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特開2023-19399亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019399
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/60 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
C23C22/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124086
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】土井 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】廣本 祥子
【テーマコード(参考)】
4K026
【Fターム(参考)】
4K026AA02
4K026AA07
4K026AA12
4K026AA13
4K026AA22
4K026BA08
4K026BB08
4K026CA15
4K026CA18
4K026DA03
(57)【要約】
【課題】耐食性の向上に必要な程度のCHZ被覆形成の処理時間を短縮した亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法を提供すること。
【解決手段】耐食性被覆層の形成対象となる亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板を準備する工程と、前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板を浸漬するカルシウム含有水溶液を準備する工程と、前記カルシウム含有水溶液の溶存酸素量の飽和溶存濃度を、常温常圧の大気中の場合と比較して、高める工程と、前記カルシウム含有溶液の溶存酸素量を、前記高められた飽和溶存濃度と同一、又は常温常圧の大気中の飽和溶存濃度以上の状態を維持する状態で、前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板を前記カルシウム含有水溶液に浸漬する工程と、前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板を被覆するカルシウムハイドロキシジンケート膜の状態が、前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層として十分か否かを判定する工程と、を備えるものである。
【選択図】図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐食性被覆層の形成対象となる亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板を準備する工程と、
前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板を浸漬するカルシウム含有水溶液を準備する工程と、
前記カルシウム含有水溶液の溶存酸素量の飽和溶存濃度を、常温常圧の大気中の場合と比較して、高める工程と、
前記カルシウム含有溶液の溶存酸素量を、前記高められた飽和溶存濃度と同一、又は常温常圧の大気中の飽和溶存濃度以上の状態を維持する状態で、前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板を前記カルシウム含有水溶液に浸漬する工程と、
前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板を被覆するカルシウムハイドロキシジンケート膜の状態が、前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層として十分か否かを判定する工程と、
を備える亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法
【請求項2】
前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板は、純亜鉛、亜鉛めっき鋼、Zn-Alめっき鋼、Zn-Al-Mgめっき鋼、Zn-Niめっき鋼の何れか1種類である請求項1に記載の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法。
【請求項3】
前記亜鉛めっき鋼板は、溶融亜鉛めっき又は電解亜鉛めっきで処理された亜鉛めっき鋼板である請求項2に記載の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法。
