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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019403
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】媒体撹拌型微粉砕機
(51)【国際特許分類】
   B02C 17/16 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
B02C17/16 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124095
(22)【出願日】2021-07-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】591173855
【氏名又は名称】杉山重工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】杉山 大介
【テーマコード(参考)】
4D063
【Fターム(参考)】
4D063FF14
4D063FF35
4D063GA02
4D063GA10
4D063GB02
4D063GB05
4D063GC05
4D063GC12
4D063GC14
4D063GC23
4D063GC27
4D063GD04
4D063GD12
4D063GD27
(57)【要約】
【課題】、摩耗したパドル16の交換作業が簡単、迅速に行うことができ、交換作業による生産性の低下を来さない媒体撹拌型微粉砕機10を提供すること。
【解決手段】嵌合穴13aの一端からパドル16の接合片16aを挿入し、嵌合穴13aの他端から別のパドル16の接合片16aを挿入し、両パドル16の接合片16aを嵌合穴13aの中でパドル16と同径の円形となるように接合し、ボルト22で撹拌軸13に固定する。スリーブ21が摩耗したパドル16を交換するとき、ボルト22を外して両接合片16aを分離し、接合片16aを嵌合穴13aから抜き出せばよい。接合片16aを嵌合穴13aから抜き出す際、パドル16の先端が粉砕槽12の内壁面と干渉することはない。そのため、撹拌軸13を粉砕槽12から取り出さなくても、パドル16を撹拌軸13から取り外すことができる
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型円筒形を有し内壁面を硬質セラミックスでライニングした粉砕槽と、表面を硬質セラミックスでライニングし、粉砕槽の上部から垂設した撹拌軸と、撹拌軸を回転させるモータと、硬質セラミックス製のスリーブを被着してライニングした断面円形の金属製のパドルを複数本備え、撹拌軸に形成した径方向に貫通する嵌合穴にパドルを嵌め込んで撹拌軸から径方向に突出させ、ボルトで撹拌軸にパドルを固定し、
粉砕原料と溶媒を混合した原料スラリーと媒体を粉砕槽の中で、撹拌軸を回転させてパドルで撹拌し、粉砕原料を微粉化する媒体撹拌型微粉砕機であって、
パドルの一端に断面形状がパドルと同径の半円形を有し、被着したスリーブから突出する接合片を一体成型し、
嵌合穴の一端から一のパドルの接合片を挿入し、嵌合穴の他端から他のパドルの接合片を挿入し、嵌合穴の中で両接合片をパドルと同径の円形となるように接合し、両接合片にボルトを貫通して両パドルを撹拌棒に固定し、
ボルトを外して接合片を嵌合穴から抜き出すとき、パドルの先端が粉砕槽の内壁面と干渉しないようにパドルの長さ寸法を設定したことを特徴とする媒体撹拌型微粉砕機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は媒体撹拌型微粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体撹拌型微粉砕機の一形式として、 縦型円筒形の粉砕槽と、粉砕槽の上部から垂設した撹拌軸と、撹拌軸を回転させるモータと、金属丸棒製の複数本のパドルを備え、撹拌軸に形成した径方向に貫通する嵌合穴にパドルを嵌め込んで撹拌軸から径方向に突出させた媒体撹拌型微粉砕機が広く実用に供されている。
【0003】
この種の媒体撹拌型微粉砕機によれば、原料と溶媒を混合した原料スラリーと、スチールボール、セラミックスボール等の媒体を、回転軸を回転させてパドルで混合し、原料と媒体との衝突によって原料が微粉化される。
【0004】
ところで、媒体撹拌型微粉砕機の運転時、粉砕槽の内壁、回転軸、パドル等が摩耗し、コンタミネーションと呼ばれる金属質の摩耗粉が粉砕原料の中に混入する。
媒体撹拌型微粉砕機で製鉄原料、合金用添加粉末、フェライト系磁性材料等の金属素材を粉砕する場合は、コンタミネーションのある程度の混入は許容されるが、電子素材、化学素材の粉砕では金属質のコンタミネーションがイオンレベルであっても混入すれば致命的な欠陥になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-309725号公報
