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  • 特開-高周波入力結合器 図1
  • 特開-高周波入力結合器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019528
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】高周波入力結合器
(51)【国際特許分類】
   H01J 23/40 20060101AFI20230202BHJP
   H01P 1/08 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
H01J23/40
H01P1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124304
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀治
【テーマコード(参考)】
5J011
【Fターム(参考)】
5J011FA01
(57)【要約】
【課題】 誘電体基板と高周波窓構体との間に隙間が生じるのを防止できる高周波入力結合器を提供する。
【解決手段】 導波管と加速空洞との間に設けて、導波管から加速空洞に高周波を入力する高周波入力結合器であって、内導体と、内導体の外周に設けた外導体と、高周波透過窓を有する高周波透過窓構体と、高周波透過窓の高周波入力側に設けた誘電体基板とを備え、誘電体基板は、高周波透過窓構体にろう付けにより固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波管と加速空洞との間に設けて、導波管から加速空洞に高周波を入力する高周波入力結合器であって、内導体と、前記内導体の外周に設けた外導体と、高周波透過窓を有する高周波透過窓構体と、高周波透過窓の高周波入力側に設けた誘電体基板とを備え、
前記誘電体基板は、前記高周波透過窓構体にろう付けにより固定されている高周波入力結合器。
【請求項2】
前記誘電体基板は、環状を成し、内周縁を前記高周波透過窓構体の内側スリーブに、外周縁を前記高周波透過窓構体の外側スリーブにそれぞれろう付けされている請求項1に記載の高周波入力結合器。
【請求項3】
前記誘電体基板は、前記内周縁と前記内側スリーブの外周面との間、前記外周縁と前記外側スリーブの内周面との間に配置したろう材で、ろう付けされている請求項2に記載の高周波入力結合器。
【請求項4】
前記内側スリーブには前記誘電体基板の前記内周縁を受ける段状の内周縁受け部が形成されており、前記外側スリーブには、前記誘電体基板の前記外周縁を受ける段状の外周縁受け部が形成されており、前記内周縁受け部と前記外周縁受け部とに載置したろう材で、前記誘電体基板が内側スリーブと外側スリーブとにろう付けされている請求項2に記載の高周波入力結合器。
【請求項5】
前記誘電体基板の前記内周縁を前記高周波入力側から押さえる内周押えと、前記誘電体基板の前記外周縁を前記高周波入力側から押さえる外周押えとを備え、前記内周押えは高周波入力側面を導波管側内導体に当接されるものであり、前記外周押えは高周波入力側面を導波管側部材に当接されるものであり、
前記誘導体基板は、前記内周押えと前記外周押えに対応する位置で、それぞれ前記高周波入力側面に配置したろう材で、前記内周押えと前記外周押えとが前記誘電体基板にろう付けされている請求項4に記載の高周波入力結合器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高周波入力結合器に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波入力結合器は、荷電粒子(電子,イオン,陽子)加速器において、クライストロンのような高周波増幅器から放出された高周波(マイクロ波)を加速空洞に入射する際に用いられる。
【0003】
加速空洞に高周波(マイクロ波)を入射するとき、加速空洞に対して良好なカップリングを持たせることのできる構造を有した高周波入力結合器(カプラー)が必要となる。高周波入力結合器は、主に高周波透過窓を有する高周波透過窓構体と、外導体と、内導体(アンテナ)とにより構成され、外導体と内導体は同軸構造を形成している。
係る高周波入力結合器(カプラー)には、高周波透過窓構体の高周波入力側に誘電体基板が配置されることがある。また高周波透過窓構体には、高周波の入口側に高周波源から伝送されてくる高周波を変換するための同軸導波管変換構造を有した導波管が取りつけられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02-295023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、誘電体基板は、高周波透過窓構体の内側スリーブ(内導体)の導波管側端部と、同軸導波管変換部(ドアノブ)に一端部をボルトで固定した導波管側内導体の他端とで挟み込むようにして固定されている。しかし、ボルト締めした導波管側内導体と内側スリーブ(内導体)で挟み込んで固定した場合、例えば長時間使用した場合などでボルトに緩みが生じることがあり、その場合誘電体基板は挟み込み部で隙間が生じ、高周波を入力した際に放電が発生し、運転に支障をきたしてしまうことがあった。また、ボルトに緩みは生じなくても、誘電体基板の挟み込み部で誘電体基板との間に隙間が生じた場合に同様のことが起こることがあった。
【0006】