【請求項4】
前記カルシウム含有溶液は、カルシウムイオン濃度が0.1ppm以上カルシウム飽和以下である請求項1乃至3の何れかに記載の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法。
【請求項5】
前記カルシウム含有水溶液の溶存酸素量の飽和溶存濃度を高める工程において、常温常圧であって、前記カルシウム含有水溶液と接触する酸素ガス濃度を、酸素分圧0.02MPaを超え0.1MPa以下とする請求項1乃至4の何れかに記載の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法。
【請求項6】
前記カルシウム含有水溶液の溶存酸素量の飽和溶存濃度を高める工程において、常温であって、前記カルシウム含有水溶液と接触する酸素ガス濃度を、供給酸素圧の範囲として、酸素分圧0.02MPaを超え酸素分圧2MPa以下とする請求項1乃至5の何れかに記載の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法。
【請求項7】
前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板を前記カルシウム含有水溶液に浸漬する期間の範囲として、1時間以上30日以下である請求項1乃至6の何れかに記載の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法。
【請求項8】
前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板を被覆するカルシウムハイドロキシジンケート膜の状態が、前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層として十分か否かを判定する基準は、前記カルシウムハイドロキシジンケート膜の膜厚が5μm以上10μm以下である請求項1乃至7の何れかに記載の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外で使用される鋼構造物を腐食による劣化から保護するため、鋼材の表面に亜鉛を主成分としためっき(以下、亜鉛めっきと表記)を施した亜鉛めっき鋼がよく使用される。亜鉛めっきによる鋼材の耐食性向上技術については、例えば、非特許文献1-3および特許1-3により報告されている。亜鉛めっきは以下に示す二段階の作用により下地鋼材を腐食から保護する。
・ 下地鋼材と大気環境との接触遮断
鋼材は大気環境に暴露されることで、大気環境中の水や酸素、塩化物イオンにより腐食する。亜鉛めっきは鋼材表面を被覆し、鋼材が大気環境と接触することを抑制することで下地鋼材を保護する。
・ 犠牲防食作用による腐食抑制
亜鉛めっきが腐食や傷により劣化すると、亜鉛めっきの被覆が剥がれ下地鋼材が大気環境に露出する。この場合、亜鉛めっきと下地鋼材が大気環境中の水を介して電気的に短絡した状態となる。この状態では、亜鉛が鉄よりも電気化学的に卑であるため、亜鉛がアノード、鉄がカソードとなり鉄の溶解は生じない。すなわち、亜鉛が鉄の代わりに腐食する(=犠牲となる)ことで下地鋼材を腐食から保護する。
【0003】
上記のように、下地鋼材は亜鉛めっきにより保護されるが、亜鉛自体は鉄よりも腐食しやすいため、亜鉛めっきの大気環境中での耐用期間は例えば特に腐食の激しい塩害地域や重工業地帯では10年程度である。亜鉛めっきの耐食性を向上させるため、亜鉛めっきにアルミニウムやマグネシウム、ニッケルを添加したZn-AlめっきやZn-Al-Mgめっき、Zn-Niめっきが開発・商品化されているが、いずれのめっきにおいても大気環境と接するめっき最表面は亜鉛が濃化した純亜鉛層であり、めっき最表面では腐食が生じるためめっき層の劣化が進行する。めっき最表面の耐食性を向上させるため、3価クロメート処理が一般的に行われるが、硝酸による前処理が必要なことやクロメート処理浴のpH管理が必要であること、溶液に含まれるクロムがレアメタルに属しているため今後価格の高騰が懸念されること、大型の鋼材に処理を行うには多量のクロムイオンを含んだ処理液の使用や廃棄が必要なことなどが挙げられ、クロメート処理に代わる最表面処理が望まれる。
【0004】
亜鉛の耐食性を向上させる表面処理法として、亜鉛表面へのハイドロキシカルシウムジンケート(Ca(Zn(OH)・2HO、以下CHZと表記)の形成が報告されている。CHZは高い耐食性を有するため、亜鉛の溶解を抑制する防食被膜として期待できる。CHZ被覆を防食技術として使用した例に、鉄筋コンクリートでの亜鉛めっき鉄筋の使用が挙げられる。コンクリート中ではコンクリートの主成分である水酸化カルシウムからカルシウムイオンが供給されるため、亜鉛表面に自発的にCHZが形成される。そこで、鉄筋表面に亜鉛めっきを施した亜鉛めっき鉄筋が防食鉄筋として使用されている。しかし、CHZが亜鉛表面を被覆するまでは数週間から数か月の期間が必要である。コンクリート中であれば実環境で使用されるまでに1か月程度のコンクリート養生期間があるためその期間にCHZの形成が可能であるが、裸の亜鉛めっき鋼構造物に工業的にCHZを被覆させ実環境で使用するためにはCHZの加速形成が必須となる。
