(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019571
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】光減衰器および光減衰器複合体
(51)【国際特許分類】
G02F 1/01 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
G02F1/01 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124392
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100113354
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 総
(72)【発明者】
【氏名】藤野 昌男
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA28
2K102BA01
2K102BB01
2K102BB05
2K102BC10
2K102CA20
2K102DA01
2K102DC08
2K102EA05
2K102EA25
2K102EB12
2K102EB25
(57)【要約】
【課題】波長板を用いたP偏光成分およびS偏光成分の強度の制御を、波長板の回転によらずに行う。
【解決手段】光減衰器1は、直線偏光を出射する光源10と、直線偏光を透過させ、直線偏光において互いに直交する二つの方向の電界の振動成分の間の位相差を変化させる波長板12と、直線偏光が波長板12を透過したものから、P偏光成分およびS偏光成分を取得する偏光ビームスプリッタ14と、波長板12の温度を制御する温度制御部18とを備える。ここで、温度制御部18により、偏光ビームスプリッタ14により取得されたP偏光成分またはS偏光成分の強度を制御するので、波長板12の回転によらずに、P偏光成分およびS偏光成分の強度の制御を行うことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光を出射する光源と、
前記直線偏光を透過させ、前記直線偏光において互いに直交する二つの方向の電界の振動成分の間の位相差を変化させる波長板と、
前記直線偏光が前記波長板を透過したものから、前記P偏光成分および前記S偏光成分を取得する偏光成分取得部と、
前記波長板の温度を制御する温度制御部と、
を備え、
前記温度制御部により、前記偏光成分取得部により取得された前記P偏光成分または前記S偏光成分の強度を制御する、
光減衰器。
【請求項2】
請求項1に記載の光減衰器であって、
前記偏光成分取得部により取得された前記P偏光成分および前記S偏光成分の一方を測定する偏光成分測定部と、
前記温度制御部が、前記P偏光成分および前記S偏光成分の他方の目標値と、前記直線偏光の出力から前記偏光成分測定部の測定結果を減じたものとを比較して、前記他方を制御するものである、
光減衰器。
【請求項3】
請求項1に記載の光減衰器であって、
前記偏光成分取得部により取得された前記P偏光成分および前記S偏光成分の一方を測定する偏光成分測定部と、
前記温度制御部が、前記P偏光成分および前記S偏光成分の他方の目標値と、前記一方および前記他方の比に前記偏光成分測定部の測定結果を乗じたものとを比較して、前記他方を制御するものである、
光減衰器。
【請求項4】
請求項3に記載の光減衰器であって、
前記一方および前記他方の比は、前記直線偏光が前記波長板を透過したものの前記P偏光成分および前記S偏光成分の比を測定して求める、
光減衰器。
【請求項5】
請求項1に記載の光減衰器であって、
前記直線偏光を透過させ、前記直線偏光において互いに直交する二つの方向の電界の振動成分の間の位相差を変化させ、前記波長板とは異なる他の波長板と、
前記直線偏光が前記他の波長板を透過したものから、前記P偏光成分および前記S偏光成分を取得する他の偏光成分取得部と、
を備え、
前記温度制御部が、前記波長板の温度と前記他の波長板の温度とを同じ値に制御し、
前記波長板における温度と透過光強度との関係と、前記他の波長板における温度と透過光強度との関係とが同一である、
光減衰器。
【請求項6】
請求項5に記載の光減衰器であって、
前記偏光成分取得部により取得された前記P偏光成分および前記S偏光成分の一方を測定する偏光成分測定部と、
前記温度制御部が、前記P偏光成分および前記S偏光成分の他方の目標値と、前記直線偏光の出力から前記偏光成分測定部の測定結果を減じたものとを比較して、前記他方を制御するものである、
光減衰器。
【請求項7】
請求項5に記載の光減衰器であって、
前記偏光成分取得部により取得された前記P偏光成分および前記S偏光成分の一方を測定する偏光成分測定部と、
