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特開2023-19605トンネル覆工打ち継ぎシート構造及びその施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019605
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】トンネル覆工打ち継ぎシート構造及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20230202BHJP
   E21D 11/38 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
E21D11/10 B
E21D11/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124476
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】303056368
【氏名又は名称】東急建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】藤井 顕吾
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】一安 勝印
(72)【発明者】
【氏名】堀井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】早川 健司
(72)【発明者】
【氏名】小田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 賢吾
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA06
2D155BB02
2D155CA03
2D155HA02
2D155HA08
2D155KB11
2D155KB16
2D155LA06
(57)【要約】
【課題】先行覆工コンクリートの打ち継ぎ面から遊離することなく、かつヨレやシワができにくく、落下を防止可能なトンネル覆工打ち継ぎシート構造を提供する。
【解決手段】トンネル1の防水シート5のトンネル内面側に構築される覆工コンクリート4a,4bの打ち継ぎ部4cにトンネル覆工打ち継ぎシート構造6を設ける。トンネル覆工打ち継ぎシート構造6は、打ち継ぎ面シート10と、溶着シート11を含む。溶着シート11は、打ち継ぎ面シート10におけるトンネル外周側の縁10hに沿って打ち継ぎ面シート10に対して折り曲げ可能又は直交するように設けられている。該溶着シート11を防水シート5と溶着する。打ち継ぎ面シート10は、先行覆工コンクリート4aの打ち継ぎ面4eに被せる。該打ち継ぎ面シート10と打ち継ぎ面4eとを接着層20を介して接着する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの防水シートの内面側に構築される覆工コンクリートの打ち継ぎ部に設けられるトンネル覆工打ち継ぎシート構造であって、
先行覆工コンクリートの打ち継ぎ面に被さる1又は複数の打ち継ぎ面シートと、
前記打ち継ぎ面シートと前記打ち継ぎ面とを接着する接着層と、
前記打ち継ぎ面シートにおけるトンネル外周側の縁に沿って前記打ち継ぎ面シートに対して折り曲げ可能又は直交するように設けられ、前記防水シートと溶着される溶着シートと、
を備えたことを特徴とするトンネル覆工打ち継ぎシート構造。
【請求項2】
前記打ち継ぎ面シートと前記溶着シートとに跨ってこれらシート部とそれぞれ接合された連結シートを、さらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のトンネル覆工打ち継ぎシート構造。
【請求項3】
前記複数の打ち継ぎ面シートが、前記トンネルのアーチ周方向に並べられており、
各打ち継ぎ面シートが、トンネル内周側の縁が前記トンネル外周側の縁より短い台形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトンネル覆工打ち継ぎシート構造。
【請求項4】