【0005】
CHZの加速形成を可能にするために、まずはCHZの電気化学的、化学的生成プロセスを考える。CHZの形成プロセスは以下のとおりである。
Zn→Zn2++2e ・・・(1)
+2HO+4e→4OH ・・・(2)
Zn2++4OH→Zn(OH) 2- ・・・(3)
2Zn(OH) 2-+Ca2++2HO→Ca(Zn(OH)・2HO+2OH・・・(4)
式(1)は電子を生じるアノード反応であり、電子を消費する式(2)のカソード反応と必ず同時に同量生じる。電気化学的な反応である式(1)、(2)で生じた亜鉛イオンと水酸化物イオンおよび溶液に含まれるカルシウムイオン、水が式(3)、(4)で示すように化学的に反応することでCHZが亜鉛表面に形成される。ここで、式(1)によりZn2+が供給されれば式(3)、(4)は自発的に生じる。次に、pH12.5程度の高アルカリ環境である飽和Ca(OH)溶液中では、亜鉛の溶解は酸素還元反応により律速されるため、式(1)は式(2)により律速される。すなわち、式(2)がCHZ形成反応全体を律速すると言える。言い換えれば、式(2)における酸素還元反応を加速することでCHZを加速形成できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6582353号
【特許文献2】特開2021-055136
【特許文献3】特開2020-193361
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】多田英司、亜鉛系めっき鋼板の腐食と防食機構解析、電気化学、86巻(2018)Autumn号、pp.211-219(2018)
【非特許文献2】平松実、日野実、小見崇、防食めっきの最近の動向、材料と環境、45(1)、pp.33-41(1996)
【非特許文献3】篠原正、亜鉛めっき鋼板の耐食機構、表面技術、62(1)、pp. 25-29、(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、大気開放状態では耐食性の向上が認められるほどのCHZ被覆まで約1ヶ月必要である。しかし、このCHZ被覆までの処理時間が長いという課題があり、工業的に利用するためには処理時間の短縮が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、亜鉛表面におけるCHZの形成処理は、亜鉛の溶解を律速する酸素還元反応を促進することで加速できるのでは考え、本発明を想到するに至った。そして、酸素供給量を増加させた飽和Ca(OH)溶液中に亜鉛を浸漬させることで、常温常圧の処理環境ではCHZ被覆膜の形成に数週間から数か月必要であるCHZの溶液中のおける加速生成を試み、本発明を完成させるに至った。
【0010】
[1]本発明の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法は、耐食性被覆層の形成対象となる亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板を準備する工程と、前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板を浸漬するカルシウム含有水溶液を準備する工程と、前記カルシウム含有水溶液の溶存酸素量の飽和溶存濃度を、常温常圧の大気中の場合と比較して、高める工程と、前記カルシウム含有溶液の溶存酸素量を、前記高められた飽和溶存濃度と同一、又は常温常圧の大気中の飽和溶存濃度以上の状態を維持する状態で、前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板を前記カルシウム含有水溶液に浸漬する工程と、前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板を被覆するカルシウムハイドロキシジンケート膜の状態が、前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層として十分か否かを判定する工程と、を備えるものである。