前記温度制御部が、前記P偏光成分および前記S偏光成分の他方の目標値と、前記一方および前記他方の比に前記偏光成分測定部の測定結果を乗じたものとを比較して、前記他方を制御するものである、
光減衰器。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の光減衰器であって、
前記温度制御部が、ヒータである、
光減衰器。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載の光減衰器であって、
前記温度制御部が、ペルチェ素子である、
光減衰器。
【請求項10】
請求項1ないし4のいずれかに記載の光減衰器を複数備え、
前記光減衰器の各々が出力する前記P偏光成分または前記S偏光成分の光エネルギが、いずれも等しい、
光減衰器複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線偏光の強度の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、直線偏光を、波長板を介して、偏光ビームスプリッタに与える光学系が知られている。この波長板を回転により結晶軸をずらすことで、P偏光成分とS偏光成分との位相差を変化させ、偏波の状態や方向を変えることで、偏光ビームスプリッタから得られるP偏光成分およびS偏光成分の強度を制御できる。
【0003】
また、光学系中の温度を制御することも知られている(例えば、特許文献1~3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-330518号公報
【特許文献2】特表2010-534861号公報
【特許文献3】国際公開第2014-020669号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、波長板の回転を手動で行えば微調整が難しく、自動回転させるためにはモータなどの機械部品が多数必要となり、様々な問題(例えば、小型化が困難)がある。すなわち、P偏光成分およびS偏光成分の強度の制御を、波長板の回転によって行うことは、色々と問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、波長板を用いたP偏光成分およびS偏光成分の強度の制御を、波長板の回転によらずに行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる光減衰器は、直線偏光を出射する光源と、前記直線偏光を透過させ、前記直線偏光において互いに直交する二つの方向の電界の振動成分の間の位相差を変化させる波長板と、前記直線偏光が前記波長板を透過したものから、前記P偏光成分および前記S偏光成分を取得する偏光成分取得部と、前記波長板の温度を制御する温度制御部とを備え、前記温度制御部により、前記偏光成分取得部により取得された前記P偏光成分または前記S偏光成分の強度を制御するように構成される。
【0008】
上記のように構成され光減衰器によれば、光源が、直線偏光を出射する。波長板が、前記直線偏光を透過させ、前記直線偏光において互いに直交する二つの方向の電界の振動成分の間の位相差を変化させる。偏光成分取得部が、前記直線偏光が前記波長板を透過したものから、前記P偏光成分および前記S偏光成分を取得する。温度制御部が、前記波長板の温度を制御する。前記温度制御部により、前記偏光成分取得部により取得された前記P偏光成分または前記S偏光成分の強度を制御する。
【0009】
なお、本発明にかかる光減衰器は、前記偏光成分取得部により取得された前記P偏光成分および前記S偏光成分の一方を測定する偏光成分測定部と、前記温度制御部が、前記P偏光成分および前記S偏光成分の他方の目標値と、前記光の出力から前記偏光成分測定部の測定結果を減じたものとを比較して、前記他方を制御するものであるようにしてもよい。
【0010】
なお、本発明にかかる光減衰器は、前記偏光成分取得部により取得された前記P偏光成分および前記S偏光成分の一方を測定する偏光成分測定部と、前記温度制御部が、前記P偏光成分および前記S偏光成分の他方の目標値と、前記一方および前記他方の比に前記偏光成分測定部の測定結果を乗じたものとを比較して、前記他方を制御するものであるようにしてもよい。
【0011】
なお、本発明にかかる光減衰器は、前記一方および前記他方の比は、前記直線偏光が前記波長板を透過したものの前記P偏光成分および前記S偏光成分の比を測定して求めるようにしてもよい。
【0012】
なお、本発明にかかる光減衰器は、前記直線偏光を透過させ、前記直線偏光において互いに直交する二つの方向の電界の振動成分の間の位相差を変化させ、前記波長板とは異なる他の波長板と、前記直線偏光が前記他の波長板を透過したものから、前記P偏光成分および前記S偏光成分を取得する他の偏光成分取得部と、を備え、前記温度制御部が、前記波長板の温度と前記他の波長板の温度とを同じ値に制御し、前記波長板における温度と透過光強度との関係と、前記他の波長板における温度と透過光強度との関係とが同一であるようにしてもよい。
