(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019598
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】パーキングロックユニット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F16H 63/34 20060101AFI20230202BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
F16H63/34
B60T1/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124468
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】391064005
【氏名又は名称】株式会社アツミテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】松原 初穂
(72)【発明者】
【氏名】山下 顕
【テーマコード(参考)】
3J067
【Fターム(参考)】
3J067AA01
3J067AA21
3J067AB06
3J067AB21
3J067BA58
3J067DB32
3J067FA57
3J067FB81
3J067GA01
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で輸送性の優れたパーキングロックユニット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】車両のパーキングロック装置に組付けられるパーキングロックユニット10であって、パーキングレンジへの操作に伴い回転するディテントレバー11にパーキングロッド12が挿入されるロッド孔31が設けられ、パーキングロッド12の一端部12aに、ディテントレバー11のロッド孔31の縁部を挟んで、外周面より径方向外方に突出する一対の突起を有し、一対の突起のうち、一端部12a側の第1の突起35、36は互いに周方向に離間して2個備えられ、第1の突起35、36より他端部側の第2の突起37は1個設けられ、ロッド孔31には第2の突起37が挿通可能な溝部が1個設けられ、パーキングロッド12の第2の突起37よりも他端部側に、パーキングロッド12の外周面より径方向外方に突出して溝部を挿通不能な第3の突起43を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の変速機に備えられ、前記車両の走行輪と連動するパーキングギヤに、シフト装置におけるパーキングレンジへの操作に伴いパーキングポールを回転させて前記パーキングギヤに係止するパーキングロック装置に組付けられ、
前記変速機に回転可能に設置されるとともに、前記シフト装置における前記パーキングレンジへの操作に伴い回転するディテントレバーと、
前記ディテントレバーの回転中心から径方向に離間した位置で円柱状の一端部が回転可能に支持され、前記ディテントレバーの回転に伴い移動するパーキングロッドと、を有し、
前記パーキングロッドの他端部に、当該パーキングロッドの移動に伴い前記パーキングポールを押して回転させるカム部が装着されたパーキングロックユニットであって、
前記ディテントレバーに前記パーキングロッドの一端部が挿入されるロッド孔が設けられ、
前記パーキングロッドの前記一端部に、前記ディテントレバーの前記ロッド孔の縁部を挟んで、前記パーキングロッドの外周面より少なくとも周方向の一部が径方向外方に突出する一対の突起を有し、
前記ディテントレバーの前記ロッド孔に、前記一対の突起のうちの前記一端部側の第1の突起が挿通不能であるとともに前記他端部側の第2の突起が挿通可能な溝部が設けられ、
前記パーキングロッドの前記第2の突起よりも前記他端部側に、前記パーキングロッドの外周面より少なくとも周方向の一部が径方向外方に突出して前記溝部を挿通不能な第3の突起を備えていることを特徴とするパーキングロックユニット。
【請求項2】
前記第1の突起は互いに周方向に離間して前記第2の突起よりも多く備えられ、
前記溝部は、前記第1の突起よりも少ない個数設けられていることを特徴とする請求項1に記載のパーキングロックユニット。
【請求項3】
前記変速機に組付けられた状態で、前記第2の突起と前記溝部との前記周方向の位置が互いに異なるように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のパーキングロックユニット。
【請求項4】
前記ディテントレバーに対して前記パーキングロッドを前記ディテントレバーの長手方向に延びるように回転させた際に、前記第2の突起と前記溝部との前記周方向の位置が互いに異なるように設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のパーキングロックユニット。
【請求項5】
