(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000196
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 125/10 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
C09J125/10
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100881
(22)【出願日】2021-06-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-21
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 良都
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040DM011
4J040JA01
4J040JB01
4J040KA26
4J040LA06
4J040LA08
4J040NA05
4J040NA10
4J040PB05
(57)【要約】
【課題】優れた剥離強度を有し、且つ、高温で長時間加熱して溶融させた場合でも、優れた剥離強度を維持することができるホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】熱可塑性エラストマー(A)と、粘着付与剤(B)とを含むホットメルト接着剤であって、
前記粘着付与剤(B)が、ロジン系粘着付与剤及び/又はテルペン系粘着付与剤を含有し、
該粘着付与剤(B)の酸価が、15mgKOH/g以下であり、
160℃で72時間保持後に、測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で測定された温度23℃における経時後の貯蔵弾性率G’が350,000Pa以下;及び
160℃で72時間保持後に、測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で測定された温度23℃における経時後の損失弾性率G’’が800,000Pa以下;
の少なくとも一方を満たす、ホットメルト接着剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマー(A)と、粘着付与剤(B)とを含むホットメルト接着剤であって、
前記粘着付与剤(B)が、ロジン系粘着付与剤及び/又はテルペン系粘着付与剤を含有し、
前記粘着付与剤(B)の酸価が、15mgKOH/g以下であり、
160℃で72時間保持後に、測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で測定された温度23℃における経時後の貯蔵弾性率G’が350,000Pa以下;及び
160℃で72時間保持後に、測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で測定された温度23℃における経時後の損失弾性率G’’が800,000Pa以下;
の少なくとも一方を満たす、ホットメルト接着剤。
【請求項2】
測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で測定された温度23℃における初期の貯蔵弾性率G’が350,000Pa以下;及び
測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で測定された温度23℃における初期の損失弾性率G’’が800,000Pa以下;
の少なくとも一方を満たす、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
前記ロジン系粘着付与剤が、ロジンエステル樹脂である、請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項4】
前記熱可塑性エラストマー(A)が、スチレン系ブロック共重合体を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
前記スチレン系ブロック共重合体が、非対称スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を含有しない、請求項4に記載のホットメルト接着剤。
【請求項6】
前記粘着付与剤(B)が、石油樹脂系の粘着付与剤及び/又は前記石油樹脂系の粘着付与剤の水素添加物を含有しない、請求項1~5のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤。
【請求項7】
吸収性物品用ホットメルト接着剤である、請求項1~6のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料を含む吸収性物品が広く使用されている。吸収性物品には、ポリオレフィン系樹脂フィルム、不織布、ティッシュ、天然ゴム等の構成部材が用いられており、これらの構成部材をホットメルト接着剤で接着することによって吸収性物品が組み立てられている。
【0003】
吸水性物品の製造に用いられるホットメルト接着剤としては、例えば、スチレン系ブロック共重合体を含むゴム系ホットメルト接着剤、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等を含むオレフィン系ホットメルト接着剤等が用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である水素添加型熱可塑性ブロック共重合体、粘着付与樹脂及び可塑剤を、所定の配合比率で含有するホットメルト接着剤が記載されている。
【0005】
特許文献2には、少なくとも1種のエチレンコポリマーを含んでなる接着剤ポリマーと、変性ロジン-テルペンとを含有するホットメルト接着剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-297441号公報
【特許文献2】特表2005-530913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のホットメルト接着剤は、水素添加型熱可塑性ブロック共重合体を含んでいるため、剥離強度が十分ではないという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に記載のホットメルト接着剤は、加熱時の熱安定性が十分ではないため、高温で長時間加熱(例えば、160℃で72時間加熱)して溶融すると、ホットメルト接着剤の劣化が進み、剥離強度が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、優れた剥離強度を有し、且つ、高温で長時間加熱して溶融させた場合でも、優れた剥離強度を維持することができるホットメルト接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の物性値を有するホットメルト接着剤を開発することに成功し、該ホットメルト接着剤を使用することにより上記課題を達成できることを見出した。本発明は、さらに研究を重ね、完成させたものである。
【0011】
本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.
熱可塑性エラストマー(A)と、粘着付与剤(B)とを含むホットメルト接着剤であって、
前記粘着付与剤(B)が、ロジン系粘着付与剤及び/又はテルペン系粘着付与剤を含有し、
前記粘着付与剤(B)の酸価が、15mgKOH/g以下であり、
160℃で72時間保持後に、測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で測定された温度23℃における経時後の貯蔵弾性率G’が350,000Pa以下;及び
160℃で72時間保持後に、測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で測定された温度23℃における経時後の損失弾性率G’’が800,000Pa以下;
の少なくとも一方を満たす、ホットメルト接着剤。
項2.