前記打ち継ぎ面シート及び前記溶着シートが、前記トンネルのアーチ周方向に沿う長帯状であり、かつ前記打ち継ぎ面シートには、トンネル内周側の縁から前記トンネル外周側の縁へ向かって延びるスリットが形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のトンネル覆工打ち継ぎシート構造。
【請求項5】
トンネルの防水シートのトンネル内面側に構築される覆工コンクリートの打ち継ぎ部に設けられるトンネル覆工打ち継ぎシート構造の施工方法であって、
前記トンネル覆工打ち継ぎシート構造における打ち継ぎ面シートを先行覆工コンクリートの打ち継ぎ面に被せ、
かつ前記打ち継ぎ面シートにおけるトンネル外周側の縁に折り曲げ可能に連なる溶着シートを前記防水シートに添わせて、
前記溶着シートと前記防水シートとを溶着し、
前記打ち継ぎ面シートと前記打ち継ぎ面とを接着することを特徴とするトンネル覆工打ち継ぎシート構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの覆工コンクリートの打ち継ぎ部に設けられるシート構造及び該シート構造を前記打ち継ぎ部に設置する施工方法に関し、特に前記打ち継ぎ部を挟んで隣接する覆工コンクリートどうしを縁切りするトンネル覆工打ち継ぎシート構造及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの覆工コンクリートの打ち継ぎ部では、コンクリートのひび割れ、浮き、剥落が起きやすい。
その対策として、先行して打設した覆工コンクリートの端面(打ち継ぎ面)にビニルシートを被せて粘着テープで止めておき、そのうえで、後続の覆工コンクリートを打設することが推奨されている(非特許文献1参照)。これによって、先行覆工コンクリートと後続覆工コンクリートとが縁切りされ、各コンクリートのひび割れ、浮き、剥落が抑制される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】国土交通省東北地方整備局「コンクリート構造物の品質確保の手引き(案)(トンネル覆工コンクリート編)」平成28年5月、52~53ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行覆工コンクリートの打ち継ぎ面に被せた段階のビニルシートは、前記打ち継ぎ面から遊離しやすく、ヨレやシワも出来やすい。取り付け具合によっては落下するおそれもある。
本発明は、このような事情に鑑み、先行覆工コンクリートの打ち継ぎ面から遊離することなく、ヨレやシワができにくく、さらには落下を防止できるトンネル覆工打ち継ぎシート構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題点を解決するために、本発明は、トンネルの防水シートの内面側に構築される覆工コンクリートの打ち継ぎ部に設けられるトンネル覆工打ち継ぎシート構造であって、
先行覆工コンクリートの打ち継ぎ面に被さる1又は複数の打ち継ぎ面シートと、
前記打ち継ぎ面シートと前記打ち継ぎ面とを接着する接着層と、
前記打ち継ぎ面シートにおけるトンネル外周側の縁に沿って前記打ち継ぎ面シートに対して折り曲げ可能又は直交するように設けられ、前記防水シートと溶着される溶着シートと、
を備えたことを特徴とする。
当該特徴構成によれば、溶着シートを防水シートに溶着することによって、トンネル覆工打ち継ぎ構造を打ち継ぎ部に安定的に設置でき、落下を防止することができる。
打ち継ぎ面シートを接着層によって打ち継ぎ面に接着することによって、打ち継ぎ面シートが打ち継ぎ面から遊離するのを阻止できる。また、ヨレやシワが出来るのを防止できる。
先行覆工コンクリートと後続覆工コンクリートとの間に打ち継ぎ面シートが介在されることで、これら覆工コンクリートが縁切りされ、各覆工コンクリートの打ち継ぎ部付近におけるひび割れ、浮き、剥落等を抑制できる。
【0006】
前記トンネル覆工打ち継ぎシート構造が、前記打ち継ぎ面シートと前記溶着シートとに跨ってこれらシート部とそれぞれ接合された連結シートを、さらに備えていることが好ましい。
これによって、打ち継ぎ面シートと溶着シートを確実に連結でき、打ち継ぎ面シートの落下を確実に防止できる。
【0007】
前記複数の打ち継ぎ面シートが、前記トンネルのアーチ周方向に並べられており、
