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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019546
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】照明装置及び内視鏡装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/06 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
A61B1/06 614
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124333
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】竹中 俊明
(72)【発明者】
【氏名】林 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】八木 史也
(72)【発明者】
【氏名】茂手木 省吾
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161JJ11
4C161JJ17
4C161NN01
4C161QQ04
4C161QQ07
(57)【要約】
【課題】異常有無の判定を適時行うことができる照明装置を提供する。
【解決手段】照明装置1は、励起光L1を発する励起源6と、励起光L1を受光して蛍光を発する蛍光体4aと、励起光L1及び蛍光のうちの少なくとも一方の光を検出光L3とし、検出光L3に基づく検出信号s0を出力する光センサ61と、検出信号s0に基づいて複数の出力信号s1~s3を出力するミラー装置62と、複数の出力信号s1~s3を異なるゲインで増幅し、複数の増幅信号sa~scを出力する複数の増幅器63と、複数の増幅信号sa~scのうち、検出光L3の光量に対する複数の増幅信号sa~scの信号レベルが所定の閾値Vth1以下である増幅信号の中から、信号レベルが最大である増幅信号に基づいて異常有無を判定する異常判定部56と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を発する励起源と、
前記励起光を受光して蛍光を発する蛍光体と、
前記励起光及び前記蛍光のうちの少なくとも一方の光を検出光とし、前記検出光に基づく検出信号を出力する光センサと、
前記検出信号に基づいて複数の出力信号を出力するミラー装置と、
前記複数の出力信号を異なるゲインで増幅し、複数の増幅信号を出力する複数の増幅器と、
前記複数の増幅信号のうち、前記検出光の光量に対する前記複数の増幅信号の信号レベルが所定の閾値以下である増幅信号の中から、前記信号レベルが最大である増幅信号に基づいて異常有無を判定する異常判定部と、
を備える照明装置。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記信号レベルが最大である増幅信号に基づいて、前記励起源及び前記蛍光体の少なくとも一方の異常有無を判定する
請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記異常判定部は、前記励起光を検出光とした場合の前記増幅信号、及び、前記蛍光を検出光とした場合の前記増幅信号の信号レベルの比率に基づいて異常有無を判定する
請求項2に記載の照明装置
【請求項4】
前記ミラー装置は、カレントミラー回路であり、前記検出信号と同一の電流値である前記複数の出力信号を出力する
請求項1~3のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記複数の増幅器のうちの第1の増幅器は第1のゲインを有し、第2の増幅器は前記第1のゲインよりも低い第2のゲインを有し、
前記第1のゲイン及び第2のゲインは、前記第1の増幅器による増幅信号が飽和しているとき、前記第2の増幅器による増幅信号が線形で変化するように設定される
請求項1~4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記所定の閾値は、前記複数の増幅信号のそれぞれが前記検出光の光量に対して線形で変化する範囲の前記信号レベルから設定される
請求項1~5のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記光センサは、前記蛍光体から出射される照明光とは異なる方向に出射された光を前記検出光とする