ここで、常温常圧の大気中の飽和溶存濃度以上の状態を維持する状態は、大気開放以上の酸素圧でCHZ形成加速は可能であることを考慮したものである。即ち、実際にCHZ形成をする際に高めた酸素圧を維持する方法をとる場合には、例えば酸素加圧供給の際に飽和溶存濃度の5割まで酸素が減ってしまっても酸素供給(バブリング)と比べると、2.5倍CHZ形成が促進される点を考慮したものである。
【0011】
[2]本発明の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法において、好ましくは、前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板は、純亜鉛、亜鉛めっき鋼、Zn-Alめっき鋼、Zn-Al-Mgめっき鋼、Zn-Niめっき鋼の何れか1種類であるとよい。
[3]本発明の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法において、好ましくは、前記亜鉛めっき鋼板は、溶融亜鉛めっき又は電解亜鉛めっきで処理された亜鉛めっき鋼板であるとよい。
[4]本発明の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法において、好ましくは、前記カルシウム含有溶液は、カルシウムイオン濃度が0.1ppm以上カルシウム飽和以下であるとよい。さらに好ましくは、飽和水酸化カルシウム水溶液(カルシウムイオン濃度0.17%)に近いカルシウムイオン濃度および溶液の組成であるとよい。
[5]本発明の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法において、好ましくは、前記カルシウム含有水溶液の溶存酸素量の飽和溶存濃度を高める工程において、常温常圧であって、前記カルシウム含有水溶液と接触する酸素ガス濃度を、酸素分圧0.02MPaを超え0.1MPa以下とするとよい。
[6]本発明の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法において、好ましくは、前記カルシウム含有水溶液の溶存酸素量の飽和溶存濃度を高める工程において、常温であって、前記カルシウム含有水溶液と接触する酸素ガス濃度を、供給酸素圧の範囲として、酸素分圧0.02MPaを超え酸素分圧2MPa以下とするとよい。
[7]本発明の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法において、好ましくは、前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板を前記カルシウム含有水溶液に浸漬する期間の範囲として、1時間以上30日以下であるとよい。この期間は、CHZの形成期間の範囲に相当している。
[8]本発明の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法において、好ましくは、前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板を被覆するカルシウムハイドロキシジンケート膜の状態が、前記亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層として十分か否かを判定する基準は、前記カルシウムハイドロキシジンケート膜の膜厚が5μm以上10μm以下であるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法によれば、亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の表面に高耐食性を示すハイドロキシカルシウムジンケート(Ca(Zn(OH)・2HO、略記CHZ)を酸素の供給により加速被覆させるものである。CHZ被覆した亜鉛の腐食速度は未処理の亜鉛と比較して約5倍であり、構造材として使用される亜鉛めっき鋼の腐食コストの低減および亜鉛資源の保護への貢献が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法に用いる被覆処理装置の一実施例を示す構成図で、(A)は比較例としての大気開放、(B)は酸素供給処理装置、(C)は酸素加圧供給処理装置を示している。
図2A】本発明の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層としてのCHZ形成を行った試料の表面写真である。
図2B】本発明の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層としてのCHZ形成を行った試料の断面SEM像である。
図3A】本発明の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層としてのCHZ形成前後の試料の重量変化を示す図である。