車両の変速機に備えられ、前記車両の走行輪と連動するパーキングギヤに、シフト装置におけるパーキングレンジへの操作に伴いパーキングポールを回転させて前記パーキングギヤに係止するパーキングロック装置に組付けられ、
前記変速機に回転可能に設置されるとともに、前記シフト装置における前記パーキングレンジへの操作に伴い回転するディテントレバーと、
前記ディテントレバーの回転中心から径方向に離間した位置で円柱状の一端部が回転可能に支持され、前記ディテントレバーの回転に伴い移動するパーキングロッドと、を有し、
前記パーキングロッドの他端部に、当該パーキングロッドの移動に伴い前記パーキングポールを押して回転させるカム部が装着されたパーキングロックユニットの製造方法であって、
前記ディテントレバーに前記パーキングロッドの一端部が挿入されるロッド孔が設けられ、
前記パーキングロッドの前記一端部に、前記ディテントレバーの前記ロッド孔の縁部を挟んで、前記パーキングロッドの外周面より周方向の一部が径方向外方に突出する一対の突起を有し、
前記ディテントレバーの前記ロッド孔に、前記一対の突起のうちの前記一端部側の第1の突起が挿通不能であるとともに前記他端部側の第2の突起が挿通可能な溝部が設けられており、
前記パーキングロッドの他端部を前記ディテントレバーの前記ロッド孔に挿通した後に、前記第1の突起と前記第2の突起との間に前記ディテントレバーを位置させるとともに、前記パーキングロッドの前記第2の突起よりも前記他端部側に前記パーキングロッドの外周面より少なくとも周方向の一部が径方向外方に突出し前記溝部を挿通不能な第3の突起を設けて、前記パーキングロックユニットを製造することを特徴とするパーキングロックユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のパーキングロック装置に使用されるパーキングロックユニットの構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機を備えた車両のパーキングロック装置は、シフトレバーやパーキングスイッチがパーキングポジションに操作された際に車両を停止状態に維持するように構成されている。
【0003】
パーキングロック装置は、例えば特許文献1に示すように、パーキングギヤとかみ合うパーキングポールと、上下方向に延びるように変速機に設けられたシャフトに回転可能に支持されたディテントレバー(ロックアーム)と、一端部がディテントレバーに支持され、他端部にパーキングポールに押し付けて揺動させるコーン(カム部)を有するパーキングロッドと、を備えている。パーキングポールは、一端部にパーキングギヤとかみ合う爪部を有し、中間部において上下方向に揺動可能に支持され、他端部の下面にコーンの上面が押し付けられるように構成されている。
【0004】
ディテントレバーは、シフトレバー等の操作によりケーブルを介して回転し、パーキングロッドを移動させる。シフトレバー等がパーキングポジションに操作されたときに、コーンによってパーキングポールの他端部を押し上げることで、パーキングポールの爪部がパーキングギヤとかみ合い、車両の逸走を規制するように構成されている。
【0005】
特許文献1では、ディテントレバーにパーキングロッドの一端部が挿入される円形のロッド孔が設けられている。また、パーキングロッドの一端部は断面が円形であって下方に屈曲しており、ディテントレバーのロッド孔に上方から挿入して係止される。
【0006】
更に、パーキングロッドの一端部には、抜け止めとして径方向に突出した突起が設けられている。ディテントレバーのロッド孔には、パーキングロッドの突起が通過可能な溝部を備えている。パーキングロッドの一端部をディテントレバーのロッド孔に挿入した際には、パーキングロッドの突起をロッド孔の溝部を通過させてからパーキングロッドをディテントレバーに対して回転させて、使用時の回転位置したときにパーキングロッドの突起がディテントレバーのロッド孔から抜けない構造にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような構成のパーキングロック装置において、一般的にディテントレバーやパーキングロッドは部品製造業者において製造される。更に、車両の組立業者においてディテントレバーやパーキングロッドの組立工数を少しでも低減させるために、部品製造業者においてディテントレバーとパーキングロッドを製造して組み合わせ、1つの部品ASSYであるパーキングロックユニットとした状態で車両の組立業者に納入する場合がある。
【0009】
しかしながら、上記のようにディテントレバーのロッド孔にパーキングロッドを挿入して連結する構造では、パーキングロックユニットの輸送時にディテントレバーのロッド孔からパーキングロッドが外れてしまう可能性がある。
【0010】
