(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019510
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】光ファイバ特性測定システム
(51)【国際特許分類】
G01D 5/353 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
G01D5/353 B
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124277
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 芳宏
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103BA41
2F103CA06
2F103CA07
2F103CA09
2F103EB02
2F103EB11
2F103EB18
2F103EC09
2F103EC10
2F103ED01
2F103ED27
2F103ED34
2F103ED36
2F103FA02
(57)【要約】
【課題】大幅なコスト上昇を招くこと無く、且つ簡単な構成で、従来よりも被測定対象物の測定可能範囲を拡げることができる光ファイバ特性測定システムを提供する。
【解決手段】光ファイバ特性測定システム1は、プローブ光L1を出射する出射ポートと、被測定光ファイバFUTの一端E1が接続され、ポンプ光L2を出射するとともに被測定光ファイバFUTで生ずるブリルアン散乱光が入射される入出射ポートとを備える光ファイバ特性測定装置10と、一端E11が出射ポートに接続されてプローブ光L1を被測定光ファイバFUTの他端E2に向けて導く送信用光ファイバ20と、送信用光ファイバ20の他端E12と被測定光ファイバFUTの他端E2との間に設けられ、送信用光ファイバ20によって導かれたプローブ光L1を被測定光ファイバFUTの他端E2に入射させる光アイソレータ30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ光を出射する出射ポートと、被測定光ファイバの一端が接続され、ポンプ光を出射するとともに前記被測定光ファイバで生ずる誘導ブリルアン散乱光が入射される入出射ポートとを備える光ファイバ特性測定装置と、
一端が前記出射ポートに接続されて前記プローブ光を前記被測定光ファイバの他端に向けて導く第1光ファイバと、
前記第1光ファイバの他端と前記被測定光ファイバの他端との間に設けられ、前記第1光ファイバによって導かれた前記プローブ光を前記被測定光ファイバの他端に入射させる光アイソレータと、
を備える光ファイバ特性測定システム。
【請求項2】
前記光アイソレータは、前記第1光ファイバの前記一端から前記光アイソレータまでの光路長よりも前記光アイソレータから前記被測定光ファイバの前記他端までの光路長が短くなるように配置される請求項1記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項3】
前記光アイソレータは、前記光アイソレータから前記被測定光ファイバの前記他端までの間において、前記プローブ光と前記ポンプ光との相関ピークが発生しない位置に配置される請求項1又は請求項2記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項4】
前記被測定光ファイバ及び前記第1光ファイバは、1本の多芯ファイバ又は1本のマルチコアファイバを用いて実現される、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項5】
前記第1光ファイバによって導かれる前記プローブ光を増幅する光増幅器を備える、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項6】
前記光ファイバ特性測定装置と前記光増幅器とを接続するケーブルを備えており、
前記光ファイバ特性測定装置は、前記ケーブルを介して、前記光増幅器に対する電源供給と前記光増幅器に対する制御信号の送信とを行う、
請求項5記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項7】
前記光増幅器には、外部電源から電源が供給され、
前記光ファイバ特性測定装置は、前記光増幅器に対する制御信号を無線信号によって送信する、
請求項5記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項8】
被測定光ファイバの一端が接続され、プローブ光を出射する第1出射ポートと、ポンプ光を出射する第2出射ポートと、前記被測定光ファイバで生ずる誘導ブリルアン散乱光が入射される入射ポートとを備える光ファイバ特性測定装置と、
一端が前記第2出射ポートに接続されて前記ポンプ光を前記被測定光ファイバの他端に向けて導く第2光ファイバと、
一端が前記入射ポートに接続されて前記被測定光ファイバで生ずる誘導ブリルアン散乱光を前記入射ポートに導く第3光ファイバと、
前記第2光ファイバによって導かれた前記ポンプ光を前記被測定光ファイバの他端に入射させ、前記被測定光ファイバの他端から出射される誘導ブリルアン散乱光を前記第3光ファイバの他端に入射させる光サーキュレータと、
を備える光ファイバ特性測定システム。
【請求項9】
前記光サーキュレータは、前記第2光ファイバの前記一端から前記光サーキュレータまでの光路長よりも前記光サーキュレータから前記被測定光ファイバの前記他端までの光路長が短くなるように配置される請求項8記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項10】
前記光サーキュレータは、前記光サーキュレータから前記被測定光ファイバの前記他端までの間において、前記プローブ光と前記ポンプ光との相関ピークが発生しない位置に配置される請求項8又は請求項9記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項11】
前記被測定光ファイバ、前記第2光ファイバ、及び前記第3光ファイバは、1本の多芯ファイバ又は1本のマルチコアファイバを用いて実現される、請求項8から請求項10の何れか一項に記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項12】
前記第2光ファイバによって導かれる前記ポンプ光を増幅する光増幅器を備える、請求項8から請求項11の何れか一項に記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項13】
前記光ファイバ特性測定装置と前記光増幅器とを接続するケーブルを備えており、
前記光ファイバ特性測定装置は、前記ケーブルを介して、前記光増幅器に対する電源供給と前記光増幅器に対する制御信号の送信とを行う、
請求項12記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項14】
前記光増幅器には、外部電源から電源が供給され、
前記光ファイバ特性測定装置は、前記光増幅器に対する制御信号を無線信号によって送信する、
請求項12記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項15】
プローブ光を出射する第1出射ポートと、ポンプ光を出射する第2出射ポートと、被測定光ファイバで生ずる誘導ブリルアン散乱光が入射される入射ポートとを備える光ファイバ特性測定装置と、
一端が前記第1出射ポートに接続されて前記プローブ光を前記被測定光ファイバの一端に向けて導く第1光ファイバと、
前記第1光ファイバの他端と前記被測定光ファイバの一端との間に設けられ、前記第1光ファイバによって導かれた前記プローブ光を前記被測定光ファイバの一端に入射させる光アイソレータと、
一端が前記第2出射ポートに接続されて前記ポンプ光を前記被測定光ファイバの他端に向けて導く第2光ファイバと、
一端が前記入射ポートに接続されて前記被測定光ファイバで生ずる誘導ブリルアン散乱光を前記入射ポートに導く第3光ファイバと、
前記第2光ファイバによって導かれた前記ポンプ光を前記被測定光ファイバの他端に入射させ、前記被測定光ファイバの他端から出射される誘導ブリルアン散乱光を前記第3光ファイバの他端に入射させる光サーキュレータと、
を備える光ファイバ特性測定システム。
【請求項16】
前記光アイソレータは、前記第1光ファイバの前記一端から前記光アイソレータまでの光路長よりも前記光アイソレータから前記被測定光ファイバの前記一端までの光路長が短くなるように配置され、
前記光サーキュレータは、前記第2光ファイバの前記一端から前記光サーキュレータまでの光路長よりも前記光サーキュレータから前記被測定光ファイバの前記他端までの光路長が短くなるように配置される、
請求項15記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項17】
前記光アイソレータは、前記光アイソレータから前記被測定光ファイバの前記一端までの間において、前記プローブ光と前記ポンプ光との相関ピークが発生しない位置に配置され、
前記光サーキュレータは、前記光サーキュレータから前記被測定光ファイバの前記他端までの間において、前記プローブ光と前記ポンプ光との相関ピークが発生しない位置に配置される請求項15又は請求項16記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項18】
前記第1光ファイバ、前記第2光ファイバ、及び前記第3光ファイバは、1本の多芯ファイバ又は1本のマルチコアファイバを用いて実現される、請求項15から請求項17の何れか一項に記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項19】
前記第1光ファイバによって導かれる前記プローブ光を増幅する第1光増幅器と、
前記第2光ファイバによって導かれる前記ポンプ光を増幅する第2光増幅器と、
を備える請求項15から請求項18の何れか一項に記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項20】
前記光ファイバ特性測定装置と前記第1光増幅器及び前記第2光増幅器とを接続するケーブルを備えており、
前記光ファイバ特性測定装置は、前記ケーブルを介して、前記第1光増幅器及び前記第2光増幅器に対する電源供給と前記第1光増幅器及び前記第2光増幅器に対する制御信号の送信とを行う、
請求項19載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項21】
前記第1光増幅器及び前記第2光増幅器には、外部電源から電源が供給され、
前記光ファイバ特性測定装置は、前記第1光増幅器及び前記第2光増幅器に対する制御信号を無線信号によって送信する、
請求項19記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項22】
前記プローブ光及び前記ポンプ光は共に、周波数変調された光である、請求項1から請求項21の何れか一項に記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項23】
前記プローブ光は連続光であり、前記ポンプ光はパルス光である、請求項1から請求項22の何れか一項に記載の光ファイバ特性測定システム。
【請求項24】
連続光又はパルス光のポンプ光を出射する第1ポートと、被測定光ファイバで生ずる自然ブリルアン散乱光が入射される第2ポートとを備える光ファイバ特性測定装置と、
一端が前記第1ポートに接続され、前記ポンプ光を前記被測定光ファイバの一端に向けて導く第2光ファイバと、
一端が前記第2ポートに接続されて前記被測定光ファイバで生ずる自然ブリルアン散乱光を前記第2ポートに導く第3光ファイバと、
前記第2光ファイバによって導かれた前記ポンプ光を前記被測定光ファイバの一端に入射させ、前記被測定光ファイバの一端から出射される自然ブリルアン散乱光を前記第3光ファイバの他端に入射させる光サーキュレータと、
を備える光ファイバ特性測定システム。
【請求項25】
前記光サーキュレータは、前記第2光ファイバの前記一端から前記光サーキュレータまでの光路長よりも前記光サーキュレータから前記被測定光ファイバの前記一端までの光路長が短くなるように配置される請求項24に記載の光ファイバ特性測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ特性測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバに光を入射させることによって発生するブリルアン散乱光は、光ファイバの温度や歪みの変化によってスペクトル(スペクトルのパワーレベルが最大となる周波数)が変化する。このような性質を利用した光ファイバ特性測定装置は、ブルリアン散乱光の周波数の変化(ブリルアン周波数シフト(BFS))を光ファイバの長さ方向に亘って検出することで、光ファイバの長さ方向の温度分布や歪み分布を測定する。
【0003】
このような光ファイバ特性測定装置の1つに、以下の特許文献1,2に開示されたBOCDA(Brillouin Optical Correlation Domain Analysis)方式のものがある。この方式の光ファイバ特性測定装置は、周波数変調された光(ポンプ光及びプローブ光)を光ファイバの両端からそれぞれ入射させる。そして、ポンプ光及びプローブ光の変調位相が一致する位置(「相関ピーク」が現れる位置)において、プローブ光が誘導ブリルアン散乱現象により増幅される性質を利用して光ファイバの特性を測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6791218号公報
【特許文献2】特許第5522063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光ファイバ特性測定装置は、仕様で謳われている最大測定長(特性を測定可能な光ファイバの最大長)よりも長さが長い光ファイバの特性を測定することはできない。上述したBOCDA方式の光ファイバ特性測定装置では、被測定対象物に敷設される光ファイバ(被測定光ファイバ)の両端を光ファイバ特性測定装置に接続し、周波数変調された光を被測定光ファイバの両端からそれぞれ入射させる必要がある。このため、BOCDA方式の光ファイバ特性測定装置は、基本的に、直線距離で最大測定長の半分の長さよりも遠方に存在する被測定対象物の測定を行うことができないという問題がある。尚、被測定対象物とは、例えば、橋梁等の構造物や飛行機等の、温度分布や歪み分布の測定対象となっている物である。
【0006】
ここで、上述した特許文献2では、基地局以外にリモート局を設け、被測定光ファイバの両端をリモート局に接続することで、遠隔地に存在する被測定対象物の測定を可能としている。このため、上述した特許文献2に開示された技術を用いれば、基地局(光ファイバ特性測定装置)から直線距離で最大測定長の半分の長さよりも遠方に存在する被測定対象物の測定を行うことが可能になるとも考えられる。
【0007】