図3B】本発明の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層としての、各条件におけるCHZの平均厚さを示す図である。
図4】各条件で1日CHZ形成を行った試料の表面XRD測定結果を示す図である。
図5】乾湿繰り返し腐食試験後の試料表面写真を示す図である。
図6】乾湿繰り返し腐食試験前後の試料の重量変化を示す説明図である。
図7】本発明の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層としてのCHZ形成した試料の動電位分極曲線を示す図である。
図8】Tafel法を用いて動電位分極曲線から求めた各試料の自然電位における腐食電流密度を求める図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明を説明する。
図1は、本発明の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法に用いる被覆処理装置の一実施例を示す構成図で、(A)は比較例としての大気開放、(B)は酸素供給処理装置、(C)は酸素加圧供給処理装置を示している。
【0015】
図において、試料10a、10b、10cは、耐食性被覆層の形成処理対象となる亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板で、ここでは3枚の場合を示しているが、3枚に限定されるものではなく、1枚でもよく、2枚でもよく、4枚以上でもよい。
カルシウム含有溶液20は、耐食性被覆層の形成処理に必要なカルシウム等の原料元素を供給すると共に、亜鉛の溶解を律速する酸素還元反応を促進することが望ましい。カルシウム含有溶液20は、カルシウムイオン濃度を基準として、蒸留水(カルシウムイオン濃度0.1ppm)~カルシウム飽和水溶液まで適宜のものを選択できるが、耐食性被覆層の形成処理時間を短くし、均一な耐食性被覆層を形成する工業的な利用の面からは、飽和水酸化カルシウム水溶液(カルシウムイオン濃度0.17%)に近いカルシウムイオン濃度および溶液の組成が好ましい。
【0016】
透明無機ガラス容器(ビーカー)30は、比較例としての大気開放に用いられるもので、カルシウム含有溶液20と浸漬された試料10a、10b、10cを収容するものであり、ここでは処理条件の対比の為と、観察の便宜の為にガラス容器としている。しかし、これに限定されるものではなく、工業的な用途では、例えば金属製やプラスチック製の不透明の容器としてもよい。不透明な容器を用いる場合は、試料10a、10b、10cの耐食性被覆層の形成処理経過観察は、カルシウム含有溶液20から取り出して経過観察してもよい。
溶液蒸発防止蓋32は、透明無機ガラス容器(ビーカー)30の上側開口部を被覆する透明なポリエチレン製フィルム等の溶液蒸発防止用の樹脂製フィルムを用いるとよい。
【0017】
アクリル容器34は、実施例1に示す酸素供給処理装置に用いられるもので、カルシウム含有溶液20と浸漬された試料10a、10b、10cを収容するものであり、ここでは処理条件の対比の為と、観察の便宜の為に透明なアクリル樹脂製容器としている。蓋部34aはアクリル容器34の上側開口部を覆うもので、酸素ガス供給口36と酸素ガス排出口38が装着されている。酸素ガス供給口36には、酸素ガス供給設備(図示せず)が接続されている。酸素ガス排出口38には、排気用ポンプ(図示せず)が接続されている。
【0018】
耐圧容器40は、実施例2に示す酸素加圧供給処理装置に用いられるもので、カルシウム含有溶液20と浸漬された試料10a、10b、10cを収容する透明無機ガラス容器(ビーカー)30を収容している。架台42は、耐圧容器40の内部で透明無機ガラス容器(ビーカー)30を支持するための棚等の支持部材である。蓋部40aは耐圧容器40の上側出し入れ口を覆うもので、圧力ゲージ44、酸素ガス供給口46、及び酸素ガス排出口48が装着されている。圧力ゲージ44は、耐圧容器40の内部圧力を測定するセンサである。酸素ガス供給口46には。加圧用の酸素ガス供給設備(図示せず)が接続されている。酸素ガス排出口48には、排気用設備(図示せず)が接続されている。
なお、耐圧容器40が亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成処理の専用設備であれば、カルシウム含有溶液20と浸漬された試料10a、10b、10cを収容するためには、透明無機ガラス容器(ビーカー)30を省いて、耐圧容器40を直接用いてもよい。
【0019】
続いて、このように構成された装置を用いた、亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成処理の手順を説明する。
<CHZ加速形成評価>
