知の範囲で用いることができる。またラジカル重合性二重結合を2以上有するモノマーを重合するに際しては公知の連鎖移動剤を公知の範囲で用いることができる。追加的に界面活性剤を用いることができるが、これも公知の範囲である。
【0059】
乳化重合時に使用される溶媒としては、乳化重合を安定に進行させるものであればよく、例えば、水等を好適に使用することができる。
【0060】
乳化重合時の温度は、乳化剤が溶媒に均一に溶解すれば、特に限定されないが、例えば、40~75℃であり、好ましくは45~70℃、より好ましくは49~65℃である。
【0061】
(スペーサー添加工程)
スペーサー添加工程では、前記ポリマー微粒子含有ラテックスに、水溶性高分子であるスペーサーを添加する。凝固剤添加工程前に、水溶性高分子をポリマー微粒子含有ラテックスに添加することによって、該スペーサーがポリマー微粒子の表面を被覆して、ポリマー微粒子を凝集体とした時の微粒子間の強固な融着が抑制され得る。結果、ポリマー微粒子の断面形状を真円に近づけることができ、当該粉粒体をセメントに添加した時の分散性が向上し、セメント質組成物の流動性や防水性が向上するものと推測される。水溶性高分子としては、1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
水溶性高分子としては、従来公知のセメント分散剤を使用することができ、その他にも、例えば、ポリビニルアルコール;メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム等の水溶性アルギン酸誘導体、寒天;ゼラチン、カラギーナン、ポリアクリル酸誘導体等を使用することができる。
【0063】
前記セメント分散剤としては、具体的には、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸塩系;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸塩系;リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系;ポリスチレンスルホン酸塩系等の分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤;特公昭59-18338号公報、特開平7-223852号公報に記載されるようなポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、及び、これらの単量体と共重合可能な単量体から得られる共重合体;特開平10-236858号公報、特開2001-220417号公報、特開2002-121055号公報、特開2002-121056号公報に記載のような不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体、マレイン酸系単量体または(メタ)アクリル酸系単量体から得られる共重合体等の分子中に(ポリ)オキシアルキレン基とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤;特開2006-52381号公報に記載のような(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、リン酸モノエステル系単量体、およびリン酸ジエステル系単量体から得られる共重合体等の分子中に(ポリ)オキシアルキレン基とリン酸基とを有する各種リン酸系分散剤、特表2008-517080号公報に記載のリン酸系分散剤などが挙げられる。
【0064】
水溶性高分子としては、発明の効果に優れることから、ポリカルボン酸系分散剤、及び/又は、ポリビニルアルコールを使用することが好ましく、ポリカルボン酸系分散剤が特に好ましい。
【0065】
前記水溶性高分子の添加量としては、例えば、ポリマー微粒子100重量部に対して、合計で0.01~20重量部程度であることが好ましい。より好ましくは0.05~10重量部であり、さらに好ましくは0.1~8重量部であり、特に好ましくは0.5~5重量部である。
【0066】
(凝固剤添加工程)
凝固剤添加工程では、スペーサー添加工程で得られた、ポリマー微粒子と水溶性高分子を含むラテックスに対し、凝固剤を添加して、ポリマー微粒子の凝集体を形成する。
【0067】