請求項1~6のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記励起源は、レーザ素子である
請求項1~7のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項9】
請求項8に記載の照明装置と、
被検体を観察するための観察装置と、
を備える内視鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体発光素子を用いた照明装置、及び、内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体発光素子を用いた照明装置が知られている(例えば、特許文献1など参照)。特許文献1に記載された照明装置は、光を電気信号に変換する光電変換素子、及び電気信号を増幅して出力する増幅部を有する検出回路と、増幅部の増幅率を変化させる増幅率切替部と、増幅された電気信号に基づいて異常有無を判定する異常判定部と、を備えている。この照明装置では、増幅率切替部によって増幅率を変化させたときに、増幅された電気信号の大きさの変化量が判定閾値より小さければ、異常が発生していると判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-194679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された照明装置では、増幅部の増幅率を切り替えたときに、照明装置の異常を検出できない期間が生じる。そのため、照明装置の異常有無の判定を行うことができないという問題がある。
【0005】
そこで本開示は、異常有無の判定を適時行うことができる照明装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本開示の照明装置は、励起光を発する励起源と、前記励起光を受光して蛍光を発する蛍光体と、前記励起光及び前記蛍光のうちの少なくとも一方の光を検出光とし、前記検出光に基づく検出信号を出力する光センサと、前記検出信号に基づいて複数の出力信号を出力するミラー装置と、前記複数の出力信号を異なるゲインで増幅し、複数の増幅信号を出力する複数の増幅器と、前記複数の増幅信号のうち、前記検出光の光量に対する前記複数の増幅信号の信号レベルが所定の閾値以下である増幅信号の中から、前記信号レベルが最大である増幅信号に基づいて異常有無を判定する異常判定部と、を備える。
【0007】
上記課題を解決するために本開示の内視鏡装置は、上記の照明装置と、被検体を観察するための観察装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の照明装置等によれば、異常有無の判定を適時行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、比較例の照明装置の構成を示す模式図である。
図2図2は、実施の形態に係る照明装置の構成を示す概略図である。
図3図3は、実施の形態に係る照明装置の構成を示す外観図である。
図4図4は、実施の形態に係る照明装置の励起源の構成を示す回路図である。
図5図5は、実施の形態に係る照明装置の光センサ、ミラー装置及び増幅器の構成を示すブロック図である。
図6図6は、光センサにて検出する検出光の光量と増幅信号の信号レベルとの関係を示す図である。
図7図7は、実施の形態の照明装置を備える内視鏡装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の概要)
本開示の概要について、比較例を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、比較例の照明装置101を示す概略図である。
【0012】
比較例の照明装置101は、励起光L1の波長を変換して照明光L2を出射する装置である。同図に示すように、照明装置101は、励起光L1を出力する光源装置102と、導光部材103と、蛍光体104aと、を備える。
【0013】
導光部材103は、光源装置102から出力された励起光L1を導光して、蛍光体104aへ出射する。蛍光体104aは、励起光L1を異なる波長の光に変換して放射する。具体的に蛍光体104aは、励起光L1が入力されることで蛍光し、例えば複数の波長からなる光であって全体として白色に看取される光を拡散して放射する。この放射された光が照明光L2となって出射される。
【0014】
