(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019516
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/18 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
C08J9/18 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124289
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 肇
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 夕希也
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA24A
4F074AB03
4F074BA32
4F074CA34
4F074CA38
4F074CA49
4F074CC03Y
4F074CC04Y
4F074DA02
4F074DA08
4F074DA32
4F074DA33
4F074DA35
4F074DA45
4F074DA47
(57)【要約】
【課題】成形可能な成形圧の範囲が広く、かつ、離型性に優れるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂(C)から構成される発泡芯層とポリプロピレン系樹脂(S)から構成される被覆層とを有し、ポリプロピレン系樹脂(C)の融点が125℃以上170℃以下であり、以下の(1)~(4)を満たす、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。(1)ポリプロピレン系樹脂(S)が低温側の融解ピークと高温側の融解ピークとを有する、(2)ポリプロピレン系樹脂(S)の低温側の融解ピークの頂点温度がポリプロピレン系樹脂(C)の融点よりも低い、(3)ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度が138℃以上である、(4)ポリプロピレン系樹脂(C)の融点とポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度との差が-10℃以上15℃以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂(C)から構成される発泡芯層と、ポリプロピレン系樹脂(S)から構成される被覆層とを有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、
前記ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcが、125℃以上170℃以下であり、
以下の(1)~(4)を満たす、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(1)前記ポリプロピレン系樹脂(S)が、熱流束示差走査熱量測定によって該樹脂を10℃/分の加熱速度で30℃から200℃まで加熱し、次に10℃/分の冷却速度で200℃から30℃まで冷却し、再度10℃/分の加熱速度で加熱した際に得られる2回目のDSC曲線において、低温側の融解ピークと高温側の融解ピークとを有する、
(2)前記ポリプロピレン系樹脂(S)の低温側の融解ピークの頂点温度Tmslが、前記ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcよりも低い、
(3)前記ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshが、138℃以上である、
(4)前記ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcと前記ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshとの差[Tmc-Tmsh]が、-10℃以上15℃以下である。
【請求項2】
前記ポリプロピレン系樹脂(S)の低温側の融解ピークの頂点温度Tmslが、125℃以上135℃以下である、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcと前記ポリプロピレン系樹脂(S)の低温側の融解ピークの頂点温度Tmslとの差[Tmc-Tmsl]が、0℃を超え25℃以下である、請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
前記ポリプロピレン系樹脂(S)の全融解熱量(ΔHt)に対する、前記ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの融解熱量(ΔHh)の比[ΔHh/ΔHt]が、0.35以上0.80以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項5】
前記ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshと低温側の融解ピークの頂点温度Tmslとの差[Tmsh-Tmsl]が10℃以上20℃以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項6】
前記ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcが、130℃以上150℃以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項7】
前記ポリプロピレン系樹脂(S)が、プロピレン成分を主成分とし、エチレン成分とブテン成分とを含むプロピレン系共重合体である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項8】
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の嵩密度が、10kg/m3以上30kg/m3以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項9】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する方法であって、
ポリプロピレン系樹脂(C)から構成された芯層と、ポリプロピレン系樹脂(S)から構成され、該芯層を被覆する被覆層とを有する多層樹脂粒子を造粒する工程と、
密閉容器内で、前記多層樹脂粒子を分散媒中に分散させる工程と、
前記分散媒中に分散させた上記多層樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程と、
前記発泡剤を含む前記多層樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を製造する工程と、を有し、
前記ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcが、125℃以上170℃以下であり、
以下の(1)~(4)を満たす、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(1)前記ポリプロピレン系樹脂(S)が、熱流束示差走査熱量測定によって該樹脂を10℃/分の加熱速度で30℃から200℃まで加熱し、次に10℃/分の冷却速度で200℃から30℃まで冷却し、再度10℃/分の加熱速度で加熱した際に得られる2回目のDSC曲線において、低温側の融解ピークと高温側の融解ピークとを有する、
(2)前記ポリプロピレン系樹脂(S)の低温側の融解ピークの頂点温度Tmslが、前記ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcよりも低い、
(3)前記ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshが、138℃以上である、
(4)前記ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcと前記ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshとの差[Tmc-Tmsh]が、-10℃以上15℃以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体は、耐薬品性、耐衝撃性、圧縮歪回復性等に優れているため、衝撃吸収材、断熱材、各種包装材等として、食品容器、電気・電子部品の包装又は緩衝材、自動車バンパーや内装部材、住宅用断熱材等の建築部材、雑貨等の広い分野で利用されている。
【0003】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は、例えば、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を成形型内に充填し、スチーム等の加熱媒体で加熱することにより、発泡粒子を二次発泡させると共にその表面を溶融させて相互に融着させて、所望の形状に成形するという型内成形法によって製造される。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の型内成形において、加熱媒体による加熱の温度は、主に、発泡層を構成する樹脂の融点を考慮して設定される。
