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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019409
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ダミー栓および防水コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
H01R13/52 302G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124102
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】591236301
【氏名又は名称】ミネベアコネクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】原 優介
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087GG14
5E087LL04
5E087LL17
5E087RR12
(57)【要約】
【課題】簡素な構成でダミー栓の抜け止め効果を発揮でき、しかもダミー栓による十分な防水性能等が得られる技術を提供する。
【解決手段】防水コネクタのシール部材20に設けられたシール孔21を塞ぐために用いられるダミー栓30であって、前記シール孔21に挿入された状態で当該シール孔21内に形成されたリップ部22を弾性変形させて当該リップ部22と密着する栓本体部31と、前記栓本体部31の挿入方向の先端側にて前記リップ部22と嵌合する凹溝状に形成された嵌合溝部34と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水コネクタのシール部材に設けられたシール孔を塞ぐために用いられるダミー栓であって、
前記シール孔に挿入された状態で当該シール孔内に形成されたリップ部を弾性変形させて当該リップ部と密着する栓本体部と、
前記栓本体部の挿入方向の先端側にて前記リップ部と嵌合する凹溝状に形成された嵌合溝部と、
を備えるダミー栓。
【請求項2】
前記嵌合溝部は、周方向の全周にわたって連続するように形成されている
請求項1に記載のダミー栓。
【請求項3】
前記栓本体部は、前記シール孔内に形成された複数条の前記リップ部と密着する軸方向長さを有し、
前記嵌合溝部は、1条の前記リップ部と干渉せずに当該リップ部と嵌合する溝幅を有する
請求項1または2に記載のダミー栓。
【請求項4】
前記嵌合溝部は、嵌合相手となる前記リップ部の突出量よりも大きい溝深さを有する
請求項1から3のいずれか1項に記載のダミー栓。
【請求項5】
前記嵌合溝部は、前記挿入方向の先端側における溝壁面と、前記挿入方向の後端側における溝壁面とが、非対称に形成されており、
前記挿入方向の後端側における溝壁面は、前記挿入方向の先端側における溝壁面よりも大きな傾斜角を有する
請求項1から4のいずれか1項に記載のダミー栓。
【請求項6】
前記栓本体部の挿入方向の後端側にて当該栓本体部に連続するように形成された栓頭部を備え、
前記栓頭部は、直交する二方向のサイズが互いに異なる平面形状を有する
請求項1から5のいずれか1項に記載のダミー栓。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のダミー栓を備える防水コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダミー栓および防水コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
防水コネクタは、シール部材を利用して防水性を担保するように構成されるが、そのシール部材に余剰のシール孔がある場合に、未使用のシール孔をダミー栓で塞ぐ、といったことが行われる。ダミー栓としては、凸形状の係止部を設けることで、抜け止めの要求に対応するものが一般的である(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-133368号公報
【特許文献2】特開2004-071200号公報
【特許文献3】特開2012-199004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