ディテントレバーのロッド孔からパーキングロッドが外れないように、ディテントレバーに対して使用時のディテントレバーの回転位置付近にして仮止めして、このパーキングロックユニットを輸送すると、ディテントレバーの長手方向に対してパーキングロッドが横方向に突出した状態になり、パーキングロックユニットの外形寸法が大きくなって輸送し難くなってしまうといった問題点がある。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、
簡単な構造でディテントレバーとパーキングロッドとを係止して構成し、輸送性の優れたパーキングロックユニット及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のパーキングロックユニットは、車両の変速機に備えられ、前記車両の走行輪と連動するパーキングギヤに、シフト装置におけるパーキングレンジへの操作に伴いパーキングポールを回転させて前記パーキングギヤに係止するパーキングロック装置に組付けられ、前記変速機に回転可能に設置されるとともに、前記シフト装置における前記パーキングレンジへの操作に伴い回転するディテントレバーと、前記ディテントレバーの回転中心から径方向に離間した位置で円柱状の一端部が回転可能に支持され、前記ディテントレバーの回転に伴い移動するパーキングロッドと、を有し、前記パーキングロッドの他端部に、当該パーキングロッドの移動に伴い前記パーキングポールを押して回転させるカム部が装着されたパーキングロックユニットであって、前記ディテントレバーに前記パーキングロッドの一端部が挿入されるロッド孔が設けられ、前記パーキングロッドの前記一端部に、前記ディテントレバーの前記ロッド孔の縁部を挟んで、前記パーキングロッドの外周面より少なくとも周方向の一部が径方向外方に突出する一対の突起を有し、前記ディテントレバーの前記ロッド孔に、前記一対の突起のうちの前記一端部側の第1の突起が挿通不能であるとともに前記他端部側の第2の突起が挿通可能な溝部が設けられ、前記パーキングロッドの前記第2の突起よりも前記他端部側に、前記パーキングロッドの外周面より少なくとも周方向の一部が径方向外方に突出して前記溝部を挿通不能な第3の突起を備えていることを特徴とする。
【0013】
また、好ましくは、前記第1の突起は互いに周方向に離間して前記第2の突起よりも多く備えられ、
前記溝部は、前記第1の突起よりも少ない個数設けられているとよい。
【0014】
また、好ましくは、前記変速機に組付けられた状態で、前記第2の突起と前記溝部との前記周方向の位置が互いに異なるように設定されているとよい。
【0015】
また、好ましくは、前記ディテントレバーに対して前記パーキングロッドを前記ディテントレバーの長手方向に延びるように回転させた際に、前記第2の突起と前記溝部との前記周方向の位置が互いに異なるように設定されているとよい。
【0016】
また、本発明のパーキングロックユニットの製造方法は、車両の変速機に備えられ、前記車両の走行輪と連動するパーキングギヤに、シフト装置におけるパーキングレンジへの操作に伴いパーキングポールを回転させて前記パーキングギヤに係止するパーキングロック装置に組付けられ、前記変速機に回転可能に設置されるとともに、前記シフト装置における前記パーキングレンジへの操作に伴い回転するディテントレバーと、前記ディテントレバーの回転中心から径方向に離間した位置で円柱状の一端部が回転可能に支持され、前記ディテントレバーの回転に伴い移動するパーキングロッドと、を有し、前記パーキングロッドの他端部に、当該パーキングロッドの移動に伴い前記パーキングポールを押して回転させるカム部が装着されたパーキングロックユニットの製造方法であって、前記ディテントレバーに前記パーキングロッドの一端部が挿入されるロッド孔が設けられ、前記パーキングロッドの前記一端部に、前記ディテントレバーの前記ロッド孔の縁部を挟んで、前記パーキングロッドの外周面より周方向の一部が径方向外方に突出する一対の突起を有し、前記ディテントレバーの前記ロッド孔に、前記一対の突起のうちの前記一端部側の第1の突起が挿通不能であるとともに前記他端部側の第2の突起が挿通可能な溝部が設けられており、前記パーキングロッドの他端部を前記ディテントレバーの前記ロッド孔に挿通した後に、前記第1の突起と前記第2の突起との間に前記ディテントレバーを位置させるとともに、前記パーキングロッドの前記第2の突起よりも前記他端部側に前記パーキングロッドの外周面より少なくとも周方向の一部が径方向外方に突出し前記溝部を挿通不能な第3の突起を設けて、前記パーキングロックユニットを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、パーキングロッドの一対の突起の間にディテントレバーを挟むように位置した状態で、ディテントレバーに対してパーキングロッドの一端部が回転可能に支持される。また、パーキングロッドの第1の突起及び第3の突起によって、ディテントレバーからパーキングロッドが抜け落ちることを防止することも可能になる。
【0018】
更に、ディテントレバーに対してパーキングロッドを適宜回転させて、パーキングロックユニット全体の大きさを極力小さくすることができる。これにより、パーキングロックユニットの輸送性を向上させることができる。