【0004】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、プロピレン系樹脂の結晶性及び耐熱性に起因する成形加工の難しさを有するため、成形加工性向上の検討が行われている。例えば、特許文献1には、ポリプロピレン系樹脂から形成される芯層とポリプロピレン系樹脂から形成される外層とからなり、外層のポリプロピレン系樹脂の融点と芯層のポリプロピレン系樹脂の融点が特定の関係を有し、外層の厚さが特定値以下である多層樹脂粒子に発泡剤を含浸させて、発泡させるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法が記載され、該製造方法により得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、低い成形加熱温度(成形圧力)で発泡粒子相互の融着性に優れるという効果を奏する。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、その成形条件や、基材樹脂の種類によっては離型性に劣る場合がある。特に、見掛け密度の低い発泡粒子を用いる場合や、成形加熱温度が高い場合において離型性に劣る場合がある。したがって、発泡粒子成形体の生産性をより高める観点から、幅広い成形加熱温度範囲において離型性が良好な発泡粒子が求められる。発泡粒子の離型性を改善するために、例えば、特許文献2及び3には、金型又は成形空間内の可動部材に櫛歯を設けた成形装置が開示されている。また、例えば、特許文献4には、金型の内壁面の少なくとも一面側に、発泡粒子に接する面に向かって開口面積が拡がってゆく断面形状を有する細孔又はスリットが形成された金型を用いた発泡粒子成形体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-68016号公報
【特許文献2】特開2001-328135号公報
【特許文献3】特開2002-172642号公報
【特許文献4】特開2015-214110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2から4は、専用の装置を必要とするものであり、汎用性がある装置を使用した場合であっても、発泡粒子成形体を成形可能な成形加熱温度の範囲が広く、離型性に優れるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の実現が望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、成形可能な成形加熱温度の範囲が広く、かつ、離型性に優れるポリプロピレン系樹脂発泡粒子およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、以下に示す構成を採用することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
<1> ポリプロピレン系樹脂(C)から構成される発泡芯層と、ポリプロピレン系樹脂(S)から構成される被覆層とを有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、前記ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcが、125℃以上170℃以下であり、以下の(1)~(4)を満たす、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(1)前記ポリプロピレン系樹脂(S)が、熱流束示差走査熱量測定によって該樹脂を10℃/分の加熱速度で30℃から200℃まで加熱し、次に10℃/分の冷却速度で200℃から30℃まで冷却し、再度10℃/分の加熱速度で加熱した際に得られる2回目のDSC曲線において、低温側の融解ピークと高温側の融解ピークとを有する、
(2)前記ポリプロピレン系樹脂(S)の低温側の融解ピークの頂点温度Tmslが、前記ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcよりも低い、
(3)前記ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshが、138℃以上である、
(4)前記ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcと前記ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshとの差[Tmc-Tmsh]が、-10℃以上15℃以下である。
<2> 前記ポリプロピレン系樹脂(S)の低温側の融解ピークの頂点温度Tmslが、125℃以上135℃以下である、<1>に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
<3> 前記ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcと前記ポリプロピレン系樹脂(S)の低温側の融解ピークの頂点温度Tmslとの差[Tmc-Tmsl]が、0℃を超え25℃以下である、<1>または<2>に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
<4> 前記ポリプロピレン系樹脂(S)の全融解熱量(ΔHt)に対する、前記ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの融解熱量(ΔHh)の比[ΔHh/ΔHt]が、0.35以上0.80以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
<5> 前記ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshと低温側の融解ピークの頂点温度Tmslとの差[Tmsh-Tmsl]が10℃以上20℃以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
<6> 前記ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcが、130℃以上150℃以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
<7> 前記ポリプロピレン系樹脂(S)が、プロピレン成分を主成分とし、エチレン成分とブテン成分とを含むプロピレン系共重合体である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
<8> 前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の嵩密度が、10kg/m3以上30kg/m3以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
<9> ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する方法であって、ポリプロピレン系樹脂(C)から構成された芯層と、ポリプロピレン系樹脂(S)から構成され、該芯層を被覆する被覆層とを有する多層樹脂粒子を造粒する工程と、密閉容器内で、前記多層樹脂粒子を分散媒中に分散させる工程と、前記分散媒中に分散させた上記多層樹脂粒子に発泡剤を含浸させる工程と、前記発泡剤を含む前記多層樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を製造する工程と、を有し、前記ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcが、125℃以上170℃以下であり、以下の(1)~(4)を満たす、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
(1)前記ポリプロピレン系樹脂(S)が、熱流束示差走査熱量測定によって該樹脂を10℃/分の加熱速度で30℃から200℃まで加熱し、次に10℃/分の冷却速度で200℃から30℃まで冷却し、再度10℃/分の加熱速度で加熱した際に得られる2回目のDSC曲線において、低温側の融解ピークと高温側の融解ピークとを有する、
(2)前記ポリプロピレン系樹脂(S)の低温側の融解ピークの頂点温度Tmslが、前記ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcよりも低い、
(3)前記ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshが、138℃以上である、
(4)前記ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcと前記ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshとの差[Tmc-Tmsh]が、-10℃以上15℃以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成形可能な成形加熱温度の範囲が広く、かつ、その全範囲において離型性に優れるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1で使用した被覆層のポリプロピレン系樹脂の2回目のDSC曲線を示した図である。
【
図2】発泡粒子の高温ピークの求め方を説明するための図である。
【
図3】比較例1で使用した被覆層のポリプロピレン系樹脂の2回目のDSC曲線を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[ポリプロピレン系樹脂発泡粒子]
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子(以下、単にポリプロピレン系樹脂発泡粒子又は発泡粒子ともいう)は、ポリプロピレン系樹脂(C)から構成される発泡芯層(以下、単に発泡芯層ともいう)と、ポリプロピレン系樹脂(S)から構成される被覆層(以下、単に被覆層ともいう)とを有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcが、125℃以上170℃以下であり、以下の(1)~(4)を満たす。
(1)ポリプロピレン系樹脂(S)が、熱流束示差走査熱量測定によって該樹脂を10℃/分の加熱速度で30℃から200℃まで加熱し、次に10℃/分の冷却速度で200℃から30℃まで冷却し、再度10℃/分の加熱速度で加熱した際に得られる2回目のDSC曲線において、低温側の融解ピークと高温側の融解ピークとを有する、
(2)ポリプロピレン系樹脂(S)の低温側の融解ピークの頂点温度Tmslが、ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcよりも低い、