【0013】
なお、本発明にかかる光減衰器は、前記偏光成分取得部により取得された前記P偏光成分および前記S偏光成分の一方を測定する偏光成分測定部と、前記温度制御部が、前記P偏光成分および前記S偏光成分の他方の目標値と、前記光の出力から前記偏光成分測定部の測定結果を減じたものとを比較して、前記他方を制御するものであるようにしてもよい。
【0014】
なお、本発明にかかる光減衰器は、前記偏光成分取得部により取得された前記P偏光成分および前記S偏光成分の一方を測定する偏光成分測定部と、前記温度制御部が、前記P偏光成分および前記S偏光成分の他方の目標値と、前記一方および前記他方の比に前記偏光成分測定部の測定結果を乗じたものとを比較して、前記他方を制御するものであるようにしてもよい。
【0015】
なお、本発明にかかる光減衰器は、前記温度制御部が、ヒータであるようにしてもよい。
【0016】
なお、本発明にかかる光減衰器は、前記温度制御部が、ペルチェ素子であるようにしてもよい。
【0017】
本発明にかかる光減衰器複合体は、本発明にかかる光減衰器を複数備え、前記光減衰器の各々が出力する前記P偏光成分または前記S偏光成分の光エネルギが、いずれも等しいように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第一の実施形態にかかる光減衰器1の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】本発明の第二の実施形態にかかる光減衰器1の構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】本発明の第三の実施形態にかかる光減衰器1の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】本発明の第四の実施形態にかかる光減衰器1の構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】本発明の第五の実施形態にかかる光減衰器1の構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】本発明の第六の実施形態にかかる光減衰器1の構成を示す機能ブロック図である。
【
図7】本発明の第七の実施形態にかかる光減衰器1の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0020】
第一の実施形態
図1は、本発明の第一の実施形態にかかる光減衰器1の構成を示す機能ブロック図である。本発明の第一の実施形態にかかる光減衰器1は、光源10、波長板12、偏光ビームスプリッタ(偏光成分取得部)14、温度制御部18を備える。
【0021】
光源10は、直線偏光(例えば、レーザ光)を出射する。
【0022】
波長板12は、光源10から出射された直線偏光を透過させ、直線偏光において互いに直交する二つの方向(例えば、X方向とY方向)の電界の振動成分の間の位相差を変化させる。例えば、波長板12を二分の一波長板とすることができる。この場合、波長板12の厚みにより、X方向の電界の振動成分およびY方向の電界の振動成分の位相差(すなわち、X方向の電界の振動成分の位相と、Y方向の電界の振動成分の位相との差)を、π+2π×(波長板12の次数)(n=0,1,2,…)とすることができる。例えば、波長板(二分の一波長板)12の厚みにより、波長板12の次数を4次とすると、X方向の電界の振動成分およびY方向の電界の振動成分の位相差を9πとすることができる。
【0023】
偏光ビームスプリッタ(偏光成分取得部)14は、直線偏光が波長板12を透過したものから、P偏光成分およびS偏光成分を取得する。偏光ビームスプリッタ14の出力を、光減衰器1の出力とする。例えば、偏光ビームスプリッタ14の出力するP偏光成分を、光減衰器1の出力とする。
【0024】
温度制御部18は、波長板12の温度を制御する。温度制御部18は、例えば、ヒータまたはペルチェ素子である。
【0025】
温度制御部18により、偏光ビームスプリッタ14により取得されたP偏光成分またはS偏光成分の強度を制御する。例えば、波長板12を二分の一波長板とした場合、所定の温度(例えば、25℃)で、透過光強度比(=(偏光ビームスプリッタ14の出力するP偏光成分の強度)/(光源10から出射された光の強度))が100%となる。波長板12を、所定の温度より高くしても、低くしても、透過光強度比は低くなる。なお、波長板12の次数が大きいほど、波長板12を所定の温度から変更した場合の、透過光強度比の低下量が大きくなる。透過光強度比の低下量が大きくなる程、P偏光成分の強度を低くかつS偏光成分の強度を高く制御することができる。
