(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019557
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】蓄電デバイス電極用スラリー及びその用途
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20230202BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230202BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20230202BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20230202BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01G11/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124354
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西林 亮
(72)【発明者】
【氏名】青木 貴之
【テーマコード(参考)】
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA14
5E078AB01
5E078BA42
5E078BB33
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB12
5H050DA11
5H050EA23
5H050HA01
5H050HA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水溶媒における均一塗工性の高い蓄電デバイス電極用スラリー組成物とその用途を提供する。
【解決手段】活物質(A)、導電助剤(B)、水(C)及び高分子成分(D)を含み、前記高分子成分(D)が重合性成分dを構成単位として含む重合体及び/又はその中和物であり、前記重合性成分dが重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体(I)を含み、前記単量体(I)は、カルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体である単量体(i)を含み、下記条件1を満たす、蓄電デバイス電極用スラリー組成物。
条件1;25℃環境下において、せん断速度γ(1/s)の粘度をη(γ)(mPa・s)としたとき、η(1)>η(1.468)>η(2.154)>η(3.162)>η(4.642)>η(6.813)>η(10)>η(14.68)>η(21.54)>η(31.62)>η(46.42)>η(68.13)>η(100)である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質(A)、導電助剤(B)、水(C)及び高分子成分(D)を含み、
前記高分子成分(D)が重合性成分dを構成単位として含む重合体及び/又はその中和物であり、
前記重合性成分dが重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体(I)を含み、前記単量体(I)は、カルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体である単量体(i)を含み、
下記条件1を満たす、蓄電デバイス電極用スラリー組成物。
条件1;25℃環境下において、せん断速度γ(1/s)の粘度をη(γ)(mPa・s)としたとき、η(1)>η(1.468)>η(2.154)>η(3.162)>η(4.642)>η(6.813)>η(10)>η(14.68)>η(21.54)>η(31.62)>η(46.42)>η(68.13)>η(100)である。
【請求項2】
前記重合性成分dに占める前記単量体(i)の重量割合が20~80質量%である、請求項1に記載の蓄電デバイス電極用スラリー組成物。
【請求項3】
下記条件2をさらに満たす、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス電極用スラリー組成物。
条件2; 前記η(1)/前記η(100)≧1.3
【請求項4】
前記η(1)が5000mPa・s以上である、請求項1~3のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用スラリー組成物。
【請求項5】
集電体上に被膜を有する蓄電デバイス用電極であって、前記被膜が、請求項1~4のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用スラリー組成物の不揮発成分を含む、蓄電デバイス用電極。
【請求項6】
請求項5に記載の蓄電デバイス用電極を含む、蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス電極用スラリー及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器において、充電により繰り返し使用が可能である、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池等の二次電池や電気二重層キャパシタ等のキャパシタが用いられている。二次電池は、携帯用電子機器やハイブリッド自動車などに用いるための電池として、急速に開発が進められている。たとえば、リチウムイオン二次電池は、主に正極、負極、セパレーター、非水電解質溶液から構成されており電池特性の向上の為に様々な検討がなされている
【0003】
リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタは、正極、負極、セパレーター及び非水電解質溶液を主な材料として、構成されている。正極は、正極活物質、溶媒を含有する正極用スラリーを集電体に塗布、乾燥して製造される。負極は、負極活物質、溶媒を含有する負極用スラリーを集電体に塗布、乾燥して製造される。セパレーターは、正極と負極を隔絶し電池の安全性を向上させることができる材料である。
各種スラリーには均一塗工性が望まれており、これを実現する為に充分な粘度とチキソ性が求められる。カルボキシメチルセルロースに代表される増粘剤を併用することでこれを実現している例も多い。
【0004】
特許文献1では活物質、バインダー、溶剤、結晶化率の高い導電助剤を含むスラリーが十分なチキソ性を示すことが開示されている。特許文献2ではセルロースやアルギン酸の誘導体等の少なくとも一つ、水溶媒、疎水性フィラー、多塩基酸を含むスラリーが良好な粘度を示すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-170723号公報
【特許文献2】国際公開第2011/024797号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では使用されるN―メチルピロリドン等の溶剤に限られる。N―メチルピロリドンは有害性が高く、より安全な溶媒での塗工が求められる。また、特許文献2ではスラリー組成物中水が30質量%以上含有されているが、IPAのような水への溶解度を有する有機溶媒を含有しており、含有量は最大70質量%までになる。
【0007】
本発明の目的は、水溶媒における均一塗工性の高い蓄電デバイス電極用スラリー組成物とその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定の成分を含有し、特定の条件を充足する蓄電デバイス電極用スラリー組成物であれば、本願課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、活物質(A)、導電助剤(B)、水(C)及び高分子成分(D)を含み、前記高分子成分(D)が重合性成分dを構成単位として含む重合体及び/又はその中和物であり、前記重合性成分dが重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体(I)を含み、前記単量体(I)は、カルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体である単量体(i)を含み、下記条件1を満たす、蓄電デバイス電極用スラリー組成物である。
条件1;25℃環境下において、せん断速度γ(1/s)の粘度をη(γ)(mPa・s)としたとき、η(1)>η(1.468)>η(2.154)>η(3.162)>η(4.642)>η(6.813)>η(10)>η(14.68)>η(21.54)>η(31.62)>η(46.42)>η(68.13)>η(100)である。
【0009】