(3)ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshが、138℃以上である、
(4)ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcとポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshとの差[Tmc-Tmsh]が、-10℃以上15℃以下である。
【0013】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、特定の関係を有するポリプロピレン系樹脂(C)及びポリプロピレン系樹脂(S)を、それぞれ発泡芯層及び被覆層とする多層構造の発泡粒子であることにより、成形可能な成形圧が広く、すなわち成形性に優れ、かつ離型性に優れる。
具体的には、成形性と離型性とを両立するためには、上記(1)から(4)を満たすポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いることがよいことを見出した。
従来、融着性を向上するために、発泡芯層を構成するポリプロピレン系樹脂よりも融点の低いポリプロピレン系樹脂から構成される被覆層を設けた発泡粒子においては、離型性が損なわれる傾向があった。特に、成形加熱温度が高い条件においては、被覆層の樹脂が軟化して成形型に付着しやすいためか、離型性が著しく損なわれる傾向があった。また、見掛け密度の低い発泡粒子を用いた場合においても離型性が著しく損なわれる傾向があった。本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が、上記(1)から(4)を満たすことにより、融着性に優れ、かつ成形性と離型性とを両立できることを見出した。
【0014】
<被覆層>
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の被覆層は、発泡芯層を被覆するものである。被覆層は、発泡芯層の外表面略全体を覆っていることが好ましく、発泡芯層の外表面全体を完全に覆っていてもよい。具体的には、被覆層は、芯層の表面の50%以上の面積を覆うことが好ましく、70%以上の面積を覆うことがより好ましく、そして、実質的に100%の面積を覆っていてもよく、90%以下の面積を覆っていてもよい。
【0015】
被覆層は、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体(以下、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体又は発泡粒子成形体ともいう)の外観の観点から、非発泡状態又は実質的に非発泡状態であることが好ましく、非発泡状態であることがより好ましい。非発泡状態又は実質的に非発泡状態とは、ほとんど気泡構造がないことを意味する。また、一旦形成された気泡が破泡して気泡が消滅した状態も包含する。なお、本発明の目的効果を阻害しない範囲において、被覆層が微発泡状態であってもよい。
【0016】
(ポリプロピレン系樹脂(S))
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の被覆層は、ポリプロピレン系樹脂(S)から構成される。本明細書中、ポリプロピレン系樹脂とはプロピレンに由来する構成単位の含有量が50質量%以上であるポリマーをいう。ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン系共重合体又はその混合物等が例示される。また、ポリプロピレン系樹脂にはポリプロピレン以外の他の樹脂やエラストマー等の他の重合体を含んでもよいが、その含有量は20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
【0017】
≪(1)ダブルピーク≫
ポリプロピレン系樹脂(S)は、JIS K 7121:1987に基づき、状態調節として「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、状態調節された試験片を10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することにより得られるDSC曲線において、低温側の融解ピークと高温側の融解ピークとを有する。具体的には、23℃、50%RHで24時間以上状態調節した樹脂を試験片とし、熱流束示差走査熱量測定によって該樹脂を10℃/分の加熱速度で30℃から200℃まで加熱し、次に10℃/分の冷却速度で200℃から30℃まで冷却し、再度10℃/分の加熱速度で加熱した際に得られる2回目のDSC曲線において、低温側の融解ピークと高温側の融解ピークとを有する。ここで、低温側の融解ピーク及び高温側の融解ピークを有するとは、低温側の融解ピークと高温側の融解ピークとが互いに異なるピークの頂点温度(融点)を有するとともに、各々の融解熱量が10J/g以上であるものをいう。なお、融解熱量の測定方法は、後述する。低温側の融解ピークと高温側の融解ピークの一部が重なっていてもよい。本明細書において、上記ポリプロピレン系樹脂(S)の2回目のDSC曲線における、低温側の融解ピークと高温側の融解ピークとを総称してダブルピークと呼ぶことがある。
なお、上記ポリプロピレン系樹脂(S)の2回目のDSC曲線において、融解ピークが3つ以上現れた場合には、最も低温側に頂点温度を有し、かつ融解熱量が10J/g以上の融解ピークを低温側の融解熱量とし、最も高温側に頂点温度を有し、かつ融解熱量が10J/g以上の融解ピークを高温側の融解ピークとする。
ポリプロピレン系樹脂(S)が、2回目のDSC曲線において、低温側の融解ピーク及び高温側の融解ピーク(ダブルピーク)を有さず、単一の融解ピークのみを有する場合には、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の成形性と離型性とを両立することができないおそれがある。
【0018】
≪(2)低温側の融解ピークの頂点温度Tmsl≫
ポリプロピレン系樹脂(S)の低温側の融解ピークの頂点温度Tmslは、後述するポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcよりも低い。TmslがTmcよりも低いことにより、低い成形加熱温度であっても融着性に優れ、成形性が向上する。また、同様の観点から、Tmslは、好ましくは135℃以下、より好ましくは132℃以下、更に好ましくは130℃以下である。一方、Tmslは、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の離型性(以下、単に離型性ともいう)をより向上させる観点から、好ましくは125℃以上、より好ましくは126℃以上、更に好ましくは127℃以上である。
【0019】
≪(3)高温側の融解ピークの頂点温度Tmsh≫
ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshは、138℃以上である。Tmshが138℃未満の場合には、発泡粒子は、特に成形加熱温度が高い条件において離型性が損なわれるおそれがある。この観点から、Tmshは、好ましくは139℃以上、より好ましくは140℃以上、更に好ましくは141℃以上である。また、成形性をより向上させる観点からは、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは155℃以下、より更に好ましくは150℃以下、より更に好ましくは145℃以下である。
【0020】
≪(4)ポリプロピレン系樹脂(C)の融点TmcとTmshとの差≫
後述するポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcとポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshとの差[Tmc-Tmsh]は、-10℃以上15℃以下である。差[Tmc-Tmsh]が15℃超えの場合には、発泡粒子は、比較的融点の高い樹脂を使用した場合において、離型性が損なわれるおそれがある。この観点から、差[Tmc-Tmsh]は、好ましくは12℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは7℃以下である。また、差[Tmc-Tmsh]が-10℃未満の場合には、成形性と離型性とを両立することができないおそれがある。成形性が低下することを抑制しつつ、離型性を改善する観点から、差[Tmc-Tmsh]は、好ましくは-8℃以上、更に好ましくは-5℃以上である。
【0021】
≪ポリプロピレン系樹脂(C)の融点TmcとTmslとの差≫
後述するポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcとポリプロピレン系樹脂(S)の低温側の融解ピークの頂点温度Tmslとの差[Tmc-Tmsl]は、上述の通り、成形性の観点から、0℃を超える。発泡粒子の成形性をより向上させる観点からは、差[Tmc-Tmsl]は、より好ましくは5℃以上であり、更に好ましくは10℃以上である。一方、離型性をより向上させる観点及び発泡芯層と被覆層との剥離抑制の観点からは、差[Tmc-Tmsl]は、好ましくは25℃以下、より好ましくは22℃以下、更に好ましくは20℃以下である。
【0022】
≪TmshとTmslとの差≫
ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshと低温側の融解ピークの頂点温度Tmslとの差[Tmsh-Tmsl]は、成形性と離型性とをバランスよく両立する観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは13℃以上であり、そして、好ましくは20℃以下、より好ましくは17℃以下、更に好ましくは15℃以下である。
【0023】
≪全融解熱量ΔHtに対する高温側の融解ピークの融解熱量ΔHhの比≫
