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  • 特開-流体圧駆動装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019507
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】流体圧駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 21/06 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
F15B21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124274
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 智浩
【テーマコード(参考)】
3H082
【Fターム(参考)】
3H082AA25
3H082BB14
3H082CC05
3H082DB35
(57)【要約】
【課題】簡素な構成の流体圧駆動装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る流体圧駆動装置1は、内部空間を画定するケーシング11、及び前記ケーシング11内に移動可能に嵌装され、前記内部空間を往動室111と復動室112とに区分する可動体12を有する流体圧アクチュエータ10と、絶縁性を有する第1作動流体に電圧を印加することにより前記第1作動流体に流れを生じさせて、前記第1作動流体を前記往動室111に移動させる往動電気流体力学ポンプ20Aと、絶縁性を有する第2作動流体に電圧を印加することにより前記第2作動流体に流れを生じさせて、前記第2作動流体を前記復動室112に移動させる復動電気流体力学ポンプ20Bと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を画定するケーシング、及び前記ケーシング内に移動可能に嵌装され、前記内部空間を往動室と復動室とに区分する可動体を有する流体圧アクチュエータと、
絶縁性を有する第1作動流体に電圧を印加することにより前記第1作動流体に流れを生じさせて、前記第1作動流体を前記往動室に移動させる往動電気流体力学ポンプと、
絶縁性を有する第2作動流体に電圧を印加することにより前記第2作動流体に流れを生じさせて、前記第2作動流体を前記復動室に移動させる復動電気流体力学ポンプと、
を備える流体圧駆動装置。
【請求項2】
前記往動電気流体力学ポンプ及び前記復動電気流体力学ポンプは、外形形状が等しい複数のポンプモジュールを直列に接続してなる、請求項1に記載の流体圧駆動装置。
【請求項3】
隣接し合う2つの前記ポンプモジュールは、管継手により接続される、請求項2に記載の流体圧駆動装置。
【請求項4】
それぞれの前記ポンプモジュールに独立して電圧を印加する駆動回路をさらに備える、請求項2又は3に記載の流体圧駆動装置。
【請求項5】
前記往動電気流体力学ポンプと前記復動電気流体力学ポンプとは、前記第1作動流体又は前記第2作動流体に電圧を印加する作用流路の形状が異なる、請求項1から4のいずれかに記載の流体圧駆動装置。
【請求項6】
前記往動電気流体力学ポンプに供給される前記第1作動流体を貯留する往動流体タンクと、
前記復動電気流体力学ポンプに供給される前記第2作動流体を貯留する復動流体タンクと、
をさらに備える、請求項1から5のいずれかに記載の流体圧駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作動油等の流体圧によってアクチュエータを駆動する装置が様々な用途に広く利用されている。油圧アクチュエータの動作速度は、短い周期で流路を切り替えるサーボバルブのポジションの比率を調節することによって行われることが多い。また、油圧アクチュエータの動作速度を油圧ポンプを駆動するモータの回転数によって調節することも知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/176314号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるようにサーボバルブのポジション比率制御や油圧ポンプの回転数制御を行うよう構成すると、流体圧駆動装置が複雑となる。