照明装置101は、蛍光体104aの異常を検出する検出回路160と、検出回路160の検出結果に基づいて蛍光体104aの異常有無を判定する異常判定部156と、を備えている。検出回路160は、蛍光体104aから出射された光の一部を検出光L3として受光して検出信号s0を出力する光センサ161と、光センサ161から出力された検出信号s0を増幅して出力する増幅回路163とを有している。
【0015】
蛍光体104aから発せられる光はダイナミックレンジが広いため、検出回路160のスケール(ものさし)が小さすぎたり大きすぎたりすると、検出光L3の光量を正確に検出できないことがある。そこで比較例では、光センサ161から出力した検出信号s0を増幅する際に、増幅回路163のゲイン(増幅率)を切り替えることで、検出光L3の光量を広い範囲で読み取り可能としている。比較例では、異常判定部156がゲインの切り替えにより増幅された信号を読み取り、蛍光体104aの異常有無を判定する。
【0016】
しかしながら、比較例の照明装置101では、増幅回路163のゲインを切り替えるときに増幅された信号のレベルが大きく変わるため、ゲインを切り替えてから信号のレベルが安定するまでに時間がかかる。そのため比較例では、蛍光体104aの異常を検出できない期間が生じ、異常有無の判定を行うことができないという問題がある。
【0017】
それに対し、本実施の形態の照明装置では、増幅回路のゲインを切り替えずに、検出光L3の光量を読み取ることができる構成を有している。例えば、本実施の形態の照明装置では、光センサから出力された検出信号s0から複数の出力信号を生成し、複数の出力信号のそれぞれを異なるゲインで増幅する。そして、異なるゲインで増幅された複数の増幅信号の中から、異常有無の判定をするために適した増幅信号を用いて異常有無の判定を行う。これにより、照明装置の異常を検出できない期間が生じることを抑制でき、異常有無の判定を適時行うことが可能となる。
【0018】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0020】
(実施の形態)
実施の形態に係る照明装置について説明する。
【0021】
[1.照明装置の構成]
本実施の形態に係る照明装置の構成について図2図6を用いて説明する。
【0022】
図2及び図3は、それぞれ、実施の形態に係る照明装置1の構成を示すブロック図及び外観図である。図2には、照明装置1と併せて入力電源P1も示されている。入力電源P1は、照明装置1に交流電力を供給する系統電源である。入力電源P1は、例えば、商用交流電源である。
【0023】
照明装置1は、照明光L2を出射する装置であり、図2及び図3に示されるように、光源装置2と、導光部材3と、蛍光体4aとを備える。なお、照明装置1の各構成要素は、一体化されていてもよいし、一体化されていなくてもよい。例えば、照明装置1は、一つの筐体内に配置されていてもよいし、複数の分散配置された装置の組み合わせであってもよい。
【0024】
光源装置2は、励起光L1を出射する装置である。図2に示されるように、光源装置2は、点灯装置5と、励起源6と、光学部材7とを有する。本実施の形態では、光源装置2は、励起光L1を出射する。光源装置2は、図3に示されるように筐体2aを有し、筐体2a内に、図2に示される点灯装置5、励起源6及び光学部材7が収容される。
【0025】
点灯装置5は、励起源6に電力を供給することで点灯させる装置であり、駆動装置5aと、光源切替部54と、検出回路60と、異常判定部56とを有する。駆動装置5aは、励起源6に供給する電力を制御する装置であり、電源回路51と、出力制御回路58とを有する。異常判定部56及び出力制御回路58は、コントローラ5cによって構成されている。
【0026】
以下、照明装置1の各構成要素について説明する。
【0027】
[励起源]
励起源6は、1以上の発光素子を含み、励起光L1を出射する。以下、本実施の形態に係る励起源6の構成について、図4を用いて説明する。
【0028】
図4は、照明装置1の励起源6の構成を示す回路図である。なお図4には、光源切替部54の回路図も示されている。
【0029】
図4に示されるように、励起源6は、直列に接続された4個の発光素子6a~6dを含む。発光素子6a~6dの各々は、供給される電力に応じて発光する素子であれば特に限定されない。本実施の形態では、発光素子6a~6dの各々は、青色の励起光を出射する半導体レーザ素子である。これにより、励起源6は、レーザ光である励起光L1を出射する。なお、励起源6に含まれる複数の発光素子の電気的な接続態様は、直列接続に限定されず、並列接続であってもよいし、直列接続及び並列接続を組み合わせた接続態様であってもよい。また、励起源6に含まれる発光素子の個数は4個に限定されず、1以上であればよい。また、励起源6に含まれる発光素子の各々は、半導体レーザ素子に限定されず、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro Luminescence)素子などの他の固体発光素子であってもよい。