ポリプロピレン系樹脂(S)の全融解熱量ΔHtに対する、高温側の融解ピークの融解熱量ΔHhの比[ΔHh/ΔHt]は、成形性と離型性とをバランスよく両立する観点から、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.38以上、更に好ましくは0.40以上であり、そして、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.70以下、更に好ましくは0.60以下、より更に好ましくは0.50以下である。
【0024】
ポリプロピレン系樹脂(S)の低温側の融解ピークの融解熱量ΔHl、高温側の融解ピークの融解熱量ΔHh及び全融解熱量ΔHtは、
図1に例示されるDSC曲線の場合、次のように求められる。DSC曲線上の温度80℃での点をαとし、融解終了温度に相当するDSC曲線上の点をβとする。また、低温側の融解ピークP
lと高温側の融解ピークP
hとの間の谷間に当たるDSC曲線上の点γから、グラフの縦軸と平行な直線を引き、点αと点βを結ぶ直線(α-β)と交わる点をδとする。なお、低温側の融解ピークと高温側の融解ピークの一部が重なること等により、低温側の融解ピークP
lと高温側の融解ピークP
hとの間の谷間に当たるDSC曲線上の点γが明瞭でない場合には、当該温度付近のDSCの微分曲線(DDSC)を参照して点γの位置を求めることができる。点γはDDSCにおいて0を示す。
低温側の融解ピークP
lの面積(A)は、低温側の融解ピークP
lの融解熱量ΔHlであり、低温側の融解ピークP
lを示すDSC曲線と、線分(α-δ)と、線分(γ-δ)とによって囲まれる部分の面積として求められる。
高温側の融解ピークP
hの面積(B)は、高温側の融解ピークP
hの融解熱量ΔHhであり、高温側の融解ピークP
hを示すDSC曲線と、線分(δ-β)と、線分(γ-δ)とによって囲まれる部分の面積として求められる。
全融解熱量ΔHtは、低温側の融解ピークP
lの面積(A)と高温側の融解ピークP
hの面積(B)の合計[A+B(つまり、ΔHl+ΔHh)]であって、
図1においては、直線(α-β)と、点αと点βの区間におけるDSC曲線とで囲まれる部分の面積である。
【0025】
≪ΔHl≫
ポリプロピレン系樹脂(S)の低温側の融解ピークの融解熱量ΔHlは、成形性をより高める観点から、好ましくは25J/g以上、より好ましくは30J/g以上、更に好ましくは35J/g以上であり、そして、離型性をより確実に確保する観点から、好ましくは50J/g以下、より好ましくは45J/g以下、更に好ましくは43J/g以下である。
【0026】
≪ΔHh≫
ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの融解熱量ΔHhは、離型性をより高める観点から、好ましくは15J/g以上、より好ましくは21J/g以上、更に好ましくは26J/g以上、より更に好ましくは30J/g以上であり、そして、成形性をより確実に確保する観点から、好ましくは45J/g以下、より好ましくは40J/g以下、更に好ましくは35J/g以下である。
【0027】
≪ΔHt≫
ポリプロピレン系樹脂(S)の全融解熱量ΔHtは、成形性と離型性とをバランスよく両立する観点から、好ましくは57J/g以上、より好ましくは65J/g以上、更に好ましくは70J/g以上であり、そして、好ましくは85J/g以下、より好ましくは80J/g以下、更に好ましくは75J/g以下である。
【0028】
≪メルトフローレイト(MFR)≫
ポリプロピレン系樹脂(S)のMFRは、被覆層の形成しやすさ及び発泡芯層との剥離抑制の観点から、好ましくは2g/10min以上、より好ましくは4g/10min以上、更に好ましくは5g/10min以上であり、そして、好ましくは10g/10min以下、より好ましくは9g/10min以下、更に好ましくは8g/10min以下である。
ポリプロピレン系樹脂(S)のMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0029】
ポリプロピレン系樹脂(S)は、上記(1)~(3)を満たし、かつポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcとの上記関係(4)を満たせば、特に限定されないが、プロピレン成分を主成分とし、エチレン成分とブテン成分とを含むプロピレン系共重合体であることが好ましい。
【0030】
ポリプロピレン系樹脂(S)が、プロピレン成分を主成分とし、エチレン成分とブテン成分とを含むプロピレン系共重合体である場合、該共重合体中のエチレン成分含有量は、3.0質量%以上6.0質量%以下であることが好ましく、3.5質量%以上5.5質量%以下であることがより好ましく、4.0質量%以上5.0質量%以下であることが更に好ましい。また、該共重合体中のブテン成分含有量は、5.0質量%以上18質量%以下であることが好ましく、7.5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、9.0質量%以上12質量%以下であることが更に好ましい。ただし、プロピレン成分とエチレン成分とブテン成分との合計が100質量%である。なお、IRスペクトル測定により共重合体中のモノマー成分の含有量を求めることができる。エチレン成分及びブテン成分の含有量が上記範囲内であるプロピレン系共重合体は、上記(1)~(4)を満足する、低温側の融解ピークと高温側の融解ピークとが表れる結晶構造を有したものとなりやすい。
また、同様の観点から、ブテン成分含有量とエチレン成分含有量との比[ブテン成分含有量/エチレン成分含有量]は、1.5以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましく、また、5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、3.0以下が更に好ましい。
本発明において、ポリプロピレン系樹脂(S)として使用可能な樹脂としては、TPC社製FL7540L、FL7320L等が例示される。
【0031】
ポリプロピレン系樹脂(S)は、本発明の目的効果を阻害しない範囲内で、添加剤を含んでいてもよい。
【0032】
<発泡芯層>
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡芯層は、ポリプロピレン系樹脂(C)から構成される。発泡粒子の成形性と成形体の剛性等を向上させるという観点から、発泡粒子の独立気泡率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。なお、発泡粒子の独立気泡率は、ASTM-D2856-70手順Cに基づき空気比較式比重計を用いて測定することができる。
【0033】
(ポリプロピレン系樹脂(C))
≪融点Tmc≫
ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcは、発泡粒子成形体の剛性、耐熱性等の観点から、125℃以上であり、好ましくは130℃以上、より好ましくは135℃以上、更に好ましくは140℃以上、より更に好ましくは145℃以上であり、そして、170℃以下であり、好ましくは165℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは155℃以下、より更に好ましくは150℃以下である。本発明によれば、上記ポリプロピレン系樹脂(S)を被覆層とすることにより、上記の広い範囲の融点Tmcを有するポリプロピレン系樹脂(C)を用いて、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の成形性と離型性とを両立することができる。従来、特に高い融点を有するポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とする発泡粒子において、融着性を改善するために被覆層を設けた場合には、成形可能な成形加熱温度範囲の全範囲において離型性を良好なものとすることは困難であった。本発明によれば、発泡芯層として比較的融点の高いポリプロピレン系樹脂を用いた場合であっても、成形性と離型性とを両立することができる。
ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcは、JIS K7121:1987に基づき、試験片の状態調節としては「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、状態調節後の試験片を、10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することによりDSC曲線を取得し、該DSC曲線上の樹脂の融解に伴う融解ピークの頂点温度として求められる。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を融点とする。この場合、それぞれの融解ピークの面積は上記ポリプロピレン系樹脂(S)の融解熱量と同様の方法により求めることができる。
【0034】
≪曲げ弾性率≫
ポリプロピレン系樹脂(C)の曲げ弾性率は、発泡粒子成形体の機械的強度を維持しつつ、成形性と離型性とを両立する観点から、好ましくは500MPa以上、より好ましくは600MPa以上、更に好ましくは700MPa以上、より更に好ましくは800MPa以上であり、そして、好ましくは1600MPa以下、より好ましくは1300MPa以下、更に好ましくは1100MPa以下である。
ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率は、JIS K7171:2016に基づき、求めることができる。
【0035】
≪MFR≫
ポリプロピレン系樹脂(C)のMFRは、発泡性の観点から、好ましくは2g/10min以上、より好ましくは4g/10min以上、更に好ましくは5g/10min以上であり、そして、好ましくは15g/10min以下、より好ましくは12g/10min以下、更に好ましくは10g/10min以下である。
ポリプロピレン系樹脂(C)のMFRは、ポリプロピレン系樹脂(S)のMFRと同様の方法により230℃、荷重2.16kgの条件で測定される値である。
