(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019585
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】重金属含有土壌の不溶化剤及び不溶化方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20230202BHJP
B09C 1/08 20060101ALI20230202BHJP
C09K 17/06 20060101ALI20230202BHJP
C09K 17/08 20060101ALI20230202BHJP
C09K 17/02 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C09K3/00 S
B09C1/08 ZAB
C09K17/06 H
C09K17/08 H
C09K17/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124415
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000189464
【氏名又は名称】上田石灰製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】古田 貴之
【テーマコード(参考)】
4D004
4H026
【Fターム(参考)】
4D004AA41
4D004AB03
4D004AC07
4D004CA34
4D004CC06
4D004DA03
4D004DA10
4H026AA01
4H026AA06
4H026AB04
(57)【要約】
【課題】ゲル化剤などを必要とせず不溶化効果が高い重金属不溶化剤及びそれを用いた重金属不溶化方法を提供する。
【解決手段】20~50重量%の酸化マグネシウム、10~20重量%の酸化カルシウム、20~50重量%の硫酸カルシウム、5~15重量%の二酸化ケイ素及び7~11重量%の酸化アルミニウムで各成分の合計が100重量%となる重金属不溶化剤及びその重金属不溶化材を重金属の汚染土壌に5%添加混合して汚染土壌を不溶化する方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、二酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを含有することを特徴とする重金属不溶化剤。
【請求項2】
請求項1に記載の重金属不溶化剤において、
前記酸化マグネシウムは20~50重量%、前記酸化カルシウムは10~20重量%、前記硫酸カルシウムは20~50重量%、前記二酸化ケイ素は5~15重量%、前記酸化アルミニウムは7~11重量%の含有量であることを特徴とする重金属不溶化剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の重金属不溶化剤を、重金属を含む土壌に対して2.5~5重量%添加・混合することによって前記土壌に含まれる重金属を不溶化することを特徴とする重金属不溶化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土壌に含まれる鉛、カドミウム、ヒ素、六価クロムなどの重金属を不溶化するために用いられる重金属不溶化剤及び重金属の不溶化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
六価クロムなどの重金属は生体に対して毒性を有するものが多く、かつ、生体に蓄積されるという特性がある。したがって、そのような重金属で汚染された土壌を処理し、生体に害を与えないようにすることが求められている。
【0003】
従来、重金属汚染土壌の処理方法としては、汚染地から汚染土壌そのものを除去してしまう方法や汚染土壌から重金属の拡散を防止する方法がある。
ところが、汚染土壌そのものを除去する方法は費用が大きくなるとともに除去した土壌の保管・管理が困難であるという問題がある。汚染土壌から重金属の拡散を防止する方法では、汚染土壌に薬剤を加えて化学的に処理し、汚染土壌から重金属が溶出することを防止するものである。例えば、キレート剤などの金属補足剤を用いて土壌中の重金属をキレート中に固定する方法、硫黄による還元作用を利用する方法、石灰を投入して土壌のpHを中和し、重金属を不活性化する方法、リン酸質肥料を投入して重金属を難溶化する方法などがあるが、何れも不十分な効果しか得られていない。
【0004】
これに対し、コロイダルシリカ、及び、タンニン酸、アミン酸、ジフェノール類の中から選ばれる少なくとも1種のキレート剤を含有する重金属不溶化剤を使用して、汚染土壌を無毒化できるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に記載の発明では、重金属不溶化剤とともにゲル化剤を用いてサンドゲルを作成することによって不溶化性能を向上させており、使い勝手が悪いという課題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、ゲル化剤などを必要とせず不溶化効果が高い重金属不溶化剤及びそれを用いた重金属不溶化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。なお、本欄における括弧内の参照符号や補足説明等は、本発明の理解を助けるために、後述する実施例との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0009】
[適用例1]
適用例1に記載の発明は、
少なくとも、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、二酸化ケイ素及び酸化アルミニウムを含有することを要旨とする重金属不溶化剤である。
【0010】
このような重金属不溶化剤は、各成分を粉末として混合し、その混合したものを重金属の汚染土壌に添加混合することにより汚染土壌の重金属を不溶化できる。つまり、ゲル化剤などを必要とせず不溶化効果が高い重金属不溶化剤とすることができる。
【0011】
[適用例2]
適用例2に記載の重金属不溶化剤は、適用例1に記載の重金属不溶化剤において、
前記酸化マグネシウムは20~50重量%、前記酸化カルシウムは10~20重量%、前記硫酸カルシウムは20~50重量%、前記二酸化ケイ素は5~15重量%、前記酸化アルミニウムは7~11重量%の含有量であることを要旨とする。