しかしながら、上述した特許文献2では、被測定光ファイバの両端に入射させるポンプ光とプローブ光とを、偏波状態を異ならせて偏波保持ファイバを用いて基地局からリモート局に伝送する必要があるため、コスト上昇を招くという問題がある。また、偏波クロストーク(消光比)の影響によって基地局とリモート局との距離が制限(例えば、1km程度に制限)されてしまうため、用途が限定されてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、大幅なコスト上昇を招くこと無く、且つ簡単な構成で、従来よりも被測定対象物の測定可能範囲を拡げることができる光ファイバ特性測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1態様による光ファイバ特性測定システム(1、1A~1C)は、プローブ光(L1)を出射する出射ポート(P11)と、被測定光ファイバ(FUT)の一端(E1)が接続され、ポンプ光(L2)を出射するとともに前記被測定光ファイバで生ずる誘導ブリルアン散乱光(BR)が入射される入出射ポート(P12)とを備える光ファイバ特性測定装置(10)と、一端(E11)が前記出射ポートに接続されて前記プローブ光を前記被測定光ファイバの他端(E2)に向けて導く第1光ファイバ(20)と、前記第1光ファイバの他端(E12)と前記被測定光ファイバの他端との間に設けられ、前記第1光ファイバによって導かれた前記プローブ光を前記被測定光ファイバの他端に入射させる光アイソレータ(30)と、を備える。
【0010】
また、本発明の第1態様による光ファイバ特性測定システムは、前記光アイソレータが、前記第1光ファイバの前記一端から前記光アイソレータまでの光路長よりも前記光アイソレータから前記被測定光ファイバの前記他端までの光路長が短くなるように配置される。
【0011】
また、本発明の第1態様による光ファイバ特性測定システムは、前記光アイソレータが、前記光アイソレータから前記被測定光ファイバの前記他端までの間において、前記プローブ光と前記ポンプ光との相関ピークが発生しない位置に配置される。
【0012】
また、本発明の第1態様による光ファイバ特性測定システムは、前記被測定光ファイバ及び前記第1光ファイバが、1本の多芯ファイバ(60)又は1本のマルチコアファイバを用いて実現される。
【0013】
また、本発明の第1態様による光ファイバ特性測定システムは、前記第1光ファイバによって導かれる前記プローブ光を増幅する光増幅器(70A)を備える。
【0014】
また、本発明の第1態様による光ファイバ特性測定システムは、前記光ファイバ特性測定装置と前記光増幅器とを接続するケーブル(CB)を備えており、前記光ファイバ特性測定装置が、前記ケーブルを介して、前記光増幅器に対する電源供給と前記光増幅器に対する制御信号の送信とを行う。
【0015】
また、本発明の第1態様による光ファイバ特性測定システムは、前記光増幅器には、外部電源から電源が供給され、前記光ファイバ特性測定装置が、前記光増幅器に対する制御信号を無線信号によって送信する。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の第2態様による光ファイバ特性測定システム(2、2A~2C)は、被測定光ファイバ(FUT)の一端(E1)が接続され、プローブ光(L1)を出射する第1出射ポート(P11)と、ポンプ光(L2)を出射する第2出射ポート(P13)と、前記被測定光ファイバで生ずる誘導ブリルアン散乱光(BR)が入射される入射ポート(P14)とを備える光ファイバ特性測定装置(10A)と、一端(E21)が前記第2出射ポートに接続されて前記ポンプ光を前記被測定光ファイバの他端(E2)に向けて導く第2光ファイバ(40A)と、一端(E31)が前記入射ポートに接続されて前記被測定光ファイバで生ずる誘導ブリルアン散乱光を前記入射ポートに導く第3光ファイバ(40B)と、前記第2光ファイバによって導かれた前記ポンプ光を前記被測定光ファイバの他端に入射させ、前記被測定光ファイバの他端から出射される誘導ブリルアン散乱光を前記第3光ファイバの他端(E32)に入射させる光サーキュレータ(50)と、を備える。
【0017】
また、本発明の第2態様による光ファイバ特性測定システムは、前記光サーキュレータが、前記第2光ファイバの前記一端から前記光サーキュレータまでの光路長よりも前記光サーキュレータから前記被測定光ファイバの前記他端までの光路長が短くなるように配置される。
【0018】
また、本発明の第2態様による光ファイバ特性測定システムは、前記光サーキュレータが、前記光サーキュレータから前記被測定光ファイバの前記他端までの間において、前記プローブ光と前記ポンプ光との相関ピークが発生しない位置に配置される。
【0019】
また、本発明の第2態様による光ファイバ特性測定システムは、前記被測定光ファイバ、前記第2光ファイバ、及び前記第3光ファイバが、1本の多芯ファイバ(60A)又は1本のマルチコアファイバを用いて実現される。
【0020】
また、本発明の第2態様による光ファイバ特性測定システムは、前記第2光ファイバによって導かれる前記ポンプ光を増幅する光増幅器(70B)を備える。
【0021】
また、本発明の第2態様による光ファイバ特性測定システムは、前記光ファイバ特性測定装置と前記光増幅器とを接続するケーブル(CB)を備えており、前記光ファイバ特性測定装置が、前記ケーブルを介して、前記光増幅器に対する電源供給と前記光増幅器に対する制御信号の送信とを行う。
【0022】
また、本発明の第2態様による光ファイバ特性測定システムは、前記光増幅器には、外部電源から電源が供給され、前記光ファイバ特性測定装置は、前記光増幅器に対する制御信号を無線信号によって送信する。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の第3態様による光ファイバ特性測定システム(3、3A~3C)は、プローブ光(L1)を出射する第1出射ポート(P11)と、ポンプ光(L2)を出射する第2出射ポート(P13)と、被測定光ファイバ(FUT)で生ずる誘導ブリルアン散乱光(BR)が入射される入射ポート(P14)とを備える光ファイバ特性測定装置(10B)と、一端(E11)が前記第1出射ポートに接続されて前記プローブ光を前記被測定光ファイバの一端(E1)に向けて導く第1光ファイバ(20)と、前記第1光ファイバの他端(E12)と前記被測定光ファイバの一端との間に設けられ、前記第1光ファイバによって導かれた前記プローブ光を前記被測定光ファイバの一端に入射させる光アイソレータ(30)と、一端(E21)が前記第2出射ポートに接続されて前記ポンプ光を前記被測定光ファイバの他端(E2)に向けて導く第2光ファイバ(40A)と、一端(E31)が前記入射ポートに接続されて前記被測定光ファイバで生ずる誘導ブリルアン散乱光を前記入射ポートに導く第3光ファイバ(40B)と、前記第2光ファイバによって導かれた前記ポンプ光を前記被測定光ファイバの他端に入射させ、前記被測定光ファイバの他端から出射される誘導ブリルアン散乱光を前記第3光ファイバの他端(E32)に入射させる光サーキュレータ(50)と、を備える。
【0024】
また、本発明の第3態様による光ファイバ特性測定システムは、前記光アイソレータが、前記第1光ファイバの前記一端から前記光アイソレータまでの光路長よりも前記光アイソレータから前記被測定光ファイバの前記一端までの光路長が短くなるように配置され、 前記光サーキュレータが、前記第2光ファイバの前記一端から前記光サーキュレータまでの光路長よりも前記光サーキュレータから前記被測定光ファイバの前記他端までの光路長が短くなるように配置される。
【0025】
また、本発明の第3態様による光ファイバ特性測定システムは、前記光アイソレータが、前記光アイソレータから前記被測定光ファイバの前記一端までの間において、前記プローブ光と前記ポンプ光との相関ピークが発生しない位置に配置され、前記光サーキュレータが、前記光サーキュレータから前記被測定光ファイバの前記他端までの間において、前記プローブ光と前記ポンプ光との相関ピークが発生しない位置に配置される。
【0026】
また、本発明の第3態様による光ファイバ特性測定システムは、前記第1光ファイバ、前記第2光ファイバ、及び前記第3光ファイバが、1本の多芯ファイバ(60B)又は1本のマルチコアファイバを用いて実現される。
【0027】
また、本発明の第3態様による光ファイバ特性測定システムは、前記第1光ファイバによって導かれる前記プローブ光を増幅する第1光増幅器(70A)と、前記第2光ファイバによって導かれる前記ポンプ光を増幅する第2光増幅器(70B)と、を備える。
【0028】
また、本発明の第3態様による光ファイバ特性測定システムは、前記光ファイバ特性測定装置と前記第1光増幅器及び前記第2光増幅器とを接続するケーブル(CB)を備えており、前記光ファイバ特性測定装置が、前記ケーブルを介して、前記第1光増幅器及び前記第2光増幅器に対する電源供給と前記第1光増幅器及び前記第2光増幅器に対する制御信号の送信とを行う。
【0029】
また、本発明の第3態様による光ファイバ特性測定システムは、前記第1光増幅器及び前記第2光増幅器には、外部電源から電源が供給され、前記光ファイバ特性測定装置が、前記第1光増幅器及び前記第2光増幅器に対する制御信号を無線信号によって送信する。
【0030】
また、本発明の第1~3態様による光ファイバ特性測定システムは、前記プローブ光及び前記ポンプ光が共に、周波数変調された光である。
【0031】
また、本発明の第1~3態様による光ファイバ特性測定システムは、前記プローブ光が連続光であり、前記ポンプ光がパルス光である。
【0032】
上記課題を解決するために、本発明の第4態様による光ファイバ特性測定システム(4)は、連続光又はパルス光のポンプ光(LP)を出射する第1ポート(P21)と、被測定光ファイバ(FUT)で生ずる自然ブリルアン散乱光が入射される第2ポート(P22)とを備える光ファイバ特性測定装置(80)と、一端(E21)が前記第1ポートに接続され、前記ポンプ光を前記被測定光ファイバの一端(E1)に向けて導く第2光ファイバ(40A)と、一端(E31)が前記第2ポートに接続されて前記被測定光ファイバで生ずる自然ブリルアン散乱光を前記第2ポートに導く第3光ファイバ(40B)と、前記第2光ファイバによって導かれた前記ポンプ光を前記被測定光ファイバの一端に入射させ、前記被測定光ファイバの一端から出射される自然ブリルアン散乱光を前記第3光ファイバの他端(E32)に入射させる光サーキュレータ(50)と、を備える。
【0033】
また、本発明の第4態様による光ファイバ特性測定システムは、前記光サーキュレータが、前記第2光ファイバの前記一端から前記光サーキュレータまでの光路長よりも前記光サーキュレータから前記被測定光ファイバの前記一端までの光路長が短くなるように配置される。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、大幅なコスト上昇を招くこと無く、且つ簡単な構成で、従来よりも被測定対象物の測定可能範囲を拡げることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の第1実施形態による光ファイバ特性測定システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における、被測定光ファイバと被測定対象物との配置例を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態における光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の第1実施形態において、光ファイバ特性測定装置に接続される光ファイバ等を直線状に示した図である。
【
図5】本発明の第2実施形態による光ファイバ特性測定システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図6】本発明の第2実施形態における光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。
【
図7】本発明の第2実施形態において、光ファイバ特性測定装置に接続される光ファイバ等を直線状に示した図である。
【
図8】本発明の第3実施形態による光ファイバ特性測定システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図9】本発明の第3実施形態における光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。
【
図10】本発明の第3実施形態において、光ファイバ特性測定装置に接続される光ファイバ等を直線状に示した図である。
【
図11】本発明の第1~第3実施形態による光ファイバ特性測定システムの第1変形例を示す図である。
【
図12】本発明の第1~第3実施形態による光ファイバ特性測定システムの第2変形例を示す図である。
【
図13】本発明の第1~第3実施形態による光ファイバ特性測定システムの第3変形例を示す図である。
【
図14】本発明の第4実施形態による光ファイバ特性測定システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図15】本発明の第4実施形態における光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による光ファイバ特性測定システムについて詳細に説明する。以下では、まず、本発明の実施形態の概要について説明し、続いて本発明の実施形態の詳細について説明する。
【0037】
〔概要〕
本発明の実施形態は、大幅なコスト上昇を招くこと無く、且つ簡単な構成で、従来よりも被測定対象物の測定可能範囲を拡げることができるようにするものである。具体的には、大幅なコスト上昇を招くこと無く、且つ簡単な構成で、光ファイバ特性測定装置から直線距離で最大測定長の半分の長さよりも遠方に存在する被測定対象物の測定を行えるようにするものである。
【0038】
上述した特許文献1では、周波数変調された連続光(プローブ光)とパルス光(ポンプ光)とを被測定光ファイバの両端からそれぞれ入射させて、被測定光ファイバ内に現れる複数の相関ピークの各々の位置における誘導ブリルアン散乱光を異なるタイミングで発生させるようにしている。そして、誘導ブリルアン散乱光を受光するタイミングを調整することで、選択した相関ピークが現れる位置における誘導ブリルアン散乱光のみが抽出されるようにしている。
【0039】
しかしながら、上述した特許文献1では、プローブ光及びポンプ光を被測定光ファイバの両端から入射させるために、被測定光ファイバの両端を光ファイバ特性測定装置に接続する必要がある。このため、光ファイバ特性測定装置から直線距離で最大測定長の半分の長さよりも遠方に存在する被測定対象物の測定を行うことができない。尚、被測定対象物の全部が最大測定長の半分の長さよりも遠方に存在する場合には、被測定対象物の全体について測定を行うことができず、被測定対象物の一部が最大測定長の半分の長さよりも遠方に存在する場合には、その一部について測定を行うことができない(第1問題点)。
【0040】
尚、光ファイバ特性測定装置を被測定対象物の遠方に設置する必要がある場合としては、例えば、以下に示す場合が挙げられる。
・被測定対象物付近の設置環境(温度、湿度、軟弱な土壌、振動、防爆、危険)が原因で、光ファイバ特性測定装置を被測定対象物の近くに設置できない場合。
・被測定対象物の近くに電源を供給できるところがない場合、或いは、電源を供給できるところがあるが電源容量に制限がある場合。
・光ファイバ特性測定装置を常時設置することができない場合であって、測定の度に被測定対象物の近くに光ファイバ特性測定装置を設置することが費用面、手間等で困難な場合。
・防犯上の理由で光ファイバ特性測定装置を被測定対象物の近くに常時設置できない場合。
【0041】
また、上述した特許文献1では、被測定光ファイバにポンプ光を入射させてから一定時間(ポンプ光が被測定光ファイバを往復するのに要する時間にポンプ光の時間幅の2倍の時間を加えて得られる時間)が経過するまでは次のポンプ光を入射させることはできない。このため、測定時間を短縮するためには、被測定光ファイバの長さを極力短くする必要がある。しかしながら、被測定光ファイバに測定を行う必要のない無駄な区間(例えば、光ファイバ特性測定装置から被測定対象物に至るまでの区間)が存在する場合には、その区間の分だけ無駄に被測定光ファイバの長さが長くなり、測定時間が長くなってしまう(第2問題点)。