【0026】
波長板12は、屈折率がnoの常軸とneの異常軸を有する複屈折結晶である。常軸に沿った偏光成分の速度と異常軸に沿った偏光成分の速度差が発生することによって2つの成分に位相差が生じる。この位相差が1/2波長のものが1/2波長板、1/4波長のものが1/4波長板といわれる。ここでは、noとneの屈折率差を温度で変化させることで、偏光の状態を変化させている。
【0027】
次に、第一の実施形態の動作を説明する。
【0028】
光源10から出射された直線偏光が、波長板12を透過し、偏光ビームスプリッタ14により、P偏光成分およびS偏光成分が取り出される。ここで、P偏光成分の強度を所望の値とするために、温度制御部18によって、波長板12の温度を制御する。
【0029】
第一の実施形態によれば、波長板12を用いたP偏光成分およびS偏光成分の強度の制御を、波長板12の温度を制御することで、波長板12の回転によらずに行うことができる。
【0030】
第二の実施形態
第二の実施形態は、S偏光成分測定部16および光源出力記録部17を備え、温度制御部18が、P偏光成分の目標値と、光源出力記録部17の記録内容(光源10から出射された直線偏光の出力)からS偏光成分測定部16の測定結果を減じたものとを比較して、P偏光成分を制御するものである点が第一の実施形態と異なる。
【0031】
図2は、本発明の第二の実施形態にかかる光減衰器1の構成を示す機能ブロック図である。本発明の第二の実施形態にかかる光減衰器1は、光源10、波長板12、偏光ビームスプリッタ(偏光成分取得部)14、S偏光成分測定部(偏光成分測定部)16、光源出力記録部17、温度制御部18を備える。以下、第一の実施形態と同様な部分は同一の符号を付して説明を省略する。
【0032】
光源10、波長板12および偏光ビームスプリッタ(偏光成分取得部)14は、第一の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0033】
S偏光成分測定部(偏光成分測定部)16は、偏光ビームスプリッタ(偏光成分取得部)14により取得されたP偏光成分およびS偏光成分の一方を測定する。第二の実施形態においては、偏光成分測定部16は、S偏光成分の出力(光エネルギ)を測定する。
【0034】
光源出力記録部17は、光源10の光の出力(光源10から出射される直線偏光の出力(光エネルギ))を記録する。
【0035】
温度制御部18は、P偏光成分およびS偏光成分の他方の目標値を受ける。第二の実施形態においては、P偏光成分の目標値を受ける。さらに、温度制御部18は、光源出力記録部17から光源10の光の出力を、S偏光成分測定部16から測定結果(S偏光成分の出力)を受ける。さらに、温度制御部18は、P偏光成分の目標値と、光源10の光の出力からS偏光成分測定部16の測定結果を減じたもの(すなわち、P偏光成分の実測値)とを比較して、P偏光成分の出力を制御する。温度制御部18に関し、その他の点については、第一の実施形態と同様である。
【0036】
次に、第二の実施形態の動作を説明する。
【0037】
光源10から出射された直線偏光が、波長板12を透過し、偏光ビームスプリッタ14により、P偏光成分およびS偏光成分が取り出される。ここで、P偏光成分の強度を所望の値とするために、温度制御部18によって、波長板12の温度を制御する。このために、S偏光成分の出力が、S偏光成分測定部16により測定される。
【0038】
温度制御部18は、光源出力記録部17から受けた光源10の光の出力から、S偏光成分測定部16から受けた測定結果(S偏光成分の出力)を減じることにより、P偏光成分の実測値を求める。このP偏光成分の実測値とP偏光成分の目標値とが比較され、波長板12の温度が制御され、P偏光成分の出力が制御される。
【0039】
第二の実施形態によれば、第一の実施形態と同様な効果を、S偏光成分測定部16、光源出力記録部17および温度制御部18により自動的に奏することができる。
【0040】
第三の実施形態
第三の実施形態は、光源出力記録部17のかわりにP/S比記録部19を備える点が、第二の実施形態と相違する。
【0041】
図3は、本発明の第三の実施形態にかかる光減衰器1の構成を示す機能ブロック図である。本発明の第三の実施形態にかかる光減衰器1は、光源10、波長板12、偏光ビームスプリッタ(偏光成分取得部)14、S偏光成分測定部(偏光成分測定部)16、温度制御部18、P/S比記録部19を備える。以下、第二の実施形態と同様な部分は同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