測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で測定された温度23℃における初期の貯蔵弾性率G’が350,000Pa以下;及び
測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で測定された温度23℃における初期の損失弾性率G’’が800,000Pa以下;
の少なくとも一方を満たす、項1に記載のホットメルト接着剤。
項3.
前記ロジン系粘着付与剤が、ロジンエステル樹脂である、項1又は2に記載のホットメルト接着剤。
項4.
前記熱可塑性エラストマー(A)が、スチレン系ブロック共重合体を含有する、項1~3のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤。
項5.
前記スチレン系ブロック共重合体が、非対称スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を含有しない、項4に記載のホットメルト接着剤。
項6.
前記粘着付与剤(B)が、石油樹脂系の粘着付与剤及び/又は前記石油樹脂系の粘着付与剤の水素添加物を含有しない、項1~5のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤。
項7.
吸収性物品用ホットメルト接着剤である、項1~6のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明のホットメルト接着剤は、優れた剥離強度を有し、且つ、高温で長時間加熱して溶融させた場合でも、優れた剥離強度を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態及び具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。また、本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。さら、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0015】
本明細書において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0016】
本明細書において、「A及び/又はB」並びに「A及びBの少なくとも一方」とは、A及びBのいずれか一方、又は、A及びBの両方を意味する。
【0017】
本明細書において、動的粘弾性測定とは、弾性及び粘性を併せ持つ高分子の力学的特性を分析する方法を意味する。動的粘弾性測定において、貯蔵弾性率G’(Pa)及び損失弾性率G”(Pa)が測定することが可能であり、貯蔵弾性率G’は弾性に相当する特性値であり、損失弾性率G”は粘性に相当する特性値である。
【0018】
1.ホットメルト接着剤
本発明のホットメルト接着剤は、以下の(1)、(2)、(3)及び(4)を備えている。
(1)熱可塑性エラストマー(A)と、粘着付与剤(B)とを含む。
(2)粘着付与剤(B)が、ロジン系粘着付与剤及び/又はテルペン系粘着付与剤を含有する。
(3)粘着付与剤(B)の酸価が、15mgKOH/g以下である。
(4)160℃で72時間保持後に、測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、測定される温度23℃における経時後の貯蔵弾性率G’が350,000Pa以下;及び
160℃で72時間保持後に、測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、測定される温度23℃における経時後の損失弾性率G’’が800,000Pa以下の少なくとも一方を満たす。
【0019】
本発明のホットメルト接着剤は、上述した(1)、(2)、(3)及び(4)を備えていることにより、優れた剥離強度を有し、且つ、高温で長時間加熱して溶融させた場合でも、優れた剥離強度を維持することができる。
【0020】
以下、本発明のホットメルト接着剤を、単に「本発明」又は「ホットメルト接着剤」と記載することもある。
【0021】
本発明において、動的粘弾性測定を行う際の測定装置として、例えば、ティーエーインスツルメント社製ローテェーショナルレオメーター(製品名「DHR-2」)等が挙げられる。
【0022】
本発明のホットメルト接着剤は、
160℃で72時間保持後に、測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、測定される温度23℃における経時後の貯蔵弾性率G’が200,000Pa以下;及び
160℃で72時間保持後に、測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、測定される温度23℃における経時後の損失弾性率G’’が700,000Pa以下の少なくとも一方を満たすことが好ましい。
【0023】
本発明のホットメルト接着剤は、
160℃で72時間保持後に、測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、測定される温度23℃における経時後の貯蔵弾性率G’が150,000Pa以下;及び
160℃で72時間保持後に、測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、測定される温度23℃における経時後の損失弾性率G’’が560,000Pa以下のいずれも満たすことがより好ましい。
【0024】
本発明のホットメルト接着剤は、