【0042】
また、上述した特許文献1において、被測定光ファイバに入射したポンプ光は、被測定光ファイバの固有の伝送損失による減衰以外に、相関ピークが現れる位置毎に生ずる誘導ブリルアン散乱現象によるプローブ光への光パワーの移動による減衰を受ける。このため、ポンプ光のS/N比(信号対雑音比)は、被測定光ファイバの一端(ポンプ光の入射端)から他端(プローブ光の入射端)に向かうにつれて低下する。被測定光ファイバの長さが長くなるほど、光ファイバの他端におけるポンプ光のS/N比が低下するため、被測定光ファイバの一端と他端とにおける温度や歪みの測定精度の差が大きくなってしまう(第3問題点)。
【0043】
また、被測定光ファイバに測定を行う必要のない無駄な区間(例えば、光ファイバ特性測定装置から被測定対象物に至るまでの区間)が存在する場合には、その区間における相関ピークが現れる位置で生ずる誘導ブリルアン散乱現象により、ポンプ光のパワーが不必要に低下する。これにより、測定を行う必要がある区間(例えば、被測定光ファイバが被測定対象物に敷設されている区間)においてプローブ光が受ける利得が低下し、S/N比が低下するため、温度や歪みの測定精度が低下する(第4問題点)。
【0044】
また、ポンプ光のパワー強度が高い場合、プローブ光のパワー強度が高い場合、又はポンプ光及びローブ光の双方のパワー強度が高い場合には、ポンプ光又はプローブ光が被測定光ファイバ中を伝播するにつれて、被測定光ファイバの固有の伝送損失による減衰以上に減衰する。これは、光ファイバに入射する光のパワー強度が高い場合には、その光が光ファイバ中を伝播している最中に、自身の戻り光(散乱光)との相互作用によって誘導ブリルアン散乱現象が発生し、自身の戻り光に光パワーが移動するためである。このような減衰が生ずると、S/N比が低下するため、温度や歪みの測定精度が低下する(第5問題点)。
【0045】
ここで、光ファイバ特性測定装置では、ポンプ光及びプローブ光のパワー強度が高いほどS/N比が高くなるため、温度や歪みの測定精度の向上が期待できる。しかしながら、ポンプ光及びプローブ光のパワー強度が高すぎると、上記の誘導ブリルアン散乱現象による測定精度の低下を招くため、上記の誘導ブリルアン散乱現象が発生しないようにポンプ光及びプローブ光のパワー強度を調整する必要がある。
【0046】
上述した第1問題点は、BOTDA(Brillouin Optical Time Domain Analysis)方式のものについても言える問題点である。上述した第2問題点は、測定時間が長くなってしまうという意味で、BOTDA方式のもの、BOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometry)方式のもの、及びBOCDR(Brillouin Optical Correlation Domain Reflectometry)方式のものについても言える問題点である。上述した第3,4問題点は、BOTDA方式のものについても言える問題点である。BOTDAの場合、被測定ファイバの全ての位置で誘導ブリルアン散乱現象によるプローブ光への光パワー移動により、ポンプ光の光パワーレベルが低下する。上述した第3問題点は、BOTDR方式のもの、BOCDR方式のものについても言える問題点である。誘導ブリルアン散乱現象の影響ではないが、測定長が長くなるほど、伝送損失により被測定光ファイバ入射端側の測定位置と遠端側の測定位置での温度や歪みの測定精度の差が大きくなる。上述した第5問題点は、BOTDA方式のもの、BOTDR方式のもの、及びBOCDR方式のものについても言える問題点である。
【0047】
上記のBOTDA方式のものは、光ファイバの一端から周波数が可変であるパルス光(ポンプ光)を入射させるとともに光ファイバの他端から連続光であるプローブ光を入射させる。そして、誘導ブリルアン散乱現象によるプローブ光の変化成分を順次測定することで、光ファイバの特性を求めるものである。
【0048】
上記のBOTDR方式のものは、光ファイバの一端からパルス光を入射させる。そして、光ファイバの同じ一端から出射される自然ブリルアン散乱光を順次検出することにより、光ファイバの特性を求めるものである。
【0049】
上記のBOCDR方式のものは、光ファイバの一端から周波数変調された連続光又はパルス光であるポンプ光を入射させ、光ファイバの同じ一端から得られる自然ブリルアン散乱光と参照光とを干渉させる。これにより、光ファイバ中において「相関ピーク」が現れる特定の位置における自然ブリルアン散乱光を選択的に抽出して光ファイバの特性を求めるものである。
【0050】
上述した特許文献2では、基地局以外にリモート局を設け、被測定光ファイバの両端をリモート局に接続することで、遠隔地に存在する被測定対象物の測定を可能としている。このため、上述した特許文献2に開示された技術を用いれば、基地局(光ファイバ特性測定装置)から直線距離で最大測定長の半分の長さよりも遠方に存在する被測定対象物の測定を行うことが可能になるとも考えられる。
【0051】
しかしながら、上述した特許文献2では、被測定光ファイバの両端に入射させるポンプ光とプローブ光とを、偏波状態を異ならせて偏波保持ファイバを用いて基地局からリモート局に伝送する必要がある。ここで、偏波保持ファイバは、一般的に、通常のシングルモードファイバに比べて高価であるため、システム全体としてのコスト増加が懸念される。また、偏波保持ファイバは、高い偏波保持能力を有するものの、偏波モード間での結合が零ではないため、偏波保持ファイバの長さが長くなるにつれて偏波クロストークの影響が大きくなる。すると、基地局とリモート局との距離が制限(例えば、1km程度に制限)されてしまうため、用途が限定されてしまう。
【0052】
また、上述した特許文献2では、基地局において、ポンプ光の偏光状態を制御する偏波コントローラと、ポンプ光とプローブ光とを合成する合成手段とが必要になる。また、リモート局において、ポンプ光とプローブ光とを分離する分離手段と、ポンプ光の偏光状態を制御する偏波コントローラとが必要になる。このように、上述した特許文献2では、基地局及びリモート局における部品点数が増えるため、コスト増加が懸念される。
【0053】
また、上述した特許文献2では、偏波保持ファイバを用いることで、基地局とリモート局とを接続する光ファイバの本数を抑制することに価値があるとしている。しかしながら、偏波保持ファイバの外径と同程度の外径を有する多芯ファイバやマルチコアファイバが一般的に販売されていることを鑑みると、偏波保持ファイバを用いて基地局とリモート局とを接続する光ファイバの本数を抑制することの価値はさほど無いと考えられる。むしろ、光ファイバの数を減らすメリットよりも、基地局とリモート局との距離が制限されるデメリットの方が大きいと考えられる。
【0054】
本発明の第1実施形態は、光ファイバ特性測定装置の入出射ポートに被測定光ファイバの一端を接続し、入出射ポートから出射されるポンプ光を被測定光ファイバに入射させる。また、光ファイバ特性測定装置の出射ポートに第1光ファイバの一端を接続し、出射ポートから出射されるプローブ光を被測定光ファイバの他端に向けて導く。そして、第1光ファイバによって導かれたプローブ光を、光アイソレータを介して被測定光ファイバの他端に入射させ、被測定光ファイバで生ずる誘導ブリルアン散乱光を入出射ポートに入射させるようにしている。
【0055】
このように、本発明の第1実施形態では、ポンプ光が入射される被測定光ファイバの一端のみを光ファイバ特性測定装置に接続すれば良く、プローブ光が入射される被測定光ファイバの他端を光ファイバ特性測定装置から離間した位置に配置することができる。ここで、プローブ光は、第1光ファイバによって被測定光ファイバの他端に向けて導かれ、光アイソレータを介して被測定光ファイバの他端に入射される。これにより、大幅なコスト上昇を招くこと無く、且つ簡単な構成で、従来よりも被測定対象物の測定可能範囲を拡げることができる。
【0056】
本発明の第2実施形態は、光ファイバ特性測定装置の第1出射ポートに被測定光ファイバの一端を接続し、第1出射ポートから出射されるプローブ光を被測定光ファイバに入射させる。また、光ファイバ特性測定装置の第2出射ポートに第2光ファイバの一端を接続し、第2出射ポートから出射されるポンプ光を被測定光ファイバの他端に向けて導く。また、光ファイバ特性測定装置の入射ポートに第3光ファイバの一端を接続する。そして、第2光ファイバによって導かれたポンプ光を、光サーキュレータを介して被測定光ファイバの他端に入射させ、被測定光ファイバの他端から出射される誘導ブリルアン散乱光を、光サーキュレータを介して第3光ファイバの他端に入射させるようにしている。
【0057】
このように、本発明の第2実施形態では、プローブ光が入射される被測定光ファイバの一端のみを光ファイバ特性測定装置に接続すれば良く、ポンプ光が入射される被測定光ファイバの他端を光ファイバ特性測定装置から離間した位置に配置することができる。ここで、ポンプ光は、第2光ファイバによって被測定光ファイバの他端に向けて導かれ、光サーキュレータを介して被測定光ファイバの他端に入射される。また、被測定光ファイバ内で生じた誘導ブリルアン散乱光は、光サーキュレータを介した後に、第3光ファイバによって光ファイバ特性測定装置に導かれる。これにより、大幅なコスト上昇を招くこと無く、且つ簡単な構成で、従来よりも被測定対象物の測定可能範囲を拡げることができる。
【0058】
本発明の第3実施形態は、光ファイバ特性測定装置の第1出射ポートに第1光ファイバの一端を接続し、第1出射ポートから出射されるプローブ光を被測定光ファイバの一端に向けて導く。また、光ファイバ特性測定装置の第2出射ポートに第2光ファイバの一端を接続し、第2出射ポートから出射されるポンプ光を被測定光ファイバの他端に向けて導く。また、光ファイバ特性測定装置の入射ポートに第3光ファイバの一端を接続する。そして、第1光ファイバによって導かれたプローブ光を、光アイソレータを介して被測定光ファイバの一端に入射させる。また、第2光ファイバによって導かれたポンプ光を、光サーキュレータを介して被測定光ファイバの他端に入射させ、被測定光ファイバの他端から出射されるブリルアン散乱光を、光サーキュレータを介して第3光ファイバの他端に入射させるようにしている。
【0059】
このように、本発明の第3実施形態では、被測定光ファイバの両端を光ファイバ特性測定装置に接続する必要がないため、被測定光ファイバ全体を光ファイバ特性測定装置から離間した位置に配置することができる。ここで、プローブ光は、第1光ファイバによって被測定光ファイバの一端に向けて導かれ、光アイソレータを介して被測定光ファイバの一端に入射される。ポンプ光は、第2光ファイバによって被測定光ファイバの他端に向けて導かれ、光サーキュレータを介して被測定光ファイバの他端に入射される。尚、被測定光ファイバ内で生じた誘導ブリルアン散乱光は、光サーキュレータを介した後に、第3光ファイバによって光ファイバ特性測定装置に導かれる。これにより、大幅なコスト上昇を招くこと無く、且つ簡単な構成で、従来よりも被測定対象物の測定可能範囲を拡げることができる。
【0060】
本発明の第4実施形態は、光ファイバ特性測定装置の第1ポートに第2光ファイバの一端を接続し、第1ポートから出射される連続光又はパルス光を被測定光ファイバの一端に向けて導く。また、光ファイバ特性測定装置の第2ポートに第3光ファイバの一端を接続する。そして、第2光ファイバによって導かれたパルス光を、光サーキュレータを介して被測定光ファイバの一端に入射させ、被測定光ファイバの一端から出射される自然ブリルアン散乱光を、光サーキュレータを介して第3光ファイバの他端に入射させるようにしている。
【0061】
このように、本発明の第4実施形態では、被測定光ファイバの両端を光ファイバ特性測定装置に接続する必要がないため、被測定光ファイバ全体を光ファイバ特性測定装置から離間した位置に配置することができる。ここで、連続光又はパルス光は、第2光ファイバによって被測定光ファイバの一端に向けて導かれ、光サーキュレータを介して被測定光ファイバの一端に入射される。尚、被測定光ファイバ内で生じた自然ブリルアン散乱光は、光サーキュレータを介した後に、第3光ファイバによって光ファイバ特性測定装置に導かれる。これにより、大幅なコスト上昇を招くこと無く、且つ簡単な構成で、従来よりも被測定対象物の測定可能範囲を拡げることができる。
【0062】
〔第1実施形態〕
〈光ファイバ特性測定システム〉
図1は、本発明の第1実施形態による光ファイバ特性測定システムの全体構成を示すブロック図である。
図1に示す通り、本実施形態の光ファイバ特性測定システム1は、光ファイバ特性測定装置10、送信用光ファイバ20(第1光ファイバ)、及び光アイソレータ30を備える。このような光ファイバ特性測定システム1は、被測定光ファイバFUTをセンサとして用いて、被測定対象物OBの特性(例えば、温度分布や歪み分布等)を測定する。
【0063】
ここで、被測定対象物OBは、例えば、橋梁等の構造物や飛行機等の、温度分布や歪み分布の測定対象となっている物である。尚、
図1では、理解を容易にするために、被測定光ファイバFUTが直線状に配置されており、その一部が被測定対象物OBに敷設されている例を図示している。また、
図1に示す通り、被測定光ファイバFUTの長さは、光ファイバ特性測定装置10の最大測定長MLの半分の長さ(ML/2)よりも長く、最大測定長MLよりも短く設定されているものとする。
【0064】
図2は、本発明の第1実施形態における、被測定光ファイバと被測定対象物との配置例を示す図である。
図2(a)に示す通り、被測定対象物OBは、その全体が、被測定光ファイバFUTの一端E1からの距離が最大測定長MLの半分の長さ(ML/2)となる位置(以下、「中間位置HP」という)よりも遠方に配置されていても良い。尚、被測定光ファイバFUTの一端E1は、光ファイバ特性測定装置10に接続される端部である。
【0065】
また、
図2(b)に示す通り、被測定対象物OBは、その一部が、中間位置HPよりも被測定光ファイバFUTの一端E1に近い側に配置され、残りの部分が、中間位置HPよりも遠方に配置されていても良い。また、
図2(c)に示す通り、被測定対象物OBは、被測定光ファイバFUTの全長に亘って(被測定光ファイバFUTの一端E1から他端E2まで)配置されていても良い。
【0066】
被測定光ファイバFUTは、被測定対象物OBに敷設されている部分が、被測定対象物OBの影響を受ける。例えば、被測定対象物OBの温度が変化すると、被測定光ファイバFUTの被測定対象物OBに敷設されている部分の温度が変化する。また、被測定対象物OBに歪みが生ずると、被測定光ファイバFUTの被測定対象物OBに敷設されている部分に歪みが生ずる。このような被測定光ファイバFUTの温度や歪みの変化が生ずると、被測定光ファイバFUTに光を入射させることによって発生する誘導ブリルアン散乱光のスペクトル(スペクトルのパワーレベルが最大となる周波数)が変化する。光ファイバ特性測定システム1は、このような誘導ブリルアン散乱光のスペクトル変化を検出することにより、被測定対象物OBの特性を測定する。
【0067】
光ファイバ特性測定装置10は、被測定光ファイバFUTの他端E2からプローブ光L1(連続光)を入射させ、被測定光ファイバFUTの一端E1からポンプ光L2(パルス光)を入射させることによって得られる散乱光に基づいて被測定光ファイバFUTの特性を測定する、所謂BOCDA方式の光ファイバ特性測定装置である。尚、上記のプローブ光L1は、所定の周波数変調が与えられた連続光としてのレーザ光であり、上記のポンプ光L2は、上記周波数変調が与えられた連続光としてのレーザ光をパルス化したものである。また、上記の散乱光は、被測定光ファイバFUT内における誘導ブリルアン散乱現象の影響を受けた散乱光(誘導ブリルアン散乱光)である。
【0068】