凸形状の係止部を設けたダミー栓では、その係止部を係止させるための部材を防水コネクタの側に必要とする場合がある。その場合、コネクタ大型化や部品点数増加によるコストアップ等を招くおそれがある。また、係止部を直接シール部材に係止させる場合には、組立時のシール部材の傷発生のリスクが高くなり、防水性能の低下や挿入力増大による作業性低下等を招くおそれがある。
【0005】
本発明は、簡素な構成でダミー栓の抜け止め効果を発揮でき、しかもダミー栓による十分な防水性能等が得られる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
防水コネクタのシール部材に設けられたシール孔を塞ぐために用いられるダミー栓であって、
前記シール孔に挿入された状態で当該シール孔内に形成されたリップ部を弾性変形させて当該リップ部と密着する栓本体部と、
前記栓本体部の挿入方向の先端側にて前記リップ部と嵌合する凹溝状に形成された嵌合溝部と、
を備えるダミー栓が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡素な構成でダミー栓の抜け止め効果を発揮でき、しかもダミー栓による十分な防水性能等が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る防水コネクタの要部構成例を示す側断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る防水コネクタで用いられるシール部材の構成例を示す側断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るダミー栓の構成例を示す説明図であり、(a)は側面図、(b)はA矢視図、(c)はB部拡大図である。
図4】本発明の一実施形態に係るダミー栓の使用態様の具体例を示す説明図であり、(a)は挿入前状態を示す図、(b)は挿入後状態を示す図、(c)は抜け止め防止状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係るダミー栓および防水コネクタについて、図面を参照しながら説明する。
【0010】
(1)防水コネクタの構成例
まず、本実施形態に係る防水コネクタの構成例について簡単に説明する。
図1は、本実施形態に係る防水コネクタの要部構成例を示す側断面図である。
【0011】
防水コネクタは、図示せぬ端子金具を収容するハウジング部10を備えている。ハウジング部10は、接続相手となる図示せぬ他のハウジング部と嵌合可能であり、両ハウジングを嵌合させた状態でそれぞれにおける端子金具の間の電気的接続を確保するように構成されている。なお、いずれのハウジング部も同様の構成であればよく、ここでは一方のハウジング部10に着目して、以下の説明を行う。
【0012】
ハウジング部10は、絶縁性を有する樹脂材料(例えば、ポリブチレンテレフタレート:PBT)の一体成型加工によって形成されたもので、図示せぬ端子金具を収容するための端子収容部11が形成されている。防水コネクタが多ピン対応のものであれば、端子収容部11は、ピン数に対応する数のものが、例えば図中奥行き方向に並ぶように形成されている。
【0013】
端子収容部11は、ハウジング部10を貫通するように設けられており、その内部にランス部12が設けられている。そして、端子収容部11の一端側から挿入される端子金具とランス部12とを係止させることで、その端子金具の端子収容部11内における位置を固定させるようになっている。これにより、端子収容部11内に収容された端子金具は、端子収容部11の他端側から挿入される接続相手の端子金具と接続し得るようになる。
【0014】
また、端子収容部11の一端側には、当該一端側における防水性を担保するためのシール部材20が配されている。
図2は、シール部材20の構成例を示す側断面図である。
シール部材20は、弾性材料(例えば、シリコンゴム)によって形成されたもので、端子収容部11内に装着された状態で、端子収容部11の内壁とその端子収容部11内に収容された端子金具に接続する電線(ただし不図示)との間を密封するためのものである。
そのために、シール部材20には、平面形状が円形状の貫通孔であるシール孔21が設けられている。そして、端子金具に接続する電線をシール孔21に挿通させることにより、端子収容部11の内壁と電線との間を密封するように構成されている。
【0015】