【0036】
ポリプロピレン系樹脂(C)は、融点Tmcが上記範囲であり、ポリプロピレン系樹脂(S)の低温側の融解ピークの頂点温度Tmslとの上記関係(2)を満たし、また、ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshとの上記関係(4)を満たせば、特に限定されないが、ポリプロピレン単独重合体とプロピレン系共重合体の混合物又はポリプロピレン系共重合体であることが好ましい。
【0037】
ポリプロピレン系共重合体としては、好ましくはエチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、及びそれらの共重合体とポリプロピレン単独重合体との混合物であり、より好ましくはエチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体であり、更に好ましくはエチレン-プロピレン共重合体である。
【0038】
ポリプロピレン系樹脂(C)は、本発明の目的効果を阻害しない範囲内で、前記プロピレン単独重合体又はプロピレン系共重合体以外の樹脂またはエラストマー等の他の重合体を含んでいてもよい。ポリプロピレン系樹脂(C)中の前記他の重合体の含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%以下、最も好ましくは0質量%、つまり、ポリプロピレン系樹脂(C)は重合体としてポリプロピレン系樹脂のみからなることが好ましい。
【0039】
発泡芯層には、必要に応じて、気泡調整剤、難燃剤、難燃助剤、気泡核剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、導電性フィラー、抗菌剤等の添加剤を添加できる。
【0040】
発泡芯層を構成する樹脂と被覆層を構成する樹脂との質量比(質量%の比)は、成形体の剛性を維持しつつ、成形性及び離型性を高める観点から、好ましくは99.5:0.5~80:20であり、より好ましくは99:1~85:15、更に好ましくは97:3~90:10である。質量比は、発泡芯層を構成する樹脂:被覆層を構成する樹脂で表される。
【0041】
[ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の物性]
<嵩密度>
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の嵩密度は、発泡粒子成形体の機械的強度と軽量性とをバランスよく両立する観点から、好ましくは10kg/m3以上、より好ましくは15kg/m3以上であり、そして、好ましくは100kg/m3以下、より好ましくは70kg/m3以下、更に好ましくは50kg/m3以下、より更に好ましくは30kg/m3以下、特に好ましくは20kg/m3以下である。
発泡粒子の嵩密度は、以下のように求められる。発泡粒子群から発泡粒子を無作為に取り出して容積1Lのメスシリンダーに入れ、自然堆積状態となるように多数の発泡粒子を1Lの目盛まで収容し、収容された発泡粒子の質量W1[g]を収容体積V1(1[L])で除して(W1/V1)、単位を[kg/m3]に換算することにより、発泡粒子の嵩密度が求められる。
従来、発泡粒子の嵩密度が低い場合には、離型性が損なわれやすかった。本発明によれば、たとえば、30kg/m3以下といった、嵩密度の低い発泡粒子であっても、離型性が良好なものとなる。
【0042】
発泡粒子は、発泡粒子を加熱速度10℃/分で23℃から200℃まで加熱した際に得られるDSC曲線に、ポリプロピレン系樹脂固有の融解による融解ピーク(つまり、樹脂固有ピーク)と、その高温側に1以上の融解ピーク(つまり、高温ピーク)とが現れる結晶構造を有することが好ましい。DSC曲線は、発泡粒子1~3mgを試験サンプルとして用い、JIS K7121:1987に準拠した示差走査熱量測定(DSC)により得られる。樹脂固有ピークとは、発泡芯層を構成するポリプロピレン系樹脂固有の融解による融解ピークであり、ポリプロピレン系樹脂が本来有する結晶の融解時の吸熱によるものであると考えられる。一方、樹脂固有ピークの高温側の融解ピーク(つまり、高温ピーク)とは、DSC曲線で上記樹脂固有ピークよりも高温側に現れる融解ピークである。この高温ピークが現れる場合、樹脂中に二次結晶が存在するものと推定される。なお、発泡粒子を10℃/分の昇温速度で23℃から200℃までの加熱(つまり、第1回目の加熱)した後、10℃/分の冷却速度で200℃から23℃まで冷却し、その後再び10℃/分の昇温速度で23℃から200℃までの加熱(つまり、第2回目の加熱)したときに得られるDSC曲線においては、発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂に固有の融解による融解ピークのみが見られるため、樹脂固有ピークと高温ピークとを見分けることができる。この樹脂固有ピークの頂点の温度は、第1回目の加熱と第2回目の加熱とで多少異なる場合があるが、通常、その差は5℃以内である。
【0043】
<高温ピークの融解熱量ΔH2>
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の高温ピークの融解熱量ΔH2は、発泡粒子の機械的強度及び成形性の観点から、好ましくは5J/g以上、より好ましくは8J/g以上、更に好ましくは10J/g以上であり、そして、好ましくは40J/g以下、より好ましくは30J/g以下、更に好ましくは20J/g以下、より更に好ましくは18J/g以下である。
【0044】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の高温ピークの融解熱量ΔH2の測定方法を
図2に例示されるDSC曲線を用いて説明する。DSC曲線上における温度80℃での点αと、発泡粒子の融解終了温度Tでの点βとを結び直線L1を得る。次に、上記の樹脂固有ピークP
1と高温ピークP
2との間の谷部に当たるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線L2を引き、直線L1と直線L2との交わる点をδとする。なお、点γは、樹脂固有ピークP
1と高温ピークP
2との間に存在する極大点ということもできる。
発泡粒子の高温ピークP
2の面積(2)は、高温ピークP
2の融解熱量ΔH2であり、高温ピークP
2を示すDSC曲線と、線分(δ-β)と、線分(γ-δ)とによって囲まれる部分の面積として求められる。なお、発泡粒子の樹脂固有ピークP
1の面積(1)は、樹脂固有ピークP
1の融解熱量ΔH1であり、樹脂固有ピークP
1を示すDSC曲線と、線分(α-δ)と、線分(γ-δ)とによって囲まれる部分の面積として求められる。
【0045】
[ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法]
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法は、特に限定されないが、例えば、以下の工程(A)~(D)を含む方法により製造することができる。
工程(A):芯層を構成するポリプロピレン系樹脂(C)と被覆層を構成するポリプロピレン系樹脂(S)とをそれぞれ溶融混練してストランド状に共押出しし、切断して非発泡状態の芯層と該芯層を被覆する被覆層とを有する多層樹脂粒子を得る造粒工程、
工程(B):密閉容器内で分散媒に、上記多層樹脂粒子を分散させる分散工程、
工程(C):多層樹脂粒子に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程、及び
工程(D):発泡剤を含浸させた発泡性多層樹脂粒子を、密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に分散媒とともに放出して、少なくとも芯層を発泡させて発泡芯層とし、発泡粒子を製造する発泡工程。
【0046】
<工程(A)>
工程(A)では、例えば、芯層形成用押出機と、被覆層形成用押出機と、これらの押出機の出口側に設置される多層ストランド形成用ダイとを有する押出機を用いることができる。芯層形成用押出機には、芯層を構成するポリプロピレン系樹脂(C)と必要に応じて添加される添加剤とを供給して溶融混練して芯層形成溶融混練物とし、被覆層形成用押出機には、被覆層を構成するポリプロピレン系樹脂(S)と必要に応じて添加される添加剤とを供給して溶融混練して被覆層形成溶融混練物とする。芯層形成溶融混練物と被覆層形成溶融混練物とを多層ストランド形成用ダイに導入して合流させ、非発泡状態の芯層及び該芯層を被覆する非発泡状態の被覆層からなり、芯鞘構造を有する複合体を形成する。そして、当該複合体を押出機先端に付設されたダイの小孔からストランド状に押出し、水中で冷却した後、ペレタイザーで所定の質量となるように切断すること(ストランドカット法)により、非発泡状態の芯層と芯層を被覆する被覆層とを有する多層樹脂粒子を得ることができる。押出された複合体を切断する方法としては、上記方法のほか、複合体を水中に押出して切断するアンダーウォーターカット法、複合体を空気中に押出した直後に切断するホットカット法等を採用することもできる。
【0047】
(多層樹脂粒子の粒子径)
多層樹脂粒子の粒子径は、好ましくは0.1~3.0mmであり、より好ましくは0.3~1.5mmである。
【0048】
(多層樹脂粒子の質量)
多層樹脂粒子の質量の平均値は、0.1~20mgとなるように調整されることが好ましく、より好ましくは0.2~10mg、更に好ましくは0.3~5mg、より更に好ましくは0.4~2mgである。
【0049】
(被覆層と芯層との質量比)
多層樹脂粒子を製造する際には、被覆層と非発泡状態の芯層との質量比(被覆層/芯層)は、発泡粒子の融着性の観点から、0.5/99.5~20/80であることが好ましく、1/99~15/85であることがより好ましく、3/97~10/90であることが更に好ましい。
【0050】
(添加剤)