図3は、本発明の第1実施形態における光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。
図3に示す通り、光ファイバ特性測定装置10は、光源部11、光分岐器12、光変調器13、パルス変調器14、方向性結合器15、光検出器16、検波装置17、及び制御装置18、並びに、出射ポートP11及び入出射ポートP12を備えており、被測定光ファイバFUTの長さ方向における特性(例えば、温度分布や歪み分布等)を測定する。出射ポートP11には送信用光ファイバ20の一端E11が接続され、入出射ポートP12には被測定光ファイバFUTの一端E1が接続される。
【0069】
光源部11は、半導体レーザ11a及び信号発生器11bを備えており、制御装置18の制御の下で、所定の変調周波数fmで周波数変調されたレーザ光を出射する。ここで、半導体レーザ11aは、例えば、小型であり、且つ、スペクトル幅の狭いレーザ光を出射するMQW・DFB・LD(Multi-Quantum Well・Distributed Feed-Back・Laser Diode)等を用いることができる。信号発生器11bは、制御装置18によって制御され、半導体レーザ11aから出射されるレーザ光を変調周波数fmで周波数変調する正弦波信号(変調信号)を半導体レーザ11aに出力する。光分岐器12は、光源部11から出射されたレーザ光を、例えば1対1の強度比で2分岐する。
【0070】
光変調器13は、マイクロ波発生器13aとSSB(Single Side Band:単側波帯)光変調器13bとを備えており、制御装置18の制御の下で、光分岐器12で分岐された一方のレーザ光を変調して(光周波数シフトさせて)、レーザ光の中心周波数に対する側波帯(単側波帯)を発生させる。尚、本実施形態では、低周波側の単側帯波が光変調器13から出力されるとする。
【0071】
マイクロ波発生器13aは、制御装置18によって制御され、光分岐器12で分岐された一方のレーザ光に与える周波数シフト分の周波数を有するマイクロ波を出力する。尚、マイクロ波発生器13aから出力されるマイクロ波の周波数は、制御装置18の制御によって可変である。SSB光変調器13bは、入射光の中心周波数に対してマイクロ波発生器13aから出力されるマイクロ波の周波数に等しい周波数差を有する単側帯波を発生させる。光変調器13で変調された光は、プローブ光L1(連続光)として出射ポートP11から出射される。
【0072】
パルス変調器14は、信号発生器14aと光強度変調器14bとを備えており、制御装置18の制御の下で、光分岐器12で分岐された他方のレーザ光をパルス化してパルス光を生成する。信号発生器14aは、制御装置18によって制御され、レーザ光をパルス化するタイミングを規定するタイミング信号を出力する。光強度変調器14bは、例えばEO(Electro-Optic:電気光学)スイッチであり、信号発生器14aから出力されるタイミング信号で規定されるタイミングで光分岐器12からのレーザ光をパルス化する。
【0073】
方向性結合器15は、パルス変調器14から出射されるパルス化されたレーザ光をポンプ光L2(パルス光)として入出射ポートP12から出射させる。また、方向性結合器15は、入出射ポートP12から入射される光(被測定光ファイバFUTを介したプローブ光L1を含む光(検出光L11)を光検出器16に向けて出射する。尚、検出光L11の強度は、被測定光ファイバFUT内で生ずる誘導ブリルアン散乱現象による影響を受けたものとなる。
【0074】
光検出器16は、例えばアバランシェ・フォト・ダイオード等の高感度の受光素子を備えており、上記の検出光L11(被測定光ファイバFUTの他端から出射されて方向性結合器15を介した光)を検出(受光)して検出信号D1を出力する。検波装置17は、タイミング調整器17a、増幅器17b、及び積分器17cを備えており、制御装置18の制御の下で、光検出器16から出力される検出信号D1の検波を行う。
【0075】
タイミング調整器17aは、例えばオン状態(検出信号D1を通過させる状態)とオフ状態(検出信号D1を遮断する状態)との切り替えを高速に行うことができる電気スイッチ(高速アナログスイッチ)で実現される。このタイミング調整器17aは、制御装置18によって、オン状態及びオフ状態が制御され、所定の時間を単位として検出信号D1の切り出しを行う。ここで、切り出しとは、時間的に連続する信号から必要な部分を抽出することを意味する。
【0076】
増幅器17bは、制御装置18の制御の下で、タイミング調整器17aを通過した検出信号D2(タイミング調整器17aで切り出しが行われた検出信号)を増幅する。積分器17cは、制御装置18の制御の下で、増幅器17bから出力される出力信号S1(タイミング調整器17aで切り出しが行われ、増幅器17bで増幅された信号)の積分を行う。尚、積分器17cの積分結果は、不図示のA/D(アナログ/ディジタル)変換器でディジタル信号に変換されて制御装置18に出力される。
【0077】
制御装置18は、光ファイバ特性測定装置10の動作を統括して制御する。例えば、制御装置18は、光源部11に設けられた信号発生器11bを制御して、光源部11から出射される連続光の変調周波数fmを変更させる。また、制御装置18は、光変調器13に設けられたマイクロ波発生器13aを制御し、プローブ光L1の側波帯(単側波帯)の周波数を変更させる。また、制御装置18は、パルス変調器14に設けられた信号発生器14aを制御し、光分岐器12で分岐されたレーザ光をパルス化するタイミングを制御する。
【0078】
また、制御装置18は、検波装置17に設けられたタイミング調整器17a、増幅器17b、及び積分器17cを制御し、検出信号D1の切り出し、検出信号D2の極性、及び出力信号S1の積分を制御する。また、制御装置18は、演算部18aを備える。演算部18aは、検波装置17から出力される測定値V1(積分器17cから出力される積分値)に対して、予め定められた演算を行って誘導ブリルアン散乱光を検波する。
【0079】
送信用光ファイバ20は、光ファイバ特性測定装置10の出射ポートP11から出射されるプローブ光L1を被測定光ファイバFUTの他端E2に向けて導く光ファイバである。送信用光ファイバ20は、一端E11が光ファイバ特性測定装置10の出射ポートP11に接続され、他端E12が光アイソレータ30の入射端と光学的に結合される。この送信用光ファイバ20としては、例えば、シングルモードファイバを用いることができる。
【0080】
光アイソレータ30は、送信用光ファイバ20の他端E12と被測定光ファイバFUTの他端E2との間に設けられ、送信用光ファイバ20によって導かれたプローブ光L1を被測定光ファイバFUTの他端E2に入射させる。但し、光アイソレータ30は、被測定光ファイバFUTの他端E2から出射されて送信用光ファイバ20に向かう光を遮断する。光アイソレータ30は、入射端が送信用光ファイバ20の他端E12と光学的に結合され、出射端が被測定光ファイバFUTの他端E2と光学的に結合される。
【0081】
光アイソレータ30は、送信用光ファイバ20の一端E11から光アイソレータ30の入射端までの光路長よりも光アイソレータ30の出射端から被測定光ファイバFUTの他端E2までの光路長が短くなるように配置される。また、光アイソレータ30は、光アイソレータ30の出射端から被測定光ファイバFUTの他端E2までの間において、プローブ光L1とポンプ光L2との相関ピークが発生しない位置に配置される。尚、プローブ光L1の光路長を極力短くするために、光アイソレータ30の入射端に送信用光ファイバ20の他端E12を直接接続し、光アイソレータ30の出射端に被測定光ファイバFUTの他端E2を直接接続しても良い。
【0082】
〈光ファイバ特性測定システムの動作〉
次に、光ファイバ特性測定システム1の動作について簡単に説明する。光ファイバ特性測定装置10に対して測定開始の指示がなされると、光ファイバ特性測定装置10において、変調周波数を設定する処理が行われる。ここでは、制御装置18によって、予め設定された初期値が変調周波数fmとして設定されるものとする。変調周波数fmの設定が行われると、光源部11に設けられた信号発生器11bが制御装置18によって制御され、信号発生器11bから正弦波信号(変調信号)が出力される。このような正弦波信号が半導体レーザ11aに入力されると、半導体レーザ11aからは変調周波数fmで周波数変調された連続光としてのレーザ光が出射される。
【0083】
半導体レーザ11aから出射されたレーザ光は、光分岐器12に入射して2分岐される。光分岐器12で分岐された一方のレーザ光は、光変調器13へ入射してSSB光変調器13bで変調される。これにより、レーザ光の中心周波数に対する側波帯(単側波帯)が発生する。光変調器13で変調された光は、プローブ光L1として光ファイバ特性測定装置10の出射ポートP11から出射される。光ファイバ特性測定装置10の出射ポートP11から出射されたプローブ光L1は、送信用光ファイバ20によって被測定光ファイバFUTの他端E2に向けて導かれる。そして、光アイソレータ30を介した後に、被測定光ファイバFUTの他端E2から被測定光ファイバFUTに入射される。
【0084】
これに対し、光分岐器12で分岐された他方のレーザ光は、パルス変調器14に入射して光強度変調器14bで強度変調されることによりパルス化される。このパルス光は、方向性結合器15を介してポンプ光L2として光ファイバ特性測定装置10の入出射ポートP12から出射される。光ファイバ特性測定装置10の入出射ポートP12から出射されたポンプ光L2は、被測定光ファイバFUTの一端E1から被測定光ファイバFUTに入射される。
【0085】
変調周波数f
mで周波数変調された連続光としてのプローブ光L1とパルス光としてのポンプ光L2とが被測定光ファイバFUT内に入射すると、ポンプ光L2が被測定光ファイバFUT内を伝播するに伴って、被測定光ファイバFUT中の異なる位置に相関ピークP1~P6(
図4参照)が現れる。各相関ピークP1~P6の位置において、プローブ光L1は、ポンプ光L2によって誘導ブリルアン増幅による利得(ゲイン)を得る。
【0086】
被測定光ファイバFUTを介したプローブ光L1及び被測定光ファイバFUT内で発生した誘導ブリルアン散乱光BR(
図4参照)は、被測定光ファイバFUTの一端E1から出射された後に方向性結合器15を介して検出光L11として光検出器16に入射する。そして、光検出器16において低周波側の側波帯の光が選択されてその強度が検出され、その検出結果を示す検出信号D1が光検出器16から出射される。光検出器16から出力された検出信号D1は検波装置17に入力される。
【0087】
検出信号D1が検波装置17に入力されると、検出信号D1の特定部分を通過させるようにタイミング調整器17aのオン状態・オフ状態が切り替えられる。尚、上記の特定部分は、被測定光ファイバFUTに対して設定された測定点及びその近傍で発生する誘導ブリルアン散乱光BRの影響を受けた部分(第1部分)、及び、誘導ブリルアン散乱光BRが被測定光ファイバFUTから出射され得ない期間に得られた部分(第2部分)である。タイミング調整器17aから出力された検出信号D2は、増幅器17bで増幅されて出力信号S1として出力される。増幅器17bから出力された出力信号S1は、積分器17cによって積分される。これにより、上記第1部分における積分値(第1積分値)と上記第2部分における積分値(第2積分値)とが得られる。以上の処理が終了すると、得られた第1積分値及び第2積分値に基づいて誘導ブリルアン散乱光BRを検波する処理が、制御装置18の演算部18aで行われる。
【0088】
制御装置18の制御の下で、マイクロ波発生器13aから出力されるマイクロ波の周波数を掃引しながら以上の処理を繰り返すことで、被測定光ファイバFUTに対して設定された測定点での誘導ブリルアン散乱光BRのスペクトルが求められる。そして、そのスペクトルのパワーレベルが最大となる周波数を検出することで、被測定光ファイバFUTに対して設定された測定点での被測定光ファイバFUTの特性(例えば、歪み量)等が求められる。また、変調周波数fmとタイミング調整器17aの切り出しタイミング及び積分器17cによる積分範囲を変更することによって被測定光ファイバFUT内に設定する測定点の位置を変えつつ、以上説明した動作を繰り返すことにより、被測定光ファイバFUTの長さ方向における特性を測定することができる。
【0089】
尚、光ファイバ特性測定装置10の基本的な動作は、上述した特許文献1に開示された光ファイバ特性測定装置の動作と同じである。但し、光ファイバ特性測定装置10には、被測定光ファイバFUTに加えて送信用光ファイバ20が接続されているため、ポンプ光L2を被測定光ファイバFUTに入射させる周期、及びタイミング調整器17aの切り出しタイミングが異なる。
【0090】
図4は、本発明の第1実施形態において、光ファイバ特性測定装置に接続される光ファイバ等を直線状に示した図である。光ファイバ特性測定装置10の出射ポートP11と入出射ポートP12との間には、
図4に示す通り、光アイソレータ30を介して光学的に結合された送信用光ファイバ20及び被測定光ファイバFUTが接続されている。尚、光アイソレータ30は、被測定光ファイバFUTの他端E2(被測定対象物OB)に極力近い位置に配置される。
【0091】
具体的に、光アイソレータ30は、前述した通り、送信用光ファイバ20の一端E11から光アイソレータ30の入射端までの光路長よりも光アイソレータ30の出射端から被測定光ファイバFUTの他端E2までの光路長が短くなるように配置される。また、光アイソレータ30は、前述した通り、光アイソレータ30の出射端から被測定光ファイバFUTの他端E2までの間において、プローブ光L1とポンプ光L2との相関ピークが発生しない位置に配置される。
【0092】
ここで、被測定光ファイバFUTは、一端E1のみが光ファイバ特性測定装置10に接続され、他端E2は光ファイバ特性測定装置10に接続されない。被測定光ファイバFUTの長さL(測定長)は、光ファイバ特性測定装置10の最大測定長MLの半分の長さ(ML/2)よりも長く、最大測定長MLよりも短く設定されている。よって、被測定光ファイバFUTを直線状に延ばすと、被測定光ファイバFUTの他端E2を、一端E1からの距離が最大測定長MLの半分の長さ(ML/2)となる位置(中間位置HP:
図1参照)よりも遠方に配置することができる。これにより、中間位置HPよりも遠方に存在する被測定対象物OBの測定が可能になる。また、被測定光ファイバFUTの他端E2と光ファイバ特性測定装置10の入出射ポートP12との間に送信用光ファイバ20と光アイソレータ30とを設けるだけで良いため、大幅なコスト上昇を招くこともない。
【0093】
また、プローブ光L1は送信用光ファイバ20によって伝送されて、被測定光ファイバFUTに入射されるが、ポンプ光L2は被測定光ファイバFUTに入射されるものの、送信用光ファイバ20には入射されない。
【0094】
このため、ポンプ光L2を被測定光ファイバFUTに出射する周期は、被測定光ファイバFUTの長さLのみを考慮して決定すれば良く、送信用光ファイバ20の長さLprを考慮する必要はない。具体的に、ポンプ光L2を被測定光ファイバFUTに出射する周期は、ポンプ光L2が被測定光ファイバFUTを往復するのに要する時間にポンプ光L2の時間幅の2倍の時間を加えて得られる時間であれば良い。
【0095】
従来は、光ファイバ特性測定装置10の出射ポートP11と入出射ポートP12との間に接続される光ファイバの全長(
図4に示す例では、L+L
pr)を考慮する必要があった。しかしながら、本実施形態では、光ファイバ特性測定装置10の出射ポートP11と入出射ポートP12との間に接続される光ファイバのうちの、被測定光ファイバFUTの長さLのみを考慮すれば良いため、従来よりも測定時間を短くすることができる。尚、
図4において、区間R1,R2は、被測定光ファイバFUTのうちの、測定を行う必要のない区間を示している。