前記重合性成分dに占める前記単量体(i)の重量割合が20~80質量%であると好ましい。
下記条件2をさらに満たすと好ましい。
条件2; 前記η(1)/前記η(100)≧1.3
前記η(1)が5000mPa・s以上であると好ましい。
【0010】
本発明の蓄電デバイス用電極は、集電体上に被膜を有する蓄電デバイス用電極であって、前記被膜が、上記蓄電デバイス電極用スラリー組成物の不揮発成分を含む。
【0011】
本発明の蓄電デバイスは、上記蓄電デバイス用電極を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、均一塗工性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、特定の各種物質を含有し、特定の条件を満たすものである。以下に説明する。
【0014】
〔蓄電デバイス電極用スラリー組成物〕
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、25℃環境下において、せん断速度γ(1/s)の粘度をη(γ)(mPa・s)としたとき、η(1)>η(1.468)>η(2.154)>η(3.162)>η(4.642)>η(6.813)>η(10)>η(14.68)>η(21.54)>η(31.62)>η(46.42)>η(68.13)>η(100)である(条件1)。条件1を充足すると、蓄電デバイス電極製造時、水溶媒スラリーが均一に塗工される。
【0015】
前記η(1)は、水溶媒スラリーが均一に塗工される観点から、5000mPa・s以上が好ましく、6000mPa・s以上がより好ましく、9000mPa・s以上がさらに好ましい。
前記η(1)の好ましい上限値は、100000mPa・sである。
【0016】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、水溶媒スラリーが均一に塗工される観点から、前記η(1)/前記η(100)≧1.3(条件2)を充足すると好ましい。
前記η(1)/前記η(100)は、1.5以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましい。
前記η(1)/前記η(100)の好ましい上限値は、500であり、より好ましい上限値は100である。
【0017】
前記η(100)は、水溶媒スラリーが均一に塗工される観点から、5000mPa・s以下が好ましく、3000mPa・s以下がより好ましく、2000mPa・s以下がさらに好ましい。
前記η(100)の好ましい下限値は、50mPa・sである。
【0018】
〔活物質(A)〕
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、活物質(A)を必須に含有する。
活物質(A)は、電極活物質であり、蓄電デバイス電極用スラリー組成物の用途によって異なる。正極用途では、正極活物質、負極用途では、負極活物質、キャパシタ電極用途では、キャパシタ用活物質が挙げられる。
【0019】
正極活物質としては、特に限定はないが、たとえば、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO4)、ピロリン酸鉄(Li2FeP2O7)、コバルト酸リチウム複合酸化物(LiCoO2)、スピネル型マンガン酸リチウムコバルト酸リチウム複合酸化物(LiMn2O4)、マンガン酸リチウム複合酸化物(LiMnO2)、ニッケル酸リチウム複合酸化物(LiNiO2)、ニオブ酸リチウム複合酸化物(LiNbO2)、鉄酸リチウム複合酸化物(LiFeO2)、マグネシウム酸リチウム複合酸化物(LiMgO2)、カルシウム酸リチウム複合酸化物(LiCaO2)、銅酸リチウム複合酸化物(LiCuO2)、亜鉛酸リチウム複合酸化物(LiZnO2)、モリブテン酸リチウム複合酸化物(LiMoO2)、タンタル酸リチウム複合酸化物(LiTaO2)、タングステン酸リチウム複合酸化物(LiWO2)、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)、リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン複合酸化物(LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)、酸化マンガンニッケル(LiNi0.5Mn1.5O4)、酸化マンガン(MnO2)、リチウム過剰系ニッケル-コバルト-マンガン複合酸化物、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、バナジウム系酸化物、硫黄系酸化物、シリケート系酸化物等が挙げられ、1種または2種以上でもよい。
【0020】
負極活物質としては、特に限定はないが、たとえば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料;シリコン系;SiO、SnO、SnO2、CuO、Li4Ti5O12等の金属酸化物系;Si-Al、Al-Zn、Si-Mg、Al-Ge、Si-Ge、Si-Ag、Zn-Sn、Ge-Ag、Ge-Sn、Ge-Sb、Ag-Sn、Ag-Ge、Sn-Sb等の合金;リン酸スズガラス系等が挙げられ、1種または2種以上でもよい。
【0021】
キャパシタ用活物質としては、特に限定はないが、カチオンとアニオンとを可逆的に担持可能であればよく、炭素系材料や、ケイ素化合物、チタン化合物、スズ化合物等が挙げられる。コストの観点から炭素系材料が好ましく、具体的には活性炭、カーボンウィスカ、カーボンナノチューブ及びグラファイト等が挙げられ、1種または2種以上用いてもよく、活性炭及びグラファイトがコストの観点から好ましい。
【0022】
〔導電助剤(B)〕
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、導電助剤(B)を必須に含有する。
導電助剤(B)は、文言の通り、導電性を向上させる物質であり、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラック等のカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;グラフェン、シングルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブなどの炭素材料;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもちいてもよい。
【0023】
〔溶媒〕
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は水溶媒スラリーであり、溶媒として水(C)を必須に含有するが、水(C)以外の有機溶媒も含有してもよい。水(C)を含有しない場合、水溶媒スラリーとして成立しない。水は、イオン交換水が好ましい。
水(C)以外の有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、t-ブチルアルコール及びN-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0024】
溶媒に占める水(C)の重量割合は、90質量%以上含むことが好ましく、95質量%以上含むことが好ましく、99質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0025】
〔高分子成分(D)〕
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、高分子成分(D)を必須に含有する。
前記高分子成分(D)は、重合性成分dを構成単位として含む重合体及び/又はその中和物である。
重合性成分dは重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体(I)(以下、単に単量体(I)ということがある)を必須に含み、重合性炭素-炭素二重結合を2つ以上有する架橋剤を含むことがある成分である。単量体(I)及び架橋剤は共に付加反応が可能な成分であり、架橋剤は重合体に橋架け構造を導入することができる成分である。
【0026】
単量体(I)は、カルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体である単量体(i)を含む。
カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、イタコン酸等を挙げることができる。
カルボキシル基の塩である基を有する単量体としては、上記カルボキシル基を有する単量体の塩等を挙げることができ、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩等を挙げることができる。カルボキシル基の塩である基を含有する単量体は、カルボキシル基を有する単量体があらかじめ塩基性組成物で中和されたものであってもよく、塩基性組成物としては後述するpH調整剤を使用してもよい。これらの単量体(i)は、1種又は2種以上を併用してもよい。
