(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001954
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】空中映像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/60 20200101AFI20221227BHJP
H04N 5/66 20060101ALI20221227BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
G02B30/60
H04N5/66 D
G06F3/041 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102879
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 雅彦
【テーマコード(参考)】
2H199
5C058
【Fターム(参考)】
2H199BA32
2H199BA42
2H199BA49
2H199BB12
2H199BB18
2H199BB20
2H199BB52
2H199BB59
2H199BB67
5C058AB01
5C058BA35
(57)【要約】
【課題】空中映像の位置の把握が困難な使用者が使い易い空中映像表示装置を提供する。
【解決手段】筐体2と、筐体の内部の第1の位置11に配置された映像表示部3と、筐体の開口部に設置され、第1の位置に配置された映像表示部に表示された映像を反射させるビームスプリッター4と、筐体の内部に設置され、ビームスプリッターで反射された映像を再帰反射させる再帰反射シート5と、再帰反射シートで再帰反射された映像が筐体の外部で結像される空中映像6が含まれる空間領域内の物体の位置を検出するセンサー7と、第1の位置と映像表示部の表示面が筐体の外部から見える第2の位置12との間で映像表示部を移動させる可動機構8とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部の第1の位置に配置された映像表示部と、
前記筐体の開口部に設置され、前記第1の位置に配置された前記映像表示部の表示面に表示された映像を反射させるビームスプリッターと、
前記筐体の内部に設置され、前記ビームスプリッターで反射された前記映像を再帰反射させる再帰反射シートと、
前記再帰反射シートで再帰反射された前記映像が前記筐体の外部で結像される空中映像が含まれる空間領域内の物体の位置を検出するセンサーと、
前記第1の位置と前記映像表示部の前記表示面が前記筐体の外部から見える第2の位置との間で前記映像表示部を移動させる可動機構とを備えたことを特徴とする空中映像表示装置。
【請求項2】
前記第2の位置に配置された前記映像表示部の前記表示面の前面に透光性を有するタッチセンサーをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の空中映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、空中映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特殊なメガネが不要で、霧などのスクリーンを使用せずに空中に映像を表示することができる空中映像表示装置が知られている。例えば、ビームスプリッターと再帰反射シートとを用いて、映像表示部に表示された映像をビームスプリッターに対して面対称な位置の空間に結像させて映像を表示する空中映像表示装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空中映像表示装置において、空中に表示された映像(以下、空中映像と記す)としてタッチパネルを表示させ、使用者が指でそのタッチパネルを操作する空中タッチパネルとしての使用方法がある。空中映像は空中に浮いているため、その周囲に距離感の指標となる物体がない。そのため、空中映像を空中タッチパネルとして使用するときに、使用者は距離感がつかみにくいという問題がある。とくに視力の弱い人、両眼の視力の差が大きい人などは、空中映像の位置の把握が困難になるという問題がある。
【0005】
本願は、上述の課題を解決するためになされたもので、空中映像の位置の把握が困難な使用者が使い易い空中映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の空中映像表示装置は、筐体と、筐体の内部の第1の位置に配置された映像表示部と、筐体の開口部に設置され、第1の位置に配置された映像表示部の表示面に表示された映像を反射させるビームスプリッターと、筐体の内部に設置され、ビームスプリッターで反射された映像を再帰反射させる再帰反射シートと、再帰反射シートで再帰反射された映像が筐体の外部で結像される空中映像が含まれる空間領域内の物体の位置を検出するセンサーと、第1の位置と映像表示部の表示面が筐体の外部から見える第2の位置との間で映像表示部を移動させる可動機構とを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本願の空中映像表示装置においては、第1の位置と映像表示部の表示面が筐体の外部から見える第2の位置との間で映像表示部を移動させる可動機構を備えており、使用者は第2の位置に配置された映像表示部の表示面に対して操作することができるので、空中映像の位置の把握が困難な使用者が使い易い空中映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る空中映像表示装置の模式図である。