凝固剤としては、ラテックス中のポリマー微粒子を凝集させることができるものであれば特に限定されないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化カルシウム、硫酸第一鉄、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、塩化バリウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、硫酸第二鉄、硫酸アルミニウム、カリウムミョウバン、鉄ミョウバン等の無機塩類、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸類、酢酸、ギ酸等の有機酸類、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カルシウム等の有機酸塩類等が挙げられる。このうち、無機塩が好ましく、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウムがより好ましい。凝固剤は1種類のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0068】
凝固剤は単体で添加してもよいし、水溶液として添加してもよい。また、凝固剤は、ポリマー微粒子含有ラテックスに対し、一度に添加してもよいし、分割して添加してもよいし、連続的に添加してもよい。
【0069】
凝固剤の添加量は、当業者が適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、ポリマー微粒子100重量部に対して、0.1~30重量部程度であってよい。好ましくは0.5~20重量部であり、より好ましくは1~10重量部である。
【0070】
前記ラテックスに対して凝固剤を添加することでポリマー微粒子の凝集体が形成される。凝固剤を添加する時のラテックスの温度としては特に限定されないが、例えば、室温~90℃程度であってよく、70℃以下が好ましい。
【0071】
前記ラテックスに対して凝固剤を添加した後、そのまま放置してもよいが、加熱処理を行うことによって凝集を促進させることもできる。その際の加熱条件は、特に限定されないが、例えば、50~100℃であってよく、好ましくは70~100℃であり、より好ましくは80~100℃である。
【0072】
(脱水工程)
脱水工程では、前記凝固剤添加工程で得られた、ポリマー微粒子の凝集体を含むスラリーにおいて、前記凝集体を水相から分離し、回収する。本実施形態に係る製造方法はこの脱水工程を含んでいるため、噴霧乾燥を利用した製造方法とは区別される。
脱水の方法は特に限定されず、例えば、ろ紙や金属製スクリーンを用いてポリマー微粒子の凝集体をろ過する方法や、反応槽の底部から水相を排出して凝集体を槽内に残す方法等が挙げられる。
【0073】
(乾燥工程)
乾燥工程では、前記脱水工程で得られた凝集体を乾燥させて、ポリマー微粒子の粉粒体を得る。乾燥の方法は特に限定されず、公知の方法を適宜使用することができるが、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥等が挙げられる。乾燥時の加熱温度としては例えば30~150℃程度であってよく、好ましくは、40~120℃である。
【0074】
得られるポリマー微粒子の粉粒体は、粉粒体の総重量に対する含水量が0.01~5.0重量%となるように乾燥させることが好ましく、0.05~3.0重量%がより好ましく、0.1~1.5重量%がさらに好ましい。
また、得られるポリマー微粒子の粉粒体は、一次粒子が凝集することで得られた二次粒子であってもよいし、凝集塊の形態を有するものであってもよい。
【0075】
(セメント用添加剤)
乾燥後のポリマー微粒子の粉粒体は、セメント用添加剤として使用することができる。具体的には、セメント及び水などと混合し、セメント質組成物中で分散させることで使用される。
【0076】
また、乾燥後のポリマー微粒子の粉粒体は、セメントとプレミックスしてセメント配合品を調製することもできる。ここでいうセメント配合品とは、水を添加する前のものを指し、当該セメント配合品に水を混合することでセメント質組成物を形成することができる。
【0077】
本実施形態に係るポリマー微粒子の粉粒体は、水を実質的に含まないため輸送時のコストを抑制でき、更に、セメントとプレミックスすることで上述したセメント配合品を調製できるという利便性を有し、且つ、これを含むセメント質組成物は、防水性が良好なものとなり得る。
【0078】
