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  • 特開-吸収式冷凍機 図1
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  • 特開-吸収式冷凍機 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019576
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】吸収式冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 15/00 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
F25B15/00 306V
F25B15/00 306N
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124399
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】佐潟 輝洋
(72)【発明者】
【氏名】植松 博
(72)【発明者】
【氏名】檜山 修
【テーマコード(参考)】
3L093
【Fターム(参考)】
3L093BB01
3L093BB31
3L093CC03
3L093DD04
3L093EE22
3L093HH02
3L093HH08
3L093JJ04
3L093JJ06
3L093LL03
(57)【要約】
【課題】長期停止中における凍結を防止すると共に、再起動時により短い時間で冷媒と吸収液とを置換することができる吸収式冷凍機を提供する。
【解決手段】吸収式冷凍機1は、第1分岐配管L9と、溶液切替弁V1と、稀溶液ポンプP2とを備え、制御装置30が、運転停止後において溶液切替弁V1を開き稀溶液ポンプP2を運転させることで、蒸発器13内の冷媒を吸収液と混合させる。さらに、吸収式冷凍機1は、蒸発器13内の液体を吸収器14内に供給するための第2分岐配管L10と、第2分岐配管L10を開閉する冷媒切替弁V2と、蒸発器13内の液体を吸収器14内に供給する動力を発生させる冷媒ポンプP3とを備え、制御装置30は、運転停止後において、溶液切替弁V1を開き稀溶液ポンプP2を運転させるのに先立って、冷媒切替弁V2を開き冷媒ポンプP3を運転させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生器、凝縮器、蒸発器、及び吸収器を有する冷凍サイクル部と、前記吸収器内の吸収液を前記蒸発器内に供給するための第1供給流路と、前記第1供給流路を開閉する第1制御弁と、前記吸収器内の吸収液を前記蒸発器内に供給する動力を発生させる第1ポンプと、前記第1制御弁の開閉、及び、前記第1ポンプの運転を制御する制御手段とを備え、前記制御手段が、運転停止後において前記第1制御弁を開き前記第1ポンプを運転させることで、前記蒸発器内の冷媒を吸収液と混合させる吸収式冷凍機であって、
前記蒸発器内の液体を前記吸収器内に供給するための第2供給流路と、
前記第2供給流路を開閉する第2制御弁と、
前記蒸発器内の液体を前記吸収器内に供給する動力を発生させる第2ポンプと、を備え、
前記制御手段は、運転停止後において、前記第1制御弁を開き前記第1ポンプを運転させるのに先立って、前記第2制御弁を開き前記第2ポンプを運転させる
ことを特徴とする吸収式冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収式冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転中において吸収液を蒸発器に供給する吸収式冷凍機が知られている(特許文献1参照)。この吸収式冷凍機によれば、凝固点が冷媒(例えば水)よりも低い吸収液を蒸発器に供給することで、蒸発器における凍結の可能性を低減させ、より低い温度で蒸発器を制御し、例えばマイナス温度での運転を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-4330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の吸収式冷凍機は運転中において吸収液を蒸発器に供給するものである。ここで、本件発明者らは、吸収式冷凍機の運転停止中に冷媒と吸収液とを混ぜることで長期の停止中において凍結を防止することを検討している。