このため、本発明は、簡素な構成の流体圧駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る流体圧駆動装置は、内部空間を画定するケーシング、及び前記ケーシング内に移動可能に嵌装され、前記内部空間を往動室と復動室とに区分する可動体を有する流体圧アクチュエータと、絶縁性を有する第1作動流体に電圧を印加することにより前記第1作動流体に流れを生じさせて、前記第1作動流体を前記往動室に移動させる往動電気流体力学ポンプと、絶縁性を有する第2作動流体に電圧を印加することにより前記第2作動流体に流れを生じさせて、前記第2作動流体を前記復動室に移動させる復動電気流体力学ポンプと、を備える。
【0006】
上述の流体圧駆動装置において、前記往動電気流体力学ポンプ及び前記復動電気流体力学ポンプは、外形形状が等しい複数のポンプモジュールを直列に接続してなってもよい。
【0007】
上述の流体圧駆動装置において、隣接し合う2つの前記ポンプモジュールは、管継手により接続されてもよい。
【0008】
上述の流体圧駆動装置は、それぞれの前記ポンプモジュールに独立して電圧を印加する駆動回路をさらに備えてもよい。
【0009】
上述の流体圧駆動装置において、前記往動電気流体力学ポンプと前記復動電気流体力学ポンプとは、前記作動流体に電圧を印加する作用流路の形状が異なってもよい。
【0010】
上述の流体圧駆動装置は、前記往動電気流体力学ポンプに供給される前記作動流体を貯留する往動流体タンクと、前記復動電気流体力学ポンプに供給される前記作動流体を貯留する復動流体タンクと、をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡素な構成の流体圧駆動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施系形態に係る流体圧駆動装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明をする。図1は、本発明の一実施系形態に係る流体圧駆動装置1の構成を示す模式図である。
【0014】
流体圧駆動装置1は、流体圧により機械的変異を生じる流体圧アクチュエータ10と、流体圧アクチュエータ10に第1方向の変位(往動)を生じさせるために第1作動流体を供給する往動電気流体力学ポンプ20Aと、流体圧アクチュエータ10に第1方向と反対向きの第2方向の変位(復動)を生じさせるために第2作動流体を供給する復動電気流体力学ポンプ20Bと、往動電気流体力学ポンプ20Aに供給される第1作動流体を貯留する往動流体タンク30Aと、復動電気流体力学ポンプ20Bに供給される第2作動流体を貯留する復動流体タンク30Bと、往動電気流体力学ポンプ20Aに電圧を印加する往動駆動回路40Aと、復動電気流体力学ポンプ20Bに電圧を印加する往動駆動回路40Bと、を備える。
【0015】
流体圧駆動装置1は、復動電気流体力学ポンプ20Bを停止した状態で往動電気流体力学ポンプ20Aを駆動することにより、流体圧アクチュエータ10に第1方向の変位を生じさせ、往動電気流体力学ポンプ20Aを停止した状態で復動電気流体力学ポンプ20Bを駆動することにより、流体圧アクチュエータ10に第2方向の変位を生じさせる。
【0016】
流体圧アクチュエータ10は、内部空間を画定するケーシング11と、ケーシング11内に移動可能に嵌装され、ケーシング11の内部空間を第1差動流体が供給される往動室111と第2作動流体が供給される復動室112とに区分する可動体12と、可動体12の移動を機械的変位として外部に伝達する伝達部材13と、を有する構成とされ得る。本実施形態において、ケーシング11は両端が封止される円筒状のシリンダであり、可動体12は、円盤状乃至長さが小さい円柱状のピストンであり、伝達部材13は可動体から復動室112を貫通してシリンダの先端から外部に延出するロッドである。つまり、本実施形態の流体圧アクチュエータ10は、直線動作を生じる流体圧シリンダである。
【0017】