セメント質組成物又はセメントへの前記ポリマー微粒子の粉粒体の配合量は、前記粉粒体が、例えば、セメントに対して0.1重量%以上20重量%以下程度であってよく、好ましくは0.5重量%以上10重量%以下、より好ましくは1重量%以上5重量%以下である。
【0079】
本実施形態に係るセメント用添加剤と、流動性改良剤及び/又は減水剤を混合することで、セメント用混和剤を提供することもできる。当該セメント用混和剤も、硬化前のセメント質組成物に添加し、混合して分散させることで使用される。
【0080】
前記流動性改良剤や、AE減水剤、高性能AE減水剤等の減水剤としては公知のものを使用することができる。例えば、AE減水剤として、リグニンスルホン酸塩、ヒドロキシ酸塩など、高性能AE減水剤としてナフタレン系、メラミン系、アミノスルホン酸系、ポリカルボン酸系高性能減水剤などを併用してもよい。
【0081】
本実施形態に係る添加剤又は混和剤をセメント及び水等と混合することでセメント質組成物を形成することができる。本願において、セメント質組成物とは、少なくともセメントと水を含む組成物であって、上述した通り、セメントペースト、セメントモルタル又はコンクリートのいずれも包含する概念である。本実施形態に係るセメント質組成物は、硬化前のものであってもよいし、硬化後のものであってもよい。
【0082】
セメントとしては特に限定されず、例えば、ポルトランドセメント、混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)などが挙げられる。
【0083】
また、セメント質組成物に配合できる骨材としても特に限定されず、砂、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等が挙げられる。また、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材も挙げられる。
【0084】
本実施形態に係る添加剤又は混和剤を含むセメント質組成物の施工方法は特に限定されず、従来のセメント質組成物と同様に施工することができる。
【0085】
本実施形態に係る添加剤又は混和剤を含むセメントモルタルは、基材、特にコンクリート基材への付着性が良好であり、基材コンクリートに塗布することで基材コンクリート上にセメントモルタル層を形成することができる。本実施形態に係る添加剤又は混和剤を含むセメントモルタルを基材コンクリートに塗布する場合には、基材コンクリートの表面にポリマー層(セメントを含まないポリマー層)を形成してから該塗布を行ってもよい。また、前記セメントモルタル層の上面には、タイル等の保護層を積層することもできる。
本実施形態に係る添加剤又は混和剤を含むコンクリート又はセメントペーストも、基材、特にコンクリート基材への付着性が良好であり、上記のセメントモルタルの場合と同様に使用することができる。
【0086】
本実施形態に係る添加剤又は混和剤を含むセメント質組成物は、建築構造物の内壁及び外壁基材、タイル張り用接着剤、タイル張り用目地材、床材、ACL鉄筋防食等の防食ライニング材、貯水タンク、プール、サイロ、テニスコート用下地等の防水材、船舶デッキ、歩道橋床、橋梁デッキ等のデッキカバーリング材、耐酸性ヒューム管、GRC製品用特殊コンクリート成型品、バスターミナル、トンネル内、高速道路、工場等の半剛性道路、グラスファイバー、カーボンファイバー、ポリエステルファイバー、ポリビニルアルコールファイバー等の無機、有機の繊維等を併用したモルタル及びコンクリート躯体の吹付け保護塗装材、カーボンファイバー、メタルパウダー(フレーク)を併用した導電塗装材、電磁波シールド材、超高強度成型品、船舶バラストタンク等の重防食塗材、モルタル浮き補修材、斜張橋ワイヤー材、化粧瓶、インターロッキング等の化学成型品を製造する際に使用することができる。
【実施例0087】
以下、実施例および比較例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0088】
[評価方法]
まず、実施例および比較例によって製造した粉粒体の評価方法について、以下説明する。
【0089】
<TEM画像>
粉粒体を凍結後、ウルトラミクロトームを用いて切り取った100nm厚の薄片サンプルを酸化オスミウム(OsO4)で染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM)(日立ハイテクノロジーズ製、H-7650)を用い、加速電圧100kVで構造を観察した。
【0090】
<TEM観察画像の画像処理>