【0005】
しかし、蒸発器内において冷媒と吸収液とが混ざった状態のままで吸収式冷凍機を運転してしまうと、冷凍能力が低下してしまう。このため、吸収式冷凍機の長期停止からの再起動時には吸収液を排出する必要があり、この排出に要する時間が長いと再起動時に多くの時間を要してしまう。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、長期停止中における凍結を防止すると共に、再起動時により短い時間で冷媒と吸収液とを置換することができる吸収式冷凍機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の吸収式冷凍機は、再生器、凝縮器、蒸発器、及び吸収器を有する冷凍サイクル部と、前記吸収器内の吸収液を前記蒸発器内に供給するための第1供給流路と、前記第1供給流路を開閉する第1制御弁と、前記吸収器内の吸収液を前記蒸発器内に供給する動力を発生させる第1ポンプと、前記第1制御弁の開閉、及び、前記第1ポンプの運転を制御する制御手段とを備え、前記制御手段が、運転停止後において前記第1制御弁を開き前記第1ポンプを運転させることで、前記蒸発器内の冷媒を吸収液と混合させる吸収式冷凍機であって、前記蒸発器内の液体を前記吸収器内に供給するための第2供給流路と、前記第2供給流路を開閉する第2制御弁と、前記蒸発器内の液体を前記吸収器内に供給する動力を発生させる第2ポンプと、を備え、前記制御手段は、運転停止後において、前記第1制御弁を開き前記第1ポンプを運転させるのに先立って、前記第2制御弁を開き前記第2ポンプを運転させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、運転停止後において第1制御弁を開き第1ポンプを運転させることで、蒸発器内の冷媒を吸収液と混合させるため、冷媒と吸収液とが混合して凝固点が下がることとなり、蒸発器内の液体が凍結し難くなる。さらに、運転停止後において、第1制御弁を開き第1ポンプを運転させるのに先立って、第2制御弁を開き第2ポンプを運転させるため、まず蒸発器内における冷媒量を少なくすることとなる。この結果、蒸発器内における冷媒に対して混合させる吸収液量を少なくすることが可能となり、再起動時には蒸発器内の比較的少量の混合液から吸収液を排出させるだけでよく、再起動に要する時間を短縮させることができる。従って、長期停止中における凍結を防止すると共に、再起動時により短い時間で冷媒と吸収液とを置換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る吸収式冷凍機を示す構成図である。
図2】本実施形態に係る吸収式冷凍機の動作を示すフローチャートである。
図3】本実施形態に係る吸収式冷凍機の凍結防止動作の第1段階目の状態を示す状態図である。
図4】本実施形態に係る吸収式冷凍機の凍結防止動作の第2段階目の状態を示す状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る吸収式冷凍機を示す構成図である。図1に示すように、吸収式冷凍機1は、冷凍サイクル部10と、各種配管L1~L8と、ポンプP1~P3と、熱交換器20と、制御装置(制御手段)30と、外気温センサTとを備えて構成されている。
【0012】
冷凍サイクル部10は、再生器11、凝縮器12、蒸発器13、及び吸収器14を備えている。吸収式冷凍機1は、再生器11、凝縮器12、蒸発器13、及び吸収器14の冷凍サイクルによって冷水を得るものである。
【0013】
再生器11は、例えば冷媒となる水(以下、冷媒が蒸気化したものを蒸気冷媒と称し、冷媒が液化したものを液冷媒と称する)と、吸収液となる臭化リチウム(LiBr)とが混合された稀溶液(吸収液の濃度が低い溶液)を加熱するものである。本実施形態において再生器11内には高温の熱媒が流れる熱媒配管L1が挿通されている。再生器11は、熱媒配管L1を流れる高温の熱媒を利用して稀溶液を加熱する。この加熱によって稀溶液は濃溶液と蒸気冷媒とに分離される。濃溶液は再生器11の下部に溜まり、蒸気冷媒は再生器11とつながる凝縮器12に供給される。