往動電気流体力学ポンプ20Aは、絶縁性を有する第1作動流体に電圧を印加することにより作動流体に流れを生じさせて、第1作動流体を往動室111に移動させる。往動電気流体力学ポンプ20Aは、直列に配置され、それぞれ第1作動流体に電圧を印加する複数のポンプモジュール21と、隣接し合うポンプモジュール21同士をそれぞれ接続する複数の接続部材22と、を備える。つまり、本実施形態において、各ポンプモジュール21は分離可能なモジュールにより構成される。往動電気流体力学ポンプ20Aが直列に配置される複数のポンプモジュール21を有することによって第1作動流体を段階的に加圧することができるので、往動電気流体力学ポンプ20Aの吐出圧力を大きくすることができる。なお、図示する往動電気流体力学ポンプ20Aは、3つのポンプモジュール21を有するが、ポンプモジュール21の数は特に限定されない。また、往動電気流体力学ポンプ20Aは、ポンプモジュール21の数を調整することによって、吐出特性を容易に変更することができるので、流体圧アクチュエータ10を要求される速度及びトルクで動作させられる適切な吐出特性を容易且つ安価に実現できる。
【0018】
ポンプモジュール21は、絶縁材料で形成され、第1作動流体に電圧を印加する作用流路211を画定する流路形成部材212と、作用流路211に電界を印加する一対の電極(第1電極213及び第2電極214)と、絶縁材料で形成され、流路形成部材212を収容する筒状のケーシング215と、ケーシング215の両端に一体に設けられ、接続部材22に保持される一対の固定構造部216と、を有する。
【0019】
往動電気流体力学ポンプ20Aにおいて、各ポンプモジュール21の固定構造部216はすべて同一の形状を有することが好ましく、さらにケーシング215もすべて同一の形状を有することがより好ましいが、流路形成部材212(特に作用流路211)及び電極213,214は、ポンプモジュール21ごとに異なる形状を有してもよい。また、図示する例において、全てのポンプモジュール21の第1電極213及び第2電極214は、同じものであるが、第1電極213及び第2電極214のいずれか又は両方の形状が作用流路211に対応して異なっていてもよい。つまり、往動電気流体力学ポンプ20Aは、外形形状が等しく、内部の形状、特に作用流路211の形状が異なるポンプモジュール21を直列に接続してなるものであってもよい。往動電気流体力学ポンプ20Aの特性は、作用部の組み合わせによって異なるものとなる。したがって、比較的少数の異なる仕様のポンプモジュール21を用意し、その組み合わせを選択するだけで、多様な往動電気流体力学ポンプ20Aを実現することができる。また、ポンプモジュール21の少なくとも固定構造部216の形状を、好ましくは面間寸法も、典型的には全体の外形形状を統一することによって、ポンプモジュール21の選択により、流体圧駆動装置1の他の構成要素の設計に影響を与えることなく、往動電気流体力学ポンプ20Aの仕様だけを変更し、流体圧駆動装置1の出力特性を調整することができるので、流体圧駆動装置1全体のパッケージが容易となる。
【0020】
本実施形態において、往動電気流体力学ポンプ20Aの作用流路211は、下流側に向かって径が一定の割合で減少する円錐台状の流路である。、作用流路211の断面積が下流側に向かって減少する場合、作用流路211内で第1作動流体の圧力を増大して吐出圧力をより大きくすることができる。一方、作用流路211が一定の断面積を有する場合、流路抵抗が小さく、且つ第1作動流体に均等に電圧を作用させられるので、比較的大きい吐出流量を得ることができる。このような作用流路211の形状が異なるポンプモジュール21を組み合わせることによって、所望の吐出特性を有する往動電気流体力学ポンプ20Aが得られる。
【0021】
ポンプモジュール21における差圧を大きくする場合、作用流路211の入口の径(円相当径)の出口の径に対する比を5以上20以下とすることが好ましく、8以上15以下とすることがより好ましい。作用流路211の径の流路長さに対する比としては、例えば1以上10以下、好ましくは2以上8以下とすることができる。このような範囲内において、作用流路211の流路長さ当たりの径の減少率を大きくすることによって、ポンプモジュール21における差圧を効率よく大きくできる。
【0022】