また、カルボキシル基を有する単量体(i)は、アクリル酸メチル等の鹸化によって生じてもよい。
カルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体である単量体(i)を含有しない場合、水溶媒との親和性が不足することにより、水溶媒スラリーが均一に塗工されない。
カルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体である単量体(i)は、一部又は全部のカルボキシル基が重合時や重合後に中和されていてもよい。
【0027】
単量体(I)に占める単量体(i)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5~99重量%である。単量体(i)の重量割合が99重量%超であると、せん断速度1(1/s)の粘度が低下することがある。一方、単量体(i)の重量割合が5重量%未満であると、蓄電デバイス用スラリー組成物の分散性が低下することがある。
【0028】
単量体(i)の重量割合の上限は、蓄電デバイス用スラリー組成物の分散性の観点から、(1)95重量%、(2)90重量%、(3)85重量%、(4)80重量%、(5)70重量%、の順で好ましい(括弧内の数字が小さくなるにつれ好ましい)。一方、単量体(i)の重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは20重量%、特に好ましくは25重量%である。
【0029】
単量体(I)は、カルボキシル基及び/又はその塩である基と結合する基を有する単量体である単量体(ii)を含んでもよい。この明細書中「結合」とは、化学反応による結合、水素結合、配位結合等を含む概念をいう。
単量体(I)が単量体(ii)を含むことで、蓄電デバイス電極用スラリー組成物における前記η(1)/前記η(100)を向上させることができ、好ましい。単量体(ii)としては、特に限定はないが、水酸基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、イソシアネート基、アルデヒド基、アゾ基、ニトロ基、ニトロソ基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基、オキサゾリン基等を有する単量体を挙げることができる。
単量体(ii)としては、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、アセトンアクリルアミド、N、N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N、N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2-アセトアミドアクリル酸、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ニトロフェニル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;アクロレイン等のアルデヒド系単量体;ビニルスルホン酸、N-t-ブチルアクリルアミドスルホン酸等のスルホン酸系単量体;ビニルホスホン酸等のリン酸系単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート;ビニルグリシジルエーテル;プロペニルグリシジルエーテル;グリシジル(メタ)アクリレート;グリセリンモノ(メタ)アクリレート;4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート;p-ヒドロキシスチレン等を挙げることができる。なお、本発明において(メタ)アクリルの表記は、アクリル又はメタクリルを意味する。また、本発明において(メタ)アクリレートの表記は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。これらの単量体(ii)は、1種又は2種以上を併用してもよい。
上記単量体(ii)の中でも、本発明の効果を奏する点から、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましく、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
【0030】
単量体(I)が単量体(ii)を含む場合、単量体(I)に占める単量体(ii)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは3~100重量%である。単量体(ii)の重量割合が3重量%未満であると、蓄電デバイス電極用スラリー組成物における前記η(1)/前記η(100)が低下することがある。単量体(ii)の重量割合の上限は、(1)50重量%、(2)40重量%、(3)35重量%、(4)30重量%、(5)20重量%、(6)17重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。一方、単量体(ii)の重量割合の下限は、より好ましくは5重量%、さらに好ましくは8重量%、特に好ましくは10重量%、最も好ましくは12重量%である。
【0031】
単量体(I)においては、単量体(i)及び/または単量体(ii)を含む態様であると、蓄電デバイス電極用スラリー組成物における前記η(1)/前記η(100)を向上させることができるため、好ましく、単量体(i)及び単量体(ii)を含む態様であるとより好ましい。
【0032】
また、単量体(I)が単量体(i)及び単量体(ii)を含む場合、単量体(I)に占める単量体(i)の重量割合と単量体(I)に占める単量体(ii)の重量割合の比(単量体(i)/単量体(ii))は、特に限定はないが、好ましくは1~8である。単量体(i)と単量体(ii)の重量割合の比が1以上であると、蓄電デバイス用スラリー組成物のせん断速度1(1/s)の粘度が向上する傾向がある。一方、単量体(i)と単量体(ii)の重量割合の比が8以下であると、成分(D)の蓄電デバイス電極用スラリー組成物における前記η(1)/前記η(100)が向上する傾向がある。単量体(i)と単量体(ii)の重量割合の比の上限は、より好ましくは7、さらに好ましくは6、特に好ましくは5、最も好ましくは4.5である。一方、単量体(i)と単量体(ii)の重量割合の比の下限は、より好ましくは2、さらに好ましくは2.5、特に好ましくは3、最も好ましくは3.5である。
【0033】
単量体(I)がニトリル系単量体もしくはエステル系単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体(iii)(以下、単に単量体(iii)ということがある)を含んでもよい。単量体(I)が単量体(iii)を含むと、蓄電デバイス電極用スラリー組成物の分散安定性を向上させることができるため、好ましい。
ニトリル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロルアクリロニトリル、α-エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等を挙げることができる。エステル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アセチルアクリル酸メチル、2-アセチル-3-エトキシアクリル酸エチル、ベンジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート等を挙げることができる。これらの単量体(iii)は、1種又は2種以上を併用してもよい。
上記単量体(iii)のなかでも、成分(D)の蓄電デバイス電極用スラリー組成物の分散安定性の点から、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
【0034】
単量体(I)が単量体(iii)を含む場合、単量体(I)に占める単量体(iii)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5~90重量%である。単量体(iii)の重量割合が5重量%未満であると、蓄電デバイス電極用スラリー組成物の分散安定性が低下することがある。一方、単量体(iii)の重量割合が90重量%超であると、せん断速度1(1/s)の粘度が低下することがある。単量体(iii)の重量割合の上限は、より好ましくは85重量%、さらに好ましくは80重量%である。一方、単量体(iii)の重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは18重量%、最も好ましくは20重量%である。
【0035】