【0096】
また、本実施形態では、プローブ光L1を伝送するための送信用光ファイバ20として、例えば、シングルモードファイバを用いればよく、前述した特許文献2のように偏波保持ファイバを用いる必要がない。このため、偏波クロストーク(消光比)の影響によってプローブ光L1を伝送する距離が制限(例えば、1km程度に制限)されてしまうこともない。
【0097】
以上の通り、本実施形態では、光ファイバ特性測定装置10の入出射ポートP12に被測定光ファイバFUTの一端E1を接続し、入出射ポートP12から出射されるポンプ光L2を被測定光ファイバFUTに入射させる。また、光ファイバ特性測定装置10の出射ポートP11に送信用光ファイバ20の一端E11を接続し、出射ポートP11から出射されるプローブ光L1を被測定光ファイバFUTの他端E2に向けて導く。そして、送信用光ファイバ20によって導かれたプローブ光L1を、光アイソレータ30を介して被測定光ファイバFUTの他端E2に入射させ、被測定光ファイバFUTで生ずる誘導ブリルアン散乱光BRを入出射ポートP12に入射させるようにしている。
【0098】
このように、本実施形態では、ポンプ光L2が入射される被測定光ファイバFUTの一端E1のみを光ファイバ特性測定装置10に接続すれば良く、プローブ光L1が入射される被測定光ファイバFUTの他端E2を光ファイバ特性測定装置10から離間した位置に配置することができる。ここで、プローブ光L1は、送信用光ファイバ20によって被測定光ファイバFUTの他端E2に向けて導かれ、光アイソレータ30を介して被測定光ファイバFUTの他端E2に入射される。これにより、大幅なコスト上昇を招くこと無く、且つ簡単な構成で、従来よりも被測定対象物OBの測定可能範囲を拡げることができる。尚、従来技術を用いて被測定対象物OBの温度や歪みを測定できる場合であっても、本実施形態を用いて、被測定光ファイバFUTの長さを被測定対象物OBの測定に適した長さにすることにより、測定時間を短縮することができる。
【0099】
〔第2実施形態〕
〈光ファイバ特性測定システム〉
図5は、本発明の第2実施形態による光ファイバ特性測定システムの全体構成を示すブロック図である。尚、
図5においては、
図1に示す構成と同様の構成については同一の符号を付してある。
図5に示す通り、本実施形態の光ファイバ特性測定システム2は、光ファイバ特性測定装置10A、送信用光ファイバ40A(第2光ファイバ)、送信用光ファイバ40B(第3光ファイバ)、及び光サーキュレータ50を備える。尚、光サーキュレータ50に代えて、光方向性結合器(光カプラ)を設けても良い。
【0100】
図1に示す光ファイバ特性測定システム1は、光ファイバ特性測定装置10に接続された被測定光ファイバFUTの一端E1からポンプ光L2を入射させ、送信用光ファイバ20及び光アイソレータ30を介したプローブ光L1を被測定光ファイバFUTの他端E2から入射させるものであった。そして、被測定光ファイバFUT内で発生した誘導ブリルアン散乱光BRを、被測定光ファイバFUTの一端E1から光ファイバ特性測定装置10に入射させるものであった。
【0101】
これに対し、本実施形態の光ファイバ特性測定システム2は、光ファイバ特性測定装置10Aに接続された被測定光ファイバFUTの一端E1からプローブ光L1を入射させ、送信用光ファイバ40A及び光サーキュレータ50を介したポンプ光L2を被測定光ファイバFUTの他端E2から入射させるものである。また、被測定光ファイバFUT内で発生した誘導ブリルアン散乱光BRを、光サーキュレータ50及び送信用光ファイバ40Bを介して光ファイバ特性測定装置10Aに入射させるものである。
【0102】
図6は、本発明の第2実施形態における光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。尚、
図6においては、
図3に示す構成と同様の構成については同一の符号を付してある。
図6に示す通り、本実施形態における光ファイバ特性測定装置10Aは、
図3に示す光ファイバ特性測定装置10の光変調器13と出射ポートP11(第1出射ポート)との間に光アイソレータ19を設け、方向性結合器15を省略して、入出射ポートP12を出射ポートP13(第2出射ポート)と入射ポートP14とに分けたものである。
【0103】
光アイソレータ19は、被測定光ファイバFUTを介して出射ポートP11から光ファイバ特性測定装置10A内に入射されるポンプ光L2を遮断するために設けられる。出射ポートP13にはパルス変調器14が接続され、パルス変調器14で生成されたポンプ光L2が出射ポートP13から出射される。入射ポートP14には光検出器16が接続され、入射ポートP14から入射される検出光L11が光検出器16で検出される。
【0104】
送信用光ファイバ40Aは、光ファイバ特性測定装置10Aの出射ポートP13から出射されるポンプ光L2を被測定光ファイバFUTの他端E2に向けて導く光ファイバである。送信用光ファイバ40Aは、一端E21が光ファイバ特性測定装置10Aの出射ポートP13に接続され、他端E22が光サーキュレータ50の第1ポートと光学的に結合される。この送信用光ファイバ40Aとしては、送信用光ファイバ20と同様に、例えば、シングルモードファイバを用いることができる。
【0105】
送信用光ファイバ40Bは、被測定光ファイバFUT内で発生した誘導ブリルアン散乱光BR及び被測定光ファイバFUTを介したプローブ光L1を光ファイバ特性測定装置10Aの入射ポートP14に導く光ファイバである。送信用光ファイバ40Bは、一端E31が光ファイバ特性測定装置10Aの入射ポートP14に接続され、他端E32が光サーキュレータ50の第3ポートと光学的に結合される。この送信用光ファイバ40Bとしては、送信用光ファイバ40Aと同様に、例えば、シングルモードファイバを用いることができる。
【0106】
光サーキュレータ50は、第1ポート、第2ポート、及び第3ポートを有し、第1ポートから入射される光を第2ポートから出射し、第2ポートから入射される光を第3ポートから出射する。光サーキュレータ50の第1ポートには送信用光ファイバ40Aの他端E22が光学的に結合され、第2ポートには被測定光ファイバFUTの他端E2が光学的に結合され、第3ポートには、送信用光ファイバ40Bの他端E32が光学的に結合される。
【0107】
光サーキュレータ50は、送信用光ファイバ40Aの一端E21から光サーキュレータ50の第1ポートまでの光路長よりも光サーキュレータ50の第2ポートから被測定光ファイバFUTの他端E2までの光路長が短くなるように配置される。また、光サーキュレータ50は、光サーキュレータ50の第2ポートから被測定光ファイバFUTの他端E2までの間において、プローブ光L1とポンプ光L2との相関ピークが発生しない位置に配置される。尚、光路長を極力短くするために、光サーキュレータ50の第1ポート、第2ポート、及び第3ポートに、送信用光ファイバ40Aの他端E22、被測定光ファイバFUTの他端E2、及び送信用光ファイバ40Bの他端E32をそれぞれ直接接続しても良い。
【0108】
〈光ファイバ特性測定システムの動作〉
次に、光ファイバ特性測定システム2の動作について簡単に説明する。光ファイバ特性測定装置10Aに対して測定開始の指示がなされると、光ファイバ特性測定装置10Aにおいて、第1実施形態の光ファイバ特性測定装置10と同様な動作が行われる。そして、光ファイバ特性測定装置10Aの出射ポートP11からプローブ光L1が出射されるとともに、出射ポートP13からポンプ光L2が出射される。
【0109】
光ファイバ特性測定装置10Aの出射ポートP11から出射されたプローブ光L1は、被測定光ファイバFUTの一端E1から被測定光ファイバFUTに入射される。これに対し、光ファイバ特性測定装置10Aの出射ポートP13から出射されたポンプ光L2は、送信用光ファイバ40Aによって被測定光ファイバFUTの他端E2に向けて導かれる。そして、光サーキュレータ50を介した後に、被測定光ファイバFUTの他端E2から被測定光ファイバFUTに入射される。
【0110】
被測定光ファイバFUTを介したプローブ光L1及び被測定光ファイバFUT内で発生した誘導ブリルアン散乱光BR(
図7参照)は、被測定光ファイバFUTの他端E2から出射され、光サーキュレータ50を介して送信用光ファイバ40Bの他端E32から送信用光ファイバ40Bに入射される。そして、送信用光ファイバ40Bによって光ファイバ特性測定装置10Aの入射ポートP14に導かれ、検出光L11として光検出器16に入射する。そして、第1実施形態の光ファイバ特性測定装置10と同様な動作が行われて、被測定光ファイバFUTの長さ方向における特性が測定される。
【0111】
図7は、本発明の第2実施形態において、光ファイバ特性測定装置に接続される光ファイバ等を直線状に示した図である。尚、
図7においては、
図4に示すものと同じものについては同一の符号を付してある。光ファイバ特性測定装置10Aの出射ポートP11と出射ポートP13との間には、
図7に示す通り、光サーキュレータ50を介して光学的に結合された送信用光ファイバ40A及び被測定光ファイバFUTが接続されている。尚、光サーキュレータ50は、被測定光ファイバFUTの他端E2(被測定対象物OB)に極力近い位置に配置される。また、光ファイバ特性測定装置10Aの入射ポートP14には、
図7に示す通り、他端E32が光サーキュレータ50と光学的に結合された送信用光ファイバ40Bが接続されている。
【0112】
具体的に、光サーキュレータ50は、前述した通り、送信用光ファイバ40Aの一端E21から光サーキュレータ50の第1ポートまでの光路長よりも光サーキュレータ50の第2ポートから被測定光ファイバFUTの他端E2までの光路長が短くなるように配置される。また、光サーキュレータ50は、前述した通り、光サーキュレータ50の第2ポートから被測定光ファイバFUTの他端E2までの間において、プローブ光L1とポンプ光L2との相関ピークが発生しない位置に配置される。
【0113】
ここで、被測定光ファイバFUTは、第1実施形態と同容に、一端E1のみが光ファイバ特性測定装置10Aに接続され、他端E2は光ファイバ特性測定装置10Aに接続されない。被測定光ファイバFUTの長さLは、光ファイバ特性測定装置10Aの最大測定長MLの半分の長さ(ML/2)よりも長く、最大測定長MLよりも短く設定されている。よって、被測定光ファイバFUTを直線状に延ばすと、被測定光ファイバFUTの他端E2を、一端E1からの距離が最大測定長MLの半分の長さ(ML/2)となる位置(中間位置HP:
図5参照)よりも遠方に配置することができる。これにより、中間位置HPよりも遠方に存在する被測定対象物OBの測定が可能になる。また、被測定光ファイバFUTの他端E2と光ファイバ特性測定装置10Aの出射ポートP13との間に送信用光ファイバ40A及び光サーキュレータ50を設け、加えて送信用光ファイバ40Bを設けるだけで良いため、大幅なコスト上昇を招くこともない。
【0114】
また、ポンプ光L2は送信用光ファイバ40Aによって伝送されて、被測定光ファイバFUTに入射されるが、プローブ光L1は被測定光ファイバFUTに入射されるものの、送信用光ファイバ40Aには入射されない。
【0115】
このため、ポンプ光L2を被測定光ファイバFUTに出射する周期は、第1実施形態と同様に、被測定光ファイバFUTの長さLのみを考慮して決定すれば良く、送信用光ファイバ40Aの長さLpuを考慮する必要はない。具体的に、ポンプ光L2を被測定光ファイバFUTに出射する周期は、ポンプ光L2が被測定光ファイバFUTを往復するのに要する時間にポンプ光L2の時間幅の2倍の時間を加えて得られる時間であれば良い。
【0116】
従来は、光ファイバ特性測定装置10Aの出射ポートP11と出射ポートP13との間に接続される光ファイバの全長(
図7に示す例では、L+L
pu)を考慮する必要があった。しかしながら、本実施形態では、光ファイバ特性測定装置10Aの出射ポートP11と出射ポートP13との間に接続される光ファイバのうちの、被測定光ファイバFUTの長さLのみを考慮すれば良いため、従来よりも測定時間を短くすることができる。尚、
図7において、区間R1,R2は、被測定光ファイバFUTのうちの、測定を行う必要のない区間を示している。
【0117】
また、本実施形態では、ポンプ光L2を伝送するための送信用光ファイバ40Aとして、例えば、シングルモードファイバを用いればよく、前述した特許文献2のように偏波保持ファイバを用いる必要がない。このため、偏波クロストーク(消光比)の影響によってポンプ光L2を伝送する距離が制限(例えば、1km程度に制限)されてしまうこともない。
【0118】
また、本実施形態では、
図7に示す通り、ポンプ光L2が伝送される送信用光ファイバ40A内では、被測定光ファイバFUT内において現れる相関ピークP1~P6のような相関ピークは現れず、送信用光ファイバ40A内では誘導ブリルアン散乱現象が発生しない。このため、送信用光ファイバ40A内を伝播するポンプ光L2は、相関ピーク毎に生ずる誘導ブリルアン散乱現象によるプローブ光L1への光パワーの移動による減衰を受けない。このため、被測定光ファイバFUTに入射する前のポンプ光L2の光パワー強度が低下しなく、被測定光ファイバFUT内において現れる相関ピークでプローブ光L1が受ける利得の低下を抑制できるため、温度や歪みの測定精度の低下を抑制することができる。
【0119】
以上の通り、本実施形態では、光ファイバ特性測定装置10Aの出射ポートP11に被測定光ファイバFUTの一端E1を接続し、出射ポートP11から出射されるプローブ光L1を被測定光ファイバFUTに入射させる。また、光ファイバ特性測定装置10Aの出射ポートP13に送信用光ファイバ40Aの一端E21を接続し、出射ポートP13から出射されるポンプ光L2を被測定光ファイバFUTの他端E2に向けて導く。また、光ファイバ特性測定装置10Aの入射ポートP14に送信用光ファイバ40Bの一端E31を接続する。そして、送信用光ファイバ40Aによって導かれたポンプ光L2を、光サーキュレータ50を介して被測定光ファイバFUTの他端E2に入射させ、被測定光ファイバFUTの他端E2から出射される誘導ブリルアン散乱光BRを、光サーキュレータ50を介して送信用光ファイバ40Bの他端E32に入射させるようにしている。
【0120】
このように、本実施形態では、プローブ光L1が入射される被測定光ファイバFUTの一端E1のみを光ファイバ特性測定装置10Aに接続すれば良く、ポンプ光L2が入射される被測定光ファイバFUTの他端E2を光ファイバ特性測定装置10Aから離間した位置に配置することができる。ここで、ポンプ光L2は、送信用光ファイバ40Aによって被測定光ファイバFUTの他端E2に向けて導かれ、光サーキュレータ50を介して被測定光ファイバFUTの他端E2に入射される。また、被測定光ファイバFUT内で生じたブリルアン散乱光は、光サーキュレータ50を介した後に、送信用光ファイバ40Bによって光ファイバ特性測定装置10Aに導かれる。これにより、大幅なコスト上昇を招くこと無く、且つ簡単な構成で、従来よりも被測定対象物OBの測定可能範囲を拡げることができる。尚、従来技術を用いて被測定対象物OBの温度や歪みを測定できる場合であっても、本実施形態を用いて、被測定光ファイバFUTの長さを被測定対象物OBの測定に適した長さにすることにより、測定時間を短縮することができる。
【0121】
〔第3実施形態〕
〈光ファイバ特性測定システム〉
図8は、本発明の第3実施形態による光ファイバ特性測定システムの全体構成を示すブロック図である。尚、
図8においては、
図1,
図5に示す構成と同様の構成については同一の符号を付してある。
図8に示す通り、本実施形態の光ファイバ特性測定システム3は、光ファイバ特性測定装置10B、送信用光ファイバ20(第1光ファイバ)、光アイソレータ30、送信用光ファイバ40A(第2光ファイバ)、送信用光ファイバ40B(第3光ファイバ)、及び光サーキュレータ50を備える。尚、光サーキュレータ50に代えて、光方向性結合器(光カプラ)を設けても良い。