シール孔21には、その内周面に、山型の断面形状が周方向に連続するリップ部22が形成されている。リップ部22は、シール孔21の孔軸方向に沿って並ぶように、複数条(具体的には例えば3条)形成されている。これにより、シール孔21の内周面は、リップ部22の頂部による小径aの部分とリップ部22の麓部による大径bの部分とが交互に配された凹凸面状部分を有することになる。リップ部22の頂部による小径aの部分は、シール孔21を挿通する電線の外径よりも小さく設定されているものとする。このような凹凸面状部分の径設定により、各リップ部22は、電線の外周に弾性変形した状態で密着することになり、電線との間を密封して防水性を担保する上で好ましい構成のものとなる。なお、ここでいう「弾性変形した状態」とは、リップ部22を構成する弾性材料に弾性変形が生じている状態のことであり、少なくとも弾性材料に弾性変形が生じていれば、当該弾性変形に加えて塑性変形が生じていてもよい。
【0016】
シール部材20には、シール孔21内に加えて、端子収容部11の内壁に面する外周側にも、複数条(具体的には例えば3条)のリップ部23が形成されていてもよい。
【0017】
ところで、防水コネクタが多ピン対応のものであれば、端子収容部11と同様に、シール部材20のシール孔21についても、ピン数に対応する数のものが存在することになる。その場合に、防水コネクタの使用態様によっては、余剰のシール孔21が生じ得る。余剰のシール孔21は、電線が挿通されない未使用のシール孔21となるため、電線との密着による防水性を確保できない。そのため、未使用のシール孔21に対しては、図1に示すように、ダミー栓30が挿入されて、そのダミー栓30で未使用のシール孔21が塞がれることになる。
【0018】
(2)ダミー栓の構成例
次に、本実施形態に係るダミー栓30の構成例を説明する。
図3は、本実施形態に係るダミー栓30の構成例を示す説明図である。
【0019】
ダミー栓30は、絶縁性を有する樹脂材料(例えば、ポリブチレンテレフタレート:PBT)の一体成型加工によって形成されており、未使用のシール孔21を塞ぐために栓本体部31と、栓頭部32と、栓先端部33と、嵌合溝部34と、を備えて構成されている。
【0020】
栓本体部31は、シール孔21に挿入された状態で、そのシール孔21内に形成されたリップ部22を弾性変形させて当該リップ部22と密着するように構成されたものである。そのために、栓本体部31は、リップ部22の頂部の径aよりも大きい径c(具体的には、想定される電線と同等の径)の外周を有する円柱状に形成されている。また、栓本体部31は、シール孔21内に形成された複数条(具体的には例えば3条)のリップ部22の全てと密着する軸方向長さdを有する円柱状に形成されている。これにより、栓本体部31は、複数条のリップ部22の全てと弾性密着することになり、これによりシール部材20との間の密封性を十分に確保し得るようになる。
【0021】
栓頭部32は、栓本体部31よりもダミー栓30のシール孔21への挿入方向の後端側にて、その栓本体部31に連続するように形成されたもので、ダミー栓30のシール孔21への過挿入を防止するためのものである。そのために、栓頭部32は、栓本体部31の外径cよりも大きいサイズとなる平面形状に形成されている。栓頭部32の平面形状は、特に限定されるものではないが、例えば図例のように、直交する二方向のサイズe,fが互いに異なる平面形状を有していることが好ましい。このような平面形状であれば、狭ピッチで配置されたシール孔21にも好適に対応し得るようになる。
【0022】
栓先端部33は、栓頭部32とは逆の栓本体部31の端縁側に形成されたもので、ダミー栓30の先端となる部分である。栓先端部33は、ダミー栓30のシール孔21への挿入の容易化を図るべく、先端に向けて小径となるテーパー形状部分を有していることが好ましい。
【0023】
嵌合溝部34は、栓本体部31よりもダミー栓30のシール孔21への挿入方向の先端側で、その栓本体部31と栓先端部33との間に位置するように配されたもので、非弾性変形状態のシール孔21内のリップ部22と嵌合する凹溝状に形成されたものである。「非弾性変形状態」とは、リップ部22を構成する弾性材料に弾性変形が生じていない状態、または、弾性変形が生じていないと見做せる程度に弾性変形量が小さい状態のことである。嵌合溝部34を構成する凹溝状は、周方向の全周にわたって連続するように形成されているものとする。
また、嵌合溝部34は、1条のリップ部22と干渉せずに当該リップ部22と嵌合する溝幅を有している。つまり、嵌合溝部34を構成する凹溝状は、非弾性変形状態のリップ部22と嵌合すべく、1条分のリップ部22の幅よりも大きいサイズの溝幅hに形成されている。