【0019】
また、ディテントレバーのロッド孔に、他端部側からパーキングロッドを挿入した後に、第1の突起及び第2の突起によってディテントレバーを挟むように位置させて、パーキングロッドの他端部に第3の突起を設けることで、パーキングロックユニットを容易に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態のパーキングロックユニットの配置例を示すパーキングロック装置の構造図である。
【
図2】第1実施形態のパーキングロックユニットの構成を示す後面図である。
【
図3】第1実施形態のパーキングロックユニットのディテントレバーの上面図である。
【
図4】第1実施形態のパーキングロックユニットのパーキングロッドの側面図である。
【
図5】変速機への組み付け後での第1実施形態のパーキングロックユニットの形態を示す上面図である。
【
図6】輸送時での第1実施形態のパーキングロックユニットの形態を示す上面図である。
【
図7】第1実施形態におけるディテントレバーとパーキングロッドとの支持部の回転位置関係を示す説明図である。
【
図8】パーキングロックユニットの製造方法を示す作業工程図である。
【
図9】第2実施形態のパーキングロックユニットにおけるパーキングロッドの側面図である。
【
図10】第3実施形態のパーキングロックユニットの構成を示す後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態のパーキングロックユニット10の配置例を示すパーキングロック装置2の構造図である。
図2は、第1実施形態のパーキングロックユニット10の構成を示す後面図である。
図3は、第1実施形態のパーキングロックユニット10のディテントレバー11の上面図である。
図4は、第1実施形態のパーキングロックユニット10のパーキングロッド12の側面図である。
図5は、変速機1への組付けた状態での第1実施形態のパーキングロックユニット10の形態を示す上面図である。
図6は、輸送時での第1実施形態のパーキングロックユニット10の形態を示す上面図である。
図7は、第1実施形態におけるディテントレバー11とパーキングロッド12との支持部の回転位置関係を示す説明図であり、(A)はパーキングロックユニット10を変速機1へ組み付けた状態、(B)はパーキングロックユニット10の輸送時を示している。
【0023】
図1に示すように、本発明の第1実施形態のパーキングロックユニット10は、車両に備えられたパーキングロック装置2の部品の一部である。パーキングロック装置2は、変速機1の変速用のシフトレバー3等がパーキングポジションに操作されたときに、車両の走行駆動軸を回転不能にロックして、車両の逸走を防止する装置である。なお、パーキングロック装置2は、シフトレバー3以外にもダイヤル式のスイッチでシフトレンジを選択するシフト装置に備えられたものでもよいし、スイッチによりパーキングポジションを選択するものでもよい。
【0024】
変速機1は、例えばCVT(無段変速機)であり、車両の走行輪に連結された駆動軸4が車幅方向(左右方向)に延びるように配置されている。
【0025】
なお、以降の説明で、パーキングロックユニット10を含む変速機1が車両に搭載された状態で、車幅方向を左右方向とし、車両前後方向を前後方向として説明する。
【0026】
パーキングロック装置2は、ディテントレバー11及びパーキングロッド12を有するパーキングロックユニット10と、変速機1内の駆動軸4に備えられたパーキングギヤ5と、パーキングポール6と、を備えて構成されている。
【0027】
パーキングポール6は、一端部にパーキングギヤ5とかみ合う爪部6aを有し、中間部において上下方向に変速機1のケースに揺動可能に支持されている。パーキングポール6の他端部の下方には、パーキングロッド12に設けられた後述するコーン40(カム部)の下面を支持するホルダ部6bが備えられている。ホルダ部6bは、変速機1に固定されている。
【0028】
パーキングポール6は、パーキングポール付勢用スプリング7によって爪部6aがパーキングギヤ5にかみ合わないように遠ざかる方向に付勢されている。パーキングロッド12が左方に移動することで、ホルダ部6bにパーキングロッド12のコーン40が乗り上げて、パーキングポール6の他端部の下面をコーン40が押し上げる。これにより、パーキングポール6は、パーキングポール付勢用スプリング7の付勢力に抗して揺動し、一端部が下方に移動して爪部6aがパーキングギヤ5とかみ合い、パーキングギヤ5の回転を規制して、車両の車輪に連結された駆動軸4を回転不能にロックする。
【0029】
パーキングロックユニット10は、変速機1の前部に配置されている。
【0030】