流路形成部材212は、ケーシング215の内部を区分するよう配設され、ケーシング215の上流側の空間と下流側の空間とを連通するよう、作用流路211が貫通して形成される。また、流路形成部材212は、作用流路211の両側に、第1電極213及び第2電極214をそれぞれ保持する保持構造を有することが好ましい。
【0023】
流路形成部材212は、第1作動流体が作用流路211のみを通過可能とするよう、ケーシング215との間に隙間を生じないよう配設されることが好ましい。このため、流路形成部材212は、ケーシング215と一体に、例えば削り出し等の方法で形成され得る。また、多様な形状の作用流路211の形成を容易にするために、流路形成部材212は、独立して形成された後、例えば圧入等の方法でケーシング215の内部に固定されてもよい。
【0024】
第1電極213と第2電極214との間には、第1電極213を負とする電圧が印加される。第1電極213及び第2電極214は、作用流路211の入口及び出口を覆い、第1作動流体が通過できる開口又は隙間を有する形状を有し、好ましくは第1作動流体との接触面積が大きいメッシュ状とされる。具体的には、第1電極213及び第2電極214は、金属金網、好ましくは比較的強度が大きいステンレス金網によって形成することができる。第1電極213と第2電極214とは並行且つ第1作動流体の流れ方向に略垂直に配置されることが好ましい。
【0025】
第1電極213及び第2電極214の開口率としては、15%以上80%以下が好ましく、20%以上65%以下がより好ましく、25%以上50%以下さらに好ましい。これによって、第1電極213による流路抵抗の増大を抑制しつつ、第1電極213と第1作動流体との接触面積を確保して、第1作動流体に差圧を付与することができる。また、第1電極213及び第2電極214は、第1作動流体を流れやすくするために、部分的に大きい開口又は隙間を有してもよい。具体例として、第1電極213は、メッシュ状の材料に開口を形成したものであってもよい。なお、第1電極213と第2電極214とは開口率等が異なってもよい。
【0026】
第1電極213及び第2電極214と接続部材22との流路方向の隔離距離としては、第1電極213及び第2電極214に印加される電圧にもよるが、例えば第1電極213と第2電極214との距離の2倍以上、具体的には10mm以上とされ得る。
【0027】
ケーシング215は、流路方向前後に延び、金属を含み得る接続部材22と第1電極213及び第2電極214との距離を確保することによって、接続部材22の影響を受けずに第1電極213及び第2電極214により作用流路211内に理想的な電界を形成することを可能にする。このため、ケーシング215は、作用流路211の前後に、作用流路211と比べて断面積が大きく流路抵抗が小さい流路を画定する。
【0028】
ケーシング215は、第1電極213及び第2電極214を往動駆動回路40Aに接続するための配線部材が貫通する配線孔を有する。この配線孔は、第1作動流体の漏出を防止するために、封止材等を用いて封止されてもよく、配線部材又は流路形成部材212に封止構造を設けることによって第1作動流体の漏出が防止されてもよい。
【0029】
固定構造部216は、作用流路211内に形成される電界に影響を与えないよう、絶縁材料から形成されることが好ましい。また、固定構造部216は、ポンプモジュール21の長さをできるだけ小さくするために、ケーシング215と一体に形成されることが好ましい。これにより、所望の特性を有する往動電気流体力学ポンプ20Aを、比較的小型に構成することができる。
【0030】
固定構造部216は、接続部材22と共に、管継手、つまり配管を接続するための継手構造と同様の構造を構成することが好ましい。このように、隣接し合う2つのポンプモジュール21を管継手により接続することにより、接続部材22等のポンプモジュール21を接続するための部材を安価且つ容易に入手することが可能となるとともに、特別な知識がなくてもポンプモジュール21を接続できる。
【0031】
具体例として、固定構造部216は、例えばねじ、フランジ等であってもよいが、ISO2852に規定される形状を有するヘルールであることが好ましい。固定構造部216としてヘルールを用いることにより、ポンプモジュール21の容易且つ確実な接続が可能となる。また、固定構造部216としてヘルールを用いることにより、固定構造部216が小型であると共に、接続部材22の第1電極213及び第2電極214側への突出量を小さくできるため、ポンプモジュール21を小型化することができる。