測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、測定される温度23℃における初期の貯蔵弾性率G’が350,000Pa以下;及び
測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、測定される温度23℃における初期の損失弾性率G’’が800,000Pa以下の少なくとも一方を満たすことが好ましい。
【0025】
本発明のホットメルト接着剤は、
測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、測定される温度23℃における初期の貯蔵弾性率G’が200,000Pa以下;及び
測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、測定される温度23℃における初期の損失弾性率G’’が700,000Pa以下の少なくとも一方を満たすことがより好ましい。
【0026】
本発明のホットメルト接着剤は、
測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、測定される温度23℃における初期の貯蔵弾性率G’が150,000Pa以下;及び
測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、測定される温度23℃における初期の損失弾性率G’’が560,000Pa以下のいずれも満たすことがより一層好ましい。
【0027】
本発明において、ホットメルト接着剤のバイオマス度が30%以上であることが好ましい。本明細書において、バイオマス度は、ASTM D6866に準じて測定することができる。
【0028】
以下、本発明に含まれる必須成分及び本発明に含まれることが好ましい成分について説明する。
【0029】
熱可塑性エラストマー(A)
本発明は、必須成分として熱可塑性エラストマー(A)を含有する。熱可塑性エラストマー(A)は、特に限定されず、例えば、スチレン系ブロック共重合体、オレフィン系ブロック共重合体、ポリウレタン系ブロック共重合体、ポリエステル系ブロック共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ホットメルト接着剤の剥離強度をより一層向上させる点から、スチレン系ブロック共重合体が好ましい。
【0030】
スチレン系ブロック共重合体は、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とをブロック共重合して得られるブロック共重合体である。
【0031】
ビニル系芳香族炭化水素は、ビニル基を有する芳香族炭化水素化合物である。ビニル系芳香族炭化水素としては、具体的には、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられ、これらの中でもスチレンが好ましい。ビニル系芳香族炭化水素は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
共役ジエン化合物は、少なくとも一対の共役二重結合を有するジオレフィン化合物である。共役ジエン化合物としては、具体的には、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンなどが挙げられ、これらの中でも1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)が好ましい。共役ジエン化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
スチレン系ブロック共重合体は、より良好な剥離強度を発現することができる点から、未水素添加物のスチレン系ブロック共重合体であることが好ましい。該未水素添加物のスチレン系ブロック共重合体としては、例えば、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBSB)等が挙げられる。これらのスチレン系ブロック共重合体は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのスチレン系ブロック共重合体の中でも、より一層良好な剥離強度を発現することができる点から、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)が好ましい。
【0034】
スチレン系ブロック共重合体におけるスチレン骨格含有割合は、より良好な剥離強度を発現することができる点から、スチレン系ブロック共重合体100質量%中、20~90質量%が好ましく、30~85質量%がより好ましい。
【0035】
本明細書において、スチレン系ブロック共重合体中のスチレン骨格含有割合とは、スチレン系ブロック共重合体中のスチレンブロックの含有割合(質量%)をいう。スチレン系ブロック共重合体中のスチレン骨格含有割合の算出方法としては、例えば、JIS K6239に準じたプロトン核磁気共鳴法、赤外分光法等を用いる方法が挙げられる。
【0036】
本発明において、より良好な剥離強度を発現することができる点から、熱可塑性エラストマー(A)はスチレン系ブロック共重合体であり、且つ、スチレン系ブロック共重合体はスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)を含むことが好ましい。
【0037】