図1~4に示すように、ディテントレバー11は、シャフト8が挿入されるボス部20と、ボス部20の下部から径方向に外方に延びる板状のディテント部21及びロッド支持部22と、を備えている。ボス部20はシャフト8に固定されている。シャフト8は、変速機1に上下方向に延びる軸心回りを回転可能に設置されている。シャフト8にはスプライン雄歯23が設けられている。スプライン雄歯23には、モータ9の出力軸に形成されたスプライン雌歯が嵌合する。シフトレバー3の操作がセンサで検出され、その検出結果に応じてシャフト8とスプライン結合するモータ9がディテントレバー11を所定角度回転させる構造になっている。なお、ボス部20に代えて、スプライン雄歯23が形成されたシャフト部材(シャフト8に相当)をディテントレバー11に設け、当該シャフト部材を変速機1に回転可能に設置しても良い。
【0031】
ディテントレバー11のディテント部21は、上方から視て略扇形に形成されており、径方向外方端部に凹凸部30が設けられている。この凹凸部30には、図示しないディテントスプリングが付勢されて押し付けられ、ディテントレバー11の回転位置を、シフトレバー3の各シフト位置(変速段)に対応した回転位置で規定する機能を有する。
【0032】
ロッド支持部22は、ディテント部21と一体的に形成されている。ロッド支持部22の先端部には、パーキングロッド12が挿入されるロッド孔31が設けられている。また、ロッド孔31の周方向の一部が径方向外方に突出して、溝部32が設けられている。溝部32は、ボス部20の軸線に向かうように伸びている。なお、溝部32の延びる方向は、変速機の構成、仕様に応じていずれの方向であってもよい。また、溝部32は、後述するパーキングロッド12の第1の突起35、36及び第3の突起43が挿通不能であるとともに第2の突起37が挿通可能に構成されている。
【0033】
パーキングロッド12は、ロッド支持部22のロッド孔31に挿入可能な丸棒を中間部12cで垂直に屈曲して形成されている。パーキングロッド12の一端部12a(一端近傍)には、ロッド孔31からの抜け止めとして径方向外方に突出した突起が設けられている。この突起は、パーキングロッド12の一端に近接した位置に設けられた2個の第1の突起35、36と、第1の突起35、36に対して他端部12b側に離間して配置された1個の第2の突起37と、を有する。
【0034】
第1の突起35、36は、パーキングロッド12の軸方向位置が同一であって、周方向位置が互いに異なって配置されている。例えば、第1の突起35、36は、パーキングロッド12の軸心を挟んで配置されている。
【0035】
第2の突起37は、第1の突起35、36と、パーキングロッド12の軸方向の間隔が、ロッド支持部22のロッド孔31の縁部の板厚よりわずかに大きく設定されている。
【0036】
パーキングロッド12の他端部12b(他端近傍)には、コーン40とスプリング41とが装着されている。
【0037】
コーン40は、中心部にパーキングロッド12が移動可能に挿入された円柱状の部材であり、外周面にテーパー部42が形成されている。テーパー部42は、パーキングロッド12の一端部12a側よりも他端部12b側の外径(径方向寸法)が小さくなるように形成されている。
【0038】
スプリング41は、圧縮コイルばねであり、パーキングロッド12が挿入され、コーン40の一端部12a側の側面に接触して配置されている。コーン40とスプリング41は、パーキングロッド12に軸方向に互いに離間して配置された一対の突起(第3の突起43、第4の突起44)の間に配置されている。第3の突起43及び第4の突起44は、パーキングロッド12の外周面からその少なくとも一部が夫々径方向外方に突出したものである。
【0039】
コーン40は、スプリング41によって他端部12b側に強く付勢されるが、他端部12b側の突起である第4の突起44によってそれ以上の他端部12b側への移動が規制されている。
【0040】
以上のような構成のパーキングロックユニット10を変速機1に組み付けた状態では、シフトレバー3が操作されることで、モータ9の作動によりディテントレバー11がシャフト8の軸心を回転中心として回転する。
【0041】
ディテントレバー11の回転により、詳しくはシフトレバー3がパーキングレンジに操作されたときに、ディテントレバー11のロッド支持部22がシャフト8に対して右方に延びた位置から左方側に回転することで、ロッド支持部22の先端部に支持されたパーキングロッド12が左方に移動する。これにより、パーキングロッド12の他端部12bに備えられたコーン40のテーパー部42が、ホルダ部6bに乗り上げてパーキングポール6の他端部の下面に当接し、パーキングポール6の他端部を押し上げる。これにより、パーキングポール6の一端部が下方に移動して、爪部6aがパーキングギヤ5とかみ合い、駆動軸4の回転を規制する。
【0042】
なお、シフトレバー3がパーキングレンジに操作されて、パーキングロッド12が左方に移動しようとしたときに、パーキングポール6の爪部6aが、ちょうどパーキングギヤ5とかみ合わない位置であった場合、パーキングポール6が回転できない状態となる。この状態のとき、コーン40がスプリング41によってパーキングポール6の側面に押し付けられた状態で待機する。車両が少し動いてパーキングギヤ5が回転すると、スプリング41によってコーン40がホルダ部6bに乗り上げて、パーキングポール6の他端部を押し上げることで、パーキングポール6の爪部6aがパーキングギヤ5にかみ合う。