【0032】
また、固定構造部216は、往動電気流体力学ポンプ20Aの両端において、往動電気流体力学ポンプ20Aを第1作動流体の流路に接続するためにも利用される。また、往動電気流体力学ポンプ20Aの固定構造部216と異なる継手を用いる流路に接続するために、一端に流路に用いられる継手を有し、他端に固定構造部216と同様の構造を有するアダプタ(不図示)を使用してもよい。このようなアダプタは、ケーシング215の口径から流路の口径に変換するレデューサを有するものであってもよい。
【0033】
接続部材22は、対向して配置される2つの固定構造部216を保持することにより、隣接する2つのポンプモジュール21を接続する。接続部材22としては、固定構造部216に対応する部材が用いられる。また、接続部材22は、ポンプモジュール21間を堅固に接続するために、金属によって形成され得る。例として、固定構造部216がヘルールである場合、接続部材22としては、ISO2852に規定されるヘルール用クランプバンドが用いられる。ヘルール用クランプバンドは、流路方向の幅が小さいため、作用流路211内に形成される電界に影響を与えにくい。また、固定構造部216がネジであれば接続部材22としてソケット又はユニオンが、固定構造部216がフランジであれば接続部材22として複数組のボルトナットが用いられ得る。
【0034】
接続部材22により接続される2つのポンプモジュール21の固定構造部216の間には、ポンプモジュール21の隙間を封止するガスケット23が介設され得る。ガスケット23は、ポンプモジュール21の隙間を封止する。ガスケット23も、固定構造部216に対応する部材が用いられる。また、ガスケット23は、固定構造部216及び接続部材22の構成によっては省略され得る。
【0035】
復動電気流体力学ポンプ20Bは、絶縁性を有する第2作動流体に電圧を印加することにより作動流体に流れを生じさせて、第2作動流体を復動室112に移動させる。復動電気流体力学ポンプ20Bは、往動電気流体力学ポンプ20Aと同様の構成とされる。このため、復動電気流体力学ポンプ20Bについて、往動電気流体力学ポンプ20Aと同様の構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0036】
復動電気流体力学ポンプ20Bは、往動電気流体力学ポンプ20Aと定格出力(最適条件における定常運転時の流量と圧力の積)が略等しいことが好ましい。また、復動電気流体力学ポンプ20Bは、往動電気流体力学ポンプ20Aと外形形状が等しく、作用流路211の形状が異なることが好ましい。つまり、往動電気流体力学ポンプ20Aと復動電気流体力学ポンプ20Bとは、同数の基本設計が共通すし、作用流路211以外の流路特性が略等しいポンプモジュール21からなり、且つポンプモジュール21の作用流路211の形状が異なることが好ましい。図1に示す流体圧駆動装置1では、往動駆動回路40A及び往動駆動回路40Bの出力が同じである場合、往動電気流体力学ポンプ20Aは、径が下流側に向かって減少する作用流路211を有する3つのポンプモジュール21からなり、比較的吐出圧力が大きいのに対し、復動電気流体力学ポンプ20Bは、径が一定の作用流路211を有する3つのポンプモジュール21からなり、比較的吐出流量が大きい。つまり、本実施形態の流体圧駆動装置1は、伝達部材13を突出(第1方向の変位)させる際に大きなトルクを発生し、伝達部材13を後退(第2方向の変位)させる際に駆動速度を大きくする。このように、往動電気流体力学ポンプ20Aと復動電気流体力学ポンプ20Bの出力特性を作用流路211の形状の選択により調整することによって、ポンプ全体の寸法ひいては接続配管の変更や、往動駆動回路40A及び往動駆動回路40Bの出力特性の変更を伴うことなく、容易に流体圧アクチュエータ10の動作の速度及びトルクをその動作方向ごとに設定することができる。
【0037】
また、流体圧駆動装置1において、往動電気流体力学ポンプ20Aが流体圧アクチュエータ10を第1方向に駆動する第1作動流体と、復動電気流体力学ポンプ20Bが流体圧アクチュエータ10を第2方向に駆動する第2作動流体と、の物性を異ならせることによっても、流体圧アクチュエータ10の第1方向の変位の出力特性と第2方向の変位の出力特性を異ならせ得る。