【0122】
図1に示す光ファイバ特性測定システム1は、光ファイバ特性測定装置10に接続された被測定光ファイバFUTの一端E1からポンプ光L2を入射させ、送信用光ファイバ20及び光アイソレータ30を介したプローブ光L1を被測定光ファイバFUTの他端E2から入射させるものであった。そして、被測定光ファイバFUT内で発生した誘導ブリルアン散乱光BRを、被測定光ファイバFUTの一端E1から光ファイバ特性測定装置10に入射させるものであった。
【0123】
また、
図4に示す光ファイバ特性測定システム2は、光ファイバ特性測定装置10Aに接続された被測定光ファイバFUTの一端E1からプローブ光L1を入射させ、送信用光ファイバ40A及び光サーキュレータ50を介したポンプ光L2を被測定光ファイバFUTの他端E2から入射させるものであった。そして、被測定光ファイバFUT内で発生した誘導ブリルアン散乱光BRを、光サーキュレータ50及び送信用光ファイバ40Bを介して光ファイバ特性測定装置10Aに入射させるものであった。
【0124】
これに対し、本実施形態の光ファイバ特性測定システム3は、いわば、光ファイバ特性測定システム1,2を組み合わせ、被測定光ファイバFUTの一端E1及び他端E2の双方を光ファイバ特性測定装置10Bに接続しないようにしたものである。つまり、光ファイバ特性測定システム3は、送信用光ファイバ20及び光アイソレータ30を介したプローブ光L1を被測定光ファイバFUTの一端E1から入射させ、送信用光ファイバ40A及び光サーキュレータ50を介したポンプ光L2を被測定光ファイバFUTの他端E2から入射させるものである。また、被測定光ファイバFUT内で発生した誘導ブリルアン散乱光BRを、光サーキュレータ50及び送信用光ファイバ40Bを介して光ファイバ特性測定装置10Bに入射させるものである。
【0125】
図9は、本発明の第3実施形態における光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。尚、
図9においては、
図3,
図6に示す構成と同様の構成については同一の符号を付してある。
図9に示す通り、本実施形態における光ファイバ特性測定装置10Bは、
図5に示す光ファイバ特性測定装置10Aの光アイソレータ19を省略した構成である。このため、出射ポートP11には光変調器13が接続され、光変調器13で生成されたプローブ光L1が出射ポートP11から出射される。
【0126】
送信用光ファイバ20は、
図1に示す送信用光ファイバ20と同様のものであり、光ファイバ特性測定装置10Bの出射ポートP11から出射されるプローブ光L1を被測定光ファイバFUTの一端E1に向けて導く。送信用光ファイバ20は、一端E11が光ファイバ特性測定装置10の出射ポートP11に接続され、他端E12が光アイソレータ30の入射端と光学的に結合される。
【0127】
光アイソレータ30は、
図1に示す光アイソレータ30と同様のものであり、送信用光ファイバ20によって導かれたプローブ光L1を被測定光ファイバFUTの一端E1に入射させる。尚、光アイソレータ30は、被測定光ファイバFUTの一端E1から出射されて送信用光ファイバ20に向かう光を遮断する。光アイソレータ30は、入射端が送信用光ファイバ20の他端E12と光学的に結合され、出射端が被測定光ファイバFUTの一端E1と光学的に結合される。
【0128】
光アイソレータ30は、送信用光ファイバ20の一端E11から光アイソレータ30の入射端までの光路長よりも光アイソレータ30の出射端から被測定光ファイバFUTの一端E1までの光路長が短くなるように配置される。また、光アイソレータ30は、光アイソレータ30の出射端から被測定光ファイバFUTの一端E1までの間において、プローブ光L1とポンプ光L2との相関ピークが発生しない位置に配置される。尚、プローブ光L1の光路長を極力短くするために、光アイソレータ30の入射端に送信用光ファイバ20の他端E12を直接接続し、光アイソレータ30の出射端に被測定光ファイバFUTの一端E1を直接接続しても良い。
【0129】
送信用光ファイバ40Aは、
図5に示す送信用光ファイバ40Aと同様のものであり、光ファイバ特性測定装置10Bの出射ポートP13から出射されるポンプ光L2を被測定光ファイバFUTの他端E2に向けて導く。送信用光ファイバ40Aは、一端E21が光ファイバ特性測定装置10Bの出射ポートP13に接続され、他端E22が光サーキュレータ50の第1ポートと光学的に結合される。
【0130】
送信用光ファイバ40Bは、
図5に示す送信用光ファイバ40Bと同様のものであり、被測定光ファイバFUT内で発生した誘導ブリルアン散乱光BR及び被測定光ファイバFUTを介したプローブ光L1を光ファイバ特性測定装置10Bの入射ポートP14に導く。送信用光ファイバ40Bは、一端E31が光ファイバ特性測定装置10Bの入射ポートP14に接続され、他端E32が光サーキュレータ50の第3ポートと光学的に結合される。この送信用光ファイバ40Bとしては、送信用光ファイバ40Aと同様に、例えば、シングルモードファイバを用いることができる。
【0131】
光サーキュレータ50は、
図5に示す送信用光ファイバ40Bと同様のものであり、第1ポート、第2ポート、及び第3ポートを有し、第1ポートから入射される光を第2ポートから出射し、第2ポートから入射される光を第3ポートから出射する。光サーキュレータ50の第1ポートには送信用光ファイバ40Aの他端E22が光学的に結合され、第2ポートには被測定光ファイバFUTの他端E2が光学的に結合され、第3ポートには、送信用光ファイバ40Bの他端E32が光学的に結合される。
【0132】
光サーキュレータ50は、送信用光ファイバ40Aの一端E21から光サーキュレータ50の第1ポートまでの光路長よりも光サーキュレータ50の第2ポートから被測定光ファイバFUTの他端E2までの光路長が短くなるように配置される。また、光サーキュレータ50は、光サーキュレータ50の第2ポートから被測定光ファイバFUTの他端E2までの間において、プローブ光L1とポンプ光L2との相関ピークが発生しない位置に配置される。尚、光路長を極力短くするために、光サーキュレータ50の第1ポート、第2ポート、及び第3ポートに、送信用光ファイバ40Aの他端E22、被測定光ファイバFUTの他端E2、及び送信用光ファイバ40Bの他端E32をそれぞれ直接接続しても良い。
【0133】
〈光ファイバ特性測定システムの動作〉
次に、光ファイバ特性測定システム3の動作について簡単に説明する。光ファイバ特性測定装置10Bに対して測定開始の指示がなされると、光ファイバ特性測定装置10Bにおいて、第1,第2実施形態の光ファイバ特性測定装置10,10Aと同様な動作が行われる。そして、光ファイバ特性測定装置10Bの出射ポートP11からプローブ光L1が出射されるとともに、出射ポートP13からポンプ光L2が出射される。
【0134】
光ファイバ特性測定装置10Bの出射ポートP11から出射されたプローブ光L1は、送信用光ファイバ20によって被測定光ファイバFUTの一端E1に向けて導かれる。そして、光アイソレータ30を介した後に、被測定光ファイバFUTの一端E1から被測定光ファイバFUTに入射される。これに対し、光ファイバ特性測定装置10Bの出射ポートP13から出射されたポンプ光L2は、送信用光ファイバ40Aによって被測定光ファイバFUTの他端E2に向けて導かれる。そして、光サーキュレータ50を介した後に、被測定光ファイバFUTの他端E2から被測定光ファイバFUTに入射される。
【0135】
被測定光ファイバFUTを介したプローブ光L1及び被測定光ファイバFUT内で発生した誘導ブリルアン散乱光BR(
図10参照)は、被測定光ファイバFUTの他端E2から出射され、光サーキュレータ50を介して送信用光ファイバ40Bの他端E32から送信用光ファイバ40Bに入射される。そして、送信用光ファイバ40Bによって光ファイバ特性測定装置10Bの入射ポートP14に導かれ、検出光L11として光検出器16に入射する。そして、第1,第2実施形態の光ファイバ特性測定装置10,10Aと同様な動作が行われて、被測定光ファイバFUTの長さ方向における特性が測定される。
【0136】
図10は、本発明の第3実施形態において、光ファイバ特性測定装置に接続される光ファイバ等を直線状に示した図である。尚、
図10においては、
図4,
図7に示すものと同じものについては同一の符号を付してある。光ファイバ特性測定装置10Bの出射ポートP11と出射ポートP13との間には、
図10に示す通り、光アイソレータ30及び光サーキュレータ50を介して光学的に結合された送信用光ファイバ20、被測定光ファイバFUT、及び送信用光ファイバ40Aが接続されている。
【0137】
尚、光アイソレータ30は、被測定光ファイバFUTの一端E1(被測定対象物OB)に極力近い位置に配置され、光サーキュレータ50は、被測定光ファイバFUTの他端E2(被測定対象物OB)に極力近い位置に配置される。また、光ファイバ特性測定装置10Bの入射ポートP14には、
図10に示す通り、他端E32が光サーキュレータ50と光学的に結合された送信用光ファイバ40Bが接続されている。
【0138】
具体的に、光アイソレータ30は、前述した通り、送信用光ファイバ20の一端E11から光アイソレータ30の入射端までの光路長よりも光アイソレータ30の出射端から被測定光ファイバFUTの一端E1までの光路長が短くなるように配置される。また、光アイソレータ30は、前述した通り、光アイソレータ30の出射端から被測定光ファイバFUTの一端E1までの間において、プローブ光L1とポンプ光L2との相関ピークが発生しない位置に配置される。
【0139】
光サーキュレータ50は、前述した通り、送信用光ファイバ40Aの一端E21から光サーキュレータ50の第1ポートまでの光路長よりも光サーキュレータ50の第2ポートから被測定光ファイバFUTの他端E2までの光路長が短くなるように配置される。また、光サーキュレータ50は、前述した通り、光サーキュレータ50の第2ポートから被測定光ファイバFUTの他端E2までの間において、プローブ光L1とポンプ光L2との相関ピークが発生しない位置に配置される。
【0140】
ここで、被測定光ファイバFUTは、第1,第2実施形態とは異なり、一端E1及び他端E2の双方が光ファイバ特性測定装置10Bに接続されない。このため、送信用光ファイバ20及び送信用光ファイバ40Aの長さを長くすれば、被測定光ファイバFUTを光ファイバ特性測定装置10Bからの距離が最大測定長MLの半分の長さ(ML/2)となる位置よりも遠方に配置することができる。これにより、被測定光ファイバFUTを光ファイバ特性測定装置10Bからの距離が最大測定長MLの半分の長さ(ML/2)となる位置よりも遠方に存在する被測定対象物OBの測定が可能になる。
【0141】
また、被測定光ファイバFUTの一端E1と光ファイバ特性測定装置10Bの出射ポートP11との間に送信用光ファイバ20及び光アイソレータ30を設け、被測定光ファイバFUTの他端E2と光ファイバ特性測定装置10Bの出射ポートP13との間に送信用光ファイバ40A及び光サーキュレータ50を設け、加えて送信用光ファイバ40Bを設けるだけで良い。このため、大幅なコスト上昇を招くこともない。
【0142】
ここで、被測定光ファイバFUTの長さLが、光ファイバ特性測定装置10Bの最大測定長MLの半分の長さ(ML/2)よりも短い場合であっても、送信用光ファイバ20及び送信用光ファイバ40Aの長さを長くすれば、被測定光ファイバFUTを同様に遠方に配置することができる。これにより、被測定光ファイバFUTの長さを被測定対象物OBの測定に適した最短の長さにすることができ、被測定光ファイバFUTのうちの測定を行う必要のない区間(
図10の区間R1,R2)を大幅に少なくすることができる。その結果として、被測定光ファイバFUTにおいて、プローブ光が受ける利得の低下を防止することができ、S/N比の低下も防止することができるため、温度や歪みの測定精度の低下を抑制することができる。
【0143】
また、プローブ光L1は送信用光ファイバ20によって伝送されて被測定光ファイバFUTに入射されるが、送信用光ファイバ40Aには入射されない。ポンプ光L2は送信用光ファイバ40Aによって伝送されて被測定光ファイバFUTに入射されるが、送信用光ファイバ20には入射されない。
【0144】
このため、ポンプ光L2を被測定光ファイバFUTに出射する周期は、第1,第2実施形態と同様に、被測定光ファイバFUTの長さLのみを考慮して決定すれば良く、送信用光ファイバ20の長さLpr及び送信用光ファイバ40Aの長さLpuを考慮する必要はない。具体的に、ポンプ光L2を被測定光ファイバFUTに出射する周期は、ポンプ光L2が被測定光ファイバFUTを往復するのに要する時間にポンプ光L2の時間幅の2倍の時間を加えて得られる時間であれば良い。
【0145】
従来は、光ファイバ特性測定装置10Bの出射ポートP11と出射ポートP13との間に接続される光ファイバの全長(
図10に示す例では、L+L
pr+L
pu)を考慮する必要があった。しかしながら、本実施形態では、光ファイバ特性測定装置10Bの出射ポートP11と出射ポートP13との間に接続される光ファイバのうちの、被測定光ファイバFUTの長さLのみを考慮すれば良いため、従来よりも測定時間を短くすることができる。尚、
図10において、区間R1,R2は、被測定光ファイバFUTのうちの、測定を行う必要のない区間を示している。
【0146】
また、本実施形態では、プローブ光L1を伝送するための送信用光ファイバ20及びポンプ光L2を伝送するための送信用光ファイバ40Aとして、例えば、シングルモードファイバを用いればよく、前述した特許文献2のように偏波保持ファイバを用いる必要がない。このため、偏波クロストーク(消光比)の影響によってプローブ光L1及びポンプ光L2を伝送する距離が制限(例えば、1km程度に制限)されてしまうこともない。
【0147】
また、本実施形態では、
図10に示す通り、ポンプ光L2が伝送される送信用光ファイバ40A内では、被測定光ファイバFUT内において現れる相関ピークP1~P3のような相関ピークは現れず、送信用光ファイバ40A内では誘導ブリルアン散乱現象が発生しない。このため、送信用光ファイバ40A内を伝播するポンプ光L2は、相関ピーク毎に生ずる誘導ブリルアン散乱によるプローブ光L1への光パワーの移動による減衰を受けない。このため、被測定光ファイバFUTに入射する前のポンプ光L2の光パワー強度が低下しなく、被測定光ファイバFUT内において現れる相関ピークでプローブ光L1が受ける利得の低下を抑制できるため、温度や歪みの測定精度の低下を抑制することができる。
【0148】
以上の通り、本実施形態では、光ファイバ特性測定装置10Bの出射ポートP11に送信用光ファイバ20の一端E11を接続し、出射ポートP11から出射されるプローブ光L1を被測定光ファイバFUTの一端E1に向けて導く。また、光ファイバ特性測定装置10Bの出射ポートP13に送信用光ファイバ40Aの一端E21を接続し、出射ポートP13から出射されるポンプ光L2を被測定光ファイバFUTの他端E2に向けて導く。また、光ファイバ特性測定装置10Bの入射ポートP14に送信用光ファイバ40Bの一端E31を接続する。そして、送信用光ファイバ20によって導かれたプローブ光L1を、光アイソレータ30を介して被測定光ファイバFUTの一端E1に入射させる。また、送信用光ファイバ40Aによって導かれたポンプ光L2を、光サーキュレータ50を介して被測定光ファイバFUTの他端E2に入射させ、被測定光ファイバFUTの他端E2から出射されるブリルアン散乱光BRを、光サーキュレータ50を介して送信用光ファイバ40Bの他端E32に入射させるようにしている。