本発明において、スチレン系ブロック共重合体は、高温で長時間加熱(例えば、160℃で72時間加熱)した場合の加熱安定性をより向上させる点から、非対称スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を含有しないことが好ましい。
【0038】
本発明において、熱可塑性エラストマー(A)は、スチレン系ブロック共重合体であり、且つ、該スチレン系ブロック共重合体は、非対称スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を含有しないことが好ましい。
【0039】
本発明において、スチレン系ブロック共重合体は、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)を含有し、且つ、非対称スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を含有しないことがより好ましい。
【0040】
本明細書において、非対称スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の「非対称」とは、両末端のスチレン相においてスチレン骨格含有割合が異なることを意味する。
【0041】
スチレン系ブロック共重合体としては、公知の市販品を広く用いることができる。市販品としては、例えば、旭化成社製の製品名「アサプレンT-439」(スチレン骨格含有割合:45質量%)、旭化成社製の製品名「アサプレンT-438」(スチレン骨格含有割合:35質量%)、旭化成社製の製品名「アサプレンT-436」(スチレン骨格含有割合:30質量%)、クレイトンポリマー社製の製品名「DX-405」(スチレン骨格含有割合:24質量%)、クレイトンポリマー社製の製品名「D-1155」(スチレン骨格含有割合:40質量%)、クレイトンポリマー社製の製品名「D-1118」(スチレン骨格含有割合:30質量%)、CHIMEI社製「PB5502」(スチレン骨格含有割合:32質量%)等が挙げられる。これらの市販品はそれぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
本発明のホットメルト接着剤100質量%中の熱可塑性エラストマー(A)の含有割合は、より良好な剥離強度を発現することができる点から、好ましくは10~35質量%、より好ましくは15~30質量%、より一層好ましくは20~25質量%である。
【0043】
本発明のホットメルト接着剤100質量%中のスチレン系ブロック共重合体の含有割合は、より一層良好な剥離強度を発現することができる点から、好ましくは10~35質量%、より好ましくは15~30質量%、より一層好ましくは20~25質量%である。
【0044】
粘着付与剤(B)
本発明は、必須成分として粘着付与剤(B)を含有する。該粘着付与剤(B)は、ロジン系粘着付与剤及びテルペン系粘着付与剤の少なくとも一方を含有する。該粘着付与剤(B)の酸価は、15mgKOH/g以下である。言い換えれば、本発明は、粘着付与剤(B)として、15mgKOH/g以下の酸価を有するロジン系粘着付与剤及び15mgKOH/g以下の酸価を有するテルペン系粘着付与剤の少なくとも一方を含有する。
【0045】
本明細書において、酸価とは、試料1gを中和するに要する水酸化カリウム(KOH)のmg数である。本明細書において、酸価は、JIS K 0070に準拠して測定される値を意味する。
【0046】
本発明において、粘着付与剤(B)の酸価が15mgKOH/gを超えると、粘着付与剤の酸化が促進されるため、ホットメルト接着剤の加熱安定性が劣る。粘着付与剤(B)の酸価は、好ましくは12mgKOH/g以下、より好ましくは10mgKOH/g以下、より一層好ましくは8mgKOH/g以下である。
【0047】
粘着付与剤(B)の環球式軟化点は、90℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。環球式軟化点の上限は、140℃であることが好ましい。粘着付与剤(B)の環球式軟化点が90℃以上であると、本発明のホットメルト接着剤がより良好な剥離強度を発揮し易くなる。
【0048】
本明細書において、粘着付与剤(B)の環球式軟化点は、JIS K 6863に準拠して測定される温度を意味する。
【0049】
本発明のホットメルト接着剤100質量%中の粘着付与剤(B)の含有割合は、剥離強度をより一層向上させる点から、好ましくは30~65質量%、より好ましくは35~60質量%、より一層好ましくは40~55質量%である。
【0050】
本発明において、粘着付与剤(B)の含有量は、剥離強度をより一層向上させる点から、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、好ましくは150~350質量部、より好ましくは200~300質量部である。
【0051】
本発明において、粘着付与剤(B)の含有量は、剥離強度をより一層向上させる点から、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、好ましくは150~350質量部、より好ましくは200~300質量部である。
【0052】
本発明において、熱可塑性エラストマー(A)の質量部をA、及び粘着付与剤(B)の質量部をBとした場合に、B/Aで示される比率が、好ましくは1.5~3.5、より好ましくは2.0~3.0である。
【0053】
上記ロジン系粘着付与剤としては、より良好な粘着性(タック)を発揮できる点から、天然ロジン及び当該天然ロジンのエステル化物(ロジンエステル樹脂)の少なくとも一方を使用すること好ましく、ロジンエステル樹脂を使用することがより好ましい。