各打ち継ぎ面シートが、トンネル内周側の縁が前記トンネル外周側の縁より短い台形状であることが好ましい。
これによって、打ち継ぎ面シートにヨレやシワができるのを確実に防止できる。
【0008】
前記打ち継ぎ面シート及び前記溶着シートが、前記トンネルのアーチ周方向に沿う長帯状であり、かつ前記打ち継ぎ面シートには、トンネル内周側の縁から前記トンネル外周側の縁へ向かって延びるスリットが形成されることが好ましい。これによって、トンネル覆工打ち継ぎシート構造の設置作業を容易に行なうことができる。打ち継ぎ面シートが、スリットによって複数の打ち継ぎ面シート部分に区画され、打ち継ぎ面シートにヨレやシワができるのを確実に防止できる。
【0009】
本発明方法は、トンネルの防水シートのトンネル内面側に構築される覆工コンクリートの打ち継ぎ部に設けられるトンネル覆工打ち継ぎシート構造の施工方法であって、
前記トンネル覆工打ち継ぎシート構造における打ち継ぎ面シートを先行覆工コンクリートの打ち継ぎ面に被せ、
かつ前記打ち継ぎ面シートにおけるトンネル外周側の縁に折り曲げ可能に連なる溶着シートを前記防水シートに添わせて、
前記溶着シートと前記防水シートとを溶着し、
前記打ち継ぎ面シートと前記打ち継ぎ面とを接着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、先行覆工コンクリートの打ち継ぎ面から遊離することなく、かつヨレやシワができにくく、落下を防止可能なトンネル覆工打ち継ぎシート構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るトンネル覆工打ち継ぎシート構造を先行覆工コンクリートの打ち継ぎ面に設置した状態におけるトンネルを示す、図2のI-I線に沿う正面断面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿う、前記トンネルの側面断面図である。
図3図3は、後続覆工コンクリートの打設後の前記トンネルの側面断面図である。
図4図4は、前記第1実施形態に係るトンネル覆工打ち継ぎシート構造を、施工前の状態で示す正面図である。
図5図5は、図4のV-V線に沿う、前記施工前のトンネル覆工打ち継ぎシート構造の断面図である。
図6図6は、本発明の第2実施形態に係るトンネル覆工打ち継ぎシート構造における1のシートユニットを、施工前の状態で示す正面図である。
図7図7は、前記第2実施形態に係るトンネル覆工打ち継ぎシート構造先行覆工コンクリートの打ち継ぎ面に設置した状態におけるトンネルの正面断面図である。
図8図8は、本発明の第3実施形態に係るトンネル覆工打ち継ぎシート構造を、施工前の状態で示す正面図である。
図9図9は、前記第3実施形態に係るトンネル覆工打ち継ぎシート構造を先行覆工コンクリートの打ち継ぎ面に設置した状態におけるトンネルを示す、図10のIX-IX線に沿う正面断面図である。
図10図10は、図9のX-X線に沿う断面図である。
図11図11は、本発明の第4実施形態に係るトンネル覆工打ち継ぎシート構造における1のシートユニットを、施工前の状態で示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(図1図5)>
図1及び図2は、NATM工法によって構築中の山岳トンネル1を示したものである。トンネル1は、一次覆工3と、二次覆工4を含む。地山2の掘削面2aに一次覆工3の吹付コンクリート3aが吹き付けられている。吹付コンクリート3aのトンネル内側面に防水シート5が張設されている。防水シート5は、エチレン酢酸ビニル(EVA)樹脂シートを主要素として含む。防水シート5のトンネル内面側に二次覆工4が設けられている。
【0013】
図2及び図3に示すように、二次覆工4は、トンネル1の掘進に合わせて、1スパンごとにトンネル軸方向へ順次構築される。1スパンごとの覆工コンクリート4a,4b…の打ち継ぎ部4cには、トンネル覆工打ち継ぎシート構造6が設置されている。
【0014】