単量体(I)が単量体(i)及び単量体(iii)を含む場合、単量体(I)に占める単量体(i)の重量割合と単量体(i)に占める単量体(iii)の重量割合の比(以下、単量体(i)/単量体(iii)ということがある)は、特に限定はないが、好ましくは0.1~8である。単量体(i)/単量体(iii)が0.1以上であると、蓄電デバイス用スラリー組成物のせん断速度1(1/s)の粘度が向上する傾向がある。一方、単量体(i)/単量体(iii)が8以下であると、蓄電デバイス電極用スラリー組成物の分散安定性が向上する傾向がある。単量体(i)/単量体(iii)の上限は、より好ましくは7、さらに好ましくは6、特に好ましくは5、最も好ましくは4.5である。一方、単量体(i)/単量体(iii)の下限は、より好ましくは0.2である。
【0036】
単量体(I)が単量体(ii)及び単量体(iii)を含む場合、単量体(I)に占める単量体(ii)の重量割合と単量体(I)に占める単量体(iii)の重量割合の比(以下、単量体(ii)/単量体(iii)ということがある)は、特に限定はないが、好ましくは0.25~5である。単量体(ii)/単量体(iii)が0.25以上であると、蓄電デバイス用スラリー組成物の流動性が向上する傾向がある。一方、単量体(ii)/単量体(iii)が5以下であると、蓄電デバイス用スラリー組成物の分散安定性が向上する傾向がある。単量体(ii)/単量体(iii)の上限は、より好ましくは4、さらに好ましくは3.5、特に好ましくは3、最も好ましくは2.5である。一方、単量体(ii)/単量体(iii)の下限は、より好ましくは0.5、さらに好ましくは0.75、特に好ましくは1、最も好ましくは1.5である。
また、単量体(I)が単量体(i)、単量体(ii)及び単量体(iii)を含む場合、単量体(i)/単量体(iii)が上記範囲であると好ましく、単量体(ii)/単量体(iii)が上記範囲であると好ましい。
【0037】
単量体(I)は、上記単量体(i)~(iii)に挙げられる以外の単量体を含んでもよい。単量体(i)~(iii)以外の単量体としては、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン等のハロゲン化ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフイン系単量体;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、p-ニトロスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン等のN-ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等を挙げることができ、これらの単量体を1種または2種以上併用してもよい。
【0038】
単量体(I)は、上述のとおり、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、例えば、1,3-ブタジエン(本発明では、単にブタジエンともいう);1,3-ペンタジエン;1,3-ヘキサジエン;2,4-ヘキサジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3,5-ヘキサトリエン等の共役ポリエン;1,4-ヘキサジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン等の非共役系ポリエン;ジエンジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラアクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0039】
架橋剤はなくてもよいが、その含有量については特に限定はなく、単量体(I)100重量部に対して、好ましくは20重量部以下が好ましい。架橋剤の含有量の上限は、より好ましくは10重量部、さらに好ましくは5重量部、特に好ましくは2重量部、最も好ましくは1重量部である。一方、架橋剤の含有量の下限は、好ましくは0重量部である。
【0040】
成分(D)の製造方法としては、特に限定はなく、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法等の一般的な方法で製造することができる。また、成分(D)の製造時に使用する開始剤としては特に限定はなく、重合体の重合の際に用いられる一般的な開始剤を用いることができる。
【0041】
成分(D)が、単量体(I)の重合体の中和物を含む場合、単量体(I)の重合体の中和物は、単量体(I)の重合体が含まれる分散液のpHを3~13とした際に得られるものである。pHを3~13とする際は、後述するpH調整剤を使用してもよい。なお、単量体(I)の重合体が含まれる分散液のpHは、25℃においてpHメータ(堀場製作所社製、F-51)を用いて測定した。
【0042】
単量体(I)の重合体の中和物は、部分中和物でもよく、完全中和物であってもよい。本発明の効果を奏する点で、単量体(I)の重合体の中和物が部分中和物であると好ましい。
単量体(I)の重合体の中和物が部分中和物である場合、単量体(I)の重合体の中和度は、5モル%以上100モル%未満であると好ましい。中和度が上記範囲内であると、分散性が向上する傾向がある。単量体(I)の重合体の中和度の下限は、より好ましくは50モル%である。一方、単量体(I)の重合体の中和度の上限は、より好ましくは99モル%、さらに好ましくは90モル%である。
単量体(I)の重合体の中和物が完全中和物である場合、単量体(I)の重合体の中和度は、100モル%である。なお、単量体(I)の重合体の中和物における中和度はカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性基を有する単量体および中和に用いる中和剤の仕込み量から計算により算出する方法で得た。
【0043】
単量体(I)の重合体の中和物の製造方法としては、例えば、以下の1)~4)の方法を挙げることができる。
1)単量体(I)の重合体が分散した分散液に後述するpH調整剤を添加してpHを調整、中和して、単量体(I)の重合体の中和物を得る方法。
2)単量体(I)の重合体が分散した分散液を後述するpH調整剤に添加してpHを調整、中和して、単量体(I)の重合体の中和物を得る方法。
3)単量体(I)の重合体に後述するpH調整剤の溶液を添加してpHを調整、中和して、単量体(I)の重合体の中和物を得る方法。
4)単量体(I)の重合体を後述するpH調整剤の溶液に添加してpHを調整、中和して、単量体(I)の重合体の中和物を得る方法。
【0044】
単量体(I)の重合体の中和物の上記の製造方法において、調整後の25℃におけるpHは、好ましくは3~13である。pHがこの範囲であると、濡れ性が向上する傾向がある。調整後のpHの下限としては、より好ましくは4である。一方、調整後のpHの上限としては、より好ましくは10である。なお、調整後の25℃におけるpHの測定は、pHメータ(堀場製作所社製、F-51)を用いて測定した。
成分(D)の形態としては、蓄電デバイス電極用スラリー組成物の流動性の点から、単量体(I)の重合体又はその中和物であると好ましく、単量体(I)の重合体の中和物であると特に好ましい。
【0045】
成分(D)の重量平均分子量は、特に限定はないが、せん断速度1(1/s)の粘度の点から、10万~200万であると好ましい。成分(D)の重量平均分子量が10万未満であると、せん断速度1(1/s)の粘度が低下することがある。一方、200万超であると蓄電デバイス電極用スラリー組成物の流動性が低下することがある。成分(D)の重量平均分子量の上限は、より好ましくは150万、さらに好ましくは130万、特に好ましくは120万、最も好ましくは100万である。一方、成分(D)の重量平均分子量の下限は、より好ましくは30万、さらに好ましくは40万、特に好ましくは50万、最も好ましくは60万である。なお、成分(D)の重量平均分子量の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0046】
成分(D)は、特に限定はないが、水溶性、又は非水溶性のいずれであってもよく、活物質の分散性の点から、水溶性であると好ましい。成分(D)が水溶性の場合、特に限定はないが、成分(D)の溶解度が水100mLに対して3g以上であると好ましい。成分(D)の溶解度が3g未満であると、剛性、弾性が低下することがある。成分(D)の溶解度の下限は、より好ましくは5g、さらに好ましくは50g、特に好ましくは100g、最も好ましくは200gである。一方、成分(D)の溶解度の上限はなくとも構わないが、好ましくは10000g、より好ましくは5000g、さらに好ましくは1000g、特に好ましくは500g、最も好ましくは300gである。
【0047】