TEM観察画像の画像処理は、ナノシステム株式会社から入手できる、汎用画像処理ソフト(製品名:NANO HUNTER NS2K-PRO/LT)を使用して実施した。まず初めに、前記画像処理プログラムにTEM画像を取込み、各ポリマー微粒子(白色)の周囲を囲むことで、周囲長と面積を計測した。下記式に従い、得られた周囲長と面積から真円度を算出した。ランダムに選択したポリマー微粒子100個について真円度を算出し、その平均値を表1に示した。
(真円度)=4π×(面積)/(周囲長)2
【0091】
<流動性:セメントペースト(簡易混練)>
C:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
W:希釈水+ラテックス中の水分(粉粒体の場合は、ラテックス中の水分を含まない)
P:ポリマー=ラテックスの固形分または粉粒体
C=50g、P=0.5g(P/C=1%)、W=25g(W/C=50%)
粉粒体の場合、粉粒体とセメント50gを予め木べらを用いて手で1分間攪拌し、希釈水を入れ、木べらを用いて手で1分間攪拌してセメントペーストを得た。
ラテックスの場合、ラテックスと希釈水を混ぜた溶液をセメント50gに入れ、木べらを用いて手で1分間攪拌してセメントペーストを得た。
得られたセメントペーストを直径5cm、高さ4cmの筒に詰め、表面を平らにならし、筒をゆっくり抜き取り、広がったセメントペーストの幅を測定した。下記式によりフロー値を算出した。
フロー値[%]=100×(広がったセメントペースト(実施例又は比較例)の幅)[cm]/(ラテックスを配合したセメントペースト(参考例1)の広がった幅)[cm]
フロー値が80%以上を示したものを〇と評価した。
【0092】
<防水性:セメントペースト(簡易混練)>
上記と同様にして得られたセメントペーストを直径8.5cm、高さ2cmのプラスチックシャーレに詰め、上蓋をしめて室温下で養生した。1週間養生後シャーレから硬化物を取り出し、シャーレ下面との接触面を上にして、硬化物に0.2mLの水滴を滴下した。滴下から30分後、及び、60分後に水滴を観察し、硬化物への染み込みの有無を確認した。
染み込みが無い場合を〇、少量の染み込みが有る場合を△、全量染み込んだ場合を×、と評価した。
【0093】
(製造例1)
(コア層の形成)
脱イオン水1703.9g、ぺレックスOT-P(花王社製:ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、固形分70%)8.6g、10%硫酸ナトリウム水溶液20.0g、2%炭酸ナトリウム水溶液50gを8L重合器に投入し、50℃に昇温し、窒素をフローした。
アクリル酸ブチル100g(5重量部)、アリルメタクリレート0.50g(0.025重量部)、及びt-ブチルハイドロパーオキサイド(固形分69%)0.29gの混合物を前記重合器に追加し、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0180g、及びエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.0108gを脱イオン水5.7gに溶解した溶液を追加し、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(固形分5%)32.0gを追加し、30分間攪拌した。
ぺレックスOT-P(花王社製:ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、固形分70%)1.4gを追加し、アクリル酸ブチル900g(45重量部)、アリルメタクリレート4.5g(0.225重量部)及びt-ブチルハイドロパーオキサイド(固形分69%)1.7gの混合物を前記重合器に135分かけて追加した。追加中に、ぺレックスOT-P(花王社製:ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、固形分70%)17.1gを分割して追加し、追加終了時にt-ブチルハイドロパーオキサイド(固形分69%)0.4gを追加し、30分間攪拌した。
【0094】
(シェル層の形成)
前記重合器にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(固形分5%)40g、脱イオン水800g、硫酸第一鉄(FeSO4・7H2O)0.0625g、及びエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.0375gを脱イオン水19.9gに溶解した溶液を追加した。メタクリル酸200g(10重量部)、メタクリル酸メチル800g(40重量部)及びt-ブチルハイドロパーオキサイド(固形分69%)2.9gの混合物を前記重合器に150分かけて追加した。