【0054】
上記天然ロジンとしては、例えば、トールロジン、ガムロジン、ウッドロジン等が挙げられる。これらの天然ロジンはそれぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
上記ロジンエステル樹脂としては、例えば、ロジングリセリンエステル、ロジンペンタエリスリトールエステル、ロジンメチルエステル、ロジンエチルエステル、ロジンブチルエステル、ロジンエチレングリコールエステル等が挙げられる。これらのロジンエステル樹脂はそれぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
上記ロジン系粘着付与剤としては、酸価が15mgKOH/g以下である公知の市販品を広く用いることができる。当該市販品としては、例えば、荒川化学工業社製の製品名「スーパーエステルA100」(酸価:5mgKOH/g)、荒川化学工業社製の製品名「パインクリスタルKE-100」(酸価:6mgKOH/g)、Kraton社製の製品名「SYLVALITE 9100」(酸価:7mgKOH/g)、荒川化学工業社製の製品名「スーパーエステルA75」(酸価:5mgKOH/g)等が挙げられる。これらの市販品はそれぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
上記テルペン系粘着付与剤としては、テルペン樹脂(モノテルペン、ジテルペン、トリテルペン、ポリペルテン等)、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂等が挙げられる。これらのテルペン系粘着付与剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
上記テルペン系粘着付与剤としては、酸価が15mgKOH/g以下である公知の市販品を広く用いることができる。当該市販品としては、例えば、ヤスハラケミカル社製の製品名「YSレジンTO-105」(酸価:0mgKOH/g)、Kraton社製の製品名「SYLVARES TRM1115」(酸価:0mgKOH/g)等が挙げられる。
【0059】
本発明において、環境への負荷をより低減できる点から、粘着付与剤(B)は、石油樹脂系の粘着付与剤及び/又は当該石油樹脂系の粘着付与剤の水素添加物を含有しないことが好ましい。
【0060】
当該石油樹脂系の粘着付与剤としては、例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂等の石油樹脂が挙げられる。また、当該石油樹脂系の粘着付与剤の水素添加物としては、これらの石油樹脂に水素を添加した部分水添石油樹脂、完全水添石油樹脂等が挙げられる。なお、C5系石油樹脂とは石油のC5留分を原料とした石油樹脂であり、C9系石油樹脂とは石油のC9留分を原料とした石油樹脂であり、C5C9系石油樹脂とは石油のC5留分とC9留分とを原料とした石油樹脂である。C5留分としては、シクロペンタジエン、イソプレン、ペンタン等が挙げられる。C9留分としては、スチレン、ビニルトルエン、インデン等が挙げられる。
【0061】
可塑剤(C)
本発明は、可塑剤(C)を含んでいてもよい。
【0062】
可塑剤(C)としては、例えば、ナフテン系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイル等が挙げられ、加熱安定性剥離強度をより向上させる点から、ナフテン系プロセスオイルが好ましい。これらの可塑剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
可塑剤(C)としては、公知の市販品を広く用いることができる。
【0064】
ナフテン系プロセスオイルの市販品としては、例えば、ペトロチャイナ社製の製品名「KN4010」、出光興産社製の製品名「ダイアナフレシアN28」、出光興産社製の製品名「ダイアナフレシアU46」、Nynas社製の製品名「Nyflex222B」等が挙げられる
【0065】
パラフィン系プロセスオイルの市販品としては、例えば出光興産社製の製品名「ダイアナプロセスオイルPW32」、製品名「ダイアナプロセスオイルPW90」、製品名「ダイアナプロセスオイルPS32」、製品名「ダイアナプロセスオイルPS90」;ウィトコ社製の製品名「Kaydol」等が挙げられる。
【0066】
本発明が可塑剤(C)を含む場合、ホットメルト接着剤100質量%中の可塑剤(C)の含有割合の上限値は、好ましくは40質量%、より好ましくは30質量%、より一層好ましくは25質量%である。
【0067】
本発明が可塑剤(C)を含む場合、ホットメルト接着剤100質量%中の可塑剤(C)の含有割合の下限値は好ましくは1質量%、より好ましくは5質量%である。
【0068】
酸化防止剤(D)
本発明は、酸化防止剤(D)を含んでいてもよい。
【0069】
酸化防止剤(D)としては、公知の酸化防止剤を広く使用でき、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルべンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジ-t-アミル-6-〔1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ぺンチルフェニル)]アクリレート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの酸化防止剤の中でも、加熱安定性をより向上させる点から、フェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0070】