非発泡状態の芯層と被覆層とを有する多層樹脂粒子に、必要に応じて、気泡調整剤、難燃剤、難燃助剤、気泡核剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、導電性フィラー、抗菌剤等の添加剤を添加できる。添加剤を添加する場合、工程(A)において添加することができる。気泡調整剤としては、タルク、マイカ、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、石膏、ゼオライト、ホウ砂、水酸化アルミニウム、カーボン等の無機粉体;リン酸系核剤、フェノール系核剤、アミン系核剤、ポリフッ化エチレン系樹脂粉末等の有機粉体が挙げられる。気泡調整剤を添加する場合、多層樹脂粒子中の気泡調整剤の含有量は、多層樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0.01~1質量部である。
【0051】
<工程(B)>
工程(B)では、例えば、オートクレーブ等の密閉可能であり加熱及び加圧に耐えられる容器内において、分散媒に、例えば撹拌機を用いて多層樹脂粒子を分散させることができる。
【0052】
分散媒は、多層樹脂粒子を溶解しない分散媒であれば、特に限定されず、例えば、水、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等のアルコールが挙げられ、中でも水が好ましい。
【0053】
工程(B)において、多層樹脂粒子同士の融着を防止するために、分散剤を分散媒に更に添加することが好ましい。分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の有機系分散剤;酸化アルミニウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ、リン酸マグネシウム、リン酸三カルシウム等の難溶性無機塩等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。これらの中でも、取り扱いの容易さから、好ましくは難溶性無機塩であり、より好ましくはカオリンである。分散剤を添加する場合、分散剤は、多層樹脂粒子100質量部に対して、0.001~5質量部程度添加することが好ましい。
【0054】
分散媒には、界面活性剤を更に添加することもできる。界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、その他懸濁重合で一般的に使用されるアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤を添加する場合、界面活性剤は、多層樹脂粒子100質量部に対して、0.001~1質量部程度添加することが好ましい。
【0055】
<工程(C)>
工程(C)では、例えば、芯層を構成するポリプロピレン系樹脂(C)が軟化する温度以上に加熱し、発泡剤を含浸させて発泡性多層樹脂粒子を得ることができる。
【0056】
発泡剤は、多層樹脂粒子を発泡させることができるものであれば、特に限定されない。発泡剤としては、例えば、空気、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、酸素、ネオン等の無機物理発泡剤、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素、クロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のジアルキルエーテル等の有機物理発泡剤等が挙げられる。これらの中でも、オゾン層の破壊がなく、かつ安価な無機物理発泡剤が好ましく、窒素、空気、二酸化炭素がより好ましく、二酸化炭素が特に好ましい。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
【0057】
発泡剤の添加量は、所望の発泡粒子の嵩密度、ポリプロピレン系樹脂の種類、発泡剤の種類等を考慮して決定されるが、通常、多層樹脂粒子100質量部に対して、有機物理発泡剤で、好ましくは5~50質量部であり、無機物理発泡剤で、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは0.5~15質量部である。
【0058】
工程(C)における加熱温度は、好ましくはポリプロピレン系樹脂(C)の融点以上、該融点+80℃以下であり、具体的には、100℃~230℃であることが好ましい。該加熱温度で保持する時間は、好ましくは1分間以上、より好ましくは20分間以上、そして、好ましくは100分間以下、より好ましくは60分間以下である。
【0059】
<工程(D)>
工程(D)では、例えば、工程(C)により発泡剤を含浸しており、加熱されている発泡性多層樹脂粒子を、密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に放出して、少なくとも芯層を発泡させて発泡芯層とし、発泡粒子を製造することができる。
具体的には、密閉容器内の圧力を発泡剤の蒸気圧以上の圧力に保持しながら、密閉容器内の水面下の一端を開放し、発泡剤が含浸されている発泡性多層樹脂粒子を分散媒とともに密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低圧の雰囲気下、通常は大気圧下に放出し、発泡性多層樹脂粒子の少なくとも芯層を発泡させて発泡芯層とすることにより、発泡芯層と当該発泡芯層を被覆する被覆層とを有する多層構造の発泡粒子を作製することができる。また、工程(C)を経た発泡性多層樹脂粒子を冷却して取り出した後、該発泡性多層樹脂粒子を温風、スチーム等の加熱媒体により加熱して発泡させることにより発泡粒子を作製することもできる。
【0060】
工程(D)において、発泡時の温度は、通常、好ましくは110℃~170℃である。また、密閉容器内の圧力は、好ましくは0.5MPa(G)以上5MPa(G)以下である。
【0061】
上記の工程(B)~(D)は、単一の密閉容器における一連の工程として行うことが好ましいが、それぞれの工程毎に多層樹脂粒子等を取り出し、再度密閉容器内に投入して、次の工程を行うなど別工程とすることもできる。
【0062】
また、発泡粒子の示差走査熱量測定(DSC)による1回目のDSC曲線に、樹脂固有の融解ピーク(樹脂固有ピーク)とその高温側に1以上の融解ピーク(高温ピーク)とが現れる結晶構造を有する発泡粒子は、例えば、次のようにして得られる。
発泡粒子製造工程における加熱時に、(ポリプロピレン系樹脂(C)の融点-20℃)以上、(ポリプロピレン系樹脂(C)の融解終了温度)未満の温度で十分な時間、好ましくは10~60分間程度保持する一段保持工程を行う。その後、(ポリプロピレン系樹脂(C)の融点-15℃)から(ポリプロピレン系樹脂(C)の融解終了温度+10℃)の温度に調節する。そして、必要により、その温度でさらに十分な時間、好ましくは10~60分間程度保持する二段保持工程を行う。次いで、発泡剤を含む発泡性樹脂粒子を密閉容器内から低圧下に放出して発泡させることにより、上述の結晶構造を有する発泡粒子を得ることができる。発泡は、密閉容器内を(ポリプロピレン系樹脂(C)の融点-10℃)以上で行われることが好ましく、(ポリプロピレン系樹脂(C)の融点)以上(ポリプロピレン系樹脂(C)の融点+20℃)以下で行われることがより好ましい。
【0063】
上記のようにして得られる発泡粒子は、空気により加圧処理して内圧を高めた後、スチーム等で加熱して発泡させ(二段発泡)、さらに発泡倍率の高い(見掛け密度の低い)発泡粒子とすることもできる。
【0064】
[ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体]
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体(以下、単にポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体又は発泡粒子成形体ともいう)は、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形することにより得ることができる。
【0065】
型内成形法は、発泡粒子を成形型内に充填し、スチーム等の加熱媒体を用いて加熱成形することにより行うことができる。具体的には、発泡粒子を成形型内に充填した後、成形型内にスチーム等の加熱媒体を導入することにより、発泡粒子を加熱して発泡させると共に、相互に融着させて成形空間の形状が賦形された発泡粒子成形体を得ることができる。また、本発明における型内成形は、発泡粒子を空気等の加圧気体により予め加圧処理して発泡粒子の気泡内の圧力を高めて、発泡粒子内の圧力を大気圧よりも0.01~0.3MPa高い圧力に調整した後、大気圧下又は減圧下で該発泡粒子を成形型内に充填し、次いで型内にスチーム等の加熱媒体を供給して発泡粒子を加熱融着させる加圧成形法(例えば、特公昭51-22951号公報)により成形することが好ましい。また、圧縮ガスにより大気圧以上に加圧した成形型内に、当該圧力以上に加圧した発泡粒子を充填した後、キャビティ内にスチーム等の加熱媒体を供給して加熱を行い、発泡粒子を加熱融着させる圧縮充填成形法(特公平4-46217号公報)により成形することもできる。その他に、特殊な条件にて得られる二次発泡力の高い発泡粒子を、大気圧下又は減圧下で成形型のキャビティ内に充填した後、次いでスチーム等の加熱媒体を供給して加熱を行い、発泡粒子を加熱融着させる常圧充填成形法(特公平6-49795号公報)又は上記の方法を組み合わせた方法(特公平6-22919号公報)などによっても成形することができる。
【0066】
<密度>
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の密度は、機械的強度と軽量性とをバランスよく両立する観点から、好ましくは10kg/m3以上、より好ましくは15kg/m3以上、更に好ましくは20kg/m3以上であり、そして、好ましくは150kg/m3以下、より好ましくは100kg/m3以下、更に好ましくは50kg/m3以下、特に好ましくは35kg/m3以下である。
発泡粒子成形体の密度は、発泡粒子成形体の質量(g)を成形体の外形寸法から求められる体積(L)で除し、単位換算することにより算出される。なお、成形体の外形寸法から体積を求めることが容易でない場合には、水没法により成形体の体積を求めることができる。