光源10、波長板12、偏光ビームスプリッタ(偏光成分取得部)14およびS偏光成分測定部(偏光成分測定部)16は、第二の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0043】
P/S比記録部19は、P偏光成分およびS偏光成分の出力比を記録する。
【0044】
温度制御部18は、P/S比記録部19から、P偏光成分およびS偏光成分の一方(S偏光成分)および他方(P偏光成分)の出力比を受ける。さらに、温度制御部18は、P偏光成分の目標値と、P偏光成分およびS偏光成分の一方(S偏光成分)および他方(P偏光成分)の出力比にS偏光成分測定部16の測定結果を乗じたものとを比較して、P偏光成分を制御する。温度制御部18に関し、その他の点については、第二の実施形態と同様である。
【0045】
次に、第三の実施形態の動作を説明する。
【0046】
光源10から出射された直線偏光が、波長板12を透過し、偏光ビームスプリッタ14により、P偏光成分およびS偏光成分が取り出される。ここで、P偏光成分の強度を所望の値とするために、温度制御部18によって、波長板12の温度を制御する。このために、S偏光成分の出力が、S偏光成分測定部16により測定される。
【0047】
温度制御部18は、P/S比記録部19から受けたP偏光成分およびS偏光成分の一方(S偏光成分)および他方(P偏光成分)の出力比に、S偏光成分測定部16から受けた測定結果(S偏光成分の出力)を乗じることにより、P偏光成分の実測値を求める。このP偏光成分の実測値とP偏光成分の目標値とが比較され、波長板12の温度が制御され、P偏光成分の出力が制御される。
【0048】
第三の実施形態によれば、第二の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0049】
第四の実施形態
第四の実施形態は、P偏光成分およびS偏光成分の一方(S偏光成分)および他方(P偏光成分)の出力比をP/S比記録部19に記録するかわりに、波長板12を透過した後の光のP偏光成分およびS偏光成分の比を測定して求める点が第三の実施形態と相違する。
【0050】
図4は、本発明の第四の実施形態にかかる光減衰器1の構成を示す機能ブロック図である。本発明の第四の実施形態にかかる光減衰器1は、光源10、タップミラー11、波長板12、偏光ビームスプリッタ(偏光成分取得部)14、S偏光成分測定部(偏光成分測定部)16、温度制御部18、入射前偏光ビームスプリッタ24、入射前S偏光成分測定部26S、入射前P偏光成分測定部26P、P/S比測定部29を備える。以下、第三の実施形態と同様な部分は同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
光源10、波長板12、偏光ビームスプリッタ(偏光成分取得部)14およびS偏光成分測定部(偏光成分測定部)16は、第三の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0052】
タップミラー11は、光源10から出射された直線偏光が波長板12を透過したもののうちのほぼ全てを透過させるが、一部の微弱な光を反射する。タップミラー11を透過した光は偏光ビームスプリッタ14に向かう。タップミラー11により反射された光は入射前偏光ビームスプリッタ24に向かう。
【0053】
入射前偏光ビームスプリッタ24は、入射された光から、P偏光成分およびS偏光成分を取得する。入射前S偏光成分測定部26Sは、入射前偏光ビームスプリッタ24の取得したS偏光成分の出力(光エネルギ)を測定する。入射前P偏光成分測定部26Pは、入射前偏光ビームスプリッタ24の取得したP偏光成分の出力(光エネルギ)を測定する。P/S比測定部29は、入射前P偏光成分測定部26Pの測定結果と、入射前S偏光成分測定部26Sの測定結果とを受け、両者の比を測定する。P/S比測定部29の測定結果が、直線偏光が波長板12を透過したものにおけるP偏光成分およびS偏光成分の出力比である。
【0054】
温度制御部18は、P/S比測定部29から、P偏光成分およびS偏光成分の一方(S偏光成分)および他方(P偏光成分)の出力比を受ける。温度制御部18に関し、その他の点については、第三の実施形態と同様である。
【0055】
次に、第四の実施形態の動作を説明する。
【0056】
光源10から出射された直線偏光が波長板12を透過したもののうち、ほんの一部が、タップミラー11により反射され、入射前偏光ビームスプリッタ24に入射される。入射前偏光ビームスプリッタ24により、P偏光成分およびS偏光成分が取り出され、P偏光成分の出力が入射前P偏光成分測定部26Pにより測定され、S偏光成分の出力が入射前S偏光成分測定部26Sにより測定される。これらの測定結果がP/S比測定部29に与えられ、P偏光成分およびS偏光成分の一方(S偏光成分)および他方(P偏光成分)の出力比が測定される。
【0057】