酸化防止剤(D)としては、公知の市販品を広く用いることができる。フェノール系酸化防止剤の市販品としては、例えば、EVERSPRING CHEMICAL社製の製品名「Evernox 10」等が挙げられる。
【0071】
本発明が酸化防止剤(D)を含む場合、ホットメルト接着剤100質量%中の酸化防止剤(D)の含有割合の上限値は、好ましくは5質量%、より好ましくは4質量%、より一層好ましくは3質量%である。
【0072】
本発明が酸化防止剤(D)を含む場合、ホットメルト接着剤100質量%中の酸化防止剤(D)の含有割合の下限値は、好ましくは0.1質量%、より好ましくは0.5質量%、より一層好ましくは1質量%である。
【0073】
各種添加剤
本発明のホットメルト接着剤は、本発明の目的を本質的に妨げない範囲で、必要に応じて各種添加剤を含んでいてもよい。各種添加剤としては、紫外線吸収剤、液状ゴム、微粒子充填剤等が挙げられる。
【0074】
紫外線吸収剤としては、公知の紫外線吸収剤を広く使用でき、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;サリチル酸エステル系紫外線吸収剤;シアノアクリレート系紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
液状ゴムとしては、公知の液状ゴムを広く使用でき、例えば、液状ポリブテン、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン及びこれらの水添樹脂が挙げられる。これらの液状ゴムは、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
微粒子充填剤としては、公知の微粒子充填剤を広く使用でき、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、雲母、スチレンビーズ等が挙げられる。これらの微粒子充填剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
本発明が上記各種添加剤を含む場合、ホットメルト接着剤100質量%中の上記各種添加剤の含有割合は、好ましくは5質量%以下である。
【0078】
2.ホットメルト接着剤の製造方法
ホットメルト接着剤の製造方法としては、特に限定されず、例えば、上記熱可塑性エラストマー(A)、上記粘着付与剤(B)、必要に応じて添加される上記可塑剤(C)、上記酸化防止剤(D)及び上記各種添加剤を、加熱装置を備えた撹拌混練機中に投入し、加熱しながら混練する方法等が挙げられる。
【0079】
混練の際の加熱温度は特に限定されず、好ましくは100~200℃、より好ましくは120~180℃である。混練時間は特に限定されず、好ましくは40~140分、より好ましくは60~120分である。
【0080】
3.ホットメルト接着剤の塗工法及び用途
【0081】
本発明のホットメルト接着剤を塗工する塗工方法としては、公知の塗工方法を広く使用でき、例えば、スパイラルスプレー塗工、スロットコーター塗工、カーテンスプレー塗工、ロールコーター塗工、オメガ塗工、ドット塗工、ビード塗工等が挙げられる。
【0082】
本発明のホットメルト接着剤を接着部分に塗工する際の塗工装置としては、公知の塗工装置を広く使用でき、例えば、ホットメルトアプリケーター等が挙げられる。ホットメルトアプリケーターとしては、例えば、サンツール社製の製品名「REKA ハンドガン TR80LCD(スプレー)」等が挙げられる。
【0083】
本発明のホットメルト接着剤は、加熱及び溶融され、被着体の接着部分に塗工され、塗工された溶融状態のままで他の被着体に接触され、その後冷却及び固化されて、被着体を接合する。被着体を形成する材料としては特に限定されず、例えば、織布、不織布、ティッシュ、弾性部材、ポリオレフィン系樹脂フィルム等が挙げられる。
【0084】
本発明のホットメルト接着剤は、セルロース系材料、コットン系素材等の天然素材からなる多孔質構成基材(例えば、ティッシュ等);親水化処理が施された不織布等の親水性多孔質部材に対して優れた接着性を発揮することができることから、吸水性物品の製造において被着体同士を接着させるために好適に用いられる。吸収性物品は、本発明のホットメルト接着剤を用いて構成されていることが好ましい。
【0085】
吸水性物品は、血液、尿、汗、膿、胃液、唾液、鼻分泌粘液等の体液を吸収することを目的としたものである。吸水性物品としては、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、パンティーライナー、失禁用パッド、携帯用トイレ、携帯用汚物処理袋、動物用屎尿処理シート、病院用ガウン、手術用白衣、創傷被覆材、救急絆創膏、肉や魚等の鮮度保持材等が挙げられる。これらの中でも、本発明のホットメルト接着剤は紙おむつ、生理用ナプキン、パンティーライナー等に好適に用いられる。
【0086】
紙おむつは、ポリオレフィン系樹脂フィルム等からなる液不透過性バックシートと、不織布等からなる液透過性トップシートと、これらの間に配置された吸収体とから基本的に構成されている。吸収体が尿等を吸収した後にベタツキが発生することを抑制するために、吸収体はその表面をティッシュ等の吸水紙で覆われた状態で使用される。また、吸水性物品では、ゴム等の弾性部材が伸縮自在に取り付けられることによって、着用者の脚周りや腰周りにフィットさせて排泄物が漏れ出すことを防止する構造が採用されている。