本実施形態は、誘電体基板と高周波窓構体との間に隙間が生じるのを防止できる高周波入力結合器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態は、導波管と加速空洞との間に設けて、導波管から加速空洞に高周波を入力する高周波入力結合器であって、内導体と、前記内導体の外周に設けた外導体と、高周波透過窓を有する高周波透過窓構体と、高周波透過窓の高周波入力側に設けた誘電体基板とを備え、前記誘電体基板は、前記高周波透過窓構体にろう付けにより固定されている高周波入力結合器である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る高周波入力結合器を導波管と加速空洞との間に設け状態を示す縦断面図である。
図2図2は、第2実施形態に係る高周波入力結合器を導波管と加速空洞との間に設け状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照しながら、一実施形態について詳細に説明する。なお、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
図1を参照して、第1実施の形態について説明する。
図1に示すように、第1実施の形態に係る高周波入力結合器1は、導波管3と加速空洞5との間に設けて、導波管3から加速空洞5に高周波を入力するものである。
この高周波入力結合器1は、内導体7と、内導体7の外周に設けた外導体9と、高周波透過窓11を有する高周波透過窓構体13と、高周波透過窓11の高周波入力側に設けた誘電体基板14とを備えている。
導波管3は主に溶接により組み立てられている。また、導波管3には、ドアノブと呼ばれる同軸導波管変換部15が溶接により接続されている。
【0011】
内導体7は、高周波透過窓構体13を貫通して設けてあり、導波管3の同軸導波管変換部15には、内導体7に連続する導波管側内導体8が設けられている。導波管側内導体8は、一端8aを同軸導波管変換部15に、導波管側内導体押さえ17を介して、ボルト18により固定されている。
内導体7の一端部は、加速空洞5内に突出して配置されるアンテナ部7aを有する。
【0012】
内導体7の高周波入力側端部7bと、導波管側内導体8の他端(高周波透過窓構体13側の端)8bとは互いに当接して、連続している。
【0013】
外導体9は、内導体7と同軸に設けてあり、加速空洞5側の端部を、真空側フランジ21を介して加速空洞5に接続されていると共に内周側は高周波透過窓構体13の外側スリーブ23(後述する)に固定されている。内導体7、真空側フランジ21及び外導体9は、高周波透過窓構体13(後述する)をろう付けにて組み立てた後に、ろう付けもしくは溶接等により組み立てられている。
【0014】
高周波透過窓構体13は、気密を保ち高周波を透過する高周波透過窓11と、伝送路を構成する外側スリーブ23及び内側スリーブ25を備えている。高周波透過窓11は、環状に形成されており、環内に内側スリーブ25を挿通して、内側スリーブ25と外側スリーブ23との間の真空側と大気側を仕切っている。高周波透過窓11の材料には、例えばアルミナなどのセラミックが用いられている。
【0015】
外側スリーブ23及び内側スリーブ25は、銅製である。
内側スリーブ25は内導体7と連続しており、本実施形態では、内側スリーブ25と内導体7は同一材としてある。
【0016】
誘電体基板14は、高周波透過窓構体13において、高周波透過窓11の高周波入力側に設けられている。誘電体基板14は、後述するように高周波透過窓構体13にろう付けにより固定されている。
誘電体基板14は、アルミナ製であり、環形状に形成されている。
【0017】
誘電体基板14は、内周縁14aを高周波透過窓構体13の内側スリーブ25に、外周縁14bを高周波透過窓構体13の外側スリーブ23にそれぞれろう付けされている。
各ろう付けは、誘電体基板14の内周縁14aと内側スリーブ25の外周面との間に配置された第1ろう材27a、誘電体基板14の外周縁14bと外側スリーブ23の内周面との間に配置した第2ろう材27bで、ろう付けされている。
尚、図1において、一点鎖線で抜き出して示しているのは、それぞれ、ろう材27a、27bの配置状態を示している。第1ろう材27a及び第2ろう材27bは、リボン状(薄い帯状)のろう材である。
【0018】
導波管3において、同軸導波管変換部15に対向する位置には、高周波透過窓構体連結部29が設けられている。
高周波透過窓構体連結部29では、高周波透過窓構体13の外側スリーブ23に、ろう付けした大気側フランジ31を、高周波透過窓構体連結部29の被締結部29aと締結部29bとの間に挟んで、被締結部29aと締結部29bをボルト32で固定している。大気側フランジ31は、高周波透過窓構体13の芯出し用のフランジとしても機能している。
【0019】
第1実施形態に係る高周波入力結合器1の取付けは、同軸導波管変換部15に導波管側内導体8を導波管側内導体押え17をボルト18で固定する。さらに内導体端部7bとボルトで固定するとなお良い。
一方、高周波透過窓構体13には、外側スリーブ23と内側スリーブ25との間に誘電体基板14をろう付けにより固定しておき、高周波透過窓構体連結部29において、誘電体基板14を固定した高周波透過窓構体13を大気側フランジ31で芯出ししつつボルト32を締め付け、被締結部29aと締結部29bを締結する。
【0020】
本実施形態の作用効果について説明する。