【0149】
このように、本発明の第3実施形態では、被測定光ファイバFUTの両端を光ファイバ特性測定装置10Bに接続する必要がないため、被測定光ファイバFUT全体を光ファイバ特性測定装置10Bから離間した位置に配置することができる。ここで、プローブ光L1は、送信用光ファイバ20によって被測定光ファイバFUTの一端E1に向けて導かれ、光アイソレータ30を介して被測定光ファイバFUTの一端E1に入射される。ポンプ光L2は、送信用光ファイバ40Aによって被測定光ファイバFUTの他端E2に向けて導かれ、光サーキュレータ50を介して被測定光ファイバFUTの他端E2に入射される。尚、被測定光ファイバFUT内で生じた誘導ブリルアン散乱光BRは、光サーキュレータ50を介した後に、送信用光ファイバ40Bによって光ファイバ特性測定装置10Bに導かれる。これにより、大幅なコスト上昇を招くこと無く、且つ簡単な構成で、従来よりも被測定対象物OBの測定可能範囲を拡げることができる。尚、従来技術を用いて被測定対象物OBの温度や歪みを測定できる場合であっても、本実施形態を用いて、被測定光ファイバFUTの長さを被測定対象物OBの測定に適した最短の長さにすることにより、測定時間を短縮することができる。
【0150】
〔第1~第3実施形態の変形例〕
〈第1変形例〉
図11は、本発明の第1~第3実施形態による光ファイバ特性測定システムの第1変形例を示す図である。尚、
図11においては、
図1,
図5,
図8に示す構成と同じ構成については同一の符号を付してある。
【0151】
図11(a)は、第1実施形態による光ファイバ特性測定システム1の第1変形例を示す図である。
図11(a)に示す通り、本変形例に係る光ファイバ特性測定システム1Aは、被測定光ファイバFUT及び送信用光ファイバ20を、多芯ファイバ60によって実現したものである。多芯ファイバ60は、複数本の光ファイバ(例えば、2芯のシングルモードファイバ)を内蔵したものであり、複数本のうちの1本が被測定光ファイバFUTとして用いられ、他の1本が送信用光ファイバ20として用いられる。
【0152】
図11(b)は、第2実施形態による光ファイバ特性測定システム2の第1変形例を示す図である。
図11(b)に示す通り、本変形例に係る光ファイバ特性測定システム2Aは、被測定光ファイバFUT及び送信用光ファイバ40A,40Bを、多芯ファイバ60Aによって実現したものである。多芯ファイバ60Aは、複数本の光ファイバ(例えば、4芯のシングルモードファイバ)を内蔵したものであり、複数本のうちの1本が被測定光ファイバFUTとして用いられる。また、他の2本が送信用光ファイバ40A,40Bとして用いられる。尚、残りの1本は、不使用であっても良い。
【0153】
図11(c)は、第3実施形態による光ファイバ特性測定システム3の第1変形例を示す図である。
図11(c)に示す通り、本変形例に係る光ファイバ特性測定システム3Aは、送信用光ファイバ20及び送信用光ファイバ40A,40Bを、多芯ファイバ60Bによって実現したものである。多芯ファイバ60Bは、複数本の光ファイバ(例えば、4芯のシングルモードファイバ)を内蔵したものであり、複数本のうちの1本が送信用光ファイバ20として用いられる。また、他の2本が送信用光ファイバ40A,40Bとして用いられる。尚、残りの1本は、不使用であっても良い。
【0154】
以上の通り、第1変形例に係る光ファイバ特性測定システム1A,2A,3Aでは、光ファイバ特性測定装置10,10A,10Bに接続される複数の光ファイバが、1本の多芯ファイバ60,60A,60Bによって実現される。このため、光ファイバ特性測定装置10,10A,10Bと被測定対象物OBとの間の光ファイバの本数を減らすことができ、光ファイバ敷設時の作業負担を軽減することができる。
【0155】
また、多芯ファイバ60,60A,60Bを用いることにより、1本の光ファイバを用いる場合に比べて、許容張力を高くすることができるため破断しづらくなる。また、多芯ファイバ60A,60Bのように、不使用のものを予備としておくことにより、仮に、被測定光ファイバFUTや送信用光ファイバ40A,40Bが破断したとしても、予備のものを破断したものの代わりに用いることができる。これにより、破断が生じても光ファイバを新たに敷設することなく、早期に復旧することができる。
【0156】
ここで、第1変形例に係る光ファイバ特性測定システム1A,2A,3Aでは、多芯ファイバ60,60A,60Bに代えて、マルチコアファイバ(MCF:Multi Core Fiber)を用いても良い。ここで、マルチコアファイバは、1つのクラッドの中に複数のコアが配置された光ファイバである。例えば、
図11(a)に示す光ファイバ特性測定システム1Aでは、マルチコアファイバに設けられた複数のコアのうちの1つのコアが被測定光ファイバFUTとして用いられ、他のコアが送信用光ファイバ20として用いられる。
【0157】
また、
図11(b)に示す光ファイバ特性測定システム2Aでは、マルチコアファイバに設けられた複数のコアのうちの1つのコアが被測定光ファイバFUTとして用いられる。また、他の2つのコアが送信用光ファイバ40A,40Bとして用いられる。また、
図11(c)に示す光ファイバ特性測定システム3Aでは、マルチコアファイバに設けられた複数のコアのうちの1つのコアが送信用光ファイバ20として用いられ、他の2つのコアが送信用光ファイバ40A,40Bとして用いられる。
【0158】
〈第2変形例〉
図12は、本発明の第1~第3実施形態による光ファイバ特性測定システムの第2変形例を示す図である。尚、
図12においては、
図1,
図5,
図8に示す構成と同じ構成については同一の符号を付してある。
【0159】
図12(a)は、第1実施形態による光ファイバ特性測定システム1の第2変形例を示す図である。
図12(a)に示す通り、本変形例に係る光ファイバ特性測定システム1Bは、送信用光ファイバ20と光アイソレータ30との間に光増幅器70Aを設け、送信用光ファイバ20によって導かれたプローブ光L1を増幅するようにしたものである。
【0160】
光増幅器70Aは、送信用光ファイバ20によって伝送されるプローブ光L1の伝送損失による光パワー低下を補償するために設けられる。この光増幅器70Aとしては、例えば、EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier:エルビウム添加光ファイバ増幅器)等の増幅器を用いることができる。光増幅器70Aは、ケーブルCBを介して光ファイバ特性測定装置10に接続されている。光ファイバ特性測定装置10は、ケーブルCBを介して、光増幅器70Aを動作させるために必要な電力の供給と、光増幅器70Aに対する制御信号の送信とを行う。尚、光ファイバ特性測定装置10から送信される制御信号は、例えば、光増幅器70Aの増福率を制御するための制御信号である。
【0161】
図12(b)は、第2実施形態による光ファイバ特性測定システム2の第2変形例を示す図である。
図12(b)に示す通り、本変形例に係る光ファイバ特性測定システム2Bは、送信用光ファイバ40Aと光サーキュレータ50との間に光増幅器70Bを設け、送信用光ファイバ40Aによって導かれたポンプ光L2を増幅するようにしたものである。
【0162】
光増幅器70Bは、送信用光ファイバ40Aによって伝送されるポンプ光L2の伝送損失による光パワー低下を補償するために設けられる。この光増幅器70Bとしては、光増幅器70Aと同様に、例えば、EDFA等の増幅器を用いることができる。光増幅器70Bは、ケーブルCBを介して光ファイバ特性測定装置10Aに接続されている。光ファイバ特性測定装置10Aは、ケーブルCBを介して、光増幅器70Bを動作させるために必要な電力の供給と、光増幅器70Bに対する制御信号の送信とを行う。尚、光ファイバ特性測定装置10Aから送信される制御信号は、例えば、光増幅器70Bの増福率を制御するための制御信号である。
【0163】
図12(c)は、第3実施形態による光ファイバ特性測定システム3の第2変形例を示す図である。
図12(c)に示す通り、本変形例に係る光ファイバ特性測定システム3Bは、送信用光ファイバ20と光アイソレータ30との間に光増幅器70Aを設け、送信用光ファイバ40Aと光サーキュレータ50との間に光増幅器70Bを設けたものである。このような光ファイバ特性測定システム3Bは、送信用光ファイバ20によって導かれたプローブ光L1を増幅するとともに、送信用光ファイバ40Aによって導かれたポンプ光L2を増幅するようにしたものである。
【0164】
光増幅器70Aは、送信用光ファイバ20によって伝送されるプローブ光L1の伝送損失による光パワー低下を補償するために設けられる。光増幅器70Bは、送信用光ファイバ40Aによって伝送されるポンプ光L2の伝送損失による光パワー低下を補償するために設けられる。これら光増幅器70A,70Bとしては、例えば、EDFA等の増幅器を用いることができる。光増幅器70A,70Bは、ケーブルCBを介して光ファイバ特性測定装置10Bに接続されている。光ファイバ特性測定装置10Bは、ケーブルCBを介して、光増幅器70A,70Bを動作させるために必要な電力の供給と、光増幅器70A,70Bに対する制御信号の送信とを行う。尚、光ファイバ特性測定装置10Bから送信される制御信号は、例えば、光増幅器70A,70Bの増福率を制御するための制御信号である。
【0165】
以上の通り、第2変形例に係る光ファイバ特性測定システム1B,2B,3Bでは、送信用光ファイバ20によって伝送されるプローブ光L1、送信用光ファイバ40Aによって伝送されるポンプ光L2を増幅するようにしている。これにより、送信用光ファイバ20によって伝送されるプローブ光L1、送信用光ファイバ40Aによって伝送されるポンプ光L2の伝送損失による光パワー低下が補償され、最適なパワー強度のプローブ光L1及びポンプ光L2が被測定光ファイバFUTに入射される。その結果、温度や歪みの測定精度を向上させることができる。
【0166】
また、送信用光ファイバ20によって伝送されるプローブ光L1、送信用光ファイバ40Aによって伝送されるポンプ光L2が増幅されるため、光ファイバ特性測定装置10,10A,10Bから出射されるプローブ光L1及びポンプ光L2の光パワー強度を低めに設定することができる。これにより、ポンプ光のパワー強度が高い場合、プローブ光のパワー強度が高い場合、又はポンプ光及びローブ光の双方のパワー強度が高い場合に生ずる大きな減衰(自身の戻り光(散乱光)との相互作用によって発生する誘導ブリルアン散乱現象に起因する減衰)を防止することができる。その結果、温度や歪みの測定精度の低下を抑制することができる。
【0167】
〈第3変形例〉
図13は、本発明の第1~第3実施形態による光ファイバ特性測定システムの第3変形例を示す図である。尚、
図13においては、
図1,
図5,
図8に示す構成と同じ構成については同一の符号を付してある。
【0168】
図13(a)は、第1実施形態による光ファイバ特性測定システム1の第3変形例を示す図である。本変形例に係る光ファイバ特性測定システム1Cは、
図12(a)に示す光ファイバ特性測定システム1Bと同様に、送信用光ファイバ20と光アイソレータ30との間に光増幅器70Aを設け、送信用光ファイバ20によって導かれたプローブ光L1を増幅するようにしたものである。
【0169】
但し、本変形例に係る光ファイバ特性測定システム1Cは、
図12(a)に示す光ファイバ特性測定システム1Bとは、ケーブルCBが省略されている点が異なる。本変形例に係る光ファイバ特性測定システム1Cでは、光増幅器70Aに対する電源供給が、被測定対象物OBの付近の不図示の外部電源に接続された電源供給線PLを介して行われる。また、光ファイバ特性測定装置10は、光増幅器70Aに対する制御信号を無線信号によって送信する。
【0170】
図13(b)は、第2実施形態による光ファイバ特性測定システム2の第3変形例を示す図である。
図13(b)に示す通り、本変形例に係る光ファイバ特性測定システム2Cは、
図12(b)に示す光ファイバ特性測定システム2Bと同様に、送信用光ファイバ40Aと光サーキュレータ50との間に光増幅器70Bを設け、送信用光ファイバ40Aによって導かれたポンプ光L2を増幅するようにしたものである。
【0171】
但し、本変形例に係る光ファイバ特性測定システム2Cは、
図12(b)に示す光ファイバ特性測定システム2Bとは、ケーブルCBが省略されている点が異なる。本変形例に係る光ファイバ特性測定システム2Cでは、光増幅器70Bに対する電源供給が、被測定対象物OBの付近の不図示の外部電源に接続された電源供給線PLを介して行われる。また、光ファイバ特性測定装置10Aは、光増幅器70Bに対する制御信号を無線信号によって送信する。
【0172】
図13(c)は、第3実施形態による光ファイバ特性測定システム3の第3変形例を示す図である。
図13(c)に示す通り、本変形例に係る光ファイバ特性測定システム3Cは、
図12(c)に示す光ファイバ特性測定システム3Bと同様に、送信用光ファイバ20と光アイソレータ30との間に光増幅器70Aを設け、送信用光ファイバ40Aと光サーキュレータ50との間に光増幅器70Bを設けたものである。このような光ファイバ特性測定システム3Cは、送信用光ファイバ20によって導かれたプローブ光L1を増幅するとともに、送信用光ファイバ40Aによって導かれたポンプ光L2を増幅するようにしたものである。
【0173】
但し、本変形例に係る光ファイバ特性測定システム3Cは、
図12(c)に示す光ファイバ特性測定システム3Bとは、ケーブルCBが省略されている点が異なる。本変形例に係る光ファイバ特性測定システム3Cでは、光増幅器70A,70Bに対する電源供給が、被測定対象物OBの付近の不図示の外部電源に接続された電源供給線PLを介して行われる。また、光ファイバ特性測定装置10Bは、光増幅器70A,70Bに対する制御信号を無線信号によって送信する。
【0174】
以上の通り、第3変形例に係る光ファイバ特性測定システム1C,2C,3Cでは、第2変形例に係る光ファイバ特性測定システム1B,2B,3Bと同様に、送信用光ファイバ20によって伝送されるプローブ光L1、送信用光ファイバ40Aによって伝送されるポンプ光L2を増幅するようにしている。これにより、送信用光ファイバ20によって伝送されるプローブ光L1、送信用光ファイバ40Aによって伝送されるポンプ光L2の伝送損失による光パワー低下が補償され、最適なパワー強度のプローブ光L1及びポンプ光L2が被測定光ファイバFUTに入射される。その結果、温度や歪みの測定精度を向上させることができる。
【0175】
また、送信用光ファイバ20によって伝送されるプローブ光L1、送信用光ファイバ40Aによって伝送されるポンプ光L2が増幅されるため、光ファイバ特性測定装置10,10A,10Bから出射されるプローブ光L1及びポンプ光L2の光パワー強度を低めに設定することができる。これにより、ポンプ光のパワー強度が高い場合、プローブ光のパワー強度が高い場合、又はポンプ光及びローブ光の双方のパワー強度が高い場合に生ずる大きな減衰(自身の戻り光(散乱光)との相互作用によって発生する誘導ブリルアン散乱に起因する減衰)を防止することができる。その結果、温度や歪みの測定精度の低下を抑制することができる。
【0176】
また、光増幅器70A,70Bに対する電源供給が、被測定対象物OBの付近の不図示の外部電源に接続された電源供給線PLを介して行われ、光ファイバ特性測定装置10,10A,10Bから光増幅器70A,70Bへの制御信号の送信が無線信号によって行われる。このため、本変形例では、第2変形例で必要となるケーブルCBの敷設が不要となる。
【0177】