【特許文献2】特開2004-325437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、金属質のコンタミネーションを嫌う素材の粉砕に使用される媒体撹拌型微粉砕機では、粉砕槽の内壁面、撹拌棒、パドルを硬質セラミックスでライニングしている。とりわけ、図8に示すように、パドル1は、撹拌軸2に形成した径方向に貫通する嵌合穴2aに嵌め込んで撹拌軸2の左右側面から径方向に突出させ、撹拌軸2に形成したネジ孔2bにボルト3の先端をねじ込み、パドル1のリング溝1aに圧接してパドル1を撹拌軸2に固定し、予め成型、焼成した硬質セラミックス製のスリーブ4をパドル1の撹拌軸2からの突出部分に被せ、接着剤で接着してライニングしている。同様に、撹拌軸2にも硬質セラミックス製のスリーブ5を被せ、接着剤で接着してライニングしている。
【0007】
しかし、パドル1や撹拌軸2に接着剤でスリーブ4,5を接着する場合、接着剤が硬化して所定の硬度に到達するまでに数十時間を要するので、摩耗したパドル1の交換作業に甚だ時間がかかり、生産性が低下する。
【0008】
一方、図9に示すように、摩耗したパドル6の交換作業の能率を向上させるため、予めパドル6の撹拌軸7から突出する部分にスリーブ4を接着したものを完成部品として準備しておくことが提案されている。
しかしながら、この完成部品を用いる場合、撹拌軸7にはスリーブ4の厚み分だけ内径を大きくした嵌合穴7aを撹拌軸7に形成しておかなければならず、その分、撹拌軸7の直径が大きくなり、撹拌軸7の重量が増加する。通常、撹拌軸7はカップリングでモータの駆動軸と連結して粉砕槽の上部から吊り下げる片持ち構造のため、重くなった撹拌軸7を吊り下げるカップリングも大型化し、運転時の消費電力が増加する。それだけでなく、スリーブ4が摩耗したパドル6を交換する際、撹拌軸7を粉砕槽に垂設したままでは、パドル4が粉砕槽の内壁面と干渉するので、嵌合穴7aから抜き出すことができない。そのため、撹拌軸7をカップリングから外し、粉砕槽から引き上げて取り出さなければならず、スリーブ4を接着して固定したパドル6をあらかじめ完成部品として準備していても、摩耗したパドル6の交換作業は時間を要し、生産性の低下が避けられない。
本発明はかかる点に鑑み、摩耗したパドルの交換作業が簡単、迅速に行うことができ、交換作業による生産性の低下を来さない媒体撹拌型微粉砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、
縦型円筒形を有し内壁面を硬質セラミックスでライニングした粉砕槽と、表面を硬質セラミックスでライニングし、粉砕槽の上部から垂設した撹拌軸と、撹拌軸を回転させるモータと、硬質セラミックス製のスリーブを被着してライニングした断面円形の金属製のパドルを複数本備え、撹拌軸に形成した径方向に貫通する嵌合穴にパドルを嵌め込んで撹拌軸から径方向に突出させ、ボルトで撹拌軸にパドルを固定し、
粉砕原料と溶媒を混合した原料スラリーと媒体を粉砕槽の中で、撹拌軸を回転させてパドルで撹拌し、粉砕原料を微粉化する媒体撹拌型微粉砕機であって、
パドルの一端に断面形状がパドルと同径の半円形を有し、被着したスリーブから突出する接合片を一体成型し、
嵌合穴の一端から一のパドルの接合片を挿入し、嵌合穴の他端から他のパドルの接合片を挿入し、嵌合穴の中で両接合片をパドルと同径の円形となるように接合し、両接合片にボルトを貫通して両パドルを撹拌棒に固定し、
ボルトを外して接合片を嵌合穴から抜き出すとき、パドルの先端が粉砕槽の内壁面と干渉しないようにパドルの長さ寸法を設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、嵌合穴の一端からパドルの接合片を挿入するとともに、嵌合穴の他端から別のパドルの接合片を挿入し、両接合片を嵌合穴の中でパドルと同径の円形となるように接合し、ボルトで撹拌軸に固定するので、スリーブが摩耗したパドルを交換するとき、ボルトを外して両接合片を分離し、接合片を嵌合穴から引き出せばよく、接合片を抜き出す際、パドルの先端が粉砕槽の内壁面と干渉することはない。そのため、撹拌軸を粉砕槽から取り出さなくても、パドルを撹拌軸から取り外すことができるので、スリーブの摩耗したパドルを予めスリーブを被着した新品のパドルと簡単、迅速に交換でき、交換作業に時間がかかって生産性が低下するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係る媒体撹拌型微粉砕機を示す縦断断面図である。
図2】同媒体撹拌型微粉砕機の撹拌軸とパドルを示す分解斜視図である。
図3】同媒体撹拌型微粉砕機の撹拌軸とパドルを示す分解斜視図である。
図4図2の4-4線から切断した断面図である。
図5図4の5-5線から切断した断面図である。
図6】同媒体撹拌型微粉砕機の撹拌軸とパドルを示す斜視図である。
図7】同媒体撹拌型微粉砕機の粉砕槽と撹拌軸とパドルを示す断面図である。
図8】従来の媒体撹拌型微粉砕機の撹拌軸とパドルを示す分解斜視図である。
図9】従来の他の媒体撹拌型微粉砕機の撹拌軸とパドルを示す分解斜視図である。
【実施例0012】
以下に本発明を図面に基づき説明する。図1には本発明の一実施例に係る媒体撹拌型微粉砕機10が示されている。当該媒体撹拌型微粉砕機10は、機枠11と、縦型円筒形を有する粉砕槽12と、粉砕槽11の上部から粉砕槽12中に垂設した撹拌軸13、撹拌軸13を回転させるモータ14、撹拌軸13とモータ14を連結するカップリング15、及び撹拌軸13に組み付けた複数本のパドル16を備えている。