成分(D)は、粒状物であってもよい。成分(D)が粒状物である場合、成分(D)の平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは0.001~100μmである。成分(D)の平均粒子径の上限は、より好ましくは10μm、さらに好ましくは1μm、特に好ましくは0.8μmである。一方、成分(D)の平均粒子径の下限は、より好ましくは0.01μm、さらに好ましくは0.05μm、特に好ましくは0.1μmである。
【0048】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物における導電助剤(B)の含有量は、特に限定はないが、本願効果を奏する観点から、活物質(A)100重量部に対して、好ましくは1~15重量部である。導電助剤の含有量の上限は、より好ましくは10重量部である。一方、導電助剤の含有量の下限は、より好ましくは1重量部である。
【0049】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物における成分(D)の含有量は、特に限定はないが、本願効果を奏する観点から、活物質(A)100重量部に対して、好ましくは0.5~40重量部である。活物質(A)100重量部に対する成分(D)の含有量の上限は、より好ましくは20重量部、さらに好ましくは10重量部、特に好ましくは8重量部、最も好ましくは5重量部である。一方、活物質(A)100重量部に対する成分(D)の含有量の下限は、より好ましくは1重量部、さらに好ましくは1.5重量部、特に好ましくは2重量部、最も好ましくは2.5重量部である。
【0050】
〔その他成分〕
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分以外のその他成分を含んでもよい。その他成分としては、特に限定はないが、例えば、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、粘度調整剤等が挙げられる。
界面活性剤としては、特に限定はなく、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
蓄電デバイス電極用スラリー用組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、高分子成分(D)100重量部に対して、特に限定はないが、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.5~5重量部、さらに好ましくは1~3重量部である。
消泡剤としては、例えば、ポリシロキサン系消泡剤、鉱物油系消泡剤、シリカ微粉末系消泡剤等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
pH調整剤としては、例えば、酢酸、ギ酸、グルコン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)等の有機酸;塩酸、硝酸、リン酸、ピロリン酸等の無機酸;アルカリ(土類)金属の水酸化物;アンモニア;炭酸塩;アミン化合物等が挙げられ、必要に応じて、1種または2種以上を併用してもよい。
【0051】
粘度調整剤としては、たとえば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸金属塩、アルギン酸エステル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリビニルアルコール、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、ゼラチン、コーンスターチ等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0052】
〔蓄電デバイス電極用スラリー組成物、その製造方法〕
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、活物質と、上述した成分(D)を含むため、蓄電デバイス用電極を作製する際に、電極が有する被膜の均一性に優れる。
【0053】
蓄電デバイス電極用スラリー組成物における蓄電デバイス電極用スラリー組成物の不揮発成分濃度は、特に限定はないが、ハンドリング性の観点から、好ましくは15~70重量%である。不揮発成分濃度の上限は、より好ましくは60重量%である。一方、不揮発成分濃度の下限は、より好ましくは20重量%である。
なお、本発明における「蓄電デバイス電極用スラリー組成物の不揮発成分」とは、蓄電デバイス電極用スラリー組成物を110℃で加熱し、重量が恒量となった時の、残留物である。
【0054】
蓄電デバイス電極用スラリー組成物の不揮発成分濃度20重量%水分散液のpHは、特に限定はないが、本願効果を奏する観点から、好ましくは2.0~13.0である。蓄電デバイス電極用スラリー組成物の不揮発成分濃度40重量%水分散液のpHが2.0未満であると、集電体に腐食が発生することがある。一方、蓄電デバイス電極用スラリー組成物のpHが13.0超であると、ハンドリング性が低下することがある。蓄電デバイス電極用スラリー組成物の不揮発成分濃度20重量%水分散液のpHの上限は、より好ましくは12.0、さらに好ましくは11.0、特に好ましくは10.0、最も好ましくは9.0である。一方、蓄電デバイス電極用スラリー組成物の不揮発成分濃度20重量%水分散液のpHの下限は、より好ましくは3.0、さらに好ましくは4.0、特に好ましくは5.0、最も好ましくは6.0である。蓄電デバイス電極用スラリー組成物の不揮発成分濃度20重量%水分散液のpHの測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0055】
蓄電デバイス電極用スラリー組成物の不揮発成分の密度は、特に限定はないが、好ましくは0.1~3.0g/cm3である。蓄電デバイス電極用スラリー組成物の不揮発成分の密度が3.0g/cm3超であると、蓄電デバイスの出力特性が低くなることがある。一方、蓄電デバイス電極用スラリー組成物の不揮発成分の密度が0.1g/cm3未満であると、蓄電デバイスの体積エネルギー密度が低くなることがある。蓄電デバイス電極用スラリー組成物の不揮発成分の密度の上限は、より好ましくは2.5g/cm3、さらに好ましくは2.0g/cm3である。一方、蓄電デバイス電極用スラリー組成物の不揮発成分の密度の下限は、より好ましくは0.3g/cm3、さらに好ましくは0.5g/cm3である。
【0056】
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物において、その製造方法としては、特に限定はないが、活物質(A)、導電助剤(B)、水(C)、高分子成分(D)等の各成分を混合する方法が挙げられる。
混合については、特に限定はなく、容器と攪拌翼といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。攪拌翼としては、特に限定はないが、マックスブレンド翼、トルネード翼、フルゾーン翼等を挙げることができる。また、一般的な揺動または攪拌を行える混合機を用いてもよい。混合機としては、たとえば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等の揺動攪拌または攪拌を行える混合機を挙げることができる。また、攪拌装置を組み合わせたことにより効率のよい多機能な混合機であるスーパーミキサー(株式会社カワタ製)及びハイスピードミキサー(株式会社深江製)、ニューグラムマシン(株式会社セイシン企業製)、SVミキサー(株式会社神鋼環境ソリューション社製)、フィルミクス(プライミクス株式会社)、ジェットペースタ(日本スピンドル製造株式会社)、KRCニーダ(株式会社栗本鐵工所製)等を用いてもよい。他には、たとえば、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロッドミル、ボールミル、振動ロッドミル、振動ボールミル、円盤型ミル、ジェットミル、サイクロンミルなどの粉砕機を用いてもよい。また、超音波乳化機、連続式二軸混練機、高圧乳化機やマイクロリアクター等を用いてもよい。
【0057】
また、本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物において、その製造方法は、蓄電デバイス電極用スラリー用剤組成物を構成する各成分を別々に、分散媒に分散させる工程を含んでも構わない。なお、別々に分散媒に分散させる際の各成分の量は、前述した蓄電デバイス電極用スラリー組成物の各成分の含有量に従う。
【0058】
本発明の蓄電デバイス用電極は、集電体上に被膜を有し、被膜が上述の蓄電デバイス電極用スラリー組成物の不揮発成分を含むものである。まず、蓄電デバイス用電極を構成する各成分について詳しく説明する。
【0059】
〔二次電池正極用途〕