【
図2】実施の形態1に係る空中映像表示装置の模式図である。
【
図3】実施の形態2に係る空中映像表示装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願を実施するための実施の形態に係る空中映像表示装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一符号は同一もしくは相当部分を示している。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る空中映像表示装置の模式図である。本実施の形態の空中映像表示装置1は、筐体2と、筐体2の内部の第1の位置11に配置された映像表示部3と、筐体2の開口部に設けられたビームスプリッター4と、筐体2の内部に配置された再帰反射シート5とを有する。第1の位置11に配置された映像表示部3から出射された光は、ビームスプリッター4に入射し、その一部が反射されて再帰反射シート5に入射する。再帰反射シート5は、入射した光を入射方向へ反射する特性を有している。再帰反射シート5は、ビームスプリッター4から入射した光をビームスプリッター4に向かって反射させる。再帰反射シート5からビームスプリッター4に向かって反射された光は、一部がビームスプリッター4を透過する。このようにして第1の位置11に配置された映像表示部3に表示された映像は、ビームスプリッター4を通過して筐体2の外部で結像されて空中映像6となる。使用者10は、この空中映像6を観察することができる。例えば、空中映像6として種々の機器を操作するためのタッチパネルを表示させる。使用者10は、空中映像6として表示されたタッチパネルに指10aを近づけることでタッチパネルに対するタッチ操作を行うことができる。指10aの位置は、筐体2に設けられ、空中映像6が含まれる空間領域内の物体の位置を検出する三次元距離センサー7で測定することができる。映像表示部3としては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LED素子が配列されたディスプレイなどを用いることができる。ビームスプリッター4としては、ハーフミラー、反射型偏光板などを用いることができる。再帰反射シート5としては、球状の透明ガラスビーズを並べたガラスビーズ方式のシート、透明な三角錐を配列したマイクロプリズム方式のシートなどを用いることができる。三次元距離センサー7としては、例えばToFセンサー(Time of Flight Sensor)、ステレオカメラなどを用いることができる。
【0011】
さらに、本実施の形態の空中映像表示装置1は、第1の位置11に配置された映像表示部3を第2の位置12に移動させる可動機構8を備えている。ここで、第1の位置11とは、映像表示部3の表示面の映像がビームスプリッター4で再帰反射シート5に向かって反射される位置である。また、第2の位置12とは映像表示部3の表示面が筐体2の外部から見える位置である。なお、第2の位置12は、映像表示部3の表示面が筐体2の外部に露出した位置とも言える。
【0012】
通常、映像表示部3は
図1に示す第1の位置11に配置されており、空中映像表示装置1は空中映像6としてタッチパネルを表示させる。使用者10は、空中映像6として表示されたタッチパネルに指10aを近づけてタッチ操作を行うことができる。指10aの位置と空中映像6との距離は、筐体2に設けられた三次元距離センサー7で測定することができる。このタッチ操作は非接触であるため、接触による指先の汚染、タッチパネルを介した有害物質の拡散などを防ぐことができる。
【0013】
しかしながら、空中映像は空中に浮いているため、その周囲に距離感の指標となる物体がない。そのため、空中映像をタッチパネルとして使用するときに、使用者は距離感がつかみにくいという問題がある。とくに視力の弱い人、両眼の視力の差が大きい人が使用するときは、使用者が空中映像の位置の把握が困難になるという問題がある。
【0014】
本実施の形態の空中映像表示装置1は、空中映像の位置の把握が困難な使用者が使用するときの使い易さを向上させたものである。そのため、本実施の形態の空中映像表示装置1は、空中映像を表示するときに第1の位置11に配置された映像表示部3を筐体2の外部から映像表示部3の表示面が見える第2の位置12に移動させる可動機構8を備えている。
【0015】
図2は、本実施の形態1に係る空中映像表示装置の模式図である。
図2に示す空中映像表示装置1は、可動機構8によって映像表示部3が第2の位置12に移動された状態を示している。空中映像の位置の把握が困難な使用者10は、この第2の位置12に配置された映像表示部3の表示面に表示されたタッチパネルに対して指10aを近づけることでタッチパネルに対するタッチ操作を行うことができる。指10aの位置と第2の位置12に配置された映像表示部3の表示面との距離は、筐体2に設けられた三次元距離センサー7で測定することができる。
【0016】
これ以降、映像表示部3が第1の位置11に配置されて空中映像を表示している状態を空中表示モード、映像表示部3が第2の位置12に配置されて表示面が外部から見える状態をパネル表示モードと称する。
【0017】