【0030】
[光源切替部]
光源切替部54は、励起源6に含まれる各発光素子の両端を短絡する回路である。光源切替部54は、複数の発光素子6a~6dにそれぞれ並列に接続された複数のスイッチ821~824を有する。複数のスイッチ821~824の各々は、例えば半導体リレー(言い換えると、ソリッド・ステート・リレー)であり、発光素子としての発光ダイオード82aと、受光素子としてのフォトトランジスタ82bとを有する。
【0031】
各スイッチにおいて、フォトトランジスタ82bがオフ状態である場合、対応する発光素子に駆動電流I1が流れる。一方、フォトトランジスタ82bがオン状態である場合、対応する発光素子の両端が短絡されるため、対応する発光素子に駆動電流I1は流れない。
【0032】
[電源回路]
電源回路51は、励起源6に電力を供給する回路である。電源回路51は、入力電源P1が出力する電力の電圧を変換して出力する。本実施の形態では、入力電源P1が出力する交流電力を直流電力に変換するスイッチング電源回路である。電源回路51は、力率改善機能を有するスイッチング電源回路であってもよい。
【0033】
[光学部材]
図2に示されるように、光学部材7は、励起源6から出力された励起光L1を、光学系に導く部材である。光学部材7は、ミラーやレンズ等の光学部品から構成されていてもよい。本実施の形態では、光学系は導光部材3であり、光学部材7は、励起源6から出力された励起光L1を導光部材3の第1端3aに向けて反射させる。光学部材7は、さらに、励起光L1を集光して、導光部材3の第1端3aに入射させる。
【0034】
[導光部材]
導光部材3は、励起光L1が入射し、励起光L1を蛍光体4aに照射する光学系の一例である。本実施の形態では、導光部材3は、励起光L1を導光する光ファイバであり、光源装置2と蛍光体4aとを光学的に接続する。導光部材3のコア径は、例えば400μmである。なお、導光部材3のコア径は、5mm以下であればよい。導光部材3の第1端3aには、励起源6から放射されて光学部材7によって集光された励起光L1が入射する。励起光L1は、導光部材3の第1端3aから、導光部材3の内部を伝達されて、導光部材3の第2端3bから出射する。
【0035】
[蛍光体]
蛍光体4aは、励起光L1を、励起光L1とは波長が異なる照明光L2に変換して出射する波長変換部材である。本実施の形態では、蛍光体4aは、導光部材3の第2端3bから出射された励起光L1が照射される。本実施の形態では、蛍光体4aは、透光性材料に蛍光材料が混合されている部材である。蛍光体4aは、例えば黄色蛍光体である。黄色蛍光体は、例えば、Ceで付活されたYAl12、又はEuで付活されたBaSiOである。蛍光体4aは、青色の励起光L1の一部により励起されて、照明光L2として黄色光を出射する。蛍光体4aは、残りの青色の励起光L1と黄色光との混色光である白色光を生成する。蛍光体4aで生成された白色光の大部分は、照明光L2として照明空間に照射される。なお、白色光の大部分を除く残りの一部は、後述する検出回路60に入射される。
【0036】
[検出回路]
検出回路60は、照明装置1の異常を検出する回路である。検出回路60は、蛍光体4aの側方に配置されている。検出回路60は、光センサ61、ミラー装置62及び複数の増幅器63を有している。
【0037】
図5は、照明装置1の光センサ61、ミラー装置62、増幅器63の構成を示すブロック図である。
【0038】
光センサ61は、蛍光体4aから出射された光の一部を検出光L3として検出し、検出信号s0を出力する。光センサ61は、例えばフォトダイオードなどの光検出素子であり、受光した検出光L3の光量に応じた検出信号s0を出力する。
【0039】
図5に示されるように、光センサ61は、蛍光体4aの側方に配置されており、照明光L2の出射方向とは異なる方向に出射された光を受光する。例えば検出光L3は、蛍光体4aに光が入力される際の入射方向に対して垂直な方向に漏れ出た光である。なお、蛍光体4aから光センサ61までの検出光L3の光路上には、検出光L3の波長帯域以外の波長帯域の光を減衰させる光フィルタなどが配置されてもよい。光センサ61は、検出光L3の光量に応じた検出信号s0をミラー装置62へ出力する。
【0040】