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、二次電池正極用途として利用することができる。蓄電デバイス電極用スラリー組成物が二次電池正極用途として用いられる場合の蓄電デバイス電極用スラリー組成物の無機粒子としては、正極活物質、導電助剤等が挙げられる。二次電池正極用途の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、通常集電体シートに塗布、乾燥して薄膜化して二次電池用正極として使用できる。
【0060】
正極活物質としては、特に限定はないが、たとえば、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO4)、ピロリン酸鉄(Li2FeP2O7)、コバルト酸リチウム複合酸化物(LiCoO2)、スピネル型マンガン酸リチウムコバルト酸リチウム複合酸化物(LiMn2O4)、マンガン酸リチウム複合酸化物(LiMnO2)、ニッケル酸リチウム複合酸化物(LiNiO2)、ニオブ酸リチウム複合酸化物(LiNbO2)、鉄酸リチウム複合酸化物(LiFeO2)、マグネシウム酸リチウム複合酸化物(LiMgO2)、カルシウム酸リチウム複合酸化物(LiCaO2)、銅酸リチウム複合酸化物(LiCuO2)、亜鉛酸リチウム複合酸化物(LiZnO2)、モリブテン酸リチウム複合酸化物(LiMoO2)、タンタル酸リチウム複合酸化物(LiTaO2)、タングステン酸リチウム複合酸化物(LiWO2)、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)、リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン複合酸化物(LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)、酸化マンガンニッケル(LiNi0.5Mn1.5O4)、酸化マンガン(MnO2)、リチウム過剰系ニッケル-コバルト-マンガン複合酸化物、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)、バナジウム系酸化物、硫黄系酸化物、シリケート系酸化物等が挙げられ、1種または2種以上でもよい。
【0061】
導電助剤としては、特に限定はないが、たとえば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック;グラフェン;カーボンナノ繊維、シングルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブ等のカーボンナノチューブ;銀、銅、錫、亜鉛、酸化亜鉛、ニッケル、マンガン等の金属微粒子;酸化インジウムスズなどの複合金属微粒子等が挙げられ、1種または2種以上でもよい。
【0062】
正極の集電体としては、電子伝導性を有し正極材料に通電し得る材料であればよく、特に限定はないが、たとえば、C、Ti、Cr、Mo、Ru、Rh、Ta、W、Os、Ir、Pt、Au、Al、Ni等の導電性物質、これら導電性物質の二種類以上を含有する合金(例えば、ステンレス鋼)を使用し得る。電気伝導性が高く、電解液中の安定性と耐酸化性がよい観点から、集電体としてはC、Al、Ni、ステンレス鋼等が好ましく、さらに材料コストの観点からAl等が好ましい。集電体の形状には、特に限定はなく、たとえば、箔状基材、三次元基材などを用いることができる。集電体表面上には、あらかじめプライマー層が形成されていてもよく、プライマー層に、カーボンブラック等の導電助剤、プライマー層形成補助のためのアクリル樹脂や界面活性剤等の有機成分及びリン酸塩やケイ酸塩等の無機塩、を含んでいてもよい。
【0063】
二次電池正極における集電体上の被膜は、集電体のどちらか片面にあってもよく、両面にあってもよい。また、集電体上の被膜は、プライマー層を含んでいてもよく、プライマー層はカーボンブラック等の導電助剤を含んでいてもよい。被膜がプライマー層を含む場合、プライマー層が集電体と接触し、プライマー層の上に蓄電デバイス電極用スラリー組成物の不揮発成分が接触する構成となる被膜であると、好ましい。
【0064】
二次電池正極における集電体上の被膜の厚みは、特に限定はないが、好ましくは1~500μmである。集電体上の被膜の厚みが、1μm未満の場合電池性能が悪くなり好ましくないことがある。一方、集電体上の被膜の厚みが500μm超の場合、ハンドリング性が低下することがある。集電体上の被膜の厚みの上限は、より好ましくは200μm、さらに好ましくは100μm、特に好ましくは75μm、最も好ましくは50μmである。一方、集電体上の被膜の厚みの下限は、より好ましくは10μm、さらに好ましくは20μmである。
【0065】
本発明の蓄電デバイス用電極において、その製造方法は、特に限定はないが、上記集電体上に、上記蓄電デバイス電極用スラリー組成物を塗工し、乾燥させる方法が挙げられる。
集電体上に、蓄電デバイス電極用スラリーを途工する方法としては、均一にウェットコーティングできる方法であればよく、特に限定はないが、たとえば、キャピラリーコート法、スピンコート法、スリットダイコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、バーコーター法、グラビアコーター法、ダイコーター法などが挙げられる。
【0066】
蓄電デバイス用正極を乾燥させる方法については、特に限定はないが、たとえば、温風乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線照射乾燥、電子線照射乾燥等の方法が挙げられる。
蓄電デバイス用正極の乾燥温度は、特に限定はないが、好ましくは10~300℃である。乾燥温度が300℃超の場合、正極の機能が低下することがある。蓄電デバイス用正極の乾燥温度の上限は、より好ましくは190℃、さらに好ましくは180℃、特に好ましくは170℃、最も好ましくは160℃である。一方、蓄電デバイス用正極の乾燥温度の下限は、より好ましくは30℃、さらに好ましくは50℃、特に好ましくは80℃、最も好ましくは90℃である。
【0067】
〔二次電池負極用途〕
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、二次電池負極用途として利用することができる。蓄電デバイス電極用スラリー組成物が二次電池負極用途として用いられる場合の蓄電デバイス電極用スラリー組成物の無機粒子としては、負極活物質、導電助剤等が挙げられる。二次電池負極用途の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、通常集電体シートに塗布、乾燥して薄膜化して二次電池用負極として使用できる。
【0068】
負極活物質としては、特に限定はないが、たとえば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料;シリコン系;Si;SiC、Si3N4、Si2N2O、SiOx(0.5≦x≦1.5)等のSi化合物;SnO、SnO2、CuO、Li4Ti5O12等の金属酸化物系;Si-Al、Al-Zn、Si-Mg、Al-Ge、Si-Ge、Si-Ag、Zn-Sn、Ge-Ag、Ge-Sn、Ge-Sb、Ag-Sn、Ag-Ge、Sn-Sb等の合金;リン酸スズガラス系等が挙げられ、1種または2種以上併用してもよい。
【0069】
負極活物質は、上記負極活物質の中でも、蓄電デバイスの体積エネルギー密度の観点から、Si及び/又はSi化合物を含むと好ましい。また、蓄電デバイスのサイクル特性の観点から、Si化合物がSiOx(0.5≦x≦1.5)(以下、SiOxということがある)を含むと好ましい。
なお、SiOxは、非晶質のSiO2マトリックス中に、Siが分散したものである。この非晶質のSiO2と、その中に分散しているSiを合わせて、前記の酸素原子比xが決定され、0.5≦x≦1.5を満たせばよい。たとえば、非晶質のSiO2マトリックス中に、Siが分散した構造で、SiO2とSiのモル比が1:1の物質の場合、x=1であるので、構造式としてはSiOで表記される。
【0070】
負極活物質がSiを含む場合、負極活物質に占めるSiの重量割合は、特に限定はないが、好ましくは3~100重量%、より好ましくは5~100重量%、さらに好ましくは10~100重量%、特に好ましくは20~100重量%、最も好ましくは30~100重量%である。
負極活物質がSi化合物を含む場合、負極活物質に占めるSi化合物の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは10~100重量%、より好ましくは25~100重量%、さらに好ましくは50~100重量%、特に好ましくは60~100重量%、最も好ましくは70~100重量%である。
【0071】