【0043】
次に、
図5~
図7を用いて、パーキングロックユニット10の変速機1に組付けられた
状態での形態と、輸送時における形態とについて説明する。
【0044】
図5及び
図7(A)に示すように、パーキングロックユニット10が変速機1に組付けられた状態、即ち変速機1の使用時では、ディテントレバー11のロッド支持部22が略右方に向かうように回転位置が設定されている。これに対し、パーキングロッド12は、他端部12b側が左方に延びるように配置されている。
【0045】
パーキングロックユニット10は、変速機1に組付けられた状態では、第1の突起35、36、第2の突起37は、ロッド孔31の溝部32の延びる方向に対して略90度回転した位置で径方向外方に延びるように配置されている。したがって、この状態でディテントレバー11のロッド孔31からパーキングロッド12を軸方向に引き抜こうとしても、パーキングロッド12の突起35、36、37がロッド孔31の縁部に引っ掛かって抜けない構造になっており、更にはディテントレバー11に対するパーキングロッド12の軸方向への移動も規制される。
【0046】
図6及び
図7(B)に示すように、パーキングロックユニット10の輸送時では、パーキングロッド12の他端部12bがディテントレバー11の凹凸部30側に向かって延びるように、ディテントレバー11に対するパーキングロッド12の回転位置とする。このように、ディテントレバー11の長手方向に近い方向にパーキングロッド12が回転した状態に位置することで、ディテントレバー11及びパーキングロッド12を含むパーキングロックユニット10全体を小さくすることができる。
【0047】
パーキングロックユニット10の輸送時では、第1の突起36がロッド孔31の溝部32の延びる方向に対して約45度回転した位置とする。また、第1の突起35及び第2の突起37も、ロッド孔31の溝部32と異なる回転位置となっている。したがって、パーキングロックユニット10の輸送時においても、ディテントレバー11のロッド孔31からパーキングロッド12を軸方向に引き抜けない構造になっており、ディテントレバー11に対するパーキングロッド12の軸方向への移動も規制される。
【0048】
なお、パーキングロックユニット10の輸送時におけるディテントレバー11に対する第1の突起36の回転位置は、組付け後におけるディテントレバー11に対する第1の突起36の回転位置に対して、ロッド孔31の溝部32を挟んで反対側に位置する。
【0049】
ここで、
図8を用いてパーキングロックユニット10の製造方法について説明する。
図8は、パーキングロックユニット10の製造工程を示す説明図であり、(A)は従来例、(B)は、後述する第2実施形態のパーキングロックユニット10、(C)は、第1実施形態のパーキングロックユニット10の製造工程を示す。
【0050】
パーキングロックユニット10に関しては、例えばパーキングロックユニット10の各部品を製造する部品製造業者、パーキングロッド12を最終製造する1次製造業者、パーキングロックユニット10を組み立てる2次製造業者、パーキングロックユニット10を変速機1に組み付ける3次製造業者(車両の組立業者)があるものとする。
【0051】
図8の(C)に示すように、第1実施形態のパーキングロックユニット10を製作する場合、始めに部品製造業者において、パーキングロックユニット10の部品として、ディテントレバー11と、パーキングロッド12と、コーン40と、スプリング41とを用意する。なお、部品製造業者においては、切断、面取等後の屈曲前の丸棒状態のパーキングロッド12を用意する。
【0052】
次に、1次製造業者では、例えばプレスにより、丸棒状態のパーキングロッド12を中間部12cで略垂直に屈曲するとともに、第1の突起35、36及び第2の突起37を形成する。但し、1次製造業者では第3の突起43及び第4の突起44は形成しない。
【0053】
次に、2次製造業者において、この第3の突起43及び第4の突起44が形成されていないパーキングロッド12を、ディテントレバー11のロッド孔31に、他端部12b側から挿入する。
【0054】
パーキングロッド12をロッド孔31に中間部12cを超えて挿入し、第2の突起37をロッド孔31の溝部32に通過させ、ディテントレバー11のロッド支持部22を第1の突起及35、36と第2の突起37との間に位置させる。
【0055】
次に、他端部12b側からパーキングロッド12にスプリング41及びコーン40の順番に挿入し、スプリング41及びコーン40を挟んだ2箇所でプレス等によりパーキングロッド12を押圧して第3の突起43及び第4の突起44を形成する。
【0056】