ミラー装置62は、光センサ61から出力された検出信号s0に基づいて複数の出力信号s1、s2及びs3を出力する。ミラー装置62は、能動素子を用いて電流を複製するカレントミラー回路である。ミラー装置62は、検出信号s0と同一の電流値である複数の出力信号s1~s3を出力する。図5に示す例では、ミラー装置62に1つの検出信号s0が入力され、ミラー装置62から3つの出力信号s1~s3が出力される。
【0041】
増幅器63は、ミラー装置62が出力した出力信号s1~s3を増幅する回路である。本実施の形態では、増幅器63は、電流アンプ及び抵抗などを有しており、ミラー装置62が出力した光電流を増幅し、増幅した光電流を電圧に変換して出力する、増幅器63から出力される増幅信号は電圧信号であり、検出光L3の光量が大きいほど、光電流の値は大きくなり、増幅信号の電圧値は高くなる。図5に示す例では、増幅器63として3つの増幅器63a、63b及び63cが示されている。
【0042】
複数の増幅器63a~63cのそれぞれは、異なるゲインを有している。複数の増幅器63a~63cは、複数の出力信号s1~s3を異なるゲインで増幅して、複数の増幅信号sa、sb及びscを出力する。複数の増幅器63のうちの第1の増幅器63aは第1のゲインを有し、第2の増幅器63bは第1のゲインよりも低い第2のゲインを有し、第3の増幅器63cは第2のゲインよりも低い第3のゲインを有している。言い換えると、第2のゲインは第3のゲインよりも高く、第1のゲインは第2のゲインよりも高くなっている。
【0043】
図6は、光センサ61にて検出する検出光L3の光量と増幅信号sa~scの信号レベルとの関係を示す図である。図6の横軸には、検出光L3の光量が示され、縦軸には増幅信号sa~scの信号レベルが示されている。信号レベルの単位は電圧値である。
【0044】
図6に示されるように、増幅信号saは、検出光L3の光量が0(ゼロ)から増加するにつれて、信号レベルも0から線形に増加する。そして、検出光L3の光量が所定の光量を上回ると、信号レベルは飽和電圧値で一定になる。増幅信号sb及びscについても同様である。
【0045】
例えば、第1の増幅器63aの第1のゲイン及び第2の増幅器63bの第2のゲインは、第1の増幅器63aによる増幅信号saが飽和しているとき、第2の増幅器63bによる増幅信号sbが線形で変化するように設定される。また、第2の増幅器63bの第2のゲイン及び第3の増幅器63cの第3のゲインは、第2の増幅器63bによる増幅信号sbが飽和しているとき、第3の増幅器63cによる増幅信号scが線形で変化するように設定される。
【0046】
また、複数の増幅器63の各ゲインは、増幅信号sa~scが互いに横軸方向に離れすぎないよう、増幅信号sa~scの信号レベルが所定の閾値である第1の閾値Vth1以下であるときに、所定の検出光L3の光量x1に対して少なくとも2つの増幅信号が存在するように設定される。例えば、図6では、所定の検出光L3の光量x1に対して増幅信号sa及びsbが存在するように、第1のゲイン及び第2のゲインが設定されている。第1の閾値Vth1は、複数の増幅信号sa~scが検出光L3の光量に対して線形で変化する範囲の信号レベルから設定される値である。すなわち、第1の閾値Vth1は、図6に示す飽和電圧値よりも小さな値に設定される。
【0047】
なお、複数の増幅器63のゲインは、増幅信号sa~scの信号レベルが第1の閾値Vth1以下であり、かつ、第1の閾値Vth1よりも小さな閾値である第2の閾値Vth2以上であるときに、すなわち信号レベルが所定範囲内であるときに、所定の検出光L3の光量に対して少なくとも2つの増幅信号が存在するように設定されてもよい。
【0048】
このように光センサ61から出力された検出信号s0は、ミラー装置62で複数の出力信号s1~s3に複製され、増幅器63で倍率の異なる複数の増幅信号sa~scとなって異常判定部56へ出力される。
【0049】
[異常判定部]
異常判定部56は、照明装置1の異常有無を判定する。異常判定部56は、検出回路60から出力された増幅信号sa~scをモニタリングし、蛍光体4a及び励起源6の少なくとも一方の異常有無を判定する。図5に示す例では、複数の増幅器63a~63cで生成された複数の増幅信号sa~scが、常時、異常判定部56へ出力されている。そのため、従来技術のように増幅回路のゲインを切り替える必要がない。
【0050】
本実施の形態の異常判定部56は、検出光L3の光量に対する複数の増幅信号sa~scの信号レベルが第1の閾値Vth1以下である増幅信号の中から、信号レベルが最大である増幅信号に基づいて異常有無を判定する。図6に示す例では、異常判定部56は、検出光L3の光量x1に対して信号レベルが最大である増幅信号saを選択し、この増幅信号saに基づいて異常有無を判定する。