【0013】
粉砕槽12の内壁面は硬質セラミックスでライニングされ、予め、硬質セラミックスボールの媒体17が粉砕槽12に充填されている。粉砕槽12の外周面には横軸12aが一体に突設され、横軸12aを支承する軸受18によって粉砕槽12が垂直面内で回転可能に機枠11に組み付けられ、回転ハンドル19の操作により反転させることができる。粉砕槽12の底部には粉砕原料と水または容器溶剤と混合した原料スラリー20の供給口12bが設けられ、供給口12bにはフィルター12cが張設されている。粉砕槽12にはこの供給口12bを通して図示略のスラリーポンプから原料スラリー20が圧送される。粉砕槽12の上部には原料スラリー20の排出口12dが設けられている。
【0014】
撹拌軸13は、機枠11の上部に設置したモータ14の駆動軸にカップリング15を介して連結され、粉砕槽12の上端開口面から粉砕槽12中に垂設されている。
【0015】
図2図6に撹拌軸13とパドル16の組み付け構造を示す。撹拌軸13には径方向に貫通する嵌合穴13aが形成されている。この嵌合穴13aは撹拌軸13の軸心に沿って6個が列設され、上下に隣接する嵌合穴13aは互いに位相が90度異なるように形成されている。また、撹拌軸13には各嵌合穴13aに達する大径の通孔13bと、通孔13bと同心で対面し、嵌合穴13aに達するネジ孔13c(図3参照)が形成されている。
【0016】
各パドル16は金属製の丸棒から成り、硬質セラミックス製のスリーブ21を被せてライニングされている。このスリーブ21は予め接着剤でパドル16に接着して固定されている。パドル16の一端には断面形状がパドル16と同径の半円形を有し、スリーブ21から突出する接合片16aが一体成型され、接合片16aにはボルト22が挿通される通孔16bが形成されている。
【0017】
図3図5に示すように、パドル16を撹拌軸13に組み付けるには、嵌合穴13aの一端からパドル16の接合片16aを挿入し、嵌合穴13aの他端から別のパドル16の接合片16aを挿入し、嵌合穴13aの中で両接合片16aをパドル16と同径の円形となるように接合する。そして、通孔13bにワッシャ23とボルト22を挿通し、両接合片16aの通孔16bにボルト22を貫通してネジ孔13cにねじ込み、両パドル16をボルト22で撹拌軸13に固定する。撹拌軸に計12本のパドル16を組み付けた後、硬質プラスチック製の撹拌軸用スリーブ24を撹拌軸13に被せて接着剤で固定し、撹拌軸13をライニングする。
【0018】
本実施例に係る媒体撹拌型微粉砕機10の構造は以上の通りであって、スラリーポンプで原料スラリー20を供給口12bから粉砕槽12へ圧送し、モータ14で撹拌軸13を回転してパドル16で原料スラリー20と媒体17を撹拌する。原料は媒体17、粉砕槽12の内壁面、撹拌軸13、パドル16のスリーブ21との摩擦により微砕化されながら、粉砕槽12の上部へと上昇し、排出口12dからオーバーフローして排出される。目的の粉砕粒度を得るために、場合によっては排出口12dから排出された原料スラリー20を再び粉砕槽12へ戻す。
【0019】
本実施例によれば、嵌合穴13aの一端からパドル16の接合片16aを挿入し、嵌合穴13aの他端から別のパドル16の接合片16aを挿入し、両パドル16の接合片16aを嵌合穴13aの中でパドル16と同径の円形となるように接合し、ボルト22で撹拌軸13に固定するので、スリーブ21が摩耗したパドル16を交換するとき、ボルト22を外して両接合片16aを分離し、接合片16aを嵌合穴13aから抜き出せばよい。
【0020】
図7に示すように、接合片16aを嵌合穴13aから抜き出す際、パドル16の先端が粉砕槽12の内壁面と干渉することはない。そのため、撹拌軸13を粉砕槽12から取り出さなくても、パドル16を撹拌軸13から取り外すことができるので、スリーブ21の摩耗したパドル16を予めスリーブ21を被着した新品のパドル16と簡単、迅速に交換でき、交換作業に時間がかかって生産性が低下するのを防止できる。
【符号の説明】
【0021】
10…媒体撹拌型微粉砕機
11…機枠
12…粉砕槽
13…撹拌軸
13a…嵌合穴
13b…通孔
13c…ねじ孔
14…モータ
15…カップリング
16…パドル
16a接合片
16b…通孔
17…媒体
20…原料スラリー
21…スリーブ
22…ボルト
24…スリーブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-07-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正の内容】
図2
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正の内容】
図3
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正の内容】
図4
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正の内容】
図7