【0067】
<50%圧縮応力>
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の50%圧縮応力は、剛性の観点から、好ましくは50kPa以上、より好ましくは100kPa以上、更に好ましくは150kPa以上であり、そして、好ましくは500kPa以下、より好ましくは400kPa以下、更に好ましくは300kPa以下である。
発泡粒子成形体の50%圧縮応力は、JIS K6767:1999に基づき測定される。
【実施例0068】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの例によりなんら限定されるものではない。
【0069】
実施例及び比較例に使用した樹脂、発泡粒子及び発泡粒子成形体について、以下の測定又は評価を行った。なお、発泡粒子の物性測定は、相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて24時間静置して状態調節した発泡粒子を用いて行った。また、発泡粒子成形体の物性測定及び評価は、離型後の発泡粒子成形体を相対湿度50%、80℃、1atmの条件にて12時間静置して状態調節した成形体を用いて行った。
【0070】
[測定方法]
<ポリプロピレン系樹脂>
(モノマー成分含有量)
ポリプロピレン系樹脂のモノマー成分含有量は、IRスペクトルにより決定する公知の方法により求めた。具体的には、高分子分析ハンドブック(日本分析化学会高分子分析研究懇談会編、出版年月:1995年1月、出版社:紀伊国屋書店、ページ番号と項目名:615~616「II.2.3 2.3.4 プロピレン/エチレン共重合体」、618~619「II.2.3 2.3.5 プロピレン/ブテン共重合体」)に記載されている方法、つまり、エチレン及びブテンの吸光度を所定の係数で補正した値とフィルム状の試験片の厚み等との関係から定量する方法により求めた。より具体的には、まず、ポリプロピレン系樹脂を180℃環境下でホットプレスしてフィルム状に成形し、厚みの異なる複数の試験片を作製した。次いで、各試験片のIRスペクトルを測定することにより、エチレン由来の722cm-1及び733cm-1における吸光度(A722、A733)と、ブテン由来の766cm-1における吸光度(A766)とを読み取った。次いで、各試験片について、以下の式(1)~(3)を用いてポリプロピレン系樹脂中のエチレン成分含有量を算出した。各試験片について得られたエチレン成分含有量を算術平均した値をポリプロピレン系樹脂中のエチレン成分含有量(単位:質量%)とした。
(K´733)c=1/0.96{(K´733)a-0.268(K´722)a}・・・(1)
(K´722)c=1/0.96{(K´722)a-0.268(K´722)a}・・・(2)
エチレン成分含有量(%)=0.575{(K´722)c+(K´733)c}・・・(3)
ただし、式(1)~(3)において、K´a:各波数における見かけの吸光係数(K´a=A/ρt)、K´c:補正後の吸光係数、A:吸光度、ρ:樹脂の密度(単位:g/cm3)、t:フィルム状の試験片の厚み(単位:cm)を意味する。
また、各試験片について、以下の式(4)を用いてポリプロピレン系樹脂中のブテン成分含有量を算出した。各試験片について得られたブテン成分含有量を算術平均した値をポリプロピレン系樹脂中のブテン成分含有量(%)とした。
ブテン成分含有量(%)=12.3(A766/L)・・・(4)
ただし、式(4)において、A:吸光度、L:フィルム状の試験片の厚み(mm)を意味する。
【0071】
(ポリプロピレン系樹脂(S)のDSC特性)
ポリプロピレン系樹脂(S)の2回目のDSC曲線における、ピーク形状、低温側の融解ピークの頂点温度Tmsl及びポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshは、以下のように求めた。JIS K7121:1987に基づき、試験片の状態調節としては「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、状態調節された試験片を10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することによりDSC曲線を取得した。具体的には、23℃、50%RHで24時間以上状態調節した約3mgの樹脂を試験片とし、該試験片を、熱流束示差走査熱量測定装置(株式会社島津製作所製、型番:DSC-60A)を用いて、10℃/分の加熱速度で30℃から200℃まで加熱し、次に10℃/分の冷却速度で200℃から30℃まで冷却し、再度10℃/分の加熱速度で30℃から200℃までで加熱することにより、DSC曲線を取得し、融解ピークの形状を観察した。ここで、ピーク形状がダブル形状とは、互いに異なるピークの頂点温度(融点)を有する2つの融解ピークが表れ、かつ2つの融解ピークの融解熱量がいずれも10J/g以上であることを意味する。融解熱量は、後述する方法により求めた値である。なお、PP2については、融解ピークが1つのみ現れる、シングルピーク形状であったため、当該融解ピークの頂点温度を低温側の融解ピークの頂点温度の欄にのみ表示した。PP1の2回目のDSC曲線を
図1に示す。PP2の2回目のDSC曲線を
図3に示す。
【0072】
(ポリプロピレン系樹脂(S)の融解熱量ΔH)
ポリプロピレン系樹脂(S)の融解熱量は、以下のように求めた。DSC曲線上の温度80℃での点をαとし、融解終了温度に相当するDSC曲線上の点をβとした(
図1参照)。また、低温側の融解ピークP
lと高温側の融解ピークP
hとの間の谷間に当たるDSC曲線上の点γから、グラフの縦軸と平行な直線を引き、点αと点βを結ぶ直線(α-β)と交わる点をδとした。低温側の融解ピークP
lの面積(A)は、低温側の融解ピークP
lの融解熱量ΔHlであり、低温側の融解ピークP
lを示すDSC曲線と、線分(α-δ)と、線分(γ-δ)とによって囲まれる部分の面積として求めた。高温側の融解ピークP
hの面積(B)は、高温側の融解ピークP
hの融解熱量ΔHhであり、高温側の融解ピークP
hを示すDSC曲線と、線分(δ-β)と、線分(γ-δ)とによって囲まれる部分の面積として求めた。
全融解熱量ΔHtは、低温側の融解ピークP
lの面積(A)と高温側の融解ピークP
hの面積(B)の合計[A+B(つまり、ΔHl+ΔHh)]であって、
図1においては、直線(α-β)と、点αと点βの区間におけるDSC曲線とで囲まれる部分の面積として求めた。
なお、PP2については、融解ピークが1つのみ現れる、シングルピーク形状であったため、当該融解ピークの融解熱量を低温側の融解ピークの融解熱量の欄にのみ表示した。
【0073】
(ポリプロピレン系樹脂(C)の融点)
ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcは、JIS K7121:1987に基づき、試験片の状態調節として「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用した。具体的には、23℃、50%RHで24時間以上状態調節した約3mgの樹脂を試験片とし、該試験片を、熱流束示差走査熱量測定装置(株式会社島津製作所製、型番:DSC-60A)を用いて、10℃/分の加熱速度で30℃から200℃まで加熱し、次に10℃/分の冷却速度で200℃から30℃まで冷却し、再度10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することによりDSC曲線を取得し、該DSC曲線上の樹脂の融解に伴う融解ピークの頂点温度として求めた。
【0074】
(MFR)
ポリプロピレン系樹脂のMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0075】
(曲げ弾性率)
ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率は、JIS K7171:2016に準拠し、230℃でヒートプレスして厚さ4mmのシートを作製し、該シートから長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm(標準試験片)に切り出したものを使用した。また、圧子の半径R1及び支持台の半径R2は共に5mm、支点間距離は64mmとし、試験速度は2mm/minとした。
【0076】
<発泡粒子>
(嵩密度)
発泡粒子の嵩密度は、以下のように求めた。状態調節後の発泡粒子群から発泡粒子を無作為に取り出して容積1Lのメスシリンダーに入れ、自然堆積状態となるように多数の発泡粒子を1Lの目盛まで収容し、収容された発泡粒子の質量W1[g]を収容体積V1(1[L])で除して(W1/V1)、単位を[kg/m3]に換算することにより、発泡粒子の嵩密度を求めた。
【0077】
(高温ピーク熱量)
状態調節後の発泡粒子群から1個の発泡粒子を採取した。この発泡粒子を試験片として用い、試験片を示差熱走査熱量計(具体的には、株式会社島津製作所製、型番:DSC-60A)によって23℃から200℃まで加熱速度10℃/分で昇温させたときのDSC曲線を得た。
図2にDSC曲線の一例を示す。
図2に例示されるDSC曲線は、樹脂固有ピークP
1と、その高温側に高温ピークP
2とを有しており、DSC曲線上における温度80℃での点αと、発泡粒子の融解終了温度Tでの点βとを結び直線L1を得た。次に、上記の樹脂固有ピークP
1と高温ピークP
2との間の谷部に当たるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線L2を引き、直線L1と直線L2との交わる点をδとした。発泡粒子の高温ピークP
2の面積(2)は、高温ピークP
2の融解熱量ΔH2であり、高温ピークP
2を示すDSC曲線と、線分(δ-β)と、線分(γ-δ)とによって囲まれる部分の面積として求めた。上記測定を5個の発泡粒子について行い、算術平均した値を表3、表4に示した。
【0078】
<発泡粒子成形体>
(成形体密度)