【0014】
凝縮器12は、再生器11から供給される蒸気冷媒を液化させるものである。この凝縮器12内には、第1冷却水配管L2が挿通されている。第1冷却水配管L2には冷却水ポンプ(不図示)を動力として冷却塔(不図示)からの冷却水が流れている。よって、再生器11における蒸発により得られた蒸気冷媒は、第1冷却水配管L2内の冷却水によって冷却されて液化する。さらに、凝縮器12にて液化して得られた液冷媒は冷媒配管L3を通じて蒸発器13に供給される。
【0015】
蒸発器13は、液冷媒を蒸発させるものである。この蒸発器13内には、室内機等の外部機器に接続される冷水配管L4と、凝縮器12からの液冷媒を受け入れる冷媒分配器13aとが設けられている。冷水配管L4は、例えば室内機と接続されており、室内機からの冷水が流れている。また、蒸発器13内は、真空状態となっている。このため、液冷媒である水の蒸発温度は約5℃等となる。よって、冷媒分配器13aによって冷水配管L4上に散布された液冷媒は冷水配管L4の温度によって蒸発することとなる。また、冷水配管L4内の冷水は、液冷媒の蒸発によって温度が奪われる。これにより、冷水配管L4の冷水は温度が低下した状態で室内機に供給され、室内機は冷水を利用して冷風を室内に供給することとなる。
【0016】
吸収器14は、蒸発器13において蒸発した冷媒(蒸気冷媒)を吸収するものである。この吸収器14内には再生器11から濃溶液を受け入れる濃溶液分配器14aが設けられている。濃溶液は濃溶液分配器14aから吸収器14内に散布される。これにより、蒸発器13での蒸発により得られた蒸気冷媒は散布される濃溶液によって吸収され、稀溶液が生成される。また、吸収器14には、第2冷却水配管L5が挿通されている。第2冷却水配管L5には冷却水ポンプ(不図示)を動力として冷却塔(不図示)からの冷却水が流れており、濃溶液の冷媒吸収により生じる吸収熱は、第2冷却水配管L5の冷却水により除去される。なお、第2冷却水配管L5の出口側は、第1冷却水配管L2の入口側と接続されている。
【0017】
再生器11の下部は、濃溶液配管L6及び熱交換器20の濃溶液貯留部21を通じて吸収器14の上部に接続されている。再生器11の下部の濃溶液は、濃溶液ポンプP1の動力によって吸収器14の上部まで圧送される。また、吸収器14の下部は、稀溶液配管L7及び熱交換器20の稀溶液貯留部22を通じて再生器11の上部に接続されている。吸収器14の下部の稀溶液は、稀溶液ポンプ(第1ポンプ)P2の動力によって再生器11の上部まで圧送される。
【0018】
熱交換器20には、再生器11から濃溶液と吸収器14からの稀溶液とが導入され、熱交換される。すなわち、再生器11からの濃溶液は、稀溶液を加熱して温度が低下した状態で吸収器14の上部に供給されることとなる。一方、吸収器14からの稀溶液は、濃溶液から受熱して昇温のうえ再生器11の上部に供給されることとなる。
【0019】
さらに、蒸発器13には、蒸発器13の下部と上部とを接続する循環配管L8が設けられている。循環配管L8上には冷媒ポンプ(第2ポンプ)P3が設けられている。このため、蒸発器13の下部の液冷媒は、冷媒ポンプP3の動力により循環配管L8を通じて冷媒分配器13aまで供給される。このため、蒸発器13内において蒸発に寄与しなかった液冷媒は再度冷媒分配器13aから散布されることとなる。
【0020】
制御装置30は、吸収式冷凍機1の全体を制御するものであって、例えばポンプP1~P3の稼働や再生器11への熱媒の導入等を制御するものである。外気温センサTは、外気温に応じた信号を制御装置30に出力するものである。制御装置30は、外気温センサTからの信号に基づいて外気温を判断する。また、制御装置30は、後述のフローチャートに示すようにタイマー機能を備えている。
【0021】