光源10から出射された直線偏光が波長板12を透過したもののうち、ほぼ全てが、タップミラー11を透過し、偏光ビームスプリッタ14により、P偏光成分およびS偏光成分が取り出される。ここで、P偏光成分の強度を所望の値とするために、温度制御部18によって、波長板12の温度を制御する。このために、S偏光成分の出力が、S偏光成分測定部16により測定される。
【0058】
温度制御部18は、P/S比測定部29から受けたP偏光成分およびS偏光成分の一方(S偏光成分)および他方(P偏光成分)の出力比に、S偏光成分測定部16から受けた測定結果(S偏光成分の出力)を乗じることにより、P偏光成分の実測値を求める。このP偏光成分の実測値とP偏光成分の目標値とが比較され、波長板12の温度が制御され、P偏光成分の出力が制御される。
【0059】
第四の実施形態によれば、第三の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0060】
第五の実施形態
第五の実施形態は、第一、第二、第三および第四の実施形態にかかる光減衰器1に相当する光減衰器1A、1B、…、1Nを備えた光減衰器複合体である。
【0061】
図5は、本発明の第五の実施形態にかかる光減衰器1の構成を示す機能ブロック図である。本発明の第五の実施形態にかかる光減衰器複合体1は、複数の光減衰器1A、1B、…、1Nを備える。光減衰器1A、1B、…、1Nの各々の出力は同じである。すなわち、光減衰器1A、1B、…、1Nの各々が出力するP偏光成分(またはS偏光成分)の光エネルギが、いずれも等しい。
【0062】
第五の実施形態の動作は、光減衰器1A、1B、…、1Nの各々について第一、第二、第三および第四の実施形態において説明したものと同様である。
【0063】
第五の実施形態によれば、複数の信号の出力を同じにすることができる。
【0064】
第六の実施形態
第六の実施形態は、他の波長板32および他の偏光成分取得部34を備え、出力を複数(2出力)としたことが第二の実施形態と相違する。
【0065】
図6は、本発明の第六の実施形態にかかる光減衰器1の構成を示す機能ブロック図である。本発明の第六の実施形態にかかる光減衰器1は、光源10、ハーフミラー110、波長板12、偏光ビームスプリッタ(偏光成分取得部)14、S偏光成分測定部(偏光成分測定部)16、光源出力記録部17、温度制御部18、ミラー31、他の波長板32、他の偏光ビームスプリッタ(他の偏光成分取得部)34を備える。以下、第二の実施形態と同様な部分は同一の符号を付して説明を省略する。
【0066】
光源10、波長板12、偏光ビームスプリッタ(偏光成分取得部)14、S偏光成分測定部(偏光成分測定部)16、光源出力記録部17および温度制御部18は、第二の実施形態と同様であり、説明を省略する。ただし、温度制御部18は、波長板12の温度と他の波長板32の温度とを同じ値に制御する。
【0067】
ハーフミラー110は、光源10から出射された直線偏光のうちの半分を透過させるが、他の半分を反射する。ハーフミラー110を透過した光は波長板12に向かう。ハーフミラー110により反射された光はミラー31に向かう。
【0068】
ミラー31は、ハーフミラー110により反射された光を反射して、他の波長板32に与える。
【0069】
他の波長板32は、波長板12とは異なる(別の)波長板である。他の波長板32は、ハーフミラー110により反射された光(直線偏光)を透過させ、直線偏光において互いに直交する二つの方向(例えば、X方向とY方向)の電界の振動成分の間の位相差を変化させる。例えば、他の波長板32を二分の一波長板とすることができる。この場合、他の波長板32の厚みにより、X方向の電界の振動成分およびY方向の電界の振動成分の位相差(すなわち、X方向の電界の振動成分の位相と、Y方向の電界の振動成分の位相との差)を、π+2π×(波長板12の次数)(n=0,1,2,…)とすることができる。例えば、他の波長板(二分の一波長板)32の厚みにより、他の波長板32の次数を4次とすると、X方向の電界の振動成分およびY方向の電界の振動成分の位相差を9πとすることができる。
【0070】
ただし、波長板12における温度と透過光強度との関係と、他の波長板32における温度と透過光強度との関係とは同一である。
【0071】
他の偏光ビームスプリッタ(他の偏光成分取得部)34は、直線偏光が他の波長板32を透過したものから、P偏光成分およびS偏光成分を取得する。
【0072】
次に、第六の実施形態の動作を説明する。
【0073】
光源10から出射された直線偏光の半分が、ハーフミラー110および波長板12を透過し、偏光ビームスプリッタ14により、P偏光成分およびS偏光成分が取り出される。ここで、P偏光成分の強度を所望の値とするために、温度制御部18によって、波長板12の温度を制御する。このために、S偏光成分の出力が、S偏光成分測定部16により測定される。