【0051】
異常判定部56は、励起光L1の波長帯域の光を検出光L3とした場合の増幅信号、及び、励起光L1を蛍光体4aで波長変換した蛍光の波長帯域の光を検出光L3とした場合の増幅信号の信号レベルの比率に基づいて異常有無を判定してもよい。例えば、励起光L1を検出光L3とした場合の増幅信号を分母とし、蛍光を検出光L3とした場合の増幅信号を分子としたとき、異常判定部56は、2つの増幅信号の信号レベルの比率が、予め決められた比率の範囲よりも小さい場合に、蛍光体4aに異常が発生していると判定してもよい。また、異常判定部56は、2つの増幅信号の信号レベルの比率が、予め決められた範囲よりも大きい場合に、励起源6に異常が発生していると判定してもよい。励起光L1を検出光L3とするには、例えば、蛍光体4aと光センサ61との間の光路上に励起光L1の波長を透過する光フィルタを配置することで実現される。蛍光を検出光L3とするには、例えば、蛍光体4aと光センサ61との間の光路上に蛍光の波長を透過する光フィルタを配置することで実現される。
【0052】
また、異常判定部56は、選択した増幅信号の信号レベルの低下率が予め決めた閾値より大きいか否かで異常有無を判定してもよい。例えば、異常判定部56は、現在の検出光L3に基づいて算出した信号レベルと、その直前に取得した信号レベルとを比較して、信号レベルの低下率が予め決めた閾値以下である場合に、励起源6又は蛍光体4aに異常が発生していると判断してもよい。増幅信号の信号レベルの低下率として予め決めた閾値は、例えば、50%程度であってもよい。
【0053】
[出力制御回路]
出力制御回路58は、電源回路51及び光源切替部54を制御することによって、励起源6の各発光素子に供給される電流を制御する。より具体的には、出力制御回路58は、電源回路51を制御することで、駆動電流I1を調整する。すなわち、出力制御回路58は、駆動電流I1を可変とすることで、励起光L1の光量を調整する調光機能を有する。
【0054】
また、本実施の形態における出力制御回路58は、異常判定部56によって照明装置1に異常が発生していると判定された場合、より具体的には蛍光体4aまたは励起源6に異常が発生していると判定された場合、励起源6への電流供給を停止する。
【0055】
なお、前述したように出力制御回路58及び異常判定部56は、コントローラ5cで構成される。コントローラ5cは、例えば、制御用IC(Integrated Circuit)、コンピュータシステムなどを含む。コンピュータシステムは、プログラムに従って動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによってコントローラ5cの各機能を実現することができれば、その種類は限定されない。
【0056】
このように、本実施の形態に係る照明装置1は、励起光L1を発する励起源6と、励起光L1を受光して蛍光を発する蛍光体4aと、励起光L1及び蛍光のうちの少なくとも一方の光を検出光L3とし、検出光L3に基づく検出信号s0を出力する光センサ61と、検出信号s0に基づいて複数の出力信号s1~s3を出力するミラー装置62と、複数の出力信号s1~s3を異なるゲインで増幅し、複数の増幅信号sa~scを出力する複数の増幅器63と、複数の増幅信号sa~scのうち、検出光L3の光量に対する複数の増幅信号sa~scの信号レベルが所定の閾値Vth1以下である増幅信号の中から、信号レベルが最大である増幅信号に基づいて異常有無を判定する異常判定部56と、を備える。
【0057】
この構成によれば、異なるゲインで増幅された複数の増幅信号の中から、異常有無の判定をするために適した増幅信号を用いて異常有無の判定を行うことができる。そのため、増幅器のゲインを切り替える必要がなくなり、ゲインの切り替えを起因として照明装置1の異常を検出できない期間が生じることを抑制できる。これにより、照明装置1の異常有無の判定を適時行うことができる。
【0058】
[2.照明装置の動作]
照明装置1の動作について説明する。
【0059】
まず、入力電源P1の交流電力が照明装置1に投入されると、出力制御回路58は、電源回路51を制御して、駆動電流I1を励起源6へ供給する。励起源6の複数の発光素子6a~6dは、駆動電流I1によって青色の励起光L1を放射する。励起光L1は、光学部材7及び導光部材3を通って、蛍光体4aに到達する。蛍光体4aは、青色の励起光L1から白色光(波長変換光)を生成する。蛍光体4aは、白色光の殆どを、照明光L2として照明空間に照射する。白色光の一部は、検出光L3として、検出回路60の光センサ61に到達する。