これにより、2次製造業者において、パーキングロックユニット10が完成される。パーキングロックユニット10は、完成後においてもディテントレバー11に対してパーキングロッド12が回転可能であるが、ディテントレバー11とパーキングロッド12とは離脱しない構成になっている。パーキングロックユニット10は、完成した状態で3次製造業者に輸送される。そして、3次製造業者において、変速機1にパーキングロックユニット10が組み付けられる。
【0057】
これに対し、例えば従来では、パーキングロッド12の一対の突起のうち一端部12a側の第1の突起(35、36のいずれか)を1個とし、第2の突起37を2個としている。
【0058】
そして、
図8(A)に示すように、2次製造業者において、パーキングロッド12にスプリング41及びコーン40を組付けて、パーキングロッド12を完成させる。なお、従来では、ディテントレバー11のロッド孔31に、一端部12a側からパーキングロッド12を挿入した後に、他端部12b側からスプリング41、コーン40を挿入して、パーキングロッド12の他端部にストッパを溶接等で固定してコーン40の抜け止めを設ける。
【0059】
そして、スプリング41やコーン40が装着されたパーキングロッド12を3次製造業者に輸送し、3次製造業者においてこのパーキングロッド12と別に入手したディテントレバー11とを組み付けるとともに、変速機1に組み付ける作業が行われる。
【0060】
したがって、本実施形態のパーキングロックユニット10を
図8(C)に示す製造方法で組み立てると、
図8(A)に示す従来例と比較して、3次製造業者においてディテントレバー11に対してパーキングロッド12を組み付ける工数を省略することができる。また、パーキングロッド12の他端部にストッパを設ける必要がないので、部品点数の削減を図ることができるとともに、3次製造業者における製造コストを大幅に低減させることができる。
【0061】
以上のように、本発明の第1実施形態のパーキングロックユニット10は、車両のパーキングロック装置2に使用されるユニットであって、シフトレバー3の操作に伴い回転するディテントレバー11と、ディテントレバー11の回転に伴い径方向に移動するパーキングロッド12と、パーキングロッド12の他端部12bに支持されたコーン40と、が備えられている。そして、ディテントレバー11に設けられたロッド孔31に、円柱状のパーキングロッド12が挿入されることで、ディテントレバー11とパーキングロッド12とが回転可能に係止されている。
【0062】
また、パーキングロッド12の一端部12aに、ディテントレバー11のロッド孔31の縁部を挟んで一対の突起(第1の突起35、36と、第2の突起37)が設けられているので、ディテントレバー11に対するパーキングロッド12の軸方向の位置決めがされる。これにより、簡単な構造でディテントレバー11とパーキングロッド12とが回転可能に係止され、パーキングロックユニット10を簡単な構造にできる。
【0063】
更に、ディテントレバー11に対してパーキングロッド12を適宜回転させて、パーキングロックユニット10全体の大きさを極力小さくすることができる。これにより、パーキングロックユニット10の輸送性を向上させることができる。
【0064】
また、ディテントレバー11のロッド孔31に、他端部12b側からパーキングロッド12を挿入し、第1の突起35、36と第2の突起37との間にディテントレバー11を挟むように位置させてから、パーキングロッド12の他端部12bにコーン40を装着することで、パーキングロックユニット10を容易に製造することが可能である。
【0065】
ここで、パーキングロックユニット10の一端部12aに設けられた第1の突起35、36は2個であり、ディテントレバー11のロッド孔31に設けられた溝部32は1個であるので、ディテントレバー11に対してパーキングロッド12が如何なる回転位置であっても、ロッド孔31からパーキングロッド12が一端部12a側から抜けることはない。また、パーキングロッド12に設けられた第3の突起43によって、ロッド孔31からパーキングロッド12が他端部12b側から抜けることもない。
【0066】
また、パーキングロックユニット10は、変速機1に組付けられた状態で、第1の突起35、36及び第2の突起37と溝部32との回転位置(周方向の位置)が互いに異なるように設定されている。これにより、変速機1の使用状態で、例えば車両の悪路走行時のように上下方向に振動したとしても、第1の突起35、36あるいは第2の突起37とディテントレバー11のロッド孔31の縁部とが係止され、ディテントレバー11に対するパーキングロッド12の軸方向の移動を規制することができる。
【0067】
また、ディテントレバー11に対してパーキングロッド12をディテントレバー11の長手方向に延びるように回転させた際にも、第2の突起37と溝部32との周方向の位置が互いに異なるように設定されているので、輸送時においてディテントレバー11とパーキングロッド12とをこのような回転位置にすることで、例え振動を受けたとしても第1の突起35、36あるいは第2の突起37とディテントレバー11のロッド孔31の縁部とが係止され、ディテントレバー11に対するパーキングロッド12の軸方向の移動を規制することができる。これにより、輸送時においてディテントレバー11に対するパーキングロッド12の挿入状態を維持させることができ、その後の変速機1への組付けを容易にできる。