さらに、嵌合溝部34は、嵌合相手となるリップ部22の突出量よりも大きい溝深さを有している。つまり、嵌合溝部34を構成する凹溝状は、非弾性変形状態のリップ部22と嵌合すべく、溝底がリップ部22の頂部の径aよりも小さい径gに形成されている。
なお、ここでは、嵌合溝部34が非弾性変形状態のリップ部22と嵌合する場合を例に挙げたが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、嵌合溝部34は、非弾性変形状態ではなく弾性変形が緩和された状態のリップ部22と嵌合するように形成されたものであってもよい。「弾性変形が緩和された状態」とは、栓本体部31がリップ部22を弾性変形させた状態に比べると弾性変形量が小さくなって当該弾性変形が緩和されているが、完全には非弾性変形状態となっておらず当該非弾性変形状態に比べると弾性変形が生じていると認められる状態のことをいう。
【0024】
嵌合溝部34を構成する凹溝状は、溝底に加えて、ダミー栓30のシール孔21への挿入方向の先端側における溝壁面34aと、その挿入方向の後端側における溝壁面34bと、を有する。そして、このような構成の凹溝状につき、嵌合溝部34は、挿入方向先端側の溝壁面34aと、挿入方向後端側の溝壁面34bとが、非対称に形成されている。さらに詳しくは、挿入方向後端側の溝壁面34bは、挿入方向先端側の溝壁面34aよりも大きな傾斜角を有している。つまり、挿入方向先端側の溝壁面34aが溝底に対して略直立するように形成されているのに対して、挿入方向後端側の溝壁面34bは、溝壁面34aよりも大きな傾斜角を有するように傾いて形成されている。このような凹溝状の嵌合溝部34を備えるダミー栓30は、詳細を後述するように、ダミー栓30のシール孔21への挿入の容易さと、そのシール孔21からの脱落のし難さとを、両立させ得るものとなる。なお、傾斜角の大きさは、特に限定されるものではなく、適宜設定されたものであればよい。
【0025】
(3)ダミー栓の使用態様
次に、本実施形態に係るダミー栓30の使用態様について説明する。
図4は、ダミー栓30の使用態様の一具体例を示す説明図である。
【0026】
ダミー栓30の使用にあたっては、まず、図4(a)に示すように、電線が挿通されない未使用のシール孔21に対して、そのシール孔21内に栓先端部33の側からダミー栓30を挿入する(図中の矢印C参照)。このとき、栓先端部33がテーパー形状部分を有していれば、シール孔21内へのダミー栓30の挿入の容易化が図れる。
【0027】
そして、シール孔21内へのダミー栓30の挿入を続けると、そのダミー栓30における嵌合溝部34が、シール孔21内におけるリップ部22の形成位置を通過する。このとき、嵌合溝部34における挿入方向後端側の溝壁面34bが傾いて形成されていれば、嵌合溝部34がリップ部22の形成位置を容易に通過し得るようになり、この点によってもシール孔21内へのダミー栓30の挿入の容易化が図れるようになる。
【0028】
シール孔21内へのダミー栓30の挿入は、図4(b)に示すように、栓頭部32が所定位置に達するまで行う。所定位置としては、栓頭部32が他部材(例えば、シール部材20の端面や図示せぬハウジング端面等)と係止する位置が挙げられる。栓頭部32が所定位置に達すると、嵌合溝部34は、シール孔21を突き抜けた位置に達する。そして、シール孔21内には、栓本体部31が位置する状態となる。これにより、シール孔21内に形成された全てのリップ部22は、弾性変形した状態で栓本体部31の外周に密着することになる。
【0029】
このように、シール孔21内にダミー栓30を挿入した状態では、栓本体部31が複数条のリップ部22の全てと弾性密着することになる。したがって、ダミー栓30は、シール部材20との間の密封性を十分に確保し得るようになる。つまり、電線が挿通されない未使用のシール孔21であっても、そのシール孔21内にダミー栓30を挿入した状態とすることで、そのダミー栓30との密着による防水性を担保することが可能となる。
【0030】
ところで、シール孔21内にダミー栓30を挿入した状態において、そのダミー栓30は、シール部材20(特に、シール孔21内のリップ部22)との摩擦力を利用して、シール孔21内に保持されている。したがって、その摩擦力を超える大きさの外力が加わると、図4(c)に示すように、シール孔21内から抜ける方向に向けて(図中の矢印D参照)、ダミー栓30移動してしまう可能性がある。
【0031】