【0060】
検出光L3は、実際に照明空間に照射される照明光L2と同じ白色光であり、照明光L2の光量に関する情報を含んでいる。すなわち、照明光L2の光量が大きいほど、検出光L3の光量も大きくなる。したがって、照明光L2の光量が大きいほど、増幅信号saの電圧値は高くなり、照明光L2の光量が小さいほど、増幅信号saの電圧値は低くなる。すなわち、照明光L2の光量の情報は、検出光L3として点灯装置5にフィードバックされる。
【0061】
出力制御回路58は、増幅信号saの電圧値に基づいて、励起源6が発する励起光L1の光量を監視する。そして、出力制御回路58は、増幅信号saの電圧値が目標電圧値に一致するように電源回路51を制御することで、駆動電流I1を目標電流に一致させるフィードバック制御を行う。目標電圧値は、予め決められた固定値、又は外部から受け取った調光信号に対応する可変値であってもよい。出力制御回路58は、目標電圧値を可変とすることで、調光制御を行うことができる。
【0062】
また、本実施の形態では、検出光L3を受光することで光センサ61から出力された検出信号s0に基づいて複数の出力信号s1~s3を生成する。そして、複数の出力信号s1~s3を異なるゲインで増幅し、複数の増幅信号sa~scを生成する。そして、検出光L3の光量に対する複数の増幅信号sa~scの信号レベルが所定の閾値Vth1以下である増幅信号の中から、信号レベルが最大である増幅信号に基づいて異常有無を判定する。
【0063】
この構成によれば、異なるゲインで増幅された複数の増幅信号sa~scの中から、異常有無の判定をするために適した増幅信号を用いて異常有無の判定を行うことができる。そのため、増幅器のゲインを切り替える必要がなくなり、ゲインの切り替えを起因として照明装置1の異常を検出できない期間が生じることを抑制できる。これにより、照明装置1の異常有無の判定を適時行うことができる。
【0064】
[3.照明装置を備える内視鏡装置]
上記の照明装置1を備える内視鏡装置について説明する。
【0065】
図7は、実施の形態の照明装置1を備える内視鏡装置90の構成を示す概略図である。
【0066】
内視鏡装置90は、照明装置1と、観察装置91とを備えている。照明装置1は、上記の実施の形態と同様の構成を有している。
【0067】
観察装置91は、被検体を観察するための装置である。観察装置91は、蛍光体4aの近傍に露出して設けられた対物光学系92と、対物光学系92の結像位置に設けられた撮像素子であるCCD(Charge Coupled Device)93と、光源装置2の近傍に設けられた映像信号処理回路94と、CCD93と映像信号処理回路94とを接続する信号ケーブル95とを有する。観察装置91では、対物光学系92によって結像された被検体の観察像が、CCD93によって電気信号に変換され、画像信号として信号ケーブル95によって伝送される。伝送された画像信号は、映像信号処理回路94によって映像信号に変換処理され、観察装置91に接続されたモニタ(図示省略)に映像として映し出される。この内視鏡装置90においても、上記の照明装置1と同様の効果を得ることができる。
【0068】
なお、図7では、励起光L1を導光部材3で内視鏡装置90の先端付近まで導光してから照明光L2に変換する例を示したが、それに限られない。例えば、励起光L1から変換後の照明光L2を導光部材3で内視鏡装置90の先端に導光させることも可能である。照明光L2を導光する構造にすることで、内視鏡装置90の先端付近にセンサ等を設置する必要が無くなり、内視鏡の径を細くすることが可能となる。
【0069】
[4.効果など]
以上のように、本実施の形態に係る照明装置1は、励起光L1を発する励起源6と、励起光L1を受光して蛍光を発する蛍光体4aと、励起光L1及び蛍光のうちの少なくとも一方の光を検出光L3とし、検出光L3に基づく検出信号s0を出力する光センサ61と、検出信号s0に基づいて複数の出力信号s1~s3を出力するミラー装置62と、複数の出力信号s1~s3を異なるゲインで増幅し、複数の増幅信号sa~scを出力する複数の増幅器63と、複数の増幅信号sa~scのうち、検出光L3の光量に対する複数の増幅信号sa~scの信号レベルが所定の閾値Vth1以下である増幅信号の中から、信号レベルが最大である増幅信号に基づいて異常有無を判定する異常判定部56と、を備える。
【0070】