【0012】
各成分の構成比率をこのようにすることにより、より不溶化効率の高い重金属不溶化剤とすることができる。
【0013】
[適用例3]
適用例3に記載の発明は、
適用例1に記載の重金属不溶化剤を、重金属を含む土壌に対して2.5~5重量%添加・混合することによって前記土壌に含まれる重金属を不溶化することを要旨とする重金属不溶化方法である。
【0014】
このような重金属不溶化方法により、重金属汚染土壌を効率よく不溶化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】従来の各重金属不溶化剤及び本発明に係る重金属不溶化剤の模擬土に対する重金属溶出試験の結果を示す図である。
【
図3】本発明に係る重金属不溶化剤の実際の汚染土に対する重金属溶出試験の結果を示す図である。
【
図4】本発明に係る重金属不溶化剤の模擬土に対する添加量を2.5重量%とした場合の重金属溶出試験の結果を示す図である。
【
図5】基本組成の重金属不溶化剤以外の組成を有する重金属不溶化剤示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が適用された実施例について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施の形態は、下記の実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0017】
[重金属不溶化剤の基本組成]
図1及び
図2に基づき、重金属不溶化剤の基本組成とその効果について説明する。
図1は、本発明に係る重金属不溶化剤の基本組成と従来の市販品重金属不溶化剤の組成を示す図である。また、
図2は、重金属不溶化剤を汚染土壌に使用した場合の金属溶出試験結果を示す図である。
【0018】
図1に示すように、本発明を適用した重金属不溶化剤の基本組成は、酸化マグネシウム(MgO):40重量%、酸化カルシウム(CaO):15重量%、硫酸カルシウム(CaSO
4):25重量%、二酸化ケイ素(SiO
2):10重量%、酸化アルミニウム(Al
2O
3):10重量%を含有している。なお、以下、この基本組成を有する重金属不溶化剤を単に不溶化剤0とも呼ぶ。
【0019】
また、比較例として、従来の重金属不溶化剤である他メーカの市販品(以下、単に市販品とも呼ぶ)の組成を示している。
【0020】
[重金属不溶化方法]
次に、上述の不溶化剤0を用いた重金属不溶化方法について説明する。重金属不溶化方法は、重金属を含有する汚染度に不溶化剤0を5重量%添加混合するだけである。
ここで、不溶化剤0を汚染土に添加混合したものについて溶出試験を行った結果について説明する。なお、汚染土壌としては、試薬を添加した模擬土を作製し溶出試験を行った。
【0021】
図2に示すように、模擬土は、土壌に、鉛(Pb):1.1[mg/L]、カドミウム(Cd):0.05[mg/L]、ヒ素(As):2.2[mg/L]、フッ素(F):1.2[mg/L]、六価クロム(Cr6):30[mg/L]及びホウ素(B):29[mg/L]を含有させたものである。なお、模擬土に添加した試薬の成分の量は、実際の汚染度よりもさらに大きな含有量としてあるものもある。
【0022】
この模擬土に不溶化剤0を5重量%添加混合し、1週間放置した後、環境省告示第46号に準じて溶出試験を行った。その結果、
図2に示すように市販品に比較して、ヒ素、六価クロム及びホウ素についても優れた不溶化効果を示しており、不溶化性能は向上している。
【0023】
次に、
図3に基づいて、不溶化剤0を実際の汚染土に添加混合した場合の溶出試験の結果ついて説明する。
図3は、不溶化剤0の実際の汚染土に対する重金属溶出試験の結果を示す図である。
【0024】
図3に示すように、汚染土は、土壌に、鉛(Pb):0.52[mg/L]、カドミウム(Cd):0.05[mg/L]、ヒ素(As):0.16[mg/L]、フッ素(F):1.4[mg/L]、六価クロム(Cr6):0.35[mg/L]及びホウ素(B):2.1[mg/L]が含有しているものである。
【0025】
このような汚染土に不溶化剤0を5重量%添加混合し、1週間放置した後、環境省告示第46号に準じて溶出試験を行った。その結果、
図3に示すように、汚染土に対しては、いずれの成分も環境省の環境基準を満たしていることが分かる。
【0026】
次に、
図4に基づいて、不溶化剤0の添加量を変化させた場合の溶出試験の結果について説明する。
図4は、不溶化剤0の模擬土に対する添加量を2.5重量%とした場合の重金属溶出試験の結果を示す図である。
【0027】
図4に示すように、模擬土(
図2に示すものと同じ)に、2.5重量5の不溶化剤0を添加混合し、1週間放置したのち、環境省告示第46号に準じて溶出試験を行った。その結果、模擬土に5重量%の不溶化剤0を添加混合した場合に比べ効果は劣るものの、六価クロム(Cr6)に関しては、市販品よりも大きな効果があることが分かる。
【0028】
[その他の重金属不溶化剤の組成]
次に、
図2及び
図5に基づき、基本組成以外の組成を有する重金属不溶化剤について説明する。
図5は、重金属不溶化剤の基本組成以外の組成を示す図である。
【0029】
その他の重金属不溶化剤では、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、硫酸カルシウム(CaSO
4)、二酸化ケイ素(SiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)をそれぞれ
図5に示す重量%で含有している。なお、各重金属不溶化剤を不溶化剤1~不溶化剤8と呼んでいる。
【0030】
これら不溶化剤1~不溶化剤8についても、不溶化剤0と同様に模擬土に5重量%を添加混合し、1週間放置した後、環境省告示第46号に準じて溶出試験を行った。その結果、
図2に示すように、不溶化剤0と同様に、ヒ素、六価クロム及びホウ素に関しては環境省告示第46号の基準を満たさないものがあるが、市販品に比較して、ヒ素、六価クロム及びホウ素についても優れた不溶化効果を示しており、不溶化性能は向上している。
【0031】
以上の結果から、20~50重量%の酸化マグネシウム、10~20重量%の酸化カルシウム、20~50重量%の硫酸カルシウム、5~15重量%の二酸化ケイ素及び7~11重量%の酸化アルミニウムを合計が100重量%となるように含有させた重金属不溶化剤において不溶化効果が得られることが分かる。