試料10a、10b、10cには15mm×50mm×1mmの純亜鉛板((株)ニラコ)を用いた。これらの試料表面をSiC耐水研磨紙で#800まで研磨した後、イソプロパノール中で5分間超音波洗浄した。ハイドロキシカルシウムジンケート(CHZ)形成処理のために、カルシウム含有溶液20である試験溶液として飽和水酸化カルシウム水溶液を用いた。
【0020】
飽和水酸化カルシウム水溶液中に所定時間試料を浸漬させることで表面にCHZを形成させ、本水溶液中への供給酸素量を変化させることでCHZの形成条件を変化させた。実施例1、2及び比較例での酸素供給条件は、大気開放(酸素ガス供給無し、酸素分圧0.02MPa)、酸素ガス供給(100%酸素ガス使用、酸素分圧0.1MPa)、酸素ガス加圧供給(100%酸素ガス使用、酸素分圧0.5MPa)とした。以下、大気開放条件で行った試験を大気開放、0.1MPaの酸素ガス供給で行った試験を酸素供給、0.5MPaの酸素ガス供給で行った試験を酸素加圧供給と表記する。
【0021】
比較例としての大気開放の際には、ビーカー30に試験溶液20と試料10を入れ上部を溶液の蒸発を防ぐためラップ32で覆った(図1(A))。実施例1としての酸素供給処理装置の際には、アクリル製の密閉容器34内に試験溶液20と試料10を入れ、100%酸素ガスをバブリングにより供給した(図1(B))。実施例2としての酸素加圧供給処理装置の際には、チタン製の耐圧容器40内に試験溶液20と試料10を入れたビーカー30を設置し、100%酸素ガスを0.5MPaとなるよう供給した(図1C))。
【0022】
試験期間は1日、3日、7日間とした。試験後、試験溶液から試料を取り出し蒸留水およびイソプロパノール中で5分ずつ超音波洗浄し自然乾燥させた。試験後の表面写真および断面観察、試験前後の重量変化測定、試料表面に形成した化合物のXRD分析を行った。また、比較材として研磨ままの試料も準備し、後述する動電位分極測定や乾湿繰り返し腐食試験に供した。実施例1、2及び比較例におけるCHZ形成条件を表1にまとめた。
【0023】
【表1】
【0024】
<乾湿繰り返し腐食試験>
CHZを形成した試料の耐食性を評価するため、乾湿繰り返し腐食試験を行った。乾湿繰り返し腐食試験前に試料表面に付着塩分量が1g/mとなるようにNaCl水溶液とエタノールの混合溶液(混合比1:4)を240μL滴下した。その後、湿潤状態(相対湿度95%、4時間)と乾燥状態(相対湿度30%、2時間)を1サイクルとした計4サイクル(計24時間)からなる乾湿繰り返し腐食試験を行った。本試験中は、試験温度を50℃に保持した。試験後に試料表面写真撮影および試験前後の試料重量変化測定を行った。
【0025】
<動電位分極測定>
CHZを形成した試料の電気化学的特性を検討するため、動電位分極測定を行った。試験溶液には1wt.%のNaCl溶液を用いた。参照電極にはAg/AgCl電極、対極にはPt線を用い、作用極に研磨ままの試料またはCHZを形成させた試料を用いる三電極法で行った。試料を試験溶液に浸漬させた後、-1.2Vから-0.7Vまで掃引した。なお、実施例1、2及び比較例における電位表記は全て銀・塩化銀電極の電位(vs.Ag/AgCl)である。掃引速度は20mV/minとした。
【0026】
<亜鉛表面へのCHZ加速被覆処理の結果>
図2Aに研磨ままの試料および各酸素供給条件で所定時間CHZ形成を行った後の試料の表面写真を示す。大気開放で試験を行った際には、試験後1日、3日ではほとんど試料表面に変化は認められず、試験7日後で試料表面にうっすらと被膜が形成し試料の光沢は失われた。一方で、酸素供給および酸素加圧供給を行った試料では試験後1日で試料全面を被膜が覆った。図3Aに示した試験前後の重量変化を見ると、大気開放条件では試験7日後まで時間に比例して重量が増加し続けたがその増加量はわずかであった。一方で、酸素供給では試験1日後で大気開放条件7日後以上の重量増加があった。その後重量増加の傾きは徐々に減少しつつ試験7日後まで重量増加が認められた。酸素加圧供給では試験1日後でさらに大幅な重量増加が観察され、その後0.1MPa酸素供給と同様に重量増加の傾きの減少および重量増加が認められた。
【0027】
図2BにCHZ被覆した試料の断面SEM像を示す。いずれの条件においても亜鉛基板上に厚さ数μm程度のCHZ層が形成していることがわかる。酸素供給および酸素加圧供給した試料では試料表面全体をCHZがくまなく覆っている一方で、大気開放条件では亜鉛基板が露出しておりCHZ被覆が完了していない箇所が随所に見受けられた。