この構成によれば、異なるゲインで増幅された複数の増幅信号sa~scの中から、異常有無の判定をするために適した増幅信号を用いて異常有無の判定を行うことができる。そのため、増幅器のゲインを切り替える必要がなくなり、ゲインの切り替えを起因として照明装置1の異常を検出できない期間が生じることを抑制できる。これにより、照明装置1の異常有無の判定を適時行うことができる。
【0071】
また、異常判定部56は、信号レベルが最大である増幅信号に基づいて、励起源6及び蛍光体4aの少なくとも一方の異常有無を判定してもよい。
【0072】
この構成によれば、増幅器のゲインの切り替えを起因として励起源6又は蛍光体4aの異常を検出できない期間が生じることを抑制できる。これにより、照明装置1の異常有無の判定を適時行うことができる。
【0073】
また、異常判定部56は、励起光L1を検出光L3とした場合の増幅信号、及び、蛍光を検出光L3とした場合の増幅信号の信号レベルの比率に基づいて異常有無を判定してもよい。
【0074】
この構成によれば、励起源6及び蛍光体4aの両方の異常有無の判定を適時行うことができる。
【0075】
また、ミラー装置62は、カレントミラー回路であり、検出信号s0と同一の電流値である複数の出力信号s1~s3を出力してもよい。
【0076】
この構成によれば、複数の出力信号s1~s3を用いて、異常有無の判定を行うことができる。そのため、増幅器のゲインを切り替える必要がなくなり、ゲインの切り替えを起因として照明装置1の異常を検出できない期間が生じることを抑制できる。これにより、照明装置1の異常有無の判定を適時行うことができる。
【0077】
また、複数の増幅器63のうちの第1の増幅器63aは第1のゲインを有し、第2の増幅器63bは第1のゲインよりも低い第2のゲインを有し、第1のゲイン及び第2のゲインは、第1の増幅器63aによる増幅信号saが飽和しているとき、第2の増幅器63bによる増幅信号sbが線形で変化するように設定されてもよい。
【0078】
この構成によれば、異常判定部56が、複数の増幅信号を途切れることなく取得することができ、取得した複数の増幅信号の中から、異常有無の判定をするための読み取りに適した増幅信号を選択し、異常有無の判定を行うことができる。これにより、照明装置1の異常有無の判定を適時行うことができる。
【0079】
また、所定の閾値Vth1は、複数の増幅信号sa~scのそれぞれが検出光L3の光量に対して線形で変化する範囲の信号レベルから設定されてもよい。
【0080】
この構成によれば、増幅信号を精度よく取得することができ、取得した複数の増幅信号の中から、異常有無の判定をするための読み取りに適した増幅信号を選択し、異常有無の判定を行うことができる。これにより、照明装置1の異常有無の判定を適時行うことができる。
【0081】
また、光センサ61は、蛍光体4aから出射される照明光L2とは異なる方向に出射された光を検出光L3としてもよい。
【0082】
これによれば、検出光L3を減衰が少ない状態で簡易に取得することができる。これにより、照明装置1の異常有無の判定を簡易に行うことができる。
【0083】
また、励起源6は、レーザ素子であってもよい。
【0084】
これによれば、レーザ素子から発せられた光を励起光L1として、照明装置1の異常有無の判定を行うことができる。
【0085】
また、本実施の形態に係る内視鏡装置90は、上記の照明装置1と、被検体を観察するための観察装置91と、を備えていてもよい。
【0086】
これによれば、異常有無の判定を適時行うことができる照明装置1を備えた内視鏡装置90を提供することができる。
【0087】
(その他の実施の形態)
以上、本開示の複数の態様に係る照明装置等について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれてもよい。
【0088】
例えば、実施の形態では、光学系として導光部材3を用いたが、光学系の構成は、励起光L1が入射し、励起光L1を蛍光体4aに照射することができれば、導光部材3に限定されない。例えば、光学系として、ミラー、レンズなどの光学素子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 照明装置
4a 蛍光体
6 励起源
56 異常判定部
61 光センサ
62 ミラー装置
63、63a、63b、63c 増幅器
90 内視鏡装置
91 観察装置
L1 励起光
L2 照明光
L3 検出光
s0 検出信号
s1、s2、s3 出力信号
sa、sb、sc 増幅信号
Vth1、Vth2 閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7