図4及び図5に示すように、トンネル覆工打ち継ぎシート構造6は、打ち継ぎ面シート10と、溶着シート11と、連結シート12を備えている。図2に示すように、打ち継ぎ面シート10は、先行覆工コンクリート4aの打ち継ぎ面4eに設置される。打ち継ぎ面シート10は、好ましくは不織布によって構成されている。前記不織布は、好ましくはポリエステル長繊維のスパンボンド不織布であるが、ポリエステルに限らず、ポリエチレンその他のポリオレフィンでもよい。長繊維に限らず短繊維でもよい。スパンボンド不織布に限らず、ニードルパンチ不織布でもよい。好ましくは、前記不織布製の打ち継ぎ面シート10の厚みは、0.1mm~1mm程度であり、目付けは10g/m~100g/m程度である。
【0015】
図4に示すように、施工前の打ち継ぎ面シート10は、長帯状になっている。打ち継ぎ面シート10の長さは、トンネル1のアーチ部の周長ひいては先行覆工コンクリート4aの打ち継ぎ面4eの周長と実質等しい。図1に示すように、打ち継ぎ面シート10の高さ寸法H10(トンネル内周側の縁10gとトンネル外周側の縁10hとの距離)は、打ち継ぎ面4eの内外半径差Δr4eより少し大きい(H10>Δr4e)。
【0016】
図4及び図5に示すように、打ち継ぎ面シート10のトンネル外周側の縁10hには、連結シート12を介して溶着シート11が連なっている。溶着シート11は、打ち継ぎ面シート10の好ましくは全長にわたって延びる長帯状に形成されている。溶着シート11の幅寸法(図5において左右方向の寸法)は、打ち継ぎ面シート10の前記高さ寸法H10図5において上下方向の寸法)よりも十分に小さい。
【0017】
溶着シート11は、防水シート5に対して溶着可能な材質によって構成されている。好ましくは、溶着シート11は、防水シート5と同じ防水性材料によって構成され、より好ましくはEVA樹脂によって構成されている。
【0018】
打ち継ぎ面シート10と溶着シート11とは、両者10,11に跨る連結シート12によって接合されている。連結シート12は、打ち継ぎ面シート10及び溶着シート11の長手方向の全長にわたる長帯状に形成されている。連結シート12は、例えば不織布によって構成されているが、連結シート12の材質は不織布に限らず、ポリエチレンなどの樹脂フィルムであってもよい。連結シート12が、接着剤15によって、打ち継ぎ面シート10及び溶着シート11とそれぞれ接合されている。
【0019】
図4及び図5に示すように、連結シート12の幅方向の中央部には、折り曲げ線12cが設けられている。折り曲げ線12cは、連結シート12の全長にわたって延びている。連結シート12における、折り曲げ線12cを挟んで一方側の部分12aに、接着剤15aを介して打ち継ぎ面シート10のトンネル外周側の縁10hが接合され、他方側の部分12bに、接着剤15bを介して溶着シート11の先行覆工側の縁が接合されている。
連結シート12は、折り曲げ線12cにおいて折り曲げ可能である。溶着シート11は、打ち継ぎ面シート10に対して折り曲げ線12cに沿って折り曲げ可能であり、ひいては打ち継ぎ面シート10のトンネル外周側の縁10hに沿って折り曲げ可能である。
【0020】
図2に示すように、施工後のトンネル覆工打ち継ぎシート構造6においては、連結シート12が折り曲げ線12cにおいて直角に折り曲げられ、溶着シート11が、打ち継ぎ面シート10に対して直角をなすように水平に向けられている。溶着シート11は、防水シート5のトンネル内面側(図2において下側)を向く面に沿わされ、防水シート5と溶着されている。
【0021】
図2に示すように、打ち継ぎ面シート10は、溶着シート11から鉛直に垂れて、打ち継ぎ面4eに沿わされている。打ち継ぎ面シート10と溶着シート11とが直交されることによって、トンネル覆工打ち継ぎシート構造6の断面がL字状になっている。
【0022】
図4の二点鎖線及び図1に示すように、施工後の打ち継ぎ面シート10には、複数のスリット13が形成されている。各スリット13は、打ち継ぎ面シート10のトンネル内周側の縁10gからトンネル外周側の縁10hへ向かって延びている。スリット13は、トンネル外周側の縁10hに達するか、又はその近くまで延びている。更に、スリット13は、連結シート12における打ち継ぎ面シート10と接合される垂直部分12aにも切り込んでいる。
【0023】
図4の二点鎖線に示すように、複数のスリット13が、打ち継ぎ面シート10の長手方向(アーチ周方向)に間隔を置いて配置されている。図1に示すように、これらスリット13によって、打ち継ぎ面シート10が、複数の打ち継ぎ面シート部分14に区画されている。
【0024】