図3Bに各条件におけるCHZの平均厚さを示す。なお、CHZの平均厚さ測定においては、CHZが形成した箇所のみを解析の対象とした。CHZの平均厚さは大気解放条件では試験期間の増加とともに増加し、試験期間7日で約7μmを示した。酸素供給では試験期間1日で約6μmを示した後、試験期間の増加とともに微増し、試験期間7日で約8.5μmを示した。酸素加圧供給では試験期間1日で約8.5μmを示し、その後CHZ平均厚さに変化はほとんど見られなかった。
【0028】
これらの結果より、水酸化カルシウム溶液中への浸漬で得られるCHZの平均厚さの最大値は約8.5μmであり、それ以降はCHZの厚さ方向への成長は抑制されることが明らかとなった。CHZは絶縁性であることが報告されており、一定の厚さを有するCHZ下では亜鉛の溶解が抑制されるためそれ以上は厚さ方向には成長しなくなったと考えられる。なお、CHZの平均膜厚の測定方法は、例えば以下のような方法で求めるとよい。
(A)各試料5枚ずつ図2Bのような断面SEM像を撮影する。
(B)撮影した断面SEM像のCHZが形成した箇所から無作為に1箇所選択して、PC画面上で厚さを測定する。
(C)同じ倍率で撮影したスケールバーを用いて実際の厚さに換算する。
(D)撮影した断面SEM像全てで上記の作業を行い、同条件中の計5箇所の平均値をその条件におけるCHZの厚さとする。
なお、試料の枚数は5枚に限定されるものではなく、適宜の枚数であってよい。また、撮影した断面SEM像からCHZの厚さを求める場合、PC画面上で厚さを測定する態様に限定されるものではなく、印刷して採寸して求めてもよく、またデジタル画像情報からCHZ領域を抽出して、平均膜厚を求めてもよい。
上記の表面の観察と厚さの情報から、耐食性を示すCHZの条件として、ばらつきを考慮して表面被覆率が90%以上で平均厚さが5μm以上10μm以下であることが挙げられる。試験のばらつきにより部分的に10μm程度まで成長するところも見受けられるので、CHZ膜厚の最大値を10μmとしている。
【0029】
図4に試験後1日の大気開放、酸素供給、酸素加圧供給した試料表面のXRDスペクトルを示す。いずれの試料からも、ZnのピークとCHZのピークのみが検出された。Znのピークは亜鉛基板由来であり、CHZのピークは試料表面に形成した被膜のピークであると考えられ、飽和Ca(OH)溶液への浸漬により生成した被膜がCHZであることが示された。また、酸素供給および酸素加圧供給した試料においても、ZnとCHZのピークのみが検出されたことから、酸素の供給によりCHZ以外の被膜が形成することはない、すなわち、大気開放と酸素供給および酸素加圧供給では、CHZの形成プロセスは同様であると言える。また、それぞれの試料のZnピークとCHZのピーク強度比を見てみると、大気開放した試料ではZnのピークがCHZのピークよりも強度が大きいが、酸素供給および酸素加圧供給した試料ではCHZのピークの方がZnピークよりも大きくなっており、より多量のCHZが試料表面を被覆していることがここからもわかる。以上より、酸素供給および酸素加圧供給により、亜鉛表面へ反応プロセスを変えることなくCHZを加速被覆できることが示された。
【0030】
<CHZ被覆した亜鉛の耐食性評価>
図5に乾湿繰り返し腐食試験後の試料表面写真を示す。研磨ままの試料は乾湿繰り返し腐食試験により激しく腐食し、試料表面上には亜鉛の白色の腐食生成物が付着していた。大気開放した試料でも激しい腐食と白色の腐食生成物の付着が認められたが、CHZの形成期間が長くなるほど腐食生成物の付着量は少なくなった。大気開放した試料では、試験期間の増加とともにCHZの形成量が増加し耐食性の向上につながったと考えられる。一方で、酸素供給および酸素加圧供給した試料では、試験期間に関わらずほとんど腐食および腐食生成物の付着は認められなかった。酸素供給および酸素加圧供給した試料では、試験1日で試料全面へのCHZ形成が完了したため、高い耐食性を発揮したと考えられる。
【0031】
図6に乾湿繰り返し腐食試験前後の試料の重量変化を示す。試験後、腐食生成物が付着したまま重量変化測定を行ったため、いずれの試料においても重量変化は正の値を示した。研磨ままの試料および大気開放1、3日の試料の重量変化が最も大きく、最も腐食したことがわかる。大気開放した試料では大気開放7日の試料でわずかに重量変化は小さくなった。一方で、酸素供給および酸素加圧した試料では、CHZ形成1日後からいずれの大気開放試料よりも小さな重量変化を示し、酸素供給した試料ではCHZ形成期間が長くなるほど重量の変化は小さくなった。酸素加圧供給では、さらに重量変化が小さくなり、酸素加圧供給3、7日試料で最も小さな重量変化を示した。これらの結果から、CHZの加速形成が亜鉛の耐食性を向上させることが明らかとなった。
【0032】