このように構成された空中映像表示装置においては、空中映像の位置の把握が困難な使用者は、空中映像として表示された虚像のタッチパネルではなく、第2の位置12に配置された映像表示部3の表示面に表示された実像のタッチパネルに対してタッチ操作を行うことができるので、タッチパネルの位置の把握が容易となる。その結果、本実施の形態の空中映像表示装置は、空中映像の位置の把握が困難な使用者にとって使い易いものとなる。また、指10aの位置と第2の位置12に配置された映像表示部3の表示面との距離は三次元距離センサー7で測定しているので、非接触でタッチパネルを操作することができる。そのため、空中映像のタッチパネルに対する操作と同様に、接触による指先の汚染、タッチパネルを介した有害物質の拡散などを防ぐことができる。
【0018】
なお、空中表示モードとパネル表示モードとの切り替えに関しては、次のような方法が考えられる。通常は映像表示部が第1の位置に配置された空中表示モードとしておく。そして操作開始前の空中映像に、例えば「この映像が見えにくい場合には、切り替えスイッチを押してください」という表示を行う。使用者が空中表示モードで空中映像が見えにくい場合は、筐体に設置された切り替えスイッチを押すことで映像表示部を第2の位置に移動させてパネル表示モードに切り替えることができる。使用者が空中表示モードで空中映像が見える場合は空中表示モードを継続する。なお、空中表示モードとパネル表示モードとの切り替え方法は、これに限るものではない。
【0019】
本実施の形態の空中映像表示装置においては、可動機構を用いて1つの映像表示部を第1の位置と第2の位置との間で移動させている。そのため、空中表示モードでタッチパネルが表示されている状態とパネル表示モードでタッチパネルが表示される状態とが同時に起こらない。そのため、使用者がどちらのタッチパネルを操作すればよいか迷うことはない。また、2つの表示モードに対して高価な映像表示部を共用することで低コスト化が図れる。
【0020】
なお、本実施の形態において、指10aの位置は三次元距離センサー7で測定される。本実施の形態の空中映像表示装置は、三次元距離センサー7で測定された指10aの位置からタッチパネルにタッチする位置となる指先の位置を算出するための認識部を備えていてもよい。また、本実施の形態においては、空中表示モードおよびパネル表示モードのどちらのモードにおいても、タッチパネルとして使用するときにタッチ操作に応じて表示画像を切り替えることも想定される。本実施の形態の空中映像表示装置は、認識部で算出された指先の位置に基づいて映像表示部の表示画像を切り替えるための表示処理部を備えていてもよい。
【0021】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2に係る空中映像表示装置の模式図である。本実施の形態の空中映像表示装置1は、実施の形態1の空中映像表示装置の第2の位置12に配置された映像表示部3の前面に透明なタッチセンサー13が追加されたものである。使用者10は、透明なタッチセンサー13を通して第2の位置12に配置された映像表示部3の表示面を見ることができる。
【0022】
実施の形態1の空中映像表示装置においては、第2の位置12に配置された映像表示部3に対して使用者10が指10aで操作するときに、指10aの位置と映像表示部3の表示面との距離を三次元距離センサー7で測定している。本実施の形態の空中映像表示装置1においては、第2の位置12に配置された映像表示部3に表示されたタッチパネルに対して、使用者10は指10aでタッチセンサー13に直接タッチしてタッチ操作することができる。
【0023】
このように構成された空中映像表示装置1においては、タッチセンサー13で指10aの位置を直接検出しているので検出精度が向上する。また、使用者10はタッチセンサー13に直接タッチすることができるので、指先の接触によって確実にタッチ操作を行ったことを認識できる。
【0024】
なお、本実施の形態の空中映像表示装置においては、映像表示部とは別にタッチセンサーを備える例を説明したが、映像表示部の表示面にタッチセンサーが組み込まれていてもよい。
【0025】
なお、実施の形態1~2においては、ビームスプリッターと再帰反射シートとを用いた方式の空中映像表示装置で説明した。これ以外の方式の空中映像表示装置として、二面コーナーリフレクタアレイと呼ばれる光学プレートを用いた方式、直交ミラーアレイと呼ばれる光学プレートを用いた方式のものがある。これらの方式の空中映像表示装置においては、
図1に示した空中映像表示装置において、再帰反射シートが除かれビームスプリッターの位置に光学プレートが配置される。このような空中映像表示装置は、映像表示部に表示された映像を光学プレートに対して面対称な位置の空間に結像させて空中映像を表示することができる。このような方式の空中映像表示装置においても、空中映像を空中タッチパネルとして使用するときに、使用者は距離感がつかみにくいという問題がある。このような方式の空中映像表示装置においても、空中映像を表示するときに第1の位置に配置された映像表示部を筐体の外部から映像表示部の表示面が見える第2の位置に移動させる可動機構を備えることで、使用者は第2の位置に配置された映像表示部の表示面に表示された実像のタッチパネルに対してタッチ操作を行うことができるので、空中映像の位置の把握が困難な使用者にとって使い易いものとなる。
【0026】
本願は、様々な例示的な実施の形態および実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
したがって、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0027】
1 空中映像表示装置、2 筐体、3 映像表示部、4 ビームスプリッター、5 再帰反射シート、6 空中映像、7 三次元距離センサー、8 可動機構、10 使用者、10a 指、11 第1の位置、12 第2の位置、13 タッチセンサー。