さらに、本実施形態に係る吸収式冷凍機1は、第1分岐配管(第1供給流路)L9と、溶液切替弁(第1制御弁)V1とを備えている。第1分岐配管L9は、一端が稀溶液配管L7のうち稀溶液ポンプP2と熱交換器20との間に接続され、他端が冷媒分配器13aに接続された配管である。溶液切替弁V1は、第1分岐配管L9上に設けられて流路を開閉するものである。
【0022】
本実施形態において制御装置30は、吸収式冷凍機1の冬季等における長期停止時において液冷媒の凍結防止のために吸収器14内の吸収液を蒸発器13内に送り込む制御を実行するようになっている。すなわち、制御装置30は、溶液切替弁V1を開け、稀溶液ポンプP2を運転させる。また、この際に制御装置30は、濃溶液ポンプP1についても運転させる。これにより、制御装置30は、再生器11と吸収器14とで吸収液を循環させつつ、吸収液の一部を蒸発器13内に送り込むこととなる。
【0023】
ここで、吸収液は液冷媒よりも凝固点が低い。よって、吸収器14内の吸収液を蒸発器13内に送り込んで液冷媒に吸収液を混ぜることで液体の凝固点を低下させることとなり、冬季等における長期停止時の冷媒凍結を防止することができる。
【0024】
しかし、吸収器14内の吸収液を蒸発器13内に送り込んで凍結防止を行った場合、吸収式冷凍機1の再起動時には吸収冷凍効率の観点から吸収液を排出する必要があり、この排出に要する時間が長いと再起動時に多くの時間を要してしまう。
【0025】
そこで、本実施形態に係る吸収式冷凍機1は、第2分岐配管(第2供給流路)L10と、冷媒切替弁(第2制御弁)V2とを備えている。第2分岐配管L10は、一端が循環配管L8のうち冷媒ポンプP3の下流側に接続され、他端が吸収器14の下部に接続された配管である。なお、第2分岐配管L10の他端は吸収器14の下部に限らず上部等に接続されてもよい。冷媒切替弁V2は、第2分岐配管L10上に設けられて流路を開閉するものである。
【0026】
本実施形態において制御装置30は、液冷媒の凍結防止のために吸収器14内の吸収液を蒸発器13内に送り込む制御を実行するに先立って、蒸発器13内の液冷媒を吸収器14に送り込む制御を実行する。すなわち、制御装置30は、冷媒切替弁V2を開け、冷媒ポンプP3を運転させる。これにより、吸収液を蒸発器13に送り込むのに先立って、蒸発器13内の液冷媒の量を減少させる。この結果、蒸発器13内に送り込む吸収液の量も少なくしてよく、蒸発器13内において吸収液の排出に要する時間も短縮化されることとなる。
【0027】
図2は、本実施形態に係る吸収式冷凍機1の動作を示すフローチャートである。図3及び図4は、本実施形態に係る吸収式冷凍機1の凍結防止動作の第1段階及び第2段階目の状態を示す状態図である。
【0028】
制御装置30は、運転を停止後、図2に示す処理を実行する。すなわち、まず制御装置30は、凍結防止制御信号がONであるかを判断する(S1)。凍結防止制御信号は、例えばユーザや作業員等が予め停止時に凍結防止制御を行う旨の設定をしている場合や、ユーザや作業員等の操作を通じて凍結防止制御を行う旨の指示があった場合に、ONと判断される。
【0029】
凍結防止制御信号がONである場合(S1:YES)、処理はステップS4に移行する。凍結防止制御信号がONでない場合(S1:NO)、制御装置30は、吸収式冷凍機1の運転を停止してから所定時間経過したかを判断する(S2)。所定時間が経過していない場合(S2:NO)、経過したと判断されるまで、この処理が繰り返される。
【0030】
所定時間が経過した場合(S2:YES)、制御装置30は、外気温センサTからの信号に基づいて外気温が所定温度以下であるかを判断する(S3)。外気温が所定温度以下でない場合(S3:NO)、処理はステップS2に移行する。
【0031】
一方、外気温が所定温度以下である場合(S3:YES)、制御装置30は、図3に示すように、冷媒ポンプP3をONすると共に、冷媒切替弁V2を開動作させる(S4)。これにより、図3に示すように、まず蒸発器13内の液冷媒が吸収器14内に移送されて水位が減少していくこととなる。
【0032】
再度、図2を参照する。制御装置30は、冷媒ポンプP3をONし、冷媒切替弁V2を開動作させた後(S4の後)、冷媒ポンプP3の運転開始から第1規定時間経過したかを判断する(S5)。第1規定時間が経過していない場合(S5:NO)、第1規定時間経過したと判断されるまで、この処理が繰り返される。