Si、及びSi化合物が粒状物である場合、Si、又はSi化合物の粒状物の平均粒子径は、特に限定されないが、サイクル特性の観点から、好ましくは0.5μm~100μm、より好ましくは0.5μm~50μm、さらに好ましくは0.5μm~20μmである。
【0072】
負極活物質が、Si及び/又はSi化合物を含む場合、Si、及びSi化合物が炭素による被覆物であってもよい。
Si、及びSi化合物を被覆している炭素としては、特に限定はないが、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック;グラフェン;カーボンナノ繊維、シングルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブ等のカーボンナノチューブ;天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン等の黒鉛が挙げられ、1種又は2種以上併用してもよい。
負極用導電助剤は、特に限定はないが、蓄電デバイス電極用スラリー組成物の成分として用いることができる上記導電助剤が挙げられ、1種または2種以上併用してもよい。
【0073】
負極の集電体としては、電子伝導性を有し負極材料に通電し得る材料であればよく、特に限定はないが、たとえば、Cu、Ni、C、Ti、Cr、Mo、Ru、Rh、Ta、W、Os、Ir、Pt、Au、Al等の導電性物質、これら導電性物質の二種類以上を含有する合金(例えば、ステンレス鋼)を使用し得る。電気伝導性が高く、電解液中の安定性と耐酸化性がよい観点から、集電体としてはCu、C、Al、ステンレス鋼等が好ましく、さらに材料コストの観点からCu等が好ましい。集電体の形状には、特に限定はなく、たとえば、箔状基材、三次元基材などを用いることができ、具体的には圧延銅箔、電解銅箔等が好ましい。集電体表面上には、あらかじめプライマー層が形成されていてもよく、プライマー層にカーボンブラック等の導電助剤、プライマー層形成補助のためのアクリル樹脂や界面活性剤等の有機成分及びリン酸塩やケイ酸塩等の無機塩、を含んでいてもよい。
【0074】
蓄電デバイス用負極の塗工・乾燥方法に関しては、二次電池正極と同様の方法を適用することができる。
【0075】
負極用集電体表面に蓄電デバイス負極用スラリー組成物を塗布、乾燥して形成する負極被膜は、負極用集電体のどちらか片面に形成させてよく、両面に形成させてもよい。
負極用集電体表面に蓄電デバイス負極用スラリー組成物を塗布、乾燥して形成された片面分の負極被膜の膜厚としては、特に限定はないが、たとえば、通常1~500μm、好ましくは10~400μm、さらに好ましくは20~300μm、特に好ましくは20~200μm、最も好ましくは20~150μmである。
【0076】
〔キャパシタ電極用途〕
本発明の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、キャパシタ電極(正極及び負極)用途として利用することができる。蓄電デバイス電極用スラリー組成物がキャパシタ正極及び負極用途として用いられる場合の、蓄電デバイス電極用スラリー組成物の無機粒子としては、活物質、導電助剤等が挙げられる。キャパシタ電極用途の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、通常集電体シートに塗布、乾燥して薄膜化してキャパシタ電極として使用できる。
【0077】
キャパシタ用活物質としては、特に限定はないが、カチオンとアニオンとを可逆的に担持可能であればよく、炭素系材料や、ケイ素化合物、チタン化合物、スズ化合物等が挙げられる。コストの観点から炭素系材料が好ましく、具体的には活性炭、カーボンウィスカ、カーボンナノチューブ及びグラファイト等が挙げられ、1種または2種以上用いてもよく、活性炭及びグラファイトがコストの観点から好ましい。
【0078】
キャパシタ用導電助剤としては、特に限定はないが、たとえば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック;グラフェン;カーボンナノ繊維、シングルウォールカーボンナノチューブ、マルチウォールカーボンナノチューブ等のカーボンナノチューブ;銀、銅、錫、亜鉛、酸化亜鉛、ニッケル、マンガン等の金属微粒子;酸化インジウムスズなどの複合金属微粒子等が挙げられ、1種または2種以上でもよい。
【0079】
キャパシタ用電極に用いられる集電箔及び、キャパシタ用電極の塗工・乾燥方法に関しては、二次電池正極と同様の方法を適用することができる。
【0080】
〔セパレーター〕
本発明の蓄電デバイスは、セパレーターを含んでもよい。セパレーターは、蓄電デバイスにおいて、正極と負極の間の短絡を防ぐために用いられるものである。
セパレーターとしては、特に限定はないが、たとえば、微多孔膜フィルム状のセパレーターや、不織布状のセパレーター等が挙げられる。また、セパレーターの片面もしくは両面が、絶縁性を有する無機酸化物フィラーを含む無機酸化物、ポリフッ化ビニリデン樹脂やポリアラミド樹脂等でコーティングされたものでもよい。
【0081】
セパレーターの組成を構成する樹脂としては、特に限定はないが、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;ポリスチレン系樹脂;メタクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリフェニレンサルファイド系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。
【0082】
〔電解液〕
本発明の蓄電デバイスは、必要に応じて電解液を含んでもよい。電解液は電解質と溶媒とを混合し、溶媒に電解質を溶解させたものである。
電解質としては、特に制限はないが、たとえば、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlCl4、LiClO4、CF3SO3Li、C4F9SO3Li、CF3SOOLi、(CF3CO)2NLi、(CF3SO2)2NLi、(C2F5SO2)2NLiなどが挙げられる。
【0083】
電解液に使用する溶媒としては、電解質を溶解できるものであれば特に限定はないが、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)等のカーボネート類;γ―ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物類;が用いられ、またこれら溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、広い電位流域で化学的安定であるのでカーボネート類が好ましい。
【0084】
〔蓄電デバイス〕
本発明の蓄電デバイスは、上記蓄電デバイス用正極と蓄電デバイス用負極を必須に含むものであり、必要に応じて、さらにセパレーターと、電解液を含む。
蓄電デバイスの形状は、特に限定はないが、たとえば、コイン型、円筒型、角型、シート型等が挙げられる。
蓄電デバイスの外装材料は、特に限定はないが、たとえば、金属ケース、モールド樹脂、アルミラミネートフィルム等が挙げられる。
蓄電デバイスの種類としては、特に限定はなく、リチウムイオン電池、リチウムイオン全固体電池、リチウムイオンポリマー電池等のリチウムイオン二次電池;ナトリウムイオン電池、ナトリウムイオン全固体電池、ナトリウムイオンポリマー電池等のナトリウムイオン二次電池;カリウムイオン電池、カリウムイオン全固体電池、カリウムイオンポリマー電池等のカリウムイオン二次電池;ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のアルカリ二次電池;ナトリウム硫黄電池;レドックスフロー電池;空気電池等;電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタが挙げられる。
本発明の蓄電デバイスは、様々な電気機器(電気を使用する乗り物を含む)の電源として利用することができる。