【0074】
温度制御部18による波長板12の温度制御の際の動作は、第二の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0075】
また、光源10から出射された直線偏光の他の半分が、ハーフミラー110により反射され、ミラー31を介して、他の波長板32に与えられ、透過し、他の偏光ビームスプリッタ34により、P偏光成分およびS偏光成分が取り出される。
【0076】
なお、偏光ビームスプリッタ14により取り出されたP偏光成分およびS偏光成分の出力比と、他の偏光ビームスプリッタ34により取り出されたP偏光成分およびS偏光成分の出力比とは、共に、光源10から出射された直線偏光のP偏光成分およびS偏光成分の出力比と同じ値となる。
【0077】
また、温度制御部18により、波長板12の温度と他の波長板32の温度とは同じとなるように制御されており、しかも、波長板12における温度と透過光強度との関係と、他の波長板32における温度と透過光強度との関係とは同一である。よって、ハーフミラー110を透過する光の出力と、反射する光の出力との比は、偏光ビームスプリッタ14に与えられる光の出力と、他の偏光ビームスプリッタ34に与えられる光の出力との比と同じ値となる。
【0078】
このため、偏光ビームスプリッタ14により取り出されたP偏光成分の出力と、他の偏光ビームスプリッタ34により取り出されたP偏光成分の出力との比は、ハーフミラー110を透過する光の出力と、反射する光の出力との比(1:1)と同じとなる。
【0079】
第六の実施形態によれば、一つの光源10から2つの出力を得ることができる。
【0080】
第七の実施形態
第七の実施形態は、他の波長板32および他の偏光成分取得部34を備え、出力を複数(2出力)としたことが第三の実施形態と相違する。
【0081】
図7は、本発明の第七の実施形態にかかる光減衰器1の構成を示す機能ブロック図である。本発明の第七の実施形態にかかる光減衰器1は、光源10、ハーフミラー110、波長板12、偏光ビームスプリッタ(偏光成分取得部)14、S偏光成分測定部(偏光成分測定部)16、温度制御部18、P/S比記録部19、ミラー31、他の波長板32、他の偏光ビームスプリッタ(他の偏光成分取得部)34を備える。以下、第三の実施形態と同様な部分は同一の符号を付して説明を省略する。
【0082】
光源10、波長板12、偏光ビームスプリッタ(偏光成分取得部)14、S偏光成分測定部(偏光成分測定部)16、温度制御部18およびP/S比記録部19は、第三の実施形態と同様であり、説明を省略する。ただし、温度制御部18は、波長板12の温度と他の波長板32の温度とを同じ値に制御する。また、波長板12における温度と透過光強度との関係と、他の波長板32における温度と透過光強度との関係とは同一である。
【0083】
なお、ハーフミラー110、ミラー31、他の波長板32、他の偏光ビームスプリッタ(他の偏光成分取得部)34は、第六の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0084】
次に、第七の実施形態の動作を説明する。
【0085】
光源10から出射された直線偏光の半分が、ハーフミラー110および波長板12を透過し、偏光ビームスプリッタ14により、P偏光成分およびS偏光成分が取り出される。ここで、P偏光成分の強度を所望の値とするために、温度制御部18によって、波長板12の温度を制御する。このために、S偏光成分の出力が、S偏光成分測定部16により測定される。
【0086】
温度制御部18による波長板12の温度制御の際の動作は、第三の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0087】
また、光源10から出射された直線偏光の他の半分が、ハーフミラー110により反射され、ミラー31を介して、他の波長板32に与えられ、透過し、他の偏光ビームスプリッタ34により、P偏光成分およびS偏光成分が取り出される。
【0088】
なお、第六の実施形態と同様に、偏光ビームスプリッタ14により取り出されたP偏光成分の出力と、他の偏光ビームスプリッタ34により取り出されたP偏光成分の出力との比は、ハーフミラー110を透過する光の出力と、反射する光の出力との比(1:1)と同じとなる。
【0089】
第七の実施形態によれば、一つの光源10から2つの出力を得ることができる。
【符号の説明】
【0090】
1 光減衰器
1A、1B、…、1N 光減衰器
10 光源
12 波長板
14 偏光ビームスプリッタ(偏光成分取得部)
16 S偏光成分測定部(偏光成分測定部)
17 光源出力記録部
18 温度制御部
19 P/S比記録部
32 他の波長板
34 他の偏光ビームスプリッタ(他の偏光成分取得部)