【0033】
一方、第1規定時間経過した場合(S5:YES)、制御装置30は、図4に示すように、濃溶液ポンプP1及び稀溶液ポンプP2をONすると共に、溶液切替弁V1を開動作させる(S6)。これにより、制御装置30は、吸収器14内の吸収液を蒸発器13内に送り込むこととなり、凍結防止が図られることとなる。なお、吸収液が蒸発器13内に送り込まれる過程においても、冷媒ポンプP3はONしており、且つ冷媒切替弁V2が開状態となっていることから、蒸発器13内における液体量は比較的少ないままの状態を維持する。
【0034】
その後、制御装置30は、濃溶液ポンプP1及び稀溶液ポンプP2の運転開始から第2規定時間経過したかを判断する(S7)。第2規定時間が経過していない場合(S7:NO)、第2規定時間経過したと判断されるまで、この処理が繰り返される。
【0035】
一方、第2規定時間経過した場合(S7:YES)、制御装置30は、全ポンプP1~P3を停止すると共に、全切替弁V1,V2を閉動作せる(S8)。その後、図2に示す処理は終了する。
【0036】
このようにして、本実施形態に係る吸収式冷凍機1によれば、運転停止後において溶液切替弁V1を開き稀溶液ポンプP2(更には濃溶液ポンプP1)を運転させることで、蒸発器13内の液冷媒を吸収液と混合させる。このため、液冷媒と吸収液とが混合して液体の凝固点が下がることとなり、蒸発器13内の液体が凍結し難くなる。さらに、運転停止後において、溶液切替弁V1を開き稀溶液ポンプP2を運転させるのに先立って、冷媒切替弁V2を開き冷媒ポンプP3を運転させるため、まず蒸発器13内における冷媒量を少なくすることとなる。この結果、蒸発器13内における液冷媒に対して混合させる吸収液量を少なくすることが可能となり、再起動時には蒸発器13内の少量の混合液を液冷媒に置換させるだけでよく、再起動に要する時間を短縮させることができる。従って、長期停止中における凍結を防止すると共に、再起動時により短い時間で液冷媒に置換することができる。
【0037】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。さらに、可能な範囲で公知又は周知の技術を組み合わせてもよい。
【0038】
例えば、上記実施形態において循環配管L8のうち第2分岐配管L10が接続される部位よりも下流側の位置に別途制御弁を設け、図2に示すステップS4の処理においてこの制御弁を閉じるようにしてもよい。
【0039】
また、蒸発器13に水位センサを設け、図2に示すステップS5の処理において水位が所定水位以下となったときに図2に示すステップS6の処理に移行するようにしてもよい。
【0040】
さらには、外気温センサTからの信号に基づいて外気温が低くなるほど、水位センサにより検出される水位が低くなるように制御してもよい。すなわち、外気温が低くなるほどステップS5の第1規定時間が長くなるようにしてもよい。
【0041】
また、本実施形態において再生器11は熱媒により稀溶液を加熱している。しかし、これに限らず、再生器11は、可燃性ガスを燃料としたガスバーナーや木質ペレットを燃料としたペレットバーナーにより稀溶液を加熱してもよいし、更には高温の排ガス等を利用して稀溶液を加熱してもよい。
【0042】
さらに、本実施形態に係る吸収式冷凍機1は稀溶液と濃溶液とを熱交換する熱交換器20を備えているが、特にこれに限らず、熱交換器20を備えていなくともよい。
【0043】
加えて、本実施形態においては、室内機等に冷水を供給する吸収式冷凍機1を例に説明しているが、特にこれに限らず、室内機等に温水を供給可能な吸収式冷温水機に適応されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 :吸収式冷凍機
10 :冷凍サイクル部
11 :再生器
12 :凝縮器
13 :蒸発器
14 :吸収器
30 :制御装置(制御手段)
L9 :第1分岐配管(第1供給流路)
L10 :第2分岐配管(第2供給流路)
P2 :稀溶液ポンプ(第1ポンプ)
P3 :冷媒ポンプ(第2ポンプ)
V1 :溶液切替弁(第1制御弁)
V2 :冷媒切替弁(第2制御弁)
図1
図2
図3
図4