尚、以上説明した第1~第3実施形態による光ファイバ特性測定システムの変形例(第1~第3変形例)は、適宜組み合わせることが可能である。例えば、第1変形例と第2変形例とを組み合わせることが可能であり、第1変形例と第3変形例とを組み合わせることが可能である。このような組み合わせを行うことで、例えば、多芯ファイバ(或いは、マルチコアファイバ)によって伝送されてきたプローブ光L1やポンプ光L2を、光増幅器で増幅することが可能となる。
【0178】
〔第4実施形態〕
〈光ファイバ特性測定システム〉
図14は、本発明の第4実施形態による光ファイバ特性測定システムの全体構成を示すブロック図である。尚、
図14においては、
図5,
図8に示す構成と同様の構成については同一の符号を付してある。
図14に示す通り、本実施形態の光ファイバ特性測定システム4は、光ファイバ特性測定装置80、送信用光ファイバ40A(第2光ファイバ)、送信用光ファイバ40B(第3光ファイバ)、及び光サーキュレータ50を備える。尚、光サーキュレータ50に代えて、光方向性結合器(光カプラ)を設けても良い。
【0179】
光ファイバ特性測定装置80は、被測定光ファイバFUTの一端E1からポンプ光LP(連続光又はパルス光)を入射させ、被測定光ファイバFUTの一端E1から出射される自然ブリルアン散乱光LSに基づいて被測定光ファイバFUTの特性を測定する、所謂BOCDR方式の光ファイバ特性測定装置である。上記のポンプ光LPは、周波数変調が与えられた連続光又はパルス光である。上記の自然ブリルアン散乱光LSは、被測定光ファイバFUT内における自然ブリルアン散乱現象により生じた後方散乱光である。尚、光ファイバ特性測定装置80は、BOTDR方式の光ファイバ特性測定装置であっても良い。BOTDR方式の場合、上記ポンプ光LPはパルス光である。
【0180】
図15は、本発明の第4実施形態における光ファイバ特性測定装置の要部構成を示すブロック図である。
図15に示す通り、本実施形態の光ファイバ特性測定装置80は、光源部81、光分岐部82、光遅延部83、光結合部84、検出部85、スペクトル取得部86、スペクトル解析部87、及び制御部88、並びに、出射ポートP21(第1ポート)及び入射ポートP22(第2ポート)を備える。尚、
図15に示す光ファイバ特性測定装置80は、連続光をポンプ光LPとして出射するものである。パルス光をポンプ光LPとして出射するものは、光分岐部82と出射ポートP21との間に、
図3に示すパルス変調器14と同様のものが設けられる。
【0181】
光源部81は、光源81aと変調部81bとを備えており、制御部88の制御の下で周波数変調された連続光L0を出射する。光源81aは、例えば分布帰還型レーザダイオード(DFB-LD:Distributed Feed-Back Laser Diode)等の半導体レーザ素子を備えており、変調部81bから出力される変調信号m1に応じて周波数変調された連続光L0を出射する。変調部81bは、制御部88の制御の下で、光源81aから出射される連続光L0を周波数変調するための変調信号m1を出力する。この変調信号m1は、例えば正弦波状の信号であり、その周波数(変調周波数fm)及び振幅が制御部88によって制御される。
【0182】
光分岐部82は、光源部81から出射された連続光L0を、予め規定された強度比(例えば、1対1)のポンプ光LPと参照光LRとに分岐する。光分岐部82で分岐されたポンプ光LPは、出射ポートP21を介して光ファイバ特性測定装置80の外部に出射される。
【0183】
光遅延部83は、光分岐部82で分岐された参照光LRを所定の時間だけ遅延させる。光遅延部83は、例えば、所定の長さの光ファイバを含む。光ファイバの長さを変更することで、遅延時間を調節することができる。このような光遅延部83を設けるのは、変調周波数fmの掃引を行っても現れる位置が移動しない0次相関ピークを被測定光ファイバFUTの外部に配置するためである。尚、光遅延部83は、光分岐部82と出射ポートP21の間に設けられていても良い。
【0184】
光結合部84は、入射ポートP22から入射される被測定光ファイバFUTで生じた自然ブリルアン散乱光LSと、光分岐部82から出射されて光遅延部83を介した参照光LRとを結合させる。また、光結合部84は、結合させた光を予め規定された強度比(例えば、1対1)の2つの光に分岐して検出部85に出射する。光結合部84によって分岐された2つの光の各々は、例えば被測定光ファイバFUTからの自然ブリルアン散乱光LSの50%と参照光の50%とを含む。このような光結合部84としては、例えば光カプラを用いることができる。
【0185】
検出部85は、光結合部84から出射される2つの光に含まれる自然ブリルアン散乱光LSと参照光LRとを干渉させることによって光ヘテロダイン検波を行う。検出部85は、例えば、2つのフォトダイオード(PD: Photo Diode)を直列接続してなるバランスド・フォトダイオードを備えており、光結合部84から出射される2つの光を2つのフォトダイオードによってそれぞれ受光する。検出部85からは、自然ブリルアン散乱光LSと参照光LRとの周波数差分を示す干渉信号(ビート信号)である検出信号が出力される。
【0186】
スペクトル取得部86は、検出部85から出力される検出信号の周波数特性を測定する。つまり、スペクトル取得部86は、検出部85から出力される検出信号から、自然ブリルアン散乱光LSのスペクトルを得る。スペクトル取得部86は、例えば、スペクトラムアナライザ(ESA:Electrical Spectrum Analyzer)を備えていても良い。或いは、スペクトル取得部86は、オシロスコープ等の時間軸測定器と、高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を行う変換器とを備えており、時間軸測定器で取得した時間的に連続なデータを、変換器でスペクトルデータに変換するものであっても良い。
【0187】
スペクトル解析部87は、スペクトル取得部86で得られた自然ブリルアン散乱光LSのスペクトルを解析してブリルアン周波数シフト量を求めることにより被測定光ファイバFUTの特性を測定する。このスペクトル解析部87は、求められたブリルアン周波数シフト量を、歪みや温度等の物理情報として表示する表示部を含んで良い。また、被測定光ファイバFUTの歪みや温度等の情報を、その測定対象である物体の状態を意味する情報に解釈して表示部に表示しても良い。表示部は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)表示装置等である。
【0188】
制御部88は、スペクトル解析部87の解析結果等を参照しつつ、光ファイバ特性測定装置80の動作を統括して制御する。例えば、制御部88は、光源部81に設けられた変調部81bを制御して、光源部81から出射される連続光L0の変調周波数fmを変更させる。連続光L0の変調周波数fmを変更させるのは、例えば被測定光ファイバFUTの長さ方向に沿って相関ピークを移動させるためである。尚、制御部88は、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータで実現することができる。
【0189】
送信用光ファイバ40Aは、光ファイバ特性測定装置80の出射ポートP21から出射されるポンプ光LPを被測定光ファイバFUTの一端E1に向けて導く光ファイバである。送信用光ファイバ40Aは、一端E21が光ファイバ特性測定装置80の出射ポートP21に接続され、他端E22が光サーキュレータ50の第1ポートと光学的に結合される。この送信用光ファイバ40Aとしては、例えば、シングルモードファイバを用いることができる。
【0190】
送信用光ファイバ40Bは、被測定光ファイバFUT内で発生した自然ブリルアン散乱光LSを光ファイバ特性測定装置80の入射ポートP22に導く光ファイバである。送信用光ファイバ40Bは、一端E31が光ファイバ特性測定装置80の入射ポートP22に接続され、他端E32が光サーキュレータ50の第3ポートと光学的に結合される。この送信用光ファイバ40Bとしては、送信用光ファイバ40Aと同様に、例えば、シングルモードファイバを用いることができる。
【0191】
光サーキュレータ50は、第1ポート、第2ポート、及び第3ポートを有し、第1ポートから入射される光を第2ポートから出射し、第2ポートから入射される光を第3ポートから出射し、第3ポートから入射される光を第1ポートから出射する。光サーキュレータ50の第1ポートには送信用光ファイバ40Aの他端E22が光学的に結合され、第2ポートには被測定光ファイバFUTの一端E1が光学的に結合され、第3ポートには、送信用光ファイバ40Bの他端E32が光学的に結合される。
【0192】
光サーキュレータ50は、送信用光ファイバ40Aの一端E21から光サーキュレータ50の第1ポートまでの光路長よりも光サーキュレータ50の第2ポートから被測定光ファイバFUTの一端E1までの光路長が短くなるように配置される。尚、光路長を極力短くするために、光サーキュレータ50の第1ポート、第2ポート、及び第3ポートに、送信用光ファイバ40Aの他端E22、被測定光ファイバFUTの一端E1、及び送信用光ファイバ40Bの他端E32をそれぞれ直接接続しても良い。
【0193】
〈光ファイバ特性測定システムの動作〉
次に、光ファイバ特性測定システム4の動作について簡単に説明する。光ファイバ特性測定装置80に対して測定開始の指示がなされると、光ファイバ特性測定装置80の光源部81に設けられた変調部81bが制御部88によって制御され、光源81aからは変調周波数fmで周波数変調された連続光L0が出射される。
【0194】
光源81aから出射された連続光L0は、光分岐部82に入射してポンプ光LPと参照光LRとに分岐される。分岐されたポンプ光LPは、出射ポートP21から出射される。光ファイバ特性測定装置80の出射ポートP21から出射されたポンプ光LPは、送信用光ファイバ40Aによって被測定光ファイバFUTの一端E1に向けて導かれる。そして、光サーキュレータ50を介した後に、被測定光ファイバFUTの一端E1から被測定光ファイバFUTに入射される。
【0195】
ポンプ光LPが被測定光ファイバFUT内を伝播するに伴って、被測定光ファイバFUT内では自然ブリルアン散乱光LSが順次発生する。自然ブリルアン散乱光LSは、ポンプ光LPが伝播する方向とは反対方向に伝播して被測定光ファイバFUTの一端E1から順次出射される。被測定光ファイバFUTの一端E1から出射された自然ブリルアン散乱光LSは、光サーキュレータ50を介して送信用光ファイバ40Bの他端E32から送信用光ファイバ40Bに入射される。そして、送信用光ファイバ40Bによって光ファイバ特性測定装置80の入射ポートP22に導かれて光結合部84に入射する。
【0196】
光結合部84に入射した自然ブリルアン散乱光LSは、光分岐部82で分岐されて光遅延部83を介した参照光LRと結合し、その干渉光が検出部85で検出される。上記の干渉光が検出されると、検出部85からスペクトル取得部86に検出信号が出力される。この検出信号が入力されると、自然ブリルアン散乱光LSのスペクトルを得る処理がスペクトル取得部86で行われる。そして、そのスペクトルのパワーレベルが最大となる周波数を解析し、ブリルアン周波数シフト量を求めることにより被測定光ファイバFUTの特性を測定する処理がスペクトル解析部87で行われる。
【0197】
図14に示す通り、本実施形態では、被測定光ファイバFUTの一端E1及び他端E2の双方が光ファイバ特性測定装置80に接続されない。このため、光ファイバ特性測定装置80に接続される送信用光ファイバ40A,40Bを被測定対象物OBの付近まで延ばしてしまえば、被測定光ファイバFUTの長さを被測定対象物OBの測定に適した最短の長さにすることができる。
【0198】
また、ポンプ光LPを被測定光ファイバFUTに出射する周期は、第1~第3実施形態と同様に、被測定光ファイバFUTの長さLのみを考慮して決定すれば良く、送信用光ファイバ40Aの長さを考慮する必要はない。上述の通り、本実施形態では、被測定光ファイバFUTの長さを被測定対象物OBの測定に適した最短の長さにすることができ、測定を行う必要のない区間を大幅に少なくすることができる。このため、ポンプ光LPを被測定光ファイバFUTに出射する周期を短縮することができ、被測定光ファイバFUTの特性の測定に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0199】
以上の通り、本実施形態では、光ファイバ特性測定装置80の出射ポートP21に送信用光ファイバ40Aの一端E21を接続し、出射ポートP21から出射されるポンプ光LPを被測定光ファイバFUTの一端E1に向けて導く。また、光ファイバ特性測定装置80の入射ポートP22に送信用光ファイバ40Bの一端E31を接続する。そして、送信用光ファイバ40Aによって導かれたポンプ光LPを、光サーキュレータ50を介して被測定光ファイバFUTの一端E1に入射させ、被測定光ファイバFUTの一端E1から出射される自然ブリルアン散乱光LSを、光サーキュレータ50を介して送信用光ファイバ40Bの他端E32に入射させるようにしている。
【0200】
このように、本実施形態では、被測定光ファイバFUTの一端E1及び他端E2の双方を光ファイバ特性測定装置80に接続する必要がないため、被測定光ファイバFUT全体を光ファイバ特性測定装置80から離間した位置に配置することができる。ここで、ポンプ光LPは、送信用光ファイバ40Aによって被測定光ファイバFUTの一端E1に向けて導かれ、光サーキュレータ50を介して被測定光ファイバFUTの一端E1に入射される。尚、被測定光ファイバFUT内で生じた自然ブリルアン散乱光LSは、光サーキュレータ50を介した後に、送信用光ファイバ40Bによって光ファイバ特性測定装置80に導かれる。これにより、大幅なコスト上昇を招くこと無く、従来よりも被測定対象物の測定可能範囲を拡げることができる。なお、従来技術を用いて被測定対象物OBの温度や歪みを測定できる場合であっても、本実施形態を用いて、被測定光ファイバFUTの長さを被測定対象物OBに適した長さにすることにより、測定時間を短縮することができる。
【0201】
尚、本発明の第4実施形態においても、本発明の第1~第3実施形態による光ファイバ特性測定システムの変形例を適用することが可能である。例えば、第2,第3実施形態による光ファイバ特性測定システムの第1変形例と同様に、送信用光ファイバ40A,40Bを1本の多芯ファイバ又はマルチコアファイバによって実現しても良い。また、第2,第3実施形態による光ファイバ特性測定システムの第2,第3変形例と同様に、送信用光ファイバ40Aによって伝送されるポンプ光LPを増幅するようにしても良い。
【0202】
以上、本発明の実施形態による光ファイバ特性測定システムについて説明したが、本発明は上記実施形態に制限される訳ではなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した第1~第3実施形態の第1変形例では、多芯ファイバ60,60A,60Bが、例えば、2芯又は4芯のシングルモードファイバであると説明した。しかしながら、多芯ファイバ60,60A,60Bの芯数は、2芯又は4芯に限られることはなく、4芯よりも多い芯数であっても良い。
【符号の説明】
【0203】
1~4 光ファイバ特性測定システム
1A~1C 光ファイバ特性測定システム
2A~2C 光ファイバ特性測定システム
3A~3C 光ファイバ特性測定システム
10,10A,10B 光ファイバ特性測定装置
20 送信用光ファイバ
30 光アイソレータ
40A,40B 送信用光ファイバ
50 光サーキュレータ
60,60A,60B 多芯ファイバ
70A,70B 光増幅器
80 光ファイバ特性測定装置
BR ブリルアン散乱光
CB ケーブル
E1 被測定光ファイバの一端
E2 被測定光ファイバの他端
FUT 被測定光ファイバ
L1 プローブ光
L2 ポンプ光
LP ポンプ光
P11 出射ポート
P12 入出射ポート
P13 出射ポート
P14 入射ポート
P21 出射ポート
P22 入射ポート