【0087】
本発明のホットメルト接着剤は、このような紙おむつの製造において、例えば、ティッシュ等の親水性多孔質部材同士を接着により一体化するために、ティッシュ等の親水性多孔質部材と不織布等の他の多孔質基材とを接着により一体化するために、好適に用いられる。
【0088】
本発明のホットメルト接着剤によって被着体同士を接着により一体化する方法としては、特に制限されず公知の方法を用いることができる。例えば、加熱溶融させた本発明のホットメルト接着剤を、一方の被着体に塗工した後に、塗工したホットメルト接着剤に他方の被着体を重ね合わせた後、これらを圧着する方法などが用いられる。
【実施例0089】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0090】
実施例及び比較例で使用した原料は以下のとおりである。
【0091】
<熱可塑性エラストマー(A)>
・スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS):旭化成社製の製品名「アサプレンT-439」
・スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS):CHIMEI社製の製品名「PB-5502」
【0092】
<粘着付与剤(B)>
・ロジンエステル(B1):荒川化学工業社製の製品名「スーパーエステルA100」(酸価:5mgKOH/g)
・ロジングリセリンエステル(B2):荒川化学工業社製の製品名「パインクリスタルKE-100」(酸価:6mgKOH/g)
・ロジンエステル(B3):Kraton社製の製品名「SYLVALITE 9100」(酸価:7mgKOH/g)
・ロジンエステル(B4):荒川化学工業社製の製品名「スーパーエステルA75」(酸価:5mgKOH/g)
・芳香族変性テルペン(B5):ヤスハラケミカル社製の製品名「YSレジンTO-105」(酸価:0mgKOH/g)
・ポリテルペン(B6):Kraton社製の製品名「SYLVARES TRM1115」(酸価:0mgKOH/g)
・マレイン酸変性水添ロジン(B7):荒川化学工業社製の製品名「アラダイムR-95」(酸価:163mgKOH/g)
・ロジンエステル(B8):KOMOTAC社製の製品名「KF-454S」(酸価:30mgKOH/g)
・アクリル酸変性水添ロジン(B9):荒川化学工業社製の製品名「パインクリスタルKE-604」(酸価:238mgKOH/g)
・ロジンエステル(B10):KOMOTAC社製の製品名「KF-399S」(酸価:20mgKOH/g)
【0093】
なお、上記(B1)~(B6)は、いずれも15mgKOH/g以下の酸価を有するロジン系粘着付与剤又は15mgKOH/g以下の酸価を有するテルペン系粘着付与剤である。
【0094】
<可塑剤(C)>
・ナフテン系プロセスオイル:ペトロチャイナ社製の製品名「KN4010」
【0095】
<酸化防止剤(D)>
・フェノール系酸化防止剤:EVERSPRING CHEMICAL社製の製品名「Evernox 10」
【0096】
(実施例及び比較例)
上述した原料を、それぞれ表1に示した配合量で、加熱装置を備えた撹拌混練機中に投入した後、145℃で90分間に亘って加熱しながら混練し、固体になるまで冷却してホットメルト接着剤を製造した。なお、表1中の各原料の数値は、いずれも「質量部」を意味する。
【0097】
実施例及び比較例で得られた各ホットメルト接着剤について、以下の測定条件により特性を評価した。これらの結果を表1に示す。なお、表1において、比較例3の「ND」とはT型剥離試験を行う前に試験片が剥がれたため、剥離強度測定試験を行うことができなかったことを意味する。
【0098】
(初期の剥離強度測定試験)
ホットメルト接着剤を150℃で加熱し溶融させた後、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にスロット塗工でホットメルト接着剤を厚さ45μm、塗布幅25mmの条件で塗布し、厚み25μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを積層し積層体を作製した。その後、積層体をスロット塗工した流れ方向に50mm、幅方向に25mmのサンプル片を得た。ポリエチレンテレフタレートフィルムのホットメルト接着剤塗布面上の流れ方向の端より25mmの長さ、幅25mmの上にセロハンテープを貼り、測定機器のチャック固定部分を、端から25mmの位置から25mmの長さ、幅25mmの測定部分を得て、この積層体と同じ大きさの厚み80μmのポリエチレンフィルム(長さ50mm×幅25mm)を積層した。得られた積層体を、2kgのローラーを5mm/秒の速度で1往復させて試験片を得た。次に、得られた試験片を23℃、相対湿度50%雰囲気下にて、24時間に亘って放置してホットメルト接着剤を冷却固化させた。この試験片について、引張試験機(例えば島津製作所社製、製品名「AGS-X」)を用いて、ポリエチレンフィルムの面方向に引張速度100mm/分にてT型剥離試験を23℃の雰囲気下で行うことによって、凸最大平均試験力(測定領域が長さ25mm×幅25mmの範囲における凸最大点の7点の平均試験力)を初期の剥離強度(N/25mm)として測定した。なお、「初期の剥離強度」とは、ホットメルトを製造時及び試験片を作製することを除いて、ホットメルト接着剤を加熱させてない条件で作製された試験片の剥離強度(N/25mm)を意味する。
【0099】
(初期の動的粘弾性評価試験)