電気機器としては、たとえば、ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、パソコンキーボード、パソコン用ディスプレイ、デスクトップ型パソコン、CRTモニター、パソコンラック、プリンター、一体型パソコン、マウス、ハードディスク等のパソコン通信周辺機器;エアコン、洗濯機、テレビ、冷蔵庫、冷凍庫、冷房機器、アイロン、衣類乾燥機、ウインドウファン、トランシーバー、送風機、換気扇、音楽レコーダー、音楽プレーヤー、オーブン、レンジ、洗浄機能付便座、温風ヒーター、カーコンポ、カーナビ、懐中電灯、加湿器、携帯カラオケ機、換気扇、乾燥機、乾電池、空気清浄器、携帯電話、非常用電灯、ゲーム機、血圧計、コーヒーミル、コーヒーメーカー、こたつ、コピー機、ディスクチェンジャー、ラジオ、シェーバー、ジューサー、シュレッダー、浄水器、照明器具、除湿器、食器乾燥機、炊飯器、ステレオ、ストーブ、スピーカー、ズボンプレッサー、掃除機、体脂肪計、体重計、ヘルスメーター、ムービープレーヤー、電気カーペット、電気釜、炊飯器、電気かみそり、電気スタンド、電気ポット、電子ゲーム機、携帯ゲーム機、電子辞書、電子手帳、電子レンジ、電磁調理器、電卓、電動カート、電動車椅子、電動工具、電動歯ブラシ、あんか、散髪器具、電話機、時計、インターホン、エアサーキュレーター、電撃殺虫器、複写機、ホットプレート、トースター、ドライヤー、電動ドリル、給湯器、パネルヒーター、粉砕機、はんだごて、ビデオカメラ、ビデオデッキ、ファクシミリ、ファンヒーター、フードプロセッサー、布団乾燥機、ヘッドホン、電気ポット、ホットカーペット、マイク、マッサージ機、豆電球、ミキサー、ミシン、もちつき機、床暖房パネル、ランタン、リモコン、冷温庫、冷水器、冷凍ストッカー、冷風器、ワープロ、泡だて器、電子楽器、オートバイ、おもちゃ類、芝刈り機、うき等の家電機器;自転車、自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、鉄道、船、飛行機、ドローン等の移動輸送機器;住宅用蓄電池、風力発電用蓄電池、水力発電用蓄電池、非常用蓄電池等の定置用蓄電機器;ボイラ、原動機、農作業機器、建設機器等の産業用機器等が挙げられる。
【実施例0085】
以下に、本発明の実施例を、その比較例とともに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体(I)を単に単量体(I)といい、高分子成分(D)を単に成分(D)ということがある。
【0086】
〔活物質(A)、導電助剤(B)〕
実施例及び比較例で用いた活物質、及び導電助剤を以下に示す。
LiNi0.8Co0.15Al0.05O2;一次粒子径10.5μm、BET比表面積0.3m
2/g
グラファイト;一次粒子径11.1μm
SiO;一次粒子径4.9μm
活性炭;平均粒子径4.9μm
アセチレンブラック(AB):平均粒子径70.1nm
CNT;繊維径150nm、比表面積13m2/g
【0087】
〔粘度の測定〕
蓄電デバイス電極用スラリー組成物の粘度を、レオメーター(HAAKE MARS 40、ThermoFisher SCIENTIFIC社製)を用いて測定した。なおせん断速度については下記の条件で変化させた。
測定温度;25℃
側定治具;25mm径パラレルプレート
せん断速度;1、1.468、2.154、3.162、4.642、6.813、10、14.68、21.54、31.62、46.42、68.13、100(1/s)の順で上昇させて測定。
【0088】
〔重量平均分子量〕
成分Dの分散液が0.2重量%濃度となるように、テトラヒドロフランと混合し、溶解させた後、GPC装置(東ソー社製、HLC-8220)を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法にて、成分Aの重量平均分子量を算出した。
【0089】
〔pHの測定〕
単量体(I)の重合体が含まれる分散液が5重量%濃度の25℃におけるpH、蓄電デバイス電極用スラリー組成物の25℃におけるpHを、pHメータ(堀場製作所社製、F-51)を用いて測定した。
【0090】
〔高分子成分(D)〕
実施例及び比較例で用いた高分子成分(D)について、それらの具体的な製造方法及び物性を以下の表1の製造例D-1~D-5に示す。
【0091】
【0092】
〔製造例D-1〕
まず、単量体(I)として、60gのアクリル酸、15gのアクリルアマイド、25gのアクリロニトリルを準備した。上記で準備した単量体(I)と、0.2gの過硫酸アンモニウムと、320gのイオン交換水をホモジナイザーで混合撹拌し均一溶解させ、1000mlのセパラブルフラスコ中で、窒素気流下、80℃で3時間反応し、反応後にアンモニア(13.6重量%)95gを加えpHを6.8に調整して、成分D-1の分散液を得た。
得られた成分D-1の水分散液の不揮発成分濃度は20.4重量%、成分D-1は水溶性であって、重量平均分子量が69万であった。なお、本願における「水溶性」とは、25℃において水100gに対して1g以上溶解することをいう。
【0093】
〔製造実施例D-2~D-5〕
製造実施例D-2~D-5では、製造実施例D-1において、表1に示すように原料をそれぞれ変更する以外は、製造実施例D-1と同様に成分Aをそれぞれ得て、物性等も製造実施例D-1と同様に評価した。その結果を表2及び3に示す。
【0094】
〔分散安定性の評価〕
作製した蓄電デバイス電極用スラリー組成物を100mlの遠沈管にとって室温で24時間静置した後の沈降物の重量を測定し、蓄電デバイス電極用スラリー組成物の不揮発成分100重量%に対する沈降物の重量比(重量%)を算出した。分散性安定性の評価は、算出した沈降物の重量比の値より、以下の評価基準により行った。◎及び〇を合格とした。
◎:沈降物の重量比が10重量%未満で、分散安定性に優れる。
○:沈降物の重量比が10重量%以上20重量%未満で、分散安定性にやや優れる。
△:沈降物の重量比が20重量%以上30重量%未満で、分散安定性にやや劣る。
×:沈降物の重量比が30重量%以上で、分散安定性に劣る。
【0095】
〔塗工の均一性の評価〕
作製した蓄電デバイス電極用スラリー組成物を集電体表面に10mg/cm2塗布した。
集電体表面に塗布した塗布面積を100%として、かすれやはじき、粒子のダマの有無がない面積を目視で計測し、評価を実施した。◎及び〇を合格とした。
◎:かすれ、はじき、粒子のダマいずれもなし。
○:塗布面積中、1%~5%でかすれ、はじき、粒子のダマのいずれかが見られる
△:塗布面積中、5%~10%でかすれ、はじき、粒子のダマのいずれかが見られる。
×:塗布面積中、10%以上でかすれ、はじき、粒子のダマのいずれかが見られる。
【0096】
〔被膜の外観評価〕
作製した蓄電デバイス電極用スラリー組成物を集電体表面に10mg/cm2塗布して、110℃で加熱して乾燥した。集電体表面を被覆した被膜面積を100%として、被膜にひび割れが発生していない面積を目視で計測し、評価を実施した。◎及び〇を合格とした。
◎:ひび割れなし。
○:被膜面積中、1%~5%でひび割れが見られる
△:被膜面積中、5%~20%でひび割れが見られる。
×:被膜面積中、20%以上でひび割れが見られる。
【0097】
〔平均粒子径の測定〕
粒径測定システム(大塚電子社製、ELSZ-1000)を用いて測定した。
【0098】
〔実施例1〕
活物質としてニッケル酸リチウムを95gと、導電助剤としてアセチレンブラックを2gと、高分子成分(D-1)を15gと、イオン交換水55gを均一に混合して、蓄電デバイス電極用スラリー組成物を得た。得られた蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、不揮発成分濃度60重量%であった。
この蓄電デバイス電極用スラリー組成物を用いて、蓄電デバイス電極用スラリー組成物の分散安定性を評価したところ、沈降物の重量比が10重量%以下であり、分散安定性に優れていた。
上記で得られた蓄電デバイス電極用スラリー組成物を、集電体である膜厚18μmのアルミ箔表面に塗布し、オーブン中で重量が恒量となるまで110℃で加熱し、蓄電デバイス電極用スラリー組成物の不揮発成分を含む被膜で被覆された集電体である蓄電デバイス用電極を得た。
【0099】
〔実施例2~10、比較例1、2〕
実施例2、3、7~10、比較例1では、表2、3に示すように原料をそれぞれ変更する以外は、実施例1と同様に蓄電デバイス電極用スラリー組成物をそれぞれ得て、物性等も実施例1と同様に評価した。また、実施例4~6、比較例2では塗工される集電箔が膜厚18μmの銅箔であること以外は実施例1と同様に蓄電デバイス電極用スラリー組成物をそれぞれ得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果を表4、5に示す。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
表4、5から分かるように、実施例1~10の蓄電デバイス電極用スラリー組成物は、活物質(A)、導電助剤(B)、水(C)及び高分子成分(D)を含み、前記高分子成分(D)が重合性成分dを構成単位として含む重合体及び/又はその中和物であり、前記重合性成分dが重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体(I)を含み、前記単量体(I)は、カルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体である単量体(i)を含み、下記条件1を満たすため、塗膜の均一性に優れることを確認した。
一方、表4、5から分かるように、高分子化合物を含んでいても、高分子成分(D)に該当する高分子化合物を含有しない場合(比較例1及び2)には、本願課題を解決できていない。