ただし、本実施形態に係るダミー栓30は、シール孔21内から抜ける方向に移動しても、嵌合溝部34が以下に説明する抜け止め効果を発揮する。
【0032】
シール孔21内から抜ける方向にダミー栓30が移動して、嵌合溝部34がシール孔21内におけるリップ部22の形成位置まで達すると、複数条のうちの最初のリップ部22の形成位置に達した時点で、当該リップ部22と嵌合溝部34とが嵌合状態になる。さらに詳しくは、当該最初のリップ部22の形成位置に嵌合溝部34が達した時点で、そのリップ部22は、栓本体部31の外周面から嵌合溝部34の溝内空間に開放されて、非弾性変形状態または弾性変形が緩和された状態(以下「非弾性変形状態等」という。)となる。そして、非弾性変形状態等のリップ部22が嵌合溝部34の溝内空間に嵌まり込むことで、当該リップ部22と嵌合溝部34とが嵌合状態になる(図中のE部拡大図参照)。
【0033】
リップ部22と嵌合溝部34との嵌合のためには、当該嵌合溝部34が周方向の全周にわたって連続するように形成されていることが好ましい。これにより、リップ部22についても、全周にわたって非弾性変形状態等となり、その結果としてリップ部22の非弾性変形状態等を利用した抜け止め効果を十分に発揮し得るようになるからである。
また、リップ部22と嵌合溝部34との嵌合のためには、当該嵌合溝部34が嵌合相手となるリップ部22の突出量よりも大きい溝深さを有していることが好ましい。これにより、リップ部22の全突出量について非弾性変形状態とすることが可能となり、その結果としてリップ部22の非弾性変形状態を利用した抜け止め効果を十分に発揮し得るようになるからである。
さらに、リップ部22と嵌合溝部34との嵌合のためには、当該嵌合溝部34が少なくとも1条分のリップ部22と干渉せずに当該リップ部22と嵌合する溝幅を有していることが好ましい。これにより、少なくとも1条分のリップ部22の全幅について非弾性変形状態とすることが可能となり、その結果としてリップ部22の非弾性変形状態を利用した抜け止め効果を十分に発揮し得るようになるからである。
【0034】
リップ部22と嵌合溝部34とが嵌合状態になると、これによりダミー栓30はシール孔21内から抜ける方向への移動が制限される。つまり、ダミー栓30がさらに移動を続けるためには、リップ部22が嵌合溝部34における挿入方向先端側の溝壁面34aを乗り越えるように弾性変形するだけの外力をさらに加える必要がある。したがって、リップ部22と嵌合溝部34とが嵌合状態になることで、ダミー栓30に対する抜け止め効果が発揮されることになる。
【0035】
このとき、複数条のうちの最初のリップ部22が嵌合溝部34と嵌合するが、当該複数条のうちの残り(例えば他の2条)のリップ部22は、弾性変形した状態で栓本体部31の外周に密着したままの状態を維持する。したがって、嵌合溝部34による抜け止め効果を発揮しつつ、他のリップ部22による密封性は維持されたままとなるので、十分な防水性を担保することが可能となる。
【0036】
このように、嵌合溝部34は、非弾性変形状態等のリップ部22の嵌合を利用して抜け止め効果を発揮する。そのため、嵌合溝部34において、挿入方向先端側の溝壁面34aについては、挿入方向後端側の溝壁面34bのような傾斜角を有することなく、溝底に対して略直立するように形成されていることが好ましい。傾斜させないことで、リップ部22が溝壁面34aを乗り越え難くなるからである。
【0037】
その一方で、既述のように、嵌合溝部34の溝壁面34bについては、ダミー栓30の挿入容易化のために、傾斜角を有していることが好ましい。つまり、嵌合溝部34においては、挿入方向先端側の溝壁面34aと挿入方向後端側の溝壁面34bとが非対称に形成されており、溝壁面34aよりも溝壁面34bが大きな傾斜角を有していれば、シール孔21内へのダミー栓30の挿入容易化と、シール孔21内に挿入されたダミー栓30に対する良好な抜け止め効果の発揮とを、両立させることが実現可能となる。
【0038】
(4)本実施形態により得られる効果
本実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果が得られる。
【0039】
(a)本実施形態において、シール孔21を塞ぐためのダミー栓30は、栓本体部31の挿入方向先端側に非弾性変形状態等のリップ部22と嵌合する凹溝状の嵌合溝部34が形成されており、その嵌合溝部34とリップ部22との嵌合を利用して抜け止め効果を発揮するように構成されている。これにより、ダミー栓30の抜け止めのために、そのダミー栓30に例えば凸形状の係止部を設けるといった必要がなく、非常に簡素な構成でダミー栓30の抜け止め効果を発揮できる。