ホットメルト接着剤を150℃で加熱溶融して、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上の離型層側の面に滴下した。次いで、離型処理された別のポリエチレンテレフタレートフィルムをホットメルト接着剤上に、離型層側の面がホットメルト接着剤に接触するようにして積層した。次いで、熱プレスで圧縮し、ホットメルト接着剤の厚みが3mmとなるように調整された積層体を得た。当該積層体をポリエチレンテレフタレートフィルム間に挟んだ状態で23℃にて24時間静置させた後、長さ10mm、幅10mmに試験片をカットして動的粘弾性測定用のサンプルを調製した。
【0100】
調製したサンプルを動的粘弾性測定装置(ティーエーインスツルエント社製ローテェーショナルレオメーター、製品名「DHR-2」)に装着し、以下の測定条件で動的粘弾性測定を行うことにより、温度23℃における初期の貯蔵弾性率G’(Pa)及び温度23℃における初期の損失弾性率G’’(Pa)を測定した。
<初期の動的粘弾性測定の測定条件>
・測定温度範囲:-20℃~140℃
・周波数:1.0Hz
・昇温速度:5℃/分
・ひずみ:0.05%
・クイックチェンジプレート:直径25mmのパラレルプレート
・ペルチェプレート:直径8mmのクロスハッチプレート
【0101】
(経時後の剥離強度測定試験)
ホットメルト接着剤をガラス瓶(柏洋硝子社製の製品名「M-70」)にホットメルト接着剤を35g入れて、アルミ箔で蓋をした後、160℃に温度を保ったオーブンに当該ガラス瓶を72時間保持した。その後、ホットメルト接着剤を150℃で加熱し溶融させた後、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上にスロット塗工でホットメルト接着剤を厚さ45μm、塗布幅25mmの条件で塗布し、厚み25μmの離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを積層し積層体を作製した。その後、積層体をスロット塗工した流れ方向に50mm、幅方向に25mmのサンプル片を得た。ポリエチレンテレフタレートフィルムのホットメルト接着剤塗布面上の流れ方向の端より25mmの長さ、幅25mmの上にセロハンテープを貼り、測定機器のチャック固定部分を、端から25mmの位置から25mmの長さ、幅25mmの測定部分を得て、この積層体と同じ大きさの厚み80μmのポリエチレンフィルム(長さ50mm×幅25mm)を積層した。得られた積層体を、2kgのローラーを5mm/秒の速度で1往復させて試験片を得た。次に、得られた試験片を23℃、相対湿度50%雰囲気下にて、24時間に亘って放置してホットメルト接着剤を冷却固化させた。この試験片について、引張試験機(例えば島津製作所社製、製品名「AGS-X」)を用いて、ポリエチレンフィルムの面方向に引張速度100mm/分にてT型剥離試験を23℃の雰囲気下で行うことによって、凸最大平均試験力(測定領域が長さ25mm×幅25mmの範囲における凸最大点の7点の平均試験力)を経時後(160℃で72時間保持後)の剥離強度(N/25mm)として測定した。なお、「経時後の剥離強度」とは、ホットメルトを製造時、160℃で72時間保持及び試験片を作製することを除いて、ホットメルト接着剤を加熱させてない条件で作製された試験片の剥離強度(N/25mm)を意味する。
【0102】
(経時後の動的粘弾性評価試験)
ホットメルト接着剤をガラス瓶(柏洋硝子社製の製品名「M-70」)にホットメルト接着剤を35g入れて、アルミ箔で蓋をした後、160℃に温度を保ったオーブンに当該ガラス瓶を72時間保持した。経時後(160℃で72時間保持後)のホットメルト接着剤を150℃で加熱溶融して、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上の離型層側の面に滴下した。次いで、離型処理された別のポリエチレンテレフタレートフィルムをホットメルト接着剤上に、離型層側の面がホットメルト接着剤に接触するようにして積層した。次いで、熱プレスで圧縮し、ホットメルト接着剤の厚みが3mmとなるように調整された積層体を得た。当該積層体をポリエチレンテレフタレートフィルム間に挟んだ状態で23℃にて24時間静置させた後、長さ10mm、幅10mmに試験片をカットして動的粘弾性測定用のサンプルを調製した。
【0103】
調製したサンプルを動的粘弾性測定装置(ティーエーインスツルエント社製ローテェーショナルレオメーター、製品名「DHR-2」)に装着し、以下の測定条件で動的粘弾性測定を行うことにより、温度23℃における経時後(160℃で72時間保持後)の貯蔵弾性率G’(Pa)及び温度23℃における経時後(160℃で72時間保持後)の損失弾性率G’’(Pa)を測定した。
<経時後の動的粘弾性測定の測定条件>
・測定温度範囲:-20℃~140℃
・周波数:1.0Hz
・昇温速度:5℃/分
・ひずみ:0.05%
・クイックチェンジプレート:直径25mmのパラレルプレート
・ペルチェプレート:直径8mmのクロスハッチプレート
【0104】
測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で測定された温度23℃における初期の貯蔵弾性率G’が350,000Pa以下;及び
測定温度範囲:-20℃~140℃、周波数:1.0Hz、昇温速度:5℃/分の条件で測定された温度23℃における初期の損失弾性率G’’が800,000Pa以下;
の少なくとも一方を満たす、請求項1に記載のホットメルト接着剤。