図1に示すように、複数の打ち継ぎ面シート部分14が、先行覆工コンクリート4aの打ち継ぎ面4eのアーチ周方向に並んで配置されている。スリット13を介して隣接する2つの打ち継ぎ面シート部分14どうしの相対角度が、打ち継ぎ面4eのアーチの曲率に合わせて調節されている。これら2つの打ち継ぎ面シート部分14のスリット13側の縁部分14e,14fどうしが重ね合わされている。これによって、各打ち継ぎ面シート部分14の正面視の見かけ形状が、長辺がトンネル外周側を向き、短辺がトンネル内周側を向く台形状になっている。
【0025】
図1に示すように、溶着シート11及び連結シート12における水平部分12bが、複数の打ち継ぎ面シート部分14に跨ってアーチ周方向へ延び、これら打ち継ぎ面シート部分14を連ねている。
【0026】
図2に示すように、施工後の打ち継ぎ面シート10は、接着層20によって先行覆工コンクリート4aの打ち継ぎ面4eと接着されている。接着層20を構成する接着剤20aとしては、好ましくはエポキシ系接着剤が用いられているが、これに限らず、アクリル系接着剤が用いられていてもよい。硬化前の接着剤20aは、不織布からなる打ち継ぎ面シート10を厚み方向に透過可能である。言い換えると、打ち継ぎ面シート10は、硬化前の接着剤20aの透過を許容する接着剤透過性を有している。
【0027】
接着層20は、表側層部分21と、シート内浸込部分22と、裏側透過層部分23とを含む。表側層部分21は、打ち継ぎ面シート10における後続覆工コンクリート4b側を向く表側面10aに被膜されている。シート内浸込部分22は、不織布からなる打ち継ぎ面シート10内にしみ込んで、打ち継ぎ面シート10を構成する不織布繊維どうし間の空間部に充填されている。裏側透過層部分23は、打ち継ぎ面シート10の裏側面10bと打ち継ぎ面4eとの間に介在されている。裏側透過層部分23によって、打ち継ぎ面シート10と先行覆工コンクリート4aとが接着されている。
図1において網掛け模様にて示すように、接着層20は、打ち継ぎ面シート10の全域に塗布されているが、打ち継ぎ面シート10の縁等の一部分だけに塗布されていてもよい。
【0028】
<トンネル覆工打ち継ぎシート構造の施工方法>
トンネル覆工打ち継ぎシート構造6は、次のように施工される。
図1及び図2に示すように、先行覆工コンクリート4aの打設及び養生用の型枠(図示せず)を脱型して移設した後、トンネル覆工打ち継ぎシート構造6を搬入する。
図4に示すように、この段階の打ち継ぎ面シート10には、スリット13が形成されていない。
図2に示すように、該打ち継ぎ面シート10を、先行覆工コンクリート4aの打ち継ぎ面4eに被せるとともに、溶着シート11を、打ち継ぎ面シート10に対して折り曲げて防水シート5に宛がう。そして、溶着シート11を防水シート5に溶着する。これによって、打ち継ぎ面シート10が防水シート5から吊り下げられた状態で吊り支持され、打ち継ぎ面シート10ひいてはトンネル覆工打ち継ぎシート構造6の落下を確実に防止できる。
【0029】
次に、図4の二点鎖線及び図1に示すように、打ち継ぎ面シート10にハサミを入れてスリット13を形成することによって、打ち継ぎ面シート10を複数の打ち継ぎ面シート部分14に区画する。そして、隣接する打ち継ぎ面シート部分14の対向する縁14e,14fどうしを重ね合わせる。
【0030】
続いて、打ち継ぎ面4eに被さる打ち継ぎ面シート10の後続覆工側を向く表側面10aに接着剤20aを塗布する。好ましくは、打ち継ぎ面シート部分14を伸ばしながら接着剤20aを塗布する。
この段階では、後続覆工コンクリート4bが配置されるべき部分は解放空間になっているから(図2)、接着剤20aの塗布作業を容易に行なうことができる。打ち継ぎ面シート10をめくって接着剤20aを直接、裏側面10bに塗布する必要は無く、塗布作業を一層容易化できる。加えて、打ち継ぎ面シート10が吊り支持されているから、接着剤20aの塗布作業を一層容易に行なうことができる。
【0031】
硬化前の接着剤20aは、打ち継ぎ面シート10の内部にしみ込み、さらに打ち継ぎ面シート10を透過して、打ち継ぎ面4eと打ち継ぎ面シート10との間に入り込む。これによって、打ち継ぎ面シート10が接着剤20aを介して先行覆工コンクリート4aの打ち継ぎ面10に接着される。接着剤20aが硬化して、接着層20となる。