【0038】
往動流体タンク30Aは第1作動流体を貯留し、復動流体タンク30Bは第2作動流体を貯留する。往動流体タンク30A及び復動流体タンク30Bの容量としては、流体圧アクチュエータ10の最大ストロークに必要な第1作動流体又は第2作動流体の供給量以上とされ、系内の第1作動流体又は第2作動流体の全量を収容できる容量とされてもよい。
【0039】
往動駆動回路40Aは、往動電気流体力学ポンプ20Aの複数のポンプモジュール21に個別に電圧を印加し、往動駆動回路40Bは、復動電気流体力学ポンプ20Bの複数のポンプモジュール21に個別に電圧を印加する。往動駆動回路40Aと往動駆動回路40Bとは、同じ構成を有する独立した回路であってもよく、共通の電源から往動電気流体力学ポンプ20A及び復動電気流体力学ポンプ20Bのポンプモジュール21に電圧を印加可能する一体の回路であってもよい。
【0040】
往動駆動回路40A及び往動駆動回路40Bがポンプモジュール21ごとに電圧の印加の有無を選択可能とすることによって、電圧を印加するポンプモジュール21の数及び組み合わせに応じて流体圧アクチュエータ10の動作速度及びトルクを変更できる。また、これにより、流体圧駆動装置1のエネルギー効率も向上できる。
【0041】
往動駆動回路40A及び往動駆動回路40Bは、それぞれのポンプモジュール21に印加される電圧を調整可能に構成されてもよい。例として、各ポンプモジュール21に電圧を印加するスイッチを高速にオンオフし、そのデューティ(オンする時間の比率)を制御することによって、ポンプモジュール21に印加される電圧の実効値を調整することができる。また、往動駆動回路40A及び往動駆動回路40B、例えばオペアンプ等により連続して出力される電圧の値を調整可能に構成されてもよい。このように、ポンプモジュール21に印加される電圧を調整可能とすることによって、無段階に吐出流量及び吐出圧力を選択することが可能となる。この場合であっても、駆動するポンプモジュール21の数を変更することにより、流量と圧力の関係を最適化したり、エネルギー効率を向上する効果が得られる。
【0042】
以上のように、流体圧駆動装置1は、往動電気流体力学ポンプ20Aと復動電気流体力学ポンプ20Bとによって流体圧アクチュエータ10を駆動する構成としたことによって、流体圧アクチュエータ10以外にモータ等の機械的な構成要素を必要としないため、装置構成が簡素である。また、往動電気流体力学ポンプ20Aが往動の速度及びトルクを定め、復動電気流体力学ポンプ20Bが復動の速度及びトルクを定めるので、流体圧アクチュエータ10の動作を適切に設定することできる。
【0043】
以上、本発明の好ましい各実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0044】
本発明に係る流体圧駆動装置において、流体圧アクチュエータは、流体圧シリンダに限定されず、例えば流体圧により回転動作を生じるロータリアクチュエータ等であってもよい。
【0045】
本発明に係る流体圧駆動装置において、第1作動流体と第2作動流体とは同じ流体であってもよく、この場合、往動流体タンクと復動流体タンクとを一体にしてもよく、この共通タンクは、系内の作動流体の熱膨張による体積変化を吸収できる最小限の容量を有するものとされてもよい。
【0046】
本発明に係る流体圧駆動装置において、往動電気流体力学ポンプ及び復動電気流体力学ポンプは、単一のポンプモジュールからなってもよく、複数の作用流路が分離不能に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 流体圧駆動装置
10 流体圧アクチュエータ
11 ケーシング
111 往動室
112 復動室
12 可動体
13 伝達部材
20A 往動電気流体力学ポンプ
20B 復動電気流体力学ポンプ
21 ポンプモジュール
211 作用流路
212 流路形成部材
213 第1電極
214 第2電極
215 ケーシング
216 固定構造部
22 接続部材
23 ガスケット
30A 往動流体タンク
30B 復動流体タンク
40A 往動駆動回路
40B 往動駆動回路
図1