CHZ形成した試料の耐食性を電気化学的に評価するため、動電位分極測定を行った。図7にそれぞれの条件における-1.2Vから-0.7Vまでの分極曲線を示す。まず、研磨ままの試料の分極曲線に着目すると、-1.2Vから自然電位付近まで還元反応に起因する電流がほぼ一定の値を示す領域が認められた。この電位域における反応は酸素還元反応(カソード反応)であり、電位に依存せず一定の電流値を示したことから、この電流は酸素拡散限界電流でありこの値により亜鉛の腐食が律速されることがわかる。一方で、自然電位より貴な電位域では、電位の上昇とともに電流が上がり続けた。この領域では、亜鉛の溶解反応(アノード反応)が生じている。
次に、大気開放した試料ではCHZ形成1日ではほとんど研磨ままの試料と分極曲線に差は見られなかった。CHZ形成期間が長くなるにつれ、酸素還元限界拡散電流および亜鉛の溶解電流がわずかに抑制された。之は、CHZが絶縁性であるために、CHZ上での酸素還元反応が抑制された結果である(カソード反応の抑制)とともに、CHZが試料表面を覆うことで溶液と接する亜鉛下地の面積が減少した結果(アノード反応の抑制)であると考えられる。
これらの結果より、CHZを形成した試料の耐食性の向上が電気化学的にも示された。酸素供給した試料および酸素加圧供給した試料では、試験後1日の試料で大気開放7日の試料よりも酸素還元限界拡散電流および亜鉛の溶解電流が抑制されており、酸素供給および酸素加圧供給による亜鉛の耐食性の向上が大気開放よりも非常に短時間で達成できることが示された。
【0033】
CHZ被覆した試料の耐食性を定量的に評価するため、自然電位における腐食電流を求めることができるTafel法を用いて、それぞれの試料の開回路状態における腐食電流を求めた。その結果を図8に示す。横軸にCHZ形成期間、縦軸にTafelプロットにより求めた自然電位に置ける腐食電流を示した。縦軸の値が大きいほど腐食電流が大きい、すなわち耐食性が低いことを示している。大気開放した試料では、試験期間の増加に比例して、腐食電流の値が徐々に下がっているが、酸素供給試料では、CHZ形成1日で急激に腐食電流が下がり、その後の期間では緩やかに腐食電流の低下が生じた。さらに酸素加圧供給した試料では、CHZ形成1日で急激に腐食電流が下がり、その後の期間ではほとんど腐食電流に変化は見られなかった。
【0034】
これらのことから、CHZが試料全体を完全に覆った際の腐食電流は約5mA/cmであり研磨ままの試料(腐食電流:約25mA/cm)と比較して腐食電流を約5分の1にすることが可能になることが明らかとなった。大気開放した試料ではこの水準まで腐食電流が下がるには近似直線から求めると約25日かかることになる。酸素加圧供給した試料では、約1日でCHZの試料全面被覆が完了しているため、CHZの形成を最大約25倍加速できることが明らかとなった。
【0035】
実施例1、2及び比較例では、亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性向上を目的とし、飽和Ca(OH)2水溶液中に純亜鉛板を浸漬させ、酸素ガスを供給することで高耐食性を発揮するカルシウムハイドロキシジンケート(Ca(Zn(OH)、CHZ)を亜鉛表面に加速形成することを試みた。以下に得られた知見を示す。
(A)大気開放条件と比較して、酸素供給および酸素加圧供給した条件では、供給酸素圧に比例してCHZの形成を加速できる。実施例1、2及び比較例で示したCHZ形成の加速率は最大で25倍である。
(B)酸素供給および酸素加圧供給で形成する化合物はすべてCHZからなり、酸素供給により亜鉛表面での反応プロセスを変化させることはない。
(C)乾湿繰り返し腐食試験の結果から、CHZで被覆した亜鉛は研磨ままの亜鉛と比較して高い耐食性を発揮する。CHZで表面が完全に被覆された際には、研磨ままの亜鉛と比較して腐食電流が約5分の1に抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の亜鉛基合金又は亜鉛めっき鋼板の耐食性被覆層の形成方法によれば、常温常圧の酸素と比較して高い酸素濃度のカルシウム含有溶液を用いることで、例えば従来の約1ケ月から1日までCHZ被覆の時間を短縮することができ、工業上の利用価値は大きい。
CHZ被覆した亜鉛の腐食速度は未処理の亜鉛と比較して約5倍であり、構造材として使用される亜鉛めっき鋼の腐食コストの低減および亜鉛資源の保護への貢献が期待できる。
【符号の説明】
【0037】
10、10a、10b、10c:試料
20:カルシウム含有溶液(試験溶液)
30:透明無機ガラス容器(ビ―カー)
32:溶液蒸発防止蓋(ラップ)
34:アクリル容器
34a:蓋部
36:酸素ガス供給口
38:酸素ガス排出口
40:耐圧容器
40a:蓋部
42:架台
44:圧力ゲージ
46:酸素ガス供給口
48:酸素ガス排出口

図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8