【0068】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の第1実施形態では、パーキングロッド12の他端部12b側に第4の突起44を設けることで、コーン40の他端部12b方向への移動を規制しているが、
図9に示すように、この第4の突起44の代わりに上記の従来例と同様にストッパ55をパーキングロッド12の他端部12bに固定した構造にしてもよい。
【0069】
この第2実施形態のパーキングロックユニット10では、ストッパ55は中心部にパーキングロッド12が挿入される円柱形状であって、外径がコーン40の他端部側の外形よりも小径に形成されている。
【0070】
図8(B)に示すように、2次製造業者において、パーキングロッド12にコーン40を挿入した後に、パーキングロッド12の他端部12bにストッパ55を挿入し、パーキングロッド12の他端部12bとストッパ55の側面とを例えば溶接によって固定する。これにより、ストッパ55によってコーン40の他端部12b側への移動が規制される。
【0071】
このような構成では、上記の第1実施形態に対してストッパ55が追加され、パーキングロッド12とストッパ55との溶接が必要となるので、上記実施形態よりも2次製造業者において工数及びコストが増加する可能性がある。しかしながら、上記第1実施形態と同様に、パーキングロッド12をディテントレバー11に係止したパーキングロックユニット10を3次製造業者に納入することができ、3次製造業者において製造コストの削減を図ることができる。
【0072】
また、上記実施形態では、モータ9によってディテントレバー11を作動させる、所謂シフトバイワイヤー方式の変速機1に本発明を適用しているが、ケーブルによってディテントレバー11を作動させる変速機にも本発明を適用できる。
【0073】
例えば、
図10に示すように、第3実施形態のパーキングロックユニット10では、ディテントレバー11のボス部20はシャフト8に固定され、シャフト8が変速機に対して回転可能に設置される。シャフト8には、ボス部20の上部に隣接して、ケーブル係止部材24が固定されている。ケーブル係止部材24には、シャフト8の径方向外方に延びるアーム部25が設けられ、アーム部25の先端部にシフト装置のシフトレバー3から延びるケーブル26が係止されている。したがって、シフトレバー3の操作により、ケーブル26、ケーブル係止部材24を介して、ディテントレバー11が所定角度内で回転する構造になっている。なお、ボス部20に代えて、シャフト8に相当するシャフト部材をディテントレバー11に設け、当該シャフト部材にケーブル係止部材24を固定するとともに、シャフト部材を変速機に回転可能に設置しても良い。
【0074】
なお、上記の各実施形態において、各種部品の詳細な構造については適宜変更することができる。また、ディテントレバー11のロッド支持部22に対してパーキングロッド12が上方に位置するように、即ちロッド支持部22に対するパーキングロッド12の挿入方向が上記実施形態とは逆方向の構成でもよい。
【0075】
また、パーキングロッド12に設けられた第1の突起35、36を2個よりも多く設けてもよいし、全周に亘って径方向外方に突出させてもよい。あるいは、第1の突起35、36と第2の突起37の数が同じで、第1の突起35、36を、ディテントレバー11のロッド孔31の溝部32を通過できない大きさにしてもよい。第2の突起37についても、ディテントレバー11のロッド孔31の溝部32の個数及び周方向位置に合わせて、即ちロッド孔31の溝部32を第2の突起37が通過できるように複数個設けてもよい。
【0076】
また、変速機1に対するパーキングロックユニット10の設置箇所や設置方向等も変更してもよい。本発明は、CVTの他、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)、AT(自動変速機)にも適用できる。また、EV(電気自動車)の減速機のパーキングロック装置にも適用できる。本発明は、車両のパーキングロック装置に使用されるパーキングロックユニットに対して広く適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 変速機
2 パーキングロック装置
3 シフトレバー
5 パーキングギヤ
6 パーキングポール
8 シャフト
10 パーキングロックユニット
11 ディテントレバー
12 パーキングロッド
31 ロッド孔
32 溝部
35、36 第1の突起
37 第2の突起
43 第3の突起
40 コーン(カム部)
【手続補正書】
【提出日】2021-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】