発泡粒子成形体の密度は、発泡粒子成形体から成形時のスキン層を除いて、縦25mm×横25mm×厚み100mmの直方体状となるように試験片を無作為に3つ切り出し、それぞれの試験片の質量及び体積を測定し、質量を体積で除して単位換算することにより3つの試験片の密度を算出して、その算術平均値として求めた。
【0079】
(50%圧縮応力)
発泡粒子成形体の50%圧縮応力は、発泡粒子成形体からスキン層を除いて、縦50mm×横50mm×厚み25mmの直方体状となるように試験片を切り出し、この試験片に対し、株式会社エー・アンド・デイ製のRTF‐1350を用いて、JIS K6767:1999に基づいて、10mm/分の速度で圧縮した際の50%ひずみ時の荷重を求め、これを試験片の受圧面積で除して算出することにより、50%圧縮応力[kPa]を求めた。
【0080】
[評価方法]
<成形可能な成形圧の範囲(成形性)>
発泡粒子の成形性について、以下の評価を行った。後述の<発泡粒子成形体の作製>において、成形圧(スチーム圧)を0.01MPa(G)刻みで変更して発泡粒子成形体を作製し、該発泡粒子成形体の下記の融着性、外観、及び回復性の全ての評価が「A」である成形圧を、成形可能な成形圧の範囲とした。また、その成形圧の点数(全ての評価が「A」となった成形圧の数)を併せて表3、4に示した。成形圧により成形温度が調節されるため、成形可能な成形圧の下限値から上限値までの幅が広いものほど、成形可能な成形加熱温度の範囲が広いことを意味する。
(融着性)
発泡粒子成形体の融着性は、以下の方法により評価した。発泡粒子成形体を折り曲げて破断し、破断面に存在する発泡粒子の数(C1)と破壊した発泡粒子の数(C2)とを求め、上記発泡粒子に対する破壊した発泡粒子の比率(C2/C1×100)を材料破壊率として算出した。異なる試験片を用いて測定を5回行い、それぞれの材料破壊率を求め、それらを算術平均して融着性を以下の基準で評価した。
A:材料破壊率90%以上
B:材料破壊率20%以上90%未満
C:材料破壊率20%未満
(外観(間隙の度合い))
発泡粒子成形体の中央部に100mm×100mmの矩形を描き、矩形状のエリアの角から対角線上に線を引き、その線上の1mm×1mmの大きさ以上のボイド(間隙)の数を数え、発泡粒子成形体の表面外観を以下の基準で評価した。
A:ボイドの数が3個未満
B:ボイドの数が3個以上5個未満
C:ボイドの数が5個以上
(回復性)
得られた発泡粒子成形体の中央部分と四隅部分の厚みをそれぞれ測定し、四隅部分のうち最も厚みが厚い部分に対する中央部分の厚みの比を算出し、回復性について以下の基準で評価した。
A:厚み比が95%以上の場合
B:厚み比が90%以上95%未満
C:厚み比が90%未満
【0081】
<離型性が良好な成形圧の範囲(離型性)>
上記<成形可能な成形圧の範囲(成形性)>の評価において、成形可能な成形圧の範囲において、離型性を以下の基準で評価し、評価が「A」である成形圧を、離型性が良好な成形圧とした。また、その成形圧の点数(評価が「A」となった成形圧の数)を併せて表に示した。離型性が良好な成形圧の下限値から上限値までの幅が広いものほど、離型性が良好な成形加熱温度の範囲が広いことを意味する。
A:離型ピン、離型エアー等の離型アシストを使用せずとも離型できる
B:離型ピン、離型エアー等の離型アシストを使用しないと離型できない
【0082】
[原料]
実施例及び比較例に用いたポリプロピレン系樹脂(S)及びポリプロピレン系樹脂(C)を表1及び表2に示す。なお、表中、PP1は、エチレンとプロピレンとブテンとを含むプロピレン系共重合体であり、TPC社製のグレード名:FL7540Lである。
また、表中、PP5は、エチレン-プロピレンランダム共重合体(エチレン3.1質量%、融点142℃)とエチレン-プロピレンランダム共重合体(エチレン1.4質量%、融点153℃)との混合樹脂(質量比は両者の合計を100質量%として、50質量%:50質量%)である。また、PP6は、エチレン-プロピレンランダム共重合体(エチレン4.2質量%、融点134℃)と直鎖状低密度ポリエチレン(密度0.91g/cm3、融点110℃)との混合樹脂(質量比は両者の合計を100質量%として、エチレン-プロピレンランダム共重合体:直鎖状低密度ポリエチレン=67質量%:33質量%)である。
【0083】
【0084】
【0085】
実施例1~5及び比較例1~9
<発泡粒子の作製>
表3、4に示す種類のポリプロピレン系樹脂(C)を用いて、芯層形成用押出機内で最高設定温度245℃にて溶融混練して芯層形成用樹脂溶融混練物を得た。また、表3、4に示す種類のポリプロピレン系樹脂(S)を被覆層形成用押出機内で最高設定温度245℃にて溶融混練して被覆層形成用樹脂溶融混練物を得た。次いで、芯層形成用押出機及び被覆層形成用押出機から各樹脂溶融混練物を、共押出ダイの先端から押出した。このとき、ダイ内で各樹脂溶融混練物を合流させて、非発泡状態の芯層と、該芯層の外側表面を被覆する非発泡状態の被覆層とからなる鞘芯型の複合体を形成させた。押出機先端に付設された口金の細孔から複合体をストランド状に押し出し、ストランド状物を引取ながら水で水冷した後、ペレタイザーで質量が約1.0mgとなるように切断した。このようにして、芯層と該芯層を被覆する被覆層とからなる多層樹脂粒子を得た。多層樹脂粒子における、芯層と被覆層との質量比は、芯層:被覆層=95:5(つまり、被覆層の質量比が5%)とした。なお、多層樹脂粒子の製造に際し、芯層形成用押出機に気泡調製剤としてのホウ酸亜鉛を供給し、ポリプロピレン系樹脂中にホウ酸亜鉛500質量ppmを含有させた。
【0086】
(一段発泡工程)
多層樹脂粒子1kgを、分散媒としての水3Lとともに5Lの密閉容器内に仕込み、更に多層樹脂粒子100質量部に対し、分散剤としてカオリン0.3質量部、分散助剤として硫酸アルミニウム0.0001質量部、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.004質量部を密閉容器内に添加した。発泡剤として二酸化炭素を密閉容器内に添加した後、密閉容器を密閉し、密閉容器内を撹拌しながら表3、4に示す発泡温度まで加熱した。このときの容器内圧力(つまり、含浸圧力、二酸化炭素圧力)は表3、4に示すとおりであった。同温度で15分間保持した後、容器内容物を大気圧下に放出して発泡粒子を得た。この発泡粒子を23℃で24時間乾燥させた。このようにして、表3、4に示す嵩倍率の発泡粒子を得た。
【0087】
(二段発泡工程)
次いで、耐圧容器(具体的には、金属製のドラム)内に発泡粒子を入れ、耐圧容器内に空気を圧入することにより、容器内の圧力を高め、空気を気泡内に含浸させて発泡粒子の気泡内の内圧を高めた。次いで、耐圧容器から取り出した発泡粒子(一段発泡粒子)に耐圧容器内の圧力(つまり、ドラム圧力)が表3、4に示す圧力となるようスチームを供給し、大気圧下で加熱した。耐圧容器から取り出した一段発泡粒子における気泡内の圧力(つまり、内圧)は表3、4に示す値であった。以上により、一段発泡粒子の見掛け密度を低下させ、表3、4に示す嵩倍率の発泡粒子(二段発泡粒子)を得た。
【0088】
<発泡粒子成形体の作製>
発泡粒子成形体の製造には、発泡粒子を23℃で24時間乾燥させたものを用いた。まず、圧縮空気により発泡粒子に0.25MPa(G)の内圧を付与した後、クラッキング量を20%(つまり、12mm)に調節した、縦300mm×横250mm×厚さ60mmのキャビティを有する縦型成形機に発泡粒子を充填し、型締めして金型両面からスチームを5秒間供給して予備加熱する排気工程を行った。なお、縦型成形機とは、金型の開き方向が鉛直方向(高さ方向)である成形機である。その後、所定の成形圧より0.08MPa(G)低い圧力に達するまで、金型の一方の面側からスチームを供給して一方加熱を行った。次いで、成形圧より0.04MPa(G)低い圧力に達するまで金型の他方の面側よりスチームを供給して一方加熱を行った後、所定の成形圧に達するまで加熱(つまり、本加熱)を行った。加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧力が0.04MPa(G)になるまで水冷した後、型から離型して発泡粒子成形体を得た。
【0089】
【0090】
【0091】
表3からわかるように、本発明の発泡粒子によれば、成形可能な成形圧の範囲が広く、かつ、該成形圧の全ての範囲において、良好な離型性を有する。発泡粒子成形体を型から取り出す際に、成形体が型への貼り付いた場合、一般的に、離型ピン、離型エアー等の離型アシストが使用されているが、本発明の発泡粒子によれば、離型アシストが不要であるため、製造効率を向上できる。
表4からわかるように、ポリプロピレン系樹脂(S)がダブルピークを有さず、シングルピークであり、上記要件(1)を満たさない比較例1、比較例7及び比較例9は、離型性と成形性とを両立することが困難であった。比較例1と比較例9との対比からわかるように、嵩密度が低い発泡粒子では、特に離型性が劣りやすかった。
ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度が138℃未満であり、上記要件(3)を満たさない比較例2、比較例3及び比較例8は、離型性に劣っていた。
ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcとポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshとの差[Tmc-Tmsh]が、15℃を超え、上記要件(4)を満たさない比較例5も、離型性に劣っていた。
ポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度が138℃未満であり、上記要件(3)を満たさず、かつ、ポリプロピレン系樹脂(C)の融点Tmcとポリプロピレン系樹脂(S)の高温側の融解ピークの頂点温度Tmshとの差[Tmc-Tmsh]が、15℃を超え、上記要件(4)を満たさない比較例4は著しく離型性に劣っていた。
本発明の発泡粒子は、成形可能な成形圧の範囲が広く、かつ、優れた離型性を有するため、特別な装置ではなく汎用の装置を用いても、優れた離型性を発揮するため有用である。