このようにして、先行覆工コンクリート4aの打ち継ぎ面4eにトンネル覆工打ち継ぎシート構造6が設置される。トンネル覆工打ち継ぎシート構造6の各打ち継ぎ面シート10は打ち継ぎ面4eに接着されているから、打ち継ぎ面シート10が打ち継ぎ面4eから遊離することはない。また、前述したように、打ち継ぎ面シート10にはスリット13を形成して、隣接する打ち継ぎ面シート部分14の対向する縁14e,14fどうしを重ね合わせるとともに、接着剤20aの塗布時に打ち継ぎ面シート部分14を伸ばすことで、打ち継ぎ面シート10にヨレやシワが出来るのを防止できる。
【0032】
その後、図3に示すように、後続覆工コンクリート4bを打設する。
これによって、トンネル覆工打ち継ぎシート構造6が、覆工コンクリート4a,4b間に挟まれ、二次覆工4に埋設される。打ち継ぎ面シート10におけるトンネル内側部分10dは、打ち継ぎ面4eとの寸法差(H10>Δr4e)の分だけ、二次覆工4からトンネル内面側(図3において下側)へ突出される。該突出部分10dを切断して除去する。
【0033】
このようにして構築されたNATMトンネル1においては、覆工コンクリート4a,4bどうしの打ち継ぎ部4cに打ち継ぎ面シート10が介在されているため、覆工コンクリート4a,4bどうしが縁切りされる。これによって、これら覆工コンクリート4a,4bにおける打ち継ぎ部4cの近傍部分が、ひび割れ、浮き、剥落等を起こすのを抑制することができる。
【0034】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(図6図7)>
図7に示すように、第2実施形態に係るトンネル覆工打ち継ぎシート構造6Bは、複数のシートユニット7に分割されている。図6に示すように、各シートユニット7は、打ち継ぎ面シート10Bと、溶着シート11と、連結シート12を含む。打ち継ぎ面シート10Bは、第1実施形態と同様に、不織布からなり、接着剤透過性を有している。打ち継ぎ面シート10Bは、トンネル内周側の縁10gがトンネル外周側の縁10hより短い台形状になっている。打ち継ぎ面シート10Bの高さ寸法(トンネル内周側の縁10gとトンネル外周側の縁10hとの距離H10)は、先行覆工コンクリート4aの打ち継ぎ面4eの内外半径差Δr4eに合わせられている(H10=Δr4e)。
【0035】
打ち継ぎ面シート10Bのトンネル外周側の縁10hに、連結シート12を介して溶着シート11が折り曲げ可能に連なっている。連結シート12及び溶着シート11の長さは、打ち継ぎ面シート10Bのトンネル外周側の縁10hの長さに合わせられている。
【0036】
図7に示すように、複数のシートユニット7が、トンネル1の打ち継ぎ部4cのアーチ周方向に並べられている。各シートユニット7の打ち継ぎ面シート10Bが、打ち継ぎ面4eに被さり、接着剤20によって打ち継ぎ面4eと接着されている。隣接する打ち継ぎ面シート10の対向する縁どうしは、互いに重なり合っていてもよく、ぴったり合わさっていてもよい。
溶着シート11が防水シート5に溶着されている点は、第1実施形態と同様である。
【0037】
第2実施形態においては、先行覆工コンクリート4aの打設後、複数のシートユニット7が、1つずつ、打ち継ぎ部4cに設置される。打ち継ぎ面シート10Bを打ち継ぎ面4eに被せるとともに、溶着シート11を防水シート5に宛がって溶着する。続いて、打ち継ぎ面シート10Bの後続覆工側の面に接着剤20aを塗布して、該接着剤20aを打ち継ぎ面シート10B内にしみ込ませることで、打ち継ぎ面シート10Bを打ち継ぎ面4eに接着する。
【0038】
複数のシートユニット7を打ち継ぎ部4cのアーチ周方向に並べて配置する。好ましくは、アーチ頂部から左右両側へ向けて、シートユニット7を順次配置する。
打ち継ぎ面シート10BがH10=Δr4eとなるように寸法設定されることによって、打ち継ぎ面シート10Bにおけるトンネル内側部分が二次覆工4からトンネル内面側へ突出されることが無い。よって、後続覆工コンクリート4bの打設後、トンネル内側への突出部分10d(図3参照)の切断除去作業が不要である。
【0039】
<第3実施形態(図8図10