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、t-ブチルハイドロパーオキサイドを適宜添加し、100分後に重合終了し、転化率100%、固形分濃度40.3%の、コアシェル構造を有するポリマー微粒子の水性ラテックスを得た。
【0095】
(実施例1)
製造例1で得たポリマー微粒子の水性ラテックス250重量部(ポリマー微粒子100重量部を含む)と、水溶性高分子として、ポリカルボン酸ポリマーであるFC-900(日本触媒株式会社製)水溶液7.5重量部(FC-900 3重量部を含む)と、ポリビニルアルコール(株式会社クラレ)水溶液10重量部(PVA 1重量部を含む)とを混合し、水性ラテックスを得た。次に、凝固剤として硫酸マグネシウム水溶液1000重量部(硫酸マグネシウム5.0重量部を含む)に60℃に加温して撹拌しながら、得られた前記水性ラテックスを添加することにより、水性ラテックス中のポリマー微粒子を凝析させた。さらに、ポリマー微粒子および水溶性高分子を含む凝析物を含むスラリーを撹拌しながら95℃に加温して5分間熱処理し、熱処理後のスラリーを得た。
【0096】
次に、以下のようにして、得られたスラリーから凝集体を取り出した。すなわち、凝集体を含むスラリーを減圧ろ過脱水して凝集体を得た。得られた脱水後の凝集体を40℃で真空乾燥を行った。その後、乾燥した凝集体を、16メッシュの金網に通し、通過した粉粒体を回収した。ここで、最終的に得られた粉粒体の含水量は、粉粒体の重量を基準として、0.8重量%であった。ここで得られた粉粒体について上述のように撮影したTEM画像を
図1に示す。
【0097】
(比較例1)
凝固剤として硫酸マグネシウム水溶液1000重量部(硫酸マグネシウム5.0重量部を含む)に60℃に加温して撹拌しながら、製造例1で得たポリマー微粒子の水性ラテックス250重量部(ポリマー微粒子100重量部を含む)を添加することにより、水性ラテックス中のポリマー微粒子を凝析させた。さらに、ポリマー微粒子を含む凝析物を含むスラリーを撹拌しながら95℃に加温して5分間熱処理し、熱処理後のスラリーを得た。
【0098】
次に、以下のようにして、得られたスラリーから凝集体を取り出した。すなわち、凝集体を含むスラリーを減圧ろ過脱水して凝集体を得た。得られた脱水後の凝集体を40℃で真空乾燥を行った。その後、乾燥した凝集体を、16メッシュの金網に通し、通過した粉粒体を回収した。ここで、最終的に得られた粉粒体の含水量は、粉粒体の重量を基準として、1.0重量%であった。ここで得られた粉粒体について上述のように撮影したTEM画像を
図2に示す。
【0099】
(比較例2)
製造例1で得たポリマー微粒子の水性ラテックス250重量部(ポリマー微粒子100重量部を含む)と、水溶性高分子として、ポリカルボン酸ポリマーであるFC-900(日本触媒株式会社製)水溶液7.5重量部(FC-900 3重量部を含む)とを混合し、水性ラテックスを得た。前記水性ラテックスを、スプレー乾燥機を用いて、回転数12,000rpm、熱風温度130℃、粒子回収出口の温度を60℃として、噴霧乾燥造粒を行い、粉粒体を回収した。ここで、最終的に得られた粉粒体の含水量は、粉粒体の重量を基準として、1.1重量%であった。ここで得られた粉粒体について上述のように撮影したTEM画像を
図3に示す。
【0100】
(参考例1)
実施例及び比較例で得た粉粒体の代わりに、実施例及び比較例で使用したポリマー微粒子の水性ラテックスそのものを、上述した流動性及び防水性の評価に使用した。
各実施例、比較例、及び参考例の評価結果を表1に示す。
【0101】
【0102】
表1より、比較例1の粉粒体はポリマー微粒子の真円度が0.76で、セメントと混合した時の流動性は参考例1のラテックスと同等であるものの、セメント質組成物の防水性が著しく低下したことが分かる。
また、比較例2の粉粒体はポリマー微粒子の真円度が0.82と、比較例1よりも大きいが、セメントと混合した時の流動性は同程度でありながら、セメント質組成物の防水性が著しく低下したことが分かる。
一方、実施例1の粉粒体はポリマー微粒子の真円度が0.89と、比較例1及び比較例2よりも大きく、セメントと混合した時の流動性は同程度でありながら、セメント質組成物の防水性が向上したことが分かる。