誘電体基板14は、高周波透過窓構体13にろう付けにより固定されているので、高周波透過窓構体13との間に隙間が形成されることを防止できる。即ち、従来技術のように、高周波透過窓構体13の内側スリーブ(内導体)25の高周波入力側端部7bと、同軸導波管変換部(ドアノブ)に一端部をボルト18で固定した導波管側内導体8の他端8bとで挟み込むようにして固定していた場合には、挟み込み部分で誘電体基板14との間に隙間が生じるおそれがあったが、本実施形態では、誘電体基板14は高周波透過窓構体13にろう付けにより固定されているので、誘電体基板14と高周波透過窓構体13との間に隙間が生じるのを防止できる。
【0021】
また、環状を成す誘電体基板14は、その内周縁14aを高周波透過窓構体13の内側スリーブ25に、外周縁14bを高周波透過窓構体13の外側スリーブ23にそれぞれろう付けされているから、誘電体基板14の内周縁14a及び外周縁14bの両方において、隙間が生じるのを防止できると共に強固に固定できる。
誘電体基板14は、その内周縁14aと内側スリーブ25の外周面との間に配置した第1ろう材27a、その外周縁14bと外側スリーブ23の内周面との間に配置した第2ろう材27bで、それぞれろう付けされているから、製造が容易である。
第1ろう材27a及び第2ろう材27bは、リボン状のろう材であるから、配置しやすい。
【0022】
以下に、他の実施形態について説明するが、以下に説明する実施形態において、上述した第1実施形態と同一の作用効果を奏する部分には、同一の符号を付して、その部分の詳細な説明を省略する。
図2を参照して、第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、高周波透過窓構体13に対する誘電体基板14の固定方法が異なっている。
高周波透過窓構体13の内側スリーブ25には誘電体基板14の内周縁14aを受ける内周縁受け部25aが形成されている。内周縁受け部25aは凹み状の段部である。
そして、内周縁受け部25aに載置した第3ろう材27cにより内側スリーブ25に誘電体基板14の内周縁14aをろう付けしている。
また、高周波透過窓構体13の外側スリーブ23には、誘電体基板14の外周縁14bを受ける外周縁受け部23aが形成されている。外周縁受け部23aは凹み状の段部である。
そして、外周縁受け部23aに載置した第4ろう材27dにより内側スリーブ25に誘電体基板14の外周縁14bをろう付けしている。
【0023】
誘電体基板14の内周縁には、高周波入力側から押える内周押え33が設けられている。同様に、誘電体基板14の外周縁には、高周波入力側から押える外周押え35が設けられている。
内周押え33は高周波入力側面を導波管側内導体8の他端8bに当接されるものであり、外周押え35は高周波入力側面を被締結部(導波管側部材)29aに当接されるものである。
内周押え33及び外周押え35は、それぞれ断面L字形状を成しており、対応する誘電体基板14の縁に高周波入力側から嵌り込むように配置されている。
内周側押え33は、誘電体基板14の内周縁14aにおいて、高周波入力側面に載置した第5ろう材27eによりろう接されている。
外周側押え35は、誘電体基板14の外周縁14bにおいて、高周波入力側面に載置した第6ろう材27fによりろう接されている。
【0024】
第2実施形態に係る高周波入力結合器1の取付けは、同軸導波管変換部15に導波管側内導体8を導波管側内導体押え18をボルト18で固定する。
一方、高周波透過窓構体13には、外側スリーブ23と内側スリーブ25との間に誘電体基板14、内周押え33及び外周押え35をろう付けにより固定しておき、高周波透過窓構体連結部29において、誘電体基板14、内周押え33及び外周押え35を固定した高周波透過窓構体13を大気側フランジ31で芯出ししつつボルト32を締め付け、被締結部29aと締結部29bを締結する。これにより、誘電体基板14の外周側は、誘電体基板14にろう付けされた外周押え35が被締結部29に押え付けられて固定される。
一方、誘電体基板14の内周縁14aにろう付けされた内周押え33は導波管側内導体8の他端8bに押え付けられて固定される。
【0025】
第2実施形態の効果について説明する。
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、誘電体基板14は、高周波透過窓構体13にろう付けにより固定されているので、高周波透過窓構体13との間に隙間が形成されることを防止できる。
誘電体基板14をろう付けする第3ろう材27cは、内側スリーブ25に形成された段状の内周縁受け部25aに載置し、第4ろう材27dは外側スリーブ23に形成された段状の外周縁受け部23aに載置できるので、ろう付けするときの第3ろう材27c及び第4ろう材27dの設置が容易にできる。
内周押え33は誘電体基板14の内周縁14aの高周波入力側面に載置した第5ろう材27eによりろう付けされており、外周押え35は誘電体基板14の外周縁14bの高周波入力側面に載置した第6ろう材27fによりろう付けされているので、ろう付けするときのろう材27e、27fの設置が容易にできる。
【0026】
上述した一実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1…高周波入力結合器、3…導波管、5…加速空洞、7…内導体、9…外導体、11…高周波透過窓、13…高周波透過窓構体、14…誘電体基板、14a…内周縁、14b…外周縁、23…外側スリーブ、23a…外周縁受け部、25…内側スリーブ、25a…内周縁受け部、27a…第1ろう材、27b…第2ろう材、27c…第3ろう材、27d…第4ろう材、27e…第5ろう材、27f…第6ろう材、33…内周押え、35…外周押え。
図1
図2