図8に示すように、第3実施形態に係るトンネル覆工打ち継ぎシート構造6Cにおいては、打ち継ぎ面シート10Cが、接着剤に対して非透過性の樹脂シートによって構成されている。好ましくは、打ち継ぎ面シート10Cは、ポリ塩化ビニル樹脂シートによって構成されている。なお、打ち継ぎ面シート10Cの樹脂成分は、ポリ塩化ビニルに限らず、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンであってもよく、EVA等の不透水性樹脂であってもよい。
【0040】
第1実施形態と同様に、施工前の打ち継ぎ面シート10Cは、打ち継ぎ面4eのアーチ周長と同等の長さの長帯状になっている(図8)。
図9及び図10に示すように、施工時には、溶着シート11を防水シート5に溶着するとともに、打ち継ぎ面シート10Cにスリット13を形成することによって、打ち継ぎ面シート10Cを複数の打ち継ぎ面シート部分14Cに分割する。
【0041】
図10に示すように、各打ち継ぎ面シート部分14Cにおける、打ち継ぎ面4e側を向く裏側面には、接着剤24aが塗布されている。接着剤24aは、施工時に塗布してもよく、打ち継ぎ面シート10Cの製造時に塗布されるとともに剥離シートを被せられており、施工時に剥離シートを剥がすことにしてもよい。
或いは、施工時に、打ち継ぎ面4eに接着剤24aを塗布してもよい。
【0042】
これによって、打ち継ぎ面シート部分14Cと打ち継ぎ面4eとが、接着剤24aによって接着される。打ち継ぎ面シート10Cと打ち継ぎ面4eとの間には、接着剤24aからなる接着層24が介在される。
接着剤24aは、好ましくはニトリル系接着剤によって構成されている。これによって、樹脂製の打ち継ぎ面シート10Cと先行覆工コンクリート4aとを強固に接着できる。
【0043】
<第4実施形態(図11)>
図11に示すように、第4実施形態においては、第2実施形態(図6)と同様のシートユニット7Dを含む。シートユニット7Dの打ち継ぎ面シート10Dは、第3実施形態(図8)と同様に、ポリ塩化ビニル等の、接着剤に対して非透過性の樹脂シートによって構成されている。
打ち継ぎ面シート10Dが、トンネル内周側の縁10gがトンネル外周側の縁10hより短い台形状に形成され、好ましくはH10=Δr4e図7参照)となるように寸法設定されている点は、第2実施形態と同様である。
【0044】
更に、第2実施形態(図7)と同様に、複数のシートユニット7Dが、アーチ周方向に沿って並べられて、各シートユニット7Dの溶着シート11が防水シート5に溶着される。かつ、各シートユニット7Dの打ち継ぎ面シート10Dの裏側面又は打ち継ぎ面4eには、第3実施形態(図10)と同様に、ニトリル系接着剤等の接着剤24aが塗布され、該接着剤24aを介して、打ち継ぎ面シート10Dと打ち継ぎ面4eとが接着される。
【0045】
本発明は、前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変をなすことができる。
例えば、接着剤透過性の打ち継ぎ面シート10,10Bは、不織布に限らず、多数の孔が形成された多孔シートであってもよく、連続気孔を含む発泡シートであってもよい。
長帯状の打ち継ぎ面シート10,10Cにおいても、台形状の打ち継ぎ面シート10B,10Dと同様に、H10=Δr4eとなるように寸法設定してもよい。
台形状の打ち継ぎ面シート10B,10Dを前記寸法設定せずに作製し、打ち継ぎ部4cに設置した後、各打ち継ぎ面シート10B,10Dにおける二次覆工4からトンネル内面側へ突出された部分を切断して除去してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 トンネル
4a 先行覆工コンクリート
4b 後続覆工コンクリート
4c 打ち継ぎ部
4e 打ち継ぎ面
5 防水シート
6 トンネル覆工打ち継ぎシート構造
6B,6C トンネル覆工打ち継ぎシート構造
7 シートユニット
7D シートユニット
10 打ち継ぎ面シート
10B,10C,10D 打ち継ぎ面シート
11 溶着シート
12 連結シート
12c 折り曲げ線
13 スリット
14 打ち継ぎ面シート部分
14C 打ち継ぎ面シート部分
15 接着剤
20 接着層
20a 接着剤
24 接着層
24a 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11