したがって、本実施形態によれば、コネクタ大型化や部品点数増加によるコストアップ等を抑制することができる。また、例えば凸形状の係止部がシール部材20を傷つけてしまうこともないので、組立時のシール部材20の傷発生のリスクを低く抑えることができ、防水性能の低下や挿入力増大による作業性低下等を招くおそれがない。
しかも、本実施形態によれば、簡素な構成であっても、栓本体部31にリップ部22が弾性密着することにより、十分な防水性を担保することが可能となる。
つまり、本実施形態によれば、非常に簡素な構成でダミー栓30の抜け止め効果を発揮でき、しかもダミー栓30による十分な防水性能等が得られるようになる。
【0040】
(b)本実施形態のように、嵌合溝部34が周方向の全周にわたって連続するように形成されていれば、リップ部22の非弾性変形状態等を利用した抜け止め効果を十分に発揮し得るようになる。つまり、簡素な構成でダミー栓30の抜け止め効果を発揮する上で、非常に好ましいものとなる。
【0041】
(c)本実施形態のように、栓本体部31が複数条のリップ部22と密着する軸方向長さを有し、嵌合溝部34が1条のリップ部22と干渉せずに当該リップ部22と嵌合する溝幅を有していれば、十分な防水性を担保しつつ、リップ部22の非弾性変形状態を利用した抜け止め効果を十分に発揮し得るようになる。つまり、簡素な構成でダミー栓30の抜け止め効果を発揮でき、しかもダミー栓30による十分な防水性能等が得られるようにする上で、非常に好ましいものとなる。
【0042】
(d)本実施形態のように、嵌合溝部34が嵌合相手となるリップ部22の突出量よりも大きい溝深さを有していれば、リップ部22の非弾性変形状態を利用した抜け止め効果を十分に発揮し得るようになる。つまり、簡素な構成でダミー栓30の抜け止め効果を発揮する上で、非常に好ましいものとなる。
【0043】
(e)本実施形態のように、嵌合溝部34において、挿入方向先端側の溝壁面34aと挿入方向後端側の溝壁面34bとが非対称に形成されており、溝壁面34aよりも溝壁面34bが大きな傾斜角を有していれば、シール孔21内へのダミー栓30の挿入容易化と、シール孔21内に挿入されたダミー栓30に対する良好な抜け止め効果の発揮とを、両立させることが実現可能となる。したがって、簡素な構成でダミー栓30の抜け止め効果を発揮でき、しかもダミー栓30による十分な防水性能等が得られるようにする上で、非常に好ましいものとなる。
【0044】
(f)本実施形態のように、栓頭部32における直交する二方向のサイズe,fが互いに異なる平面形状であれば、狭ピッチで配置されたシール孔21にも好適に対応し得るようになる。つまり、例えば未使用のシール孔21が狭ピッチで複数並んでいる場合に、小さいサイズfの方向に沿って栓頭部32が並ぶようにすることで、各シール孔21に挿入するダミー栓30における栓頭部32が互いに干渉することなく、各ダミー栓30をシール孔21に挿入することができる。しかも、その場合にであっても、大きいサイズeの方向に栓頭部32が延びていることで、栓頭部32の平面積を十分に確保でき、ダミー栓30による十分な防水性能等が得られるようにする上で好ましいものとなる。
【0045】
(5)変形例等
以上に、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0046】
上述の実施形態では、主としてダミー栓30について説明したが、本発明がこれに限定されることはなく、当該ダミー栓30を備える防水コネクタを構成することも可能である。具体的には、防水コネクタのハウジング部10に装着されたシール部材20のシール孔21にダミー栓30を挿入することで、当該防水コネクタを構成するようにしてもよい。このような構成の防水コネクタであれば、多ピン対応に好適なものとなり、例えば使用態様によって余剰のシール孔21が生じる場合であっても、そのシール孔21に対してダミー栓30を用いることによって、十分な防水性能等が得られるようになる。しかも、そのために、ダミー栓30に関する構成が複雑化してしまうこともない。
【符号の説明】
【0047】
10…ハウジング部、11…端子収容部、12…ランス部、20…シール部材、21…シール孔、22…リップ部、30…ダミー栓、31…栓本体部、32…栓頭部、33…栓先端部、34…嵌合溝部、34a…溝壁面、34b…溝壁面
図1
図2
図3
図4